1.スタンダード技術とは

ポールウオーキングは、整形外科医でスポーツドクターでもある安藤邦彦ドクターの診療室から「競歩」を参考に考案された歩行メソッドです。

そのスタンダード技術の要点は、以下の通りです。
① ポール長の調整:
ポールを垂直に立て、小指の付け根の下にグリップのトップが来るようにして押し下げ、肘が直角(90度)になるところが、体格に適したポールの長さです。
② グリップ:
親指、中指、薬指で軽くポールのグリップを握り、人差し指を前方に指すように立てます。ポールは手のひらを支点とする振り子のように前後方向には軽快にスイングしますが、左右にはスイングしません。
③ スクリーニング:
つま先上げ、かかと上げ、膝上げで身体状況をチェックします。左右の違いをしっかり観察します。
④ 腕の振り:
しっかり伸ばし大きく肘を引くパンチ&プルの腕の動作は、体幹の回旋を通じ歩幅を拡大します。
⑤ スタンダードスタート:
右利きであれば、「右手~、左足~」のおまじないを唱えながら、右手・左足、左手・右足と連動させます(左利きであれば左手・右足、右手・左足の順です)。
「左足~」の「あ~」でポールとつま先を離地し、「し~」でポールの先端とかかとを同時に接地します。
⑥ 基本フォーム:
以下の3つのポイントと3つの意識があります。
【3つのポイント】
ⅰ)遠くを見る、
ⅱ)歩幅を半歩広く(半歩とは足裏の半分の意)、
ⅲ)ポールは振り出した足のかかと辺りに置く
【3つの意識】
a) 肘を引く、
b) かかと接地と、つま先離地、
c) 楽しむ

2本のポールを持った立位の静止状態では、両足と両ポールによって囲まれた面(支持基底面と言います)内に身体の重心があれば転倒しないので、立位の体操や筋トレを安全に実施できます。歩行状態では、接地したポールによって支持点が増え、支持基底面が形成されたり広がったりし、踵が着床する時には安定な3点歩行が実現します。しかも、振り出した足のかかと辺りにポールの先端が置かれているので、片脚立位時のバランスが維持され、効率の良い、横揺れの少ない左右対称の動的歩行が実現します。

2本のポールは、立位時の姿勢正常化をサポートし、腕のパンチ&プル動作で歩行時の左右前後のバランス運動をサポートしています。杖歩行の杖や4足歩行時の脚のように荷重を支えたり、ノルディック・ウオーキングのポールのように推進力を得るために腕の力を地面に伝えるのが目的ではありません。身体活動が得意で、上肢、体幹、骨盤などを自由に使用できるようになれば、サポート目的のポールは不要と言えます.

ポールウオーキングでは、歩幅が増え、上半身の筋肉も積極的に使うので、運動量は通常歩行に比べ増加します。にこにこペースの強度では、歩行中にも会話でき、平行位置からの指導は威圧感のない運動指導になります。運動強度を途中で変えたり、筋トレなどを取り込めば、更に楽しい運動プログラムを創案できます。

作成者:峯岸 瑛(みねぎし あきら)
作成日:2022年11月15日

文献
1.(一社)日本ポールウオーキング協会:ポールウオーキング・ベーシックコーチ指導マニュアル、2018年版

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