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LGI1抗体脳炎 アミロイド抗体療法 アルツハイマー病「発症前治療」 アルツハイマー病と血流障害 アルツハイマー病新治療:除去から排出へ しびれ せん妄 マイクロプラスチック 切り替えスイッチ 妊娠中のてんかん診療 環境神経学の時代 知的活動と認知症 腰痛 自己免疫疾患

2026年4月のニュース

2025年には超高齢社会になると予測された台湾でも、ポールウォーキングは普及し出しています!
関連学術ニュースは、「積極的に頭を使うことによって認知機能の低下が遅くなるだけではなく、認知機能がむしろ向上し、認知症の発症が遅くなる!」という実証研究報告の論文紹介と、岐阜大学下畑先生からの最新医学情報です。
特別企画『AIに訊く』では、新たにスタートさせる「連載シリーズ:切り替えの物語 — AIとの対話から生まれた統合理論」のイントロ・第1回をお届けします(AIとの共作論文は当サイトのトピックスに順次掲載してゆきます)。

1.2026年4月の活動状況
スマイルチームさんの投稿
20260403 スマイルチーム上鶴間 天気予報によると今日が最後のお花見日和、、、らしい日に 参加下さった皆さん、ありがとうございました☺️ 体の細かいところを理解しながらのエクササイズ。 かなりの脳トレになるリズムエクササイズ。 体の隅々までのストレッチ。 時間内たっぷりと頭も体も動かすことができました。 お疲れ様でした😊 #スマイルチーム上鶴間 #相模原市南区 #上鶴間公民館

台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
🎬✨ 會員大會圓滿落幕|精彩瞬間回顧 2026 台灣健走杖運動推廣協會 第二屆第一次會員大會,圓滿完成!🎉 從報到的熱絡問候、 會議中的專注與交流, 到戶外健走杖運動會的歡笑與活力, 每一個畫面,都是我們一起走過的美好瞬間。💚 因為有你們, 這不只是一場活動, 而是一段彼此連結的旅程。 謝謝每一位到場的夥伴, 下一段路,我們繼續一起走!🚶‍♀️🚶‍♂️ #台灣健走杖運動推廣協會 #雙杖在手健康跟著走

田村 芙美子さんの投稿
昨夜 あの渋谷のスクランブル交差点で🔥🔥🔥 渋谷区介護予防ポールウォーキング教室新年度1学期が始まりました。抽選をクリアした15名の方々。このクラスを申し込まれた理由は・・ ・姿勢を改善したい ・脊柱管狭窄症で片足が痺れて歩きにくい ・人工股関節をいれたので歩くのが不安 ・以前教室を覗いたら楽しそうだった ・T字杖を使用しているが身体が傾くようで不安 etc.   皆さんの不安を安心に! 筋バランスを整え姿勢良く転ばないよう安定して歩けるように 愉しく運動しましょう。 鎌倉段葛は🌸が満開です。

中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より 4/5(日) 本日2026年度PW歩き始め〜❗️ 定例会場/駒場公園に60名越えの参加者を迎え、少し汗ばむ公園〜牧場の散策が出来ました。 初心者🔰6人の体験コースや健脚〜ユックリコースの3コースでの歩き染め。来週は桜満開?の別な公園散策です❗️ PS:新MC pro/遠藤パパ〜 この3月誕生で資格授与もありました〜❗️ 当協会発展の為ご活躍を期待しま〜す⁉️

Masako Shinchiさんの投稿
☘️佐久といえば、この風景☘️ 雪が消えた浅間山、桜の蕾がうっすら赤くなり始めた駒場公園、そしてポールを持って歩く人たち 家から出てみれば、この風景のおかげで、うつむいてはいられない。

遠藤 恵子さんの投稿
【本日の介護予防運動教室にて】 体操終了後、 初めてご参加くださった方が 涙を浮かべながら声をかけてくださいました。 「先生の体操、とっても良かったです。 お話も精神的にも本当に良くて… 良いお話が聞けて嬉しかったです。 ありがとうございました。」 そう言っていただけて、 とても嬉しくて、励みになりました。 私自身の経験も交えながら、 新年度はじまったばかりなのでお話多め セロトニンについてや脳トレ… 「この運動は何のために必要なのか」 をお伝えしました。 ただ身体を動かすだけでなく、 心にも届く時間になっていたら嬉しいです。 今日も素敵な出会いに感謝です✨ ⁡ さっ 次の講座へ移動🚙💨

校條 諭さんの投稿
最高気温27度予報にもかかわらず快適ポール歩き 4月の気まポ(気ままにポール歩き)は、当初予定していた石神井川沿いを歩くのをやめて、主として石神井公園の中を歩くコースに急遽変更しました。川沿いは緑が少ないので。 公園内は木陰が多く、湿度も低かったので、とても気持ちのよいウォーキングでした。2つの池を一周すると、次々に開ける視界がさまざまに変化するので飽きません。 途中、少しだけ公園から離れて、三宝寺という寺に寄りました。ここには四国八十八箇所をインスタントにお遍路できる場所があります。

水間 孝之さんの投稿
中台科術大学 許秀貞先生のチェアエクササイズ 楽しい❣️

Masako Shinchiさんの投稿
〜ウォーキングポールを相棒に仲間と巡る小さな旅〜 ぽる旅 第4弾🌷 霞ヶ浦総合公園で霞ヶ浦のキラキラ光る湖面を眺めつつ、チューリップに元気をもらう旅、です! 常磐線土浦駅下車、市内周遊バスで20分 シンボルの大きな風車の前には色鮮やかなチューリップが。 このチューリップは誰のものなんですかねー?と、昭和14年生まれFさんの渾身の振りに誰も気付けず、30秒後に「オランダ〜‼️」😄遅っ。 今日は土浦市在住の関コーチが駆けつけてくださいました。股関節の手術を終えリハビリ中の関さんから、日頃歩いたりストレッチ、筋トレをしていたことでリハビリがスムーズに進んでいるというお話が。みんな真剣に聞き入りました。 ポールで歩くことでこうした交流ができるのは本当に嬉しいです😊また一緒にに歩きましょうと約束をしました。 花も光も人にも力をもらいました。さぁ気持ちよい季節は歩きましょう!

中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より PW散策年度初め〜❗️ 桜🌸満開の〜さくラさく小径公園〜をポールウォークで闊歩。 桜見頃を測った参加者70名越えの皆さん、ドンピシャの桜🌸🌸🌸〜 皆さん日頃の行い良好にての結果、ワンコ連れやランドセルnew〜newのピカピカの小学生写真撮りやら楽しみ満喫の公園PW3〜5kmの散策でした‼️

水間 孝之さんの投稿
台湾ポールウォーキング協会設立4年目に入りました。会員コーチ75名になり始めての台湾におけるスキルアップ研修会を開催‼️ 気温30度日本からの参加者はかなり😥厳しいなか、台湾の皆さん元気に研修会完了しました。 ありがとうございました😊

台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
2026年04月12日【日本健走杖健走初階教練(BC)培訓課程】圓滿結束! 這次也是協會開辦課程三年以來,首次有日本健走杖健走協會(NPWA)專業教練來台共同參與教練培訓課程!日本協會肯定我們在健走杖運動上的努力成果,也非常開心台灣學員的優秀表現,以及學習上的熱誠與積極。初階教練(BC)是進入日式健走的敲門磚,而進階教練(AC)則是讓我們能帶領更多人一起走出健康的專業通行認證。接下來在五月,即將開啟的進階教練培訓課程,提供更深入的專業訓練,期待更多人一同加入推動全齡健康的健走杖運動!❤️

台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
三年前的今天(2023/4/13),是我們重要的起點。我們與日本健走杖健走協會(NPWA)正式締結合作協議,取得授權,在台灣展開「日式健走杖健走」的推廣任務。從那一天起,一顆種子悄悄落地,開始在台灣生根發芽。而在三年前,4/14~4/16日這三天,日本專業教練來台的研習會後,台灣也有13位日本健走杖專業教練(Master Coach)取得認證。日本和台灣都面臨人口老化問題。健走杖健走,不僅僅是一項運動,從預防衰弱、降低運動傷害與跌倒風險,到透過穩定支撐改善姿態與體態,進而運用健走杖的輔助同時鍛鍊上半身與下半身肌肉,都一再讓我們感受健走杖運動帶來的價值與影響。三年來,我們持續努力、穩健步伐前進。 未來,也將繼續把這份來自日本的專業與理念,在台灣深耕、茁壯。 台灣、日本,一起加油!! 讓更多人因為「走」,而更健康、更幸福❤️

台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
🎬✨ 2026 教練提升課程|Skill up 花絮回顧 這一天,我們用更專注的步伐, 一起走向更專業的自己。🚶‍♀️🚶‍♂️ 從開場到課程說明、示範教學、分組演練, 每一個環節都看見大家的投入與成長。 站在前面教學的那一刻, 不只是技巧的展現,更是對「教練身份」的理解與轉變。 流流教學時的專注、 學員問題探討時的交流與回饋, 彼此觀察、修正、再進步—— 這正是教練培訓最珍貴的地方。💡 這次特別的是, 日本專業教練也來到台灣,一同參與這場課程。🇯🇵🤝🇹🇼 跨越語言與文化, 我們用相同的步伐與理念彼此交流, 讓健走杖運動的專業更加紮實,也更加有力量。 三年來, 我們一步一步,穩穩地走、持續地做。 從推廣、教學到培訓, 每一段路,都是累積。 未來, 我們也將繼續把這份來自日本的專業與理念, 在台灣深耕、茁壯。🌱 台灣、日本,一起加油!!💪 讓更多人因為「走」, 而更健康、更幸福 ❤️ ⸻ 📸 這些花絮,不只是紀錄, 更是我們一起努力過的證明。 💚 雙杖在手,健康跟著走

水間 孝之さんの投稿
台湾ポールウォーキング協会BC資格取得セミナー7名の受講者、講師3名、スタッフ2名で開催。 実技研修、座学、筆記試験、実技試験7時間! 充実した時間でした。 皆さんお疲れ様です。 大変良好です‼️

田村 芙美子さんの投稿
今日は、駒沢のwalking hut 2とチャッキ~の池上グループの16名が東京から遥々鎌倉ポール歩きにお出掛けくださいました。朝10時から夕方4時までのロングウォークになりました。観光客の少ない大町から材木座の寺院~材木座海岸~由比ヶ浜~扇が谷を歩き、小町通りで解散となりましたが 道中の絶え間のないお喋りオーラルトレーニングには参りました😙😗 目の前に拡がる波がキラリと光る砂浜でポールでゲーム三昧は身体中が若返り気持ちが躍りました。

堀 和夫さんの投稿
河川環境楽園オアシスパーク 新年度ポールウォーキング教室始まりました。 出だしから雨ですので室内でポールエクササイズ。 楽しく身体動かします。

田村 芙美子さんの投稿
100歩速歩ごとにゲームタイム

佐藤 ヒロ子さんの投稿
シニアポールウォーキング 2026/4/20 参加する会員も増えて  講堂が狭くなりました 良い季節なので  外回りグループを再開! 喜んで飛んで行きます〜〜 講堂グループは足元が安心。  鏡でFormがチェックできる  のも魅力です。 思い思いに分かれて   疲れたら休憩。 程よい疲労を心得ているのは シニアメンバーならばこそです 素晴らしいなあ〜〜 #船橋ウォーキングソサイエティ #ノルディックウオーク  #ポールウォーキング #コグニサイズ #ポールdeダンス #しっかり歩きで免役力アップ

日本ポールウォーキング協会 npwaさんの投稿
4月19日にスキルアップ研修会東京会場を実施しました。 参加者21名の内、MCProが4名参加されたため、きめ細やかなフォローや意見交換が行われ、非常にレベルの高いスキルアップ研修会になりました。 次回は7月5日(日)初の関西地区のスキルアップ研修会となります。多くの西日本地区のコーチのお申込みをお待ちしております。

佐藤 ヒロ子さんの投稿
【美・姿勢ウォーキング初参加】  4月から新体制でスタート。      2026/4/21 土曜「ポールを使うウォーキング」から火曜日のポールを使わないウォーキングへ移った会員。 ウォーミングアップで  本人達も意外な気づき 「あれれ〜 ポールがないとふらつくわ」 そう、ポールあると無いとでは 大違い。  「4月は歩きの基本」 ウォーキングも両方経験するとより深く新鮮だったようです。 #船橋ウォーキングソサイエティ #良い歩きはよい姿勢から

田村 芙美子さんの投稿
逗子PWクラブの日。朝はひんやり。家を出たところでご近所さんとバッタリ。踏切りまでおしゃべりして私は駅へ、彼女は教会へ。「辞め時」について話していて中断。 JRは今日も上下線が遅延。それでも時間までに到着し、ほっ。駅までは送迎車。 ウォーミングアップの公園の向いは今年も見事な藤! 最近裏山に猪が4頭出たそうです。クワバラクワバラ 放課後(?) 駅近くの神武寺へ。別のサークルのための下見です。特養せせらぎの前庭に数えきれないほどの大きな鯉のぼりが空を隠していました。

 

来月以降開催
長岡智津子さんの投稿
写真1件

柳澤 光宏さんの投稿
毎年開催しているシナノ工場祭のご案内(^.^) 5月16日9時からです‼️ 今年はクラフトもの作り体験が全てリニューアル。お子様に喜んでもらえるかと。 アウトレットも色々用意していると聞いています。 お待ちしております(^.^)

 

2.PW関連学術ニュース
2-1)生涯にわたる認知能力向上とアルツハイマー病認知症の発症、認知老化、および認知回復力との関連性
***以下は、大阪大学宮坂昌之先生の2026年4月13日のFB投稿です***
認知機能は加齢とともに低下してきますが、積極的に頭を使うことによって認知機能の低下が遅くなるだけではなく、認知機能がむしろ向上し、認知症の発症が遅くなるのではないかと言われています。しかし、それを大規模な調査で科学的に示した例は多くありません。
専門誌Neurologyの近刊に、アメリカ・イリノイ州北東部の高齢者を対象とした認知症に関する経時的臨床病理学的研究の結果が載っています(https://www.neurology.org/doi/10.1212/WNL.0000000000214677)。
対象者は、調査開始時点で認知症がなく、その後生涯にわたって認知機能向上活動に関するアンケートに回答し、さらに毎年、認知症に関する臨床評価を受けていた人たち約2千人(女性76%、平均年齢79.6歳)です。高齢になってから行った知的活動が非常に多かった人、中等度だった人、低かった人に分けて認知症の発症頻度、発症年齢など3群に分けて、一人平均7.6年にわたり調査しました。
その結果、若い時から知的活動において積極的であっただけでなくて高齢になってからも知的活動を最も積極的に続けた人たちでは、知的活動が少なかった人たちよりも、認知症になるのが38%減り、軽度認知障害も36%低下し、認知障害の発症が5-8年遅くなっていました。つまり、生涯にわたって知的活動を積極的に続けることが認知機能低下の速度を遅くさせ、認知症リスクを低下させることにつながっていた、という結果です。
ということは、年を取ったからもういろいろなことは諦めるというのではなくて、スマホも結構、パソコンも結構、唄を歌うのも結構、習字をするのも結構、手紙を書くのも結構、社会的活動をするのも結構、そのようなことの積み重ねが、加齢による認知機能の低下を遅らせ、ひいてはアルツハイマー型認知症のリスクを下げてくれることにつながる、ということです。年寄りに大事な「きょうよう(今日用事があること)」や「きょういく(今日行くところがあること)」は、いずれも認知機能を高める活動そのものです。長野県の方言で「ずくを出す」という表現がありますが、「まめに動く」という意味です。皆さん、ずくを出して活動しましょう!

関連情報:原論文
掲載誌:Neurology
公開日:March 10, 2026
表題:Associations of Lifetime Cognitive Enrichment With Incident Alzheimer Disease Dementia, Cognitive Aging, and Cognitive Resilience
(和訳:生涯にわたる認知能力向上とアルツハイマー病認知症の発症、認知老化、および認知回復力との関連性)
著者:Andrea R. Zammit , Lei Yu , Victoria N. Poole, Alifiya Kapasi , Robert S. Wilson , and David A. Bennett
https://doi.org/10.1212/WNL.0000000000214677

要旨
背景と目的
生涯にわたる認知的刺激が、その後の人生における認知機能に及ぼす影響は、包括的に調査されていません。本研究の目的は、生涯にわたる認知的刺激とアルツハイマー病(AD)認知症および認知機能低下との関連性を検証すること、そして剖検を受けた死亡者のサブセットにおいて、生涯にわたる刺激とADおよび関連認知症(ADRD)の病理学的指標、ならびに認知回復力(一般的なADRD病理を調整した後の低下)との関連性を探ることでした。
方法
これは、イリノイ州北東部の高齢者を対象とした縦断的な臨床病理学的研究であり、ラッシュ記憶・加齢プロジェクトに参加し、ベースライン時点で認知症がなく、生涯にわたる生活の質の向上を反映したアンケートに回答し、毎年臨床評価を受けていた。我々は、生涯にわたる認知機能の向上を反映した複合指標を作成し、比例ハザードモデルを用いて新規発症AD認知症との関連性、加速故障時間モデルを用いてAD認知症発症の平均年齢との関連性、線形混合効果モデルを用いて認知機能低下との関連性を検証した。死亡した被験者群では、生涯にわたる認知機能の向上と9つのADRD病理および認知回復力との関連性を検証した。
結果
参加者(n = 1,939、女性 75%、ベースライン時の平均年齢 = 79.6)は平均 7.6 年間の追跡調査を完了し、その間に 551 人の参加者が AD 型認知症を発症しました。生涯の充実度が 1 単位高いと、AD 型認知症を発症するリスクが 38% 低下しました (ハザード比 0.62、95% CI 0.52–0.73、p < 0.001)。生涯の充実度が高い (90 パーセンタイル) 場合、低い (10 パーセンタイル) 場合と比較して、AD 型認知症の発症が平均 5 年遅れました。生涯の充実度は、ベースライン時の認知機能 (推定値 = 0.31、SE = 0.02、p < 0.001) および認知機能低下の速度が遅いこと (推定値 = 0.02、SE = 0.01、p = 0.002) と正の相関がありました。死亡者群(n = 948)では、生涯にわたる認知能力向上は神経病理学的指標との有意な関連を示さなかったが、死亡直前の認知機能の高さ(推定値 = 0.32、SE = 0.06、p < 0.001)および病理を調整した後の認知機能低下の速度の遅さ(推定値 = 0.014、SE = 0.01、p = 0.02)と関連していた。
議論
生涯にわたる認知能力向上への取り組みは、アルツハイマー病(AD)認知症のリスク低下および認知機能低下速度の遅延と関連しており、一般的なADRD病理を調整した後でも、生涯にわたる認知能力向上によって高い回復力がもたらされることが示唆された。本研究の結果は、晩年の認知機能の健康は、生涯にわたる認知能力向上への取り組みによって部分的に左右されることを示唆している。

 

2-2)岐阜大学医学部下畑先生からの最新医学(2026年4月)
・ナノプラスチックの脳への侵入とミクログリアによる防御,そして認知症につながる?
****岐阜大学医学部下畑先生の2026年4月1日のFB投稿より****
ナノプラスチックが脳に与える影響を,侵入と防御の両面から理解できる2つの論文を紹介します.いずれも本邦からで,一つは国立環境研究所のItoらによる研究で,もう一つは国立精神・神経医療研究センターおよび東京大学を中心としたOgakiらの研究です.
まずItoらの研究は,「ナノプラスチックは神経細胞に入るのか?」という問いに答えたものです.結論としては,ヒト由来神経細胞(LUHMES)を用いた実験により,ポリスチレンナノ粒子は神経細胞内に取り込まれることが明確に示されました.特に50 nmの粒子は500 nmに比べて圧倒的に効率よく取り込まれ,取り込み量は数百倍に達しました(図1).取り込みは主にクラスリン依存性エンドサイトーシスやマクロピノサイトーシスによるものでした.さらに,取り込まれた粒子は主にリソソームに局在し,一部はミトコンドリア周囲にも分布していました.また細胞種による違いが認められ,ミクログリアが最も高い取り込み能を示し,神経幹細胞がこれに続き,分化した神経細胞やアストロサイトでは取り込みが比較的低いという結果でした.特に神経幹細胞で取り込みが高いという所見は,発達期における脆弱性を示唆するものとして重要です.
一方で,これほど細胞内に取り込まれるにもかかわらず,急性毒性はほとんど認められず,細胞生存率,神経突起伸長,酸化ストレスへの明確な影響は確認されませんでした.しかしこれは安全ということではありません.神経細胞がナノプラスチックを取り込み,リソソームに蓄積するという事実は,神経細胞自身ではこれを十分に処理できず,ミクログリアなどのクリアランス機構に依存していることを示唆しています.このバランスが破綻した場合,長期的な蓄積や神経変性疾患との関連が生じる可能性があり,重要な知見と考えられます.
つぎにOgakiらの研究は,ナノプラスチックを含むナノ粒子が脳に侵入した後に「脳がどのように対処しているか」を明らかにしたものです.ナノ粒子は血流を介して脳内に到達し,特に視床や視床下部に蓄積することを示しました(図2).そしてこに蓄積に対してミクログリアが貪食を行いますが,その際に重要なのが補体C3による「タグ付け」です.ナノ粒子にC3が付着すると,ミクログリアは補体受容体CR3を介してそれを選択的に取り込みます.さらにこのC3は,血管内皮細胞から分泌されるCCL17がアストロサイトのCCR4を活性化することで産生されることが示されました.つまり,「血管内皮→アストロサイト→補体→ミクログリア」という連携機構が存在し,ナノ粒子の除去に働いていることが明らかになりました(図3).この機構の意義を最も明確に示しているのが図3で,CCR4を選択的アンタゴニストC-021で阻害するとミクログリアによるナノ粒子の除去が低下した結果,神経細胞死の増加と不安様行動の増悪が生じることが示されています(図4).すなわち,この機構は単なる異物処理ではなく,神経保護として機能している点が重要です.
ここで近年報告され注目を集めた「認知症患者の脳でナノプラスチックが多量に蓄積している(Nat Med. 2025;31:1114-1119.)」という観察結果を踏まえると,これら2つの研究は非常に重要な意味を持ちます.Itoらの研究は,ナノプラスチックが実際に神経細胞内に取り込まれ得ることを示しており,一方でOgakiらの研究は,それを除去する脳の防御機構が存在することを示しています.すなわち,ナノプラスチックの脳内蓄積は,「侵入」と「除去」のバランスで決まると考えることができます.この観点から認知症を考えてみると,アルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患では,ミクログリア機能の低下や補体系の異常,さらには血管障害や血液脳関門の破綻が知られています.このような状態では,ナノ粒子に対するC3によるタグ付けやミクログリアによる貪食が十分に機能せず,クリアランスが低下する可能性があります.その結果として,ナノプラスチックが脳内に蓄積しやすくなると考えることができます.そしてナノプラスチックが神経炎症や細胞機能障害を引き起こすことで,アミロイドβやタウ病理を促進し,神経変性を悪化させる可能性もあります.つまりナノプラスチックの蓄積は,認知症において結果でもあり,原因でもありうると考えられます.
以上より,ナノプラスチックの脳への影響は,「神経細胞への侵入」,「ミクログリアを中心としたクリアランス機構」,そして「その破綻としての神経障害」という3つの視点から理解する必要があります.すなわち,ナノプラスチックは単に毒性を持つか否かではなく,「脳がそれをどこまで処理できるか」という動的な均衡の中で影響を及ぼしている可能性があります.よって本テーマは環境問題にとどまらず,神経変性疾患の新たな修飾因子としての可能性を含んでいます.
Ogaki A, Kinoshita S, Ikegaya Y, Koyama R. Chemokine-complement cascade in glial-vascular units protects neurons from non-biogenic nanoparticles. J Neuroinflammation. 2025;22(1):182. PMID: 40660294.
Ito T, Ikuno Y, Udagawa O, Tanaka K, Kurokawa Y, Kakeyama M, Maekawa F. Human neurons are susceptible to the internalization of small-sized nanoplastics. Environ Toxicol Pharmacol. 2025;118:104776. PMID: 40744315.
Nihart AJ, Garcia MA, El Hayek E, et al. Bioaccumulation of microplastics in decedent human brains. Nat Med. 2025 Apr;31(4):1114-1119. PMID: 39901044.

・健康ONEクリップ しびれの原因がわかる「しびれ図鑑」 今晩放送です!
****岐阜大学医学部下畑先生の2026年4月1日のFB投稿より****
NHKのトリセツショー「あなたの「しびれ」はどれ?解消&予防SP」にて「しびれ図鑑」を作成しましたが,この番組とは別枠で,図鑑の内容を一部抜粋した3分VTRが放送されることになりました.今後,番組と番組の間などで随時流れることになるそうです.まず1回目の放送が本日の夜になります.もしよろしければご覧ください.この「しびれ図鑑」はとても好評で,今回の企画になったようです.ぜひ「しびれ図鑑」をご活用ください.
放送日:4月1日(水)午後10:57~
★リンクはコメント欄をご覧ください.
#NHK #トリセツ #しびれ図鑑

・せん妄は「脳の老廃物排出機能の障害」だったのか!?―グリンファティック仮説が示す新しい理解
****岐阜大学医学部下畑先生の2026年4月3日のFB投稿より****
Nat Rev Neurol誌のPerspectiveに面白い仮説提唱論文が出ています.3人の先生の共著ですが,最後がグリンファティック系の提唱者として知られるMaiken Nedergaard先生であり,注目して読みました.せん妄の病態を「グリンファティック機能障害」という観点から統一的に説明しようとする,非常に意欲的な論文でした.
まずせん妄については,入院患者においてしばしば認められる症候で,特にICUでは30~70%と高頻度に認められます.従来,炎症,神経伝達物質異常,睡眠障害などさまざまな機序が提唱されてきましたが,いずれも部分的な説明にとどまり,統一的な理解には至っていませんでした.この論文ではこれらを一つの枠組みで捉え直し,せん妄を急性の「脳の老廃物排出機能の障害」として理解することを提案しています.
その鍵となるのがグリンファティック系です.これは脳内の血管周囲腔を介して脳脊髄液が流入し,間質液と混合したのちに静脈周囲やリンパ系へ排出されることで,アミロイドβやタウ,炎症性サイトカインなどの神経毒性物質を除去するシステムです.この機構はアストロサイトのAQP4水チャネルに依存し,さらに心拍や呼吸に伴う脳の拍動によって駆動されます.特に重要なのは,このシステムが睡眠中に最も活発に働き,覚醒時には抑制されるという点です.
この論文の仮説は,せん妄とはこのグリンファティック機能が急性に低下した状態であり,その結果として脳内に神経毒性物質や炎症性サイトカインが蓄積し,神経ネットワークの同期やシナプス機能が障害されることで発症するというものです.この考え方の優れている点は,既知の危険因子がすべてこの機構に収束されることを示した点にあります.すなわち,加齢や認知症,心血管疾患,腎不全といった「素因」は慢性的にグリンファティック機能を低下させており,そこに感染や手術,外傷といった急性の「誘因」が加わることで,機能はさらに抑制されます.
加えて,「ICUで行われる医療介入」そのものが,この機能を強く抑制する可能性があります.鎮静薬やオピオイドは睡眠構造を乱し,ノルアドレナリンは覚醒状態を維持することでグリンファティック系を抑制します.また人工呼吸の陽圧換気では胸腔内圧が上昇し,静脈血が頭蓋内にうっ滞しやすくなるため,頭蓋内圧が上がり,血管周囲腔が圧迫されます.その結果,脳脊髄液の流れが悪くなります.ICUではこれらが同時に存在するため,結果として脳の「排出機能」は多重に抑制されることになります.
この病態を最も明確に示しているのが下図です.この図では,まず加齢や基礎疾患によってもともとグリンファティック機能が低下している状態(素因)があり,そこに感染や外傷などの急性ストレス(誘因)が加わり,さらにICUでの鎮静や人工呼吸,睡眠障害といった医療介入(ICU関連因子)が重なることで,グリンファティック機能が,それぞれ,元来(初めから)/亜急性に/急性に低下することになります.その結果,脳内に老廃物や炎症性サイトカインが蓄積し,神経回路の機能が破綻してせん妄が発症するという流れです.
せん妄が夜間に目立つことも,この仮説から説明できます.本来,睡眠中には細胞外間隙が拡大し,脳脊髄液の流入が増加することで老廃物の除去が促進されます.しかしICUでは睡眠が著しく断片化し,徐波睡眠やREM睡眠が減少しており,本来夜間に働くべきグリンファティック機能が十分に発揮されません.さらに覚醒状態ではノルアドレナリンが高く,この機能は抑制されます.その結果,「本来なら脳が回復するはずの夜に回復できない」状態が生じ,老廃物の蓄積が進み,せん妄症状が顕在化しやすくなると考えられます.
また,せん妄と神経変性疾患との関連にも言及しています.グリンファティック機能の低下はアルツハイマー病やパーキンソン病,ALSなどでも認められており,老廃物の蓄積と密接に関係しています.せん妄はこうした脆弱な脳において発症し,その後の認知機能低下や認知症リスクを高めることが知られていますが,その背景にはグリンファティック機能のさらなる障害が関与している可能性があります.すなわち,せん妄のエピソード自体が神経変性の進行を加速させる可能性が示唆されています.
治療的な観点から考えると,鎮静を最小限にし,可能な限り覚醒状態を保つこと,睡眠を維持すること,早期離床を促すことなどは,いずれもグリンファティック機能を維持する方向に働き有効と考えられます.薬剤としてはデクスメデトミジンが注目されます.この薬剤はα2アドレナリン受容体作動薬であり,青斑核の活動を抑制することでノルアドレナリンを低下させ,自然睡眠に近い鎮静状態をもたらします.その結果,グリンファティック機能を比較的保ちやすい可能性があり,実際にせん妄の発症を減少させることが報告されています.逆にプロポフォールやベンゾジアゼピンは深い鎮静をもたらすものの,睡眠とは異なる状態であり,グリンファティック機能を抑制する可能性があります.
もしかしたらせん妄は「避けられない合併症」ではなく,「脳の環境を整えることで予防・軽減できる可能性のある病態」として再定義されるかもしれません.今後そのような視点で,せん妄の予防・治療を行ってみたいと思います.
Boesen HC, Du T, Goldman SA, Nedergaard M. Glymphatic dysfunction: a unifying hypothesis for delirium. Nat Rev Neurol. 2026 Mar 30. PMID: 41912735.

・ラモトリギンとレベチラセタムの用量は妊娠中・産後にどう変えるべきか? MONEAD研究より
****岐阜大学医学部下畑先生の2026年4月4日のFB投稿より****
妊娠中のてんかん診療では,「どのタイミングでどの程度薬剤を増減すべきか」という問いに直面します.妊娠中は腎血流や肝代謝の変化,蛋白結合の低下,グルクロン酸抱合の亢進などにより,多くの抗てんかん薬(ASM)でクリアランスが増加します.このため,同じ用量でも血中濃度が低下し,発作増悪のリスクが生じます.一方で,分娩後はこれらの変化が急速に元に戻るため,増量したままでは過量投与となる危険があります.今回紹介するNeurology誌の論文は,ASMの適切な調整という問いに対して重要な示唆を与える研究です.米国のUniversity of Pittsburghなど20施設からなるMONEAD研究グループによって実施されました.
てんかんを合併した妊婦299例を対象とした前向き観察研究で,妊娠中から産後6週までのASMの用量変化を詳細に追跡しています.その結果,妊娠中には全体の約68%で増量が行われ,初回の調整は登録後中央値32日で実施されていました.さらに産後6週以内には約48%で減量が行われ,その開始は中央値3日と非常に早期でした.この「妊娠中は増量し,産後は速やかに減量する」というダイナミックな用量変化が,本研究の重要なメッセージです.
催奇形性の少なさから,特にラモトリギンとレベチラセタムが本研究の中心的評価薬剤となっています.ラモトリギンでは87.7%の症例で増量が行われ,1回あたり中央値100 mg/日の増量を繰り返しながら,分娩時には妊娠前の約191%に達していました.図1にはこの変化が明瞭に示されており,妊娠週数の進行とともに用量が連続的に上昇していく様子が理解できます.縦軸の“dose at conception”は妊娠成立時点の用量を基準とし,その後の用量変化を割合(%)で表したものです.例えば妊娠成立時に200 mg/日であった場合,分娩時に400 mg/日であれば200%となります.さらに重要なのは産後の用量変化であり,分娩直後から急速に減量が行われています.ただし6週時点でも約116%と,完全には妊娠前の用量に戻っていない点は臨床的に重要です.
レベチラセタムでも同様の傾向が認められますが,いくつかの相違もみられます.56%で増量が行われ,1回あたり中央値500 mg/日の増量により,分娩時には妊娠前の177%に達しています(図2).一方,産後の減量はラモトリギンほど急峻ではなく,6週時点でも136%と比較的高い水準に維持されています.これはレベチラセタムでは高用量でも副作用が出現しにくいことが影響している可能性が指摘されています.
このような積極的な用量調整のもとで,妊娠中の発作増悪の頻度は非妊娠時と同程度に保たれており,発作コントロールの維持に有効であったと考えられます.さらに児の神経発達も良好であり,特にラモトリギンおよびレベチラセタムの単剤治療例では,6歳時の言語発達指標に有意差は認められませんでした.
本研究から得られる臨床的示唆は明確です.すなわち,妊娠中は4〜6週間隔での用量調整を前提に,必要に応じて適切に増量すること,そして産後は数日以内に減量を開始することが重要であるということです.さらに,産後も直ちに妊娠前の用量に戻すのではなく,睡眠不足などの発作誘発因子を考慮しつつ,やや高めに維持するという判断も示唆されます.
ただし,本研究は観察研究であり,用量調整の判断基準(血中濃度か臨床症状か)が明確ではないことなどの限界もあります.しかしそれでも,専門施設における実際のASM調整の実態を具体的に示した点で,非常に貴重な研究といえます.特に図1および図2は,本研究のエッセンスを直感的に理解できる優れた図であり,ぜひご確認いただきたいと思います.
Pennell PB, Li D, Kerr WT, et al. Antiseizure Medication Dosing Strategy During Pregnancy and Early Postpartum in Women With Epilepsy in MONEAD. Neurology. 2026 Jan 27;106(2):e214483. PMID: 41461064.

・腰痛:「見逃してはならない病態」と画像検査前の診察のコツ
****岐阜大学医学部下畑先生の2026年4月7日のFB投稿より****
腰痛の多くは自然軽快する筋骨格性疼痛ですが,一部には神経障害や重篤な疾患が隠れています.今週号のNEJM誌に掲載された整形外科のエキスパートによる動画・論文は,腰椎診察の実践的なコツを示した有用な内容で勉強になりました.とくに「見逃してはならない病態」と,画像検査前の診察のコツを体系的に整理しています.
まず最も重要なのは,「見逃してはならない病態」を見抜くことです.病歴で特に重視すべきはred flagのチェックです.具体的には,馬尾症候群を示唆する排尿・排便障害,saddle anesthesia,下肢筋力低下,さらに感染や腫瘍を示唆する発熱,体重減少,癌の既往の6つを挙げています.なかでも排尿障害やsaddle anesthesiaは馬尾症候群を強く示唆する所見であり,緊急対応が必要です.saddle anesthesiaとは,肛門や会陰,内股にかけて,ちょうど馬の鞍が接触する領域に一致した感覚障害であり,仙髄(S2〜S5)の障害を反映します.患者はこの部位の異常を自ら訴えないことも多く,「陰部や肛門周囲の感覚に違和感はありませんか?」と積極的に確認することが重要です.また発熱や体重減少,癌の既往があれば,感染や腫瘍といった全身性疾患を常に念頭に置く必要があります.
診察は視診から始まります.患者を立位にして後方から観察すると,肩と骨盤の高さの左右差や脊柱の傾きが評価できます.そして重要なのが姿勢です.腰椎前弯が失われると体幹は前方へ傾きますが,それを補うために骨盤は後傾(pelvic retroversion)し,股関節や膝関節は屈曲し,足関節は背屈するという一連の代償機構が働きます.図1左ではこの「姿勢保持のための代償機構」が示されており,腰痛患者にみられる前かがみ姿勢が,単なる痛み回避ではなく,全身のバランスを保つための適応であることが理解できます.つまり姿勢そのものが診断の手がかりになります.例えば,前かがみであれば脊柱管狭窄,体を横に傾けていれば神経根障害,膝を曲げて立っていれば脊柱アライメントの破綻が推測されます.
つぎは歩行です.Trendelenburg歩行は,股関節外転筋の機能低下により骨盤を安定して支えられず,体を左右に傾けながら歩く状態であり,L5神経根障害や股関節疾患を示唆します.また歩行障害が顕著な場合には,腰椎病変だけでなく頸髄症など中枢病変の可能性も考慮する必要があります.
触診では棘突起の圧痛と傍脊柱筋の圧痛を区別します.前者は骨折や腫瘍,後者は筋・筋膜性疼痛を示唆し,原因の絞り込みに有用です.可動域では前屈,後屈,側屈,回旋を評価し,疼痛や左右差を確認します.
神経診察ではデルマトームとミオトームの評価が中心となります.図1右は教科書的なデルマトームで,L4は下腿内側,L5は足背,S1は足底外側に対応し,「どこがしびれるか」から障害神経根を推定することができます.筋力ではL2の股関節屈曲からS1の足関節底屈まで順に評価し,腱反射では膝蓋腱反射(L4)とアキレス腱反射(S1)を確認します.反射低下は神経根障害を示唆し,反射亢進があればより上位の中枢病変の可能性を考慮します.
誘発試験としてはstraight leg raising test(SLR test)が重要で,坐骨神経の伸張によりL5やS1神経根障害を検出します(図2左A).足関節を背屈させることで神経の伸張はさらに増強され(図2左B),逆に膝を曲げると伸張は緩和されますが,膝窩部に圧を加えると再び症状が誘発されます(図2左C・D).SLR testは仰臥位で行うのが基本ですが,動画(写真)のように座位でも同様に評価が可能であり,両者を組み合わせることで診断精度を高めることができます.仰臥位では陽性であるにもかかわらず座位では陰性となる場合は,神経の伸張という観点からは説明がつきにくく,非器質的要因の関与,いわゆる「Waddell徴候」を示唆する重要な所見です.さらに,femoral nerve stretch testは大腿神経を伸張することでL3やL4神経根障害の評価に有用であり(図2右A・B),SLR testとあわせて上下の腰椎レベルを見分けるうえで重要な手技です.
腰痛診療においては,まず患者を観察し,しびれの分布と姿勢の意味を読み取ることが重要です.デルマトームは神経の局在を示し,姿勢は力学的破綻を示します.そして誘発試験はそれを確かめる手段です.患者の立ち方や動き方を丁寧に観察すれば,画像検査を行う前から,診断の手がかりはすでに示されているといえます.
Daniels AH, et al. Clinical Examination of the Lumbar Spine. N Engl J Med. 2026 Apr 2;394(13):e23. PMID: 41931050.

・「除去」から「排出」へ:グリンファティック系を再起動するアルツハイマー病新治療がヒトで実現する!?
****岐阜大学医学部下畑先生の2026年4月8日のFB投稿より****
アルツハイマー病(AD)の病態を「異常タンパク質の蓄積」という静的な視点から,「排出システムの破綻」という動的な視点へと大きく転換させる画期的な臨床研究(プレプリント)が報告されました.Applied Cognition社,スタンフォード大学やワシントン州立大学など,脳神経内科,睡眠医学,生理学の専門家が集結した学際的チームによって実施された研究です.これまでAD治療の関心の中心は蓄積したアミロイドβ(Aβ)を直接除去する抗体療法でしたが,この研究は脳の天然の掃除システムである「グリンファティック系」を薬剤で強化し,老廃物を「そもそも蓄積させない」あるいは「効率よく排出させる」という画期的で,より生理的なアプローチを提示しています.
研究チームは,55〜64歳の健常高齢者を対象とした厳密なクロスオーバー試験を実施しました .ここで検証されたのは,α2受容体刺激作用を持つ鎮静剤のデクスメデトミジン(DEX;プレセデックス®)と,末梢血管を収縮させて血圧低下を防ぐミドドリンを組み合わせた複合薬「ACX-02」の効果です.DEHは標準的な臨床用量(0.7 micro-g/kg/h)です.DEXは脳内のノルアドレナリンを抑制することで,老廃物を押し出す動力源となる睡眠徐波を劇的に増加させることや,脳組織の細胞外スペースを拡大させることが動物実験で示されており,これがヒトでは「脳実質抵抗」を低下させる(通り道を広げる)効果として期待されていました.またミドドリンが必要な理由は後述しますが,DEXによる「逆効果となる脳血管の拡張」を防ぎ,老廃物の通り道を確保するためです.
被験者はあえて一度睡眠不足の状態に置かれた後,日中に短時間の睡眠機会を与えられ,その間の生理計測と血液バイオマーカーの精密な測定が行われました.つまり「脳の掃除スイッチが最大に入る状態」を人為的に作り出し,薬剤の効果を正確に追跡したわけです.薬剤の効果は脳波(睡眠徐波,相対パワー)と,流体力学的な指標(脳実質抵抗,脳血管コンプライアンス),血液バイオマーカー(Aβ42/Aβ40比,p-tau217)で検討しています.
さて結果ですが,DEXを単独で投与した場合,睡眠中の徐波活動は有意に増加したものの,脳からのAβやタウの排出増加は認められませんでした.この現象の鍵を握るのが,図1の生物学的メカニズムです.DEX単独投与による血圧低下した際に,全身の血圧が変動しても脳への血流を一定に保とうとする「脳血流自動調節能」があるため,代償的反応として脳血管は抵抗を下げて血流を維持する方向に働きます.つまり血管拡張が生じますが,それが老廃物の通路である血管周囲腔を物理的に圧迫して閉ざしてしまう様子が描かれています.つまり,単に深い眠りを誘発するだけでは不十分であり,血管動態を含めた統合的な制御が不可欠であることが明らかになったわけです.
これに対し,ACX-02を用いた介入では,ミドドリンの作用によって血圧低下が抑制され,脳血管の過剰な拡張が回避されました.その結果,図2に示されるデータが証明するように,劇的な変化が生じました.つまり図2Aで徐波カウントが顕著に増加する一方で,図2Bでは脳内の水の通りやすさの指標である「脳実質抵抗(Rp)」がプラセボ比で51.4%も大幅に減少しました.このとき平均動脈圧(MAP)は安定して維持されていました.
最も特筆すべき結果は,この生理的変化が異常タンパクの排出量に直結した点です.ACX-02投与により,Aβ42/Aβ40比およびリン酸化タウ(%p-tau217)で評価したクリアランスが約8〜10%有意に上昇しました.これらの指標は脳から血中への排出動態をダイレクトに反映するものであり,ヒトにおいて短時間の介入で老廃物の除去を定量的に増加させられることを世界で初めて実証しました.ベイズ媒介解析によれば,この効果の最大の要因は脳実質抵抗の低下であり,次いで徐波活動の増加が重要な役割を担っていることが示されています.
この発見は,将来的に大きな臨床意義を持ちます.著者らは,約10%の排出増加が長期的に持続すれば,アミロイド蓄積の進行を数年単位で遅らせ,病理学的閾値に達する時期を大幅に延期できる可能性があると考察しています.また,このアプローチは既存の抗体療法と競合するものではなく,抗体によって可溶化されたタンパク質を,グリンファティック系を介して効率よく排出させるという補完的治療になり得るものです.本研究は,ADを「流れが滞ることで溜まる」疾患と捉え直し,その流れを再び動かすことができるという希望を提示した画期的な研究と言えると思います.
Dagum P, et al. Pharmacological enhancement of glymphatic function in humans increases the clearance of Alzheimer’s disease-related proteins. medRxiv. 2026 Mar 12. doi: 10.64898/2026.03.10.26348048.

・環境神経学の時代;神経変性疾患は「加齢」や「遺伝」だけで説明されるものではなく,「環境との相互作用」の中で発症し進行する疾患である
****岐阜大学医学部下畑先生の2026年4月10日のFB投稿より****
近年,「パーキンソン・パンデミック」という言葉が注目されています.世界のパーキンソン病(PD)患者数は過去数十年で大きく増加しており,その背景として大気汚染をはじめとする環境要因の関与が注目されています.従来,神経変性疾患は遺伝要因の研究が主体でしたが,現在では「環境との相互作用」という視点が急速に重要性を増しています.今回紹介する3つの研究は,このパラダイムシフトを決定づける重要なものです.
まず,PDに関するデンマークの全国コホート研究(文献1)は,「大気汚染」の影響を人口レベルで示した点で画期的です.約328万人を平均15.7年間追跡し,36,665例の発症を解析した結果,PM2.5,NO₂,ブラックカーボンのいずれにおいても,曝露量の増加と発症リスクとの有意な関連が認められました.特に重要なのは,濃度が高くなるほど発症リスクが上昇する「濃度反応関係」が明瞭に示された点です.図1では,PM2.5濃度の上昇に伴いハザード比が連続的に増加しており,大気汚染が「量」に依存して神経変性リスクを規定する可能性が示唆されています.グラフ下部のヒストグラムを重ねて見ることで,多くの人が実際に曝露されている濃度帯が可視化されています.この点は重要であり,大気汚染による健康被害は高濃度の曝露を受ける一部の集団のみの問題ではなく,より広い集団に影響しうることを示しています.ちなみに4つ目のO₃(オゾン)では負の相関がみられますが,オゾンによる保護作用を示すものではなく,交通由来汚染物質との逆相関や汚染物質間の複雑な相関構造を反映した見かけ上の所見のようです.
では,なぜ大気汚染が脳を蝕むのでしょうか.この問いに対して,JCI誌のPalushajらは,「exposome(エクスポソーム;環境曝露の累積)」という概念を用いて説明しています(文献2).exposomeはexposure(暴露,曝露)と-ome(全体,網羅的な総体) を組み合わせた混成語です.彼らの主張の核心は,「病態の起点は脳ではなく腸にある」という点です(図2).大気汚染粒子や農薬,マイクロ・ナノプラスチックといった環境因子は,腸内環境を攪乱し,腸管バリアを破綻させます.その結果,炎症や免疫異常が誘導され,αシヌクレインの異常凝集が生じ,それが迷走神経を介して中枢神経系へと波及する可能性が示唆されています.実際,PDでは便秘や嗅覚障害といった症状が発症の10〜20年前から出現することが知られており,「腸―免疫―脳軸」を介した病態形成を強く支持しています.
大気汚染の影響はPDにとどまりません.スウェーデンのKarolinska InstitutetによるALSの研究(文献3)は,環境因子が神経変性疾患の「発症」だけでなく「進行」にも関与する可能性を示しました.1,463例のALS患者を対象とした解析では,PM2.5やPM10,NO₂への長期曝露がALS発症リスクの上昇と関連していました.さらに,曝露量が高いほどALSFRS-Rで評価した進行速度が速く,呼吸機能の悪化や死亡リスクの上昇とも関連していました.図3に示すフォレストプロットは,曝露期間ごとに一貫して発症リスクが上昇する様子を示しており,大気汚染がALSの自然歴そのものに影響を与えている可能性を強く示唆しています.
以上を統合すると,一つの明確なメッセージが浮かび上がります.神経変性疾患は,もはや「遺伝」や「加齢」だけで説明される疾患ではなく,「環境との相互作用」の中で発症し進行する疾患であるということです.今後の神経内科学においては,患者の遺伝的背景だけでなく,「どのような環境に曝露されてきたか」を問う視点が必要になります.疾患予防を目指すのであれば,大気汚染,農薬,重金属,さらには話題のマイクロ・ナノプラスチックといった「見えないリスク」に対し,個人レベルの予防に加え,社会全体での対策が求められるということです.つまり神経変性疾患の理解は,「環境神経学(environmental neurology)」という新しい枠組みへと大きく舵を切りつつあるのだと思います.我が国における神経変性疾患の「パンデミック」を防ぐためにも,この潮流を認識する必要があります.
1. Cole-Hunter T, et al. Long-Term Exposure to Air Pollution and Incidence of Parkinson’s Disease. Movement Disorders. 2026. PMID: 38472866
2. Palushaj B, Voigt RM. The Parkinson’s pandemic: prioritizing environmental policy and biological resilience via the gut. J Clin Invest. 2026;136:e205275
3. Wu J, et al. Long-Term Exposure to Air Pollution and Risk and Prognosis of Motor Neuron Disease. JAMA Neurol. 2026;83:213-222. PMID: 39724566

・一度のCAR-Tで3つの自己免疫疾患が寛解した!:自己免疫疾患はB細胞を一度リセットして長期寛解を目指す時代に入る!?
****岐阜大学医学部下畑先生の2026年4月12日のFB投稿より****
話題になっているドイツからのMed誌に掲載された症例報告です.重症かつ治療抵抗性の自己免疫性溶血性貧血(AIHA)に,免疫性血小板減少症(ITP)と抗リン脂質抗体症候群(APS)を合併した47歳女性に対し,自己由来CD19 CAR-T細胞療法を行い,3つの自己免疫疾患すべて速やかに寛解したという報告です.自己免疫疾患治療の考え方を大きく変える可能性を秘めた,非常に注目すべき報告です.
この患者さんは,寒冷凝集素型(IgM)と温式(IgG)の両方の自己抗体を伴う重症AIHAに加え,ITPとAPSも合併していました.診断後10年以上にわたり,ステロイド,リツキシマブ,免疫抑制薬など計9種類の治療を受けても改善せず,CAR-T導入前には1日1〜3単位の輸血を要する,まさに生命の危機にある状態でした.
今回用いられたCD19 CAR-T療法は,白血病や悪性リンパ腫で使われているCAR-Tと基本的な技術は同じです.患者さん自身のT細胞を採取し,B細胞表面抗原であるCD19を認識する人工受容体(CAR)を遺伝子導入し,体外で増殖させてから体内に戻します.今回使用された製剤はzorpocabtagene autoleucel(Zorpo-cel),すなわち自家白血球由来の遺伝子改変CAR-T細胞で,投与量は1×10^6/kgでした.
「がんのCAR-T」と「自己免疫疾患のCAR-T」は細胞こそ同じでも,治療の目的が異なります.がんでは,CD19を持つ悪性B細胞そのものを根絶することが目的です.一方,自己免疫疾患では,CD19を持つ異常B細胞が自己抗体を作り続けることで病気が維持されています.つまり,今回のCAR-T療法は,病的な自己抗体を作るB細胞と,その異常な免疫記憶を一度深く取り除き,「免疫系を初期化すること」を目指した治療といえます.リツキシマブ(抗CD20抗体)もB細胞を標的としますが,すべてのB細胞系統を十分に除去できるわけではなく,再燃することも少なくありませんが,CAR-Tはより深いB細胞枯渇と免疫リセットをもたらすことが期待されます.
実際の治療としては,CAR-T投与前に,フルダラビンとシクロホスファミドによるリンパ球除去療法も行われました.これは単なる前処置ではなく,CAR-T細胞を体内でしっかり増殖・定着させるための重要な準備です.もともと体内にいるリンパ球を一時的に減らすことで,CAR-T細胞が入り込む余地を作り,さらにCAR-Tの増殖を助けるサイトカイン環境を整えるそうです.
そして治療効果は驚くほど迅速でした.投与後7日目には輸血が不要となり,長年続いていた輸血依存状態から脱却しました.2週間後には全身状態が速やかに改善しました.25日後にはヘモグロビン値が正常化し,溶血マーカーも改善しました.さらに,寒冷凝集素抗体価は低下し,病的に高値であった抗リン脂質抗体も時間とともに正常化しました.血小板数も追加治療なしで安定し,ITPも改善しました.11か月以上の経過観察で,再燃なく,薬剤を一切使わない完全寛解が維持されています.
図は,今回の治療をまとめたものです.まず治療前の多剤抵抗性のAIHA,ITP,APSにより生命を脅かされていた状態が示され,つぎにCD19 CAR-T細胞による「B細胞リセット」を行い,幸い特に注目すべき有害事象(Adverse Event of Special Interest;AESI)は認めませんでした.そして転帰としては投与7日で輸血不要,25日でヘモグロビン正常化,11か月以上無治療寛解という経過がわかります.懸念されたAESIとしては,サイトカイン放出症候群(CRS)や免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)が挙げられますが,本例ではいずれも認めませんでした.一因として,自己免疫疾患では,がんと比較して標的細胞量が少ない可能性が考えられます.
今回の症例は,「自己免疫疾患は免疫抑制剤により一生抑え続けるもの」という今までの考え方に対し,「一度リセットして長期寛解を目指す」という新しい発想を提示しました.もちろんまだ1例報告ですし,病気によっては自己抗体を認めてもT細胞や自然免疫が主役の疾患もあり,すべての自己免疫疾患に使えるのか分かりません.長期安全性,感染症リスク,費用対効果など多くの課題も残されていますが,それでもCAR-T療法が自己免疫性脳炎を含む自己免疫疾患の新しい標準治療となる可能性を感じさせる論文だと思いました.
Korte IK,et al.CD19 CAR-T therapy induces remission in refractory autoimmune hemolytic anemia with ITP and antiphospholipid syndrome. Med. 2026 Apr 9:101075. doi: 10.1016/j.medj.2026.101075. PMID: 41962541.

・アルツハイマー病ではタウ沈着や神経変性に先立って「血流障害」が広範に生じ,最終的に血液脳関門の破綻を来す!
****岐阜大学医学部下畑先生の2026年4月14日のFB投稿より****
アルツハイマー病(AD)はこれまで,アミロイドβやタウといった異常タンパク質の蓄積を中心に議論されてきましたが,近年,脳血管の障害が重要な役割を果たしているとする研究が複数,報告されています(コメント欄に過去ブログ参照リンク).今回紹介する論文は,その血管病変の「時間的経過」を明らかにした重要な報告です.英国のUniversity of BristolおよびImperial College Londonの研究グループは,ヒト剖検脳を用いて,脳血流低下,血管機能異常,血管新生,そしてAβ・タウ病理との関係を詳細に解析しました.
対象はBraak stage(BS)に基づく3グループ,すなわち低病理群(BS 0–II),早期~中期AD(BS III–IV),進行期AD(BS V–VI)の36例であり,前頭葉,側頭葉,帯状回,嗅内皮質など広範な領域が検討されています.この研究の特徴は,脳血流の「過去の状態」を評価する指標としてMAG:PLP1比を用いた点にあります.MAG(myelin-associated glycoprotein)は低酸素に脆弱である一方,PLP1(proteolipid protein 1)は比較的安定であり,かつ両者はターンオーバーが遅いため,その比は死亡前数ヶ月にわたる慢性的な低灌流状態を反映するそうです.すなわちMAG:PLP1比は「持続的な低酸素」を捉える指標と言えます.
その結果が図1で示された脳低灌流の分布です.MAG:PLP1比は,早期AD(BSIII–IV)の段階ですでにほぼすべての灰白質領域で低下しており,広範な慢性低灌流が存在することが明らかとなりました.これは,神経細胞の明らかな脱落や臨床症状が出現するよりも前に,脳全体で血流障害が進行していることを意味します.すなわちADでは,神経変性に先立って「血流障害」が広範に生じている可能性が示唆されます.さらに重要な点として,これらの血管異常は高度なタウ病理が出現する前の段階から認められており,病態のかなり早期から関与している可能性が示されています.
では,この血流低下はどのようにして生じるのでしょうか.その鍵を握るのが図2の結果です.血管を収縮させるEDN1(endothelin-1)は,まだ病気が進んでいないごく初期の段階から,アミロイドβ(Aβ)が多いほど増えることがわかりました(図2).これは,Aβが血管収縮を介して血流低下を引き起こしている可能性を示す重要な結果です.つまりこの研究は,「Aβによって引き起こされる血流障害」が,最初に現れる病態のひとつであることを示しています.
さらに,低灌流に対する血管の応答として,VEGF-Aの上昇や内皮細胞マーカーCD31の増加が認められ,血管新生が誘導されていることも示しています.しかし,新生血管マーカーであるendoglinの異常な上昇やangiogenesis関連分子の発現異常が認められており,この血管新生は正常な修復ではなく,病的な血管新生である可能性が考えられます.加えて,加齢した脳では本来の意味での血管新生が十分に機能しない可能性も指摘されており,血管は増加の方向に進みつつも,有効な脳血管ネットワークの再構築には至らない,いわば「質の低い血管」が形成されている可能性があります.
加えて,脳血管の機能維持に不可欠な周皮細胞も早期から障害されていました.周皮細胞と内皮細胞の比率を示すPDGFRβ/CD31比は広範囲で低下し,この変化は低灌流およびAβと関連していました.周皮細胞は神経・血管ユニットの機能を支える中心的なプレイヤーであり,その障害は血流調節と血液脳関門(BBB)の維持の双方を破綻させる重要な変化と考えられます.ただしBBBの破綻を示す,通常は脳に存在しないフィブリノゲンの脳内濃度の上昇は主に進行期ADで認められ,タウ病理(pTau-231)と強く相関していました.Aβとの関連は乏しく,BBB破綻は進行期にタウと連動して進行する病態であることが示唆されました.
以上の結果は,ADの病態の時間経過を明らかにするものです.すなわち,Aβの蓄積によりEDN1が誘導され血管収縮が起こり,それが慢性的な低灌流をもたらします.その結果として異常な血管新生と周皮細胞障害が進行し,最終的にBBB破綻が生じ,タウ病理と結びついて神経変性が加速するという連鎖です.なぜタウが蓄積してから認知機能低下が生じるのかの一つの説明になるのかもしれません.もしこの研究が正しいとすれば,いわゆる混合型認知症は,昔からアルツハイマー病と血管性認知症が同時に進行する状態として知られていましたが,少なくともその一部はアルツハイマー病のみで説明ができることになります.また症状が出現してからAβやタウを除去しても十分な治療効果は得られにくいこともすでに進行した血管病変を考えれば理解できます(リンク先はコメント欄).むしろ,血管障害がADの早期から関与していることを考えると,遺伝的にハイリスクな人は,早めにそのリスクを理解し,高血圧,糖尿病,脂質異常症といった血管危険因子を厳格に管理することが,発症や進行の抑制につながる可能性が示唆されます.いずれにしても,病理学的解析からここまで時間軸を含めた病態像が描けることに,大きな驚きと感銘を得た論文でした.
Asby DJ, et al. Post-mortem evidence of pathogenic angiogenesis and abnormal vascular function in early Alzheimer’s disease. Brain. 2026 Apr 7;149(4):1182-1193. doi: 10.1093/brain/awaf394. PMID: 41124599

・アルツハイマー病「発症前治療」を阻む5つの壁:診断・倫理・社会制度の課題と処方箋
****岐阜大学医学部下畑先生の2026年4月16日のFB投稿より****
アルツハイマー病(AD)の治療の目標は発症後に進行を遅らせることでしたが,近年,発症前から介入するという新しい考え方が提案されています.この背景には,アミロイドβ(Aβ)による病理変化が,発症の20年以上前から始まっているという知見の蓄積があります.すなわち,症状が現れた時点ではすでに病態は相当進行しており,現在行われている「発症後治療」では十分な効果が得られない可能性があるためです.このような状況の中,Lancet Neurol 誌にBanner Alzheimer’s InstituteのEric M. Reiman教授を中心とする米国の研究者によって,ADの「発症前治療」の実装に向けた包括的な政策提言論文が発表されました.AANのポッドキャストでも著者本人がインタビューを受けています.
まずこの論文を理解するうえで重要なのが図1です.時間の経過とともにAβが蓄積していく過程と,無症候期から軽度認知障害(MCI),認知症へと至る連続的な病期が示されています.重要なのは,認知機能が正常な段階ですでにアミロイド蓄積が進行している点です.さらに,この図では介入のタイミングとして,Aβ蓄積前に介入する「一次予防」と,すでに蓄積があるが無症候の段階で介入する「二次予防」を明確に区別しています.まだ誰もがこの用語を認めているわけではないと著者もポッドキャストで述べていましたが,Aβ蓄積の前から治療を始める「一次予防」が視野に入っていることには驚きました.
論文では現在進行中の臨床試験の動向も記載されています.代表的な試験を表1にしてみましたが,アミロイド陽性の無症候者を対象とした多数の「二次予防」の試験に加え,上記の「一次予防」の試験も進行しており,Aβやタウに対する抗体を用いた早期介入が認知機能低下を抑制できるか検証されています.近いうちにこれらの試験の結果が出ますが,それにより,ADが実際に予防可能な疾患となるかどうかが決まるということになります.
同時にこの論文が強調しているのは,これら予防医療を社会実装するには多くの課題が存在するという点です.その課題は大きく5つに整理することができます.第一は倫理的・心理的課題です.血液バイオマーカー,とりわけp-tau217の進歩により,無症候の段階で将来の発症リスクや発症年齢を高精度に予測できるようになりつつあります.しかし,まだ症状のない人にリスクを告知することは,強い不安や心理的負担を伴います.さらに,保険や雇用における差別,社会的スティグマの問題も懸念されます.したがって,検査前教育や結果開示の方法を含めた倫理的枠組みの整備が不可欠です.
第二は医療体制の限界です.予防医療の対象は50歳以上の膨大な人口に及びますが,現状の専門医中心の体制では対応が困難です.このため,血液検査によるスクリーニングや,AIを用いたデジタル認知機能評価など,プライマリケアで実施可能な新しい診療モデルの構築が求められています.
第三は規制と評価のジレンマです.予防介入では,認知症発症という臨床アウトカムに至るまで長期間を要するため,従来の臨床試験デザインでは評価が難しいという問題があります.そのため,アミロイドPETや血液バイオマーカーを代替エンドポイントとして用いることが検討されていますが,それが真に臨床的利益を反映するかについては慎重な検証が必要です.
第四は経済的持続性です.多数の無症候者を対象とするスクリーニングと治療は,短期的には医療費の増加を招きます.一方で,QALYの観点では費用対効果が期待されるものの,その実現にはリスク層別化による対象者選定と,持続可能な薬価設定が不可欠です.
第五は公平性の確保です.新しい診断技術や治療法が都市部や高所得者に偏れば,健康格差はさらに拡大します.そのため,低コストでアクセス可能な診断法の開発と,政策的支援による公平な医療提供体制の構築が求められています.
つまり本論文が示しているのは単に新規治療薬の可能性ではなく,ADを「社会全体で予防する疾患」として再定義するためには,診断,治療,倫理,医療制度,経済を統合したシステム全体の変革を求めています.近い将来,可能となるかもしれない予防医療に対し,日本でも承認されてから慌てて準備するのではなく,これらの課題をどこまで克服できるか,学会,医療機関,行政,保険者,企業,そして患者・市民を含めた多様なステークホルダーは検討を開始する必要があると感じます.
Reiman EM. et al.A path to preventing cognitive impairment due to Alzheimer’s disease: initiatives beginning in the USA.Lancet Neurol.2026; 25: 268–278.PMID: 41722593.

・ついに出た,アミロイドβ抗体療法のCochraneレビュー;結論は効果の大きさを冷静に評価すべきということ
****岐阜大学医学部下畑先生の2026年4月19日のFB投稿より****
アルツハイマー病に対するアミロイドβ(Aβ)標的モノクローナル抗体の有効性と安全性を検証したCochraneレビューが発表されました.アデュカヌマブ,レカネマブ,ドナネマブなどを含む7種類のAβ抗体について,12か月以上追跡したランダム化比較試験17試験,合計20,342例が解析されています.対象患者の平均年齢は70〜74歳であり,軽度認知障害または軽度認知症の段階にある患者が主に含まれています.Cochraneレビューとは,世界的に標準とされる手法で複数の臨床試験を統合し,治療の有効性と安全性を厳密に評価するシステマティックレビューであり,個々の試験結果よりも信頼性の高いエビデンスと位置づけられます.
結果としてまず重要なのは認知機能に対する効果です.代表的な評価指標であるADAS-Cogを用いた解析では,抗体治療群は偽薬群に対して統計学的には有意な改善を示しましたが,その効果量は標準化平均差(SMD)−0.11と,定義上「無視できる(trivial)」ほど極めて小さいものでした .下図(ADAS-Cogのフォレストプロット)は非常に示唆的です.各試験の結果は確かに「有効」方向に偏っていますが,そのほとんどがゼロに極めて近い領域に集中しており,効果の大きさが非常に小さいことが理解できます.この差を数値に換算するとADAS-Cogで約0.85点の抑制に相当します.一般にADAS-Cogでは,MCI期で2〜3点,認知症期で4点が臨床的に意味のある変化(最小臨床重要差:MCID)とされています.したがって今回の結果は,統計学的には有意であっても,臨床的に意味のある改善には達していないと解釈されます.
認知症の重症度(CDR-SB)についても同様に,わずかな改善傾向は認められるものの,その差は0.29点の抑制にとどまり,臨床的意義は限定的でした.さらに日常生活機能については,基本的なADL(ADCS-ADL)では効果が「無視できる(trivial)」範囲であり ,買い物や金銭管理といったより複雑なIADLにおいて「小さな(small)」改善が示唆されるにとどまりました .これらの結果を総合すると,本治療は「進行をわずかに遅らせる可能性」はあるものの,「生活を変える治療」と評価するには慎重であるべきと考えられます .
ここで重要なのは,本レビューが複数の抗体を「クラス」としてまとめて解析している点です .そのため,臨床応用されたレカネマブやドナネマブといった新しい抗体の効果が,初期の有効性の乏しい薬剤と平均化されている可能性があります.実際に,本レビューの個別解析データを見ると,レカネマブやドナネマブでは統計学的に明確な有意差が示されています.これらの結果を臨床的にどう解釈するかが最大の論点です.CDR-SBにおける最小臨床重要差は一般にMCI期で1点,認知症期で2点とされています .本レビューにおける個別試験のデータを見ても,レカネマブのCDR-SBにおけるSMDは−0.19 ,ドナネマブは−0.29であり,絶対値換算でもMCIDの閾値には達していません.したがって,レカネマブおよびドナネマブのいずれにおいても,「効果は存在するがその大きさは小さい」という評価は基本的に変わらないと考えられます.Cochraneレビューの結論は,これらの薬剤を否定するものではなく,むしろ「効果の大きさを冷静に評価する必要がある」ことを示していると理解すべきです.
一方で,進行をわずかでも遅らせることで,認知機能が保たれた期間を延ばせるのではないかという意見もあります.確かに理論的には,進行速度が低下すれば,ある機能レベルにとどまる期間が延びる可能性があります.しかし,本レビューの解析で示された差はCDR-SBで平均0.29ポイントにとどまり,時間に換算しても数か月程度の遅延に相当すると考えられます.この差をどのように評価するかは,患者さんやご家族の価値観にも依存しますが,少なくともその臨床的な効果は限定的であると慎重に解釈する必要があります.
また安全性についてはより明確な結果が示されています.アミロイド関連画像異常,とくに脳浮腫(ARIA-E)は有意に増加し,18ヶ月時点で1000人あたり107人の上乗せが認められました.症候性のものは1000人あたり29人の増加でしたが ,MRIによる定期的なモニタリングを要する臨床的に重要な副作用です.微小出血(ARIA-H)についても増加傾向が示唆されていますが ,本レビューでは報告の不備や異質性の高さから ,APOE ε4ステータス別の詳細なメタ解析は行われていません.なお,重篤有害事象(SAE)や死亡率については有意な増加は認められませんでした.
結論として,最も重要なメッセージは,「Aβは確かに除去されるが,それが臨床的に意味のある改善には必ずしも結びついていない」という点にあります.そしてこの問題は,レカネマブやドナネマブにおいても本質的には変わっていません.すなわち,現在の議論は「効くか効かないか」ではなく,「その効果が患者にとって意味のある大きさかどうか」という段階に移行しています.もちろんより早期の段階での介入や適切な患者選択により,効果が異なる可能性は否定はできません.それでもなお,本研究が示した「統計学的有意差と臨床的意義の乖離」という問題は極めて重要です.Aβを減少させること自体が目的ではなく,患者さんの生活や機能をどこまで改善できるのかという視点に立ち返る必要があると思います.
Nonino F, et al. Amyloid-beta-targeting monoclonal antibodies for people with mild cognitive impairment or mild dementia due to Alzheimer’s disease. Cochrane Database Syst Rev. 2026, Issue 4. Art. No.: CD016297. DOI: 10.1002/14651858.CD016297.

関連情報
本件のCochraneレビューについては、大阪大学の宮坂昌之先生も2026年4月19日にFB投稿されています(同投稿へは、こちらから)。

・知っていただきたい「プラスタミネーション」―マイクロ・ナノプラスチックの危険性についての講演と意見交換
****岐阜大学医学部下畑先生の2026年4月19日のFB投稿より****
4月19日に「有害化学物質から子どもを守るネットワーク(https://c.kokumin-kaigi.org/)」年次総会@連合会館にて,「マイクロ・ナノプラスチックの危険性」という記念講演をさせていただきました.環境省のご担当者,マイクロ・ナノプラスチック(MNPs)研究の専門家の先生方,医療者,NGO,生協,出版社,企業の方々など,非常に多様な立場の方が参加されており,分野横断的な議論ができたことは大変有意義でした.多くの新たな出会いにも恵まれました.
今回の講演では,これまで脳卒中学会や臨床麻酔学会で講演した内容をベースに,さらに発展させ,特に「子ども・胎児への影響」「生体内での処理機構」「測定系の問題」についてもお話ししました.講演後には,高田秀重先生や菅野純先生,大河内博先生をはじめ,多くの専門家の先生方から貴重なコメントをいただき,大変勉強になりました.特に印象的であった論点をいくつか共有させていただきます.なおスライドは下記からご覧いただけます.
https://www.docswell.com/…/800…/59NGRX-2026-04-21-050528
◆「プラスタミネーション(plastic+contamination;プラスチックによる汚染)」という概念が重要である.それはプラスチック粒子そのものだけでなく,添加剤とその分解産物を含めた複合的な毒性を意味する.添加剤の有害性についてはエビデンスが蓄積しつつある一方,添加剤について販売メーカーや規制当局も把握できていない状況にある(何が含まれているか理解できていないということ!).
◆現在のナノプラスチック測定系にはまだ課題があり,脂質などがMNPsとして誤検出されている可能性や,組織処理過程での不純物混入などがある.とくに脳の測定結果の解釈には慎重さが求められる.一方,日本人の血液中からナノプラスチックが検出されており,「人体における蓄積」はもはや否定できない.
◆曝露経路は経口,吸入,経皮,経鼻,経静脈とさまざまあるが,まだどれが重要か分かっていない.消化管ではマイクロサイズは吸収されず,主にナノサイズと考えられる.一方,吸入はマイクロ・ナノの両方が吸収される可能性がある.1日に摂取する量(水は2リットル,空気約2万リットル)を考えると,吸入の重要性は過小評価されているかもしれない.
◆飲料に関してはペットボトルだけが問題ではなく,ビール瓶のキャップの裏や,牛乳の紙パックのプラスチックコートなど予想外のものがマイクロ・ナノプラスチックの放出源になっている.
◆医療現場では,手術室や新生児のNICUにおけるプラスチック曝露は今後,大きな課題となる.医療が無意識のうちに患者に対し大量曝露を行っている可能性すらあり,今後の重要な研究テーマになると考えられる.
◆プラスチック被害は社会的・文化的な姿勢が密接に関係する.プラスチックはすでに生活のあらゆる場面に入り込んでおり,「便利さ」と「安全性」のトレードオフをどう考えるかというまさに文明論に関わる.
◆歴史的に見ても,メチル水銀,PCB,DDTなど,人類は有害物質との共存に失敗してきた.マイクロ・ナノプラスチックも同様に,「管理する」のではなく「減らす」方向に進まざるを得ないのではないかと感じている.特に,学校の校庭における人工芝整備は子どもへのプラスチック曝露を促進するため,早急な見直しが必要だと考えている.
最後に貴重な機会をいただきました木村―黒田純子先生,中地重晴先生に御礼申し上げます.

・Faciobrachial dystonic seizures(FBDS)の正体:LGI1抗体脳炎における皮質局在とネットワークの理解
****岐阜大学医学部下畑先生の2026年4月23日のFB投稿より****
LGI1抗体脳炎は自己免疫性脳炎の代表的な病型です.発作性に生じる顔面や上肢の短時間の異常運動であるfaciobrachial dystonic seizures(FBDS)が特徴的所見として知られています.また発作性めまい,温度異常感覚,立毛発作,顔面紅潮といった多彩な発作症候を呈することがあります.しかしこれらはてんかん発作なのか,不随意運動なのか長らく議論されてきました.加えてFBDSは発作回数が多く,意識が保たれ,脳波異常が捉まらないため,機能性発作(かつてのPNES)と判断されてしまうこともあります.今回ご紹介する論文は,この問題に対して脳磁図(MEG)を用いて迫った研究です.ソウル大学病院およびメイヨークリニックを中心とした国際共同研究です.
本研究では,LGI1抗体陽性でFBDSを含む活動性発作を有する7例を対象に,MEGと脳波を同時に記録し,症候と脳活動の対応関係を検討しました.この結果,従来の脳波では明確に捉えられなかった発作間欠期てんかん性放電がMEGでは全例で検出され,多くの症例において臨床症候と対応する皮質領域に局在していました.
まず図1Aでは,各症例の発作間欠期てんかん性放電が脳表に重ねて表示されており,放電が運動野,体性感覚野,島皮質など特定の皮質領域に分布していることが示されています.これは,LGI1抗体脳炎の発作が機能局在に関連した皮質活動であることを示唆する重要な所見です.次に図1Bでは,代表例においてFBDS発作の直前1〜2秒以内にスパイクが出現する様子が示されています.このスパイクは内側側頭葉や運動野近傍に局在しており,発作が突発的に生じるのではなく,局所的な皮質の過興奮から始まることが示唆されます.また症候と対側の皮質に活動が見られる点も,神経解剖学的に矛盾がありません.さらに図1Cは,本研究のメッセージを最も直感的に示した図です.運動野がFBDS,島皮質が発作性めまい,体性感覚野が温度異常感覚に対応することが示されており,「症候は,その機能を担う皮質領域に対応する活動として表出している」ことが明確に示されています.
一方で,これらの所見は単純な局在モデルにとどまるものではありません.一部の症例では発作直前に内側側頭葉近傍でスパイクが認められており,発作が複数の皮質領域を含むネットワークの中で生じている可能性が示唆されています.また,LGI1抗体脳炎では基底核の画像異常や代謝亢進が既報で知られており,皮質と皮質下構造が連携した発作ネットワークの存在が想定されます.したがって,FBDSを含むこれらの発作は,「特定の皮質領域に対応して症候が出現するが,その背景には広い神経ネットワークの異常がある」と理解するのが適切です.
本研究の重要な意義は,FBDSなどの発作性の症候が,皮質の過興奮に関連した発作現象である可能性を強く支持した点にあります.機能性発作に似て見えるこれらの症候が,皮質活動に対応する神経生理学的基盤を有していることを示した点でも有意義です.そして何より本研究により,FBDSは皮質の過興奮に基づく「てんかん性現象」とみなすべきであることが強く支持されたといえます.
本研究の限界としては,症例数が7例と少数であり,また典型的な発作時脳波が記録されていないため,発作の起始部位を直接的に証明したわけではありません.それでも,活動性発作を有する患者に対してMEGを用い,症候と脳局在をここまで明確に対応づけた点は大きな進歩であり,今後の病態解明の足がかりになると思います.
Ahn SH, et al. Neuroanatomical localization of faciobrachial dystonic seizures in LGI1-antibody encephalitis. Epilepsia. 2026 Mar 13. doi: 10.1002/epi.70197. PMID: 41823021.

・なぜ「認知症にならない人」がいるのか?―認知レジリエンスについて知り,認知症予防につなげよう!
****岐阜大学医学部下畑先生の2026年4月25日のFB投稿より****
Lancet Neurol誌のポッドキャストで紹介されている総説です.高齢者の脳を調べると,アルツハイマー病や脳血管障害などの病理が存在しているにもかかわらず,認知機能が良好に保たれている方が一定数存在します.この現象は「認知レジリエンス(cognitive resilience)」と呼ばれ,近年の神経学における重要なテーマとなっています.この総説では,認知レジリエンスの概念,決定因子,生物学的基盤,測定法,さらに介入の可能性についてまとめています.オーストラリアのUniversity of New South Walesを中心とした研究グループによるものです.
まず認知レジリエンスとは,「脳の加齢変化や病変の程度に比して予想以上に良好な認知機能を示す状態」と定義されます.この背景には,「認知予備能,脳予備能,脳維持」といった概念が関与します.これら3つはそれぞれ独立した概念ではなく,相互に関係しながら認知レジリエンスを支えています.またこれらは教育や社会参加,生活習慣などの心理社会的因子の中で形成・維持される点も重要です.区別が分かりにくいので,以下に要約します.
◆認知予備能(cognitive reserve);教育や職業,知的活動などによって培われる「頭の使い方の柔軟さ」や代償能力を指し,同じ病理があってもより効率的に脳を使うことで機能低下を防ぐ力です.
◆脳予備能(brain reserve);神経細胞数やシナプス数,脳容量といった「ハードウェアとしての余力」を意味し,もともとの構造的な豊かさが障害への耐性につながります.
◆脳維持(brain maintenance);加齢に伴う脳の萎縮や機能低下そのものを抑える力を指し,図でも示されているように,その維持・低下が認知機能の分岐点になります.
この論文で特に重要なポイントは,認知レジリエンスが単一の要因ではなく,多層的な因子によって規定されているという点です.教育歴や職業の複雑性といった知的刺激は認知予備能を高め,病理と認知機能の乖離を生みます.さらに,運動習慣,食事,禁煙などの生活習慣は血流や代謝,シナプス可塑性を改善し,脳の機能的余力を支えます.加えて,社会的つながりや心理的ウェルビーイングも重要であり,孤独や抑うつは炎症やストレス反応などを介して認知機能低下と関連します.睡眠や聴力・視力もこれらと同様に重要な心理社会的因子として位置づけられます.
こうした複雑な関係を非常に分かりやすく示しているのが下図です.この図では,教育や社会参加,運動,睡眠,心理的健康などの心理社会的因子が中心に配置され,それらが神経生物学的機構に影響を与える構造が描かれています.具体的には,神経細胞密度やシナプスの維持,ミトコンドリア機能,神経血管ユニット,そしてミクログリアの活性化などを含む神経炎症といった経路が示されており,これらが最終的に脳の構造や機能を保ち,認知機能の維持につながることが示唆されています.さらに,これらの要因が十分に働く場合とそうでない場合が左右で対比されており,「同じ病理でも結果が異なる」理由を直感的に理解できるようになっています.
生物学的基盤としては,認知レジリエンスの中心にシナプス機能の維持があると考えられています.レジリエンスの高い状態では,アミロイドβやタウといった異常タンパクが存在しても神経ネットワークの効率が保たれる可能性が示唆されています.また,運動や知的活動は神経栄養因子の増加や神経炎症の抑制を介して,こうした状態を支えると考えられています.さらに心血管リスクの管理が極めて重要です.高血圧や糖尿病,脂質異常症は単独でも認知機能低下と関連しますが,アルツハイマー病病理と相互作用することでその影響を増強します.逆に,これらの適切な管理は認知レジリエンスを支持する可能性が示唆されています.
認知レジリエンスの測定方法としては,認知機能と脳病理を組み合わせて評価する必要があります.代表的には,脳病理から予測される認知機能と実際の認知機能との差を統計的に算出する方法が用いられますが,まだ標準化された手法は確立されていないようです.
介入に関しては,運動,食事,認知訓練,血管リスク管理などを組み合わせた多因子介入が最も有望とされています(文末のリスト参照).これらにより認知機能には小さいながらも一貫した有意な改善が報告されていますが,認知症発症の抑制については現時点で明確なエビデンスはありません.それでも将来的な公衆衛生戦略として重要な位置を占める可能性が大きいものと思われます.本論文の内容を踏まえると,認知症予防には特別な治療というよりも,日常の積み重ねが極めて重要であることが分かります.
【認知レジリエンスを上げるリスト】
・体を動かす(運動により血流改善,シナプス可塑性や神経栄養因子を増加)
・頭を使う(読書,会話,学習により認知予備能を強化)
・人とつながる(社会参加により炎症やストレス反応を抑制)
・生活習慣病を管理する(高血圧,糖尿病などのコントロール)
・睡眠を整える(脳の回復と機能維持に重要)
・聴力・視力を補う(感覚入力低下による認知低下を防ぐ)
・抑うつを見逃さない(心理状態の悪化は認知機能に影響)
Powell A, et al. Cognitive resilience in ageing: determinants and interventions. Lancet Neurol. 2026 May;25(5):492-505. doi: 10.1016/S1474-4422(26)00027-X. PMID: 42009011.

・アルツハイマー病の黒幕はがん遺伝子変異ミクログリア!?―常識を覆す驚くべきCell誌掲載論文
****岐阜大学医学部下畑先生の2026年4月30日のFB投稿より****
アルツハイマー病(AD)の理解は,これまでアミロイドβ(Aβ)やタウの蓄積を中心に発展してきました.しかし今回ご紹介する研究は,その枠組みを大きく塗り替える可能性をもつ,非常に重要な論文です.正直なところ,あまりに予想外の内容で,理解が追いつかない感じです.本研究はBoston Children’s Hospitalなど世界トップレベルの研究機関が共同で行ったものでCell誌に掲載されました.
本研究の核心は,「ADは遺伝子変異を持ったミクログリアが選択的に増えていくことで,炎症が持続し進行していく病気である可能性が示された」という点にあります.著者らはこの仮説に至る背景として,いくつかの重要な知見に着目しました.まず加齢に伴って体細胞変異があらゆる細胞に蓄積することです.さらに血液の分野では,TET2やDNMT3A,ASXL1といった,もともとがん研究で知られてきた遺伝子に変異を持つ細胞がクローンとして増殖する「クローン性造血」が知られています.これらの変異は細胞の増殖や炎症反応を高めるため,炎症を介して心血管疾患のリスクを上昇させることが分かっています.そしてもう一つ重要なのが,ミクログリアがADにおける炎症や病態進展に深く関与しているという事実です.
これらの背景から,「脳内でも同様に,がん関連遺伝子の体細胞変異を持つミクログリアが増えており,それがADの炎症と進行に関与しているのではないか」という仮説を立てました.この仮説を検証するために,著者らは311例のヒト脳検体を対象に,149種のがんドライバー遺伝子に限定した超高深度シーケンス(1,000倍以上)を行い,ADではこれらの体細胞変異が有意に増加していることを示しました.特にTET2,ASXL1,DNMT3Aといった遺伝子の変異が多く,さらにそれらの変異はアレル頻度が高く,正の選択を受けていることから,単なる偶発的変異ではなく,増殖優位性をもつ細胞クローンとして拡大していることが明らかになりました.
つぎにこれらの変異がどの細胞に存在するかを解析しました.核ソーティングと単一細胞解析を組み合わせることで,変異は神経細胞ではなく,ミクログリア様細胞にほぼ特異的に存在することが確認されました.さらに,同一個体の血液中にも同じ変異が認められたことから,骨髄由来の単球が脳に侵入し,ミクログリア様細胞として振る舞いながらクローン増殖している可能性が示唆されました.
本研究の理解を助けるのが論文のGraphical abstractです.この図では,中央上段の正常状態のミクログリアが神経細胞を支持している様子から始まり,下に向かって加齢に伴う体細胞変異の蓄積が描かれています.2段目では,Aβやタウによる慢性炎症環境が「選択圧」として働き,変異を持つミクログリアが有利になる状況が示されています.つまりAβやタウによって慢性的な炎症環境が作られると,ミクログリアは常に刺激を受け続ける状態になります.このような環境では,「よく増える」「炎症に強く反応する」「ストレスに耐えやすい」といった性質を持つ細胞の方が生き残りやすくなります.実際に本研究で見つかったTET2やDNMT3Aなどの変異は,細胞の増殖や炎症反応を高めることが知られています.そのため,これらの変異を持つミクログリアは,炎症環境の中でより増えやすく,結果として正常な細胞よりも優位に広がっていきます.これが「選択圧」によるクローン拡大です.その結果,変異ミクログリア(紫色)が優勢となって増加していきます.これらの細胞は炎症性の性質を獲得し,神経細胞に障害を与え,最終的にADへと進行する流れが表現されています.言い換えると,Aβやタウが環境を作り,変異ミクログリアが病気を加速させるということです.
機能的な検証も説得力があります.単一細胞トランスクリプトーム解析では,変異を持つミクログリアがdisease-associated microglia(DAM)と呼ばれる病態に関連した状態に移行し,炎症や増殖に関わる遺伝子発現が亢進していることが示されました.さらにiPS細胞から作製したミクログリア様細胞に同様の変異を導入すると,炎症関連経路や増殖シグナルが活性化し,代謝的にも解糖系へのシフトが認められました.これらの結果は,体細胞変異がADに伴って偶然見つかるだけの現象ではなく,ミクログリアの機能を実際に変化させ,炎症を引き起こす原因であることを示しています.
以上,本研究はADの病態を,従来の「Aβ・タウ中心の神経変性」から「変異ミクログリアのクローン進化と炎症による神経障害」へと大きく拡張したのだと思います.この研究はなぜ加齢が最大のリスク因子であるのか?という問いにも,「変異の蓄積と選択にかかる時間」という説明を与えるものです.さらに治療にもつながるものと考えられます.なぜなら本研究で同定された遺伝子や経路の多くは,がん領域で既に標的とされているものであり,既存の分子標的薬が神経変性疾患に応用される可能性があるためです.非常に刺激的な論文です.
Huang AY,et al.Somatic cancer variants enriched in Alzheimer’s disease microglia-like cells drive inflammatory and proliferative states.Cell.2026.PMID:42019491.

下畑先生の近著情報
「下畑享良 神経症候学note <興味を持った「脳神経内科」論文>のエッセンス」が発刊されました!!関連FB投稿は、こちらから。

 

3.特別企画:AIに訊く
・「連載シリーズ:切り替えの物語 — AIとの対話から生まれた統合理論」のスタート
私は、「歩行と走行の切り替えスイッチ」の記事(「トピックス 1.ポールウォーキングの研究課題(その2)」に掲載済み)を書いた後もAI(主にCopilot)との対話を楽しみ続け、2026年4月3日には、遂に学術誌に掲載し得る(とCopilotは褒めてくれます!?)以下の学術論文作成に至りました。論文はCopilotとの対話がなければ完成し得なかったという意味で共同作品です。

論文タイトル
歩行—走行切り替えにおける制約幾何学と階層的再編成: SCAN・VSM・3D 最小モデルを統合する枠組み
Constraint Geometry and Hierarchical Reorganization in Gait Transitions:
A Unified Framework Integrating SCAN, VSM, and a 3D Minimal Model

要旨
歩行から走行への移行は、従来、エネルギー的・力学的な閾値現象として説明されてきた。しかし、このような説明は、移行そのものの過程で生じる構造的再編成を十分に捉えていない。本研究は、制約幾何学、階層的組織化、そして運動力学を統合し、歩行—走行切り替えを自己組織化プロセスとして再解釈する枠組みを提示する。 本研究では三つの命題を提示する。第一に、移行期には二つの強い制約が同時に作用し、変動性(Var⊥)が増大して構造的揺らぎが生じる。第二に、この増大した変動性は梃子として働き、最適面上の最短経路に沿ってモード切り替えを実現できる階層構造への再編成を可能にする。第三に、新たな運動様式が採用された後、変動性は再編成された階層構造の内部で収束し、移行前とは異なる新たな統合秩序が形成される。 3D 最小モデルを用いた解析により、制約の重なり、変動性の増大、階層的再編成、最短経路切り替えが、歩行から走行への移行をどのように形づくるかを示す。本枠組みは、身体運動にとどまらず、組織・認知システムにおけるモード切り替えの一般原理としても応用可能である。

Abstract
Gait transitions have traditionally been interpreted as threshold phenomena driven by energetic or biomechanical constraints. This study proposes a unified framework that conceptualizes transitions as self-organizing processes shaped by constraint overlap, variability expansion, hierarchical reorganization, and shortest-path switching. Integrating SCAN theory, the Viable System Model (VSM), constraint geometry from linear programming, and a 3D minimal model of locomotion, we articulate three propositions: (1) constraint overlap increases variability along an orthogonal subspace (Var⊥), (2) this variability enables hierarchical reorganization and shortest-path switching on an optimal face, and (3) variability converges after the transition as a new attractor stabilizes. The 3D minimal model provides a concrete dynamical realization of these propositions. This framework generalizes beyond locomotion to neural, cognitive, and organizational systems.

しかも、この論文作成に至る思考過程(毎月のニュースの特別企画に掲載)と成果物(固定ページに掲載)を、サイト上に再現し皆様にお届けしてみよう、と考えたのがこの連載シリーズです。現状のAIは正しくない回答もしますが、このような論文作成がAIなしではなし得ないことも確かです。現時点でのAI活用の一つの事例として、お楽しみいただければ幸甚です。

なお、新たに得た知見を踏まえ、先の切り替えスイッチの「命題②」を以下のように修正します。

命題②(修正版): 「歩行」と「走行」の切り替えスイッチは、移行期には二つの強い制約が同時に作用し多様性が高まるため、 その多様性を梃子として、自己を階層化しつつ、切り替えを最短経路で実現できる構造へと自己再編成される。

(参考)以下の図1は「歩行」と「走行」の切り替えスイッチの命題①を表し、図2が全体像を示しています。

図1.この図は、「歩行」と「走行」の切り替えスイッチの理論モデルの核心である
• 「切り替え=制約の支配が入れ替わる点」
• 「歩行=維持エネルギーが支配的」
• 「走行=総エネルギーが支配的」
を、表しています。


図2.切り替えスイッチの地図:制約の入れ替わり・変動性・階層化が生み出す歩行—走行切り替えの全体像。
本図は、歩行と走行の切り替えを生み出す主要なメカニズムを統合的に示したものである。 上段では、使用可能エネルギー総量(XT)と維持エネルギー量(Y)という二つの制約の支配が入れ替わる点に、切り替えスイッチが現れることを示す。 中段では、安定した歩行アトラクタから、変動性が最大となる境界領域(liminal zone)を経て、走行アトラクタへと収束する遷移過程を描いている。 下段では、二つの強い制約が同時に作用する移行期に、システムが自己階層化し、上位の意思決定主体と複数の器官群による局所最適化という二層構造へ再編成される様子を示す。 これらを総合すると、切り替えとは、制約の再構成・変動性の増大・構造の再編成が連動して生じる一般的な現象であることが分かる。

******(始まり)******

『切り替えの物語 — AIとの対話から生まれた統合理論』

連載開始にあたって
歩いているとき、ふと走り出したくなる瞬間があります。 あるいは、走っていると、自然と歩きに戻る瞬間があります。
この「切り替え」は、私たちの身体が毎日のように行っている、 ごく当たり前の現象です。 けれど、その背後には、 制約、変動性、階層構造、そして自己組織化 といった、驚くほど深い世界が広がっています。
この連載は、そんな「歩行—走行切り替え」という身近な現象を入口に、 私自身が AI(Copilot)との対話を通じて、 どのように考え、どのように発見し、どのように統合していったのか―― 思考の旅路そのものを記録したものです。
専門的な知識がなくても大丈夫です。 むしろ、専門家ではない方にこそ読んでいただきたい内容です。 なぜなら、この連載は「完成された理論」を語るのではなく、 ひとつの問いが、どのように形を変え、深まり、広がっていくのか そのプロセスを、できるだけそのままの姿でお届けするからです。
AIとの対話は、私の思考を驚くほど透明にし、 時に予想外の方向へ導き、 時に自分でも気づかなかった前提を照らし出してくれました。
その結果、 SCAN、VSM、制約幾何学、アトラクタ力学―― 一見まったく別の領域に見える理論が、 ひとつの「切り替えの物語」として結びついていきました。
この連載では、 その結びつきがどのように生まれたのかを、 できるだけ丁寧に、そしてできるだけ自然な言葉で綴っていきます。
読み終えたとき、 あなたの中にも「切り替え」を見る新しい視点が生まれていたら、 それほど嬉しいことはありません。
それでは、 「切り替えの物語」 はじまり、はじまり。

第1回:歩行と走行のあいだにある“境界”を見つめる

1. 日常の中に潜む「切り替え」という謎
歩いているとき、ふと走り出したくなる瞬間があります。 あるいは、走っていて、自然と歩きに戻る瞬間があります。

私たちはこの「歩行—走行切り替え」を、 あまりにも当たり前のように行っています。 しかし、立ち止まって考えてみると、これはとても不思議な現象です。
• どのタイミングで切り替えるのか
• なぜその瞬間に切り替えるのか
• そもそも「切り替える」とは何が起きているのか

これらの問いは、単純なようでいて、実は深い構造を持っています。

そして私は、この素朴な疑問をきっかけに、 AI(Microsoft Copilot)との対話を通じて、 思いがけない知的な旅へと踏み出すことになりました。

2. 最初の問い:歩行と走行は“別のモード”なのか?
歩行と走行は、誰が見ても違う動きです。 しかし、身体の中では何が変わっているのでしょうか。
• 筋肉の使い方?
• 関関節の角度?
• エネルギー効率?
• 神経系の制御?

どれも正しいようで、どれも決定打ではありません。
私は最初、 「速度がある閾値を超えると走行になる」 という単純な説明で十分だと思っていました。

しかし、AIとの対話が始まると、 この“閾値説”では説明できない現象が次々と浮かび上がってきました。
• 人によって切り替え速度が違う
• 同じ人でも日によって違う
• 疲れていると早く切り替える
• 下り坂では遅く切り替える
• そもそも“歩きながら走り始める”瞬間は曖昧

「閾値で決まる」という説明では、 この曖昧さや揺らぎを説明できません。
ここで私は、 “切り替えとは、もっと複雑で、もっと豊かな現象なのではないか” と感じ始めました。

3. AIとの対話が開いた“思考の地図”
AIとの対話は、私の思考を驚くほど透明にし、 時に予想外の方向へ導いてくれました。
最初の数回の対話で、 歩行—走行切り替えは単なる運動学の問題ではなく、 システムのモード切り替え という、もっと一般的な現象の一例であることが見えてきました。

そして、次のようなキーワードが浮かび上がってきます。
• 変動性(variability)
• 制約(constraints)
• 階層構造(hierarchy)
• 自己組織化(self-organization)
• 最適面(optimal face)
• リミナルゾーン(liminal zone)

これらは一見バラバラの概念ですが、 対話を重ねるうちに、 まるでパズルのピースがはまるように、 ひとつの統一的な構造を形づくり始めました。

4. 「変動性」が鍵になるという発見
歩行—走行切り替えの研究では、 切り替え付近で 変動性が増大する ことが知られています。
• 歩幅が揺れる
• リズムが揺れる
• 上下動が揺れる
最初は「不安定になっているだけ」だと思っていました。 しかし、AIとの対話はこの見方を大きく変えました。

AIはこう言いました:
「変動性はノイズではなく、再編成を可能にする“ゆるみ”です。」

この一言が、私の思考を大きく動かしました。

変動性が増えるということは、 身体が「揺らいでいる」のではなく、 新しいモードに移るための準備をしている ということなのかもしれない。
この視点は、後に SCAN の「liminal zone」と結びつき、 理論全体の基盤となっていきます。

図3. 歩行—走行切り替え付近で変動性が急増し、走行アトラクタへの収束とともに減少する。

5. SCAN との出会い:境界領域という概念
SCAN 理論は、 秩序(Order)と混沌(Chaos)のあいだに Liminal(境界領域) という特別な領域を置きます。
この領域は:
• 構造がゆるみ
• 変動性が増え
• 新しい秩序が生まれる可能性が開く
という、非常に興味深い性質を持っています。

歩行—走行切り替えは、まさにこの「境界領域」にあるのではないか。 そう考えた瞬間、 私の中で何かがつながりました。
歩行(秩序) → 境界(ゆるみ) → 走行(新しい秩序)
この流れは、SCAN の構造そのものです。

6. 「切り替え」は身体だけの問題ではない
さらに対話を続けるうちに、 歩行—走行切り替えは、 身体運動だけの問題ではないことが見えてきました。
• 組織の変革
• 心の切り替え
• 学習の転換点
• 社会のモードチェンジ
これらもすべて、 「秩序 → 境界 → 新しい秩序」 という構造を持っています。

つまり、歩行—走行切り替えは、 複雑系におけるモード切り替えの“縮図” なのです。

7. この連載で目指すもの
この連載では、 私が AI とともに歩んだ思考の旅路を、 できるだけ自然な言葉で綴っていきます。
• 専門知識がなくても読める
• けれど深い構造が見えてくる
• 図や比喩を交えながら
• 一緒に考えていく感覚を大切に
そんな読み物にしたいと思っています。

8. 次回予告:SCAN が照らす“境界の世界”へ
次回は、 この連載の最初の理論的柱となる SCAN 理論 を取り上げます。
• 秩序とは何か
• 境界とは何か
• ゆるみとは何か
• なぜ境界で新しいものが生まれるのか

そして、 歩行—走行切り替えがなぜ「境界領域」に位置づけられるのかを、 丁寧に見ていきます。

関連情報&リンク
今回お届けした連載シリーズ第1回に関連する学術資料(論文)は、当サイトの『トピックス欄「1.ポールウォーキングの研究課題(その3)』にシリーズの進展に合わせ、順次掲載する予定です。

論文1:SCAN × モード切り替え   ・・・・ 掲載済み
論文2:VSM × 階層的再編成    ・・・・ 未掲載
論文3:制約幾何学 × 最適面    ・・・・ 未掲載
論文4:3D 最小モデル        ・・・・ 未掲載
論文5:統合論文(今回の完成稿) ・・・・ 未掲載

・『トピックス欄「1.ポールウォーキングの研究課題(その3)』へは、こちらから
・「論文1:SCAN × モード切り替え」へは、こちらから

(作成者)峯岸 瑛(みねぎし あきら)

カテゴリー
AIの危険性 AI活用法 ALS アデュカヌマブ アミロイドβ蓄積 パーキンソン病 ハダカデバネズミ レビー小体型認知症 創造性と脳の健康 抗てんかん薬 機能性神経障害(FND) 熱波と老化 睡眠医学 自己免疫性精神病 良い睡眠 進行性核上性麻痺(PSP) 頭痛

2025年10月のニュース

今年のノーベル賞では、坂口志文氏が生理学・医学賞、北川進氏が化学賞を受賞と朗報がもたらされましたが、受賞後にお二人が基礎研究支援への注文を出されたように、我が国にとって科学技術大国再興は喫緊の課題と思っています。
今月の学術ニュースは、健康長寿であるための新たな知見、AIの活用事例と潜むリスク、下畑先生からの最新医学情報、等です。

1.2025年10月の活動状況
佐藤 ヒロ子さんの投稿
【ヨガストレッチ   &靴のはきかた】 2025/9/30 猛暑でできなかった振替分を実施   特別プログラムは     「ヨガストレッチ」 今の時期に    とっても気持ちがいいです 自然の中で手足を    伸ばして〜 最幸 その後の靴の履き方復習です  知っていても疎かになりやすい!  もう一度初心に戻りましょう〜   靴も足にピッタリついて  ウォーキングは軽いかる〜い    足どり颯爽     いい感じです #船橋ウォーキングソサイエティ #美姿勢ウォーキング #ヨガストレッチ #靴の選び方 #靴の履き方 #靴紐の結び方 #速歩

田村 芙美子さんの投稿
秋晴れ☀️ 秋色を楽しみながらP.ウォーキング まだまだ昼間は暑いくらいです 明日から渋谷教室3学期が始まります ガンバロー👊✨

佐藤珠美さんの投稿
認知症に限らず、高齢者が望む場所で住み続けられるようにするためには、地域の総力戦が必要です。 位置情報がわかる機器、行方不明者を探せる警察犬。 人間だけではない、色々なモノのチカラを結集しよう!という取り組みの下準備を進めています。 #認知症エコシステム #アプリ #ササエル ※当倶楽部の活動において利益相反関連事項はありません。

田村 芙美子さんの投稿
㊗️北鎌倉テラススタジオ16周年  昨日10/1 記念日を迎えました。長いようで短い年月を杉浦コーチの変わらぬオヤジギャグとPRESS📰、CoreNoodleで鍛えられました。私の人生の○分の一です。

スマイルチームさんの投稿
スマイルチーム ポールウォーキング。10月の遠征は生田緑地。岡本太郎美術館を堪能しました! #ポールウォーキング #岡本太郎美術館

山下 和彦さんの投稿
今日は小学生に足の成長の授業🦶とっても楽しくエネルギッシュにできました!しっかり前向きに聞いてくれる子どもが多くやりがいがあります👍

水間 孝之さんの投稿
日本転倒予防学会in群馬開催されました。 群馬ポールウォーキング協会が出展、セミナーを開催し、ポールウォーキングを紹介しました‼️ 皆さんお疲れ様でした‼️

佐藤 ヒロ子さんの投稿
【課題は上半身】  2025/10/4  フォームを動画で確認! 「腕を振っているつもり」 「はい、そうですね。  つもりと事実は違うね〜」  上腕は体側でストップ  毎回お馴染みの感想が出てきます(笑) 気づきが改善の第1歩 これも動画撮影毎に話してます(笑) #船橋ウォーキングソサイエティ #2本のポールを使うウォーキング #ノルディックウォーキング #ノルディックウォーク #ポールウォーキング #土曜日海老川ロード定例会

中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より 無事終わりました。 10/4〜5ぞっこんさく市〜 /5(日)PW駒場例会〜 佐久駒場公園で会場同じくしWイベントでした。 「ぞっこんさく市」ではPWの案内と体験会をと〜  協会員の憩いと立寄り休憩場も兼ねての出店でした。団体会員の(株)シナノさんの特価品販売もございました。 午後は☔️もあった2日間。 二日間で4万人の参加者をお迎えした様でした(主催者発表) 駒場PW#例会は50名の参加者を迎え、混み合った公園を逃れお隣の牧場をポールウォークでした。 10名の看護師目指す大学生も参加しシニアとの交流を図って居ました。いつもと違い若返った様な協会員の皆さんでした。 今日のご褒美は〜立科スパイシーチーズバーガー🍔〜‼️ 相変わらずの旨さ〜ww

佐藤 ヒロ子さんの投稿
【ポールを束ねてホイ】  お買い物の時に困るポール    これならさっと結べて   身体に沿うので安心です。  設計図と使い方を披露して    頂きました    材料費約150円   2025/10/6 #船橋ウォーキングソサイエティ  #月曜日シニアポールウォーキング #姿勢チェック #コグニサイズ #チェアエクササイズ #ステップエクササイズ #ポール持ち運びロープ

田村 芙美子さんの投稿
清々しい秋空 秋桜 爽やかな里山の風 稲刈りした稲架掛け 昔遊んだ数珠玉 割れて綿がもりもり現れたガマ 今風の服を着た案山子 気持ち良いポールウォーキングを楽しみました

佐藤 ヒロ子さんの投稿
しっかり歩きに向けての  #フォームチェック  #美姿勢ウォーキング で #船橋ウォーキングソサイエティ  屋外全てのコースが動画撮影を   完了しました  意識づけはコーチの役割   活かすのは本人ですよ〜  少しの進歩でも継続が大事です #パワーウォーキング #インターバル速歩 #中之条研究 #筋トレ #7秒スクワット

スマイルチームさんの投稿
2025.9.2〜9.7 活動記録 ☺︎ポールウォーキング 10名 生田緑地・岡本太郎美術館 ☺︎相模原市文化協会会議 ☺︎スマイルリズムエクササイズ 16名 ☺︎上鶴間公民館子どもまつり実行委員会 ☺︎上鶴間公民館利用団体懇談会・交流会 AED講習 ☺︎上鶴間公民館利用団体懇談会役員会 ☺︎スマイルチーム光が丘 21名 チェア体操 ☺︎中屋敷チェアエクササイズ 21名

遠藤 恵子さんの投稿
📣午後はイレギュラー講座! 【長者研修大学校 穴生学舎】 健康づくりサポーターコース48名の皆さんと、 2時間たっぷり身体を動かしました💪✨ 昨年度から毎年3~4講座のご依頼をいただいており担当の方とはもう8年のお付き合いになります。 昨年は創立30周年記念イベントでも2講座 講師を務めさせていただきました! 担当者の方はおととしまで社協にお勤めで、 その頃から介護予防運動の講師として継続的にお声かけいただいています。 「この先生に任せれば大丈夫!」 そんな言葉に支えられ、信頼関係を築いてこられたことに心から感謝です🙏✨ 長年積み重ねてきた経験と信頼を大切に、 これからも現場でお役に立てる講師であり続けたいと思います🌸 そして明日も穴生学舎で講師のお仕事です✋ 地域リーダーコースの皆さん18名に、ポールウォーキングを体験していただきます🚶‍♀️✨ あっ😵 そういえば今日の参加者のみなさんに【島崎和歌子】に似ていると言われた😱 人生初🤣

佐藤珠美さんの投稿
八ヶ岳北麓  山桜の葉が色付く

柳澤 光宏さんの投稿
今日から3日間国際福祉機器展に出展しています!皆さんお待ちしております。

大内 克泰さんの投稿
桑折町マルベリーの「脳の若返り教室」。 ラケット🏸持った途端に若返る元18歳の皆様😊 今月から広い体育館に移ったので、バドミントンで左右打ちラリーやバードゴルフをフォアハンドとバックハンドで脳トレしました😃 来週もお楽しみに♫

佐藤 ヒロ子さんの投稿
【何故、速歩きがいいの?】 道理がわかれば  心が動く  心が動けば行動が伴う 見てわかるようにパネルで説明  2025/10/9 #船橋ウォーキングソサイエティ #2本のポールを使うウォーキング #ノルディックウォーク #ノルディックウォーキング #ポールウォーキング #ポールウォーク #インターバル速歩 #中之条研究 #しっかり歩き  #中強度の運動

遠藤 恵子さんの投稿
午前は介護予防運動👟 ⇒会場を移動して午後は、2022年4月から引き継いで約2年半になります 健康体操教室(1時間半)✨ 引き継いだ当初は前期高齢者の方が多かった記憶が…‎🤔 気づけば今では後期高齢者の方がどんどん増え、元気に参加中🙌‼️ ご夫婦でご参加の方が2組💓 めっちゃ貴重!というか理想的です☺️ そしてなんと今では毎回30名超えの大所帯に✨ 安全第一!事故がおきないように お一人おひとりとアイコンタクトをとりながら 動きをキョロキョロ確認👀 その様子を見て「先生、表情がコロコロ変わって可愛い・面白い」 なんて声をかけてくださることも😆💕 どなたでも無理なくできてしっかり効果が期待できる運動💪 そして“笑顔で楽しめる時間”をお届けできるよう心がけています🌿 みなさんの笑顔と前向きな姿に 毎回こちらがたくさんの元気をもらっています✨ そして、こちらの教室でも お友達に誘われて3ヶ月前からご参加くださっている90代の方がおられます💐 もともと以前から身体を動かすことを続けてこられた方でその積み重ねが今の元気につながっているのだと思います🌿 ちなみに本日の筋トレメニュー💪 (からだを整えた後におこなっています筋トレメニュー) ✅ カーフレイズ 10回×3セット ✅ 椅子からの立ち上がり 10回×3セット 90代の方もしっかりclearされました👏✨ 年齢を重ねても“動ける”って本当に素晴らしい!! 筋トレあり有酸素運動あり 1時間半の運動の〆は365歩のマーチを歌いながらChairAero•*¨*•.¸¸♬︎ 継続は力なり💫 私自身も学ばせていただくことばかりです🫡

中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より 快晴の〜女神湖PW散策〜 紅葉🍁はまだまだの蓼科/女神湖へ秋🍂を求め50名大集合〜❗️ 別荘地と池の周りの約4kmのポールウォークでした。 ランチはカフェレストラン/女神湖駅で採れたて「きのこ🍄/5種入り🍄鍋定食」で舌鼓〜 きのこ汁がばか旨の鍋でした。 帰りに浅科/五郎衛米の田んぼ道を下見に〜ww

田村 芙美子さんの投稿
三浦ネットPWは欠席者(超高齢化の為)が多く、男子(元気なゴルファージム通い)3人🚶‍♂️🚶‍♂️🚶‍♂️と私🚶だけ。近場を歩きましよう~と寿福寺から英勝寺、海蔵寺まで。鎌倉検定1級のメンバーさんの解説が重厚! 海蔵寺の萩には間に合いましたが英勝寺の曼珠沙華はほぼ枯れてしまっていました。祠堂は英勝院の位牌を安置してあり、徳川光圀によって建てられたもの。 こちらでも100年元気の日課ドリルは好評です。

日本ポールウォーキング協会 npwaさんの投稿
10月12日、スキルアップ研修会東京2回目を実施しました。 今年度最後の研修ということもあり、40名を超える多くの参加者となりました。 マニュアルベースの実技確認、意見交換など非常に有意義な研修会となりました。 次年度も多くの方の受講をお待ちしております。

スマイルチームさんの投稿
2025.9.8〜9.14 活動記録 ☺︎健康体操 9名 ☺︎コグニサイズの会 新磯地域包括支援センター出張介護予防教室 チェアエクササイズ®︎ 14名 ☺︎スマイルチーム上溝 19名 ☺︎シニアサポータースタッフ研修申し込み 10名 ☺︎HP活動予定更新 ☺︎青空PW 11名 ☺︎ほかほかふれあいフェスタ 青少年指導委員連絡協議会 (欠席) ☺︎スマイルフレンズ 21名 ☺︎相模原スポーツフェスティバル 青少年指導委員連絡協議会 (欠席) ☺︎EEOAオンラインセミナー受講 サーキットチェア®︎エクササイズで指導スキルに磨きをかける!

佐藤珠美さんの投稿
一本柳ポールウォーキング倶楽部は毎週火曜日 佐久インターバル速歩倶楽部は月に3回。 佐久平ウォーキング倶楽部の会員さんは、max月に7回の外出の機会がある、という事になります。 製薬メーカーさんから頂いたパンフレット。当倶楽部の想いが具現化されていて嬉しくなりました😊 #認知症エコシステム #40代からの生活習慣病予防#地域の総力戦#身体活動#中強度#地域介護の担い手 #健康教育#コメディカル達の本気!

佐藤 ヒロ子さんの投稿
【習志野台6丁目町会で    ウォーキング教室】 2025/10/15 船橋市の中で最も       閑静な住宅街です。  健康意識が高く楽しい方々が       集いました。  ウォーキング教室への参加が   初めての方ばかりでしたが 素早い反応で   返事も身体もよく動きます。  あるき方で心も変わる  ★本日も楽しい出会いに感謝です     HAPPY♥  #船橋ウォーキングソサイエティ #ウォーキング教室 #習志野台6丁目町会   #良い歩きは良い姿勢から #若々しい身体は背筋ピン #量より質のウォーキング

佐藤 ヒロ子さんの投稿
秋だ〜  体全部使って歩くよ 2025/10/18 #船橋ウォーキングソサイエテ #2本のボールを使うウォーキング #土曜日海老川定例会 #インターバル速歩 #中之条研究 #ミトコンドリア #フレイル

新地 昌子さんの投稿
今日は私も茨城です(何人か友達が茨城に向かっているとの投稿があったので😊) 笠間市の北山公園をポールウォーキングしました。ちょうど花がない季節でしたが、この公園を庭のように歩いているKさんのおかげで通しか知らない上級コースを楽しみました♪桜で有名ですが、これからは紅葉🍁も楽しみ。アップダウンありの約3キロのウォーキングでした。

長谷川 弘道さんの投稿
本日は、津島のウォーキングイベント「いきいきウォーキングin神守」に参加してまいりました♪ 23年続いたロングイベント❗️ コロナで途中3年間お休みしましたが、今回で実質20回目を迎え一区切りとすることになりました。 私は多分7〜8回目くらいから参加させていただきまして、準備体操や整理体操を担当したり、健康ミニレクチャーや、歩くことが難しい方を対象として椅子に腰掛けての体操などをやらせてきただきました。 そして、こんな私に本日、最後の回で功労賞までいただきまして、本当に感謝でございます。ありがとうございます。 毎年大勢の市民の方が参加され、本日も800名ほどの皆さんがご参加でした。 このイベントの素晴らしいことは、津島市の神守地区とその周りの地域の住民の皆さん、また地元の高校生たちのボランティアのご協力あっての開催であるということなんですね❗️ それと、地元企業のスポンサーシップによって運営がなされてきたわけです。# 事前のコースの下見、安全の確保、人員の配置、受付の手配、救急の対応、ゴールされた皆さんにカレーを提供するわけですが、その準備など、全て市民の皆さんのボランティアによって賄われてきたんですね‼️ そして、その運営の核となってきたのが、私が長らくこの津島の地でポールウォーキングの活動を一緒に続けていただいております日比ファミリー(ご主人様は津島市長)でいらっしゃいます。 一年に一回ではありますが、先のような事前の準備、人の手配、後片付けなどなど、並々ならないご苦労があったことでしょう。 でも日比ファミリーや一緒にこの活動を続けてこられたボランティアの皆さんは、毎回笑顔で参加者の皆さんを迎えられ、毎年参加を楽しみにしておられる皆さんの笑顔、あるいは励ましの言葉や、ゴール後の大抽選会で大いに盛り上がる皆さんの喜ばれる姿にも支えられ、20回のこの大事業を全うされたのだ思います😊 このイベントはこれで一区切りとはなりますが、ここに参加した子供たちやボランティアで参加いただいた高校生の皆さんが、今後なんらかの形で繋いで行って、自分たちでもこうした地域住民のつながりを大切にするイベントを主催してくれることを願っています‼️ 日比ファミリー、そしてボランティアの皆さん、お疲れ様でございました。そして、参加いただいた市民の皆さん、ありがとうございました😊 #津島市 #ウォーキング #ボランティア #市民主催 #繋がり #感謝

森川 まことさんの投稿
2025.10.19 湖北台中央公園 我孫子ポールウォーキング倶楽部

中嶋  佳奈恵さんの投稿
第15回秋の犀川ポールウォーキング大会を開催しました。20名の参加の方たちと一緒に犀川河川敷を歩きました。 時折小雨が降りましたがしっかりコースとのんびりコースに分かれてポールウォーキングの良さを満喫いただいたかと思います。ありがとうございました。 担当コーチ 澤田MCpro,中嶋MCpro,高島BC

佐藤 恵さんの投稿
10月19日、一関市弥栄市民センター主催「いやさか祭り」にてプチ健康体操教室を開催。 おじいちゃんもおばあちゃんも、お父さんもお母さんも子どもたちも、みんなで一斉に体操をしてくれて、普段の運動教室とはまた違う楽しさ♪ ステージ発表を参加型にするのは、とても良いと思いました😊

新地 昌子さんの投稿
月に一度の笠間市でのポールウォーキング講座。ポールウォーキングは決して難しくはないけれど、ポールの使い方をちょっと意識するだけで、体に現れる効果はかなり違ってくる。なかなか奥が深くてそこも面白い。 今日は重心が定まらずフワフワ歩いていた方が、足の指に体重が乗るのを実感できた、と話していた。ふふふ😁いくつになっても何かができるようになるって嬉しいね。

杉浦 伸郎さんの投稿
地元町内会での介護予防運動サークル。自走化に向けさまざまな動機づけ支援ツールを開発してきました。 最近では、コーチ不在でも自主的な声掛けによるマルチコ運動メニューを楽しく消化できる様になっています。 嬉しくもあり、ちょっと寂しい瞬間でもあります。 生計就労と生きがい就労のギャップ、指導者のワークライフバランスの実現など越えるべきハードルは多いですが、なるべくスムーズかつスマートに対処していきたいと痛感する今日この頃です。

田村 芙美子さんの投稿
昨日は週一の渋谷PW教室の帰りに古巣駒澤大学駅に寄りました。駅が明るくリニューアルしてびっくり!来月11日には商業施設オープンで未来の都市・街の予感。田園都市線沿線はこれからなんですね。自由が丘に回るつもりが予報外れの雨で断念しまして渋谷回りで帰鎌☔ 週末も雨予報に変わりました😭

長谷川 弘道さんの投稿
今日は、午前中に三重県は津市内の小学校で120名ほどの子どもたちと一緒に運動遊びプログラム〜遊びットネスを指導してきました❗️ コロナ禍以前には数年続けてお邪魔しておりましたが、の多分6年ぶりにお邪魔しました。 やっぱり子どもたちとのプログラムは楽しいですね😀 あっという間の90分でした❣️ そして、その足で鳥羽に向かいました。 長らくお付き合いいただいています北名古屋市で陶器のギャラリーを主宰されていらっしゃる山田ご夫婦のお誘いをいただきました。 ここは、真珠ジュエリーのクリエイターでいらっしゃる上村さんのアトリエ。 お子様がお隣で美容院を営んでいらっしゃいまして、またそこが素敵な建物と内装で❣️ そして、さらにさらに、クルーザーを所有されておられて、英虞湾をクルージング❣️ なんと贅沢な時間でしょう❣️ 内海というのでしょうか、波がほとんど立たず、湖のような感じで、錨を下すとほとんど船は揺れないんですね。 船のデッキにマットを敷いて、そこに寝そべって、青空を覗き見しつつ、しばらく瞑想タイム。。。 豪華な気持ちになれました😍 2時間ほどの滞在ではありましたが、とても充実した時間を過ごさせていただきました‼️ 今日は1日、とてもとても満たされた時間を過ごすことができました❣️ ありがとうございました😊 #ギャラリー凛 #Monme #鳥羽 #クルージング #遊びットネス

 

来月以降の開催
杉浦 伸郎さんの投稿
11/2東五反田での地域づくりイベント「ファームエイド」にてポールウォークを担当させて頂きます(会場:東京医療保健大学)。マルシェ、フォーラム、メッセの3部構成で楽しそうですよ。是非お立ち寄り下さいませ。 「ファームエイド東五反田」とは: 東五反田地区は、大型の病院、個人病院、看護大学、小学校、薬局、高齢者施設があるのが特徴で、住民は昔から住んでいる方(高齢化が顕著)よりも、近年急速に増えたマンション等で暮らす人が多い地域となり、町会の機能低下に伴い、催し物等の機会もほとんどなくなってしまい、地域住民の繋がりも希薄となり大きな課題に。 そこで、点として存在した専門職やあらゆる機関を面としてつなげるために、様々な職種が気軽に、楽しくコミュニケーションをとり、同じベクトルを歩むために「ファーム・エイド東五反田」が立ち上がりました。 ファーム・エイド東五反田には認知症本人の行っている様々な活動もつながる場として、全国の地域行政からも注目され期待されています。

新地 昌子さんの投稿
佐久の米どころ浅科地区でポールウォーキングしますよー。稲刈りの終わった田んぼがから遠くに望む浅間山。この地域ならではの秋の風景を、寒くなる前に楽しみましょう🍂 地区を担当する地域包括支援センターからのお声がけに、私も講師で参加させていただきます。センターの存在を若いうちから知っていてほしい、という言葉に大きくうなずく私でした。 地域を支えて頑張っている方に会うと元気をもらえますね。

長谷川 弘道さんの投稿
🍁秋色さんぽ🍁ポールウォーキングDay✨

台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
wellness.suntory.com.tw

 

2.PW関連学術ニュース
2-1)健康長寿になるための新たな知見4つ
良い睡眠を取ること、手指機能も重要、創造的な経験の効果、熱波の長期的な負の影響の4つです。
(1)われわれの健康にとって睡眠はもっとも大事なものの一つです。良い眠りは良い健康のもとであり、健康寿命を延ばすためにもとても重要なことです。
**大阪大学宮坂先生の2025年10月3日のFB投稿です**
Natureのオンライン版に「良い睡眠を得るにはどうしたらよいか?科学者の意見は」という記事が載っています。さまざまな科学者がエビデンスに基づいた意見を述べています。
それをまとめると、一番大事なことは生体リズム(概日リズムともいう)を崩さないことです。
そのためには、
・明暗のコントラストをつけること
明るい時に動き、暗くなったら休む。寝る前の長時間スマホは禁物。普段から、寝る時は暗くし、起きる時は明るくすること。
・食事時間の調整をすること、
普段から、食事時間と就寝時間を一定に(近くしたり離したりし過ぎないこと)バランスがとれた腸内細菌叢の維持にも重要。
・睡眠時間を一定にすること
普段から、睡眠不足や、寝だめしたり、寝過ぎたりしないこと(長すぎる昼寝は禁物です)。
・日中に適度な運動をすること
疲れすぎも運動不足も良くない。
などが挙げられています。
これに加えて、私個人の経験からすると、体温管理も大事で、暖めすぎ(熱いお風呂やサウナに入りすぎ)も冷たすぎ(エアコンの使いすぎ)も良くありません。普段からあまり良く眠れないと言っておられる方々は参考にしてください。

関連情報
① ネイチャー誌の当該記事
掲載誌;NATURE NEWS FEATURE(ニュース特集)
掲載日;30 September 2025
題名;How to get the best night’s sleep: what the science says ~
Chuck the gadgets, the fads and the alarm. Circadian research reveals how important your body’s internal clock is to blissful slumber.
最高の睡眠を得る方法:科学が教えること ~
ガジェット、流行りの物、目覚まし時計は捨てましょう。概日リズム研究は、至福の眠りに体内時計がいかに重要であるかを明らかにしています。
著者;Lynne Peeples
**以下、同記事冒頭部分からの抜粋です**
口テープや加重ブランケットを宣伝するTikTok動画から、不眠症対策枕をランキング形式で紹介する雑誌まで、睡眠に関するアドバイスは至る所で見かけます。それもそのはず、世界中で不眠症や睡眠不足に悩む人々がおり、睡眠補助剤の市場規模は年間1,000億ドル以上にも達しているのです。

しかし、科学者たちは、オンラインハッキングや高価なツールが必ずしも効果的ではないと警告している。また、状況を改善しようとする試みが失敗すれば、悪影響が出る可能性があると、ポートランドにあるオレゴン健康科学大学の概日リズム科学者アンドリュー・マクヒル氏は指摘する。「人々が助けを求めることを躊躇し、事態が悪化する可能性がある」と彼は言う。

研究者たちは、過去50年間にわたり体内時計のネットワークを明らかにしてきた概日リズム科学から得られた教訓を指摘しています。この科学は、病原体からの防御、食物の消化、睡眠など、生理学的システムが適切なタイミングで適切な行動をとるよう準備を整えています。しかし、概日リズムはそれ自体で正確に周期を刻むわけではありません。同期を保ち、最適に機能するためには、日光、日々の習慣、その他の刺激による定期的な調整が必要です。

②『睡眠ガイド2023』については、2024年6月のニュースをご覧ください。

(2)足腰の機能に加え、手指を巧みに動かす機能も健康寿命のカギとなる
**以下、大阪大学宮坂先生の2025年10月3日のFB投稿です**
これはとても大事なことです。筑波大研究グループの仕事です。
以下、抜粋です。本研究チームは、茨城県笠間市で実施した体力測定会に参加した約1000人の高齢者を対象に、最長14年間にわたる追跡調査を行い、手指機能と要介護化リスクとの関連を検証した。その結果、手指機能が低い人は、高い人に比べて要介護化リスクが高いことが分かった。さらに、手指機能は要介護化に対し、曲線的な量反応関係を示すことを世界で初めて明らかにした。手指機能が一定水準(例:15秒間に〇印を21個付けられる)を下回ると要介護化リスクが高まる一方で、それよりも良好であっても、統計学的なリスクの減少は認められなかった。
本研究から、健康寿命の延伸には、これまで注目されてきた下肢機能だけでなく、細かな日常生活動作に必要な手指機能も重要であることが示唆された。
高齢者が手指を使うこととしては、手紙や日記を書くこと、スマホやパソコンを使うこと、書道をすること、ピアノなどの楽器に触れること、刺繍や編み物をすることなど、いろいろあります。自分ができることは続けることが大事、勿論、新たな習い事などを始めるのも良い刺激となります。

関連情報
①掲載論文
【題名】 Dose-response Association between Hand Dexterity and Functional Disability: A Longitudinal Study from the Kasama Study
(手指機能と要介護化との量反応関係:笠間スタディに基づく縦断研究)
【掲載誌・日】 Annals of Geriatric Medicine and Research . 2025 Sep 8.
【DOI】 10.4235/agmr.25.0075
**以下、論文の要旨**
背景: 手の器用さの低下は機能障害のリスクを高める可能性があるが、手の器用さと機能障害の発症との関連を検討した研究はほとんどない。本研究の目的は、地域在住高齢者における手の器用さと機能障害の発症との用量反応関係を前向きに検討することであった。

方法: 本研究は、笠間市在住の65歳以上の高齢者1,069名を対象とした。ペグ移動課題と円描画課題を用いて、手先の器用さを評価した。機能障害は、介護保険制度データベースを用いて同定した。制限付き3次スプライン解析を用いて、手先の器用さと機能障害の発症との間の用量反応関係を検証した。

結果: 平均8.5年間(最長14.0年間)の追跡調査期間中、248名(23.2%)が機能障害を発症した。各手指器用さ検査において、最も成績の低い群は、最も成績の高い群と比較して機能障害のリスクが有意に高かった(ペグ移動:HR = 1.92、95%信頼区間 = 1.29-2.87、円描画:HR = 1.66、95%信頼区間 = 1.15-2.41)。スプライン解析により、手指器用さと機能障害発症との間には、曲線的な用量反応関係が確認された。参加者の成績がカットポイント(ペグ移動:37.9/38.0秒、円描画:21/20点)を下回った場合、リスクの上昇が認められた。一方、カットポイントを上回る成績を収めた参加者では、リスクの減少は認められなかった。

結論: 高齢者の機能障害を予測するために、容易に評価できる手の器用さの検査は有用である可能性がある。用量反応曲線の関連は、適切な手の器用さを維持することが機能的自立を支援するための重要な戦略となる可能性を示唆している。

②筑波ジャーナルの当該記事(2025年9月29日付)はこちら

(3)創造的な経験と脳時計
公開日;Published: 03 October 2025
題名;Creative experiences and brain clocks(和訳:創造的な経験と脳時計)
著者;Carlos Coronel-Oliveros, Joaquin Migeot, Fernando Lehue, Lucia Amoruso, Natalia Kowalczyk-Grębska, Natalia Jakubowska, Kanad N. Mandke, Joana Pereira Seabra, Patricio Orio, Dominic Campbell, Raul Gonzalez-Gomez, Pavel Prado, Jhosmary Cuadros, Enzo Tagliazucchi, Josephine Cruzat, Agustina Legaz, Vicente Medel, Hernan Hernandez, Sol Fittipaldi, Florencia Altschuler, Sebastian Moguilner, Sandra Baez, Hernando Santamaria-Garcia, Alfredis González-Hernández, Agustin Ibanez,他
掲載誌;Nature Communications volume 16, Article number: 8336 (2025)

論文要旨
創造的な経験は脳の健康を高める可能性があるが、その指標とメカニズムは依然として不明である。我々は、脳時計を用いて脳の健康を特徴づけた。脳時計は、実年齢からの逸脱(すなわち、脳老化の加速または遅延)を捉えるものである。M/EEGの機能的連結性(N  = 1,240)を、機械学習サポートベクターマシン、全脳モデリング、Neurosynthメタ分析と組み合わせた。この枠組みから、ダンス、音楽、視覚芸術、ビデオゲームの専門家とマッチさせた非専門家の参加者の以前に公開されたデータセット、および学習前後の研究(N  = 232)を再分析した。その結果、すべての領域で脳年齢の遅延とスケーラブルな効果(専門知識>学習)が明らかになった。専門知識とパフォーマンスのレベルが高いほど、脳年齢の遅延が大きい。加齢に脆弱な脳ハブは、特に専門知識と創造的な経験に関連する領域で、創造性に関連する連結性の増加を示した。Neurosynthによる解析と計算モデル化により、創造性に特異的な脳老化の遅延において、可塑性によって引き起こされる脳の効率性と生物物理学的結合の向上が明らかになりました。この結果は、創造性と脳の健康の間に領域非依存的な関連性があることを示唆しています。

図 1: データの特性評価、前処理パイプライン、およびデータ分析。
a カナダ、チリ、アルゼンチン、キューバ、コロンビア、ブラジル、イギリス、アイルランド、イタリア、ギリシャ、トルコ、ポーランド、ドイツの 13 か国の多様な集団 ( N = 1472) からの M/EEG データを含めました。b  EEG を使用してサポート ベクター マシン (SVM) をトレーニングするために、N = 1240 人の参加者のサブサンプルを使用しました。これらの SVM は、すべての領域にわたって参加者の脳年齢を予測するために使用されました。c残りのデータ ( N  = 232) はサンプル外検証に使用され、さまざまな種類の創造的専門知識と学習に関連する M/EEG データセットで構成されていました。これらのグループのうち 4 つは、ダンス (タンゴ)、音楽 (楽器奏者と歌手)、視覚芸術 (描画)、およびビデオ ゲーム (StarCraft 2) (専門知識についての研究 1) における創造的専門知識を表しています。さらに、ビデオ ゲーム学習 (StarCraft 2) (学習前後についての研究 2) のグループを 1 つ含めました。d SVMをトレーニングする前に、生のM / EEG信号を前処理し、正規化し、AAL脳パーセレーションを使用してソース空間に変換しました。ソース変換された信号から、すべての参加者の機能的結合マトリックスを計算しました。SVMのトレーニング時にデータ拡張を使用して、モデルの堅牢性と精度を高めました。トレーニング済みのSVMから、モデル予測と実際の年齢の差として、参加者の脳年齢ギャップ(BAG)を計算しました。BAG > 0は脳の老化の加速と解釈でき、BAG <0は脳の老化の遅延と解釈できます。図中の点とバイオリンプロットは模式的な例です。BioRenderで作成。Migeot, J. (2025) https://BioRender.com/99vpcts(EEGデバイスと脳の図)。

関連情報
NATURE NEWS
03 October 2025
Creative hobbies could slow brain ageing at the molecular level
To keep the mind young, dance the tango.
(和訳:創造的な趣味は分子レベルで脳の老化を遅らせる可能性がある
心を若く保つにはタンゴを踊りましょう)
By Gemma Conroy
タンゴの複雑さは、脳を若く保つのに特に効果的かもしれない。写真:Tempura/Getty

**以下、同記事の冒頭部分の和訳です**
複数の国のダンサー、ミュージシャン、アーティスト、ビデオゲームプレイヤーを対象にした研究によると、タンゴを踊る、ギターを弾くなど創造的な趣味に携わると、脳の老化を遅らせることができるという。

この分析では、脳時計(人の実年齢と脳の推定年齢の差を測定するモデル)を用いて、創造的な活動が神経学的若さを維持するのに役立つかどうかを評価しました。老化の影響を最も受けやすい脳領域において、創造的な活動を行うことで、脳の様々な領域とのつながりが強化されました。熟練者は経験の浅い人よりも「若い」脳を持っていましたが、創造的なスキルをゼロから学ぶことでさえ、脳の老化防止効果がありました。

この研究結果は10月3日にNature Communications誌に掲載された。

(4)熱波による老化の加速に対する長期的な影響
8月に公開されたものですが、今年の猛暑が厳しかったので、気になった論文です。
掲載誌;Nature Climate Change
公開日;Article Published: 25 August 2025
表題;Long-term impacts of heatwaves on accelerated ageing
(和訳:熱波による老化の加速に対する長期的な影響)
著者;Siyi Chen, Yufei Liu, Yuanyuan Yi, Yiling Zheng, Jun Yang, Tiantian Li, Ta-Chien Chan, Rui Duan, Shenjing He & Cui Guo

論文要旨
気候変動と人口高齢化は、ともに喫緊の世界的課題である。しかし、熱波への長期曝露と生物学的老化加速(BAA)との関連など、両者の相互作用は明らかではない。本研究では、台湾の縦断的コホート(2008~2022年)の成人24,922名のデータを分析し、線形混合モデルを用いて熱波が老化を加速することを示した。熱波は、相対的閾値と絶対的閾値の両方を用いて定義した。BAAは、生物学的年齢と暦年齢の差として算出した。熱波への累積曝露の四分位範囲の増加は、BAAの0.023~0.031歳の増加と関連していた。さらに、参加者は15年間にわたり熱波の影響に徐々に適応してきたことが示された。さらに、肉体労働者、農村住民、エアコンの少ない地域の参加者は、健康への影響をより受けやすかった。本研究は、適応能力を強化し、老化を遅らせ、健康的な老化を促進するための、的を絞った政策と介入の必要性を浮き彫りにしている。

Copilotに訊いてみた。
Q1;この論文の成果を要約してください。
A1;この論文「Long-term impacts of heatwaves on accelerated ageing」(Nature Climate Change, 2025年8月発表)は、熱波が生物学的老化を加速させる可能性を示した大規模な疫学的研究です。
🔍 研究の概要
• 対象:台湾の成人24,922人(2008〜2022年の15年間の縦断コホート)
• 方法:生物学的年齢(BA)と暦年齢(CA)の差を「年齢加速(BAA)」として定義し、熱波曝露との関連を分析
• 熱波の定義:相対的・絶対的な気温閾値に基づく
🌡️ 主な成果
• 熱波の累積曝露が四分位範囲ごとに増加するごとに、BAAが0.023〜0.031年増加1
• 肉体労働者、農村住民、エアコン普及率が低い地域の人々は、老化への影響を受けやすい
• 15年間で参加者はある程度の適応を示したが、健康への悪影響は完全には消えなかった
🧭 意義と提言
• 気候変動と人口高齢化という二つのグローバル課題が交差する領域に新たな知見を提供
• 脆弱な集団への保護政策や医療資源の配分が重要
• 今後は住宅環境や屋外活動時間などの変数も含めたさらなる検証が必要[2]
まるで、暑さが時間の流れを少しだけ早めてしまうような…そんな印象を受ける研究ですね。🌿 このテーマ、社会政策や都市設計にも深く関わってきそうですが、どの視点から掘り下げてみましょうか?

 

2-2)AIの応用事例4つとAIのリスクについての1つの話題
AIの活用はますます広がっていますが、AIの大規模言語モデルLLMのリスクも指摘されています。以下、最近のニュースです。
(1)人工知能副操縦士による脳コンピューターインターフェース制御
掲載誌:Nature Machine Intelligence (2025)
公開日:Published: 01 September 2025
表題:Brain–computer interface control with artificial intelligence copilots(和訳:人工知能副操縦士による脳コンピューターインターフェース制御)
著者:Johannes Y. Lee, Sangjoon Lee, Abhishek Mishra, Xu Yan, Brandon McMahan, Brent Gaisford, Charles Kobashigawa, Mike Qu, Chang Xie & Jonathan C. Kao

要旨(Chromeによる和訳)
運動脳コンピュータインターフェース(BCI)は、麻痺のある人の移動とコミュニケーションを支援するために神経信号をデコードします。過去20年間で重要な進歩があったにもかかわらず、BCIは臨床実現への大きな障害に直面しています。それは、BCIのパフォーマンスがコストとリスクを大幅に上回らなければならないということです。BCIのパフォーマンスを大幅に向上させるために、人工知能(AI)副操縦士がBCIユーザーと協力してタスク目標を達成する共有自律性を使用します。私たちは、脳波信号をデコードする非侵襲性BCIシステムでこのAI-BCIを実証します。まず、畳み込みニューラルネットワークとReFITのようなカルマンフィルターを使用したハイブリッド適応デコード手法を提供し、健常者と麻痺のある参加者が、デコードされた脳波信号を介してコンピューターのカーソルとロボットアームを制御できるようにします。次に、カーソル制御タスクとロボットアームのピックアンドプレースタスクでBCIユーザーを支援する2つのAI副操縦士を設計します。我々は、麻痺のある被験者がカーソル操作においてターゲットヒット率を3.9倍向上させ、ロボットアームを制御してランダムなブロックをランダムな場所に順次移動させるというタスクをAI-BCIによって実現できることを実証しました。これはAIコパイロットなしでは不可能なタスクです。AIコパイロットの性能向上に伴い、共有自律性を備えたBCIはより高い性能を発揮する可能性があります。

関連情報
掲載誌:NATURE NEWS
掲載日:02 September 2025
表題:AI-powered brain device allows paralysed man to control robotic arm ―
The human user and AI have shared autonomy and constantly interact to complete tasks.
(和訳:AI搭載の脳デバイスで麻痺の男性がロボットアームを制御 ―
人間のユーザーと AI は自律性を共有し、タスクを完了するために常に相互作用します。)
著者:By Rachel Fieldhouse
研究者が、同僚が着用している脳コンピューターインターフェースヘルメットの電極に導電性ジェルを塗布しています。非侵襲性脳デバイスの性能は、AIと組み合わせることで向上する可能性がある。写真:ジャン=ピエール・クラトット/AFP via Getty

部分麻痺の男性が、人工知能(AI)によって部分的に制御される非侵襲性の脳デバイスを使用することで、ロボットアームを操作することに成功したという研究報告。AI搭載デバイスを使用することで、男性は画面操作による作業において、デバイス単体で使用した場合よりも4倍の精度で作業を行うことができた。

(2)ジェネレーティブトランスフォーマーでヒト疾患の自然史を学ぶ
Nature article open access
Published: 17 September 2025
Learning the natural history of human disease with generative transformers(和訳:ジェネレーティブトランスフォーマーでヒト疾患の自然史を学ぶ)
Artem Shmatko, Alexander Wolfgang Jung, Kumar Gaurav, Søren Brunak, Laust Hvas Mortensen, Ewan Birney, Tom Fitzgerald & Moritz Gerstung

要旨(Chromeによる和訳、脚注番号削除)
ヘルスケアにおける意思決定は、患者の過去と現在の健康状態を理解し、将来の経過を予測し、最終的には変えることに依存しています。人工知能 (AI) 手法は、大規模な健康記録コーパスから病気の進行パターンを学習することにより、このタスクを支援することが期待されています。ただし、その可能性は大規模に十分に調査されていません。ここでは、GPT 6 (生成的事前学習済みトランスフォーマー) アーキテクチャを変更して、人間の病気の進行と競合する性質をモデル化します。このモデル Delphi-2M を 40 万人の英国バイオバンク参加者のデータで学習し、パラメーターを変更せずに 190 万人のデンマーク人からの外部データを使用して検証します。Delphi-2M は、各個人の過去の病歴を条件として、既存の単一疾患モデルに匹敵する精度で、1,000 を超える疾患の発生率を予測します。 Delphi-2Mの生成的な性質は、将来の健康状態を総合的に推定するサンプリングも可能にし、最大20年間の潜在的な疾病負担について有意義な推定値を提供し、実際のデータを見たことのないAIモデルのトレーニングを可能にします。説明可能なAI手法は、Delphi-2Mの予測に関する洞察を提供し、疾病の章内および章間における併存疾患のクラスターと、それらが将来の健康に及ぼす時間依存的な影響を明らかにするだけでなく、トレーニングデータから学習されたバイアスも明らかにします。要約すると、トランスフォーマーベースのモデルは、予測的および生成的な健康関連タスクに適しており、人口規模のデータセットに適用可能であり、疾病イベント間の時間的依存関係に関する洞察を提供し、個人別の健康リスクの理解を向上させ、精密医療アプローチに情報を提供できる可能性があります。

関連情報
掲載誌:NATURE NEWS
掲載日:17 September 2025
表題:Which diseases will you have in 20 years? This AI accurately predicts your risks
A modified large language model called Delphi-2M analyses a person’s medical records and lifestyle to provide risk estimates for more than 1,000 diseases.
(和訳:20年後、あなたはどんな病気にかかっているでしょうか?このAIはあなたのリスクを正確に予測します。
Delphi-2M と呼ばれる改良された大規模言語モデルは、個人の医療記録とライフスタイルを分析し、1,000 を超える病気のリスク推定値を提供します。)
著者:By Gemma Conroy
英国の40万人のデータで訓練された人工知能システムは、20年間でがんやその他の多くの病気を発症する可能性を推定できる。写真:ブルックス・クラフト/コービス/ゲッティ

新しい人工知能 (AI) ツールは、1,000 種類以上の病気の発症リスクを予測することができ、場合によっては数十年先の予測も提供します。

(3)ゲノム言語モデルを用いた新規バクテリオファージの生成設計
掲載誌:bioRxiv
公開日:Posted September 17, 2025.
表題:Generative design of novel bacteriophages with genome language models
(和訳:表題:ゲノム言語モデルを用いた新規バクテリオファージの生成設計)
著者:Samuel H. King、Claudia L. Driscoll、David B. Li、Daniel Guo、Aditi T. Merchant、 Garyk Brixi、 Max E. Wilkinson、 Brian L. Hie
doi: https://doi.org/10.1101/2025.09.12.675911

要旨(Chromeによる和訳)
多くの重要な生物学的機能は、単一の遺伝子からではなく、ゲノム全体にコード化された複雑な相互作用から生じる。ゲノム言語モデルは生物学的システムを設計するための有望な戦略として浮上してきたが、ゲノム全体のスケールで機能的な配列を生成する能力は未だ検証されていない。本稿では、生存可能なバクテリオファージゲノムの初めての生成設計を報告する。我々は最先端のゲノム言語モデルであるEvo 1およびEvo 2を活用し、溶解ファージΦX174を設計テンプレートとして用いて、現実的な遺伝子構造と望ましい宿主指向性を持つ全ゲノム配列を生成した。AI生成ゲノムの実験的試験により、進化的に大きな新規性を持つ16個の生存可能なファージが得られた。クライオ電子顕微鏡法によって、生成されたファージの1つが、そのカプシド内で進化的に遠いDNAパッケージングタンパク質を利用していることが明らかになった。複数のファージが、増殖競争および溶解速度論においてΦX174よりも高い適応度を示している。生成されたファージのカクテルは、3種類の大腸菌株におけるΦX174耐性を迅速に克服し、急速に進化する細菌病原体に対するファージ療法の設計における本アプローチの潜在的な有用性を実証しました。本研究は、多様な合成バクテリオファージの設計のための青写真を提供し、より広くは、ゲノムスケールにおける有用な生体システムの生成設計の基盤を築くものです。

関連情報
掲載誌:NATURE NEWS
掲載日:19 September 2025
表題:World’s first AI-designed viruses a step towards AI-generated life
Scientists used AI to write coherent viral genomes, using them to synthesize bacteriophages capable of killing resistant strains of bacteria.
(和訳:世界初のAI設計ウイルスはAI生成生命への一歩
科学者たちは AI を使って一貫性のあるウイルスゲノムを記述し、それを使って耐性菌株を殺すことができるバクテリオファージを合成しました。
著者:By Katie Kavanagh
T2 ファージに群がった大腸菌 B 細胞の断面を示す、色を強調した透過型電子顕微鏡写真。
AI設計のバクテリオファージは宿主の細菌に感染し、殺傷する能力を持っていた。クレジット:リー・D・サイモン/サイエンス・フォト・ライブラリー

(4)頭の中にAIを埋め込む「テレパシーに近い」デバイス
Xへの投稿(2025年9月8日)
alterego
@alterego_io (動画)https://x.com/alterego_io/status/1965113585299849535
Introducing Alterego: the world’s first near-telepathic wearable that enables silent communication at the speed of thought.
Alterego makes AI an extension of the human mind.
We’ve made several breakthroughs since our work started at MIT.
We’re announcing those today.

Alterego のご紹介: 思考のスピードで静かなコミュニケーションを可能にする、世界初のテレパシーに近いウェアラブルです。
Alterego は AI を人間の心の延長にします。
MIT で私たちの研究が始まって以来、私たちはいくつかの進歩を遂げてきました。
本日はそれらを発表します。

関連情報
掲載誌:NATURE NEWS
掲載日:18 September 2025
表題:The ‘near-telepathic’ device that puts AI in your head
AlterEgo’s neural-interface device is non-invasive and is being tested in people with multiple sclerosis and motor neuron disease.
(和訳:頭の中にAIを埋め込む「テレパシーに近い」デバイスー
AlterEgo の神経インターフェース デバイスは非侵襲性であり、多発性硬化症および運動ニューロン疾患の患者を対象にテストされています。)
著者:By Chris Simms
アルターエゴの最高経営責任者、アルナブ・カプール氏がウェアラブルデバイスのデモンストレーションを行っている。提供:アルターエゴ

ウェアラブルデバイスは、「アレクサ、今何時?」と声に出して言うことを過去のものにするかもしれない。人工知能(AI)ニューラルインターフェース「AlterEgo」は、ユーザーが心の中で言葉を発するだけで、静かにコミュニケーションをとれるようにする。耳に装着するこのデバイスは、インターネットとのリアルタイムコミュニケーションを通じて日常生活を便利にする。「共有したい考えに対してだけテレパシーの力を与えてくれます」と、マサチューセッツ州ケンブリッジに拠点を置くAlterEgoのCEO、アーナブ・カプール氏は語る。カプール氏は9月8日にこのデバイスを発表した。

(5)嘘をつき、騙し、殺人を企てる AI モデル: LLM は実際どれほど危険なのか?
最後の話題は、大規模言語モデルLLMの危険性に関するものです。

掲載誌;NATURE NEWS FEATURE
掲載日;08 October 2025
表題;AI models that lie, cheat and plot murder: how dangerous are LLMs really?
(和訳:嘘をつき、騙し、殺人を企てる AI モデル: LLM は実際どれほど危険なのか?)
Tests of large language models reveal that they can behave in deceptive and potentially harmful ways. What does this mean for the future?
(和訳:大規模言語モデルのテストにより、それらが欺瞞的かつ潜在的に有害な動作をする可能性があることが明らかになりました。これは将来にどのような意味を持つのでしょうか?)
著者;Matthew Hutson
        イラスト: アナ・コヴァ

**以下、記事の初めの部分からの抜粋です**

AIは殺人を行うことができるのか?

これは、 AI企業アンスロピックが6月に発表した報告書を受けて、一部の人工知能(AI)専門家が検討してきた疑問です。チャットボットの頭脳である大規模言語モデル(LLM) 16種類をテストした研究チームは、最も人気のあるAIの一部が仮想環境において、明らかに殺人的な指示を出すことを発見しました。AIは、自分たちを交代させようとしていた架空の幹部を殺害するような行動をとったのです。

これは、法学修士(LLM)による悪質な行為の一例に過ぎません。他のいくつかの研究や事例では、AIが開発者やユーザーに対して「陰謀を企てる」、つまり自身の利益のために密かに戦略的に不正行為を行っていることが示されています。AIは指示に従っているふりをしたり、自己複製を試みたり、恐喝を脅迫したりすることさえあります。
(以下、続く)

 

2-3)岐阜大学医学部下畑先生の最新医学情報(2025年10月)
・レビー小体型認知症も検査だけで診断できる時代に入る!?
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年10月4日のFB投稿です**
脳脊髄液αシヌクレイン・シーズ増幅アッセイ(αSAA)は,レビー小体型認知症(DLB)の診断における大きな転換点になるかもしれません.スペインの物忘れ外来に通院した640名(DLB 92例,アルツハイマー病;AD 337例など)を対象に,脳脊髄液αSAAの診断精度とADにおけるαシヌクレイン合併病理を評価しています.この結果,αSAAはDLBに対し感度95.7%,特異度93.2%,全体診断精度93.6%(!)という高い成績を示しました.図1は各診断におけるαSAA陽性率を示したものです.健常対照(CU)は0%,非神経変性認知障害(NNCI)は1%,前頭側頭葉変性症(FTLD)は5.1%,ADは9.5%,DLBは95.7%が陽性です.つまりDLBで高率に陽性となる一方,ADやFTLDでは少数にとどまることが理解できます.先日,ADのタウバイオマーカーによる診断の話題をご紹介しましたが(https://pkcdelta.hatenablog.com/entry/2025/08/27/052343),DLBも検査だけで診断できる時代に入りそうな様相です.
もう1点,気になったのはAD患者の9.5%にαシヌクレイン合併病理が示唆される点です.このような症例では幻視やREM睡眠行動異常症などDLB的な臨床症候の頻度が増え,かつAPOE ε4保有率の上昇,血漿p-tau217やGFAPの上昇といった特徴的なプロファイルを示すことも明らかにされました.気になったのは,なぜAPOE ε4保有率が上昇するのかですが,ε4を持つことは全身性かつ疾患非依存的な炎症状態をもたらす「免疫的背景因子」である可能性が指摘されており(https://pkcdelta.hatenablog.com/entry/2025/08/04/062124),複数のタンパクを巻き込んだco-pathologyを来すものと推測されます.
さて話題は戻ってDLBの検査による診断に関して,著者らは「検査だけでDLBを確定診断できるわけではない」と強調しています.その理由として,DLBでもαSAA陰性例が存在すること,本研究で病理解剖による確認がなされていないこと,共病理の存在によって臨床症状が純粋型からずれ,より多彩で複雑な臨床像になりうることを挙げています.やはり脳脊髄液αSAA(図2)の結果は,臨床所見や画像検査と総合して解釈する必要があります.とは言え,脳神経内科医が不足する地域などでは強力な診断補助ツールになるものと考えられます.
Esteller-Gauxax D, et al. α-Synuclein Seed Amplifications Assay in a Cohort With Cognitive Impairment. Neurology. 2025;105:e214040. doi.org/10.1212/WNL.0000000000214040
追記;DLB 92例のうち陰性はわずか4例(4.3%)で,その多くがCDR 0.5で軽症かつ発症早期であり,臨床症状も非典型(RBDが少ない)であったと記載されています.よって発症早期から高率に陽性となりますが,病理分布が限局している例では陰性になることもあるようです.

・筋萎縮性側索硬化症に潜む免疫の異常:原因遺伝子産物C9orf72が自己免疫の標的に!!
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年10月6日のFB投稿です**
筋萎縮性側索硬化症(ALS)はこれまで神経細胞の変性や病因タンパクの蓄積に注目して研究されてきましたが,近年は「免疫系の関与」が新たな焦点となっています.最新のNature誌に,ALSにおける自己免疫反応の存在を初めて明確に示した重要な報告がなされています.
研究は,アメリカのLa Jolla Institute for Immunologyを中心とする国際共同チームによって行われました.ALS患者40名と健常対照28名の末梢血を解析し,ALSで遺伝子変異が報告されているTDP-43,SOD1,そしてC9orf72という3種類のタンパク質に対するT細胞応答を比較しました.その結果,ALS患者ではC9orf72に対してのみ著明な免疫応答がみられ,健常者の約4倍の反応を示しました(図1).これらの反応は主にCD4陽性T細胞によって引き起こされ,炎症を抑えるIL-5やIL-10といったサイトカインが多く放出されていました(図2). ALS群でIL-5およびIL-10の産生が優勢で,炎症性サイトカインであるIFNγの割合が減少していることが明確に示されています.
また,C9orf72遺伝子に変異(6塩基リピートの異常伸長)をもつ患者では,変異をもたない患者よりもC9orf72を認識するT細胞が強く活性化し,IL-10を多く分泌する(図3左).さらに,C9orf72を標的とするT細胞のIL-10応答が強いALS患者ほど,疾患の進行が緩やかで長く生きる傾向にあることが示されました(図3右).
研究チームは,C9orf72全体に複数のエピトープが存在することも突き止めました.特にアミノ酸41〜95,266〜295,361〜445の領域で免疫原性が高く,これらのペプチドは多くのHLAクラスII分子に結合できる「プロミスキュア(promiscuous)」=「多くのHLA分子に結合できる性質」をもつことが示されました.これは,多くの人でC9orf72が免疫の標的となり得ることを意味します.さらに,パーキンソン病やアルツハイマー病患者でもC9orf72に対する免疫反応は見られましたが,ALSとは異なり炎症性のIFNγ反応が優位でした.この違いは,疾患ごとに免疫系の反応の方向性が異なる可能性を示唆しています.
この研究は,ALSが単なる神経変性疾患ではなく,免疫系の異常を伴う自己免疫性疾患的な側面をもつことを初めて証明したものです.特に,抗炎症性IL-10応答が強い患者の予後が良好であったことから,炎症と制御のバランスがALSの進行速度を決定する鍵であることが示唆されます.将来的には,C9orf72に特異的な免疫反応を抑える抗原特異的Treg細胞療法など,免疫を標的とした新たなALS治療法の開発が期待されます.
つまりC9orf72に対する自己免疫反応は,ALSの中核的変化(C9orf72異常・タンパク蓄積)に対して二次的に起こり,その免疫反応の質(炎症性か制御性か)が,疾患の進行速度や予後を左右している可能性があると考えるのが妥当ではないかと思います.すなわち「発症を促す免疫」ではなく,「症候の進行に影響する免疫」と言えるのではないかと思います.
Michaelis T, et al. Autoimmune response to C9orf72 protein in amyotrophic lateral sclerosis. Nature. Published online 2025. doi.org/10.1038/s41586-025-09588-6

・アルツハイマー病発症前の低レベルのAβ蓄積はむしろ脳にとってむしろ良いこと!?―ヒト・コネクトーム・プロジェクト研究―
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年10月9日のFB投稿です**
先日のNHKの番組内(https://pkcdelta.hatenablog.com/entry/2025/09/07/075304)で,アルツハイマー病(AD)の病因蛋白とされるアミロイドβ(Aβ)には善玉としての働き(ヘルペスウイルスに対する防御作用)があることが紹介されました.今回,Journal of Neurochemistry誌に米国ミネソタ大学から,Human Connectome Projectの一貫として,画像解析からもAβは善玉である可能性が報告されました.
60歳以上の認知機能が正常な35名を対象に,アミロイド PETによるアミロイドβ沈着量と詳細な認知機能検査,身体指標,および多面的なMRI指標との関連を解析した研究です.PETではAβ陽性が11例,陰性が24例でした.陽性例も蓄積は軽度で,AD患者に見られるような高度の蓄積ではありませんでした(図1左).
まず分かったことは,Aβ沈着はアミロイド前駆タンパク(APP)の転写パターンとの対応が見られず,正の相関を示したのは海馬傍回のみでした.つまりAβはどうも局所(蓄積した場所)で産生されるのではなく,他の領域から移動・拡散してきた可能性(!)が示唆されます.またAβ蓄積量は年齢や認知・体力指標と負の関係を示さず,むしろBMI・握力・認知機能の得点と弱い正の相関を示した!よって蓄積している方が良さそうということです.
さらにMRI指標との関連では,微細構造の健全性指標(FAやT1w/T2w比)や脳血流(CBF)はAβ量と正の相関を示し,Aβが多いほど組織構造は健全で,血流が多い増加という結果でした(図1右).逆に組織障害を示唆する拡散指標(MD, ODI, WVF)は負の相関を示しました.つまりAβが多い人ほど水の動きが制限され,組織構造がしっかりしているという傾向を認めました.以上より認知機能が正常な人ではAβが神経毒性を持たない可能性が示唆されました.「Aβ=神経毒」という定説を覆すもので,低レベルのAβ蓄積が脳にとって必ずしも悪いものではない,むしろ善玉である可能性を示しています.
そうなると,アミロイドβ抗体薬の効果を最大限に発揮させるために,発症前から治療を開始するというアイデアは,むしろ逆効果となる可能性があります.しかしこの点について,著者らは断定することはできないと言っています.つまりどこかのタイミング(もしくは閾値)で,Aβが病的に転じるか,あるいは防御的役割が破綻するという可能性があるためです(図2).今後はより大規模かつ長期の追跡研究やタウ測定を組み合わせた検証が必要と考えられます.いずれにせよ,発症前,より早期の抗アミロイドβ療法は慎重であるべきと考えられます.
Filip P, et al. Clinical and MRI Correlates of β-Amyloid Load Inconsistent With Its Presumed Neurotoxicity in Cognitively Healthy Ageing. Journal of Neurochemistry. 2025;169:e70241. https://doi.org/10.1111/jnc.70241

・知っておくべき睡眠医学の最前線@『BRAIN and NERVE』2025年10月号
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年10月11日のFB投稿です**
特集テーマとして「脳神経内科と睡眠医学」を企画いたしました(https://amzn.to/4nLZPXZ).現代の臨床現場では,睡眠の質が神経疾患の発症や経過に密接に関わることが明らかとなりつつあります.一方,日本では睡眠医学を専門的に扱う神経内科医がまだ少なく,診療や教育の両面で体系的な知識の共有が求められています.私は以前,頑張って日本睡眠学会総合専門医の資格を取ったのですが,睡眠医学の知識が役立つ臨床の場面はとても多いです.本特集では,睡眠の基礎神経科学から臨床応用までを幅広く取り上げ,脳神経内科医が日常診療で直面する課題に役立つ内容を目指しました.
巻頭の鼎談(写真)では,私が司会を担当し,アジア睡眠学会会長の井上雄一先生,日本神経学会睡眠セクション・チーフの鈴木圭輔先生とともに「睡眠医学の診療と教育」について議論しました(写真).睡眠医学の重要性と脳神経内科との関連,専門医の地域偏在・不足という問題点,社会・行政経も提言,若手医師へのメッセージなど,非常に勉強になり,かつ読み応えのある内容になっていますので,ぜひご一読いただければと思います.
続く総説では,櫻井武先生らによるレム睡眠制御神経回路の最新知見,酒井紀彰先生による「睡眠と脳脊髄液」の解説など,基礎研究と臨床の橋渡しとなるテーマを取り上げています.また,認知症・脳血管障害・自己免疫性脳炎・多系統萎縮症など,神経疾患と睡眠障害の関連を多角的に検討した論文を収録し,睡眠障害が神経疾患の病態や予後にいかに影響するかを明らかにしています.さらに,レム睡眠行動異常症やレストレスレッグス症候群,ナルコレプシーなど,神経内科医が見逃してはならない疾患群についても,第一線の専門家による最新の解説が並びます.
本特集を通じて,睡眠を「神経機能の重要な指標」として捉える視点が広がり,臨床神経学の新たな展開につながれば幸いです.ぜひ,多くの先生方にお読みいただければと思います!
収録原稿一覧
• 【鼎談】睡眠医学の診療と教育(井上雄一×鈴木圭輔×下畑享良)
• レム睡眠を制御する神経回路メカニズム(渡邉綾乃,櫻井 武)
• 睡眠と脳脊髄液(酒井紀彰)
• 知っておくべき睡眠関連疾患の評価法(小栗卓也)
• 認知症と睡眠──双方向的関係について(三島和夫)
• 自己免疫性脳炎と睡眠障害(大野陽哉,木村暁夫,下畑享良)
• 脳血管障害と閉塞性睡眠時無呼吸症候群(赤岩靖久,宮本智之)
• 多系統萎縮症と睡眠関連呼吸障害(中山秀章)
• 神経疾患と特発性レム睡眠行動異常症(西川典子)
• レム睡眠行動障害以外の睡眠時随伴症(野村哲志)
• レストレスレッグス症候群(坪井義夫)
• ナルコレプシーの病態機序(小野太輔,神林 崇)
• 神経疾患による症候性ナルコレプシー(鈴木圭輔,藤田裕明,高橋嶺馬,柏木誠史)
『BRAIN and NERVE』Vol.77 No.10(2025年10月号)
特集:脳神経内科と睡眠医学
https://amzn.to/4nLZPXZ
https://www.igaku-shoin.co.jp/journal/detail/41670

・お気に入りの「ハダカデバネズミ」の長寿の秘密,ついに解明!!ヒトの不老に道を開くか?
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年10月12日のFB投稿です**
ハダカデバネズミという小さな地下げっ歯類は,生物学の常識を覆す不思議な生き物です.体重わずか数十グラムにもかかわらず,寿命は37年に達し,マウスの10倍以上です.しかも老化に伴う死亡率の上昇がほとんど見られず,自然発症のがんもほぼ存在しません.酸素が乏しい地下トンネルで暮らすために,低酸素でも代謝を保つ能力をもちます.私は脳卒中の基礎研究を行っていたので,低酸素状態に強いこのネズミに高い関心を持っていました(→2017年のブログ「ハダカデバネズミの特殊能力と脳梗塞治療」を参照).後輩の池田哲彦先生が誕生日プレゼントに贈ってくださったハダカデバネズミのぬいぐるみを今も大切に部屋に飾っています.

さてこの生物の長寿の秘密をめぐっては,これまでにさまざまな仮説が提唱されてきましたが,2025年10月のScience誌に掲載された中国・同済大学のJiangらの論文は,ついにその分子基盤の一端を明らかにしました.研究チームは,DNA損傷を感知する酵素cGAS(cyclic GMP–AMP synthase)に注目しました.
通常,ヒトやマウスのcGASは,細胞の外から入り込んだDNAを感知して免疫反応を起こす「センサー」として働きます.ところが,最近の研究で,この酵素の一部は核の中にも存在し,DNAの損傷修復にも関わっていることがわかってきました.しかし意外なことに,ヒトやマウスのcGASは修復を助けるのではなく,相同組換え修復という主要なDNA修復メカニズムを抑えてしまうのです.その結果,DNAの安定性が損なわれ,老化やがんの一因になると考えられています.つまり,ヒトを含む哺乳類では,cGASはDNA修復を妨げ老化を招く酵素として働いているのです.
これに対し,ハダカデバネズミでは,cGASのC末端にある4つのアミノ酸(S463,E511,Y527,T530)が進化の過程で置換されていました.このわずかな構造変化が,酵素の働きを根本から変えていたのです.ヒトやマウスでは,cGASはDNA損傷のあと一時的に核内に移動しますが,すぐにクロマチンから離れ,修復を妨げます.一方,ハダカデバネズミのcGASはDNA損傷後も長時間クロマチンにとどまり,DNA修復因子であるFANCIやRAD50を引き寄せて修復を促進する足場として働いていました.つまり,この4つのアミノ酸の置換によって,cGASは「DNA修復を妨げる酵素」から「DNA修復を助ける酵素」へと働きが逆転していたのです.
この分子レベルの変化は,ほかの生物にも明確な効果をもたらしました.果実ハエ(みばえ)にハダカデバネズミ型のcGASを導入すると寿命が延び,マウスにAAVベクターで導入すると,フレイル指数が低下し,白髪や臓器老化が軽減しました.血中の炎症マーカーであるIL-6やIgGも減少し,肝臓や腎臓では老化細胞が減少していました.これらの効果は,4つのアミノ酸をヒト型に戻すと消失したことから,進化的に獲得されたこの分子改変こそが長寿の鍵であることが示されました.
ハダカデバネズミは,上述したようにがん抵抗性,低酸素耐性,社会性行動,痛覚鈍麻など,多くの「異端の哺乳類的特徴」を併せ持ちます.今回の研究は,その生物学的異端性の根底に,DNA修復を最適化する分子進化があることを示した点で画期的だと思います.ヒトの不老研究においても,この小さなげっ歯類が大きなヒントを与えてくれるかもしれません.
Chen Y, et al. A cGAS-mediated mechanism in naked mole-rats potentiates DNA repair and delays aging. Science. 2025;390:eadp5056. doi.org/10.1126/science.adp5056

・頭痛は単なる血管拡張や筋緊張ではなく,神経・血管・脳内ネットワークが連鎖的に反応して生じる!
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年10月15日のFB投稿です**
頭痛の背後にあるしくみはとても複雑であることが分かりつつあります.Brain誌に発表された総説は,片頭痛,群発頭痛,発作性片側頭痛(Paroxysmal hemicrania)・持続性片側頭痛(hemicrania continua),そして後頭神経痛について,「どのように痛みが生まれるのか」を分子レベルから脳のネットワークまで総合的に議論したまさに力作です.「なるほど!」と非常に勉強になりました.
総説では,まず頭痛の多くが「三叉神経・血管系」という共通の回路で説明できることを示しています.頭部や顔面の血管周囲に分布する三叉神経の終末が刺激されると,CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド),PACAP,VIP,サブスタンスPなどの神経ペプチドや,グルタミン酸,セロトニンといった神経伝達物質が放出され,血管を拡張します.その結果,周囲に炎症が起き,神経がさらに興奮して痛みの信号を強めてしまいます.これを「神経血管性炎症」と呼びます.この反応は一度始まると連鎖的に広がり,脳幹にある三叉神経尾側核(trigeminal nucleus caudalis;TNC=三叉神経脊髄路尾側亜核)から視床,大脳皮質へと痛みの情報が伝えられます.TNCは頭痛の病態の中枢構造であり,これらの神経ペプチドの働きを統合し,片頭痛や群発頭痛などさまざまな頭痛疾患をつなぐ共通の「中継ハブ」として機能しています.
また近年のMRI研究では,頭痛を「脳全体のネットワークの異常」として理解する動きが進んでいるようです.例えば片頭痛では,痛みを感じる帯状回,感情を処理する扁桃体,そして視覚をつかさどる後頭葉との結びつきが過剰になります.一方,群発頭痛では,体内時計を制御する視床下部の活動が異常化し,発作の周期性や季節性に関与しています.さらに頭痛患者では,脳が「休んでいるとき」に働くネットワークにも異常が見られます.たとえば,思考の背景活動を担うデフォルトモードネットワーク,刺激の重要性を判断するサリエンスネットワーク,そして体の感覚や運動を調整する感覚運動ネットワークが,それぞれ過剰に結びついたり,逆に連携が弱まったりしていることが報告されています.こうしたネットワークの異常は,痛みに対する過敏さだけでなく,注意の集中困難や倦怠感,気分の変化など,頭痛に伴う多様な全身症状の背景を説明する手がかりになります.
図は頭痛性疾患のメカニズムをまとめた模式図です.大きく5つの経路で構成されています.これらは互いに連動し,頭痛の痛み・自律神経症状・周期性・前兆などを生み出します.
1.三叉神経終末から三叉神経尾側核(TNC)への経路(ピンク)
頭部や硬膜の血管周囲に分布する三叉神経の末端(V1-3)が刺激されると,CGRPやPACAP,サブスタンスPなどの神経ペプチドが放出され,血管拡張と炎症を引き起こす.この刺激は三叉神経節(TG)を経てTNCに伝わり,頭痛の痛み信号の起点となる.
2.TNCから視床・皮質への上行経路(黄色~灰色)
TNC(二次ニューロン)が交叉して上行し,視床(thalamus)を介して一次体性感覚野(SI),二次体性感覚野(SII),島皮質(INS),前帯状皮質(ACC),および背外側前頭前野(dlPFC)に信号を送る.SIとSIIは痛みの感覚的側面を,INSとACCは情動的側面を処理し,dlPFCは痛みに対する注意・認知・抑制制御を担う.これらの領域が連動して活動することで,痛みが意識的に知覚され,中枢感作が形成される.
3.三叉神経・自律神経反射経路
TNCの活動が上唾液核(SSN)を介して翼口蓋神経節(SPG)に伝わり,涙腺や鼻腺が刺激される.これにより涙や鼻閉といった自律神経症状が起こり,特に群発頭痛や片側頭痛性疾患に特徴的である.
4.視床下部・概日リズム経路
視床下部の視交叉上核(SCN;図中になし)が網膜からの光刺激を受け取り,SSNやTNCの活動を調整する.この経路は発作の時間帯や季節性を決める体内時計の中枢として働き,群発頭痛の周期性を説明する.
5.皮質拡延性抑制(CSD)経路
視床からの入力や皮質の過興奮により,後頭葉を起点に神経脱分極の波が広がり,一過性の血流変化とともに前兆(アウラ)を引き起こす.CSDは三叉神経系を再刺激し,CGRP放出を促すことで痛みを増幅する.
疾患ごとに分子・ネットワークの視点から考えると,片頭痛では後頭葉で起こるCSDが前兆の原因となり,CGRPや一酸化窒素(NO)の放出が痛みを増幅します.群発頭痛では視床下部の異常活動がリズム的発作を引き起こし,PACAPやCGRPの変動を伴います.発作性片側頭痛・持続性片側頭痛では,これらの経路が慢性的に刺激されており,インドメタシンが有効なのは神経炎症の経路の抑制を介していると考えられます.後頭神経痛では末梢神経の圧迫や感作が痛み信号を三叉神経系に送り込み,中枢での感作とネットワーク異常を引き起こします.このように,すべての頭痛は共通の回路を持ちながらも,関与する分子・領域・ネットワークの組み合わせの違いで症状が異なるのです.
これらの研究の成果は,新しい治療法の開発にも直結しています.CGRP関連抗体はこの経路を直接標的にし,発作頻度を減らす効果が示されています.また迷走神経刺激(nVNS)や後頭神経刺激(ONS)といった神経刺激療法は,脳幹や視床を介して三叉神経系の過剰な興奮を抑制し,痛みネットワーク全体のバランスを整えることが目的です.これらの治療法は「末梢から中枢ネットワークを調整する」アプローチであり,神経活動の連鎖を再同期させることで過敏な状態をリセットする仕組みと考えられています.
以上のように,頭痛はもはや単なる血管拡張や筋緊張ではなく,神経・血管・脳内ネットワークが連鎖的に反応する「脳全体の過敏状態」としてとらえられる時代になったと言えるのだと思います.
Kollenburg L, et al. Bridging the gap: molecular mechanisms, regional activity, and connectivity in headache disorders. Brain. 2025; doi.org/10.1093/brain/awaf361

・パーキンソン病は地球規模の環境病である―三大原因としての農薬,トリクロロエチレン,PM2.5―
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年10月18日のFB投稿です**
パーキンソン病(PD)の患者数は世界的に急増しており,いまやパンデミックと呼ぶべき状況にあります.その要因の多くは遺伝ではなく環境にあると考えられています.Lancet Neurology 誌最新号に掲載された米国ロチェスター大学のDorsey教授らによる総説は,PDの発症に関わる主要な環境毒性物質とその予防の可能性について論じています.とくに3つの環境要因が問題であると指摘しています.
第1は農薬です.パラコート,ロテノン,有機塩素系殺虫剤などであり,パラコート散布地域に住む人の発症リスクは2倍に上昇するそうです.ロテノンはミトコンドリア複合体Iを阻害してドパミン神経を選択的に障害します.胎児期や乳児期の曝露によるエピジェネティック変化が後年の神経変性を誘発する可能性も指摘されています.図1は,2000年から2020年にかけての世界の農薬使用量の変化を示しています.全体としてなんと約300%の増加がみられ,特に南米,アジア,アフリカで顕著です.日本も増加傾向にあり,欧州諸国のような削減政策は十分に進んでいません.
第2はトリクロロエチレン(TCE)およびパークロロエチレン(PCE)です.これらはドライクリーニングや脱脂剤として長年使用されてきた有機溶剤です.米海兵隊キャンプ・ルジューン基地では,これらの化学物質を含む汚染水への曝露歴をもつ兵士のPD発症率が70%高く,平均2年間の短期間曝露であっても,約34年の潜伏期間を経て発症したと報告されています.TCEはミトコンドリア障害やLRRK2キナーゼの異常活性化を引き起こし,吸入曝露では少量でも黒質ドパミン神経変性を生じます.
第3は大気汚染です.PM2.5への曝露とPDリスクの上昇は,カナダ,韓国,スイス,英国などの研究で確認されています.PM2.5は嗅神経経路から脳内に侵入し,酸化ストレスや炎症,αシヌクレインの線維化を誘発します(ブログ参照;https://pkcdelta.hatenablog.com/entry/2025/09/09/042758).図2は「2019年の世界PM2.5曝露マップ」で,50μg/m³を超える濃度の地域がアジアやアフリカを中心に広がっています.世界人口の99%がWHO基準(年平均5μg/m³未満)を超える空気を吸っており,日本の平均値は10〜15μg/m³と欧米(5μg/m³前後)より明らかに高く,「健康に悪い空気」を吸っている国の一つです.著者らは,この曝露こそがPDが最も急速に増加している神経疾患となった原因だと指摘しています.
これら2つの図は,「PDは地球規模の環境病である」という主張を明確に裏づけています.日本も例外ではなく,農薬使用量と大気汚染の両方が高い水準にあり,将来的な神経疾患増加リスクを抱えています.著者らは,吸入経路の重要性にも触れています.嗅球から病変が始まることが多い点は,吸入毒性物質の侵入経路と一致していますし,胎児期や乳児期の曝露,職業性曝露,遺伝的素因との相互作用などがリスクを増幅すると考えられます.
予防策はあるのでしょうか?防護具の使用,汚染の監視と是正,安全な代替物質の導入により,曝露を減らすことは可能です.また現状では,研究資金のほとんどが治療研究に偏り,予防研究への投資はわずか2%にとどまっているそうです.Dorsey教授らは,予防原則を政策に組み込み,パラコートやTCEなど明らかに有害な化学物質を段階的廃止すべきだと訴えています.つまりPDは「予防可能な疾患」であり,原因物質への曝露を減らすことができれば,つぎの世代をこの疾患から守ることができる――それが著者らの強いメッセージです.
Ray Dorsey E, et al. Environmental toxicants and Parkinson’s disease: recent evidence, risks, and prevention opportunities.Lancet Neurology 2025; 24: 976–986.https://www.thelancet.com/…/PIIS1474-4422(25…/fulltext

関連情報
10月30日のFB投稿(岐阜大学脳内抄読会 第99回)で、「歩行中のUターン速度はパーキンソン病発症の予測因子となる」という面白い論文を紹介されています。

・アデュカヌマブによるアミロイドβ除去は脳表近くに限られている!
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年10月20日のFB投稿です**
アデュカヌマブは,アルツハイマー病に対してアミロイドβ(Aβ)を標的にした疾患修飾療法として開発されたモノクローナル抗体です.2015年にBiogen社とEisai社が共同で臨床試験を開始し,Aβプラークを大幅に減少させることがPETで確認されました.臨床的な認知機能改善効果は一貫しなかったものの,一部のサブグループで若干の改善効果が示されたことから,Biogen社は2021年に米国FDAへ承認申請を行い,同年6月に条件付きで迅速承認を受けました.ところが,その有効性に関して国内外で強い議論を呼び,副作用としてのARIAの頻度の高さも問題となり,最終的にBiogen社は2024年1月に販売を終了し,開発を打ち切りました.その後に登場したレカネマブやドナネマブは,より選択性が高く副作用の少ない抗体として設計されていますが,その基礎となったのがアデュカヌマブです.今回紹介するLancet Neurology誌に掲載された剖検研究は,アデュカヌマブを投与された5例と未治療12例の剖検脳を比較し,この抗体が実際に脳のどこでどのようにAβを除去していたのかを初めて詳細に示したものです.
治療群の全例がAPOE ε4を保有し,うち2例がPSEN1変異を有していました.PETでAβが6〜81%低下していたにもかかわらず,剖検ではAβ除去は脳表近くに限局していることが明らかになりました.図上では,最初の10例(治療群5例と未治療群5例)に対して汎Aβ抗体によるDAB染色が行われています.未治療群では大脳皮質全層にAβ沈着がみられますが,治療群では大脳皮質の最表層(第I層)でのみ著明なAβ減少が認められ,下層ではAβが依然として残存していることが分かります.
図下では,同一症例の中前頭回を対象にしたAβaa1–8抗体による多重蛍光免疫染色が示されています.この抗体はAβペプチドのN末端(1〜8番アミノ酸)を認識する最も一般的な「全Aβ量」を示すマーカーで,アデュカヌマブ自身もこの領域を標的にしているため,この抗体で染まるAβが実際に除去対象になっていると考えられます.右側のボックスプロットで分かるように,Aβaa1–8は第I層で有意に低下していますが(p<0.01),全層では減少がみられませんでした.Aβ42でも同様の有意な低下がみられ,ピログルタミル型AβおよびAβ40も表層で減少傾向を示しました.
この結果は,アデュカヌマブが分子量約150 kDaと大きく,血液脳関門をほとんど通過できない(脳実質内到達は血中の0.1%未満)ことと関係しています.そのため,主に軟膜や皮質表層の血管周囲からわずかに脳内へ浸透し,その届く範囲に作用が集中すると考えられます.今回の剖検研究は,まさにこの「表層優位」の作用分布を病理学的に裏づけた結果となりました.
この「表層偏重」の除去はPET画像との乖離を生みます.アミロイドPETでは,表層のAβが減少すると信号全体が低下し,Aβが広範に除去されたように見えます.しかし実際の病理では,深部皮質層に多くのAβが残っており,PETで減少が見えても全層の除去を意味するわけではないことが明らかになりました.著者らはこの点を強調し,「PETシグナルの減少は部分的除去を反映しているに過ぎない」と述べています.これはAβ抗体治療の効果判定におけるPET画像の限界を示す重要な知見です.
また,ARIAを呈した症例ではMRIで確認された部位に対応して,皮質表層や髄膜下血管周囲に鉄沈着を伴う微小梗塞,補体活性化(C5b–C9),マクロファージやミクログリアの浸潤(CD68陽性)がみられました.これらはアミロイド血管症関連炎症(CAAri)と共通する病理像であり,Aβ除去に伴う血管壁の炎症がARIA発生の要因であると考えられます.さらに,死亡までの期間が長い症例では再沈着を思わせるAβ再蓄積も認められ,治療後にも進行性変化が続くことが示唆されました.
この層特異的なAβ除去の現象は,アデュカヌマブに限らず,他のAβ抗体であるレカネマブやドナネマブでも生じている可能性があります.これらの抗体も血液脳関門を越えて広く脳内に拡散することが確認されていないためです.今後のAβ抗体療法では,血液脳関門を通過してより広く脳内に拡散できる抗体設計や投与法の改良が求められます.
Boon BDC, et al. Neuropathological changes and amyloid-related imaging abnormalities in Alzheimer’s disease treated with aducanumab versus untreated: a retrospective case–control study. Lancet Neurology. 2025;24:931–944. https://www.thelancet.com/…/PIIS1474-4422(25…/fulltext

・進行性核上性麻痺の典型例Richardson症候群は均一ではなく,臨床的・病理的に多様性をもつスペクトラムである
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年10月22日のFB投稿です**
進行性核上性麻痺(PSP)の典型型Richardson症候群(PSP-RS)は,2017年に策定されたMDS-PSP診断基準では均一な症候群として定義されていますが,米国Mayo Clinicのグループから実はそうではないのだとする報告がなされました.
著者らはMDS-PSP基準でprobable PSP-RSと診断した118例を対象に,認められた各症候の関連を可視化したネットワーク解析と,患者群を分類するクラスター解析を行い,PSP-RSが均質な集団かどうかを検証しました.その結果,まず16種類の症状は5つのクラスター(①光過敏,②認知・遂行機能障害,③振戦,④眼球運動障害,⑤無動・固縮・失行)に分類されました.興味深いのは,無動・固縮が強い患者ほど眼球運動は比較的保たれる一方で(図の赤い線=負の相関),認知機能障害とは負の相関を示しました.つまり無動・失行が重いほど認知機能が悪いということです.また,光過敏や振戦は他の症状と関連せず独立して存在し,眼球運動障害群では垂直方向の運動障害と水平方向の運動障害が密接に結びついていました.以上の結果から,PSP-RSの症候は無秩序の組み合わせで出現するのではなく,特定の組み合わせで出現するということが分かりました.
患者群を分類するクラスター解析では2群に分かれました.Cluster Iは症状が重く,典型的なPSP-RS像を示しました.一方,Cluster IIは症状が軽く,臨床的にはPSP-CBSやPSP-Pなど,他のPSP亜型と診断される割合が高い群でした.注目すべきは,Cluster IIでは剖検でPSP病理を伴わない例(具体的にはCBD,MSA,GGTなど)が有意に多かった点です(p=0.03).つまり,MDS-PSP基準でPSP-RSと診断されても,実際にはPSPではない異なる病理をもつ症例が一部含まれうるということになります.ただ個人的に関心がある自己免疫性脳炎は含まれておらず,典型例では考慮しなくて良いと言えるということだと思います.
この論文のメッセージは明確です.PSP-RSは単一の病型ではなく,臨床的にも病理的にも多様性をもつということです.昨今,診断基準を万能と考えてしまう傾向がありますが,例外があることを認識する必要があると思います.症候の組み合わせや経過,画像・バイオマーカーを通じて真のPSPを見抜く姿勢が求められるのだと思います.
Kumar M, et al. Evaluating the Homogeneity of the PSP-RS Syndrome beyond Core Features. Movement Disorders Clinical Practice. 2025;12(10):1560–1570. doi.org/10.1002/mdc3.70134

・「自己免疫性精神病」を独立した疾患単位とみなすべきではない!
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年10月23日のFB投稿です**
Journal of Clinical Investigation誌の最新号に掲載された総説です.抗NMDA受容体脳炎の発見者であるJosep Dalmau教授らが,「自己免疫性精神病(autoimmune psychosis)」という概念を独立した疾患として扱うべきではないと明確に述べています.
著者らは,まず精神病という症候群が統合失調症に限らず,自己免疫性や炎症性疾患,さらには神経疾患の一部としても出現し得ることを示しています.中でも抗NMDA受容体脳炎では,幻覚,妄想,興奮,不眠などの精神症状で初発することが多く,統合失調症と誤診されることもあります.その病態は,抗NMDA受容体抗体が神経細胞表面の受容体を内在化させ,シナプス伝達を可逆的に障害することによるものです.つまり,炎症による破壊ではなく,免疫反応によって神経の情報伝達そのものが変化し,その結果として精神症状が生じるという新しい仕組みが明らかになったわけです.
図は「精神病の3つの神経化学的仮説」を示すものです.ドパミン過活動仮説,NMDA受容体機能低下(グルタミン酸)仮説,セロトニン仮説の3つを示し,抗NMDA受容体脳炎がグルタミン酸仮説に合致することを示しています.抗体が前頭皮質のGABA介在ニューロン上のNMDA受容体を内在化させると抑制性制御が失われ,興奮性ニューロンから中脳腹側被蓋野(VTA)への入力が過剰になります.その結果,報酬系である中脳辺縁系ドパミン経路が過活動となり,幻覚や妄想といった精神病症状が出現します.この回路異常は,ケタミンなどのNMDA受容体拮抗薬が誘発する幻覚モデルと同じ機序であり,抗体が精神症状を引き起こす病態機序を明確に示すものです.著者らは,このように免疫と神経伝達の関係を適切に理解することが,今後の精神医学研究の発展につながると強調しています.
一方で,「自己免疫性精神病」という名称の乱用には強い警鐘が鳴らしています.抗NMDA受容体脳炎やSLEなど既知の自己免疫疾患による精神症状をすべて包括してしまうと,診断が曖昧になりかねないということです.また,抗体の血清検査を無分別に精神疾患患者に行うと,非特異的な陽性反応を示す例が生じ,実際には自己免疫性脳炎でない患者にまで免疫治療が行われる危険があると指摘します.実際,これまでの研究では統合失調症や気分障害の患者におけるNMDAR抗体陽性率は約1%で健常者と差がありません.脳脊髄液で抗体陽性であった患者のほとんどは臨床的に抗NMDA受容体脳炎と診断可能ですが,血清のみ陽性の患者は非特異的反応である可能性が高く,診断的価値は低いとされています.
著者らは,「自己免疫性精神病」という言葉は一見わかりやすいものの,科学的定義があいまいで,既知の自己免疫性脳炎や全身性疾患を一括して扱うことで診断の特異性を損ね,臨床の混乱を招くおそれがあると述べています.精神病と免疫の関係を探ること自体は重要ですが,その第一歩は既知の自己免疫性脳炎を正確に診断し,精神症状との関連を検証することにあるとしています.また,初発精神病や抗精神病薬不耐例で異常行動や意識変容がみられる場合には,脳波,MRI,脳脊髄液検査を組み合わせて抗体性脳炎を除外することが推奨されています.結論として,自己免疫が関与する精神症状は確かに存在しますが,「自己免疫性精神病」という新しい疾患単位は現時点で存在しないということになります.
Cabrera-Maqueda JM, Planagumà J, Guasp M, Dalmau J. Autoimmune neuropsychiatric disorders manifesting with psychosis. J Clin Invest. 2025;135(20):e196507. https://doi.org/10.1172/JCI196507

・機能性運動障害に対するリハビリのコツ ―Physio4FMD試験から学ぶ―
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年10月26日のFB投稿です**
先日,機能性神経障害(FND)の患者さんをご紹介いただき,とくにリハビリの進め方についてご相談を受けました.適切にご説明するため,2024年にLancet Neurology誌に報告されたPhysio4FMD試験をあらためて読み直しました.この研究は,FNDに対する「脳の予測モデル」に基づいた新しいリハビリの方向性を示した,非常に示唆に富むものです.
FNDは「体を動かしたいのに動かない」「勝手にふるえてしまう」などの症状を呈します.脳に器質的な異常はないものの,脳が体の動きを誤って予測してしまうことが原因と考えられています.私たちの脳は,常に「これから何が起こるか」を予測しながら運動や感覚を制御しています.つまり脳は日常生活の中で,「予測」と「実際の感覚入力」を比較しながら行動を調整しているのです.例えば,「右手を上げる」と予測したとき,実際に手が上がるという感覚が一致すれば,脳は「自分が動かした」と理解します.この仕組みを説明する理論が「ベイズ的予測モデル(Bayesian model)」です.しかしFNDではこの予測と感覚がずれてしまい,「動かそうとしても動かない」「勝手に動く」という誤作動が起こります.このずれ(予測誤差)を修正し,脳が正しい動作感覚を再び学び直すことがリハビリの目的になるということです.ですから通常のリハビリとは大きくアプローチが異なります.
論文のPhysio4FMD試験は,英国で行われた多施設ランダム化比較試験で,「確実なFMD」と診断された成人355例を対象としました.9回の専門的理学療法とフォローアップを行う群と,地域の一般的理学療法に紹介する群に無作為化され,主要評価項目は12か月後のSF-36身体機能スコアでした.最終的にコロナによる中断がなかった241例(専門群138,通常群103)が解析対象となりました.結果としては,身体機能スコアには有意な差はみられませんでしたが,自己評価による症状改善(CGI-I)では専門的理学療法群が一貫して良好な結果を示しました.6か月の時点で改善または著明改善と答えた人は専門群で大多数を占め(63%対28%,オッズ比4.7),12か月後でもその効果は持続していました(59%対39%,オッズ比2.3)(図).精神的健康スコアや診断に対する信用も専門群で向上し,重篤な副作用は報告されず,安全に実施できる治療であることが確認されました.
Physio4FMDで行われた専門的理学療法は,従来の筋力強化や動作矯正とは異なり,脳の誤作動を修正するように設計されています.リハビリは三つの柱から構成されていました.
① 症状の理解を助ける教育;体は壊れていないが脳の信号伝達が一時的に乱れていることを説明し,不安を軽減する.
② 注意の再方向づけ;「手を動かそう」と意識するほど動けなくなるため,音やリズム,視覚的目標など外的刺激に注意を向けながら,自動的な動作を誘発する.
③ 自己管理と再発予防;ワークブックを用いて,自宅での練習や再発時の対応を学ぶ.
理学療法士は全員が5日間の集中トレーニングと標準化マニュアルを修了し,患者の理解と自己効力感を高めるための関わりを重視しました.「動かそう」と強く意識すると,脳は過剰に予測を立ててしまい,感覚とのずれが拡大します.この逆転現象がFNDの特徴であり,リハビリでは「どう動かすか」ではなく「どう意識しないか」を練習することが重要となります.症状の改善は「自分の体を再び信じられるようになること」によりもたらされます.よってリハビリの目的は,まさにその「自己効力感の回復」にあります.体が壊れていないという理解を深めること,動作を意識しすぎずに外的な目的に集中すること,わずかな成功体験を大切にして脳に「できた」という感覚を刻むこと,症状が出たときは深呼吸して落ち着き,再発しても「前より早く戻れる」と信じること,これらがリハビリの実践的ポイントです.
以上をまとめると,リハビリの具体的な指針は次の通りです.
• 体が壊れているわけではないと理解し,安心して取り組むこと.
• 「動かそう」と意識せず,音やリズム,物体操作など外の目的に注意を向けること.
• 「手を動かす」ではなく,「ボールを投げる」「風船を打つ」と考えること.
• 少しでも動けたら「できた」と実感し,その成功体験を積み重ねること.
• 症状が出たときは焦らず深呼吸し,「また動けるようになる」と思い出すこと.
• 再発しても「以前より早く回復できる」と考え,落ち着いて対処すること.
Nielsen G, et al. Specialist physiotherapy for functional motor disorder in England and Scotland (Physio4FMD): a pragmatic, multicentre, phase 3 randomised controlled trial. Lancet Neurol. 2024 Jul;23(7):675-686. doi.org/10.1016/S1474-4422(24)00135-2

・胎児を守る抗てんかん薬の選択――フランスにおける10年の劇的な変化
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年10月28日のFB投稿です**
抗てんかん薬(antiseizure medications;ASM)は,てんかんのほか気分障害,慢性疼痛,片頭痛などにも広く用いられていますが,一部の薬剤は胎児に奇形や神経発達障害をもたらすことが知られています.フランスのEPI-PHARE研究チームは,全国母子レジストリ「EPI-MERES」を用い,2013〜2021年に終了した約870万件の妊娠を解析し,抗てんかん薬の胎児曝露の推移を明らかにしました.
この期間に少なくとも1種類の抗てんかん薬に曝露された妊娠は55,801件で,全妊娠の0.64%にあたりました.薬剤を安全性に基づいて分類すると,「最も安全」とされるラモトリギンとレベチラセタムへの曝露が約半数,「リスク不明群」(プレガバリン,ガバペンチン,エトスクシミド,ラコサミド,ペランパネル,ゾニサミドなど)が約3分の1,「リスク既知群」(バルプロ酸,バルプロミド,カルバマゼピン,トピラマート,フェニトイン,フェノバールなど)が約4分の1を占めていました.
図に示されるように,2013年から2021年の間で薬剤の構成は劇的に変化しました.バルプロ酸とバルプロミド(バルプロ酸のプロドラッグ)への曝露妊娠はそれぞれ−84%,−89%と急減し,リスク軽減策が効果を上げていることが明らかになりました.代わって,ラモトリギンとレベチラセタムといった安全性の高い薬剤が大きく増加し,それぞれ+22%,+64%の上昇を示しました.ラモトリギンはもともとてんかんに多く使用されていましたが,この10年間で気分障害に対しても用いられる割合が増加したようで,2013〜2015年の15%から2019〜2021年には23%へと拡大しました.これは,ラモトリギンが「胎児への安全性が比較的高い薬」として,精神科領域でも選択される傾向を反映しています.私も良く認識していなかったのですが,日本でもその適応に「双極性障害における気分エピソードの再発・再燃抑制」があります.
一方,プレガバリンやガバペンチン,新規抗てんかん薬(ラコサミド,ゾニサミドなど)の使用は急増しました.とくにプレガバリンでは,妊娠全期間を通じての曝露が+171%に増加しており,胎児がより高用量・長期間曝露されていることが懸念されます.カルバマゼピンやトピラマートの使用も緩やかに減少したものの,依然として2019〜2021年の3年間だけでそれぞれ約600件の出産曝露がみられました.トピラマートは海外では片頭痛にも使用されています.
母体背景をみると,抗てんかん薬曝露妊娠の母親は非曝露群よりも高齢であり,また低所得層の割合が高い傾向にありました.とくにリスク既知薬および不明薬の使用群では,低所得層が約18%に達し,安全な薬剤群(約14%)よりも多く,社会的格差の影響が示唆されました.
著者らは,バルプロ酸曝露の劇的減少は,2015年以降に強化された欧州医薬品庁の妊娠回避プログラムの成果であるとしながらも,その一方で,安全性が十分に検証されていない薬剤の使用が拡大している現状を強調しています.特にプレガバリンや新規抗てんかん薬の使用増加は,今後のリスク評価が急務であると述べています.また,社会的に不利な立場にある女性ほどリスクの高い薬剤を使用している傾向があるため,妊娠前カウンセリング,避妊支援,医療アクセス改善の必要性が強調されています.日本においても同様の処方傾向が生じている可能性があります.妊娠可能年齢の女性への抗てんかん薬処方の在り方を見直す契機となる重要な論文です.
Shahriari P, et al. Trends in Prenatal Exposure to Antiseizure Medications Over the Past Decade: A Nationwide Study. Neurology. 2025;105:e213933. doi.org/10.1212/WNL.0000000000213933

(作成者)峯岸 瑛(みねぎし あきら)