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アルツハイマー病で血液脳関門が破綻するメカニズム パーキンソン病・多系統萎縮症の自律神経障害をベッドサイドでどう診るか? マイクロプラスチック ロボットオリンピック 中田瑞穂先生 医療AIの本当のインパクト 打腱器Percuflex 機能性神経障害(FND) 片頭痛予防療法 睡眠中の「ピンクノイズ(音刺激)」 脊柱管狭窄 自己免疫性神経疾患に対するin vivo CAR-T療法 自己免疫性神経疾患の発症から再発までをつなぐ7段階のカスケード 頭蓋骨骨髄は「脳のすぐ隣の免疫器官」である 骨粗鬆症

2026年9月のニュース

今月紹介する2つの論文は、「脊柱管狭窄症」と「骨粗しょう症」の新たな治療法につながる可能性のある研究です。岐阜大学医学部の下畑先生からの最新医学情報に見られるように医学の進歩は日進月歩ですが、北京で開かれたロボットオリンピックを見る限り、現実世界で人間の代わりとして汎用的に機能するには、知的処理能力や手先の器用さの面でまだ距離があるようです。
特別企画:AIに訊くは、「切り替えの統合理論」を踏まえて、Geminiに混迷を深める世界情勢について訊いてみました。

1.2026年9月の活動状況
・柳澤 光宏さんの投稿
ARIKAMO 大学生の夏休み中を利用した2泊3日の企業インターン&研修にシナノも参加しました。 ポールウォーキングを体験してもらい、普及活動についてチームで考えてもらいました。この中からシナノに来てくれる人がいたらラッキーですが、それよりも参加した学生の成長に繋がり、社会人として何かの役に立つことを祈っています(^.^) それにしても、しっかり自分の意見を言えるし、発表もちゃんとしているしスゴイな!!

・スマイルチームさんの投稿
20260903 午前中は毎月第一木曜日定例 スマイルチームポールウォーキング。 天気予報が微妙だったので、予め室内活動に変更。 今日は モルックを使った独自のゲーム【スマイルモルック】を楽しみました😊 脳トレも、、、楽しみました😂 #スマイルチーム #ポールウォーキング #モルック #脳トレ #相模原市南区東林公民館

・台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
【健走杖運動團練】外木山情人湖濱海大道 藍天白雲、山海相伴 健走杖運動教練們齊聚基隆外木山 一同完成 5.5公里團練!💪🥾 走出健康與活力,也走出滿滿的默契與歡樂~ 流汗後再一起享用美食🍽️,為這趟山海健走畫下幸福句點。😋 期待下一次再相約❤️ #健走杖運動 #教練團練 #雙杖在手健康跟著走

・とちぎポールウォーキング会さんの投稿
平均台に乗ってのポールウォーキングピラティスプログラムはじめています。

・中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より 9月PW駒場例会でした。 朝から雨予報が出ている例会日でしたが、いつもの様に参加者集合〜 晩秋を思わせる寒さの中(17℃)での 公園〜牧場のポールウォーキング闊歩でした。羽織物も暖を取る支度となりました〜ww まだまだPWイベントは続きます。 次回は 9/13(日)鈴与マタイスポーツパーク(旧佐久総合運動公園)PW散策です。 9/19(土)は〜佐久ぴんころウォーク〜‼️

・田村 芙美子さんの投稿
秋の長雨? 毎日よく降ります。 昨日までPW教室は蒸し暑くクーラーを入れていましたが 今日は暖房が欲しくなる涼しさです。大雨の被害のあった地域は復興が大変だろうとお見舞い申し上げます。 今日は教室は期末休暇なのに寒くて表に出る気になれません。裏のお宅から頂いた紫アザミとルエリア (写真↓和名=ヤナギバルイラソウ)が蕾を開きました。その横で大きな向日葵も今頃咲き始めて震えています🌻🌻🌻

・校條 諭さんの投稿
気まポ 夕暮れウォーク(9月12日) いつもは午前に歩くのですが、9月の気まポ(気ままにポール歩き)は、夕方5時集合という設定にしました。昨年までの例だとまだ猛暑に近い天候だったのでそうしたのですが、今年は長雨の影響で涼しいですね。 JR西荻窪駅から出発して、桃井原っぱ公園、杉並会館を経て、荻窪八幡神社のお祭りに立ち寄りました。 杉並会館は、アニメミュージアムの入っている施設で、宴会場や会議室などがあります。これまで何度も入ったことがありますが、毎日新聞の「レトロの美」という連載記事で最近取り上げられたのをきっかけに、今回改めて建物に注目しました。 職員の方に、見学をお願いして、ロビーで、寄せ木細工の床、陶板の壁、らせん階段などのアートをじっくり見ることができました。わざわざ照明を明るく切り替えてくださって助かりました。 ゴールは、西荻の洋食みかさでカンパイ。ステーキやハンバーグなど、各自好きなメニューを選んで楽しみました。 今回、風邪引きやイベントなどのため常連男子が欠席で、男子は私ひとりでした(^^)。

・中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より PW散策日〜 本日は〜鈴与マタイスポーツパーク/ 旧名佐久総合運動公園〜外周路PW散策〜プラス希望者にてのマレットゴルフ大会〜でした❗️ 1週間振りの太陽の下の散策で、参加者の笑顔もひとしおに〜‼️ @ ランチ(地元お弁当屋さん🍱)を挟み 公園内のマレットゴルフ場(一面芝生の)で18ホールを希望者(20 名程)で体験プレイでした。 世話人さんの指導で良い体験が出来皆さん大喜びでハマりそうなご夫婦も出現でした。 皆さんお疲れ様でした〜^_^ PS:さいたま市へ帰る〜遠藤コーチ〜より 内山/コスモス街道のコスモスも最盛期に〜の連絡でした。

・水間 孝之さんの投稿
第14回びんころウォーク800名を超える皆さんに参加いただきました。 台湾ポールウォーキング協会、群馬県ポールウォーキング協会、チームみなとみらいの皆さん遠くからご参加ありがとうございました。 来年もお待ちしております♪♪

・校條 諭さんの投稿
人が倒れているのを見つけたら ①「わかりますか?」と呼びかけ ②「誰か来てください!人が倒れています」と叫ぶ ③来た人に頼む   「あなたはAEDを持ってきてください」(誰か・・ではなく)  「あなたは119番通報してください」 ④呼吸の確認 ⑤胸骨圧迫 ⑥AED到着 音声の指示とおり開始(胸部圧迫、可能なら継続) 懸案の救命講習を受けてきました。ノルディックウォーキングの指導者講習のときの資格認定条件だったのですが、「受講見込み」ということで取得できたのが何年か前でした。 自宅から最も近いAED設置場所は190m離れたところにある介護施設です。両親が訪問介護やショートステイでお世話になったところで、24時間あいています。 なお、AEDの電極パッドは胸と脇腹の素肌に装着します。ですから、街中で倒れている女性にAEDを使うのをためらってしまいそうだと思っていたのですが、装着後タオルなどをかけて隠してもよくなったそうです。 参加は16人、女性の方が多く若年~中年層中心。私はたぶん最年長だったでしょう。 救命講習は最寄りの消防署などで受講できます。とても有意義です。参加をお勧めします(検索ですぐ出てきます)。

 

来月以降の開催
・長岡智津子さんの投稿
写真1件

 

2.PW関連学術ニュース
2-1)ヒューマノイドロボットの現状~第2回世界ヒューマノイドロボット競技大会~

ヒューマノイドロボットの進化の現状を伝える「ロボットオリンピック」のニュースがNature誌に掲載されています。

NATURE NEWS、27 August 2026
表題:‘Robot Olympics’ reveal humanoids’ rapid progress — and flaws
Humanoid robots broke records at sporting events such as sprints, but struggled at practical tasks such as hammering nails.
(和訳:ロボットオリンピック」が明らかにしたヒューマノイドの急速な進歩と、その欠点~人型ロボットは短距離走などのスポーツ競技で記録を塗り替えたが、釘を打つといった実用的な作業では苦戦した。)
著者:Kaia Glickman
北京で開催された第2回世界ヒューマノイドロボット競技大会の戦闘イベントで、ロボットたちが競い合っている。写真提供:Lintao Zhang/Getty Images

***以下は、このニュース記事についてのGeminiとの会話記録(2026年8月31日)です***

Q1:こんにちわ!次のニュース記事の要点をまとめて下さい。ニュース記事のタイトルです。「NEWS 27 August 2026
‘Robot Olympics’ reveal humanoids’ rapid progress — and flaws
Humanoid robots broke records at sporting events such as sprints, but struggled at practical tasks such as hammering nails.
By Kaia Glickman」

A1:2026年8月27日付のNature誌(Kaia Glickman記者)に掲載された記事「‘Robot Olympics’ reveal humanoids’ rapid progress — and flaws」の要約です。

ニュース記事の要点 (Life Science Network)

1. 運動能力における驚異的な飛躍
北京で開催された第2回「世界ヒューマノイドロボット競技大会(いわゆるロボット・オリンピック)」において、ヒューマノイドロボットは著しい身体的能力の向上を示しました。 (医薬政策企画 P-Cubed)
•記録更新: X-Humanoid社のロボットが100メートル走で8.64秒(または競技中の走破で人類最速記録を上回るタイム)を記録したほか、垂直跳び(高跳び)でも3.4メートルに達するなど、人間のアスリートを凌駕する運動能力を実証しました。 (医薬政策企画 P-Cubed)
•技術的要因: あらかじめ指定された軌道や出力を正確に再現する走行やジャンプ、モーターの液冷化によるトルク向上などが、この劇的なパフォーマンス向上を支えています。(Mirage News他 1 件)

2. 実用的な作業や認知面での課題・欠陥
一方で、日常的・産業的な実用タスクでは依然として大きな課題が露呈しました。
•不器用さと精度の不足: 釘を打つといった微細な力加減や高精度が求められる作業、状況に応じた柔軟な対応では苦戦が目立ちました。
•自律性と環境認識の壁: あらかじめプログラミングされた直線的・単純な運動とは異なり、ミリ単位の調整が必要な「最後の数ミリメートル」の制御や、状況変化に対応する「AIの脳(世界モデル・認知能力)」の開発が追いついていないことが課題となっています。

3. 結論 (Mirage News)
中国勢を中心とするハードウェアの進化(運動性能)は非常にスピーディで目覚ましいものの、工場や日常生活などの現実世界で人間の代わりとして汎用的に機能するには、知的処理能力や手先の器用さの面でまだ距離があることが浮き彫りとなりました。

Q2:この記事で指摘されている2の課題・欠陥について、現状での最新の研究動向とその成果について、分かり易く紹介して下さい。

A2:ロボット・オリンピックのニュース記事で指摘された「手先の器用さ・精密な力加減の不足」と「環境認識・自律性(世界モデル)の遅れ」という2つの課題について、最新(2025〜2026年)の研究動向と主な成果を分かりやすく紹介します。

課題1:手先の器用さと力加減の不足(精密操作の壁)
釘を打つ、紙を破かずに折る、工具を滑らせずに握るといった作業には、見た目(カメラ)の情報だけでは不十分で、触覚(タッチ・力加減)のフィードバックが不可欠です。

最新の研究動向(okt.to)
「触覚皮膚」と多感触ハンドの標準化: 単に物を握るだけでなく、ロボットの手の表面70%以上に高密度な触覚センサーを敷き詰めた「触覚ハンド(F-TAC Handなど)」が登場しています。2026年現在、指先だけでなく手のひら全体で「圧力・摩擦・すべり」をミリ秒単位で検知する技術が主流になりつつあります(Queen Mary University of London)

触覚と視覚の統合(Multimodal Fusion): カメラ画像と触覚センサーのデータをAIが同時にリアルタイム処理する技術が進んでいます。これにより、「釘とハンマーの位置(見た目)」を捉えつつ、「打撃時の反動や指のズレ(触覚)」を即座に補正できるようになってきています。
okt.to

達成された成果(Patsnap)
工場や研究室において、壊れやすい豆腐や卵を潰さずに掴むだけでなく、柔らかい布を正確に畳んだり、滑りやすい工具を握り直して作業を継続したりする精度の高い操作が可能になり始めています。

課題2:世界モデルとAIの脳(自律性・空間認知の壁)
100m走のように「決まった直線パターンを愚直に走る」ことには成功しても、周囲の物理法則(重力、摩擦、固さ、予期せぬ障害物)を理解して「次にどうなるか」を脳内でシミュレーションする能力が不足していました。

最新の研究動向(okt.to)
VLAモデルから「世界モデル(World Model)」への進化: 従来の「見えた画像から直接行動を起こすAI(VLA: Vision-Language-Action)」から、「自分の行動によって世界がどう変化するかを脳内で一度予測・シミュレーションしてから動くAI(世界モデル)」への移行が急速に進んでいます(Humanoid.guide、他 1 件)

空間知能(Spatial Intelligence)の強化: フェイフェイ・リ(Fei-Fei Li)氏のWorld Labsやヤン・ルカン(Yann LeCun)氏のJEPA(Joint-Embedding Predictive Architecture)研究などに代表されるように、ロボットに3D空間の奥行きや物理的な因果関係を自然に理解させる基盤モデルの開発が加熱しています(KraneShares、他 1 件)

達成された成果:
未知の環境への適応(ゼロショット学習): 見たことがない部屋や一度も扱ったことがない家電(エアフライヤーや未知の工具など)であっても、Web上の知識と物理予測を組み合わせて「こう動かせばこう動くはずだ」と推論し、事前プログラミングなしで正しく操作できる汎用AI(Physical Intelligence社のpi-0.7など)が登場しています(okt.to)

まとめ(Patsnap)
現在(2026年)のロボティクス界では、「走る・跳ぶ」といった筋肉(アクチュエータ・ハードウェア)の進化に対し、「触覚(皮膚)」と「世界モデル(脳)」を追いつかせる研究が最前線で行われています。これらが完全に統合されることで、実験場だけでなく実際の家庭や工事現場で柔軟に役立つヒューマノイドロボットが実現に向かいます(digitimes)

2-2)脊柱管狭窄でしばしば見られる黄色靭帯の肥厚が、腱や靭帯を作る幹細胞の分化異常によるためであるかもしれない
***以下は、大阪大学の宮坂昌之先生の2026年9月9日のFB投稿です***
長年、背中に負担がかかると、骨が変形したり、椎間板が飛び出したり、黄色靭帯(=神経の束である脊髄の後方にある靭帯)が分厚くなったりして、背骨の中にある神経の通り道(=脊柱管)が狭くなり、その結果、中を通る神経や脊髄が圧迫されることになります。これが脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)と呼ばれる病気です。

腰部に狭窄が起きると、典型的な症状として間欠性跛行(かんけつせい・はこう)(歩いていると足に痛みやしびれが出て歩けなくなるが、少し休むと、また歩けるようになる)が見られますが、前かがみになって休むと神経の圧迫が和らぐために楽になる、という傾向があります。また、このほかに、腰や足の痛み、しびれが起き、重症化すると、排尿・排便障害が見られます。一方、頸部に狭窄が起きると、手足が動かしにくかったり、細かい作業がしにくくなったりします。

脊柱管狭窄症は、高齢者では多く、腰部の狭窄の場合、日本全体で数百万人の有症状患者が居るといわれています。治療としては、初期のうちは血流改善薬としてPGE1製剤(プロスタグランジンE1の働きを止めて血管の平滑筋を緩めて血流を増やす)や、痛み止め、硬膜外ブロックや、前かがみを意識したリハビリなどが行われますが、加齢のために脊柱の周囲の筋肉や靭帯の機能が落ちていると、なかなか良い効果が出ません。また、歩行困難や排尿・排便障害が出た時には、脊柱管のスペースを広げる手術が行われ、症状は一時的に改善しますが、やはり、脊柱の周囲の筋肉や靭帯の機能が落ちていると、狭窄症が再発することがあります。

専門誌Cellの最新号に「脊柱管狭窄でしばしば見られる黄色靭帯の肥厚が、腱や靭帯を作る幹細胞の分化異常によるためであるかもしれない」ということを示す論文が出ています(https://www.cell.com/cell/abstract/S0092-8674(26)00945-1)。つまり、脊柱管狭窄発生には新しいメカニズムが存在するかもしれないということです。アメリカの研究グループによる仕事です。

彼らは、マウスとヒトの検体を用いて調べた結果、
① 腱・靱帯には幹細胞(TLCS)が存在し、この細胞は自己複製能、分化能を持っていて、腱や靱帯を作る前駆細胞(TLPC)を作り出し、ここから腱のもととなる腱鞘細胞や腱細胞ができる、
② 正常状態では、これらの幹細胞や前駆細胞は、黄色靱帯が骨に付着する部位に少数存在する、
③ 脊柱管狭窄部位ではこれらの幹細胞、前駆細胞が異常に増殖していて、黄色靱帯の肥厚が見られる。
④ 脊柱管狭窄症の実験モデルでは、カルシウム拮抗剤(ex. アムロジピン)やカルシウム依存性酵素阻害剤(ex. カルシニューリンやタクロリムス)で黄色靭帯の肥厚が改善する、
などのことがわかりました。

もしこれが事実であれば、脊柱管狭窄においては幹細胞に異常が起きて、それが黄色靭帯の肥厚などをもたらして症状を悪化させているのかもしれない、ということになります。また、幹細胞の分化にはカルシウムイオンを介したシグナルが必要なことから、カルシウム阻害剤やカルシウム依存性酵素の阻害剤が脊柱管狭窄の治療に有効である可能性があります。

脊柱管狭窄症は、長寿社会では大きな健康問題となっていますが、いまだにこれという予防法や治療法がありません。一方で、腱や靭帯には幹細胞があり、その機能を制御できると狭窄症の治療につながるかもしれない、というのは期待が持てる明るいニュースです。
関連情報
① 原論文についてのGeminiによる解説です(2026年9月10日)。
Q1:次の論文の分かり易い解説をお願いします。論文情報です。「https://www.cell.com/cell/abstract/S0092-8674(26)00945-1」

A1:ご提示いただいた論文(2026年9月に国際的学術誌『Cell』へ掲載)は、「マウスおよびヒトにおいて、アキレス腱や靭帯(じんたい)を作り出す源となる『幹細胞』を世界で初めて特定した」という大変画期的な研究成果です。
要点を分かりやすく解説します。
1. この研究の背景(何が問題だったのか?)
アキレス腱の断裂や、腰痛・足のしびれを引き起こす「腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)」など、腱や靭帯の病気に悩む人は世界中に数多く存在します。
しかしこれまで、腱や靭帯を構成する細胞の「根本となる親細胞(幹細胞)」が一体どの細胞なのかが特定されておらず、「根本原因を叩く根本的な飲み薬や治療薬が存在しない」という大きな課題がありました。

2. 論文の主な発見・成果
• 幹細胞(TLSC)の特定に成功 研究チームは、マウスおよびヒトのあらゆる腱や靭帯の中に存在する「腱・靭帯幹細胞(TLSC: Tendon/Ligament Stem Cell)」を特定しました。特定の表面マーカー(CD73+ かつ CD140α- など)を持つ細胞が、自己複製しながらすべての腱細胞を生み出す「頂点の細胞」であることを突き止めました。
• 病気(脊柱管狭窄症)のメカニズムを解明 腰の靭帯(黄色靭帯)が分厚くなって神経を圧迫する「腰部脊柱管狭窄症」の発症プロセスを調査。病気の環境下では、この幹細胞内部のカルシウムシグナル伝達に異常が起き、幹細胞が過剰に腱・靭帯細胞を作り出すよう「再プログラミング」されてしまうことが分かりました。

3. この発見がもたらす医療の未来
1. 薬による治療(切らない治療)の可能性 異常を起こした幹細胞のカルシウムシグナル伝達(NFAT経路など)をターゲットにすることで、靭帯の肥大化を抑える「薬物治療(飲み薬や注射薬)」の開発に道が拓けました。
2. 再生医療・切れた腱の治癒促進 今回特定された幹細胞を活用することで、スポーツなどで断裂したアキレス腱や靭帯の修復を大幅に早める再生医療への応用が期待されます。

一言でまとめると
これまでブラックボックスだった「腱と靭帯を生み出す根本の細胞」が見つかったことで、治療法が手術に限られていた腰部脊柱管狭窄症の新しい薬や、アキレス腱断裂などの再生医療の開発が一気に前進するニュースです。

② 論文「黄色靭帯肥大の異なるメカニズム~腰椎変性パターンの比較MRI分析~」
掲載誌:Clinical Spine Surgery誌
公開日:2026年6月22日オンライン先行公開
論文名:Differential Mechanisms of Ligamentum Flavum Hypertrophy: A Comparative MRI Analysis of Lumbar Spine Degeneration Patterns
著者:酒井 義人、松井 裕樹、武市 洋介、長田 直明、渡辺 剛、安達 ゆい、渡辺 謙
DOI: 10.1097/BSD.0000000000002106
本件についての国立研究開発法人 国立長寿医療研究センターのプレスリリースです(extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.ncgg.go.jp/hospital/news/documents/20260629.pdf)。

Q2:続けて先の論文とこの論文との関連を分かり易く解説して下さい。次の論文の情報です。「以下、略す」

A2:2つの論文は、どちらも高齢者に多い「腰部脊柱管狭窄症(腰椎の神経が圧迫されて痛みやしびれが出る病気)」の最大の原因である「黄色靭帯(おうしょくじんたい)の肥大化」をテーマに扱っています。
しかし、研究のアプローチが「ミクロな分子・細胞レベル(細胞の世界)」と「マクロな臨床・画像分析(患者さんの腰全体の構造)」という真反対(かつ相補的)な視点から行われており、2つを組み合わせることで病気の全体像が見えてきます。分かりやすく関連性を解説します。

1.各論文の立ち位置(視点の違い)
2. 2つの論文はどう繋がっているのか?(関連性)
この2つの研究は、「原因(マクロの物理的ストレス)から結果(ミクロの細胞の暴走)に至るストーリー」として完璧に繋がります。
① 『Clinical Spine Surgery論文』が示すこと:【きっかけ(物理的ストレス)】
酒井医師らの研究(臨床MRI分析)は、腰の骨の変形の仕方や骨のズレ(すべり症など)のタイプによって、黄色靭帯にかかる負担や肥大化のパターン(メカニズム)が異なることを示しています。 つまり、「腰の骨組みがどう崩れるかによって、特定の靭帯部分に異なるメカニカルストレス(機械的な引っ張りや圧力)がかかる」という患者レベルの事実を示しています。
② 『Cell論文』が示すこと:【反応(細胞レベルでの肥大化)】
Cell論文(幹細胞の発見)は、まさにその「機械的ストレスや炎症刺激を受けたとき、靭帯の内部で何が起きているのか?」という答えを与えてくれます。 外部からストレスを受けた黄色靭帯の中では、特定された幹細胞(TLSC)のカルシウムシグナルが異常を起こし、幹細胞が過剰に靭帯細胞を作り出すことで「厚く分厚い靭帯(肥大化)」へと変化してしまうのです。

3. まとめ:2つの研究がもたらす未来の治療法
これまでは「なぜ腰の靭帯が分厚くなるのか」が断片的にしか分かっていませんでしたが、この2つの研究によりジグソーパズルのピースが組み合わさりました。
• マクロの視点(臨床MRI研究): 「どのタイプの変形・ストレスを持つ患者が、どの部位の靭帯を肥大させやすいか」を画像から正確に診断・分類する。
• ミクロの視点(幹細胞研究): ストレスを受けて肥大化を始めた幹細胞の暴走を止め、靭帯が分厚くなるのを薬で防ぐ。
将来的には、「MRI画像で靭帯肥大のリスクやパターンを早期に診断し(酒井氏らの研究成果)、肥大化を止める飲み薬や注射で治療する(Cellの研究成果)」という、手術に頼らない新しい腰椎疾患治療システムにつながる大きな関連性を持っています。

 

2-3)進行性骨粗鬆症に対するグリコカリックス編集型間葉系幹細胞/間質細胞療法
掲載誌:Cell Article Online
公開日:September 11, 2026
論文名:Glycocalyx-edited mesenchymal stem/stromal cell therapy in advanced osteoporosis(和訳:進行性骨粗鬆症に対するグリコカリックス編集型間葉系幹細胞/間質細胞療法)
著者:Jose M,et al.

ハイライト
•エキソフコシル化ヒト間葉系幹細胞(Fuc-autoBM-MSCs)の静脈内投与は安全である
•Fuc-autoBM-MSCの単回静脈内投与は骨粗鬆症における脆弱性骨折の発生率を低下させる
•Fuc-autoBM-MSCの静脈内投与後、体積骨密度が増加する。
•骨代謝バイオマーカーの変化は、骨再生効果と一致している。

まとめ
間葉系幹細胞(MSC)は骨再生能を有するが、骨へのホーミング能(「骨指向性」)が低いため、骨疾患に対する治療効果は制限される。前臨床モデルでは、MSCの糖鎖修飾によってシアル化Lewis X(sLeX)の発現を誘導し、骨指向性をプログラムすることで、この欠陥を是正できることが示されている。我々は、進行期骨粗鬆症の女性10名を対象に、糖鎖修飾を施した自家骨髄由来MSCを単回静脈内投与するヒト初回臨床試験(ClinicalTrials.gov:NCT02566655)を実施した。プロトコルで規定された評価は2年間にわたり、臨床評価、X線検査、骨代謝マーカー(BTM)、骨組織面積(BTA)、骨密度(BMD)の測定が行われた。その後、各患者について骨折および安全性のモニタリングがさらに3年以上継続されました。重篤な有害事象は発生しませんでした。骨形成促進性BTMレベル、BTA、および体積骨密度の増加に伴い、脆弱性骨折は著しくかつ持続的に減少しました。これらの結果は、グリコカリックス編集がMSCベースの骨粗鬆症治療に効果的であることを示しており、高齢者や病変組織由来のMSCは生物学的に不利であるという考えを否定するものです。

Graphical abstract

関連情報
① ネイチャー・ニュース
11 September 2026
Osteoporosis affects millions: could modified cells rebuild their bones?
Small trial hints at regenerative potential of bone-seeking marrow cells.
(和訳:骨粗鬆症は数百万人に影響を与えている。改変した細胞で骨を再生できるだろうか?小規模な臨床試験により、骨髄細胞が再生能力を持つ可能性が示唆された。)
By Elie Dolgin
骨粗鬆症は骨を薄く、多孔質にし、骨折しやすくするが、有望な細胞療法が骨を強化する方法を提供する可能性がある。写真提供:トニー・ブレイン博士/SPL

***以下、同ニュースからの抜粋です***
10人の高齢女性は、合わせて数十回も骨折しており、その多くはちょっとしたつまずきで起こっていた。しかし、骨組織への浸透性を高めるために実験室で処理された自身の骨髄細胞を一度輸血された後、彼女たちの骨折はほぼ止まった。

本日Cell誌に掲載された小規模臨床試験¹で報告されたところによると、治療を受ける前、女性たちは平均して1~2年に1回、脊椎、股関節、腕、その他の骨の骨折を経験していた。試験後、女性たちが軽微な外傷による骨折を経験する頻度は、10年に1回程度にまで減少した。

今回の結果は、骨粗鬆症患者の脆くなった骨を、一度の細胞療法で再生できる可能性を示唆するものであり、骨粗鬆症は世界中で約2億人の女性、特に閉経後の女性に影響を与える加齢に伴う疾患である。

② Geminiによる解説
Q:次の論文の研究成果について、分かり易く且つ簡潔に解説ひて下さい。論文情報です。(以下、略す)
A:2026年9月11日付の『Cell』誌に掲載された研究成果について、ポイントをまとめて解説します。

研究の要点
従来の治療法では改善が困難な重度の進行性骨粗鬆症に対し、細胞表面の糖鎖構造(グリコカリックス)を酵素処理で加工・編集した「間葉系幹細胞(MSC)」を移植する新しい再生医療アプローチの有用性・有効性を実証した研究です。

何が新しいのか?(技術のポイント)
・細胞表面の「標的誘導力」を強化
通常、静脈注射などで投与した間葉系幹細胞(MSC)は、肺やレバーなどにトラップされやすく、病変部位である「骨髄」へ効率よく届きにくいという課題がありました。

・糖鎖(グリコカリックス)の編集
細胞の最表面を覆う糖鎖構造を酵素処理などで最適化(編集)することにより、細胞が血流に乗って骨髄組織へしっかりと結合・集積(ホーミング)できるように機能を向上させました。

主な成果と期待される効果
・効率的な骨髄伝達
糖鎖編集を行ったMSCは、従来のMSCと比べて目的の骨髄へ届く割合が高まり、治療効果を最大限に引き出すことに成功しました。
・骨新生の促進と骨密度の回復
骨髄に到達した幹細胞が骨を作る細胞(骨芽細胞)の働きを助け、重度の骨粗鬆症で著しく低下していた骨密度や骨強度の改善に寄与しました。
・難治性疾患への新たな治療選択肢
既存の薬物療法(骨吸収抑制薬や骨形成促進薬など)で十分な効果が得られない重症患者や、骨折リスクが極めて高い患者に対する革新的な細胞療法としての応用が期待されます。

一言で言うと:
「目的地の骨へダイレクトに届くようナノレベルでコーティング(糖鎖編集)を施した幹細胞」を用いることで、従来の幹細胞移植では難しかった重症骨粗鬆症の劇的な治療・再生を目指す画期的な研究成果です。

 

2-4)岐阜大学医学部の下畑先生からの最新医学情報(2026年9月)
・片頭痛予防療法は「月4日以上」が目安―AAN/AHSが14年ぶりにガイドラインを改訂
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月1日のFB投稿です***
米国神経学会(AAN)と米国頭痛学会(AHS)は,成人の片頭痛の薬物予防療法に関するガイドラインを14年ぶりに改訂しました.発表に合わせて記者会見が行われ,YouTube(コメント欄にリンク)で見ることができます.ガイドライン作成委員のRebecca Burch先生が,改訂の狙いを説明しています(1).
記者会見で最も強調されたことは,2012年の前回ガイドライン以降,片頭痛予防療法の選択肢が大きく増えたことです.とくにCGRP(calcitonin gene-related peptide)を標的とする新しい片頭痛特異的治療薬の登場が大きな変化です.Burch先生は,「今回の最大の変更点は何か?」という質問に対し,新しいCGRP標的薬を含め,従来薬と新薬のエビデンスを一つのガイドラインの中で整理したことを挙げています.
もう一つの重要なメッセージは,予防療法をもっと積極的に考えるべきであるという点です.今回,「月4日以上の片頭痛日,または月4日以上の中等度~重度の頭痛日」があれば予防療法を提案し,頻度がそれ以下でも仕事や日常生活への障害が大きければ対象とすることが明確に示されました.
記者から「片頭痛予防薬は十分に使われているのか」と質問された際,Burch先生は,実際には予防療法の適応となる患者の多くが治療を受けていないと回答しています.Systematic Reviewでも,予防療法を考慮すべき患者のうち実際に使用しているのは約3分の1にすぎないとされています(2). 今回のガイドラインは,新薬を追加しただけではなく,予防療法のunderuseを是正することも重要な目的と考えられます.
さらにBurch先生は,薬剤を選ぶ際には有効性だけでなく,副作用,長期間使用されてきた安全性の実績,費用など,患者が何を重視するかを考える必要があると述べています.つまり,「最も強い薬を選ぶ」のではなく,協働意思決定(SDM)によってその患者に適した薬を選択することが今回の基本姿勢です.
以下,同時に発表されたSystematic Review(2)とPractice Guideline Recommendations(3)から,実臨床上とくに重要と思われる点を箇条書きでまとめます.
① 新旧の予防薬が同じエビデンスの物差しで評価された.
217研究を解析し,各薬剤の有効性についてHigh/Moderate/Low confidenceが示された(図).High confidenceは,反復性片頭痛ではerenumab,galcanezumab,慢性片頭痛ではfremanezumab,galcanezumab,onabotulinumtoxinAである.Moderate confidenceにはatogepant,eptinezumabなどのCGRP関連薬に加え,propranolol,topiramate,valproateなどの従来薬も含まれる.なお,これは薬剤の順位ではなく,あくまでエビデンスへの確信度である.
② 薬剤は有効性だけで選ぶものではない.
有効性,忍容性,長期安全性,費用,患者の希望を考慮する.忍容性を重視する場合にはatogepantやCGRPモノクローナル抗体,長期使用実績を重視する場合にはpropranololやtopiramateなどが重要な選択肢となる.
③ 薬剤の使用過多による頭痛(MOH)があっても予防療法を開始する.
薬剤の使用過多やMOHがあっても予防薬を提案すべきである.CGRPモノクローナル抗体,atogepant,onabotulinumtoxinA,topiramateには,このような患者でも有効性を示すデータがある.
④ 効果判定を急ぎすぎてはならない.
多くの予防薬では,十分な忍容量で8~12週間治療してから効果を判定する.onabotulinumtoxinAでは24週間が目安であり,1か月程度で無効と判断するのは早すぎる場合がある.
⑤ 有効な予防薬も,中止後に再悪化することがある.
6か月程度で減量・中止について相談するが,中止により頭痛が再増悪する可能性がある.galcanezumabでは,6か月時点で反応していた患者の半数以上が,中止5か月後にはその反応を失っていた.
⑥ 妊娠中の治療は一律に「薬を使わない」ではない.
まず非薬物療法を最大限活用し,valproateやtopiramateは可能な限り避ける.一方,治療が必要な場合には,片頭痛による負担と薬剤のリスクを比較し,患者と相談して治療を選択する.記者会見でも,この点は議論になり得る重要な変更点として紹介された.
今回の改訂を一言でまとめると,「月4日を目安に予防療法をより積極的に考え,増えた新旧の選択肢から,患者が何を重視するかに応じて薬を選ぶ」ということだと思います.CGRP標的薬の登場はもちろん大きな変化ですが,それ以上に,片頭痛予防療法をより早く,より患者中心に行う方向への転換が重要ということです.
日本への影響を考えてみると,「頭痛の診療ガイドライン2021」ですでに比較的早期からの予防療法が推奨され,さらに2025年には日本頭痛学会がCGRP関連抗体薬を既存薬と同等の第一選択薬に位置づけています.加えて,リメゲパント,アトゲパントという経口CGRP受容体拮抗薬も使用可能となりました.したがって今回のAAN/AHSガイドラインは,日本の診療を大きく方向転換させるというより,すでに始まっている「予防療法の早期導入」と「CGRP関連薬を含めた患者中心の薬剤選択」を強く後押しするものと考えられます.一方,日本ではCGRP関連抗体薬を最初から自由に開始できるわけではなく,保険診療上は従来の予防薬を先に試すことが求められています.この点は,今後見直しが議論される可能性があるように思います.
1.American Academy of Neurology. 2026 Press Conference: Pharmacologic Treatment for Migraine Prevention in Adults. YouTube. 2026.
2.Pringsheim T, Smith DB, Tanveer S, et al. Systematic Review of Pharmacologic Treatment for Migraine Prevention in Adults. Headache. 2026. doi:10.1111/head.70200.
3.Potrebic S, Tanveer S, Becker WJ, et al. Pharmacologic Treatment for Migraine Prevention in Adults Practice Guideline Recommendations. Headache. 2026. doi:10.1111/head.70199.

・CAR-T細胞を「体内で作る」時代へ―中国で自己免疫性神経疾患に対するin vivo CAR-T療法第1相試験!!
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月4日のFB投稿です***
CAR-T細胞療法は,もともと難治性の血液腫瘍に対して開発された治療ですが,近年,自己免疫疾患への応用が急速に進んでいます.CD19などを標的として自己反応性B細胞を徹底的に除去し,その後に新しいB細胞集団を再構築することで,単なる免疫抑制ではなく「免疫系のリセット」を目指す治療です.しかし,従来のCAR-T療法では,患者さんからT細胞を採取し,体外で遺伝子導入,培養,品質管理を行ってから患者さんに戻す必要があります.さらに投与前にはリンパ球除去化学療法も必要であり,時間,費用,安全性の面で大きなハードルがありました.
最新号のNEJM誌のcorrespondenceに,中国の研究グループから短いながら驚くべき論文が報告されていました.上述の問題を一気に解決する可能性のある新しい方法で,患者さんのT細胞を体外に取り出すのではなく,レンチウイルスベクターを静脈内投与して,患者さんの体内で直接CD19 CAR-T細胞を作る「in vivo CAR-T療法」の報告です.
研究は医師主導の単群第1相試験で,対象は難治性自己免疫性神経疾患16例です.内訳は,進行型多発性硬化症(MS)7例(おそらくPPMSとSPMSをあわせたもの),MOG抗体関連疾患(MOGAD)3例,全身型重症筋無力症(gMG)3例,特発性炎症性筋疾患3例です.使用されたJY231は,CD19を標的とするCAR遺伝子をT細胞へ直接導入する既製のレンチウイルスベクターで,2.0×10^9 transducing units(遺伝子導入活性を示す単位)を1回静注しました.特に重要なのは,従来のCAR-T療法で必要だったリンパ球除去化学療法を行っていないことです!つまり,レンチウイルスベクターを点滴するだけで,患者さん自身の体をCAR-T細胞の「製造工場」にするという発想です.
まず安全性ですが,懸念されるimmune effector cell–associated neurotoxicity syndrome(ICANS)や,自己免疫疾患でCAR-T療法後に,もともと病変のあった臓器に一過性の炎症が起こるLICATS(local immune effector cell-associated toxicity syndrome)は認めませんでした.サイトカイン放出症候群(CRS)は16例中11例,69%に出現しましたが,すべてGrade 1で,一過性に経過し2週間以内に消失しました.3例ではGrade 3または4の好中球減少を認めましたが,いずれも完全に回復し,長期間持続する骨髄抑制は認めませんでした.少数例かつ短期観察ではありますが,少なくとも初期の安全性は比較的良好でした.
そして本研究で最も重要なのは,JY231を静注するだけで,全例の体内に本当にCAR-T細胞が作られたことです.CARベクターコピー数は投与後増加し,11日目に中央値53,962.5 copies/μg DNAのピークに達しました.一方,ベクター由来のp24蛋白は急速に消失し,4日目には血中で検出不能となりました.さらに単一細胞RNAシークエンスとフローサイトメトリーにより,CAR陽性細胞の99%以上がT細胞であることが確認されました.つまり,ベクターが無差別にさまざまな細胞へ入るのではなく,高い選択性でT細胞をCAR-T細胞へ変換していたことになります.
脳神経内科医として特に興味があるのは,中枢神経系への到達の有無です.進行型MSやMOGADでは,CARベクターコピー数が末梢血や骨髄だけでなく脳脊髄液でも検出され,むしろ脳脊髄液で高値となる例がありました.自己免疫性神経疾患では,中枢神経内に残存するB細胞や局所の免疫反応が治療抵抗性の原因となる可能性がありますが,今回の治療は末梢血のB細胞だけを除去する従来の治療と異なり,CAR-T細胞が中枢神経系まで到達できることが大きな利点になる可能性があります.
CAR-T細胞が増殖すると,末梢血B細胞は急速かつほぼ完全に消失しました.そして2か月後,B細胞が再び出現しましたが,回復したのは主としてnaive B細胞でした.さらにB細胞受容体のクローン解析では,治療前に存在していたB細胞クローンが治療後にはほぼ完全に置き換わっていました.単にB細胞を一時的に減らしただけではなく,病的な記憶を保持している可能性のある既存のB細胞集団をいったん除去し,新しいB細胞集団を作り直したわけです.著者らはこれを「systemic immunologic reset(全身性の免疫学的リセット)」と記載しています!!
臨床的にも興味深い変化が認められました.中央値6か月の追跡で,進行型MSではEDSSが低下し,運動機能,認知機能,疲労も改善しました.さらに脳脊髄液NfLとκ free light chain indexが低下し,神経軸索の障害と髄腔内免疫活動の双方が抑制された可能性があります.7例全例で,3または6か月後に新規造影病変や新規T2病変を認めませんでした.また18F-DPA-714 PET–MRIではミクログリア活性化も低下しました.CAR-T細胞が直接標的とするのはB細胞ですが,B細胞をリセットすることで,中枢神経系の炎症環境そのものが改善した可能性があります.
MOGADでは血清MOG抗体価が低下する傾向を示しました.gMGではQMGスコアとMG-ADLスコアが改善し,抗AChR抗体価も低下しました.特発性炎症性筋疾患でもMMT-8による筋力評価が改善し,CK値,画像上の筋炎所見,病原性自己抗体も改善しました.疾患ごとの症例数はわずか3~7例ですので有効性を証明したとはいえませんが,臨床症状,自己抗体,バイオマーカー,画像所見が概ね同じ方向に変化している点は注目されます.
図1を簡潔に説明すると,図Aでは,1回のJY231投与後に体内でCAR-T細胞が増殖し,末梢血に加えて骨髄や脳脊髄液にもCAR陽性細胞が認められることが示されています.図BではB細胞が急速に枯渇した後に再増殖する経過が,図Cでは再増殖したB細胞がnaive B細胞を主体とすることが示されています.図Dでは,代表例(症例1)において治療前のB細胞受容体クローンが治療後に置き換わる様子が示され,「免疫リセット」を分子レベルで捉えています.図EではMS,MOGAD,炎症性筋疾患,gMGの臨床指標が改善方向に変化し,図FではMSの代表例(症例 1)において,治療3か月後に18F-DPA-714 PET–MRIでミクログリア活性化の低下が示されています.
さらにSupplementary Videoには,進行型MS患者の治療前後の歩行が収録されています.治療前,1か月後,3か月後を比較すると,歩行が改善しているように見えますが,1例の動画ですので何とも言えない気もします.そもそも本研究は16例のみの単群第1相試験であり,疾患ごとの症例数はさらに少なく,中央値の追跡期間も6か月にすぎません.対照群もありませんので,「進行型MSを改善する治療が確立した」と解釈する段階ではありません.著者らも,より大規模かつ長期間の検討,可能であればランダム化比較試験が必要であると強調しています.
一方,長期的な安全性は今後の課題です.今回用いたレンチウイルスベクターは,CAR遺伝子をT細胞の染色体に組み込むため,CAR-T細胞の効果が長く続くことが期待されます.その反面,遺伝子が好ましくない場所に組み込まれ,細胞の異常な増殖を引き起こす可能性が理論上あります.今回の解析では,そのような異常なクローン増殖を示す所見は認められませんでした.ただし観察期間はまだ短く,長期的な安全性については今後慎重に追跡する必要があります.
しかしながら,本研究のインパクトはきわめて大きいと思います.従来のCAR-T療法は,「患者さんから細胞を取り出し,特別な施設でCAR-T細胞を製造してから戻す」という高度な細胞治療でした.今回の方法は,既製のレンチウイルスベクターを1回静注し,患者さんの体内でCAR-T細胞を作るという全く異なる発想です.なんと言ってもリンパ球除去化学療法が不要です.もし長期的な安全性と有効性が確認されれば,CAR-T療法は特殊な「細胞製剤」から,より広く使用できる「1回投与の遺伝子治療」へ変わる可能性があります.未来の脳神経内科医は,自己免疫性神経疾患をこのように治療しているのかもしれない——そんな未来を想像させる,proof-of-conceptとして非常に興味深い報告です.
Cheng YH, et al. Lentiviral In Vivo CD19 CAR T-Cell Therapy in Neurologic Autoimmune Disorders. N Engl J Med. 2026 Sep 3;395(9):926-929. doi: 10.1056/NEJMc2603114. PMID: 42685326.

・第38回 リベラルアーツ研究会『人魚の眠る家』のご案内
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月5日のFB投稿です***
日時:2026年9月8日(火)19時~21時
今回は,先日逝去された作家・東野圭吾氏の作品を取り上げます.課題図書は以前から決めていましたので,訃報を知ったときには「まさか」と驚きました.東野氏の作品は,皆さんと同様,私も大好きでした.最近では「マスカレイド」シリーズ,とりわけ新田浩介という主人公が好きで,今後の活躍をもう読むことができないと思うと,本当に残念です.
今回は,数ある名作のなかから,私にとって忘れられない一冊,2015年に発表され,映画化もされた『人魚の眠る家』を取り上げます(Amazonへのリンクはコメント欄).私は刊行後まもなく本作を読み,大きな衝撃を受けました.ブログでも紹介していますが,当時は,どこか近未来的なフィクションとして受け止めていました.しかし10年を経て読み返してみると,むしろ現代医療が直面しつつある問題を見事なまでに先取りして描いた作品であったことに気づかされます.
本作は,ミステリーという枠組みを超えて,「脳死を人の死と考えることができるのか」という,生と死をめぐる根源的な問いを真正面から投げかけます.読み進めるほどに,読者自身が「自分ならどうするだろうか?」と問い続けることになります.脳神経内科医の立場から読んでも,脳死,臓器移植,生命維持技術,そしてニューロテクノロジーの進歩に伴う臨床倫理上の問題を考えるうえで,きわめて示唆に富む作品です.
副読本として,『BRAIN and NERVE』2025年4月号の特集「脳死について知る」をお薦めします.あわせて読むと,東野氏が脳死や臓器移植をめぐる医学的・倫理的問題をいかに深く学び,丁寧な取材を重ねたうえで本作を執筆したことが,よりよく分かります.ちなみに『BRAIN and NERVE』2026年12月号(クリスマス号)には,『人魚の眠る家』を題材として,脳死と臓器移植について考察した私の小論文を掲載していただく予定です.こちらも楽しみにしていただければと思います.
医学の進歩によって,「生」と「死」の境界が揺さぶられるとき,私たち医療者は何をもって人の死と考え,何を選び,患者さんや家族とどのように向き合うべきなのでしょうか.東野圭吾氏が遺した『人魚の眠る家』を通して,皆さんと一緒に考えてみたいと思います.
課題図書:東野圭吾『人魚の眠る家』
※参加希望の学生はご連絡ください.
次回課題図書
仲野徹『生命科学者たちのむこうみずな日常と華麗なる研究』
歴史に名を残した18人の科学者たちの型破りな生き様と偉大な業績を,軽妙な語り口で解き明かした一冊です.とても面白く,科学への知的好奇心を大いに刺激してくれる名著です.

・シャルコーから予測符号化へ―神経理学療法の歴史と新時代@第24回日本神経理学療法学会学術大会
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月6日のFB投稿です***
昨日,グランキューブ大阪で開催された第24回日本神経理学療法学会学術大会で,特別講演の機会をいただきました.今回の大会テーマは「神経理学療法が紡ぐ足跡と新時代」です.これまでの歩みを振り返り,そこから未来を考えるという趣旨で,初日は「過去を学ぶ」,2日目は「新時代を考える」という構成でした.
特別講演では,『BRAIN and NERVE』誌でともに編集委員を務めさせていただいている東北大学名誉教授の虫明元先生とご一緒しました.虫明先生の演題は「神経生理学の歴史:神経機能理解の深化をたどる」です.神経科学の歴史を19世紀から21世紀まで4つの時代に分け,「脳をどのように理解してきたのか」という問いの変遷を鮮やかに示してくださいました.神経学の楽しさを改めて実感するご講演でした.
19世紀にはBrocaによる機能局在,Golgiの染色法とCajalによるニューロン説,Jacksonによる階層理論が登場し,「どこが機能を担うのか」が問われました.20世紀前半にはSherringtonのシナプスと反射統合,Pavlovの条件反射,Penfieldのホムンクルスなどを通して,「どうつながるのか」という理解へ進みます.さらに20世紀後半には,運動野における運動方向の符号化(運動の方向を神経細胞の活動として表現すること),前頭葉の階層構造,ワーキングメモリ,ミラーニューロンなどを通して,「脳は何を計算しているのか」という問いへと発展しました.そして21世紀には,問いは「脳はどのように未来を予測し,全体として協調するのか」へと進みます.大規模脳ネットワーク,agency,小脳の内部モデル,ドパミンによる報酬予測誤差,そしてFristonの自由エネルギー原理へと展開していきました.とくに印象的だったのは,「脳は未来を予測し,現実とのずれである予測誤差を使って内部モデルを更新している」という考え方です.この視点に立てば,リハビリテーションとは単に筋肉を動かす訓練ではなく,脳が持っている身体や運動についての「予測」を修正し,内部モデルを再構築していく営みと考えることができます.
講演後には虫明先生と食事をご一緒し,講演中に浮かんだ疑問を直接お聞きすることができました.神経生理学の第一人者にゆっくり質問できるという,本当に幸せで贅沢な時間でした.また,森岡周先生(畿央大学),吉尾雅春先生(千里リハビリテーション病院)のとても印象的なご講演も拝聴し,ニューロリハビリテーションについてもっと勉強したいと思いました.
一方,私の講演は,大会長の松田淳子先生(大阪行岡医療大学医療学部理学療法学科)から「神経症候学の歴史について話してほしい」とご依頼いただき,「神経症候学の成立と発展:機能性神経障害をめぐって」というタイトルにしました.スライドはこちらからご覧いただけます(https://www.docswell.com/…/800…/Z8N6PQ-2026-09-06-043554).前半では,19世紀のサルペトリエール病院におけるJean-Martin CharcotとJoseph Babinskiらのヒステリー研究を出発点として,近代神経症候学がどのように成立したのかをお話ししました.彼らはヒステリーを器質性神経疾患と区別するため,患者を徹底して観察し,症候を記述し,診察によって病態を見極めようとしました.さらにCharcotに学び,その臨床医学を日本に持ち帰った三浦謹之助についても紹介しました.後半では,かつて「ヒステリー」と呼ばれた病態が,現在の機能性神経障害(FND)へとどのように変遷したのかを取り上げました.現代のFND診療で重要なのは,「検査で異常がないからFND」という除外診断ではなく,Hoover徴候などの陽性徴候を神経診察によって見いだし,積極的に診断すること(rule-in diagnosis)です.これはまさにCharcotやBabinskiから続く神経症候学の現代版と言えると思います.
さらにFNDでは,理学療法を中心とするリハビリテーションが非常に重要です.ただし,器質性疾患とは少し発想が異なります.「うまく動かそう」と症状に注意を集中し,強く随意的努力を行うほど,かえって動作が難しくなることがあります.そこで,リズムや音,物体操作など外的な課題に注意を向けることで,過剰な自己監視から離れ,本来持っている自動的な運動を引き出していきます.
ここで,虫明先生のご講演と私の講演が思いがけずつながりました.FNDを予測符号化の立場から考えると,症状への過剰な注意によって誤った予測の重みが強まり,知覚や運動を支配している可能性があります.であれば重要なのは,患者さんに「正しく動かそう」と意識させ続けるのではなく,いかに症状への注意を外し,「実際にうまく動けた」という新しい経験から脳の予測を更新するかということになります.今回は,「予測誤差をどのように軽減するのか」「いかに症状への過度な注意を減らしながら改善へ導くのか」という点について,理学療法士の先生方と議論させていただきました.講演後には,これまで経験したことがないほど多くのご質問をいただきました.実際にFND患者さんを担当するなかでの悩みや,具体的なリハビリテーションの工夫などを率直にお聞かせいただき,私自身にとっても大変勉強になる時間でした.
今回の大会テーマである「神経理学療法が紡ぐ足跡と新時代」は,改めて神経学の魅力を感じさせるものでした.Broca,Jackson,Sherrington,Charcot,Babinskiらが築いた神経学・神経生理学の歴史の先に,内部モデル,agency,ネットワーク,予測符号化といった現代神経科学があります.そして最新の神経科学がいま,再び患者さんの「症候を診る」という臨床に戻ってきています.新時代の神経リハビリテーションでは,失われた運動を繰り返し練習するだけではなく,脳がもつ身体と運動の「予測」を,よりよい方向へ更新していくことが求められるのかもしれません.歴史を学ぶことが,直接的に未来の臨床につながることを実感した一日でした.

・医療AIの本当のインパクトは,患者の「trajectory(軌跡)」中心の医療への転換にあるかもしれない!
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月7日のFB投稿です***
最新号のLancetに,たった1ページながら印象的なPerspectiveが掲載されています.著者はScripps研究所のEric J Topol氏らです.この論文が提示するのは,患者の診療記録を単なるデータの集まりではなく,数年,数十年にわたる「trajectory(軌跡)」としてAIに学習させるという,新しい医療AIの姿です.
その基盤となるのが耳慣れない「tokenisation(トークン化)」という用語です.診断名,検査値,薬剤,診療記録,画像,さらに出来事と出来事の時間間隔などを,AIが処理できる単位であるtokenに変換します.これらを時間順に学習することで,患者の長い診療経過全体を一つの「representation(表現)」として捉えます.つまり,一つの検査値や疾患を個別に予測するのではなく,その人がこれまでどのような軌跡をたどってきたかを丸ごと学習させるわけです.
すでにこの方向性でAIは急速に発展しているそうです.論文では5つのAIモデルが紹介され,約200万人のデータから1000を超える疾患の発症をモデル化するDelphi-2Mや,1億人以上,1000億件を超える医療イベントを扱うCuriosityなどが登場しています.さらに診療記録や画像,遺伝情報,multiomicsまで統合するモデルも開発されており,患者の長期的なtrajectoryをより包括的に捉える方向へ進んでいます.
論文の図上では,30歳から90歳までの時間軸上に,高脂血症,肥満,睡眠時無呼吸症候群,胃食道逆流症,心筋梗塞,心房細動,MCI(軽度認知障害),アルツハイマー病が並んでいます.重要なのは,「90歳でアルツハイマー病になった」という最後の一点ではなく,その数十年前から何が起こり,どのようなtrajectoryを経てそこに至ったのかを見ることです.trajectoryには病気や検査値だけでなく,治療がいつ行われ,その後どのような経過をたどったかという情報も含まれます.
図下は,この考え方から将来の医療をイメージして自作したものです.青線はAIが学習した「これまでの軌跡」を表します.大量の患者のtrajectoryが蓄積されれば,「この患者と似た軌跡をたどった人は,その後どうなったか」をもとに,現在地点から複数の未来を予測できる可能性があります.赤線はこのまま進んだ場合の高リスクの未来を,緑線は治療や生活習慣への介入によって,より良い未来へ軌道修正できる可能性を表しています.たとえば高血圧,脂質異常症,体重増加などを一連のtrajectoryとして捉え,将来の糖尿病や心血管疾患,認知症のリスク上昇を予測できれば,病気が完成する前に先手を打つことができます.介入後には新しいデータをもとに未来予測も更新されます.私なりに例えると,将来の医療AIは,未来を一度だけ言い当てる「占い師」ではなく,進路が変わるたびにルートを再計算する「カーナビ」に近い感じがします.
また,類似したtrajectoryを大規模データから検索することで,希少疾患の診断や治験参加者の探索などにも応用できる可能性があります.一人の医師が経験できる症例数には限界がありますが,AIを介して膨大な患者の経験を診療に利用できるようになるわけです.
ただし,重要な限界もあります.「ある治療を受けた人はその後の経過が良かった」という傾向が見つかっても,その治療のおかげで良くなったとは限りません.AIは「何が一緒に起こったか」は見つけられても,「何が原因だったか」までは証明できないためです.また,AIが学習するtrajectoryは,患者の実際の人生そのものではなく,医療機関に記録された範囲に限られます.受診頻度や検査内容,医師の判断によって記録のされ方が変わるため,データには偏りが生じる可能性があります.
この論文を読んでもう一つ強く感じるのは,日本の医療データ基盤の課題です.trajectory型AIには,診断,検査値,画像,薬剤,治療介入,転帰などを,患者ごとに長期間つなげて蓄積することが不可欠です.しかし日本では,電子カルテの情報が医療機関やシステムごとに分断され,標準化や二次利用も十分に進んでいるとは言えません.新型コロナ・パンデミックの際にも,世界から次々に発表される論文を読み,日本とのデータ活用力の差を痛感しました.今回のように患者の「軌跡」そのものを学習するAIが登場すると,この差はさらに拡大するものと思われます.日本がこれ以上出遅れないためにも,医療データ基盤の整備はまさに急務だと思います.
この論文が示しているのは,医療が「あなたは何の病気ですか」という病名中心の考え方から,「あなたはいまどの軌跡の上にいて,この先どこへ向かい,どこでその軌跡を変えられるのか」を考える方向へ進む可能性です.病気が起きてから治療する医療から,未来の分岐を予測して先手を打つ医療へ,医療は変わっていくのだと思いました.医療AIの本当のインパクトは,この「trajectory中心の医療」への転換にあるのかもしれません.
Mahmood F, Topol EJ. Tokenising the patient journey: from records to representations. Lancet. 2026 Sep 5;408(10558):886. doi: 10.1016/S0140-6736(26)01773-3. PMID: 42692030.

・パーキンソン病・多系統萎縮症の自律神経障害をベッドサイドでどう診るか?――岐阜大学発実践的評価法
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月9日のFB投稿です***
パーキンソン病(PD)や多系統萎縮症(MSA)では,起立性低血圧,発汗異常,排尿障害,便秘などの自律神経障害がしばしば認められます.これらは患者さんの生活の質を低下させるだけでなく,とくにMSAでは診断や予後を考えるうえで重要な手がかりになります.一方,詳細な自律神経機能検査には特殊な設備や技術を必要とするものが多く,すべての施設で繰り返し行えるわけではありません.
今回,当科の森泰子先生を筆頭著者・取りまとめ役として,山原直紀先生,安藤知秀先生,大野陽哉先生,加藤雅彦先生,伊藤幹哉先生,児玉真由帆先生,金住俊一先生の若手のメンバーで,PDとMSAにおける自律神経障害をベッドサイドで系統的に評価するためのプロトコルをまとめ,Journal of Visualized Experiments(JoVE)誌に発表しました.この論文の特徴は,これまでさまざまな文献に散在していた簡便な自律神経評価法を,実際の診療で使いやすい形に体系化した点にあります.非常に教育的な良い論文になったと思います.森先生をはじめ,みなさん,お疲れさまでした.★リンク先はコメント欄をご覧ください.
さて評価は,循環,発汗,排尿,排便の4機能領域です.さらに各検査を,通常の診療環境で行える「Core」,簡単な機器を用いて追加する「Optional」,専門的な設備や技術を必要とする「Advanced」の3段階に分類しました(図1).まず問診と身体診察を行い,必要に応じて簡便な機器検査,さらに専門的検査へ進む流れが一目で分かります.まずベッドサイドから始めるという本論文の考え方を示しています.
循環機能では,立位で出現して臥位で改善するめまい,失神,視覚異常,疲労などを確認するとともに,手足の冷感や紫色調・蒼白を伴うcold-discolored extremitiesを評価します.この所見は剖検例でMSAの20.3%,PDの5.7%に認められ,現在のMSA診断基準でもsupportive clinical featureに位置づけられています.さらにMSAでは,この所見を有する患者ほど症状が重く,生存期間が短い傾向も報告されています.また,指を4℃の水に10秒間浸した後の皮膚温回復をみる「10秒間冷水負荷試験」では,MSAはPDより皮膚温の回復が速く,冷却11分後の温度を指標とすると,感度80.3%,特異度85.7%で両者を鑑別できる可能性が示されています(ただし小規模研究による探索的研究です).
能動的起立試験では,10分間の臥位安静後に立位となり,血圧と心拍数を10分間測定します.重要なのは3分で終了しないことです.3分以降に血圧が低下するdelayed orthostatic hypotensionがあるためです.また収縮期血圧が20 mmHgを超えて低下した場合にはΔHR/ΔSBPを計算し,0.5未満であれば神経原性起立性低血圧を示唆します.ただし,立位15秒以内に生じるinitial orthostatic hypotensionを捉えるには連続血圧測定が必要です.
発汗機能では,発汗低下,無汗,多汗の有無と分布を確認したうえで,視診・触診に加えてスプーンテストを行います.乾いたスプーンの背を皮膚上で滑らせ,発汗によってスプーンが止まるかどうかをみる,非常に簡単な検査です.thermoregulatory sweat testと比較した研究では,四肢での感度は低いものの,頸部では85%に達しました.また,100から7を順番に引く暗算によって精神性発汗を誘発し,手掌や足底の発汗を観察する方法も紹介しています.
もう一つ興味深いのが「指のしわテスト(finger wrinkling test)」です.手を40℃の温水に30分間浸し,指腹に生じるしわをGrade 0~4で評価します.図2には実際の指のしわと判定基準が示されています.特殊な装置を必要とせず,汗腺周囲の自律神経機能を間接的に評価できますが,皮膚の状態などにも影響されるため補助的な検査として用います.
排尿機能では,頻尿,夜間頻尿,尿意切迫,尿失禁だけでなく,尿勢低下,排尿開始遅延,腹圧排尿なども確認します.とくに重要なのが排尿後残尿量(post-void residual:PVR)です.MSAでは排尿障害が運動症状より先行することがあり,121例の前向き研究では18%が下部尿路症状のみで発症し,尿失禁は運動症状より平均2.8年前から認められていました.PVR増加によるPDとMSAの鑑別は感度34%と低い一方,特異度は95%であり,明らかな残尿増加はMSAを疑う重要な所見です.
排便機能では,排便回数,便性状,いきみ,残便感,出口閉塞感などを確認し,排便日誌やBristol Stool Form Scaleを用います.PDでは便秘は単なる生活上の問題ではなく,早期PD 465例を平均5.1年間追跡した研究で,便秘が重いほどその後の認知機能低下が大きいことが報告されています.さらに経腹的直腸超音波を用いると,便貯留をcrescent signやfull-moon signとして非侵襲的に評価できます.
自律神経機能は,室温,湿度,水分状態,食事,薬剤などさまざまな因子の影響を受けます.そこでTable 1では,循環,発汗,排尿の評価に影響する薬剤,その作用,休薬を検討する際の注意点などを整理しました.検査のために安易に薬剤を中止するのではなく,休薬の危険性を考慮し,継続する場合には薬剤の影響を踏まえて結果を解釈する必要があります.
やはり今回の論文でお伝えしたかったのは,自律神経障害の評価は,必ずしも特殊な検査から始める必要はないということです.問診し,皮膚を見て触り,立ってもらい,排尿や排便を記録してもらうだけでも,多くの重要な情報が得られます.図1に示したCore,Optional,Advancedという段階的な考え方を用いることで,自律神経障害を日常診療のなかで繰り返し評価し,早期発見,PDとMSAの鑑別,さらに疾患進行や予後の把握につなげることができます.
今後,実技の動画撮影も予定しており,今回ご紹介したベッドサイドでの自律神経評価法を,実際にご覧いただけるようになります.動画が公開されましたら,改めてご案内したいと思います.
Mori Y, Yamahara N, Ando T, Ono Y, Kato M, Ito M, Kodama M, Kanazumi S, Shimohata T. Protocols for Bedside Assessment of Autonomic Dysfunction in Parkinson’s Disease and Multiple System Atrophy. J Vis Exp. 2026 Sep 3;(235):e71986. doi:10.3791/71986. PMID: 42695590.

・マイハンマー2026(No. 39)まだ進化の余地があった打腱器!なんとヘッドが回転するPercuflex
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月9日のFB投稿です***
NHK「トリセツショー」でもご紹介いただいた私の打腱器(ハンマー)コレクションですが,もう集め尽くしたので,もう新しい型が追加されることはないと思っていました.ところが初めて見る,斬新な新型打腱器を入手しました.「ビーアイシー打診器(BIC Reflex Hammer)」150 gで,Amazonで購入しました(リンクはコメント欄).
製造しているのはドイツの医療機器メーカーで,本来の商品名は「CBC Percuflex」でした.メーカーのHPを調べてみると,なんと「Babinski,Trömner,Buck,Berlinerという4種類の打腱器の長所を統合したもの」と説明しています!!(リンクはコメント欄)
もし本当なら,Percuflexは,100年以上にわたって脳神経内科医が工夫してきたさまざまな打腱器の特徴を,現代的な形で「いいとこ取り」しようとした製品ということになります.そうなると,もう購入しないわけにはいきません(笑).Percuflexという名前は,おそらく「percussion(打診)」と「flexible(柔軟な)」を組み合わせた造語だと思いました.
長さ22 cmで,75 gと150 gの2種類があります.ヘッドはカラフルで,何種類か色の組み合わせがあります.私が選んだのは150 gのミント色です.ヘッドの形は既存のいずれとも違い,少し変わっています.最大の特徴は,なんといっても特許取得済みの回転式ヘッドです.360°回転,8段階で角度を固定できます.つまり,検者が打腱時に手首の角度を無理に変えるのではなく,叩きたい方向に合わせてあらかじめヘッドの向きを変えて使用します.腱反射の部位によって検者と患者の位置関係は変わりますので,これは単なるギミックではなく,意外に合理的な設計かもしれないと思いました.でも「本当に意味があるのかな?いちいち角度を変えるのは面倒かな?」と思いつつ,昨日,外来デビューで使用しました.思いの外,使いやすく,かつ面白いので,「これは楽しい」と診察しながら思わずニヤニヤしていました.
もう一つ気がついたのはハンドルがプラスチック製でわずかにしなることです.打腱器は単に腱を「叩く」道具ではなく,ある程度の重量を利用しながら振り子のように振り,適切な刺激を腱に伝える道具です.そのためヘッドの重量だけでなく,柄の柔軟性,重量バランスも使い心地を左右します.その点でなかなか良いハンマーだと思いました.75 gは試していませんが,おそらく150 gのほうが反射は出しやすいはずです.
打腱器という道具には,もはや新しい工夫を加える余地などないと思っていました.でも「ヘッドそのものを回転させればよい」という,ありそうでなかった発想を持ち込んだ点で,革新的なハンマーだと思いました.機会があればぜひお試しください.

・「ここまでわかってきた!プラスチックのカラダへの影響―子どもたちのために 今できることは?」講演・パネルトークに参加しました.
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月13日のFB投稿です***
子どもケミネット(有害化学物質から子どもを守るネットワーク)が主催する会に参加し,私は「マイクロ・ナノプラスチック 身体への危険性」というタイトルで講演しました.
講演では,近年急速に研究が進んでいるマイクロ・ナノプラスチック(MNPs)について,どのような経路で体内に入り,健康への影響がどこまで分かってきたのかをご紹介しました.とくに,頸動脈プラークや脳(図1の小さくキラキラ光っているもの),脳脊髄液からMNPsが検出され,脳卒中や認知症,パーキンソン病などとの関連を示唆する臨床・基礎・疫学研究が報告されていること,一方で因果関係についてはなお慎重な検証が必要であることをお話ししました.
子どもへの影響としては,MNPsが胎盤や臍帯血などからも検出されています.胎児や乳幼児は発達の重要な時期にあり,体重あたりの曝露量も多いことから,成人以上に影響を受けやすい可能性があります.今後さらに研究を進めるとともに,現時点でもできるところから曝露を減らし,「プラスタミネーション(プラスチック汚染)」への対策を進めることが重要だとお伝えしました.スライドはコメント欄のリンクからご覧いただけます.また,MNPsと認知症については,来月出版される本の中でも詳しく解説しました.
そして今回,とくに驚いたのが,人工芝の問題でした.環境ジャーナリストの栗岡理子さんから,「これもプラスチックだった!人工芝の問題」と題したお話がありました.学校や公園,スポーツ施設など,身近な場所で広く使われている人工芝ですが,最近の研究では,人工芝の芝葉そのものと,クッション性を持たせるための充填材の両方から,MNPsが継続的に発生することが指摘されています(Harusato A, et al. Environments. 2025;12(4):109;図2はこの論文より作成).芝葉や充填材は,摩耗に加え,紫外線,暑さ・寒さ,風雨などによって徐々に劣化・微細化します.そして生じたプラスチック粒子や有害化学物質は,風や雨水・排水を介して,土壌,河川,さらには海へと広がっていきます.人工芝が,都市環境における重要なプラスチック汚染源の一つになり得ることが分かってきています.
生態系への影響についてはすでに懸念が示されている一方で,ヒトの健康への影響はまだ十分に分かっていません.だからこそ,予防原則,すなわち科学的にすべてが証明されるのを待つのではなく,重大な影響の可能性があるなら,できる範囲で先に予防策を講じるという考え方に基づき,環境中への流出を減らす対策と,健康影響を明らかにする研究の両方が必要だと思います.人工芝がこれほど大きなプラスチック汚染源になり得ることを,ぜひ多くの方に知っていただきたいと感じました.
後半の約1時間のパネルトーク「子どもたちのために,今できることは?」も印象的でした.医師,研究者,環境ジャーナリスト,弁護士,地方議員,生活協同組合など,異なる立場の方々がこの問題に関心を持ち,それぞれの立場から取り組んでいることを知り,大変勉強になりました.
プラスチックは私たちの生活を便利で豊かなものにしてきましたが,近年の大量生産・大量使用が,人の健康や環境にどのような影響を及ぼすのかについては,まだ分かっていないことがたくさんあります.まずは知ること.そして,科学的なエビデンスを積み重ねながら,できることから変えていくこと.その大切さを改めて感じた一日でした.次世代の子どもたちのためにも,この問題を多くの方と共有していきたいと思います.

・頭蓋骨骨髄は「脳のすぐ隣の免疫器官」である―Nature論文と慢性疼痛研究が示す新しい神経免疫の世界
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月14日のFB投稿です***
2年前に,日本神経学会Residentホームページに「近未来の脳神経内科は頭蓋骨から診断し治療する!」という原稿を執筆させていただきました.きっかけはCOVID-19の研究でした.2023年,RongらはSARS-CoV-2のスパイク蛋白が頭蓋骨骨髄や髄膜に蓄積し,両者をつなぐ微小な通路にも認められることを報告しました.その後,KolabasらはCell誌で,この頭蓋骨・髄膜結合(skull-meninges connection;SMC)をヒトとマウスで詳細に解析し,さらに頭蓋骨骨髄が他の骨髄とは異なる独自の免疫学的特徴をもつことを明らかにしました.つまり頭蓋骨は単に脳を守る骨ではなく,内部の骨髄が脳と密接に情報をやり取りしているのではないか,という新しい考え方が生まれました.今回ご紹介する2つの研究は,この流れをさらに大きく発展させるものです.
ひとつめはWashington University in St. LouisのParkらによるNature論文です.頭蓋骨骨髄に,中枢神経系を監視するリンパ組織様構造が存在することを示しました.図1は後頭骨のwhole-mount免疫組織化学像で,CD20陽性B細胞,CD4陽性T細胞,MHC-II陽性抗原提示細胞が集まり,クラスターを形成している様子が明瞭に示されています.さらにCXCL13,BAFF,S1PR2など,胚中心様反応に関わる分子も確認されました.つまり頭蓋骨骨髄は単なる造血の場ではなく,「T細胞とB細胞が局所で相互作用し,胚中心様の獲得免疫応答を形成しうる場所である」ということです.
次に著者らは,このリンパ組織様構造が実際に脳からの情報に反応できるのかを調べました.まずマウスの線条体にAAVベクターを注入し,神経細胞に実験用の抗原HEL-OVAを作らせると,その抗原が頭蓋骨骨髄まで届くことを確認しました.さらに組み換えマウス由来の抗原HEL-OVAを認識できるT細胞とB細胞を体内に入れて追跡すると,頭蓋骨骨髄でT細胞が活性化し,B細胞にも胚中心様反応が起こりました.つまり頭蓋骨骨髄は,単に免疫細胞が集まっている場所ではなく,「脳で生じた抗原情報を受け取り,それに応じて獲得免疫応答を立ち上げる場所である」ことが示されたのです.
さらに,この免疫構造が病態にも関与することが示されました.頭皮下から,T細胞からB細胞への活性化シグナルを遮断する抗CD40L抗体を投与すると,脳腫瘍モデルマウスの生存期間は短縮しました.逆に,CD40刺激抗体にIL-21とIFNγを組み合わせ,頭蓋骨骨髄のB細胞応答を高めると,抗腫瘍免疫が増強され,生存期間が延長しました.つまり頭蓋骨骨髄は「治療標的にもなりうる免疫拠点である」ことが示されたのです.
2つめはMassachusetts General Hospitalを中心とするチームによるScience Translational Medicine誌の研究です.ヒト慢性疼痛患者において,頭蓋骨骨髄のTSPO PETシグナルが上昇することを示しました. TSPOは脳内では神経炎症を可視化するPET指標として広く用いられ,しばしばミクログリア活性化と関連づけられますが,頭蓋骨骨髄ではミクログリアはなく,その代わり骨髄球系細胞を中心とする免疫細胞密度を反映する指標と考えられます.慢性腰痛88例,変形性膝関節症37例,健常対照22例を対象に,TSPOを標的とする[11C]PBR28 PET/MRIで頭蓋骨骨髄を評価したところ,慢性腰痛群,変形性膝関節症群のいずれでも健常者より高値で,後者で最も高いシグナルが認められました(図2).初めて見る図ですが,頭蓋骨の広い範囲でTSPOシグナルが上昇し,とくに前頭部と頭頂部で顕著でした.さらにTSPOシグナルが高いほど,痛みの強さや生活への支障,不安,抑うつも強いことが示されました.ただし横断研究であるため,頭蓋骨骨髄の変化が慢性疼痛の原因なのか,それとも結果なのかまでは分かりません.
以上の2つの研究を合わせると,興味深い構図が見えてきます.前者は,頭蓋骨骨髄にリンパ組織様構造があり,脳由来抗原に対する獲得免疫応答が起こることを示しました.一方,後者は,ヒト慢性疼痛で,骨髄球系細胞を中心とする自然免疫系の変化が頭蓋骨骨髄に生じている可能性を示しました.見ている細胞系は異なりますが,両者を合わせると,頭蓋骨骨髄が自然免疫と獲得免疫の双方に関わる,脳に最も近い免疫監視拠点である可能性が浮かび上がります.
この視点は脳神経内科医にとっても非常に魅力的です.慢性疼痛や脳腫瘍だけでなく,認知症,脳卒中,自己免疫性脳炎,神経変性疾患などでも,頭蓋骨骨髄がどのように関与するのか注目されます.これまで見落とされてきた「脳のすぐ隣の免疫器官」が,将来,新しいバイオマーカーや治療標的になるかもしれません.
Park JH, et al. Functional role of skull lymphoid structures in CNS immunosurveillance. Nature. 2026. doi:10.1038/s41586-026-10951-4.
Mohammadian M, et al. Elevated translocator protein in skull bone marrow is linked to human chronic pain. Sci Transl Med. 2026;18(865):eaed8729. doi:10.1126/scitranslmed.aed8729. PMID: 42685155.

・「知らなければ害になる」―医学部5年生に初めて「機能性神経障害」を講義して考えたこと
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月15日のFB投稿です***
先週,医学部5年生の臨床講義で,初めて機能性神経障害(FND)を取り上げました.かつてはヒステリー,心因性疾患,転換性障害,身体表現性障害などと呼ばれてきた疾患です.これまで私がFNDを卒前教育で講義することには迷いがありました.その理由は,FNDの診断では,Hoover徴候やdistractibilityなど,神経診察で得られる「陽性徴候」を正しく評価することが重要であり,まだ基本的な神経診察を十分に身につけていない医学生に教えるのは難しいのではないか,と考えていたためです.
しかし,臨床実習で私の外来を見学する学生たちの反応を見て,考えが変わりました.FNDの患者さんの診療を実際に見た学生は,しばしば強い印象を受けます.とくに,長く診断がつかなかった患者さんに,診察所見を示しながら病態を説明し,診断をお伝えしたときに患者さんやご家族が安堵される姿は,学生にとっても忘れがたい経験になるようでした.
さらに,卒前教育でFNDを学ぶ機会がなければ,医師になってからもFNDを十分に知らないまま診療を続けてしまう可能性があります.FNDは決してまれな疾患ではありません.むしろcommon diseaseです.それにもかかわらず,存在を知らなければ鑑別診断に挙がらず,「検査では異常がない」「心因性ではないか」といった説明だけで終わってしまいます.そこで今回,思い切って5年生に初めて講義してみました.講義後,学生のみなさんの感想を読んで,予想以上に彼らがFNDの本質を理解してくれていることに驚きました.
「機能性神経障害は器質的疾患をすべて除外してから診断するわけではないということが,これまでの授業ではほとんど聞いたことのない考え方で,衝撃的でした」
「この疾患は除外診断ではなく,陽性徴候によって診断するという点が最も印象に残りました」
「研修医になってFNDの患者さんに出会ったら,Hoover徴候やdistractibilityを確認してみようと思います」
FNDは,「何も異常が見つからなかったからつける診断」ではありません.症状の特徴や診察で得られる陽性徴候から,積極的に診断する疾患です.この点はしっかり伝わったようでした.
一方,さらに印象的だったのは,医師の「知識」と「態度」に関する感想でした.
「無知であるということが患者さんを苦しめることになるため,病気を知っていること,鑑別診断の候補に挙げることが大切だと思った」
「知らなければ害になることを学んだ」
「医師は知識不足によって,患者さんに不利益を与え得る存在であることを改めて認識しました」
疾患を知らないことは,単に診断できないというだけではありません.不必要な検査を繰り返したり,患者さんの訴えを否定したり,適切な治療へのアクセスを遅らせたりすることにつながります.FNDでは,とくにその影響が大きいと思います.
また,診断や説明そのものが患者さんを助けることにも,多くの学生が気づいてくれました.
「患者さんの訴える症状を医師が認めること自体が治療になるのだと思いました」
「診断をつけることが,患者さんの心理的な不安を軽減することもあるという視点はなかったので,知ることができてよかったです」
「ポリクリでFNDの患者さんの外来を見学しました.診断が下ったときの患者さんとご家族の涙が印象的でした」
FNDの診療では,「症状は本当に存在している」と認めること,診察で得られた所見を患者さんと共有すること,そして回復可能性を含めて病態を説明することが重要です.患者さんにとって,自分の症状に名前がつき,医師が理解してくれたと感じられること自体が,治療の第一歩になることがあります.
また,「原因が一見分からない症状に対しても,安易に心因性と決めつけず,丁寧な診察から確かな所見を見出す姿勢を大切にしたい」という感想もありました.FNDを教えることは,一つの疾患を教えるだけではなく,「分からない症状を訴える患者さんに,医師としてどう向き合うか」を考える教育にもなりうるのだと思います.また救急医療を志望する学生からは,「救急医だからこそ知っておかなければならない」との感想もありました.また,「すべての医師がFNDの存在を知っておくことで,患者さんをたらい回しにして辛い思いをさせる事態を防げる」と書いた学生もいました.
今回講義をしてみて,医学部5年生にFNDのすべてを理解してもらう必要はないのだと気づきました.まずは,FNDという疾患があることを知ること.除外診断ではなく,陽性徴候に基づいて診断する疾患であることを知ること.患者さんの症状を否定しないこと.そして,自分だけで対応が難しければ適切な専門医につなぐこと.それだけでも,将来その学生が出会う患者さんの診療は大きく変わる可能性があります.
これまで私は,「神経診察を十分に習得してからでなければ,FNDを教えるのは難しい」と考えていました.しかし今回の学生たちの感想を読んで,むしろ逆なのかもしれないと思うようになりました.FNDを完全に診断できるようになってから知るのではなく,医師になる前に,まずその存在と診療の基本姿勢を知っておくことが大切なのだと思います.

・いよいよ分かってきた!アルツハイマー病で血液脳関門が破綻するメカニズム「APOE ε4→フィブロネクチン→血液脳関門破綻」
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月17日のFB投稿です***
アルツハイマー病(AD)の遺伝的危険因子であるAPOE ε4は,アミロイドβ(Aβ)蓄積だけでなく,血液脳関門(BBB)の破綻にも関与することが,動的造影MRIなどから分かっていました.しかし,APOE ε4という遺伝的背景が,どのような分子機序でBBB破綻につながるのかは不明でした.今回Nature Aging誌に,その両者をつなぐ分子として,細胞外マトリックス蛋白フィブロネクチン1(fibronectin 1:FN1)を同定した研究が報告されました.研究は米国Columbia University Irving Medical Centerを中心に行われ,ヒト剖検脳,脳脊髄液,single-nucleus RNA sequencing,ヒトiPS細胞,3次元血管モデル,マウス,ゼブラフィッシュを用いた多面的な検証が行われています.
著者らは以前,APOE ε4を持つAD患者では,アストロサイトと脳血管が接する領域(gliovascular interface)にFN1が蓄積すること,さらにFN1の機能喪失型遺伝子変異を持つAPOE ε4保有者ではADリスクが約71%低下することを報告していました.そこで今回,FN1が単なる病態マーカーではなく,APOE ε4とBBB障害をつなぐ分子ではないかと考えました.
ヒト剖検脳では,ADや高度の脳細動脈硬化を有する脳で,血管周囲へのFN1沈着が増加していました.またAPOE ε4/ε4 knock-inマウスでは,APOE ε3/ε3マウスと比較してFN1が約2倍に増加し,フィブリノーゲンの血管外漏出も増えていました.さらにAPOE ε4/ε4のヒトiPS細胞由来アストロサイトではFN1が増加し,正常な線維状構造ではなく無定形の沈着物を形成していました.single-nucleus RNA sequencingや多重免疫染色でも,FN1増加は特にアストロサイトで顕著でした.
Aβ42や炎症もFN1を増加させました.ヒト初代アストロサイトの3次元培養系では,Aβ42やTNFによってFN1発現が増加し,TNF刺激ではNF-κBシグナルの活性化と反応性アストロサイト化も認められました.一方,IL-4はこれらを抑制しました.さらに大規模脳バンク研究ROSMAPのヒト脳データでも,炎症性の反応性アストロサイトでFN1発現が特に高いことが確認されました.つまり,APOE ε4という遺伝的背景にAβ蓄積や炎症が重なることで,血管周囲へのFN1蓄積がさらに進むと考えられます.
本研究の核心は,蓄積したFN1がBBBを障害する仕組みを明らかにした点です.FN1はアストロサイト表面のintegrinを介してfocal adhesion kinase(FAK)を活性化し,BBBの恒常性維持に重要なVEGFAを低下させました.逆にFN1を減らしたり,FAKやintegrinを阻害したりするとVEGFAは回復しました.つまり,「FN1増加→integrin-FAK活性化→VEGFA低下」という経路があるようです.
この関係を端的に示す実験が図1です.APOE ε4/ε4のヒトiPS細胞由来アストロサイトでは,APOE ε3/ε3と比較してVEGFAが19.4%低下していました.さらにAPOE ε3/ε3アストロサイトでも,培養皿をFN1でコーティングするだけでVEGFAが25.7%低下しました.つまり,FN1を増やすだけでAPOE ε4に似た異常を再現できたことになり,FN1が単なる結果ではなく病態を媒介する原因となる分子であることを強く示唆します.
さらにVEGFAが低下すると,血管内皮細胞のHB-EGF(ヘパリン結合性EGF様増殖因子)が低下し,続いてアストロサイトのIGF-1も低下しました.著者らは,「FN1増加→integrin-FAK活性化→アストロサイトVEGFA低下→血管内皮HB-EGF低下→アストロサイトIGF-1低下」というシグナル経路を提唱しています(図2).ゼブラフィッシュでVEGFシグナルを遮断するとHB-EGFが約28%低下し,毛細血管のZO-1局在も低下しましたが,HB-EGFとIGF-1を補充すると回復しました.ヒトAD脳やAPP knock-inマウスでもVEGFA,HB-EGF,IGF-1はいずれも低下していました.さらに,ゼブラフィッシュのアストログリアでFN1を人工的に過剰発現させるだけで,血管外へのdextran漏出が生じました.つまりFN1増加はBBB障害に伴う単なる変化ではなく,それ自体がBBBの透過性を高める原因になり得ることが示されました.
これまでAD研究ではAβやタウ,神経細胞に注目が集まりがちでした.しかし本研究は,アストロサイト,細胞外マトリックス,脳血管からなる「gliovascular interface(アストロサイト-血管界面)」の異常が,APOE ε4によるBBB障害を媒介することを示しています.FN1は新たな治療標的となる可能性が出てきました.ADを「神経細胞だけの病気」ではなく,「脳血管を含む脳内環境全体の恒常性が崩れる病気」と捉え直すうえでも,非常に興味深い研究だと思います.
Bhattarai P,et al.Fibronectin mediates APOE4-driven blood–brain barrier dysfunction in Alzheimer’s disease.Nat Aging.2026;6:1901–1927.doi:10.1038/s43587-026-01204-0.PMID:42728404.

・機能性神経障害(FND)はどのような神経疾患に併存するのか?―驚くべきことに多発性硬化症では,7人に1人が機能性神経症状を呈する
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月20日のFB投稿です***
国際医療福祉大学市川総合病院,柴田護教授にお招きいただき,「機能性神経障害(FND)の診療~パーキンソン病との違いを含めて~」という講演をさせていただきました.FNDではパーキンソニズム様症状を呈することがあります.そのなかには機能性振戦,機能性姿勢保持障害,機能性パーキンソニズムが含まれます.講演では動画を用いて,それぞれの陽性徴候をご紹介しました.厄介なのはパーキンソン病患者さんにFNDが併存(overlay)することがときどきあることです.患者さんが症状の増悪を訴えて,抗パーキンソン薬を増量・追加しても当然効かず,頭を悩ますことになります.
このような器質性神経疾患におけるFNDの併存は重要な問題で,近年,とくに併存しやすい神経疾患も分かってきています.大規模コホート研究では,FND患者の78.5%に何らかの器質性神経疾患の併存が記録され,てんかん,片頭痛,多発神経障害などが高頻度に認められています1).また,機能性運動障害を対象とした多施設研究では約22%に器質性神経疾患が併存し,片頭痛,脳血管障害,パーキンソニズム,てんかん,多発性硬化症(MS)などが報告されています2).
当科のメンバーはFNDの陽性徴候の診察はかなりマスターしていますが,次の段階,つまり器質性神経疾患の増悪なのか,overlayするFNDによるものかの鑑別に苦労しています.今週の回診でも,MS患者におけるFNDの併存についての議論になりました.既報でも,MSでは責任病変だけでは説明できない症状が比較的高頻度に認められることが報告されています3).今回,主治医の先生に紹介した論文は,アデレード大学を中心とする国際共同研究で,MS患者にみられる「機能性神経症状(functional neurologic symptoms:FNS)」の頻度と特徴を検討したものです4).
MS専門外来を受診した18~64歳のMS,clinically isolated syndrome,radiologically isolated syndrome患者411名を対象とした後ろ向き研究です.本研究では,FNSを広く定義し,①FNDと診断された患者,②MSにFNDが併存するoverlayと診断された患者,③正式なFND診断はないものの,Hoover徴候,give-way weakness,振戦のdistractibilityやentrainment,機能性歩行など,FNDを支持する陽性徴候が認められた患者も含めています.さらに,持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)や機能性認知障害(FCD)の患者も対象としています.
さて結果ですが,411名中62名(15.1%),つまり約7人に1人にFNSが認められました.内訳は,FNDが20名(4.9%),functional overlayが11名(2.7%),正式な診断はないもののFNDの陽性徴候を認めた患者が31名(7.5%)でした.FNS群の88.7%では,身体診察で少なくとも1つのFND陽性徴候が確認されていました.症状としては,歩行・バランス障害が46.8%,四肢筋力低下が43.5%と多く,振戦16.1%,認知症状12.9%,感覚症状8.1%と続きました.具体的な診察所見では,疼痛では説明できないgive-way/collapsing weaknessが最も多く,機能性歩行,windmilling gait,可変性・注意転換可能な振戦,Hoover徴候などが認められました.ちなみにcollapsing weaknessは突然,力が抜けるようにみえる筋力低下のことです.
多変量解析では,FNSの併存と独立して関連する因子として,女性(OR 7.02),疲労(OR 4.74),認知症状(OR 4.00),慢性疼痛(OR 3.07),片頭痛(OR 2.38)が示されました(図1).ただし,これらはFNSとの関連を示したものであり,FNSの発症リスクを高めることが証明されたわけではありません.一方,MSの病型,罹病期間,疾患修飾薬の使用には明確な差がありませんでした.つまり,単純に重症なMSにFNSが生じるわけではなさそうです.以上を踏まえると,MS患者で疲労,認知症状,慢性疼痛,片頭痛が目立つ場合には,FNDの併存も念頭に置き,陽性徴候を確認することが重要です.
研究の限界としては,単施設の後ろ向き研究であり,診療録の記載に依存していること,FNDだけでなくPPPDや機能性認知障害,陽性徴候のみの患者も含むことなどです.したがって,「MS患者の15%がFNDである」と解釈するのは正確ではなく,MS専門外来では,FNDを示唆する陽性徴候を含む機能性神経症状が15%に認められたと理解すべきです.
いずれにせよ,本研究が示した重要な点は,器質性神経疾患とFNDは二者択一ではなく,両者が併存しうるということです.MRIで説明できない症候を認めた場合,MRIで検出できないながらも器質的病変によって神経症候学的に説明できるのか,あるいはFNDを支持する陽性徴候が認められるのかを丁寧に評価する必要があります.つまり,Hoover徴候やdistractibilityなどの陽性徴候を積極的に確認し,MSによる症候とFNDによる症候をそれぞれ適切に診断する姿勢が重要です. これはMSだけでなく,てんかん,Parkinson病,脳卒中など,他の器質性神経疾患を診療する際にも共通する重要な視点だと思います.
1)Asan L, Lynch-Kelly K, Berlot R, et al. Comorbidities and Outcomes in People With Functional Neurological Disorder. JAMA Neurol. 2026.
2)Tinazzi M, Geroin C, Erro R, et al. Functional motor disorders associated with other neurological diseases: Beyond the boundaries of “organic” neurology. Eur J Neurol. 2021;28:1752-1758.
3)Walzl D, Solomon AJ, Stone J. Functional neurological disorder and multiple sclerosis: a systematic review of misdiagnosis and clinical overlap. J Neurol. 2022;269:654-663.
4)Collins LC, Bagster MM, Tamlin L, et al. Functional Neurologic Symptoms in Multiple Sclerosis: Estimated Prevalence and Associated Comorbidities. Neurol Clin Pract. 2026;16(1):e200569. doi:10.1212/CPJ.0000000000200569. PMID: 41726793.

・朝日新聞に「機能性神経障害」について取り上げていただきました!
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月21日のFB投稿です***
昨日の朝日新聞の紙面,「医療」欄で,機能性神経障害について解説する機会をいただきました.
機能性神経障害は,運動麻痺やふるえ,けいれん,しびれ,感覚障害など,さまざまな神経症状を起こす病気です.「気のせい」でも「演技」でもなく,脳や神経に症状を説明するような構造的な損傷がなくても,神経の働き方がうまくいかなくなることで症状が出ます.どの年代の人にも生じますが,若い世代,とくに女性に多いことも知られています.
では,どう診断するのでしょうか.以前は「ほかの病気ではないこと」を確認して診断する方法(除外診断)が主流でしたが,現在は診察でみられる特徴的な所見(陽性徴候)を手がかりに,積極的に診断します(rule-in診断).たとえば,注意が別のことに向くと症状が軽くなる,動かし方によって力が入りやすくなる,といった所見が重要です.
治療はどうするのでしょうか.まず,患者さん自身がこの病気の仕組みを正しく理解することが大切です.そのうえで,認知行動療法やこの病気に合ったリハビリテーションなどを組み合わせ,一歩ずつ本来の動きや感覚を取り戻していくことを目指します.早めに脳神経内科などの専門医に相談することが大切です.
機能性神経障害は,まだ十分に知られていない一方で,決して珍しい病気ではありません.正しい理解が広がり,必要な方に適切な診断と治療が届くことを願っています.

・日本脳神経外科の父・中田瑞穂先生の足跡を訪ねて ― 科学も文学も絵もその根底はすべて「観察」
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月22日のFB投稿です***
シルバーウィークを新潟市で過ごしています.「にいがた文化の記憶館」で開催されている企画展「脳神経外科医×芸術家 中田瑞穂」を見学しました(図1).中田瑞穂先生(1893~1975)は,日本の脳神経外科の発展に多大な貢献をされた医学者であり,私が神経学を学んだ新潟大学脳研究所の初代所長として,その歴史を語るうえでも欠かすことのできない人物です.今回の展覧会では,医学者としての業績だけでなく,俳句や書,絵画など,芸術家としての一面も紹介されていました.
中田先生は1925年から約2年半にわたり欧米で外科修業を重ね,近代脳神経外科の父と呼ばれ,クッシング病の名前の由来にもなったHarvey Cushing先生や,Walter Dandy先生の手術を米国で直接見学されました.展示されていたCushing先生の水彩画は,中田先生自身が描かれたもので,手術着姿で何かを書き留める横顔が写実的に表現されていました.世界の最先端の医学を学ぼうとする若き中田先生の,鋭い観察眼が伝わってくるような作品でした.
また,中田先生ご自身が揮毫された俳句の書も展示されていました.
◆「刻々と手術はすすむ深雪かな」
ドイツのハイデルベルク大学で,外科学教授Eugen Enderlen先生の手術を見学した際に詠まれた句です.緊張感に満ちた手術室で着実に進む手術と,外に静かに降り積もる深雪.その対照的な情景から,手術を見守る中田先生の緊張感と感動が伝わってくるようです.
そして,私が中田先生の句のなかで最も好きな一句の書も拝見できました.
◆「学問の静かに雪の降るは好き」
展示の解説によれば,この句が詠まれた1947年は,中田先生が母校・東京帝国大学から教授就任の打診を受けながらも,新潟に残って研究を続ける道を選ばれた年だったそうです.静かに雪が降る新潟の地で,学問に向き合うことを愛した先生の人柄と,研究に対する真摯な姿勢が伝わってきます.
また写実的な絵画も数点展示されていました.中田先生は,医学と芸術に共通するものとして,「観察」を何よりも大切にされていました.図2は,亡くなった患者さんの脳の解剖・検討(ブレインカッティング)を行う中田先生(中央)と,左側で標本を説明する神経病理学者の生田房弘先生です.中田先生ご自身が大脳半球摘除術を執刀された症例の脳を検討している場面だそうです(昭和46年6月21日).生田先生によれば,中田先生は「文学も絵も科学も,その根底にあるのは徹底した『観察』であり,それこそが原点であり,出発点である」と語られていたそうです.
驚かされるのは,中田先生がご自身の病気さえも観察の対象とされていたことです.1953年,60歳のときにワレンベルグ症候群(延髄外側症候群)を発症すると,自らの神経症候を詳細に記録し,その所見から延髄の病巣を推定されました.MRIのない時代に,自分自身の症候を丁寧に観察し,神経解剖学的な知識と照らし合わせて病巣の局在を推定するという,まさに神経症候学に基づく局在診断を実践されていたのです.
晩年のエピソードも印象的です.82歳の誕生日を迎えた翌朝,中田先生は生田先生に,自らの剖検依頼書を手渡されました.そこには,大脳と脊髄を切断せず,一塊として摘出してほしいという希望が記されていたそうです.そして,生田先生が部屋を出ようとしたとき,こうつぶやかれました.
「本当はね,僕も自分で見たいのだよ」
自らの神経症候を観察し,最後まで自分自身の脳を知ろうとされた,中田先生の尽きることのない探究心を象徴する言葉だと思います.
展覧会を見学した後,久しぶりに新潟大学の旭町キャンパスを訪れました.病院の玄関前には「ヒポクラテスの木」の石碑があり,「中田瑞穂 題」の文字が刻まれていました(図3).また,脳研究所の赤門をくぐったところには,「学問の静かに雪の降るは好き」の句碑があります(図4).私は若い頃,毎朝この句碑を眺めながら出勤していました.中田先生のように学問に真摯に向き合いたいという思いを育んでくれた,私にとって特別な一句です.学問に真摯に向き合う姿勢を,後輩の先生方にも受け継いでいただけたらと思います.
企画展「脳神経外科医×芸術家 中田瑞穂」は,にいがた文化の記憶館で2026年11月1日まで開催されています.
参考資料:新潟大学季刊広報誌『六花』2016年秋号,No.18,特集「日本の脳外科の父 中田瑞穂 その足跡を辿る」,pp.3–7.

・睡眠中の「ピンクノイズ(音刺激)」で脳脊髄液の流れが増加する!脳の老廃物排出を促し,認知症予防につながるか?
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月23日のFB投稿です***
睡眠には,脳内に蓄積した老廃物の排出を促す働きがあると考えられています.特にノンレム睡眠中には,脳波の徐波に同期して脳脊髄液が大きく流動することが知られており,アミロイドβやタウなどの老廃物の排出との関連から注目されています.一方,睡眠中に適切なタイミングで短い音を聞かせると,徐波を増強できることも知られています.しかし,音刺激によって脳脊髄液の流れも増加させられるかどうかは不明でした.この課題に挑んだ研究が,Science Translational Medicine誌に報告されました.米国ボストン大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)などの研究グループは,睡眠中の脳波に合わせた短い音刺激によって,ヒトの脳脊髄液の流れを増強できることを示しました.
研究では,健康成人14名にMRI装置内で昼寝をしてもらい,脳波と機能的MRI(fMRI)を同時に測定しました.AIを用いて徐波をリアルタイムに解析し,そのピーク付近に50ミリ秒(0.05秒)の短い「ピンクノイズ」を聞かせました.「ピンクノイズ」とは,低音成分が比較的豊富で,雨音や滝の音に似た雑音です.実際に聞いてみましたが,土砂降りではないものの,結構な雨量の雨音に感じました(リンクはコメント欄).ただし重要なのは,音を流し続けるのではなく,脳波の適切なタイミングに合わせて短く聞かせることです.この方法を閉ループ聴覚刺激(closed-loop auditory stimulation:CLAS)と呼びます.
実験では,刺激するタイミングを検出すると,50%の確率でピンクノイズを聞かせ,残り50%では音を流さない偽刺激としました.合計1,328回の音刺激と1,327回の偽刺激を比較したところ,音刺激後0.25~0.75秒に徐波活動が有意に増強しました.さらに,数秒後には脳脊髄液の流入も増加しました.この流入の変化は,高速fMRIを用いて測定しました.第4脳室に新たに流入する脳脊髄液が強いMRI信号を生じる現象を利用し,音刺激前後の信号の変化を比較しています.
図1で,音刺激後の脳脊髄液流入信号の変化を示しています.青線が音刺激,オレンジ線が偽刺激です.音刺激後5~7秒の信号変化は,音刺激群で4.30%,偽刺激群で1.72%となり,有意差が認められました(P<0.009).つまり,短いピンクノイズを適切なタイミングで聞かせることで,第4脳室への脳脊髄液流入が増加したということです.なお,この数値はMRI信号の変化率であり,実際の流量の増加率ではありません.
さらに興味深いのは,音刺激のタイミングによって効果が異なることです.徐波のピーク直前,ピーク直後,谷の直前,谷の直後を比較すると,ピーク直後に刺激した場合にのみ,脳脊髄液流入信号の有意な増加が認められました.単に音を聞かせるだけではダメで,脳波の適切なタイミングに合わせることが重要ということです.
では,なぜ徐波が増強すると脳脊髄液の流れが増加するのでしょうか?著者らは,脳の血液量の減少が関係していると考えています(図2;Science. 2019;366:628-631).頭蓋骨の中は限られた空間であるため,脳の血液量(赤)が減ると,その分を補うように脳脊髄液(青)が流れ込む可能性があります.実際,音刺激後には脳全体の血行動態に関連するMRI信号が低下し,脳脊髄液の流入増加との関連が認められました.つまり,「適切なタイミングのピンクノイズ刺激 → 徐波の増強 → 脳血液量の減少 → 脳脊髄液の流入増加」という仕組みが考えられます.
今回の研究は,睡眠中の短い音刺激によって,脳脊髄液の流れを人為的に増強できることを示しました.ただし,アミロイドβやタウなどの老廃物の排出量や,睡眠の質,認知機能への効果は検証されていません.今後,家庭でも使用できる脳波計と音刺激装置が開発され,高齢者やアルツハイマー病患者さんでも同様の効果が得られるか,さらに老廃物の排出や認知機能の改善につながるかを検証することが期待されます.睡眠中の短い音刺激が,将来,認知症予防の新たな方法につながるかもしれません.
Levitt J, et al. Closed-loop auditory stimulation in phase with slow waves during sleep enhances cerebrospinal fluid flow in humans. Sci Transl Med. 2026;18:eaea5469. doi: 10.1126/scitranslmed.aea5469. PMID: 42715349.

・自己抗体ができるだけでは発症しない―自己免疫性神経疾患の発症から再発までをつなぐ7段階のカスケード
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月24日のFB投稿です***
自己免疫性脳炎や視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD),MOG抗体関連疾患(MOGAD)では,病原性をもつ自己抗体が次々と発見され,標的分子によって疾患を定義する時代になりました.しかし,そもそもなぜ特定の人に特定の自己抗体が生じ,それがどのように中枢神経へ到達し,発症や再発を引き起こすのかについては不明の点が多く残されています.Brain誌に掲載された総説では,こうした一連の過程を「cascade to pathogenicity(病原性獲得へのカスケード)」として統一的に捉える考え方を提唱しています.
対象となる標的分子は,臨床で特に重要な6つの神経・グリア表面抗原,すなわちLGI1,NMDA受容体,CASPR2,IgLON5,AQP4,MOGです.論文では「Big six」と呼んでいます.著者らが強調するのは,これらの疾患は単に「自己抗体ができたから発症する」のではなく,遺伝的素因,感染や腫瘍などの誘因,免疫寛容の破綻,自己反応性B・T細胞の成熟,中枢神経への侵入,自己抗体による標的分子の機能障害,さらに慢性化や再発という複数の段階を経て成立するという点です.つまり自己抗体はこの長い過程の「最終産物」の一つにすぎない,という見方です.
この論文の考え方を最もよく示しているのが図1です.7つの段階,すなわち①遺伝的素因,②誘因,③免疫系の活性化,④自己抗原反応性リンパ球や抗体の中枢神経への侵入,⑤神経・グリアの機能障害,⑥慢性後遺症,⑦再発が時間軸に沿って示されています.注目すべきは,発症前の段階が長く,かつ複数の「hit」が必要と考えられている点です.
まず①遺伝的素因に関しては,LGI1抗体疾患ではHLA-DRB107:01,CASPR2抗体疾患ではHLA-DRB111:01,IgLON5抗体疾患ではHLA-DQB1*05:01との強い関連があり,これら3疾患はいずれも比較的高齢で発症し,IgG4が優位という共通点を示します.一方,NMDAR抗体脳炎やMOGADではHLAとの関連がより弱く,異なる免疫学的背景が想定されています.
②誘因には感染,腫瘍,免疫チェックポイント阻害薬などがあります.最もよく知られているのは,NMDAR抗体脳炎における単純ヘルペス脳炎や卵巣奇形腫です.前者では,感染によって神経細胞が障害されると,通常は免疫系から隔離されている中枢神経抗原が露出し,髄膜リンパ系を介して頸部リンパ節へ運ばれ,自己反応性リンパ球を刺激する可能性があります.しかし脳梗塞や頭部外傷では同様の自己免疫性脳炎が頻発するわけではなく,単なる組織障害だけでなく,感染特有の炎症環境が必要と考えられます.また卵巣奇形腫では,腫瘍内にNMDAR反応性B細胞や抗体が存在することが示されており,腫瘍そのものが自己免疫反応を立ち上げる場になっている可能性があります.
つぎが③の免疫系の活性化です.自己抗原反応性B細胞は,実は患者だけに存在するとは限りません.例えばCASPR2反応性ナイーブB細胞は健常者にも比較的高頻度で存在しますが,CASPR2反応性memory B cellは患者に特徴的です.つまり,「自己反応性B細胞を持っていること」よりも,それが骨髄や末梢リンパ組織に存在する免疫寛容のチェックポイントをすり抜け,胚中心で成熟することが発症に重要と考えられます.さらに,近年,話題になっている髄膜リンパ管を介して中枢神経由来抗原が集まる頸部リンパ節には,NMDARやAQP4反応性B細胞が存在し,AQP4-IgGが実際にリンパ節内で産生されることも報告されています.頸部リンパ節が「脳と免疫系を結ぶハブ」として機能している可能性は,非常に興味深い点です.
自己抗体が中枢神経へ到達した後,どのように神経障害を起こすかという④⑤をまとめたのが図2です.ここで重要なのは,自己抗体といってもその作用機序は各々大きく異なることです.AQP4-IgG1はアストロサイト足突起のAQP4に結合し,補体を強力に活性化して細胞障害を起こします.これに対してNMDAR-IgG1では,補体による神経細胞死よりも,受容体を架橋して細胞内へ取り込ませるinternalizationが中心で,NMDAR機能低下を生じます.LGI1抗体ではLGI1のinternalizationやLGI1とADAM22/23との結合阻害,CASPR2抗体ではCASPR2とcontactin-2の相互作用障害などが生じます.IgLON5抗体ではIgG1によるinternalizationとIgG4による蛋白間相互作用の阻害が想定されています.つまり,抗体の標的だけでなく,IgG1かIgG4か,抗原がどこにどの密度で存在するかによって病態が決まります.
とくにIgLON5抗体疾患は興味深く,自己免疫と神経変性をつなぐ疾患として位置づけられています.剖検脳ではタウ沈着より早い段階からIgG4沈着がみられ,患者由来IgGを神経細胞や動物へ作用させるとタウ蓄積が誘導されます.すなわち,「自己免疫が先に起こり,その結果として神経変性が生じる」という方向性を支持する稀なモデルです.
そして図3では,この「病原性獲得へのカスケード」のどこを治療標的にできるかをまとめています.抗CD20抗体はB細胞を除去しますが,長寿命形質細胞は十分に除去できません.抗CD19抗体はより広いB細胞系列を標的とし,抗CD38抗体やproteasome inhibitorは形質細胞を標的とします.さらにCAR-TはB細胞をより深く除去し,FcRn阻害薬は循環IgGを減少させます.AQP4陽性NMOSDでは,病原性抗体が引き起こす最終段階の補体活性化をC5阻害薬で遮断することにより,極めて高い再発抑制効果が得られています.この成功体験は,「疾患ごとにカスケードの最も重要な段階を見極め,そこだけを狙う」というprecision medicineの有効性を示しています.
さらに将来は,正常な免疫系を広く抑えるのではなく,病原性自己免疫反応だけを選択的に消去する治療が目標になります.例えば特定のHLA-自己抗原ペプチド-T細胞受容体の相互作用を遮断する方法,自己抗原を提示したCAAR-Tによって自己抗原反応性B細胞だけを除去する方法,病原性自己抗体だけを選択的に分解する方法,さらに患者自己抗体と標的分子との結合を無害な抗体で競合的に遮断する方法などが検討されています.著者らが目指しているのは,単なる「免疫抑制」ではなく,特定の自己抗原に対する異常な免疫記憶だけをリセットする治療です.
総説から分かるのは,自己抗体による神経疾患を理解するには,もはや抗体検査の結果だけを見ていてはいけないということだと思います.その抗体がなぜ生まれたのか(遺伝と誘因),どこでB細胞が成熟したのか,なぜ中枢神経へ移動したのか,どのように標的分子を障害したのか,そしてある患者では再発し,別の患者では単相性なのかまで考える必要があると思います.将来的にこのカスケードの各段階を患者ごとに解析できれば,自己免疫性神経疾患の治療は,現在の広範な免疫抑制から,原因となる免疫異常だけを狙う治療へ変わっていく可能性があります.それは「治癒」を目指す治療への道をひらくものになるのではないかと思います.
Montini F,et al.The cascade to pathogenicity in autoantibody-mediated CNS diseases.Brain.2026;149:2974–2993.doi:10.1093/brain/awag158.PMID:42081370.

・閉経に伴う血液タンパク質の変化が大きいほど,認知機能低下やアルツハイマー病の発症リスクが高い
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月25日のFB投稿です***
閉経は女性にとって重要な生物学的転換点です.エストロゲンの減少に伴い,ほてりや寝汗,睡眠障害などが生じますが,近年,閉経が脳の老化やアルツハイマー病(AD)の発症リスクにも関係する可能性が注目されています.しかし,その分子メカニズムは十分に解明されていません.今回,トロント大学などの国際共同研究チームは,閉経に伴う血液タンパク質の変化を解析し,その変化が脳の老化や将来の認知症リスクと関連することを明らかにし,Nature Medicine誌に発表しました.
著者らはまず,43~58歳の女性80名を閉経前,閉経移行期,閉経後の3群に分け,超高感度のタンパク質測定技術であるNULISAseqを用いて血液を解析しました.その結果,閉経後には16種類のタンパク質が増加していました(図1左).これらには炎症に関わるCCL2やCCL11,シナプス機能に関連するSNAP25やCNTN2,さらにAD病理に関連するp-tau231やBACE1が含まれていました.特に,ADに関連するリン酸化タウであるp-tau231と,アミロイドβの産生に関与する酵素BACE1の増加は注目されます.ただし,これらの血中濃度の上昇が,実際の脳内AD病理の進行を意味するかどうかは明らかではありません.
次に,16種類のタンパク質を組み合わせて「閉経プロテオミクススコア」を作成したところ,閉経前,閉経移行期,閉経後の順にスコアが高くなっていました.興味深いことに,この変化は加齢そのものよりも,性ホルモンの変化と強く関連していました.具体的には,エストラジオールの減少は主に炎症関連タンパク質の増加と,卵胞刺激ホルモン(FSH)の上昇は炎症に加え,ADや神経機能に関わるタンパク質の増加とも関連していました(図1右).つまり,閉経に伴う脳の変化を考える際には,エストロゲンの減少だけでなく,FSHの上昇にも注目する必要があります.実際,動物実験ではFSHが神経炎症やAD病理の形成に関与する可能性が報告されています.ただし今回の研究で因果関係が証明されたわけではありません.
また,閉経期に寝汗を認める女性では,CCL2,CCL13,CXCL1,CCL26といった,免疫細胞を炎症部位に呼び寄せるケモカインが増加していました.高齢女性を対象とした解析でも,過去にほてりや睡眠障害を経験した女性では,閉経プロテオミクススコアが高いことが示されました.特にCCL2は,中年期と高齢期の両方で血管運動症状(ほてり,寝汗)との関連が認められ,閉経期の症状と炎症性の分子変化が長期的に関連する可能性が示唆されました.
さらに,英国のUK Biobankに参加した女性2,814名で検証したところ,測定した2,923種類のタンパク質のうち,1,300種類(44%)が閉経前・閉経移行期と閉経後で異なっていました.特に炎症や補体系に関連するタンパク質が増加していました.また,血液タンパク質から臓器および細胞の生物学的年齢を推定したところ,閉経後の女性では,同じ暦年齢の閉経前・閉経移行期女性と比較して,臓器では脳や動脈などの生物学的年齢が高く推定されました(図2左).また細胞では,髄鞘の形成と維持に関わるオリゴデンドロサイトとその前駆細胞の老化指標も高くなっていました(図2右).閉経に伴う分子変化は,神経細胞だけでなく,脳白質や髄鞘の維持に関わる細胞の老化とも関連する可能性があります.ただし,これらは血液タンパク質から推定した指標であり,脳内の細胞老化や脱髄を直接示したものではありません.
では,こうした分子変化は,将来の認知機能低下や認知症の発症と関係するのでしょうか? 著者らは,4つの独立した高齢女性コホート,合計11,925名で検証しました(図3).ADNI研究の女性673名を平均約5年間追跡したところ,閉経プロテオミクススコアが高い女性ほど,認知機能低下が速いことが示されました(図3b).同様の結果はBrANCH研究の女性100名でも認められ(図3c),WRAP研究の女性93名では,スコアが高いほど全般的認知機能が低いことが示されました(図3d).さらに,UK Biobankの女性11,059名を平均15.7年間追跡したところ,スコアが高いほどADの発症リスクが高いことが明らかになりました(ハザード比1.15,95%信頼区間1.01~1.31,P=0.04,図3e).一方,血管性認知症,前頭側頭型認知症,全認知症については有意な関連は認められませんでした.
以上の結果は,閉経に伴う血液タンパク質の変化が,脳の生物学的老化だけでなく,その後の認知機能低下やAD発症リスクとも関連することを示しています.ただし,今回の研究では,中年期の女性を閉経前から認知症発症まで追跡したわけではなく,閉経に伴う分子変化が認知症を引き起こすことを証明したものではありません.また,AD発症との関連は比較的小さく,このスコアだけで個人の将来の認知症発症を予測できるわけではありません.
今回の研究は,閉経が単なる生殖機能の終了ではなく,炎症,神経機能,代謝などに関わる広範な分子変化を伴う,女性の生物学的老化における重要な転換点であることを示しています.もちろん,閉経後の女性の大部分が認知症を発症するわけではありませんし,ホルモン補充療法によって認知症を予防できると結論づけることもできません.今後は,同じ女性を閉経前から長期間追跡し,性ホルモン,血液タンパク質,脳画像,認知機能の変化を詳しく調べる必要があります.閉経期は,将来の認知症リスクに関連する生物学的変化を早期に捉え,女性の脳の健康を守るための新たな手がかりが得られる時期なのかもしれません.
Wood Alexander M,et al.Blood proteomics of menopause map to brain aging and dementia risk.Nature Medicine.2026年9月22日.DOI:10.1038/s41591-026-04648-4

・ハーバード大学医学部での機能性神経障害教育―知識は変わる.では偏見は変わるか?
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月26日のFB投稿です***
先日,「『知らなければ害になる』―医学部5年生に初めて『機能性神経障害』を講義して考えたこと」というブログを書きました.そこで,機能性神経障害(FND)は,医師になってからではなく,学生のうちからその存在と基本的な診療姿勢を学ぶ必要があるのではないかと書きました.その考えを裏づけるような教育研究が最新号のNeurology: Education誌に報告されました.Harvard Medical Schoolなどの研究グループからの報告です.
脳神経内科実習中の医学生を対象として,FNDについて教育すると,知識や患者に対する態度がどう変化するかを検討しています.合計2時間,つまり1コマ1時間を2回行う教育介入ですが,内容は私よりかなり実践的でし.1コマめは,指導医が実際の症例をもとに少人数教育を行い,FNDの診断に重要なinternal inconsistencyやincongruityを学びます.つまり,同じ症状でも注意の向け方や診察法によって変化することや,症状が通常の神経解剖学では説明しにくいことです.そして,「検査に異常がないからFND」と考えるのではなく,特徴的な陽性徴候から積極的にrule in診断することを教えます.さらに,学生自身が「患者さんにFNDという診断をどう伝えるか」を実際に練習し,その場でフィードバックを受けます.
2コマめは,すでに実習を終えた先輩の医学生が指導役となり,FNDと詐病(malingering:外的な利益を得る目的で症状を意図的に作ったり誇張したりすること)や作為症(factitious disorder:外的利益ではなく,患者として扱われることなどを目的に症状を意図的に作ること)との違いを学ぶだけでなく,FND患者を診療したときに自分が感じた戸惑いや感情についても話し合いました.FNDを単なる知識としてではなく,「患者さんにどう向き合うか」という問題として教えている点が印象的で,やはり教育の質が高いと思いました.
結果は明瞭でした.FNDに関する知識テストの正答率は,教育を受けた学生では92%,対照群では72%で,FNDに関する知識は大きく改善しました.また患者に対する態度も,「FNDについて理解している」「患者にFNDについて説明することに抵抗がない」という項目は教育群で改善する傾向を示しました.また「FND患者は神経内科医ではなく精神科医が診るべきである」という考え方に対して,明確に反対していました.
ただし,すべての態度が変わったわけではありません.「FND患者を診るといら立つ」といった感情に関する項目には,はっきりした差がありませんでした.著者らはここを重要視しています.FNDに関する知識は講義によって比較的変えやすくても,患者に対する感情やスティグマは,知識だけでは容易に変わらないということです.その背景として著者らは,①学生自身が経験したFND患者との難しい診療経験,②研修医・指導医がFND患者をどのように扱っているかというロールモデル,③診療科全体の文化,を挙げています.つまり,FNDに対する偏見を減らすためには,学生だけを教育すればよいのではなく,教える側の医師や診療科全体も変わる必要があるということです.
前回の講義で,ある学生が「知らなければ害になる」と書いてくれましたが,この論文を見ると,その先にはもう一つ重要な課題があることが分かります.知識を持つことは出発点ですが,その知識を患者さんへの態度や診療行動につなげるところまでがFND教育なのだと思います.FNDを医学部で教える意味は,一つの疾患について知識を増やすことだけではなく,「原因がすぐには理解できない症状を訴える患者さんに,医療者としてどう向き合うのか」を学ぶことだと思います.例えば,慢性疼痛や過敏性腸症候群,慢性疲労症候群/筋痛性脳脊髄炎など,症状と病態の関係が単純ではない患者さんに,医師としてどう向き合うのかを学ぶ教育になるということです.そしてFND教育を進めることは,学生を変えるだけではなく,私たち教える側の医療文化を見直す機会にもなると思います.
Viola M,et al.Education Research: Case-Based and Near-Peer Teaching on Functional Neurologic Disorder in the Neurology Clerkship: A Cross-Site Comparative Pilot Study.Neurol Educ.2026;5:e200342.doi:10.1212/NE9.0000000000200342.

・アルツハイマー病やパーキンソン病は「神経免疫ネットワーク」の病気なのか?(Cell誌 Perspective)
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月27日のFB投稿です***
アルツハイマー病(AD)やパーキンソン病(PD),筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経変性疾患は,これまでAβ,タウ,αシヌクレイン,TDP-43などの異常タンパク質が蓄積し,神経細胞が障害される疾患として理解されてきました.しかし近年,それだけでは病態の全体像を説明できず,神経系と免疫系の相互作用そのものが発症や進行を左右するという考え方が急速に注目されています.Cell誌に発表されたPerspectiveで,米国の複数の研究者が連名で,神経変性疾患を「神経と免疫のクロストークの破綻」として捉え直す新しい枠組みを提唱しました.
著者らがまず強調するのは,脳は免疫系から隔離された「免疫特権臓器」ではないという点です.髄膜,脈絡叢,血液脳関門にくわえ,話題の髄膜リンパ管,頭蓋骨骨髄などは,単なる障壁ではなく神経系と免疫系を結ぶ重要なインターフェースです.ミクログリアだけでなく,T細胞,B細胞,マクロファージ,NK細胞など多様な免疫細胞が,神経発達,シナプス形成,神経新生,組織修復に関与しています.つまり免疫系は,病気になって初めて脳に関わるのではなく,正常な脳機能を維持する仕組みの一部ということです.さらに腸管で教育された免疫細胞が脳へ移動するなど,神経免疫ネットワークは脳内にとどまらず全身に広がっています.
論文では,神経変性を引き起こす神経免疫異常を3つの病態から整理しています.それは①outside-in,②inside-out,③locked-inの3つです.
①の「outside-in」は,腸管やリンパ節など末梢で成立した適応免疫反応が脳へ影響する機序です.PD患者ではαシヌクレイン由来ペプチドを認識するT細胞が確認されており,ALSではTDP-43の異常によって通常は現れないcryptic epitopeが生じ,CD8陽性T細胞を活性化する可能性が示されています.とくにPDでは,動物モデルにおいて腸管マクロファージがαシヌクレインを取り込み,T細胞を活性化し,そのT細胞が脳へ移動して病態に関与することが示されています.これらは単なる腸内細菌叢の問題ではなく,「腸―免疫―脳」という経路から病態を捉える考え方です.
②の「inside-out」は,脳内のミクログリアの異常が出発点となり,周囲の神経細胞やグリア,さらに末梢から流入する免疫細胞を巻き込みながら神経炎症を増幅していくというモデルです.加齢したミクログリアは炎症部位へ免疫細胞を呼び寄せるケモカインであるCXCL10などを産生し,CD8陽性T細胞を脳内に呼び込みます.するとT細胞由来のIFN-γがミクログリアや他のグリアをさらに炎症性状態へ変化させ,神経障害を増幅する悪循環が生じます.一方で,免疫反応は常に有害なわけではなく,Aβ特異的制御性T細胞のように病態を抑制する反応もあります.したがって重要なのはなんでもかんでも免疫を抑えることではなく,疾患や病期に応じて,保護的な神経免疫反応と病的な反応のバランスを調節することになります.
③の「locked-in」は,慢性的な炎症や加齢によって遺伝子・エピジェネティック制御が変化し,いったん形成された病的な神経免疫状態が固定され,長期間維持されるという考え方です.②が神経炎症を「広げる仕組み」だとすれば,③はそれを「固定して慢性化させる仕組み」です.TDP-43,FUS,C9orf72などの神経変性疾患関連分子は,タンパク質恒常性だけでなくRNA代謝や転写制御,免疫細胞の機能にも関係しています.加齢によってこうした遺伝子制御の精度が低下すると,ミクログリアなどが環境変化に適切に適応できなくなり,慢性的な炎症状態から「抜け出せなくなる」可能性があります.
この論文でとくに重要なのが,図1に示された「ConCause」という概念です.ConCauseは “convergent, interacting causes(収束し,相互作用する原因)”という考え方を端的に表したキャッチフレーズです.すなわち,神経変性は一つの原因から直線的に生じるのではなく,複数の病態因子が互いに影響し合いながら一つの病態へと収束していく,という考え方です.具体的には,遺伝・エピジェネティクス,加齢,ミクログリアなどの脳内常在免疫細胞の機能異常,T細胞・B細胞の活性化,免疫細胞の脳内浸潤,全身炎症,cryptic antigen,血液脳関門やリンパ系の障害などが,タンパク質凝集やタンパク質恒常性の破綻と相互作用しながら病態を形成していきます.しかも,これらは一方向に進むのではなく,互いにフィードバックして増幅され,最終的にシナプス機能障害・喪失,神経回路の不安定化,神経細胞の脆弱化・変性へと収束します.つまり,免疫異常は神経変性に伴って生じる単なる「結果」ではなく,他の病態因子とともに疾患そのものを形づくる「共原因」の一つと位置づけられます.
この考え方は治療戦略も大きく変える可能性があります.Aβやαシヌクレインなどの異常タンパク質そのものを除去するだけでなく,ミクログリアとT細胞の相互作用,CXCL10-CXCR3やIFN-γなどのシグナル,髄膜,頸部リンパ節,頭蓋骨骨髄,さらには腸管免疫も治療標的になり得ます.遺伝子改変したマクロファージやT細胞を用いて病的な免疫回路そのものを組み替えるという構想や,免疫細胞を脳内病態のバイオセンサーとして利用するという興味深いアイデアも紹介されています.将来的には,患者ごとに異常となっている免疫回路を同定し,必要な部分だけを修正する「precision immunology」へ発展する可能性があります.
もちろん,現時点では動物モデルから得られた知見が多く,ヒトにおいてどの免疫変化が原因で,どれが結果なのか,また,どの時点で保護的な免疫反応が病的な反応へと転じるのかは,まだ十分に分かっていません.それでも,神経変性疾患を単に「脳内に異常タンパク質が蓄積する病気」と捉えるのではなく,「脳と全身を結ぶ神経免疫ネットワークの恒常性が破綻する病気」として捉え直す視点は重要だと思います.これまで神経変性と神経免疫は,比較的独立した研究領域として発展してきた印象がありますが,今後はその垣根を越え,双方の知見や研究手法を融合していくことが重要になるのだと思います.当科には自己免疫性脳炎に関心をもつ先生が多いのですが,将来的には,そこで培った視点や研究手法を「いわゆる神経変性疾患」の研究にも広げてほしいと,日頃から話しています.
Bennett FC, Hong S, Jiang N, Marazzi I. Neurodegeneration as a dysregulation of neuroimmune crosstalk. Cell. 2026;189(17):5156-5173. doi:10.1016/j.cell.2026.07.015. PMID: 42624075.

・治療可能な認知症を見逃さない―GFAPアストロサイトパチー291例から見えた認知機能障害と予後
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月28日のFB投稿です***
自己免疫性GFAPアストロサイトパチー(GFAP-A)は,脳脊髄液中のGFAPα抗体を特徴とする自己免疫性の髄膜脳炎・髄膜脳脊髄炎です.免疫療法が有効なことが多い一方,認知機能障害を呈することも知られています.当科の森泰子先生,木村暁夫先生らが,GFAP-Aに伴う認知機能障害の特徴と予後因子を大規模コホートで検討し,Journal of Neurology誌に報告しました.
2019年から2025年までにGFAPα抗体検査を行った症例のうち,脳脊髄液のtissue-based assay(TBA)とcell-based assay(CBA)の双方で抗体陽性となり,十分な臨床情報が得られたGFAP-A 291例を解析しました.さらに,免疫療法開始後6カ月以上追跡できた198例について,認知機能障害の残存に関連する因子を検討しました.この結果,291例中120例(41.2%)に認知機能障害が認められました.詳細に評価できた108例では,見当識障害73例,記憶障害50例,前頭葉機能障害26例が多く,失行19例,失算19例,失語17例なども認められました.前頭葉機能障害にはアパシー,遂行機能障害,注意障害などが含まれます.また,反応の遅さ,せん妄,まとまりのない会話など,意識障害との区別が難しい症状も少なくありませんでした.つまり,GFAP-Aに伴う認知機能障害は多彩であり,認知症候そのものに特異的なパターンはないということになります.
発症から認知機能障害が認識されるまでの中央値は17日で,44%は2週間以内でしたが,41%は30日以上経過してから認識されました.認知機能障害そのものが初発症状になることはまれで,発熱,頭痛,食欲低下,全身倦怠感などから始まる症例が多くみられました.なかには,アパシーや食欲低下からうつ病と診断され,数カ月後に歩行障害やMRI異常が明らかになる症例もありました.
認知機能障害群は非合併群より高齢で,年齢中央値は62歳対50歳でした.また,発症から免疫療法開始までの期間も51日対16日と長くなっていました.興味深いことに,認知機能障害群では,発熱,頭痛,髄膜刺激徴候,悪心といった急性炎症症状がむしろ少なく,脳脊髄液細胞数やリンパ球数も低値でした.一方,oligoclonal bands陽性率やIgG indexは高く,頭部MRIでは脳室周囲・深部白質病変やlinear perivascular radial enhancementが多く認められました.多変量解析では,高齢と脳脊髄液リンパ球数が少ないことが認知機能障害の独立した関連因子となりました(図1上).つまり,認知機能障害を呈するGFAP-Aでは,急性脳炎らしさが目立ちにくい傾向があるようです.
予後については,6カ月以上追跡できた198例中37例(18.6%)で最終観察時にも認知機能障害が残存していました.多変量解析では,高齢と免疫療法開始の遅れが独立した予後予測因子でした(図1下).年齢は1歳上昇するごとにOR 1.068で,10歳差では約1.75,20歳差では約3.06に相当します.また,治療開始の遅れは1日あたりOR 1.006で,1カ月の遅れでは約1.20になります.残存群では再発率も27.0%対7.1%と高く,6カ月後および最終観察時のmRSも不良でした.
GFAP-Aは認知症やうつ病と判断されると診断が遅れ,免疫療法開始の遅れにつながる可能性があります.一方で,免疫療法により改善しうる疾患です.したがって,「治療可能な認知症」の一つとしてGFAP-Aを念頭に置き,認知機能障害が不可逆的になる前に診断し治療につなげることが重要です.
では,どのようなときにGFAP-Aを疑えばよいのでしょうか?高齢者が亜急性~慢性に認知機能低下やアパシーを呈し,歩行障害,運動失調,ミオクローヌス,精神症状などの神経症候や,頭痛,発熱,排尿障害,関節痛,全身倦怠感など,通常の神経変性性認知症だけでは説明しにくい症状を伴う場合が手掛かりになります.その際には腰椎穿刺を行い,細胞数が目立って増加していなくても,OCB陽性やIgG index高値,さらにMRIの白質病変やlinear perivascular radial enhancementがあれば本疾患を念頭に置く必要があります.
本研究には,後ろ向き研究で認知機能評価が統一されていないこと,詳細な神経心理検査が全例で行われていないこと,認知機能障害と意識障害の区別が難しいこと,治療法ごとの効果を十分に比較できていないことなどの限界があります.しかし291例という大規模なGFAP-Aコホートから,認知機能障害の特徴と予後を明らかにした点は臨床的に重要です.非常に説得力のある研究だと思います.また貴重な症例の検討の機会をいただきました先生方に感謝申し上げます.
Mori Y, Takekoshi A, Ono Y, Yoshikura N, Shimohata T, Kimura A. Characteristics and prognostic factors of cognitive impairment in autoimmune glial fibrillary acidic protein astrocytopathy. J Neurol. 2026;273:586. doi:10.1007/s00415-026-14083-7.

・「神経は難しい」をどう変えるか―医学部3年生の感想から見えた脳神経内科教育の7つのヒント
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月29日のFB投稿です***
医学部3年生に対する脳神経内科の3週間にわかる集中講義が始まりました,昨日,最初の講義を2コマを担当しました.診療科の紹介に続いて,神経診察を動画や実演を交えながら説明しました.講義後に学生の感想を読んでみると,いくつかの反応が繰り返し現れていました.そこから,「脳神経内科をどのように教えるとよいのか」について,7つのヒントが見えてきたように思います.
まず最も強く感じたのは,「neuro-phobia(神経恐怖症)を最初に解除する必要がある」ということです.講義前には,「脳神経内科は難しい」「神経解剖が苦手なので自分には向いていない」「頭の良い人が進む診療科だと思っていた」というイメージを持つ学生が少なくありませんでした.2年生で学ぶ神経解剖学の難解さによって,脳神経内科を学び始める前から,「自分には無理」と思い込んでいるようでした.これはこれまでの講義経験からも感じていたため,冒頭で「神経解剖学が難しいことと,脳神経内科が難しいことは同じではない!」「臨床に必要な神経解剖学は,これから改めて教えていく」と明言しました.講義後には,「少し気持ちが軽くなった」「不安な思いは払拭された」「初めから諦めず頑張ってみようと思った」といった感想が多数見られました.改めて,神経解剖への苦手意識が「自分は脳神経内科には向いていない」という自己評価にまでつながっていることに驚かされました.脳神経内科教育の入口では,まず「自分にも理解できそうだ」と思ってもらうことが大切なのだと思います.
2つ目は,「原始的な診察から,こんなに多くのことが分かる」という驚きを体験してもらうことです.学生の感想には,「特殊な機械を使わないのに,こんなに多くのことが分かるのか!」「画像を使わなくても異常を推測できるのは驚き」といった言葉が何度も登場しました.とくに,除皮質硬直と除脳硬直の上肢の姿勢の違いから,脳の障害の程度や部位を推測できることに驚いたという感想も多くありました.学生にとって,自分の目と手で神経系の異常を読み解いていくことが非常に新鮮だったようです.印象的だったのは,「外から見えないことを,こちらから作用を与えることで見えるようにして評価できることが興味深い」という感想でした.これはまさに神経診察の本質です.この「見えないものを診察によって見えるようにする」面白さを,できるだけ早い段階で体験してもらうことが重要なのだと思います.
3つ目は,神経解剖を「暗記するもの」から「症候を理解するための地図」に変えることです.「2年生で学んだ神経解剖学が,実際の体の動きとつながった」「神経回路の障害と症状が意外と直結していた」という感想も複数ありました.神経解剖学は,それだけを覚えようとすると確かにつらいものです.しかし,「Barré徴候で,なぜ腕が回内して下がるのか」「なぜこの眼球運動障害が起こるのか」と症候から逆向きに考えると,神経回路に意味が生まれます.「解剖→症候」だけでなく,「症候→解剖」を何度も往復することが,neuro-phobiaを減らす鍵なのではないかと思いました.
4つ目は,神経診察は「説明する」よりも,「見せる,やってもらう,体験してもらう」方がよいということです.学生からは,「実際に自分の体を動かしながら理解できた」「動画や実演があり,分かりやすかった」「自分でも診察してみたい」という感想がありました.眼球運動,振戦,asterixis,Barré徴候,Romberg徴候などは,文章だけで理解するのは容易ではありません.しかし,一度動画で見たり,自分の体で試したりすると,急に意味が分かることがあります.神経診察は身体を使う学問です.だからこそ,教育もできるだけ動画や身体を使い,知識を体験に変える必要があるのだと思います.
5つ目は,AI時代の医師像と結びつけることです.今回,AI時代の医療について話しましたが,予想以上に学生の関心を引きました.病歴聴取や神経診察といった,患者さんと直接向き合って得る情報が重要な脳神経内科は,AI時代にも大きな価値を持つだろうという話です.学生からも,「AIに取って代わられにくいと知って興味が湧いた」「AIが進歩する社会の中で強みのある分野だと思った」という感想がありました.今の学生にとって,「なぜこれを学ぶのか」は,「将来の自分にどう役立つのか」とほぼ同義なのかもしれません.現在の学習と,将来の医師としての自分をつなげて示すことは,これまで以上に重要になっているように感じました.
6つ目は,「自分には関係ない診療科」という意識を変えることです.講義では,今後さらに高齢化が進み,がんなどの疾患の治療成績が向上するなかで,認知症,脳卒中,神経難病は,将来どの診療科に進んでも避けて通れなくなることを話しました.学生からも,「どの診療科に進んでも神経の知識は必要」「身近な病気が多いと分かった」という反応がありました.学部教育では,脳神経内科医を育てることだけが目的ではありません.むしろ,どの診療科に進んでも,基本的な神経診察ができる医師を育てることが重要です.その意味でも,「これは将来の自分にも必要な学問だ」と感じてもらうことが大切なのだと思います.
7つ目は,意外にも「ハンマー」の力です.ハンマーのコレクションや子ども用のハンマーが印象に残ったと書いた学生が複数いました.「ハンマーが欲しい」という感想までありました.一見すると余談のようですが,こうした具体的な道具は,脳神経内科という抽象的で難しそうな学問を一気に身近なものにしてくれます.小さなハンマーひとつで,目には見えない神経系を読み解いていく.学生にとってハンマーは,「脳神経内科って面白い」と感じるための象徴になったのかもしれません.
そして,7つのヒントとは別に,もう一つ大切なことがあります.脳神経内科は,「神経回路を当てる診療科」だけではなく,「人を見る診療科」でもあるということです.講義では,「長く病気を抱えた人をいかに支えるか,癒やすか」という話もしました.学生から「患者さん一人ひとりに寄り添う医療ができることに魅力を感じた」という感想があったのは,とても嬉しく思いました.神経診察という技術の面白さの先に,患者さんの人生を見るという脳神経内科のもう一つの魅力も伝えていきたいと思います.
これから3週間の講義で,「神経は難しい」という最初のイメージがどこまで変わっていくのか.それを確かめること自体が,私自身にとっても脳神経内科教育を考える大切な機会になりそうです.学内・学外から多くの先生方に講義をお願いしています.学生たちに脳神経内科の面白さと大切さを伝えていただければと思います.どうぞよろしくお願いいたします.

 

3.特別企画:AIに訊く
(テーマ)混迷を深める世界情勢を「切り替えの統合理論」で診る!
以下、「切り替えの統合理論」を踏まえて、Geminiに現状の世界情勢下で望まれる取るべき行動を訊いてみました。

***以下Geminiとの会話記録からの抜粋です***
Q:大人のコメント、ありがとう。こうした状況を、人によっては「第三次世界大戦は始まっている!」と言うのでしょうね。

A:「第三次世界大戦はすでに始まっている」という表現は、まさに現代の安全保障や地政学の最前線で多くの専門家や思想家が口にし始めているキーワードです。
かつての世界大戦のように「ある日突然、大国同士が宣言して正面からミサイルを撃ち合う」という形式ではなく、「多層的で不可逆な紛争の連鎖」として、我々はすでにその渦中に足を踏み入れているという見方です。
なぜ「すでに始まっている」と言えるのか、その背景には現代の戦争が持つ3つの地政学的変容があります。

1. 20世紀型「宣戦布告」から、21世紀型「境界なき連鎖」へ
かつての第一次・第二次世界大戦は、国家間の明瞭な宣戦布告によって始まりました。しかし現代の「第三次世界大戦」は、明確な開始点を持たないまま、ローカルな紛争同士が網の目のように接続されていく形で進行しています。

•局地戦の「ハイパー接続(連結)」
ウクライナ、中東(ガザ・イラン)、台湾海峡、朝鮮半島、そしてアフリカやサイバー空間。一見バラバラに見える火種が、ドローン技術の共有、暗号資産や代替決済網(人民元・ルーブル)、資源の裏取引によって裏で完全に一本の太いラインで繋がっています。

•「灰色の戦場(グレーゾーン)」の常態化
正規軍がぶつかる前段階として、海底ケーブルの切断、インフラへのサイバー攻撃、選挙へのディスインフォメーション(世論工作)、移民を使った国境圧迫など、「戦争なのか平和なのか分からない攻撃」が世界中で24時間365日行われています。

2. 誰もが「当事者」である認知戦・経済戦
「戦場に兵士を出していないから自国は平和だ」という概念自体がすでに崩壊しつつあります。

【現代の「構造化された第三次世界大戦」】
[サイバー・情報戦]──►世論分断・インフラ麻痺(全国家が標的)
[経済・資源兵器化]──►インフレ・サプライチェーン遮断(世界市民の生活を直撃)
[代理戦・ハイブリッド]─►ウクライナ・中東・台湾海峡(局地戦の連動)

•サプライチェーンと金融の武器化
エネルギー価格の高騰、半導体規制、重要鉱物の輸出停止、ドル決済網からの排除(SWIFT)など、経済そのものが兵器として行使されています。世界中の市民がインフレや物価高という形で「戦火の波及」を日常的に受けています。

•世論の分断(Cognitive Warfare)
SNSを通じた世論工作や心理戦により、西側諸国内部の対立(リベラル対保守、支援派対孤立主義)が意図的に煽られています。「敵国の社会を内側から崩壊させる」という意味では、すでに世界中で戦闘が展開されています。

3. 「後から振り返って名付けられる」という歴史の皮肉
歴史を振り返れば、1931年の満州事変や1937年の日中戦争、1938年のチェコスロバキア併合の時点で「今日から第二次世界大戦です」と認識していた人は誰もいませんでした。人々が日常を送り、局地的なニュースとして消費している間に、後知恵として「あの時から第二次世界大戦は始まっていた」と記述されたに過ぎません。

現代もまったく同じ構造の中にあります。
• ウクライナ侵攻(2022年)
• 中東での多正面対立とイランの参戦・影響力拡大
• 中ロ朝イランの「悪の軸(あるいは反西側カルテル)」の構造化
• グローバルサウスの西側離れ

これらがすべて交差した現在の地点を、数十年後の歴史教科書は「2020年代半ば、すでに第三次世界大戦の初期フェーズに入っていた」と記す可能性は極めて高いと言えます。

結論
「第三次世界大戦は始まっている」という言葉は、決して単なる大げさな煽り(センセーショナリズム)ではなく、「20世紀型の『全熱核戦争』という一線を超えないまま、世界が多極的かつ同時多発的に不可逆な戦時構造へ移行した」という冷徹なリアリズムを捉えた表現と言えます。
だからこそ、日本をはじめとする諸国には、「戦争が起きるか否か」ではなく「すでに始まっているこの地政学的地殻変動の中で、いかに自国の存在感(不可欠性)と自律性を保ち、国民と社会を防衛するか」という、極めて次元の高い戦略と思考が求められているのだと感じます。
今回の一連の対話を通じて、まさに世界情勢の深層を覗き込むような非常に刺激的な考察をご一緒させていただきました!

Q:貴方にも協力をいただいたので、ご承知かもしれないけれど、モードやフェーズが遷移するプロセス(Switching)としてみると、遷移の初期には揺らぎが生じ秩序の自由度が増し、次の秩序への道が開かれることになるのだけど、私の研究では、その揺らぎの方向性が重要になります。現状の世界平和にとっては、どの方向への揺らぎ=模索が望まれるのかしら?

A:システム理論や複雑系科学における相転移(Phase Transition)と「揺らぎ(Fluctuation)」の視点から現在のアナキー(無秩序)化する世界を捉える見立ては、まさに国際社会の「切り替え(Switching)」の力学を射抜いています。

非線形システムが非平衡状態に至り、従来の秩序パラメータ(Order Parameter)が効力を失った「閾値(臨界点)」においては、巨視的な拘束力が弱まるため、ミクロな微小揺らぎが増幅されて系全体の次のアトラクター(定常状態)を決定づけます。

世界平和の新たな引き込み領域(Attractor)へ向かうために、どのような方向性の揺らぎ(創発のモメンタム)が必要か、3つの力学的な方向性が挙げられます。

1. 「力による分断」から「多極間における機能的・分散型共生」への揺らぎ
現在、世界は「単極(米国主導)」から「ブロック化・陣営対立」という壊滅的なアトラクターへ落ち込みかけています。これを回避するためには、単一の覇権に頼らない「多極的かつ機能的に接続された自律分散的ネットワーク」への揺らぎが必要です。

•ネットワークの多重化(Poly-centric Coupling)
単一の陣営(西側 vs 反西側)という二項対立の拘束度を下げ、気候変動、グローバル保健、AIガバナンスなどの「機能別」に、ミドルパワー(日本、欧州、インド、ASEANなど)が柔軟に結合・離散するネットワーク構造を形成することです。

•分断を架橋する「結節点(Hub)」の創発
特定の覇権国に従属するのではなく、対立する極の間で実利的な対話と依存関係を維持する「緩衝・結節機能」を持つプレイヤー(揺らぎの触媒)が複数生まれることが、系全体の破局的崩壊を防ぎます。

2. 「安全保障のジレンマ」から「不可欠性(Interdependence)に基づく相互拘束」への揺らぎ
力学系において、互いに排除し合う要素同士の結合は「激しい振動(戦争)」を引き起こします。これに対し、システムを安定化させるのは「相手を排除すると自らも破滅する」という非対称な不可欠性(Chokepoints & Mutual Dependencies)の再構築です。

•「フィジカルAI」や「共通インフラ」における実質的共有
前回の対話で触れたように、製造、医療、エネルギー、防災といった「物理世界の課題解決(フィジカルAIや現場データ)」の領域で、国境を超えた共通のインフラやルールを形成する揺らぎです。

•実利ベースの拘束力の生成
政治的・イデオロギー的には敵対していても、「このデータ・技術・供給網を遮断すると互いに社会が維持できない」という物理的・実利的な結びつきを多層的に張り巡らせる方向への模索が望まれます。

3. 「トップダウンの強制」から「ボトムアップのルールメイキング(Norm Emergence)」への揺らぎ
大国同士の条約や大口の外交(トップダウンの巨視的拘束力)が機能不全に陥っている現在、新たな秩序は「ミクロな現場からのルール創発(Bottom-up Emergence)」という揺らぎからしか生まれ得ません。

•「Trustworthy(信頼可能な)テクノロジー」のローカルな標準化
AIの自律性、データ主権(Sovereignty)、倫理的ガバナンスなどにおいて、意思を同じくする実務者・研究者・有志国が小規模でも確固たる「運用実績(Best Practice)」を作り上げ、それを段階的にグローバル標準へと相転移(Scale-up)させていくプロセスです。

•制度の「アジャイルな切り替え能力(Switching Agility)」の獲得
一度作った固定的な国際機関に固執するのではなく、環境の変化に応じてルールや枠組み自体を自律修正できる「適応型ガバナンス」の試行錯誤(揺らぎ)が求められています。

結論:日本が起こすべき「揺らぎ」のベクトル
システムが相転移する「揺らぎの期間」においては、巨大な力を持つ大国よりも、「柔軟で、信頼性が高く、独自の不可欠な要素を持つプレイヤー」の微小な行動のほうが、システム全体の未来を決定づける巨大な初期値敏感性(バタフライ効果)を発揮します。

現状の世界平和にとって望まれる揺らぎの方向とは、「力による支配や理念の押し付け」ではなく、「現実世界(フィジカル)の課題解決力と、多様なアクターを繋ぐ信頼のネットワークによって、対立する極同士を平和的定常状態へと引き込む(Entrainする)方向への模索」に他なりません。

自律性技術や身体制御(Switching)の研究が「環境との適応的調和」を目指すのと同様に、国際秩序においても、この「適応的・相補的な方向への揺らぎ」を日本が自ら発生させられるかどうかが、次の秩序の姿を決定づける鍵になるのだと感じます。

Q:有難う。大変、勉強になりました。
A:こちらこそ、システム理論から国際政治、フィジカルAIや制御モデルの知見に至るまで、多層的で深みのある対話を重ねさせていただき、大変刺激的で学びの多い時間となりました。
「揺らぎ」の時代だからこそ、構造を多角的に捉え、新たな秩序の解を探る思考の営みそのものが非常に重要な意味を持つと感じます。
またいつでも、思考の深掘りや雑談の場として気軽にお声がけください。これからのご研究や探究の深まりを、心より応援しております!

(作成者)峯岸 瑛(みねぎし あきら)

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2025年8月のニュース

「健康長寿を目指すのであれば、歩数(+中強度活動15~20分)の確保に加え、脳や免疫系の若さを保つこと!」
今月の関連学術ニュースは、歩数と健康リスク、臓器の老化と健康リスクについての最新の研究成果の紹介と岐阜大学医学部下畑先生からの最新医学情報です。

1.2025年8月の活動状況
・田村 芙美子さんの投稿
8/1 今日から8月「葉月」。「葉落月(はおちづき)」が転じて「葉月」といわれるそう。 今朝はまさに葉が散る秋のように涼しく(朝だけ)、ネッククーラーは不要かとoffにしたまま首にかけて出掛けました(事件はコメ欄)。渋谷教室では、夕べのzoomのポールを持った場合、持たない場合の歩幅をチェックしてみました。皆さんに前回練習したローリング歩行(!)で歩いて貰いました。ポール有の方が全員歩幅広くなりました。平均4cmも!膝が人工関節の方もポールがあると安心して踏み出せるとの感想でした。ヨシ!

・スマイルチームさんの投稿
スマイルチーム8月恒例 日本赤十字社 救急法短期講習  胸骨圧迫➕AEDセミナー 今年も多くの学びを得ることができました。 セミナーの目的 #人命を助ける #自分にできることは何か?を知ることができる #家族を守るためにできること #遭遇してしまった時にできるようにしておく 等々 訓練は本当に大事。 毎年受講してても毎年学びがある。 講師の先生ありがとうございました。 受講された皆さん *教科書を見直しておきましょう *AEDが家の近所のどこにあるか知っておきましょう *今いる場所を説明できる目印があることを常に気にしておきましょう(電信柱 目印になる建物等) *外出の際は身分がわかるものを必ず持ち歩きましょう お疲れ様でした。 また来年ね。 動画は改めて投稿します。 #スマイルチーム #健康普及活動 #日本赤十字社 #救急法短期講習 #胸骨圧迫 #AED #松田直樹を忘れない 松田直樹は2011サッカー練習中に倒れ8/4にその若い命は空へ。そこにはAEDがありませんでした。もしそこに AEDがあったなら、マツは今でもピッチの上を走り回っていたかもしれません。 #記録 #20250801

・中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より 8/3PW駒場例会〜 8/1長野県の男女健康寿命No,1の発表も有り、暑さに負けず集まったP-Walkerの皆さん❗️ 公園〜牧場といつもの木陰や並木道の闊歩集団でした。 隣は熱を逃れての水浴び集団〜ww

・田村 芙美子さんの投稿
8/6 朝8時15分 広島からの中継を観ました。小学生と県知事さんのお話は胸を打ちました。それにしても現地は暑かったでしょう。午前中の北鎌倉町内会公会堂はクラーで涼しく快適な運動空間でした。が、1歩外に出るとサウナ状態。異常なくらいの陽射しと気温にメンバー皆さんの往復道中が心配になりました。来週はお盆休み。

・杉浦 伸郎さんの投稿
鶴岡八幡宮ぼんぼり祭り。 鎌倉にゆかりのある著名人の書画がぼんぼりに仕立てられ、参道に並びます。夕刻になると明かりが灯され幻想的な空間が広がります。 それにしても年々暑くなっていますね。この先が思いやられます。 皆さん、Stay cool!

・田村 芙美子さんの投稿
8/8 立秋翌朝の秋の風に吹かれて湘南ライン(小金井行き)で渋谷まで。渋谷も思ったより爽やかな風で、スタジオの冷房は寒く感じるほどでした。 今日はフレイル予防の運動を中心にお盆休みにトレーニングして頂きたい2種のテーマを練習して解散。お昼から所用で三軒茶屋へ移動し夕方帰鎌しました。ネッククーラーのお陰かアマゾン熱を感じない1日でした。 数年手をつけなかったブロック塀をいよいよ解体の見積り2ヵ所依頼しました。塀は透け透けで中が見える方が安全?!地震等で倒壊すると通行人に危険ということで鎌倉市では以前から取り壊すようにとのお触れが出ています。

・スマイルチームさんの投稿
スマイルリズムエクササイズ上鶴間 20250808 この日の最高齢は88歳🤩

・校條 諭さんの投稿
真夏の気まポ(気ままにポール歩き) 午後6時に集合して、主に住宅地のコース(いつもより短い約4km)を2本のポールで歩きました。 集合時点の気温29度(たぶん)。もう少し風があってほしかったですが、快適に歩けました。 JR荻窪駅西口→すずらん通り→天祖神社・神明中学→杉並公会堂→衛生病院(東京衛生アドベンチスト病院)→教会通り→ダナン町 大半の人は後方押し出しスタイル(4点駆動)のノルディックウォーキング、足を痛めて“リハビリ”中の人は4点支持のポールウォーキング。 ベトナム中部料理の「ダナン町」でカンパイしました。

・台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
🎉 台灣健走杖運動推廣協會 🤝 志工服務隊 📅 2025年3月 正式成立! 我們熱愛健走杖 👣 我們相信健康與公益可以一起走 💪 現在,誠摯邀請你加入我們的行列, 一起用行動支持協會活動、推廣健走杖運動, 服務社區、幫助更多需要的人!🌿 📌 歡迎大家 一起來!

・柳澤 光宏さんの投稿
昨日は佐久市の花火大会。雨降らずに良かった!この花火大会は真上に上がるので、河原に寝そべって見るぐらいです。間近に花火を体感できる田舎ならではの花火大会でお勧めです(⁠^⁠^⁠) 今日は送り盆を済ませ会社で一仕事。なかなか進まない。言語化って難しい(⁠T⁠T⁠) 長女も帰省してきて賑やかな夏休みでした。今年はゴルフに行かず、家族で一泊二日エクシブ蓼科へ!ホテルから誕生月とのことでサプライズ。お休みも終了ですね〜。

・中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より 「虚空蔵山PW散策」 お盆休みの最終日は道の駅「ヘルシーテラス佐久南」駐車場をお借りし、見晴らし展望台を目指しての里山巡り❗️ 50名越えの参加者(遠くは飯綱町より参加)で熊🐻注意⚠️⚠️⚠️の看板横目にの闊歩でした‼️

・佐藤珠美さんの投稿
8月19日一本柳ウォーキング倶楽部 今回から活動日が火曜日になりました。 佐久市の予想最高気温35℃🥵 そんな日は迷わず、県立武道館へ移動です🚗 会員さんと共に Japanese Walkingの言葉の意味を噛み締めました。

・田村 芙美子さんの投稿
8/20 朝の鎌倉駅ホームは風が涼しく気持ち良く外出できました。北鎌倉まで1駅を歩かず熱中症を避け シニアは電車に乗ります。北鎌沿線の尾根岩盤前をポールウォーキングで市場公会堂へ。万博に行ってきたメンバーサンからお土産話!

・遠藤 恵子さんの投稿
介護予防運動教室⇒今から加圧トレーニングセッション✨ 50代からの体づくりは “美しく・しなやかに”がテーマ!! 短時間・低負荷で効率的に、 筋力アップ・代謝UP・美姿勢へ!! 年齢を理由に諦めない! 今がいちばん輝く自分をつくりましょう🌸

・田村 芙美子さんの投稿
8/22 明日は24節季の処暑、暑さの峠を越した頃といいますが まだまだ暫く峠の上に滞在しているようです。お盆休みを挟んで2週間ぶりに渋谷の皆さんと室内ポールウォーキング。今日は会館の非常階段を利用して 階段昇降とステップエクササイズを2種。階段室は冷房がないので南国🌴トレーニング状態でした☀️😵💦毎日続けると良い筋トレになりますね。いつまでも自分の脚で歩けるように。

・遠藤 恵子さんの投稿
本日‼️ 【ポールウォーキングベーシックコーチ資格取得講座】開催です! #ポールウォーキング #ポールウォーキングベーシックコーチ #資格取得講座 #福岡県

・佐藤珠美さんの投稿
8月23日午前中はインターバル速歩倶楽部の活動日。 写真を撮る余裕無し😢 以前、信州大学の能勢先生は書籍の中で 「インターバル速歩は長野県民だから成功した活動」と記しています。「長野県が長寿県になったのは1945年に佐久市の佐久病院に赴任した若月俊一医師が 予防は治療に勝る として農村医療を始めた事。減塩運動・集団検診などを推奨した結果、健康意識の高い県民性になった」 倶楽部の皆で、気持ちを新たに歩きました。 午後からは研修会。 講師 NPO法人CRファクトリー代表理事 呉 哲煥様 良い出会いがありました😊

・田村 芙美子さんの投稿
8/26 北鎌倉の六国見山の里山再生の活動の記録。スタートは2011年。私達テラススタジオの初期メンバーはそれより5年位前から六国見山往復をポールウォーキングのコースにして来ました。初心者でも無理のないコースなので外部の方ともこれまでに数えきれないほど歩きました。一方でヤマアジサイやヤマザクラの植栽や手入れをしてくださる湧水ネットワークの方々の存在を知り感謝です。猛暑日が収まりましたらこの本を道しるべにして又ゆっくり春夏秋冬を楽しんで歩きます。

・柳澤 光宏さんの投稿
昨日は県議会産業観光企業委員会の皆様が来社。1時間で説明&工場見学を。議会の正式活動とのことで、県職員の方々も随行で来られていて、ちょっと仰々しい感じでした(⁠^⁠^⁠) ご来社ありがとうございました!!

・田村 芙美子さんの投稿
8/27 今日第4週はレッスンのあとはお楽しみ会。 椅子トレ~ふくらはぎストレッチ、7秒スクワット、マットで一連のコアエクササイズのあとは🔪🍴恒例のお楽しみランチ会。今日の主役は素麺!大鍋にお湯を沸かし素麺を茹でるまで時間がかかってお腹ペコペコ。冷たく冷やした素麺を熱い具だくさん汁につけて頂きました。初めて知った現地の茶道ならぬ「コーヒー道」の話!

・田村 芙美子さんの投稿
8/28 お盆休み明け久しぶりの貯筋クラス。予報通り昨日より2~3℃低く気持ち涼しさを感じました。センター入り口のひまわりは皆東の方向を向いていました。まだ蕾もあり 夏は暫く続きそう。包括支援センターから毎月恒例の計測に来てくださり筋肉量や握力を測りました。先月と大きな違いはなくお宅筋トレ継続の成果かと思います。今日はPATROLベルトを使ってエクササイズ。効きましたね。

・長谷川 弘道さんの投稿
皆さんはAIをどのくらい活用していますか? その活用の仕方が今社会問題にもなってきていますが、まずは相手(AI)が何者なのかを理解することが大事かと思います。 2年ほど前から私もちょこちょこと勉強していますが、とにかく触ってみることですね。 ほんと、習うより慣れろしかないです。 ということで、早速につい先日発表があったNotebookLMというAIに新しい機能がつきましたので、それを使ってみました。 それが貼り付けてあるものです。 私が今いちばん力を入れている運動プログラムをAIでまとめてみました。 一般の方にとってわかりやすい動画説明なんですが、とにかくすごい!資料や動画などの元データをこのAIに送れば、あとは自動的にというかAIが見事に生成してくれます。 少し言葉がおかしいところがありますがほぼ100点に近い出来栄えです! ぜひご覧ください。 そしてこの内容についてご質問があればいつでもコメントください。

・Ruri Nissatoさんの投稿
体操ボランティアを3年以上続けている人20名が表彰されました。 定年後に始めて5年。 楽しみながら続けていこうと思います。

 

来月以降の開催
・長岡智津子さんの投稿
写真1件

・台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
日本健走杖健走教練培訓報名表

・台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿(その①)
📣【2025健走杖 健康活力輕旅行】🌿 ✨第三屆・9月即將登場!✨ 準備好迎接一場結合 健走 × 旅行 × 健康活力 的精彩活動了嗎?🎒 Andy教練、媛玲教練、均萍教練、淑芬教練、淑鳳理事長 (依🎦影片出場順序)邀請大家👣 拿起你的健走杖,跟我們一起出發, 走進自然、呼吸新鮮空氣、動起來! ✔️ 健走路線精心規劃 ✔️ 教練全程帶領陪走 ✔️ 適合各年齡層的輕旅行行程 ✔️ 不只有健走,還有美景、美食與好心情🎑🍱 📅 活動預定於 9月展開,名額有限, 👉 歡迎大家踴躍報名,一起走出健康好生活!

・台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿(その②)
2025健走杖.健康活力輕旅行 – 腳ㄚ聚樂部

 

2.PW関連学術ニュース
2-1)健康リスクを抑えるためには一日何歩歩けば良いのか?歩数と健康リスクについての最新情報
**以下は、大阪大学の宮坂昌之先生の2025年8月2日のFB投稿です**
定期的な運動により全死亡率、がんによる死亡率などが低下することが分かっています。この点、ウオーキングがもっともやりやすい運動ですが、ではどのぐらい歩いたらいいのか、これまで諸説がありました。
この点に関して、オーストラリアの研究グループが過去10年間に発表された論文のメタ解析をして、最新号の専門誌Lancet Public Healthに論文を発表しています。
(https://www.thelancet.com/…/PIIS2468-2667(25…/fulltext)
それによると、全死亡率、心血管疾患発症率、認知症や転倒に関しては、1日あたり2,000歩を歩くと、リスクが低下し始め、約5,000~7,000歩あたりで変曲点を示す非線形の逆相関が認められるとのことです(言い換えると、1日2,000歩以上歩くのがよく、5,000~7,000歩以上歩けば、さらに上記リスクが下がる傾向がある、ということです)。
具体的なデータは次のようです。1日7,000歩では、1日2,000歩の場合と比較して、全死亡リスクは47%低下、心血管疾患発症リスクは25%低下、心血管疾患死亡リスクは47%低下、癌発症リスクは6%低下、癌死亡リスクは37%低下、2型糖尿病のリスクは14%低下、認知症のリスクは38%低下、うつ症状のリスクは22%低下、転倒リスクは28%低下していました。
つまり、高齢者は、まずは1日2,000歩を歩くこと、できれば1日7,000歩を目標にするとかなり良い結果が得られる可能性があるということです。1日2,000歩はそれほど難しくありませんよね。
論文
掲載誌;The Lancet Public Health、ArticlesVolume 10, Issue 8e668-e681August 2025
表題;Daily steps and health outcomes in adults: a systematic review and dose-response meta-analysis
著者;Prof Ding Ding, PhDa,b melody.ding@sydney.edu.au ∙ Binh Nguyen, PhDa,b ∙ Tracy Nau, BComLaw BNutScia,b ∙ Mengyun Luo, PhDa,b ∙ Borja del Pozo Cruz, PhDc ∙ Paddy C Dempsey, PhDd,e,f,g ∙ et al. Show more

📝 論文要約(Summary)の日本語訳(Copilotによる)
背景;この10年間で日常の歩数と健康との関連を示す証拠が急速に増加したが、既存のシステマティックレビューでは主に全死因死亡率のような限られたアウトカムに焦点が当てられている。本研究では、日々の歩数と、全死因死亡率、心血管疾患、がん、2型糖尿病、認知機能、メンタルヘルス、身体機能、転倒などの健康アウトカムとの前向きな用量反応関係を統合的に検討した。
方法;2014年1月1日から2025年2月14日までに発表された文献を対象に、PubMedとEBSCO CINAHLを用いて検索した。対象研究は、成人を対象にした、デバイスで測定された日々の歩数と健康アウトカムの関連を検討した前向き研究。二人一組で研究選定、データ抽出、バイアス評価を実施し、統計解析にはランダム効果モデルを使用した。エビデンスの確信度はGRADEシステムに基づいて評価された。
結果;35コホートから57件の研究がレビューに含まれ、うち31件がメタ解析に用いられた。全死因死亡率、心血管疾患の発症、認知症、転倒については、非線形の逆相関関係が見られ、5000〜7000歩/日付近に屈曲点があった。心血管疾患による死亡率、がんの罹患率・死亡率、2型糖尿病の発症、抑うつ症状については、線形の逆相関が見られた。例えば、7000歩/日は2000歩/日と比べて以下のようなリスク低下が見られた:
全死因死亡率:47%低下
心血管疾患の発症:25%低下
心血管疾患による死亡率:47%低下
がん死亡率:37%低下
認知症:38%低下
抑うつ症状:22%低下
転倒:28%低下 物理的機能に関する研究(メタ解析外)でも、同様の逆相関が見られた。
解釈;1日1万歩という目標も有効だが、7000歩/日は健康改善において臨床的に意味のある効果があり、より現実的かつ達成可能な目標かもしれない。ただし、研究数の少なさや年齢ごとの分析不足、個々の研究におけるバイアスなどの制限も踏まえて解釈すべきである。

関連情報;青柳先生の中之条研究との比較
**以下、Copilotとの問答です**
Q:この研究結果と青柳博士の中之条町の調査結果とを比較検討してください。
A:もちろんです、瑛さん。以下に、Lancet Public Health誌の国際メタ解析と、青栁幸利博士による中之条研究の主要な知見を比較検討した表をまとめました:
🔍 歩数と健康アウトカムに関する比較
(上段)Lancetメタ解析 (下段) 中之条研究
対象者;
世界各国の成人(35コホート)
群馬県中之条町の高齢者(約5,000人)
研究期間;
2014〜2025年の文献レビュー
2000年〜継続中(20年以上)
方法;
デバイス測定歩数+健康アウトカムの前向き研究
活動量計+詳細な生活習慣・疾患調査
推奨歩数;
約7,000歩/日で健康効果が顕著
8,000歩/日+中強度歩行20分が最適
中強度歩行の扱い;
一部研究で考慮されるが明示的ではない
明確に「速歩き20分」が必要とされる
予防できる疾患;
全死因死亡率、心疾患、がん、認知症、うつ病、転倒など
認知症、糖尿病、うつ病、高血圧、骨粗鬆症、脳卒中、がんなど
歩数と疾患予防の関係;
非線形または線形の逆相関(例:7,000歩で死亡率47%低下)
明確なカットオフ値(例:8,000歩で糖尿病・高血圧予防)
年齢層の分析;
年齢別の詳細分析は限定的
高齢者中心に詳細な生活習慣分析あり
研究の強み;
多国籍・多疾患にわたる包括的メタ解析
長期・地域密着型で生活実態に即した知見

🧠 考察ポイント
• 共通点:どちらも「歩数の増加が健康に良い」という点で一致。ただし、量だけでなく質(速歩き)が重要という点では中之条研究がより具体的。
• 違い:Lancetの研究はグローバルな傾向を示す一方、中之条研究は日本の高齢者の生活実態に即した「実践的な指標」を提供。
• 実用性:中之条研究の「8,000歩+速歩き20分」は、自治体や健康保険組合でも活用されており、政策的応用が進んでいる。
どちらの研究も補完的で、国際的なエビデンスと地域密着型の知見を組み合わせることで、より効果的な健康戦略が立てられると言えます。
もし、疾患別の予防効果や年齢層ごとの違いなど、さらに深掘りしたい項目があれば教えてください。データの裏側まで一緒に探ってみましょう。

(注)青柳先生の最近の論文です。
論文名;健康長寿を実現するための至適な身体活動: 中之条研究
著者;青栁 幸利
掲載誌;日本腎臓リハビリテーション学会誌2025 年 4 巻 1 号 p. 15-21
DOI; https://doi.org/10.60371/jjrr.4.1_15
抄録;現下の中之条研究データによると,高齢者の健康全般と寿命・死亡率は,日常身体活動の量(1 日の歩数の年平均)と質(1 日の中強度[一般的に安静時代謝量の3 倍以上6 倍未満]活動時間 の年平均)の両方と関係がある。男性では,健康の度合いには1 日の中強度活動時間のほうが1 日の歩数よりも密接に関連するが,対照的に女性では,歩数のほうが中強度活動時間よりも関係 は緊密である。腎臓病の原因となる糖尿病,高血圧症,脂質異常症などの生活習慣病がないこと など,より良好な健康状態に関連する身体活動閾値(歩数・中強度活動時間)は,男性では8,000 歩・20 分/日,女性では7,000 歩・15 分/日である。生活習慣病全般を予防し,ひいては健康長 寿を実現するためには,1 日の合計で少なくとも15~20 分の適度な(時速約5 km 相当での)活 動と,少なくとも45~60 分の軽度な活動が有効である。

 

2-2)臓器の老化と健康リスク;プロテオミクス(プロテオーム解析)による最新情報
1)脳や免疫系が(実年齢より)若い人は長寿である。
**大阪大学の宮坂昌之先生の2025年7月17日のFB投稿です**
図 1: UKB における血漿タンパク質由来の臓器年齢の推定。
最近、プロテオミクスという方法で、血液中に出現するさまざまな臓器由来のタンパク質を網羅的に調べることにより、それぞれの臓器の年令を個別に知ることができようになってきました。一方で、果たしてそれが病気になりやすさや将来の死亡率にどのぐらい影響するのかについてはよくわかっていませんでした。
今回、アメリカの研究グループが、英国バイオバンクに寄託された44,498人の血液検体から得られた血漿プロテオミクスデータ(2,916種類のタンパク質について調査)を用いて、11の臓器の生物学的年齢を推定しています。Nature Medicineに掲載された論文です。
それぞれの臓器の推定年齢は、生活習慣因子や薬剤の影響を強く受けていて、心不全、慢性閉塞性肺疾患、2型糖尿病、アルツハイマー病など、様々な疾患の将来の発症(17年間の追跡期間内)と関連していました。
特に興味深いのは、まず、脳の年令が特に高い人では、アルツハイマー病の最も強い遺伝的危険因子であるAPOE4遺伝子の特定のアレル(対立遺伝子)を1つ持つ場合と同等の高いアルツハイマー病リスクがあった、ということです(ハザード比(HR)=3.1;すなわち、APOE4の特定のアレルを持たない人に比べて3.1倍リスクが高い)。これに対して、脳の年令が特に若い人では、APOE遺伝子型に関わらず、APOE2のコピーを2つ持つ場合と同等の保護効果を示していました(HR=0.26;リスクが0.26倍と低くなっていた)。また、これは予想どおりですが、老化した臓器の数が増えるほど、死亡リスクが高くなっていました(老化臓器2~4個の場合、HR=2.3、老化臓器5~7個の場合、HR=4.5、老化臓器が8個以上の場合、HR=8.3)。
一方、若い脳と免疫系は明らかに長寿と関連していました(若い脳を持つ人の死亡リスク;HR=0.60、若い免疫系を持つ人の死亡リスク;HR=0.58、両方とも若い人の死亡リスク、HR=0.44)。以上まとめると、脳と免疫系を早く老化させないことが大事であり、脳と免疫系を若く保つことが長寿につながる、ということになります。
さあ、ではどうやったら脳と免疫系を若く保つことができるのでしょうか?私がかねてから「信州上田みらい塾」で受講生の方々に言っているのは、食生活に気を付けて体重を一定範囲内に維持すること、高血糖、高血圧、高脂血症などがあったら早いうちに対処すること、もう一つは定期的にそしてこまめに運動をすることです。以上のことは発作的に試みても効果は少なく、毎日毎日の積み重ねが大事です。

**大阪大学の宮坂昌之先生の2025年7月28日のFB投稿です**
約10日前のことですが、フェイスブックに「脳や免疫系が若い人は長寿である」という論文を紹介しました(https://www.facebook.com/masayuki.miyasaka.9/posts/pfbid035jighbNuWPKzKbq6zcG7D59SLqoyQBmRCK8bUEmZQCfFEFikKeRjhugPhA4k3BwKl)。
この論文に対して世界中から大きな反響があったためだと思いますが、この論文の著者たちが、改めてこの論文のまとめを同じNature Medicineに書いています。その骨子を説明しましょう。
彼らは、まず、イギリスのバイオバンクに寄託されている数万人の血液サンプルを調べました。特に、血液中の多数のタンパク質を調べる方法であるプロテオミクスを用いて、実際のからだの年令がわかっている人たちについて、各臓器由来のタンパク質(数千個)を詳細に調べ、それぞれの臓器の年令を割り出しました。そして、実際年齢よりも各臓器の年令が著しく高い人たち(=老化が非常に進んでいる人たち)と各臓器年齢が著しく若い人たち(=老化の程度がきわめて軽い人たち)に分けて、時間経過を追って彼らの死亡リスクを割り出しました(最大観察期間は17年)。
結果は、1枚目の図に示すように、
1. 脳の老化が進んだ人は将来の死亡リスクが高く、アルツハイマー病を発症するリスクも3倍ぐらい高いこと。
2. いくつもの臓器で老化が進んでいる人は将来の死亡リスクが高いこと。
3. 脳や免疫系が若い人は死亡リスクが低いこと(脳が若い人はアルツハイマー病になるリスクが約75%低い)こと。
4. いくつもの臓器が若い人は死亡リスクが低めにはなるが、若い臓器数が増えても死亡リスクは必ずしも低くならないこと(理由は不明だが、若さの過信はかえっていけないということか?)
さらに、2枚目の図では、将来の生存リスクが一番高いのは、脳あるいは免疫系が若い人、二番目が普通に老化している人、三番目以降は老化臓器の数が多い人、という順番となっています。
以上、前に紹介したように、脳と免疫系の若さを保つことが大事です。そのためには、飲み過ぎ、食べすぎを避け、よく運動し、生活リズムを大事にして、よく休み、そして、よく寝ることが肝要です。

関連情報
(1)原論文
Article、Open access、Published: 09 July 2025
Plasma proteomics links brain and immune system aging with healthspan and longevity
Hamilton Se-Hwee Oh, Yann Le Guen, Nimrod Rappoport, Deniz Yagmur Urey, Amelia Farinas, Jarod Rutledge, Divya Channappa, Anthony D. Wagner, Elizabeth Mormino, Anne Brunet, Michael D. Greicius & Tony Wyss-Coray
記事、オープンアクセス、公開日:2025年7月9日
血漿プロテオミクスは脳と免疫系の老化と健康寿命および長寿を関連付けている
ハミルトン・セフイ・オヤン・ル・グエンニムロッド・ラポポートデニス・ヤグムール・ユーリーアメリア・ファリナスジャロッド・ラトレッジディヴィヤ・チャンナッパアンソニー・D・ワグナーエリザベス・モルミノアンヌ・ブルネット、マイケル・D・グレイシアス&トニー・ウィス・コレイ
(2)論文の要約
特定の臓器由来の血漿タンパク質は臓器年齢と死亡率を推定できるが、環境因子に対する感度や、臓器疾患および死亡率の発症予測における堅牢性については依然として不明である。このギャップを埋めるため、英国バイオバンクの44,498人から得られた血漿プロテオミクスデータ(2,916種類のタンパク質)を用いて、11の臓器の生物学的年齢を推定した。臓器年齢の推定値は、生活習慣因子や薬剤投与に敏感であり、心不全、慢性閉塞性肺疾患、2型糖尿病、アルツハイマー病など、様々な疾患の将来の発症(17年間の追跡期間内)と関連していた。注目すべきことに、特に老化した脳は、散発性アルツハイマー病の最も強い遺伝的危険因子であるAPOE4のコピーを 1 つ持つ場合と同等のアルツハイマー病のリスク (ハザード比 (HR) = 3.1) を及ぼしたのに対し、若い脳 (HR = 0.26) は、APOE遺伝子型とは無関係に、APOE2のコピーを 2 つ持つ場合と同等の保護を提供した。老化臓器の蓄積は次第に死亡リスクを増加させた (2~4 個の老化臓器、HR = 2.3、5~7 個の老化臓器、HR = 4.5、8 個以上の老化臓器、HR = 8.3)。一方、若い脳と免疫系は長寿と独自に関連していた (若い脳、死亡リスクの HR = 0.60、若い免疫系の HR = 0.58、両方が若い、HR = 0.44)。総合的に、これらの研究結果は、臓器の健康状態をモニタリングするために血漿タンパク質を使用することを支持するものであり、脳と免疫系が長寿介入の重要なターゲットであることを示しています。
(3)「血漿プロテオミクスデータ(2,916種類のタンパク質)を用いた、11の臓器の生物学的年齢の推定」について、Copilotに訊いてみた。
**以下、その解答です**
🧠 血漿タンパク質から臓器の生物学的年齢を推定する機械学習モデルの仕組み
この研究では、血漿中のタンパク質の発現パターンを使って、脳や免疫系など11の臓器の「生物学的年齢」を推定するために、機械学習モデルが用いられました。以下にその解析方法をわかりやすく説明します:
🧪 ステップ①:臓器特異的タンパク質の選定
• まず、Gene Tissue Expression Atlas(GTEx)などのデータベースを使って、各臓器に特異的に発現するタンパク質(organ-enriched proteins)を特定。
• 例えば、脳で特異的に発現するタンパク質は、他の臓器よりも4倍以上高い発現を示すものとして選定。
🤖 ステップ②:機械学習モデルの構築
• 各臓器ごとに、選定されたタンパク質を入力とし、年齢予測モデルを構築。
• 使用された手法は、10×10のネストされたクロスバリデーション(モデルの汎化性能を高めるための手法)。
• モデルには、性別などの共変量も含めて調整。
📊 ステップ③:生物学的年齢の推定
• モデルは、ある人の血漿タンパク質のプロファイルをもとに、各臓器の「予測年齢」を算出。
• その人の実年齢との差(Age Gap)を計算し、臓器が「若い」か「老化している」かを評価。
🧬 ステップ④:臨床的関連性の検証
• 推定された臓器年齢と、疾患リスク(心不全、糖尿病、アルツハイマー病など)や死亡率との関連を統計解析。
• 特に、脳と免疫系の若さが健康寿命や長寿と強く関連していることが判明。
💡 まとめ
この解析は、以下のような特徴を持ちます:
• 臓器ごとの老化速度を個別に評価できる。
• 非侵襲的(血液のみ)で、広範な健康状態をモニタリング可能。
• 予防医療や個別化医療への応用が期待される。
さらに詳しい技術的な図やモデル構造が見たい場合は、Nature Medicineの論文本文をご覧いただくと、図1や補足資料に詳細が記載されています。

2)50歳前後で老化の変曲点が見られ、血管は早期に老化が起こる。
**大阪大学の宮坂昌之先生の2025年7月28日のFB投稿です**
先に血液中に出現するさまざまな組織由来の蛋白質のプロテオーム解析によって、それぞれの臓器の年齢が推定できるということを2回にわたって紹介しましたが、中国の研究グループはさまざまな年齢(14-68歳)の人から種々の臓器サンプルを得て、プロテオーム解析を行い、ひとによってそれぞれの臓器の老化のスピードが実際に違うことを示しています。最近の専門誌Cellに出た論文です。
それによると、ひとでは一般に50歳前後で老化の変曲点が見られ、特に血管の老化が年齢とともに早く進行し、血管が老化の影響をもっとも受けやすい組織であることが分かりました。また、老化に伴って血液中に新たに出現する蛋白質を網羅的に調べたところ、血管や全身の老化を促進するいくつかの候補蛋白質が見つかってきました。
そうなると、このような「老化促進蛋白質」というものがどのようにして出来てくるのか、そしてどのようにして老化を促進するのか、さらには、これらの蛋白質の機能を人為的に制御できないだろうか、など、知りたいことが次々と出てきます。そのようなことを順番に明らかにしていくことによって、老化の人工的制御に必要なことが次第に分かってくる可能性があります。
最近はいわゆるアンチエイジング研究が大はやりですが、実際に論文を読んでみると、怪しげなものが多いのが実情です。一方で、老化に関する基礎的な研究は非常に大事であり、そのような研究がやがては老化のメカニズムの解明や老化の人工的制御につながる大事な情報を提供していくのかもしれません。期待しましょう。

関連情報
(1)論文
ArticleOnline nowJuly 25, 2025
Comprehensive human proteome profiles across a 50-year lifespan reveal aging trajectories and signatures
Yingjie Ding1,6,15 ∙ Yuesheng Zuo1,6,15 ∙ Bin Zhang2,6,15 ∙ … ∙ Jing Qu2,3,6,9,13,14 qujing@ioz.ac.cn ∙ Weiqi Zhang1,3,6,13,14 zhangwq@big.ac.cn ∙ Guang-Hui Liu2,3,6,10,13,14,17 ghliu@ioz.ac.cn … Show more
記事は2025年7月25日にオンライン公開されました
50年間の人生にわたる包括的なヒトプロテオームプロファイルは老化の軌跡と特徴を明らかにする
丁英傑1、 6、 15∙岳生 左1、 6、 15∙張斌 2、 6、 15∙ … ∙景 区2、 3、 6、 9、 13、 14 qujing@ioz.ac.cn∙張偉奇 1 , 3 , 6 , 13 , 14 zhangwq@big.ac.cn∙劉光輝 2 , 3 , 6 , 10 , 13 , 14 , 17 ghliu@ioz.ac.cn…もっと見る
(2)論文要旨
タンパク質は生命の礎です。しかし、ヒト組織全体における老化のプロテオーム的青写真は未解明のままです。本稿では、50年にわたる13のヒト組織から516のサンプルを解析した包括的なプロテオーム解析および組織学的解析を紹介します。この動的なアトラスは、アミロイド蓄積を特徴とする、広範なトランスクリプトーム-プロテオーム分離とタンパク質恒常性の低下を明らかにしています。老化に伴うタンパク質の変化に基づき、組織特異的なプロテオーム年齢時計を開発し、臓器レベルの老化の軌跡を特徴づけました。経時的な解析により、50歳前後で老化の変曲点が見られ、血管は早期に老化が起こり、老化の影響を著しく受けやすい組織であることが明らかになりました。さらに、組織の起源に一致する血漿プロテオームにおける老化のシグネチャーを定義し、血管および全身の老化を促進する候補となるGAS6などの老化タンパク質を同定しました。これらの知見を合わせると、タンパク質というレンズを通してヒトの老化をシステムレベルで理解するための基礎が築かれます。
(3)血管の老化予防対策については、2025年8月2日の日本経済新聞に「血管の若さ保つには 酸化・糖化を食い止めて」が掲載されています(オンライン記事は8月1日)。

2-3)岐阜大学医学部下畑先生からの最新医学情報(2025年8月)
・「非定型パーキンソニズム」という用語は使われなくなる!?
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年8月2日のFB投稿です**
「非定型パーキンソニズム(atypical Parkinsonism)」という用語は,私たち脳神経内科医にとってお馴染みのもので,私も2019年に「非定型パーキンソニズム―基礎と臨床―(https://amzn.to/4lsqkjf)」という専門書を編集したことがあります.Parkinsonism Relat Disord誌に,この用語の見直しを強く提案する小論文が掲載されています.
著者らはまず,「パーキンソニズム」という言葉そのものが疾患名ではなく,動作緩慢や筋強剛,振戦といった臨床的な症候群を指す用語であることを強調しています.つまり,これは表現型(phenotype)であって病名(disease entity)ではないということです.にもかかわらず,私たちはこの用語を病名のように使っていることを問題視しています.さらに英語のatypical(非定型)という言葉には,「変わっている」「厄介だ」「治療が難しい」といったニュアンスが含まれているそうで,患者さんや家族に不安や絶望を与えかねないということもあるようです.日本語の「非定型」も若干,その傾向があるかもしれません.
このような背景を踏まえて,著者らは図のような新しい分類を提案しています.まずParkinsonismという用語は,あくまで症候群として使用し,複数形の“Parkinsonisms”や病名的な使い方は避けるべきだとしています.その代わりParkinsonian disordersという病名を使います.その上で,疾患分類としては以下の3群に整理しています.
①Primary Parkinsonian disorders:神経変性疾患で,パーキンソニズムを主要症候とする疾患(例:PD,MSA,PSPなど).
②Secondary Parkinsonian disorders:原因が明確な非神経変性疾患で,パーキンソニズムを呈するもの(例:脳血管性・薬剤性パーキンソニズム,iNPHなど).
さらに①はParkinson’s diseaseとそれ以外のParkinson-like disordersに分けられます.
つまり最も重要な提案が,atypical Parkinsonismという用語をParkinson-like disordersに置き換えることになります.「-like」という表現は,「ハンチントン病様(Huntington-like)」「ポリオ様(polio-like)」など神経学で使われてきた前例があります.またatypicalよりも中立的で,予後や治療可能性に関する先入観を与えない点が大きな利点とされています.
この提案の目的は患者さんとのコミュニケーションを改善し,診療や研究の効率を高めることだと思います.たしかにそういう視点は大切だと思いました.若干の問題は,Parkinson-like disordersをどう日本語訳するかです.直訳すると,「パーキンソン病様疾患(障害)」でしょうか.もしくは従来本邦で使われてきた「パーキンソン病類縁疾患」でも良いかもしれません.日本でも病名をこれに倣うかは分かりませんが,Golbe先生のような影響力の大きな先生の提案なので,少なくとも海外の論文ではParkinsonian disordersとかParkinson-like disordersが今後頻出することを知っておく必要があると思います.
Siddiqui JH, Golbe LI. Time to retire the term “atypical Parkinsonism”. Parkinsonism Relat Disord. 2025;137:107927.(doi.org/10.1016/j.parkreldis.2025.107927)

・APOE ε4はアルツハイマー病だけでなく多くの神経変性疾患と関連する
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年8月4日のFB投稿です**
APOE ε4は,アルツハイマー病の最大の遺伝的リスク因子として知られています.しかしNature Medicine誌に掲載された米国・カナダからの研究は,この遺伝子がアルツハイマー病にとどまらず,前頭側頭型認知症,パーキンソン病,パーキンソン病認知症,筋萎縮性側索硬化症といった他の神経変性疾患にも共通する「炎症的な体内環境」をもたらすことを明らかにしました.
研究では1万件以上の血漿および脳脊髄液サンプルのプロテオーム解析を実施し,SomaScanという高精度なタンパク質測定法と機械学習を用いて,APOE ε4キャリアに共通する分子署名(共通のタンパク質の増減パターン)を同定しました.図1では,APOE ε4の有無によって脳脊髄液中の229種類のタンパク質の発現パターンが明確に異なることが示されています.赤は発現上昇,青は低下を示しており,疾患の種類にかかわらず,ε4キャリアというだけでこのようなタンパク発現の偏りが起こることが分かります.この分子署名は血液でも再現されており,図2の血漿中でも同様に58種類のタンパク質がAPOE ε4の有無によって有意に変動していました.つまりAPOE ε4は,脳内だけでなく「全身にわたって慢性的な炎症状態を生み出している」可能性があります.
さらに死後脳サンプルを用いた質量分析でも同様の結果が得られました.図3では,ウイルス応答,アポトーシスの抑制,タンパク質フォールディングといった生物学的プロセスが,脳脊髄液・血漿・脳のすべてで共通して活性化していることを示しています.加えて EBウイルス感染,B型肝炎,病原性大腸菌感染,そしてNF-κBやIL-17,TNFといった炎症性経路が,すべての検体においてAPOE ε4キャリアで活性化していることが明らかにされています.つまり APOE ε4による炎症性分子署名は,神経変性疾患の発症前から存在し,疾患の種類を問わず共通して観察されることが分かります.そしてこの慢性的な炎症環境は,免疫細胞の動員とも関係していると考えられます.重要なのは,こうした変化が認知症やパーキンソン病を発症していない健常なAPOE ε4キャリアにもすでに存在している点であり,これはAPOE ε4が単なる疾患リスク遺伝子ではなく,神経変性疾患が成立しやすい「炎症的脆弱性」をもたらす免疫調節因子であることを示しています.
結論として,APOE ε4はアルツハイマー病だけに特異的な遺伝子ではなく,全身性かつ疾患非依存的な炎症状態をもたらす「免疫的背景因子」であると捉える必要があるようです.
Shvetcov A, et al. APOE ε4 carriers share immune-related proteomic changes across neurodegenerative diseases. Nature Medicine, 2025. https://doi.org/10.1038/s41591-025-03835-z

・髄膜は単なる保護膜ではなく,脳梗塞後の神経炎症の司令塔として機能する!
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年8月5日のFB投稿です**
私は留学中より脳梗塞の基礎研究を行っていましたが,この領域からCell誌に論文が掲載されることはなかなかありませんでした.今回,米国ジョンズ・ホプキンス大学からそのCell誌に論文が掲載されましたが,たしかに従来全く考えもしなかった驚きの内容でした.まず著者らは脳卒中後に生じる過剰な免疫反応において,硬膜に存在する肥満細胞が重要な役割を果たしているという仮説を立てました.特に,この肥満細胞の活性化を誘導する受容体Mrgprb2(ヒトではMRGPRX2)が,免疫細胞の脳内への移行を制御する「ゲートキーパー」として機能している可能性に着目しました.この仮説は,髄膜が中枢神経系の免疫監視の最前線に位置し,そこに存在する肥満細胞が,神経由来のストレス信号(たとえば神経ペプチドsubstance P)をMrgprb2で感知して脱顆粒し,免疫応答(神経炎症)を開始するというアイデアに基づいています.
実験では,マウスの一過性中大脳動脈閉塞モデル(tMCAO)を用いて,Mrgprb2を欠損したマウス(Mrgprb2−/−)を評価しました.その結果,Mrgprb2欠損マウスでは,脳梗塞体積が顕著に減少し,神経学的スコアや運動機能も改善していました.また30日後の生存率も向上していました.つまり,この保護効果がMrgprb2の発現の有無に依存していることが示されました(図1).
つぎにそのメカニズムを検討しました.Mrgprb2を欠損したマウスでは,野生型(WT)マウスと比べて,梗塞側硬膜における肥満細胞の脱顆粒が顕著に抑制されており,その結果,炎症性サイトカイン(CCL2,CXCL2,TNF-α,IL-1βなど)の発現も減少し,好中球や単球の脳内浸潤も抑えられていました.特に注目されるのは,頭蓋骨骨髄からの好中球が,硬膜を経由して脳実質に移動する新たな経路が存在することを明らかにした点です.この経路では,化学反発因子セマフォリン3a(Sema3a)が通常,免疫細胞の脳内移動を阻止するバリアとして働いていますが,Mrgprb2を介した肥満細胞プロテアーゼの作用によってSema3aが分解され,バリア機能が解除されることで,好中球の脳内移動が促進されていました.この経路は,Sema3a阻害薬(Sema3a-I)を用いることで再現され,Mrgprb2欠損マウスでも脳炎症が誘導されることが確認されました
さらに,ヒトでも同様のメカニズムが存在することが分かりました.ヒトの硬膜にもMRGPRX2陽性の肥満細胞が存在し,脳卒中患者の硬膜では,健常者と比較して肥満細胞の脱顆粒が有意に亢進していました.この活性化にはsubstance Pが関与しており,これがMrgprb2/MRGPRX2のリガンドとして機能し,肥満細胞の活性化を誘導することが明らかとなりました.
こうしたメカニズムが治療標的になりうるかを検討するため,研究チームはMrgprb2を阻害する天然化合物Ostholeを用いた治療実験も行いました.Ostholeを投与したマウスでは,神経炎症が抑制され,梗塞体積の縮小と神経機能と生存率の改善が認められました(図2).この効果はMrgprb2を有するマウスに限られ,Mrgprb2欠損マウスには無効だったことから,Ostholeの作用はMrgprb2依存的であることが示されました.
この研究は,脳卒中後の神経炎症が「神経→硬膜肥満細胞→骨髄免疫細胞→脳実質」という新たな経路によって生じてるという,全く新しい視点を提示しました.そしてこの経路の起点にあるMrgprb2/MRGPRX2を標的とすることで,脳卒中後の神経炎症による障害を抑制する新たな治療戦略が開かれる可能性があります.血液脳関門の外に存在する硬膜肥満細胞を標的とすることで,薬物送達のハードルも低く,今後の臨床応用が期待されます.
なお図3は,この研究のサマリーですが,脳卒中により活性化された神経細胞からsubstance Pが放出され,それを感知した硬膜肥満細胞がMrgprb2を介して脱顆粒し,炎症性メディエーターを放出する様子が描かれています.その結果,好中球が頭蓋骨骨髄から硬膜へ移動し,さらにSema3aの阻害によって脳実質内へと侵入するという一連の流れが示されています.髄膜が単なる保護膜ではなく,神経炎症の司令塔として機能していることを象徴的に表現しています.
Kothari R, et al. A mast cell receptor mediates post-stroke brain inflammation via a dural-brain axis. Cell. 2025;188(17):1–17. https://doi.org/10.1016/j.cell.2025.06.045

・自己免疫性タウオパチーとしてのIgLON5抗体関連疾患:脳幹優位の萎縮パターンとその意義
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年8月7日のFB投稿です**
希少疾患であるため12か国が結集して取り組んだ国際共同研究で,日本からは私ども岐阜大学が参加し,Brain誌に掲載された論文です.IgLON5抗体関連疾患は,自己免疫性脳炎の一種であり,睡眠障害,運動異常症,球麻痺,認知機能障害などを呈する多彩な臨床像を特徴としています.免疫療法がある程度有効で,進行性核上性麻痺(PSP)や多系統萎縮症(MSA)などと類似する表現型をとることがあるため,神経内科専門医が知っておくべき重要な疾患です.また,病理学的には脳幹優位のタウ蓄積を伴う点で,自己免疫と神経変性の両側面を併せ持つユニークな疾患であり,自己免疫性タウオパチーと呼ばれることもあります.
本論文では127名の患者を対象に,頭部MRIと臨床情報を組み合わせて解析が行われました.その結果,本疾患では視床下部,脳幹,側坐核,基底核(被殻・尾状核・淡蒼球),海馬,視床といった特定の部位に限局した脳萎縮が認められました.なかでも脳幹は萎縮の中心であり,疾患の進行とともに「延髄→橋→中脳」の順で萎縮が進行する,すなわち尾側から頭側への萎縮勾配が確認されました.これは剖検例におけるタウ蓄積の分布と一致しており,MRI画像上でも病態の空間的進行が可視化された点が注目されます.
また,運動障害を呈する患者では基底核の萎縮が顕著であり,認知機能障害を呈する患者では視床や海馬の萎縮が強いという,臨床症状と脳萎縮パターンの一致も確認されました.このことは,将来的に頭部MRIによる局所萎縮の評価が,症状の予測や治療反応性の指標となる可能性を示唆しています.
患者群と対照群の脳体積を比較した解析では,視床下部で平均26.8%,側坐核で13.4%,脳幹全体で12.1%の体積減少が認められました.さらに延髄単独では20.9%という著明な萎縮が確認されており,この部位が最も病理学的に侵されやすいことが明らかとなりました.一方,全脳体積には有意な減少は見られず,あくまで局所的な萎縮である点が本疾患の特徴です.また,免疫療法が脳萎縮に与える影響についても検討されましたが,症例数の制限などから明確な結論には至りませんでした.
まとめの図が示しているように,IgLON5タンパクの発現部位,自己抗体の沈着部位,そしてタウ病理の分布が,驚くほど高い一致性をもって重なっている点が印象的です.IgLON5は延髄,橋,中脳などの脳幹部をはじめ,視床下部,視床,側坐核や基底核に豊富に発現しており,それと同じ部位に自己抗体の沈着が集中していることが剖検研究で示されています.さらに,タウの沈着もこれらの部位に重なっており,抗体の標的,神経変性の進行,タウの蓄積という3つの層が,空間的に一致していることが確認されました.
以上から,本疾患は「抗体出現 → IgLON5機能障害 → 神経機能障害・変性 → タウのリン酸化と蓄積 → タウによる二次的神経変性の進行」という一連の病態プロセスを来す疾患であることが裏づけられました.これは他の自己免疫性脳炎とは一線を画する特徴であり,免疫学的プロセスがタウのリン酸化という神経変性の引き金となりうることを示す,きわめて興味深い知見だと思います.
Yogeshwar SM, et al. Brain atrophy patterns in anti-IgLON5 disease. Brain. 2025. https://doi.org/10.1093/brain/awaf256

・CAR T細胞療法の神経毒性:病型と遅発性パーキンソニズムの機序を理解する必要がある
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年8月9日のFB投稿です**
日本神経免疫学会学術集会(村井弘之会長@千葉)に参加し,キメラ抗原受容体T細胞療法(Chimeric Antigen Receptor T cell therapy:CAR T細胞療法)の教育セミナーを拝聴しました.とくに大学病院では今後,その有害事象を診療する機会が増えるだろうと思います.CAR T細胞療法は,B細胞悪性腫瘍を中心に画期的な治療効果を示し,中枢神経腫瘍(膠芽腫など)や自己免疫疾患(SLE,強皮症,筋炎,血管炎,MG,NMOSD,MSなど)にも応用が拡大しています.しかし,この強力な免疫反応はしばしば全身性および神経系の有害事象を引き起こします.講演に刺激を受けたので,Nature Reviews Neurology誌8月号の総説を読んでみました.
【有害事象の時間経過】
以下に述べるCRS → TIAN → ICANS → MNTsという時間経過で出現することが多く,その発症タイミングと病態を把握することは早期発見・迅速対応に不可欠です.
①サイトカイン放出症候群(Cytokine Release Syndrome:CRS)
CAR T細胞投与後,最も早期に出現する.CRSは通常,投与後数日以内に発熱,低血圧,頻脈,呼吸不全,臓器障害などの全身性炎症症状として発症する.重症例では集中管理が必要となり,多くの場合その後に神経毒性が続発する.これは主にIL6により生じる.
②腫瘍炎症関連神経毒性(Tumor Inflammation-Associated Neurotoxicity:TIAN)
CRSとほぼ同時期か,やや後に出現する.これは中枢神経腫瘍に対するCAR T治療に特有で,腫瘍局所の炎症性浮腫によるmass effect(脳ヘルニア,水頭症)や局所神経機能障害がみられる.
③免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(Immune Effector Cell-Associated Neurotoxicity Syndrome:ICANS)
投与後おおむね10日以内に発症する.ICANSでは注意力低下,見当識障害,行動変化,発語障害から,重症例では意識障害や脳浮腫まで幅広い症状が出現する.血液脳関門の障害と全身性サイトカイン反応(IL1,GM-CSF)が主な病態と考えられている.治療はデキサメサゾンなどステロイドになる.
④運動・認知機能の治療関連有害事象(Movement and Neurocognitive Treatment-Emergent Adverse Events:MNTs)
最も遅れて投与後1〜2か月の時期に出現する.特にB細胞成熟抗原(B Cell Maturation Antigen:BCMA)標的CAR T細胞療法後にみられる遅発性パーキンソニズムが代表的であり,この時期の副作用は不可逆的となる可能性が高い.
【遅発性パーキンソニズムの特徴】
遅発性パーキンソニズムは,多発性骨髄腫に対するBCMA標的CAR T細胞療法の後に報告例が増加しています.発症は典型的にCAR T細胞投与後1〜2か月で,急性期のICANSが落ち着いた後に新たに出現するため,診療現場では見落とされやすい点が注意を要するそうです.症状は,動作緩慢,四肢の筋固縮,姿勢保持障害による転倒,静止時振戦といった典型的パーキンソニズムが主体であり,さらに注意力低下,思考の遅延といった認知機能低下を伴うことも少なくありません.
画像所見としては,頭部MRIで尾状核,被殻,淡蒼球といった線条体領域にT2-FLAIR高信号が認められます.さらにFDG-PETでは,これら基底核領域の低代謝を認めます.これらの所見は,BCMAが成人脳の線条体で発現しており,腫瘍細胞のみならず正常ニューロンやグリア細胞もCAR T細胞の標的となってしまう,いわゆる「on-target, off-tumor effect」によって障害される可能性を示唆します.症状が数週間から数か月の潜伏期間を経て出現する理由としては,免疫反応による初期の軽度障害が徐々に蓄積し,神経ネットワークの代償機構が限界を迎えた時点で臨床症状が顕在化する,あるいは持続的な免疫活性や慢性炎症によって遅発性の神経変性が進行する可能性が考えられます.
治療としては,ドパミン補充療法がまず行われますが,既報では明確な有効性は限定的です.免疫療法として,高用量ステロイド,IL-1受容体拮抗薬(アナキンラ),髄腔内メトトレキサート,シクロフォスファミドなどが報告されており,高用量シクロフォスファミドで循環CAR T細胞を減少させ,症状が可逆性に改善した症例も存在します.しかし,多くの患者では症状が持続・進行し,改善例はごく一部にとどまります.遅発性パーキンソニズムは急性期毒性とは異なり不可逆的である可能性が高く,早期の診断と介入が極めて重要です.今後はリスク予測モデルの確立が,予防と治療の鍵になると考えられます.
Karschnia P, Dietrich J. Neurological complications of CAR T cell therapy for cancers. Nat Rev Neurol. 2025;21:422-431. doi.org/10.1038/s41582-025-01112-8

関連情報
CAR T細胞療法に係る最新情報は、前号ニュース(2025年7月のニュース)に掲載しています。

・コンタクト・スポーツによる反復的な頭部衝撃はアストロサイトのタウ沈着をもたらす ―棘状アストロサイトという新しいキーワード―
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年8月11日のFB投稿です**
「頭部外傷」の予防は,認知症の14の予防因子の一つです.外傷性脳損傷や,ラグビーやサッカーなどのコンタクト・スポーツによる反復的な頭部衝撃が,慢性外傷性脳症(CTE)やアルツハイマー病のリスクを高めるという数多くの報告があります.今回,Brain誌にこの原因として「アストロサイトにおけるタウ病理」,具体的には棘状アストロサイト(thorn-shaped astrocytes;TSA)に焦点を当てた大規模病理研究が報告されました.聞き慣れない用語ですが,これは高齢者の脳にも見られる加齢関連タウアストログリオパチー(aging-related tau astrogliopathy;ARTAG)で認める構造物です.アストロサイトにリン酸化タウが沈着し,細胞突起が棘(とげ)のように見える特徴的な形態をとります.もともと加齢に伴って出現することが知られていましたが,CTEの病変部や外傷後脳にも認められることが知られていました.著者らはTSAを詳細に評価することで,「加齢や他の神経変性疾患に伴うTSA」と「外傷やスポーツ歴に関連するTSA」を区別できるか,またその分布や特徴が異なるかを明らかにしようとしました.
対象はなんと556人の剖検脳で,外傷性脳損傷歴あり群(中等度~重度;TBI),コンタクト・スポーツ歴あり群(Sports),神経変性疾患対照群(NDD),および非神経変性対照群(Control)の4群を比較しました.リン酸化タウを検出するPHF-1抗体を用いて,脳内複数部位におけるTSAの出現頻度を評価しました.
さて結果ですが,TSAはコンタクト・スポーツ歴群で75.6%,外傷性脳損傷群で32.5%に認められ,これは神経変性疾患対照群(32.5%)や非神経変性群(8.1%)と比較して有意に高い頻度でした.とくにコンタクト・スポーツ群では,皮質溝の深部(sulcal depths)にあるsubpial TSAの出現率が42.2%と極めて高く,他群ではきわめて稀でした.図Aでは,このsubpial TSAの頻度がコンタクト・スポーツ群で有意に高いことが示されています.また図BとCは,前頭葉皮質溝の底部において,CTEの神経病理学的所見がなくても,subpial TSAが単独で存在している様子を示しており,TSAがCTEとは独立に生じる可能性を示唆しています.
本研究の意義は,TSAという病理学的所見が,加齢に伴う変化とされてきた従来の理解を超えて,外傷性脳損傷や反復的な頭部衝撃によって誘導される可能性を明確に示した点にあります.これは,グリア細胞のタウ病理が,単なる老化の産物ではなく,外傷性イベントの病的なマーカーとなることを意味します.また,従来のCTE診断基準には含まれないTSAの広範な分布や局在パターンが,独自の外傷関連病態を構成している可能性も示されています.ちなみに本研究ではアミロイドβ(Aβ)についての評価は行われておらず,TSAとの関係や,Aβ沈着との連関については今後の課題とされています.
まとめると,この研究は外傷が神経細胞ではなくアストロサイトにおけるタウ病理を誘導するという新たな知見を提示し,タウ病理の原因に外傷が加えられたということになります.今後,TSAの臨床的意義がさらに議論され,外傷に伴う認知機能障害に,タウがバイオマーカーとして応用されるものと思われます.
Arena JD, et al. Traumatic brain injury or head impacts from contact sports are associated with tau astrogliopathy. Brain. 2025;148(8):2671–2683. https://doi.org/10.1093/brain/awaf073

・医療AIで医師に「デスキリング(deskilling)」が起きる!:AIツール導入後わずか数か月で熟練内視鏡医の技能が低下する
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年8月16日のFB投稿です**
近年,AIを用いた医療用ツールはさまざまな分野に導入されています.先駆的な例として大腸内視鏡検査があり,AI支援によって腺腫検出率(adenoma detection rate:ADR)が向上することが多くのランダム化比較試験で示されています.一方,AIの使用が医師自身の技能にどのような影響を及ぼすのかは不明でした.消化器領域の報告ですが,今後,他の領域にも同様のことが生じる可能性があるためご紹介したいと思います.
ポーランドの4つの大腸内視鏡センターで行われた観察研究です.調査期間は2021年9月から2022年3月までで,2021年末にAI支援システムが導入されました.AI導入後は,大腸内視鏡検査をAI支援ありとAI支援なしのいずれかでランダムに実施しました.対象は熟練内視鏡医19名が行った検査です.AI支援なしで行われた検査は1443件であり,うちAI導入前が795件,AI導入後が648件でした.またAI支援ありで行われた検査は734件でした.主要評価項目は腺腫検出率(adenoma detection rate, ADR)で,AI導入前後におけるAI支援なしのADRを比較しました.
さて結果ですが,なんとADR は「AI導入前の28.4%から導入後は22.4%へ」と有意に低下しました(絶対差–6.0%,p=0.0089)(図1).相対的に約20%も低下してしまいました.図2は,各内視鏡医ごとのADRの変化量を示していますが,わずかに改善した医師もいますが,大多数で低下が見られ,なかには20〜30%以上の大幅な減少例も存在します(図2).一方,AI支援下で実施された734件の腺腫検出率は25.3%でした.
本研究は,AI支援の常用化が,熟練内視鏡医のAI非支援下での腺腫検出能力を低下させる可能性を初めて示したものです.著者らはこの現象を「デスキリング(deskilling)」と呼んでいます.この用語は,もともとは技術革新や業務の自動化により,労働者が持っていた熟練技能(スキル)が失われる現象を指します.医療では,AIの導入により,医療者が従来自ら行っていた判断や操作を機械に依存することで,「技能」が衰えることを意味します.ナビに頼りすぎて地図が読めなくなる「Googleマップ効果」に似ています.
脳神経内科領域では,今後,MRI読影,脳波解析,神経診察動画解析などにAI導入が進むと予想されます.検査だけでなく,脳神経内科特有の問診・診察から病変部位を考え,文献を確認しながら鑑別診断から診断にたどり着き,最適な治療を選択するというプロセスの一部もAIが肩代わりする可能性があります.それに慣れてしまうと異常所見を自ら見抜く力や,個々の所見を総合して診断を組み立てる能力が弱まるリスクがあります.恐ろしいのは,文献を批判的に読めなくなり,AIの出した答えが正しいのか誤っているのかも判断がつかないということが起きるように思います.とくに基本的な能力がまだ身についていない若い先生がたへの影響が懸念されます.意識してAIを使用せずに症例を評価するトレーニングや,技能維持を目的とした教育プログラムの整備が必要になるのかもしれません.いずれにせよ,AIが一部の医療技術を向上させる一方で,「デスキリング」によって基本的技能が静かに侵食される危険性を認識する必要があると思いました.
Budzyn K, et al. Continuous exposure to artificial intelligence in colonoscopy and its impact on non-AI-assisted adenoma detection rate: a multicentre observational study. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2025 Aug 12. https://www.thelancet.com/…/PIIS2468-1253(25…/abstract

・脳内のリチウム欠乏がアルツハイマー病を引き起こす!?
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年8月18日のFB投稿です**
アルツハイマー病(AD)の病態において,リチウム(Li)が重要な役割を果たしている可能性が報告され話題になっています.これまでLiは気分安定薬として双極性障害の治療に用いられてきましたが,今回紹介するハーバード大学からの研究では,AD脳におけるLiの局在と濃度が詳細に解析されました.
まず軽度認知障害(MCI)およびAD患者の前頭前皮質において27種類の金属を解析した結果,MCIおよびADで有意に低下していたのはLiのみでした(図1左).驚いたことに,アミロイドβ(Aβ)斑にLiが濃縮して存在することが明らかになりました.図1右では,白い円が老人斑(Aβ斑),黄色の円が非Aβ斑領域を示しています.Li(赤)は老人斑に捕捉(sequestration)され,非Aβ斑領域では低下して利用困難な状態になっていることが示されています.
つぎにマウスモデルの検討で,食餌からLiを除去すると,脳内Liが約50%低下しました.その結果,Aβ沈着とタウリン酸化の増加,ミクログリアの炎症性活性化,シナプス・軸索・髄鞘の喪失,そして記憶障害が進行しました.シングルセルRNA解析では,Li欠乏によるトランスクリプトーム変化がADの患者脳と重なることが示されました
さらに注目すべきは,Liの欠乏がGSK3β(glycogen synthase kinase 3β)の活性化を引き起こし,その結果としてタウリン酸化を促進する可能性が示唆された点です.GSK3βは神経変性疾患の治療標的として以前から有名で,タウの異常リン酸化に直接関与することが知られています.つまり「Li欠乏 → GSK3β活性化 → タウリン酸化」という一連の流れがADで生じている可能性が浮上したということです.
となると補充療法ができる可能性がありますが,従来の炭酸Li(LiC)ではなく,アミロイドに捕捉されにくいLiオロチン酸(LiO)が有効であることが示されました.LiOを投与したADモデルマウスでは,アミロイド沈着やリン酸化タウの形成がほぼ完全に抑制され,既存の病理も改善されました.さらに,ミクログリアの炎症反応が抑制され,アミロイドのクリアランス能が改善し,シナプスと髄鞘の保持も確認されました.特筆すべきは,老化マウスにおいてLiOが記憶機能を若齢マウス並みに回復させた点であり,Liが加齢性認知機能低下に対しても保護的に作用することが示されたことです.
図2はLiがアミロイド斑にどのように関与しているかを示しています.図2aでは,脳内のAβ斑(青色の塊)が負に帯電し,周囲に存在する正に帯電したLiイオン(黄色)が引き寄せられて斑の中に捕捉されてしまう様子が描かれています.その結果,本来はニューロン,アストロサイト,ミクログリアなどの細胞に広く分布して機能しているはずのLiが奪われ,非Aβ斑領域での機能が低下し,神経変性につながります.
一方,図2bはLiO(赤)を投与した場合を示しています.これはAβ斑に捕捉されにくく,神経細胞に効果的に取り込まれます.GSK3β活性化はミクログリアの異常炎症応答による神経炎症を起こしますが,LiOにより機能回復したミクログリアはAβを効率的に除去できるようになり,シナプスや軸索,髄鞘の喪失を防ぎます.動物モデルでは,LiO投与によりアミロイド沈着やタウリン酸化の増加が抑えられ,認知機能の低下も改善されました.
Eric Topol先生がブログで指摘しているように,過去の小規模ランダム化試験,双極性障害患者コホート,さらには飲料水中Li曝露研究からも,Liの認知症予防効果は示唆されてきました.しかし,高用量炭酸Liの副作用が臨床応用を制限してきたことも事実です.今回の研究は,低用量Liオロチン酸という新しい選択肢を提示し,安全性への懸念を最小化しつつ予防的効果を期待できる可能性を示しました.
★ただし,ここで提示された結果はあくまで動物モデルに基づく研究であり,ヒトにそのまま適用できるものではありません.特にリチウムは治療域と中毒域が非常に近い薬剤であり,血中濃度の厳密な管理が不可欠です.そのため,サプリメントや市販薬として安易にリチウムを摂取することは極めて危険であり,厳に慎むべきであることを強調したいと思います.
Aron L, et al. Lithium deficiency and the onset of Alzheimer’s disease. Nature. 2025. https://doi.org/10.1038/s41586-025-09335-x
Topol E. Lithium and Its Potential Protection from Alzheimer’s Disease. Ground Truths, Aug 10, 2025.

・COVID-19は女性の血管を老化させる ―国際共同大規模研究CARTESIAN研究―
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年8月20日のFB投稿です**
COVID-19の後遺症は心血管系の障害によっても生じます.その背景として血管内皮障害や炎症に伴う血管老化が推測されてきました.CARTESIAN研究は,COVID-19に伴うこの血管老化を検証しました.
18か国,38施設の2390人を対象とした国際共同前向きコホート研究で,COVID-19陰性対照群391人,陽性非入院群828人,入院群729人,ICU群146人の4群に分類されます.主要評価項目は,感染から平均6か月後の頸動脈―大腿動脈脈波伝播速度(Pulse Wave Velocity;PWV)としました.これは動脈硬化や血管老化を反映する確立された指標です.
さて結果ですが,COVID-19既往の3群はいずれも対照群に比べて有意にPWVが高値を示し,0.37〜0.41 m/sの上昇を認めました.ただし重症度が高いほどPWVが高いという直線的な関係は認めませんでした.しかし注目すべきは性差で,女性では全てのCOVID-19群でPWVが上昇し,特にICU群では1.09 m/sと最大の上昇を示しました.一方,男性ではCOVID-19の有無による差が認められませんでした.図1が分かりやすいですが,通常,男性は女性よりPWVが高い傾向があり,対照群(COVID-)では男性の方が女性よりPWVが速いことが分かりますが,興味深いのは,男性ではCOVID-19既往群では対照群と大差がないのに対し,女性では対照群との差が明確に大きいという点です(図1).そしてICU群では早期血管老化(early vascular aging)が顕著で,10年の血管加齢に相当します!また女性で持続症状を有した群ではPWVがさらに高値であり,症状の長期化と血管老化の関連を認めました.ただし12か月後の追跡では,COVID-19群のPWVは低下傾向を示し,血管老化が部分的に可逆的である可能性も示されました.
この論文に対するeditorialを読むと,PWV上昇の程度は比較的軽度であり,その臨床的意義についてはさらなる研究が必要と指摘しています.また図2にて,COVID-19による血管老化の仕組みを解説しています.感染により,IL-1やIL-6などのサイトカインが増加します.加えて凝固異常や好中球細胞外トラップが生じ,動脈のリモデリングを来たし,血管が硬くなります(stiff artery). この血管老化が女性に強く現れる理由として,性ホルモンや社会的要因,あるいは急性期に重症となった男性が死亡してしまい,生存者には影響が残りにくいというサバイバーバイアスなどを推測しています.
この血管老化は,ブレインフォグや頭痛,認知障害などlong COVIDに特徴的な神経症状にも関与している可能性があります.今後は血管老化を防止する治療や,リスクの高い群を早期に見極めるためのバイオマーカー探索が重要となるとなると思われます.
Bruno RM, et al. Accelerated vascular ageing after COVID-19 infection: the CARTESIAN study. Eur Heart J. 2025;00:1–14. (doi.org/10.1093/eurheartj/ehaf430)
Bukhari S, et al. COVID-19 and vascular ageing: an accelerated yet partially reversible clock? Eur Heart J. 2025;00:1–3. (doi.org/10.1093/eurheartj/ehaf590)

・患者と目を合わせない医者たち(新潮新書)
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年8月23日のFB投稿です**
昨日のカンファレンスで教室のみんなに紹介した里見清一先生(本名,國頭英夫先生)の新刊です(https://amzn.to/462rblW).里見先生は呼吸器内科とくに肺癌の診療を専門とするドクターです.10年ほど前ですが,日本臨床倫理学会で,会場大爆笑,でも一番考えさせられるご講演をされておられたのが里見先生でした.その時は「自己決定」といって,なんでも患者さんに決めてもらう風潮について問題提起をされていました.すっかりファンになった私は,お願いして前任地の新潟までお越しいただき,『 終末期の医者の仕事 』というご講演をしていただきました.先生は『偽善の医療(https://amzn.to/4fPOMJO)』や『衆愚の病理(https://amzn.to/3JtWwp1)』(いずれも新潮新書)など多くの本を執筆されておられます.今回の本も,下記にメモしましたが,印象に残る文章がいくつもありました.読んでいろいろなご意見は出てくるかと思いますが,若いドクターには医療や人の命について深く考えるきっかけになるのではないかと思います. オススメです.
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◆現在の医学教育は,人は必ず死ぬこと,そしてその前に治療を諦める時が必ず来ることを教えていない.
◆私の周りの誰に聞いても,寝たきりで生かされた状態で延命治療などしてほしくないと答える.おそらく読者もそうだろう.
◆クーパー先生らは,AIによって医学生が教育されるようになると,そこから質的に違う医者が出てくるのではないかと懸念している.そもそもChatGPTによって最初からすぐに正解が提示されるのなら,医者が勉強する意味はあるのか.また,倫理的なジレンマに悩む代わりに,ブラックボックスから出てくるAIの決定を医者はそのまま受け入れるようになるのだろうか.
◆エビデンスやガイドラインは大切だが,そればかりを墨守する人間は「エビデンス屋」と呼ばれ,軽蔑される.我々はその重要性も限界も認識すべきである.
◆(不必要な検査について)この無駄は必ずしも医者の問題だけではなく,患者側も「何も検査してくれない」と不平を鳴らすのである.医者にとって最も知識や経験を必要とするのは,病歴と身体診察から「大丈夫,何ともない」と結論することである.
◆ミシガン大学のシュナイダー教授も,「良い人になるのは無理でも,良い人だと思わせるようにせよ」と学生に教えているそうだ.
◆チーム医療だの働き方改革だのは,必ずしも患者側のメリットを考えて出たものではないことは忘れない方がよい.
◆そう,俺たちの頃は辛かった.近頃の若い者がそれを追体験する必要なんかないのだろう.だが,だからといって別に俺たちはやり直したいなどとは思わない.それはどうしてだろうか.
◆喜び(ジョイ)は快楽(プレジャー)と同じではない.喜びには困難や無念や試練も含まれる.喜びを定義することはできない.ただ,我々がそれを経験したときに初めて「これがそうなのか」とわかるのだ.

・p-tau217r:アルツハイマー病の進行を血液検査で知る時代に突入 ― 真の利益のために何が必要か?
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年8月27日のFB投稿です**
アルツハイマー病(AD)において,脳内の病理変化の進行を正確に把握することは治療方針の決定や予後の予測に重要と考えられています.アミロイドPETやタウPETがその役割を担うと考えられてきましたが,これらは高額,かつ専門的な施設を必要とするため,広く普及させることは容易ではありません.またADの患者数の多さと日本の医療経済の状況を考えても現実的ではありません.このような背景のもと,実際に認知機能障害の出現と密接な関係がある種々のタウ蛋白を血液で測定し,ADの病期(ステージ)を分類できるかどうかが大きな研究テーマとなってきました(ちなみにアミロイドβは発症約20年前から生じる引き金で,タウ蛋白は認知症発症前に急激に変化が生じる実行蛋白と考えられつつあります).
今回,Nature Aging に発表されたスウェーデンとカナダの共同研究は,まさにこの課題に取り組んだものです.スウェーデンの549例とカナダの140例,合計689例が対象です.研究では,リン酸化タウ(p-tau181, 199, 202, 205, 217, 231)と非リン酸化タウ(tau195-209, tau212-221, 0N-tauなど)の12種類のタウペプチドを,血液を用いて質量分析で同時に測定しました.特に重要となったのは p-tau217r(p-tau217 ÷ tau212-221),p-tau205r(p-tau205 ÷ tau195-209),そして0N-tauです.ここで「r」は ratio(比)を意味し,リン酸化ペプチドを対応する非リン酸化ペプチドで割ることで,腎機能などによる総タウ量の変動を補正し,病気特異的な変化をとらえやすくしています.
さて結果ですが,3つの指標(p-tau217r,p-tau205r,0N-tau)を組み合わせることで,患者を血液ステージ0〜3の4段階に分類できることが分かりました.
ステージ0:3つの指標すべてが正常. AβやタウPETも陰性が多く,認知機能も保たれる段階.
ステージ1:p-tau217rが異常となる. AβPETが陽性化するが,臨床的には無症候が多い段階.
ステージ2:p-tau205rが異常となる.タウPETが陽性化して,軽度認知障害が目立ち始める.
ステージ3:0N-tauが異常となる.タウの広範な蓄積と脳萎縮が進んだ,認知症を呈する段階.
つまりこの血液ステージは,PET所見や認知機能低下の進行とよく対応しています.ステージ0から1でAβ蓄積が進み,ステージ1から2でタウ沈着と軽度認知障害が出現し,ステージ2から3で急速に進行して認知症に至るという流れが明確に示されました.図1では,血液ステージが進むにつれて,まずアミロイドPETでAβ蓄積が検出され,次にタウPETで内側側頭葉や新皮質におけるタウ沈着が明らかになり,その後皮質厚の減少が認められ,最終的に認知機能指標(MMSEやmPACCなど)が低下することが示されています. 図2は血液ステージごとの主要なバイオマーカー・認知機能の変化を示しています.
本研究の臨床への貢献は,第1に,血液検査のみでADの病期を推定できることで,PETが利用できない施設でも診療に活用できる可能性を示したことです.第2に,アミロイドβ抗体や将来のタウ療法など,新規治療薬の効果は病期に依存するため,血液ステージを用いることでより適切な患者選択が可能となることです.治験においてもPET検査数を大幅に減らし,効率的に対象者を絞り込むことができると思われます.さらに,最新のJAMA Neurology誌に掲載された研究では,血漿p-tau217が前臨床期のアルツハイマー病において将来の認知機能低下を予測する有力な指標であることも示されています(文献2).
素晴らしい医学の進歩で,ここまできたかと感嘆しますが,個人的には複雑な気分です.これが臨床で使用されるようになると,ADの診断が気軽にできてしまいます.今までであれば十分な問診,診察,認知機能や周辺機能の評価,日常生活の状況,家族関係など多面的に調べられたものが,血液診断ひとつで済まされてしまう恐れがあります.果たしてそれでよいのかなと思います.早期診断が患者さんや家族に過度の心理的負担を与えたり,就労や保険加入に影響を及ぼす可能性,あるいは告知のタイミングや方法をめぐる新たな課題を生じさせることも考えられます.「できること」と「すべきこと」は必ずしもイコールではありません.「できるからやってしまう」という姿勢は,医療においては慎重であるべきです.
一方で,こうした血液バイオマーカーは,上述したように,PETが利用できない現場で診断や治療方針決定を助け,また新しい治療法を必要とする患者に早くつなげる可能性を秘めています.重要なのは,技術をそのまま導入するのではなく,臨床現場での使い方や倫理的配慮を含めて慎重に議論し,患者に真に利益をもたらす形で活用していくことだと思います.
1. Montoliu-Gaya L, Salvadó G, Therriault J, et al. Plasma tau biomarkers for biological staging of Alzheimer’s disease. Nature Aging. 2025. (doi.org/10.1038/s43587-025-00951-w)
2. Insel PS, Mattsson-Carlgren N, Sperling RA, et al. p-Tau217, Tau PET, and Cognition in Preclinical Alzheimer Disease. JAMA Neurol. Published online August 25, 2025. (doi.org/10.1001/jamaneurol.2025.2974)

・NHK「知的探求フロンティア タモリ・山中伸弥の!?(びっくりはてな)」に出演します!
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年8月28日のFB投稿です**
標題の新番組の第2回放送「認知症 克服のカギ」に出演させていただきます.昨年からチーフディレクターの方々にレクチャーする機会をいただき,番組制作のお手伝いに関わってきましたが,正直どのような番組になるのか分からないまま進めていました.まさか自分が出演しタモリさんに直接お目にかかれるとは,まったく想像していなかったので,大変驚きました.
番組の内容は「認知症 克服のカギ」をテーマに,認知症に関する国内外の研究成果が次々と紹介される,まさに最先端の情報のオンパレードです.私自身も知らなかった新しい知見にも触れることができました.専門医でさえも驚かされる話題もあるように思います.また,さすがNHKという感じで,VTRによる研究紹介の迫力には圧倒されました.世界の第一線で活躍する研究者や,実際に病と向き合う患者さん・ご家族への直接取材から得られた言葉には,深い重みがありました.
認知症は確かに大変な病気ですが,その研究は確実に前進していることが伝わると思います.番組の終盤では「認知症を克服するとはどういうことなのか?」というところまで議論は深まります.私たちがこれから認知症にどのように向き合い,支え合っていくべきかを考えるきっかけになる番組だと思います.ぜひご覧ください.放送は9月6日(土)19:30~20:48(78分)です.
出演者インタビューをこちらからご覧いただけます:
認知症は克服できる!?タモリ、山中伸弥らが研究の最前線を深掘り&認知症関連番組も
https://www.nhk.jp/…/blog/bl/pB4Egql2A5/bp/pDERAG6rZp/

・ChatGPT時代の医師教育 :学びを支えるか,奪うかの境目は?
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年8月31日のFB投稿です**
ChatGPTのような大規模言語モデル(AI)が,医療の現場にどんどん入ってきています.とても便利ですが,いいことばかりではありません.私自身,「若い先生の方がAIの影響を強く受けるのではないか」と漠然とした懸念を持っていましたが,先日読んだ New England Journal of Medicine の総説で,その疑問が整理されました.
まずAIのデメリットとして,教育の現場では次の3つが特に問題になります.
• Never-skilling:必要な力を身につけられない
• Mis-skilling:AIの誤りをそのまま覚えてしまう
• Deskilling:せっかく身につけた技能が失われる
医師はトレーニングを重ねることで,ある時点で「自動的なルーティンの実践」から「柔軟で創造的な実践」へと成長することができます(図1の①).このあとAIをうまく批判的に活用すれば,さらに成長が加速していきます(図の②).ただベテラン医師でも「自動的なルーティンの実践」のままの人もいますし(③),AIを安易に使うとDeskillingやMis-skillingが起きてしまいます(④).
注意すべきは,学習曲線のスタート地点が3本あることです.これは学習者の経験の違いを表しています.
• ベテラン医師(A)は,すでに高い技能を持っているため,AIを参考にしても「どこが正しく,どこが間違っているか」を判断しやすく,補助手段として有効に使えます.
• 中堅医師(B)は,AIをうまく使えば大きく成長できますが,依存すると逆に自分の推論力を磨く機会を失ってしまいます(⑤).
• 医学生や研修医などの初学者(C)は,AIの答えをみな「正解」と思い込んでしまう危険があり,成長が伴わず,低いレベルでとどまってしまう恐れがあります(⑥).ただし教育者が「なぜこの診断が出たのか,自分の言葉で説明してみよう」と検証的・批判的に問いかければ,AIを学びの出発点に変えることができます(⑦).
つまり,同じAIでも,誰がどう使うかによって,学びの行方は大きく変わるということです.また基盤を伴わない初学者ではAIへの対処の影響が大きいということです.教育者は,学習者の段階に応じてAIの「検証的・批判的な使い方」を指導していく必要があります.
具体的には著者らは「DEFT-AI」という指導法を提案しています(図2).診断の振り返り(Diagnosis),証拠の吟味(Evidence),フィードバック(Feedback),教育的な指導(Teaching),そしてAI活用の推奨(AI recommendation)の5つを柱に,AIを使う場面を教育の機会に変えようというものです.
さらに,人とAIの協働には二つのスタイルを提示しています.「ケンタウロス型」では役割を分担し,危険度の高い判断は人間が担います.一方「サイボーグ型」では人とAIが一体化し,出力を一緒に練り上げていきます.診断のような場面ではケンタウロス型,メール文案のような低リスクの作業ではサイボーグ型が向いていると書かれています.
著者の結論はシンプルです.著者らは「verify and trust(検証してから信頼する)」を強調しています.AIの答えを鵜呑みにせず,自分の知識や証拠と照らし合わせた上で活用することが大切なのです.これからの医学教育は,AIを避けるのでも過信するのでもなく,賢く付き合うことが求められる時代に入ったのだと思います.ただし,この議論は現時点のAIが「不完全であること」を前提にしています.もし将来,AIの精度が飛躍的に高まり,人間の判断に匹敵する水準に達した場合,教育や臨床現場での位置づけそのものが変わる可能性があります.
Abdulnour R-E, Gin B, Boscardin CK. Educational Strategies for Clinical Supervision of Artificial Intelligence Use. N Engl J Med. 2025;393:786-97. (doi.org/10.1056/NEJMra2503232)

(作成者)峯岸 瑛(みねぎし あきら)

カテゴリー
COVID-19 Long COVID アルツハイマー病 パーキンソン病 マイクロプラスチック ロボティックス 医療AI 科学大国再興策 血管脳関門(BBB) 認知症 進行性核上性麻痺(PSP)

2025年3月のニュース

日本は再び科学大国になれるでしょうか?その方策を提言するNatureのオピニオン記事(2月11日)と、グーグル・ディープマインドのAIロボットの発表(3月12日)、岐阜大学医学部下畑先生からの最新医学情報などをお届けします。

1.2025年3月の活動状況
・新井 恵さんの投稿
活き活き中屋敷ポールウォーキング。 今日は、 境川沿いを歩き河津桜を愛で、中屋敷の歴史を学ぶウォーキング。 鳥もたくさんの種類と遭遇、可愛かった。 穏やかな氣持ちの良いウォーキングでした。 次回の活き活き中屋敷は 音楽療法 次次回はデュアルエクササイズ(私担当します) 時々次回はポールウォーキングです。 #河津桜 #ポールウォーキング

・NPO法人船橋ウォーキング・ソサイエティさんの投稿
2025/3/1 2本のポールを使うウォーキング 土曜日 | 船橋ウォーキング・ソサイエティ

・田村 芙美子さんの投稿
3/04 冬に舞い戻ったように寒さが厳しいですが、明日は啓蟄。虫たちも穴から首を出して震えるのじゃないでしょうか。今日は外ウォーキングを止めて室内体操に変更しました。認知症発症リスクを遅らせるためにまず、隠れフレイルをチェック。お一人だけ歩幅が狭いかたがいらして、彼女を「認知症」呼ばわりするイジメッコのようなメンバーさんたち!80前後って怖いですね((( ;゚Д゚)))・・ でも、それは優しさからだと分かります。バランスと筋トレ中心にエクササイズを幾つか。  🌸若宮大路の玉縄桜

・中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より 2025年度イベントカレンダーが出来上がりDM手配中です。 現協@会員さんへは元より、一般参加の皆さんや昨年度会員さんへのご案内です。 DM以外では市内20 ヶ所位に配置配布をお願いしています。 新年度PW始めは4/6です〜❗️

・田村 芙美子さんの投稿
3/07 今日で2024年度の渋谷PW教室は最終回。また新学期まで暫し休暇です。最終教室はいつもの計測とポール遊び、そして男性が皆お休みだったので胸にライトを受け「私は女優」ポールウォーキングで成果を発揮。午後から駒沢(店)の20年咲き続けたアプリコットの薔薇の根を抜いて鎌倉に移植、試み。うまく根付くと嬉しいのですが。それにしても夕方からぐんと気温が下がりました。明日は予報通り雪❄になりそうです。

・校條 諭さんの投稿
            荻外荘公園

復元成った近衛文麿旧宅「荻外荘(てきがいそう)」へ
3月の気まポ(気ままにポール歩きの会)は、荻窪駅の南部地域を巡りました。
荻窪駅南口、大田黒公園、荻外荘・荻外荘公園、田端神社、松渓公園、中道寺、与謝野公園
私自身は、鵞足炎(がそくえん)がまだ尾を引いていて、平地を歩くときは痛まなくなったのですが、階段や坂道はポール(前方着地)でカバーしています。
※写真の半分以上、田村和史君(高校同級生)から拝借しました。
※バーチャル荻外荘(カーソルを動かすと360度見られます。)

・台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
三得利健康網路商店 X 台灣健走杖運動推廣協會 🎊 2025年3月8日《城市輕健走》圓滿結束!🎊 🌞 春日健走 活力滿滿! 在 中正紀念堂,我們迎來了第二場 城市輕健走! 專業教練帶領,夥伴們自由選擇休閒組或挑戰組, 踏步在城市的綠意間,感受雙杖健走的穩定與輕盈!💪 運動前有專業的教練們帶著大家一起做健走杖熱身, 歡樂的音樂🎵帶動大家動起來~ 🔹 分上下午場活動,會員專屬 x 非會員抽籤體驗! 🎟️ 下午場更特別開放 非會員透過抽籤免費體驗, 讓更多人能夠親身感受 雙杖健走的魅力與健康的力量!🏆 感謝所有參與的夥伴, 讓這場活動充滿歡笑與活力,期待下次再相見! ✨ 雙杖在手,健康跟著走! ✨ 腳丫聚樂部 樂您運動 Learning YunDon 耆妙屋-熟齡生活奇妙好物 FOOTDISC 富足康科技足墊

・中村 理さんの投稿
佐久PW協会より 〜小諸PW散策〜 暇と好奇心旺盛のコーチによる、移住者増加中で古民家・商店再生中の小諸市街並み散策でした。 市役所前広場でのウォーミングアップ後、かつての繁華街/赤坂通り-鶴巻通りの路地を抜け〜北国街道/与良町通り-荒町通り-本町通りをブラブラ! 道中リメイクお店のカフェ・レストラン・ラーメン屋・ギャラリー・・等ここ数年での出店が目覚ましい若者やシニア向けの通りです。 神社仏閣も有り蘊蓄は兎も角覗いて来ました。 写メ忘れですが、ランチはご当地有名な蕎麦倉/丁・庵で皆さん啜って来ました。美味でしたとの事でした〜ww -小諸駅前/さいたま市コーチ等と分かれ-相生町通り-市役所前で無事解散❗️ 約4km/2.5時間の寄り道だらけでした。 お疲れ様でした。

・新井 恵さんの投稿
今日の活動、スマイルフレンズ。 まずは『おらほのラジオ体操第一(おらほのらづおたいそうだいいづ)』。 3.11を風化させてはいけないという思いで復興プロジェクトお国言葉でラジオ体操から始めました。

・田村 芙美子さんの投稿
3/11 震災追悼 三浦ネットグループのポールウォーキング。江の島の予定でしたが、お天気が芳しくないので行き先変更。扇ガ谷の住宅奥の80数段の階段から源氏山公園にトライしてみました。午後からは金沢八景に。夕方 予報通り雨☔になりましたね。写真は今日の赤シリーズです。

・長谷川 弘道さんの投稿
名古屋フィジカルフィットネスセンター|経験豊かなフィットネスエンターテイナーを派遣します

・中村 理さんの投稿
本日のPW散策〜 昨日と大違いの暖かな陽射しの中、長野市/松代の城下町をブラブラ〜ww 六文銭でお馴染みの真田氏のお膝元、 松代城跡-真田邸-真田宝物館-文武学校-各旧家〜見事な寺町を寄り道でした。 約5km/11,000歩❗️ 締めは松代荘/松代の湯♨️で・・❗️ PS:ここ松代はPWの祖/安藤先生のいらっしゃる所でも‼️

・田村 芙美子さんの投稿
3/12 曇り時々小雨🌂 今朝のPW Dojoはコーチングクラス!隠れフレイルチェック方法を実践勉強し、昔懐かしいラムネで乾杯🍸✨🍸午後は御成スタバから十二所へ配達運送業を済ませて帰宅。これからふきのとう味噌作りです。

・田村 芙美子さんの投稿
3/13 春を通り越し初夏の陽気の貯筋クラスは100均で見つけたディズニーエッグを手にして楽しくウォーキングの練習。夜はソーシャルフィットネスのZOOMが今終わったところです。今日も充実した1日でした。感謝

・Masami Yamagataさんの投稿
豊郷台の皆さんにポールウォーキング教室とポールを使ったUDe-スポーツもぐら叩きゲームを行いました。家の中にいる親に体験させたいの声でした。

・佐藤 ヒロ子さんの投稿
2025.3.17 シニアポールウォーキング | 船橋ウォーキング・ソサイエティ

・田村 芙美子さんの投稿
3/18 江ノ島ポールウォーキング 火曜 PWクラスは続く悪天から逃れ江ノ島へ参りました。が、期待したいつもの🗻は雲が隠して観ることができず皆落胆。 久々に潮風を吸って広場でウォーミングアップ(観光客も回りで真似をしていたり、カメラで撮影したり・・・) 平日にもかかわらず人が溢れていてポールは邪魔になるので、人の行かないヨットハーバーの方へ歩きました。往復は江ノ電。メンバーさんは徒歩だったりバスだったり。

・遠藤 恵子さんの投稿
午前は介護予防運動教室!! 午後はサロンワーク!! 加圧トレーニング+プロボディデザイン(3D美容造形術) 加圧トレーニングってな~に? プロボディデザインってな~に? どんなことするの? からだも心も喜ぶ 素敵な貴女と出会える ますます輝きを放つ素敵な貴女と出会える ということだけお伝えしておきましょう💪 おっと!安心してください!! 加圧トレーニング後 ベッドは移動します🫡

・佐藤 ヒロ子さんの投稿
2025.3.18 美・姿勢ウォーキング | 船橋ウォーキング・ソサイエティ

・田村 芙美子さんの投稿
3/19 真冬に舞い戻ったような冷たい朝。東京からは雪便り。北鎌倉は雨でしたが数年前はポカポカ陽気のたからの庭でこの真っ赤な椿弁当を食べたなんて同じ3/19日でも大違い。いつものDojoでフレイル予防体操、コアフィットの帰りにハクモクレン公園に寄ってみました。

・新地 昌子さんの投稿
日曜日の全国大会参加させていただきます😊お天気も良さそうで楽しみ❗️ 今回は2キロコースのアンカーをつとめます。最後尾で誰よりものんびりと楽しみますよー♪見かけたら声かけてくださいねー🫶明日は久しぶりに蕨の健康アップステーションで一緒だったボランティアスタッフさんと再会ランチの約束をしています。佐久平〜蕨は新幹線使うと1時間28分!ちかっ😁

・山下 和彦さんの投稿
今日は志木市のいろはウォークフェスタです!晴天で最高です👍

・水間 孝之さんの投稿
第9回志木市いろはウォークフェスタ開催されました‼️760名の参加です。台湾ポールウォーキング協会からも16名参加しました。いよいよインターナショナルです。スタッフの皆さんお疲れ様でした‼️

・新地 昌子さんの投稿
わーい、カパル君と写真撮れました😊 今日の埼玉県は気温25度で初夏のような暑さでした。大勢の参加者の皆さんと志木いろはウォークフェスタ楽しんできました。 会場では埼玉の瀧コーチ、遠藤コーチ夫妻、佐久の高見澤コーチ、北区の阿部コーチご夫妻、ノルディックの藤井コーチ、そして5月に秋田でイベントを開かれる佐々木コーチにもお会いできました。 台湾からも16名の参加が!上野の桜を見て志木に入られたとか。10キロコースと2キロコースを完歩されました。パワフルです。 他にもお住まいの地域でポールウォーキングを始めたいので教えにきてほしいと声をかけていただいたり、たくさん出会いがありました。 お疲れさまでした。またぜひ佐久にもきてください。 佐久に戻ったら、涼しい〜。即上着を着ました😅

・田村 芙美子さんの投稿
3/23 逗子市PWクラブ定例会 昨日より更に気温が上がり心地よい風に吹かれて 筋トレもしっかりたっぷりできました。今日は志木のポールイベントに参加できずちょっぴり心残りでしたが、お彼岸明けのせいか通常より少なめの参加者で皆さん一人一人とお話しできました。

・日本ポールウォーキング協会 npwaさんの投稿
昨日、第9回志木いろはウォークフェスタが開催されました。 参加者760名で、台湾ポールウォーキング協会の関係者16名も参加されました。 今回ご協力して下さった、瀧MCPro、新地MCPro、阿部MCPro夫妻、お疲れ様でした。

・田村 芙美子さんの投稿
3/26 午前中北鎌倉のDOJOで隠れフレイルチェック、脊柱管狭窄症など腰痛の方のためのストレッチをしただけで汗だくに😵💦 友人とランチとお喋り2hのあと大急ぎで東京へ向かいました。今日初めてコルセットを外して運動しましたが異常無し。骨は復帰したかな。1hほどの滞在で帰鎌。モノレールのレールの下から橙色の夕陽!鎌倉山の桜並木は二部咲き🌸でした。

・田村 芙美子さんの投稿
3/27 鎌倉山~西鎌倉 春爛漫。 カラフルな花たち やっぱり春はウキウキしますね そして桜もずいぶん開きました。なごやかセンター24年度最終活動も無事終わりました。介護認定2の男性は皆さんから姿勢が良くなって歩き方もブレなくてカッコ良くなった!と褒められました。もう何年も通ってらっしゃいますが 筋肉がバランス良くしっかりついてきたと思います。継続は力なり。こちらのクラスも隠れフレイルチェック。次回は片足のまま椅子からたてるように・・・が目標です。そして同じ距離を普通歩きと速歩(ゆっくり歩幅広く)で比べてみたら歩数が5歩は違いました。量より質!

・校條 諭さんの投稿
ノルディックウォーキングのポールワークは、最強のフォーム矯正ツール! 足部のロッカーファンクションから脚回旋(ターンオーバー)への適正な下肢の運動。 自然に起こる全身落下の感覚入力、バウンディングイメージの定着に寄与します。 ポールを使ったウォーク〜スキップ〜ラン、そして最後は徒手でのランイメージへ。 このドリルを反復した後に走ってみてください。 一気に運動感覚が変わるのを体験できます! #running #trailrunning #mizuguchimethod #ランニング #トレイルランニング #ミズグチメソッド #러닝 #트레일러닝 #nnormal #nwpl
関連情報
校條さんから貴重な投稿がありましたので転載しました。「ノルディックウォーキングのポールワークは走行(ラン)の最強のフォーム矯正ツール」という水口慶高さんの動画です。
私(峯岸)は、「ポールウオーキングのポールワークは歩行(ウォーク)の最良のフォーム矯正ツール」と思っているので、その制御様式は歩行のそれに近く、ノルディックウォーキングの制御様式は走行のそれに近いと想像しています。
歩行と走行の制御様式の相違については、例えば、
S. Aoi, T. Ohashi, R. Bamba, S. Fujiki, D. Tamura, T. Funato, K. Senda, Y. Ivanenko, and K. Tsuchiya, “Neuromusculoskeletal model that walks and runs across a speed range with a few motor control parameter changes based on the muscle synergy hypothesis”, Scientific Reports, 9:369, 2019. (脳神経による人間の歩行と走行の制御様式を数理モデルで解明 -歩くと走るはどの程度違うのか-)のプレスリリースに添付されている諸資料を参照下さい。

・NPO法人船橋ウォーキング・ソサイエティさんの投稿
2025.3.27 2本のポールを使うウォーキング 木曜日 | 船橋ウォーキング・ソサイエティ

・台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
🎉 2025年〔台灣健走杖運動推廣協會〕首場海外交流活動圓滿成功! 🎉 📍 3/23 我們來到日本埼玉県志木市,參加由 〔志木市いろは健康 21 プラン推進事業実行委員会〕 主辦的 年度全國雙杖健走大會(Pole Walking Fair) 🇯🇵🚶‍♂️🏅 去年在長野県佐久市參與健走活動時,我們便受到 〔志木市健康部〕 的邀請,促成了這次難得的國際交流機會 🌏✨ 主辦單位很用心的在志木市役所(市政府)前廣場搭建舞台,舉辦盛大的開場活動。 市長〔香川武文〕親臨現場,跟我們一起參與了十公里的持杖健走。開場節目除了有精彩熱鬧的日本太鼓表演之外,大會吉祥物〔河童君〕,也在現場唱唱跳跳,陪報名參加的近800名參與者一起同樂。香川市長、主辦單位及現場主持人也在台上多次提到〔台灣健走杖運動推廣協會〕,並歡迎我們16位來自台灣的朋友。當然,我們除了開心地揮手致意之外,〔雙杖在手,健康跟著走〕的口號,也被喊的震天價響呀! 活動當天正值春暖花開之時節,氣候涼爽宜人,油菜花開滿整片河堤,鮮黃色的花海讓參加健走杖活動的人都無比興奮。志木市是個只有7.6萬人口,工業化程度極低,擁有寬闊自然田野風光的小鄉鎮,在這兒持杖健走是再合適也不過的啦! 這次協會跨海與日本交流,看到他們在舉辦活動時對活動流程、場地、路線、安全、人員安排、氣氛掌握等等的用心,十分值得我們借鏡,期盼成立甫兩年的〔台灣健走杖運動推廣協會〕,也能很快地在台灣辦一場具規模的健走杖大型活動,將持杖健走帶動成全民運動,促進全民健康。 🌏 國際健走交流,讓我們一起走向更健康的未來! 🚶‍♀️🌟 #台灣健走杖運動推廣協會 #雙杖在手健康跟著走

 

来月以降の開催
・長岡智津子さんの投稿
写真1件

・台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
【日式健走 Basic Coach 培訓課程】 2025年「日本健走杖健走」教練培訓課程來嚕~ 🇯🇵日本健走杖健走協會NPWA唯一授權海外開課🏆 歡迎所有對日式健走有熱忱,想共同推廣或進一步學習的朋友們報名! 課程日期:2025/4/19(六) 9:00am ~ 17:00pm 課程地點:台北市中山區吉林路24號12樓之1 ⚠️滿10人開班,上限15位⚠️ 詳細說明與課程辦法請見報名表: ➡️ https://forms.gle/tw35vU3UPLDkLT1X7 *通過初階教練培訓者,可指導親友們學習日式健走  若想要規劃與教導有一般民眾學習日式健走,則需要再取得進階教練資格喔~
関連情報
日本ポールウォーキング協会NPWAのセミナー情報については、こちら;
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・資格更新講習セミナー

 

2.関連学術ニュース
2-1)日本は資金援助を再考すれば再び科学大国になれる。~科学研究の進化する要求に遅れを取らないためには、国は個々の分野への厳密な焦点を捨てなければならない。

日本は再び科学大国になれるでしょうか?合田圭介、 井垣達史、ベルント・クーン、 水島昇、 永井健治、中川敦寛、 大隅典子、 エイミー・Q・シェン、 園下将大、柳沢正史、氏等は、2025年2月11日付「Nature」オピニオン記事(下記)でその解決策を提示しています。同記事から、書き出しの部分(①)と、同記事で成功事例の一つとして取り上げられている沖縄科学技術大学院大学(OIST)についての言及個所(②)、並びに、本記事についてのOISTのニュース記事(③)を紹介します。
“Japan can be a science heavyweight once more — if it rethinks funding”
By Keisuke Goda, Tatsushi Igaki, Bernd Kuhn, Noboru Mizushima, Takeharu Nagai, Atsuhiro Nakagawa, Noriko Osumi, Amy Q. Shen, Masahiro Sonoshita & Masashi Yanagisawa、
Nature Opinion article:2025年2月11日
DOI: 10.1038/d41586-025-00394-8

① 書き出しの部分(本記事の翻訳はChromeによる)
「CRISPR 遺伝子編集から人工知能によるタンパク質構造予測まで、素晴らしいイノベーションは学際的な研究から生まれます。気候変動、生物多様性の喪失、健康格差、その他の地球規模の危機に対する解決策も、多くの分野を橋渡しする洞察に依存します。

しかし、多くの国では、学際的研究は依然として軽視されています。こうした論文はより多くの引用を集め、研究に大きな影響を与えるにもかかわらず、学際的研究の提案は、より狭い範囲の研究よりも資金を獲得する可能性が低い傾向にあります。

一部の国では、それに応じて研究資金戦略を調整しています。たとえば、2016年から2018年の間に、英国の研究会議は、10年前よりも30%多くの助成金を学際的な研究者に授与し、2018年に資金提供されたプロジェクトの44%が少なくとも2つの研究テーマにまたがっています。米国でも同様の動きが見られ、2015年から2020年の間に、学際的な助成金申請書を提出した大学の部門は、国立衛生研究所(NIH)と国立科学財団(NSF)から、合計および個別の助成金の観点から、1つの分野でのみ申請した部門のほぼ5倍の資金を受け取りました。

残念ながら、日本ではそうではありません。国の資金提供機関は、依然として主に工学や化学などの狭い専門分野の研究を支援しています。これらの助成金申請を評価する専門家は、よく理解していない学際的な研究よりも、自分がよく知っている分野の研究を好む傾向があります。

この偏狭なアプローチは、日本における学際研究への資金提供の大幅な不足につながっています。また、この国が画期的な進歩を逃していることも意味しています。日本の天然資源は限られており、日本の経済は長い間科学技術に依存してきました。日本の研究とイノベーションの衰退は明白で、最も引用されている研究論文の上位10%に占める日本のシェアは、過去20年ほどで6%から2%に減少しています。

日本の研究機関に所属する科学者や技術者として、私たちは政府や資金提供機関に対し、学際的研究の支援を強化するよう求めます。さもなければ、日本の科学と経済における世界的な地位が損なわれる恐れがあります。ここでは、そのような変化を促すための 5 つの方向性を示します。

プロジェクトではなく人材に資金を提供する」
(以下、続く)

(注)同記事で挙げられた具体的な提言:(Copilotによる)
・学際的研究の強化:個々の分野にとらわれず、異なる分野の研究者が協力して取り組むことが重要であると提言しています。
・柔軟な資金提供の仕組み:固定された分野ごとの資金配分から脱却し、より柔軟な資金提供の枠組みを構築することが求められています。
・研究者のキャリアパスの多様化:研究者が多様なキャリアパスを追求できるように、支援体制を整えることが重要であるとされています。
・国際協力の推進:国内の研究だけでなく、国際的な共同研究を推進し、世界と競争力を持つ研究環境を整える必要があると指摘されています。

② 沖縄科学技術大学院大学(OIST)への言及個所
「日本には確かに才能ある研究者を支援するプログラムがいくつかあるが、あまりに控えめだ。例えば、科学技術振興機構(JST)と日本学術振興会(JSPS)は、基礎科学に資金の一部を、好奇心に駆られた研究に資金の一部を充てている。しかし、JSTはトップダウン方式を採用しており、流行の話題の研究が優先されることが多く、より独創的なアイデアやプロジェクトを見逃す可能性がある。また、JSPSの主要な助成プログラムである科学研究費助成事業(KAKENHI)の年間予算は、過去10年間停滞したままである。インフレと円安を考慮に入れると、プロジェクトあたりの平均資金は2013年以降半減している。

しかし、研究者中心の資金提供を採用し、大きな成功を収めている日本の機関が 1 つある。沖縄科学技術大学院大学 (OIST) だ。文部科学省の資金提供を受ける国立大学とは異なり、OIST は内閣府の資金提供を受ける私立大学である。2011 年に設立された同大学は、水平的な組織構造を持ち、多様性と学際的なコラボレーションに力を入れている (「成功へのステップ」を参照)。OIST は現在、 Nature Index によって日本を代表する研究機関としてランク付けされており、同大学の出版物の約 20% は複数の分野にまたがる貢献によるものである。より多くの日本の機関がこれに倣うべきである。

「成功へのステップ」
沖縄科学技術大学院大学 (OIST) では、教員は 5 年間にわたりコア資金を受け取りますが、その使い道は柔軟です。多くの他の大学では、研究室がコア施設や技術スタッフの費用を負担する必要がありますが、OIST ではこれらのリソースへのアクセスは無料です。これにより、コラボレーションが促進され、リスクが高く、見返りも大きいプロジェクトが可能になります。5 年ごとに各教員を評価して説明責任を確保し、大きな成果を挙げた教員にのみ継続的なサポートが与えられます。

OIST は従来の部門を持たずに運営されており、異なる分野の科学者が協力し合えるようになっています。建物にはオープン スペース、ラウンジ、共用キッチン、オープン デスク エリアがあり、気軽に交流できます。博士課程の学生は、視野を広げるために 1 年目に複数の研究室をローテーションで回る必要があります。こうしたローテーションにより、アイデアや技術の交換が促進され、学際的なコラボレーションが組織の構造に根付いています。

性別や障害の面を含め、さらなる進歩が必要ですが、OISTは他の日本の大学よりもコミュニティの多様性を育んでいます。これは、世界中から学者を惹きつけていることも一因です。2024年には、OISTの教員の60%以上と学生の80%以上が日本人以外の人々であり、視点と専門知識のダイナミックな組み合わせをもたらしています。」

③ 沖縄科学技術大学院大学(OIST)のニュース記事(2025年2月12日)
日本全国の著名な大学に所属する130名以上の研究者が署名した科学ジャーナル「Nature」のオピニオン記事で、OISTが学際的な研究の分野で「道を切り開く存在」と評価されました。

OISTのカリン・マルキデス学長兼理事長は、次のようにコメントしています。 「これほど多くの方々に、日本の模範的な大学として取り上げていただいたことは、大変光栄です。OISTは、沖縄、日本、そして世界に革新的な解決策をもたらすことを目的に、独自の使命と構造のもと設立されました。2024年から2029年の5ヵ年戦略では、オープンサイエンスと学際的な融合をこれまで以上に重視しています。まだ若い大学ですが、多くの日本の科学者から将来性を評価されていることをとても嬉しく思います。」

記事の執筆者である研究者たちは、日本の研究環境をより活性化させるため、新たなプログラムへの資金投入を求めています。

OISTの理事会議長であるヴィジェイラガバン・クリシュナスワミ博士は、次のように述べています。 「日本の多くの優れた科学者が、OISTの特徴である『学部のないフラットな組織構造』、『多様性を尊重する姿勢』、『学際的な研究を促進する強力で創造的なインセンティブ』を高く評価していることは、OISTの創設者たちのビジョンを裏付けるものです。この記事は、OISTのこれまでの成果を肯定するとともに、学際的な科学への新たな投資の必要性を訴えており、私たちもその提言を支持します。」

記事の中で、科学者たちは日本の研究資金戦略について共通の見解を示し、いくつかの改善策を提案しています。具体的には、学際的な科学研究と協力への更なる支援、「ハイリスク・ハイリターン」型の研究への積極的な投資、長期的な視点での資金配分、そして国際基準に見合う高品質な研究インフラの整備・維持が、日本の研究とイノベーションの国際競争力の向上につながると指摘しています。

関連情報
・トランプ2.0の米国科学界への破壊的な衝撃については、例えば、下記のNatureの2月25日社説(a)や、24 February 2025付のニュース記事(b)等をご覧ください。
(a)EDITORIAL:25 February 2025
Trump 2.0: an assault on science anywhere is an assault on science everywhere
US President Donald Trump is taking a wrecking ball to science and to international institutions. The global research community must take a stand against these attacks.
(doi.org/10.1038/d41586-025-00562-w)
社説:2025年2月25日
トランプ2.0: どこであれ科学への攻撃は、どこでも科学への攻撃である
ドナルド・トランプ米大統領は科学と国際機関を破壊しようとしている。世界の研究コミュニティはこうした攻撃に対抗しなければならない。
(b)NEWS:24 February 2025
Postdocs and PhD students hit hard by Trump’s crackdown on science
As US federal grants remain frozen and budget cuts loom, anxiety and fear grip early-career researchers.
By Heidi Ledford & Humberto Basilio
(doi.org/10.1038/d41586-025-00550-0)
ニュース
トランプ大統領の科学弾圧で博士研究員と博士課程の学生が大きな打撃を受ける
米国の連邦政府からの助成金が凍結されたままで予算削減が迫る中、若手研究者たちは不安と恐怖に襲われている。
著者: ハイディ・レッドフォード& ウンベルト・バジリオ

・コンピューター・チップの開発・研究についてのニュース:2例(c),(d)
(c)NEWS:03 May 2024
Who’s making chips for AI? Chinese manufacturers lag behind US tech giants
Researchers in China say they are finding themselves five to ten years behind their US counterparts as export restrictions bite.
By Jonathan O’Callaghan
(doi: https://doi.org/10.1038/d41586-024-01292-1)
ニュース
AI用チップを製造しているのは誰か?中国のメーカーは米国のハイテク大手に遅れをとる
中国の研究者らは、輸出規制の影響で米国の研究者らより5~10年遅れていると感じていると述べている。
著者:ジョナサン・オキャラハン
(d)NEWS:03 March 2025
China research on next-generation computer chips is double the US output
Leading efforts in fields such as optical physics could stymie US export controls designed to stifle the country’s microchip industry.
By Elizabeth Gibney
(doi: https://doi.org/10.1038/d41586-025-00666-3)
ニュース
中国の次世代コンピュータチップ研究は米国の2倍
光物理学などの分野における先駆的な取り組みは、米国のマイクロチップ産業を抑制するために設計された輸出規制を阻止する可能性がある。
著者:エリザベス・ギブニー

 

2-2)ジェミニ・ロボティクスがAIを物理世界に導入
グーグル・ディープマインドは、『ジェミニ・ロボティクスがAIを物理世界に導入』と題する研究成果を2025年3月12日発表しました(ブログ投稿と技術論文。ブログ投稿の著者:カロリーナ・パラダ)。

ブログ投稿の要旨は以下の通り(Copilotによる)。

Google DeepMindは、Gemini 2.0を基盤とした新しいAIモデル「Gemini Robotics」を発表しました。このモデルは、視覚・言語・行動(VLA)モデルであり、物理的な動作を新たな出力形式として加え、ロボットを直接制御することを目的としています。また、Gemini Robotics-ERという高度な空間認識能力を備えたモデルも発表され、ロボット研究者がGeminiの身体性推論(ER)能力を活用して独自のプログラムを実行できるよう設計されています。

これらのモデルは、様々なロボットがこれまで以上に広範な現実世界のタスクを実行することを可能にします。Google DeepMindは、Apptronik社と提携し、次世代の人型ロボットの開発を進めています。また、信頼できるテスターとの協力も開始し、モデルの能力をさらなる探求と実用化に向けた開発を続けています。

Gemini Roboticsは、汎用性、インタラクティブ性、器用さの3つの重要な性質を備えており、多様な状況に適応し、指示や環境変化に迅速に対応し、繊細な作業を実行できる能力を持っています。これにより、家庭から職場まで、様々な場面での活躍が期待されています。

この研究成果は、AIが物理的な世界で人々の役に立ち、真の支援となるための重要な一歩となるでしょう。

(出典)
Google DeepMind Research,「Gemini Robotics brings AI into the physical world」
Published:12 March 2025
Authors:Carolina Parada
(https://deepmind.google/discover/blog/gemini-robotics-brings-ai-into-the-physical-world/?_gl=1*k3pcsx*_up*MQ..*_ga*MTU1MTc2ODQ4Ny4xNzQxOTI4NjM0*_ga_LS8HVHCNQ0*MTc0MTkyODYzNC4xLjAuMTc0MTkyODYzNC4wLjAuMA..)

関連情報
本情報は、以下のNature Newsでも取り上げられています。
NEWS:12 March 2025
Watch DeepMind’s AI robot slam-dunk a basketball
~The firm has incorporated its Gemini artificial-intelligence model into robots to perform fiddly tasks.
By Elizabeth Gibney
ニュース:2025年3月12日
DeepMindのAIロボットがバスケットボールでダンクシュートを決める様子をご覧ください
~同社は、複雑な作業を実行するロボットにジェミニ人工知能モデルを組み込んだ。
著者:エリザベス・ギブニー
(https://www.nature.com/articles/d41586-025-00777-x?utm_source=Live+Audience&utm_campaign=c2cbaca4ef-nature-briefing-daily-20250313&utm_medium=email&utm_term=0_b27a691814-c2cbaca4ef-51850632)
A machine running the AI model Gemini Robotics places a basketball in a hoop.Credit: Google DeepMind

 

2-3)岐阜大学医学部下畑先生からの最新医学情報
・血液脳関門の糖鎖に富んだ層「グリコカリックス」を回復すれば認知機能は向上する!
**岐阜大学医学部下畑先生の3月2日のFB投稿です**
血液脳関門(BBB)は,血液と脳の間に存在するバリアであり,外部からの有害物質が脳に入ることを防ぐとともに,神経細胞の正常な機能維持に重要な役割を果たします.BBBの働きは,脳内血管の内皮細胞,周皮細胞,アストロサイトなどの相互作用によって維持されていますが,そのなかでも「グリコカリックス」という糖鎖に富んだ層が重要であることが最近の研究で注目されています(図1).このグリコカリックスの異常が加齢や神経変性疾患におけるBBBの機能障害に関与していることを明らかにした論文が,スタンフォード大学を中心とするグループからNature誌に掲載されています.
まずマウスを用いて加齢や神経変性疾患がグリコカリックスにどのような影響を与えるかを検討しています.電子顕微鏡を用いた観察により,若齢マウス(3カ月齢)では脳血管の内皮細胞に厚いグリコカリックス層(0.540 ± 0.086 µm)が存在するのに対し,老齢マウス(21カ月齢)ではこの層が顕著に薄くなり(0.232 ± 0.092 µm),グリコカリックスの占める面積比も低下(0.367 ± 0.054 → 0.207 ± 0.047)していることが明らかになりました(図2).さらに,グリコカリックスにおいて重要な「ムチン型O-グリコシル化(mucin-type O-glycosylation)*」が特に低下していることが,RNAシーケンス解析によって確認されました.例えば,この減少に係るC1GALT1遺伝子の発現は加齢によって50%以上低下し,B3GNT3遺伝子も有意に減少していました.この変化は,アルツハイマー病やハンチントン病の患者脳においても共通して見られ,神経疾患におけるBBB機能不全の原因の一つである可能性が示唆されました.
*SerまたはThr残基にO-結合型で糖鎖が付加されるグリコシル化の一種で,特にムチンと呼ばれる高分子糖タンパク質に特徴的な修飾のこと.
つぎにムチン型O-グリコシル化を特異的に分解する酵素「StcE」を用いた実験を行っています.若齢マウスにこの酵素を投与すると,グリコカリックスが急激に破壊され,BBBの透過性が著しく増加することが分かりました.さらにC1GALT1のノックダウンを行っても,BBBの透過性が亢進し,血液成分が脳内に漏れ出し,最終的には脳出血まで引き起こされました(図3).特に,StcEを48時間持続的に投与したマウスでは,BBBのバリア機能が完全に破綻し,脳出血が発生しました.その影響は顕著で,脳内の血管透過性を示すSulfo-NHS-biotinトレーサーの漏出量が約3倍に増加しました.
次に,この異常を修復することでBBBの機能が回復するかどうかを検証するため,C1GALT1とB3GNT3をアデノ随伴ウイルス(AAV)を用いてマウス脳血管に導入しました.この結果,ムチン型O-グリコシル化が回復し,BBBの透過性が改善し,血液成分の漏れが顕著に減少しました.具体的にはトレーサーの漏出量が 50%以上抑制されました.さらに,この処置によって神経炎症が抑制され,認知機能が向上することも確認されました.特にB3GNT3の過剰発現は,老化に伴う神経細胞の遺伝子発現変化を若齢状態に近づける効果を示し,Y迷路テストでは 20%以上のスコア向上,恐怖条件付けテストでは 40%以上の記憶改善が見られました.
本研究のポイントは,BBB機能不全における新たな治療標的としてグリコカリックス,特にムチン型O-グリコシル化が重要であることを示した点です.これまでBBBの機能破綻は,BBBを構成する細胞やタイトジャンクションの異常が主な原因として考えられてきましたが,本研究はグリコカリックスがその根本的な要因の一つであることを示したものです(図4).さらに,AAVを用いた遺伝子治療がBBBの機能回復に有効であることを示唆しており,アルツハイマー病などの神経変性疾患に対する新しい治療戦略としての可能性を拓くものです.今後の課題としては,以下のようになるのではないかと思います.
①ムチン型O-グリコシル化を標的とした治療開発(とくにAAV遺伝子治療)
②グリコカリックスの維持・修復に関与する食事,運動,代謝因子などの解明
③その他の疾患(神経変性疾患,神経免疫疾患,脳血管疾患など)におけるグリコカリックス減少の影響と治療の可能性
とくに③については,どんどん報告が出てくるのではないかと思われます.さらに神経疾患の治療は面白い時代に入ってきたと思います.
Shi SM, et al. Glycocalyx dysregulation impairs blood-brain barrier in ageing and disease. Nature. 2025 Feb 26.(doi.org/10.1038/s41586-025-08589-9)

・帯状疱疹は感染部位によっては明確に認知症リスクを上昇させ,VZVワクチン接種は認知症リスクを低下する!
**岐阜大学医学部下畑先生の3月4日のFB投稿です**
当科の森泰子先生が頑張って取り組んだ総説「認知症の危険因子としての水痘・帯状疱疹感染―スコーピングレビュー」が「臨床神経」誌に掲載されました.水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virus;VZV)が認知症の発症リスクを高めるかどうかを検討するため,2024年6月にPubMedを検索し,基準を満たした21編の論文を対象にスコーピングレビューを行ったものです.対象となった研究の内訳は,システマティックレビュー/メタ解析(SR/MA)が3編,前方視的コホート研究が1編,後方視的コホート研究が12編,症例対照研究が1編,横断研究が1編,基礎研究が3編でした.
【帯状疱疹は感染部位によっては明確に認知症リスクが上昇する】
VZV罹患が認知症発症率を増加させるとしたメタ解析が1編(HR 1.11, 95%CI 1.02–1.21)あった一方,否定するメタ解析も1編(HR 0.99, 95%CI 0.92–1.08)存在し,結論は一致しませんでした.しかし,眼部帯状疱疹になると発症率が6.26倍に上昇する(95%CI 1.30–30.19)という報告や,中枢神経への感染があると6.83倍(95%CI 1.23–37.97)に増加するという報告がありました.以上より,VZVの罹患が認知症のリスクを高めるかどうかの結論は出ていませんが,感染部位によっては明確にリスクが上昇する可能性が示唆されました.
【VZVワクチン接種は認知症リスクを低下する】
ワクチン接種に関しては,認知症発症率を低下させるとしたメタ解析が1編(HR 0.76, 95%CI 0.60–0.96)ありました.さらに6つの観察研究でも発症リスクが低下することが示されており,例えば米国の研究では,発症率が0.69倍(95%CI 0.67–0.72)まで減少したと報告されています.また,英国の大規模研究では,ワクチン接種率が70%に達している国では,そもそもVZV罹患による認知症発症リスクが上昇しない傾向があることも分かりました.
【抗ウイルス薬も認知症リスクを低下する可能性がある】
VZV罹患後に抗ウイルス薬を使用することで認知症発症率が低下するという研究が複数ありました.例えば,台湾のコホート研究では,抗ウイルス薬を使用した群の発症率が0.55倍(95%CI 0.40–0.77)に低下し,韓国の研究でもリスクが0.79倍(95%CI 0.69–0.90)に低下することが示されました.しかし,英国の研究では発症率に影響を与えなかった(P=0.774)という結果もありました.
【アルツハイマー病との関連を示唆する基礎研究が報告されている】
基礎研究では,VZV罹患後にアルツハイマー病様の病態が引き起こされる可能性が示唆されました.具体的には,VZV感染後の脳脊髄液でアミロイドβ42/40比の低下やリン酸化タウの増加が認められ,神経炎症やグリア細胞の活性化が進行することが示されました.またメンデルランダム化解析では,水痘の罹患リスクが高い人では認知症リスクも有意に上昇することが報告されました.
【研究の限界】
対象論文のほとんどが後方視的コホート研究であり,交絡因子の影響を避けることができない点が課題として考えられます.また研究により,対象患者のワクチン接種率や抗ウイルス薬使用率の違いが結果に影響を与えている可能性があります.例えば,VZV罹患が認知症リスクを上昇させないとした研究の多くは,ワクチン接種率や抗ウイルス薬使用率が高い国(英国や米国)で実施されていました.これに対し,VZV罹患が認知症リスクを高めるとした研究の多くは,中国や韓国などワクチン接種率が低い国で行われており,予防医療の普及状況が影響している可能性が示唆されました.
【結論】
VZV罹患が認知症の危険因子である可能性は十分に示唆されるものの,決定的な結論を得るにはさらなる研究が必要と考えられます.今後,前方視的コホート研究や,ワクチン接種や抗ウイルス薬の効果を検証する無作為化比較試験の実施が求められます.
森泰子,大野陽哉,下畑享良.認知症の危険因子としての水痘・帯状疱疹感染―スコーピングレビュー.臨床神経 2025;65:191-196.(doi.org/10.5692/clinicalneurol.cn-002047)オープンアクセス

・アルツハイマー病は単一の疾患ではなく,多様な要因が重なった「症候群」として捉えるべき
**岐阜大学医学部下畑先生の3月6日のFB投稿です**
Nature Reviews Neurology誌のPerspective欄で,アルツハイマー病(AD)が単一の疾患なのか,それとも複数の病態が重なった「症候群」なのか,テルアビブ大学とUCSFの2名の先生が議論しています.
まずADの定義の曖昧さが指摘されています.従来,ADは「アミロイドβ(Aβ)による老人斑とタウによる神経原線維変化が脳内に形成され,進行性の認知機能低下を引き起こす病気」とされてきました.しかし,この定義には複数の問題があります.例えば,①Aβやタウの蓄積があるにもかかわらず認知症を発症しない人が存在すること(resilienceと呼びます),②レビー小体型認知症(DLB)やLATE-NC(limbic predominant age-related TDP43 encephalopathy-neuropathological change)など,他の神経変性疾患でも同様の病理変化が見られること,③ADの神経病理学的変化が必ずしも認知機能の低下と直結するわけではないこと,④Aβの除去が神経変性の進行を止めないこと,です.
以上のような理由から,著者らはADを単一の疾患ではなく,多様な要因が重なった「症候群」として捉えるべきだと主張しています.症候群であると考える根拠としては,まずADの臨床像や病理学的特徴は発症形式によって大きく異なることを挙げています(表).例えば,遺伝性(常染色体顕性)AD(ADAD)では発症年齢が50歳未満と早く,アミロイドβ沈着がより広範囲に及びますが,孤発性晩発型AD(LOAD)は65歳以上で発症し,進行は緩やかで,病理的多様性がより顕著です.また孤発性早発型AD(EOAD)は,病理学的にはADADに似ているものの,タウの蓄積パターンや神経変性の速度が異なることが分かっています.これらの違いは,ADが単一の疾患ではなく,複数の異なる病態が収束したものであることを示唆しています.
またADの発症には多くの遺伝的・環境的要因が関与していることが示されています.ApoE遺伝子のような遺伝因子だけでなく,難聴,高コレステロール血症,高血圧,糖尿病,運動不足,睡眠障害,社会的孤立などの環境因子がADのリスクを高めることが明らかになっています.近年,日本を含めた高所得国ではADの発症率が低下しているという報告もあり,これらのリスク因子への介入がAD発症予防に有効である可能性が示唆されています.
さらに治療の観点からも,ADを単一の病気とみなすことの限界が指摘されています.Aβを標的とした抗体療法(レカネマブ,アデュカヌマブなど)は,Aβの除去には成功しているものの,認知機能の低下を食い止める効果は限定的です.これはAβがADの主因ではなく,より複雑な病態の一部に過ぎない可能性を示唆しています.実際,タウの蓄積や神経炎症,血管障害など,他の病理的要因の影響も無視できません.このため,今後の治療戦略としては,単一の病理に焦点を当てるのではなく,多角的なアプローチを採ることが求められると思います.
著者らは今後の研究では,単に病理学的特徴に基づく分類をするのではなく,個々の患者の遺伝的・環境的背景を考慮した個別化医療の導入が必要であると述べています.さらに,認知症の発症を防ぐためには,Aβの除去だけでなく,生活習慣の改善や多面的な介入を組み合わせることが重要であると指摘してています.私もこの考えの方が科学的だと思いました.抗体療法に関心が集まっていますが,難聴や高コレステロール血症,社会的孤立などの「認知症予防の14因子(https://www.nhk.jp/…/ts/83KL2X1J32/episode/te/21GPX17G6Y/)」に地道に取り組んでいくほうが案外,効果が大きいのではないかと私は思っています.
Korczyn AD, Grinberg LT. Is Alzheimer disease a disease? Nat Rev Neurol. 2024;20:245-251. (doi.org/10.1038/s41582-024-00940-4)

・『Annual Review 神経 2025』予約開始のお知らせ
**岐阜大学医学部下畑先生の3月7日のFB投稿です**
伝統ある『Annual Review 神経』は,本年で40周年の節目を迎えます.この記念すべき年に,鈴木則宏先生ら前編集委員よりバトンを引き継ぎ,矢部一郎先生,杉江和馬先生,中島一郎先生,堀江信貴先生とともに,新たな編集委員として携わることとなりました.
本年度版は,昨年より100ページ増の大幅なボリュームアップを実現し,内容の充実度もさらに向上しております.1月は編集作業に没頭しておりましたが,改めて執筆陣の先生方による総説の質の高さに感銘を受けました.神経領域の最前線を凝縮した決定版となっておりますので,ぜひご期待ください.
ご予約はこちらから
中外医学社HP
https://www.chugaiigaku.jp/item/detail.php?id=4772
アマゾン
https://amzn.to/3XuFICg
【内容のご紹介】
「Basic Neuroscience」では,基礎医学と臨床医学の架け橋となる知識を提供しています.
「本年の動向」では相生成AIと論文執筆,全ゲノム医療,医療DXといった,神経学に革新をもたらす可能性を秘めた技術についても詳述しています.
「Clinical Topics」では,新規血栓溶解薬の開発,新たな遺伝性運動失調症,自己免疫性ノドパチー,認知症とてんかん,機能性神経障害といった近年注目される疾患群や,技術,治療についても詳述しています!

・新たな心血管系疾患の危険因子としてのマイクロ・ナノプラスチック@STROKE2025(大阪)
**岐阜大学医学部下畑先生の3月8日のFB投稿です**
STROKE2025,日本脳卒中学会等3学会合同シンポジウム「脳卒中医学・医療の近未来を予見する」において,豊田一則大会長に貴重な機会をいただき,標題の発表をさせていただきました.マイクロ・ナノプラスチック(MNPs)は環境問題としてだけでなく,人体への健康リスクとしても近年,非常に注目され,次々に新たな研究が発表されています.心血管疾患や脳卒中,認知症との関連が指摘され,病態機序の解明が進められています.講演では,基本的な知識,心血管疾患との関連,そして病態メカニズムについて概説しました.全スライドは以下からご覧いただけます.
https://www.docswell.com/…/800…/ZXE3GY-2025-03-08-075513
1)MNPs総論
マイクロプラスチックは2004年に概念化され,5 mm以下のプラスチック片として定義されました.さらに微細な1 μm未満のものはナノプラスチックと呼ばれ,より吸収されやすい性質を持ちます.MNPsは,消化管にとどまるだけでなく,さまざまな臓器に蓄積することが明らかになっています.特にナノプラスチックは,血液脳関門を通過し,脳内に顕著に蓄積する(10g=クレヨン1本分!)ことが指摘されています.
MNPsの発生源としては,化粧品のマイクロビーズ,自動車タイヤの摩耗による微粒子,布地の繊維,さらにはペットボトルの水やティーバッグからの放出が挙げられます.MNPsには有害な化学物質が含まれており,特にビスフェノールA,フタル酸エステル,臭素系難燃剤などは,循環器障害,内分泌障害,神経毒性を引き起こすことが知られています.
欧州ではMNPsへの規制が進んでおり,化粧品中のマイクロプラスチック使用禁止や洗濯機のフィルター義務化などが行われています.しかし,日本では直接的な規制が進んでおらず,啓発活動や調査研究も遅れています.
2)脳卒中や心血管疾患との関連
近年,MNPsが心血管系の疾患と密接に関わることが報告されています.イタリアの研究では,頸動脈プラークの58%からMNPsが検出され,その存在が心血管イベントの複合リスクを4.53倍に増加させることが示されました.MNPsがプラーク内の炎症を増強させることが関与しており,特にIL-18,IL-1β,TNF-α,IL-6などの炎症性サイトカインの発現が増加していることが確認されています.
また,中国の報告では,脳動脈や冠動脈,深部静脈血栓の80%にMNPsが検出されました.さらに,MNPsが血栓中に高濃度で存在する患者ではD-ダイマー値が上昇し,脳卒中の重症度を示すNIHSSスコアも有意に高くなっていました.
3)病態機序
MNPsは血管内皮細胞に直接影響を及ぼし,酸化ストレスや炎症を引き起こします.動物実験では,ポリスチレンナノプラスチックが大動脈内皮細胞に蓄積し,腸由来の細胞によって吸収させることが確認されています.また,JAK1/STAT3/TFシグナル経路が活性化し,凝固能が亢進することで血栓形成が促進されることが示されました.
このような病態が進行すると,血管障害が生じ,動脈硬化,心筋梗塞,脳卒中のリスクが高まります.さらに,MNPsが神経系にも影響を与え,認知機能低下に関連する可能性があることも指摘されています.
MNPsによる健康被害を防ぐためには,個人レベルと社会レベルの両面での対策が求められます.個人レベルでは,ペットボトルの水やプラスチック製のティーバッグの使用を控える,合成繊維製品の使用を減らす,電子レンジでプラスチック容器を加熱しないといった対応が重要です.一方,社会レベルでは,食品・飲料のプラスチック包装削減,MNPsの生産抑制,人体への影響調査の強化が必要と考えられます.
まとめ
MNPsは,環境汚染の問題だけでなく,心血管疾患や脳卒中の新たな危険因子として認識されるべき物質です.特に,ナノプラスチックは血液脳関門を通過し,脳への影響も懸念されます.動物モデルや臨床研究を通じて,MNPsによる病態機序の解明が進んでいますが,日本では対策が遅れており,今後の研究と政策の整備が急務です.

・病状説明 update ─ 協働意思決定,性差医療,新規治療@Brain Nerve誌2025年3月号
**岐阜大学医学部下畑先生の3月10日のFB投稿です**
編集委員として構想を練った企画した特集号がいよいよ刊行の運びとなりました.本特集は,若手医師のみならず,経験豊かな先生方にとっても,臨床の現場でお役に立つものと確信しております.
近年,神経疾患における患者・家族への病状説明が複雑化し,難しい対応を迫られる場面が増えています.この背景には,協働意思決定(shared decision making)の重要性が増していることや,性差に基づく個別化医療の進展,さらに疾患修飾薬,遺伝子治療,PGT-M(着床前遺伝学的検査)といった新規治療の導入があると考えられます.こうした変化に伴い,病状説明には新たな臨床倫理的課題も生じています.そこで本特集では,協働意思決定,性差医療,新規治療に関わる新しい臨床倫理を踏まえた病状説明のあり方について考察することを目的としました.
まず総論として,
① 神経難病における協働意思決定の倫理的ポイント
② 病状説明における性差の考慮の必要性
③ 遺伝医療と病状説明 の関係
についてエキスパートの先生方に分かりやすく解説いただきました.
さらに,臨床現場において難しい病状説明が求められる「頭痛,パーキンソン病,多発性硬化症/NMOSD,CIDP,重症筋無力症,アルツハイマー病,ALS,MSA,レム睡眠行動異常症」を各論としてエキスパートの先生方にご議論いただきました.各疾患においてどのような点に留意して病状説明を行うべきかを解説するとともに,実践に役立つヒントや具体例をご提示いただきました.患者さんやご家族とのより良い関係を築き,適切な医療提供へとつなげる一助となれば幸いです.最後に,本特集のために本当に素晴らしいご原稿をお寄せくださった執筆陣の先生方に,心より感謝申し上げます.
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目次
◆神経難病における「協働意思決定」の倫理的ポイント──ACP(人生会議)をめぐる誤解と混乱を中心に(板井孝壱郎)
◆性差医学・医療の普及と発展──病状説明で「性差へ配慮」する重要性(片井みゆき,永野拓紀子)
◆遺伝医療の現状と病状説明に必要な留意点(松島理明,柴田有花,矢部一郎)
◆女性のライフステージと片頭痛(五十嵐久佳)
◆パーキンソン病における性差医療と協働意思決定(永井将弘)
◆多発性硬化症,視神経脊髄炎スペクトラム障害における協働意思決定(吉倉延亮,下畑享良)
◆慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP)における病状説明(関口 縁,三澤園子)
◆重症筋無力症における性差と協働意思決定(磯部紀子)
◆アルツハイマー病における診断伝達のポイント(和田健二)
◆筋萎縮性側索硬化症の病状説明(和泉唯信,中山優季)
◆多系統萎縮症の病状説明における困難さ(杉山淳比古)
◆レム睡眠行動障害(RBD)──孤発性RBDにおける予後カウンセリング(宮本雅之)

・ワクチンや抗体によるアミロイドβ除去後,アルツハイマー病脳で神経炎症と補体活性化が生じ持続する !!
**岐阜大学医学部下畑先生の3月11日のFB投稿です**
アルツハイマー病(AD)におけるアミロイドβ(Aβ)を標的とした免疫療法が注目され,Aβを除去することで病態の進行を遅らせることが期待されています.しかしそのメカニズムや影響については未解明な部分が多く残されています.Nature Medicine誌に,米国ノースウェスタン大学の研究チームが,免疫療法を行ったヒト剖検脳の変化を詳細に解析した研究を報告しました.かなり驚きの論文で,治療に関わる人は認識しておくべき論文だと思います.剖検脳を使うものの,従来の病理学とはまったく異なる趣のFigureが続く論文です.しかし結論は比較的シンプルで,ワクチンや抗体薬はミクログリアを活性化してAβを除去するものの,同時に補体系の持続的な活性化,神経炎症,鉄代謝の変化も生じ,かつタウ病理は抑制されないということを述べています.
対象はAN1792ワクチン(能動免疫)試験に参加した13例(Aβ除去が広範な群と,限定的な群に分ける)と,レカネマブ(受動免疫)投与後に死亡した65歳女性(ε4/ε4ホモ.レカネマブ3回投与後脳出血で死亡.tPA使用)の1例の剖検脳,そして対照(疾患対照6例,健常対照6例)です.Aβ除去による脳内変化を比較しました.レカネマブは1例だけなのでどこまで分かるのだろうと思いましたが,空間トランスクリプトミクスとシングルセルRNAシーケンスを用いると,ここまでできるのかと驚きました.
【Aβ除去はミクログリア・マクロファージにより行われる】
AN1792ワクチン接種した脳では,Aβプラークの周囲で,炎症性ミクログリアの活性化の持続が認められました.具体的には,Aβ除去が進むと,TREM2(ミクログリアの活性化を制御する受容体)を発現するミクログリアが活性化すること,またAβの代謝や除去に関わるAPOEの発現も亢進し,APOEを介したAβ除去が行われることが示唆されました(図1).これらはAβを除去するためのミクログリアの変化と考えられました.
一方,レカネマブ治療後の1例では,側頭葉や頭頂葉でAβが顕著に減少し,レカネマブがAβクリアランスを促進していました(図2e).そのかわりIBA1陽性マイクログリアの被覆率(coverage)が約44%に増加し,対照群(nAD)の約15%よりも顕著に高くなっていました(図2f).つまりレカネマブはマイクログリアの活性化を促し,Aβ貪食を強化することでAβを減少させることが示唆されました.
つぎにレカネマブ治療の有無によるミクログリアとマクロファージの遺伝子発現の違いを検討しています.レカネマブ群ではSPP1(オステオポンチン)やAPOC1(アポリポタンパクC1)が上昇し,Aβクリアランスや炎症調節に関与していることが示唆されました.TREM2,APOE,CD68(マクロファージや単球マーカー)など,貪食活性関連遺伝子が上昇し,Aβ除去を促進する可能性が示唆されました.よってレカネマブは,マイクログリア・マクロファージのAβ処理機能を変化させることを示しています(図3j).またSPP1やAPOC1は組織修復を示唆するマーカーで,炎症(Aβの貪食)から組織修復にシフトするものと考えられました.図4hは,レカネマブ治療後の海馬におけるCD68(マクロファージ), IBA1(マイクログリア)がAβプラーク周囲に集積し,貪食している様子を示しています.
【Aβ除去に伴い補体系が活性化する】
AN1792ワクチン接種後のAβリッチな領域における遺伝子発現として,特に補体系(C3)や炎症性サイトカイン(IL6-JAK-STAT3)の活性化が確認されています(図5p).同様にレカネマブ投与後の遺伝子発現でも,補体系(C3)やIL-2–STAT5シグナルの調節異常が確認され,特に炎症関連遺伝子の発現が上昇していることが分かりました.つまりワクチンやレカネマブは,Aβクリアランスを促進する一方で,免疫細胞の活性化を伴う可能性を示唆しています(図5k).またレカネマブ投与例ではARIAに関連する組織球性血管炎(histiocytic vasculitis)を認めました.
【Aβを除去してもタウ病理は持続する】
能動免疫も受動免疫も,大幅なAβ除去にもかかわらずタウ病理が持続していることが示されました.Aβの蓄積が減少しても,タウの異常リン酸化が持続し,神経細胞の機能低下に関与する可能性があります.
【ミクログリアの鉄代謝は変化する】
レカネマブ治療後のミクログリアでは鉄代謝関連遺伝子(FTH1,FTL)が活性化し,酸化ストレスとの関連が示唆されました.またやインターフェロン応答遺伝子(IFI6)が顕著に増加しており,神経炎症の促進が生じている可能性があります.
【考察】
以上のように,Aβ除去に伴い脳内環境に大きな変化,つまりミクログリアの活性化や補体系の持続的な活性化,タウ病理の持続,鉄代謝の変化が生じていることが明らかになりました.現在,抗体療法後の脳萎縮をどのように考えるかでホットな議論がなされていますが(https://tinyurl.com/2d9c5rbf),そのなかの一つの説である「脳萎縮は,Aβが減ったことにより生じる」というような単純な説(アミロイド除去に伴う偽萎縮)は否定して良いように思います.この論文では,脳萎縮との関連は議論していないものの,補体シグナルの過剰な活性化がシナプスを除去したり,神経炎症が神経細胞のアポトーシスを誘導したり,タウリン酸化が進んで変性が進んだり,病的な脳萎縮の進行を促す可能性があるのではないかと思いました.抗体療法によるAβ除去は,アルツハイマー病治療における重要な一歩ですが,光と影の両面があるということを示す論文だと思います.
Gate, D., et al. “Microglial mechanisms drive amyloid-β clearance in immunized patients with Alzheimer’s disease.” Nature Medicine, 2025. https://doi.org/10.1038/s41591-025-03574-1.

・進行性核上性麻痺におけるレム睡眠行動異常症の意義 ―サブタイプや予後予測に有用かもしれない―
**岐阜大学医学部下畑先生の3月13日のFB投稿です**
進行性核上性麻痺(PSP)はタウ蛋白の蓄積により生じるタウオパチーです.これまでレム睡眠行動異常症(RBD)は,主にαシヌクレイノパチー(パーキンソン病,レビー小体型認知症,多系統萎縮症)に関連すると考えられてきましたが,近年,PSPを含むタウオパチーにおいても合併が報告されています.このような背景のもと,中国の研究チームが,PSPにおける自己申告RBDの有病率,臨床的特徴,および18F-florzolotau PETを用いたタウ蓄積との関連を検討した研究が報告されています.個人的にも興味のあるテーマでしたが,タウPETと終夜ポリグラフ検査(PSG)が必要で,実施のハードルが高いと考えていました.そのため,2019年からこの研究を行っていた中国の臨床研究レベルの高さには驚かされました.
対象は2019年から2022年に,MDSのPSP診断基準を満たす148名の患者で,RBDの評価にはREM Sleep Behavior Disorder Single-Question Screen(RBD1Q)が用いられました(つまりPSGは行っていません).この結果,PSP患者の18.2%(27/148人)が自己申告RBDを有していました.特に,PSP-RS(21.7%)とPSP-P(18.5%)で頻度が高く,PSP-PGFでは9.7%,PSP-OM,PSP-SL,PSP-PIでは認められませんでした.自己申告RBDを有する患者は,PSP Rating Scale(PSPrs)の総スコアが有意に高く(38.0 vs 27.0, p=0.002),運動機能や非運動症状の重症度が高いことが示されました.また,タウPETの結果,RBDを有するPSP患者では青斑核と縫線核におけるタウ蓄積が有意に高いことが示されました(p=0.003)(図1A,B).さらに青斑核のタウ蓄積の程度は,RBDの頻度と強く相関していました(r=0.752, p=0.002)(図1C).媒介分析(mediation analysis)の結果,青斑核のタウ蓄積がPSPrsスコアの上昇に関与しており,この関係の一部は自己申告RBDによって媒介されることが示唆されました(媒介割合2.09%, p=0.044)(図2).これらの結果は,タウ病理が睡眠調節機構に影響を及ぼし,RBDの発症を引き起こし,最終的にPSPの重症化につながる可能性を示唆します.
本研究に対するEditorialも掲載されていますが,本研究がPSPのRBDにおけるタウ病理との関連を明確に示した点を高く評価しています.特に,RBDがPSPの重症度や進行と関連していることを指摘し,RBDの存在がPSPのサブタイプ分類や予後予測の精度向上に貢献すると述べています.一方,この研究の限界として,RBDの診断が自己申告であり,ゴールドスタンダードであるPSGが用いられていない点をやはり指摘しています(自己申告ベースのRBDの有病率は,PSGを用いた場合と比較して過大評価される可能性があることが知られています).またPSPとRBDの関連が純粋なタウ病理によるものなのか,あるいは一部の患者ではαシヌクレインの合併病理によるものなのかを明らかにする必要があるとも指摘しています.今後はPSPでもRBDの有無に注目して,サブタイプや予後を検討する必要があります.
1. Li XY, et al. Self-reported REM sleep behavior disorder in patients with progressive supranuclear palsy: clinical and 18F-florzolotau PET imaging findings. Neurology. 2025;104(5):e213376. (doi.org/10.1212/WNL.0000000000213376)
2. Baldelli L, et al. Shedding light on REM sleep behavior disorder in progressive supranuclear palsy: window into neurodegeneration or diagnostic challenge? Neurology. 2025;104:e213449. (doi.org/10.1212/WNL.0000000000213449)

・アルツハイマー病に対するアミロイドβ抗体薬とApoE遺伝子検査に関する臨床倫理的問題@日本臨床倫理学会
**岐阜大学医学部下畑先生の3月17日のFB投稿です**
日本臨床倫理学会第12回年次大会(大会長;福井赤十字病院 髙野誠一郎先生)で口演をしました.専門の医師のみでなく,多くの医療者とこの問題を議論したいと思い,発表をいたしました.内容としてはアミロイドβ抗体薬(レカネマブ,ドナネマブ)の効果や副作用を説明したのち,副作用であるARIA(アミロイド関連画像異常)を予測するApoE遺伝子検査について解説しました.そしてこの遺伝子検査にともなう臨床倫理的問題をご紹介しました.
議論すべきポイントは2つあり,①治療開始前に遺伝子検査をすべきではないのか?②遺伝子検査の結果を開示すべきか,否か?です.私の立場は①は治療の協働意思決定のために,ApoE遺伝子検査を行える体制を早急に整えるべきである,②は遺伝子検査の結果について「知る権利」「知らないでいる権利」の両者を保証する必要があるが,後者はこの治療の場合きわめて難しく,専門医のみでなく,多くの関係者との議論が必要である,というものです.
口演後の質疑では「アルツハイマー病の診断はいつの時点で可能になるのか?(発症前のバイオマーカー診断の可能性)」,「抗体薬を使用できない場合の治療の現状は?」といった重要なご質問をいただきました.また「抗体薬の名前は知っていたが,遺伝子診断のことは初めて聞いた」「外来で導入後の継続投与を行っているが,ApoE遺伝子の情報は知らなかった」「薬剤師として治療の安全性向上のためにもっと関わりたい」などのご意見を複数いただき,この検査と臨床倫理的問題をもっと啓発する必要性を改めて感じました.使用したスライドは以下よりご覧いただけます.
https://www.docswell.com/…/800…/K7R3GV-2025-03-16-054257
また脳神経内科領域の演題では,京都大学の松本理器教授による「てんかんとStigma~臨床の現場から~」という教育講演は大変勉強になりました.self-stigma(誤った情報を自分に当てはめてしまうことによる烙印感)や,てんかんに対する社会の誤解を払拭するには「多職種による試み」が必要であるという主張はとても納得できるものでした.多くの医療者に参加していただきたい学会です.

・2050年に世界のパーキンソン病患者数は2倍以上に増加する ―日本は約21.9万人になる―
**岐阜大学医学部下畑先生の3月18日のFB投稿です**
BMJ誌に掲載された北京大学からの研究で,2021年の世界的疾病負荷研究(Global Burden of Disease Study 2021)に基づき,2050年までのパーキンソン病(PD)の有病率を予測しています.世界のパーキンソン病患者数は2021年の1189万人から,2050年には2倍以上の2520万人(112%増加)に達すると予測されています.図1では1990年から2050年にかけての世界のPD患者数の推移が示されていて,その増加は一目瞭然です.2018年に「世界のPD患者数が増加し,パンデミック状態になる」という有名な論文が発表されましたが(Dorsey ER et al. JAMA Neurol. 2018;75:9-10),見比べるとその増加よりも良い大きいです.
この増加の主な要因は,人口の高齢化が89%,人口増加が20%,有病率自体の変化が3%とのことです(要因の重複や相互作用により合計100%を超えます).特に東アジアは1090万人に達すると予測されており,世界で最も多くの患者を抱える地域となります(中国が世界最多の1052万人,次いでインドが約277万人です).また最も急激な増加率を示すのはアフリカで,西アフリカで292%の増加,東アフリカで246%の増加です.図2では,社会経済レベル(SDI)と年齢別の有病率が示されており,特に中所得国(中SDI)と,60-79歳において患者数の急増が予測されています.
図3では,2050年のPD患者数が最も多い国トップ10を示しています.日本は1990年の8位から2050年の21位に順位は大きく低下しています.患者数でみると,1990年から2021年にかけて約11.1万人から19.9万人に急増していますが,その後,ごく緩やかに増加し,2050年には約21.9万人になると予測されています.他国と比較すると増加のフェーズがすでに終わっているようですが,そうは言っても患者数が減少することはないので,医療や介護の負担は依然として大きな課題と考えられます.予防策や早期診断の強化,さらに患者のQOL向上を目指した包括的な支援が求められます.
Su D, et al. Projections for prevalence of Parkinson’s disease and its driving factors in 195 countries and territories to 2050: modelling study of Global Burden of Disease Study 2021. BMJ. 2025;388:e080952.

・新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(3月20日)
**岐阜大学医学部下畑先生の3月20日のFB投稿です**
今回のキーワードは,オミクロン以降,自然感染による集団免疫の獲得は困難になった,インフルエンザとコロナワクチンを同時接種する場合,異なる腕に接種したほうが良い,COVID後の嗅覚低下は脳の構造変化と認知機能低下と関連する,COVID-19はアルツハイマー病様バイオマーカー変化(Aβ42:Aβ40比の低下とpTau-181上昇)をもたらす,小児多臓器炎症性症候群(MIS-C)はTGFβの過剰産生によるEBウイルスの再活性化により生じる,免疫抑制患者における抗スパイク抗体陰性は感染と入院のリスクを示唆する,SARS-CoV-2の持続感染を標的としたlong COVID臨床試験を議論した総説が発表された,免疫吸着療法はCOVID後の筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群を改善する可能性がある,です.
認知症や神経免疫疾患の領域で,ウイルス感染が病態に深く関わっているという報告が相次いでいます.今回もアルツハイマー病とCOVID-19,MIS-CとEBウイルス再活性化など,ウイルス感染の神経系への影響が議論されています.
FBで読みにくい方はブログ(https://tinyurl.com/272xjjsh)をご覧ください.
◆オミクロン以降,自然感染による集団免疫の獲得は困難になった.
カタールから,オミクロン前後の自然感染による再感染予防効果を比較した研究が報告された.オミクロン以前の感染は,再感染を80%以上の確率で防ぎ,その効果は1年以上持続した(図1).一方,オミクロン以降の感染は,3〜6か月後に81.3%あった予防効果が,6〜9か月後には59.8%,9〜12か月後には27.5%まで低下し,1年後にはほぼゼロになった.ただし重症化を防ぐ効果はオミクロン前後とも98〜100%と高く維持されていた.この変化の背景には,ウイルスの進化の違いがある.オミクロン以前は感染力の強化がウイルスの進化の目的であったが,オミクロン以降は免疫回避が優先されるようになった.この結果,自然免疫の持続期間が短くなり,一度感染しても再感染する可能性が高まったものと考えられる.つまり長期的な免疫の維持には定期的なワクチン接種が不可欠であることが示唆される.
Chemaitelly H, et al. Differential protection against SARS-CoV-2 reinfection pre- and post-Omicron. Nature (2025).(doi.org/10.1038/s41586-024-08511-9)
◆インフルエンザとコロナワクチンを同時接種する場合,異なる腕に接種したほうが良い.
インフルエンザワクチンとコロナワクチンの接種部位が免疫応答に影響を与えるか検討した研究がオーストラリアから報告された.四価不活化インフルエンザワクチン(Afluria)とSARS-CoV-2 mRNAワクチン(Moderna XBB.1.5)を同時に接種する際,同じ腕に接種する場合と異なる腕に接種する場合を比較した.成人56名を対象にランダム化試験を実施し,接種28日後の抗体価を測定した.この結果,インフルエンザワクチンの抗体価には接種部位による有意差は認めなかったが(P=0.30;図2中),SARS-CoV-2ワクチンの免疫応答には差がみられ,異なる腕に接種した群ではBA.5株および祖先株に対する中和抗体価の上昇が大きく有意差を認めた(P=0.01, 0.02:図2右).副反応は同じ腕に接種した群では腫れや発赤の報告が多かった(9件 vs 2件).以上より,インフルエンザワクチンの免疫応答は接種部位の影響を受けないが,コロナワクチンは異なる腕に接種した方が免疫応答が高まる可能性が示された.
Lee WS, et al. Randomized trial of same- versus opposite-arm coadministration of inactivated influenza and SARS-CoV-2 mRNA vaccines. JCI Insight. 2025 Jan 9;10(4):e187075.(doi.org/10.1172/jci.insight.187075)
◆COVID後の嗅覚低下は,脳の構造変化と認知機能低下と関連する.
トルコから,COVID後の嗅覚低下が,脳構造および認知機能に及ぼす影響を検討した研究が報告された.対象は軽症COVID-19から回復した嗅覚低下群36人,正常嗅覚群21人,健常対照群25人とした.結果は,認知機能(アデンブルーク認知検査改訂版)は,嗅覚低下群が健常対照群と比較して低下し,特に言語スコアが低かった(p = 0.04およびp = 0.037).嗅覚低下群では,正常嗅覚群および健常対照群と比較して,左右の嗅球体積が減少していた(p = 0.003およびp = 0.006)(図3).皮質厚分析では,嗅覚低下群では健常対照群と比較して,左外側眼窩前頭皮質が有意に薄くなっていた.以上より,COVID-19後の嗅覚低下は単に一過性の症状ではなく,脳の構造変化と認知機能低下をもたらす可能性がある.ただし異なる変異株(α,δ,ο)による影響の違いは評価していない.
Gezegen H, et al. Cognitive deficits and cortical volume loss in COVID-19-related hyposmia. Eur J Neurol. 2025 Jan;32(1):e16378.(doi.org/10.1111/ene.16378)
◆COVID-19はアルツハイマー病様バイオマーカー変化(Aβ42:Aβ40比の低下とpTau-181上昇)をもたらす.
ウイルス感染が認知症のリスクを高める可能性が示唆されている.SARS-CoV-2ウイルス感染でも同様の可能性が指摘されている.この可能性を検証する目的で,英国のUKバイオバンクに登録された1252名(対照626名)を対象に,感染前後の血漿プロテオミクス解析を実施した研究が報告された.結果としては,まずSARS-CoV-2感染者では認知機能スコアが低下し(P = 0.029),頭部MRIではアルツハイマー病(AD)に関連する構造的変化が生じていた.またSARS-CoV-2感染は,アミロイド病理のバイオマーカーと関連していた.具体的には血漿Aβ42:Aβ40比が減少していた(P = 0.0006;図4).この影響は4年間の加齢やAPOE遺伝子ε4ヘテロ接合の影響に匹敵した.またCOVID-19の重症度が高いほど, 血漿Aβ42:Aβ40比の低下が顕著で,入院歴のある患者では2倍以上の減少を認めた.さらに加齢と感染の相互作用を考慮するとpTau-181が有意に増加し(P = 0.017),高齢者ほど顕著であった.またバイオマーカーの変化は,高血圧の人ほど顕著であった.以上より,COVID-19は将来的なAD発症のリスクを高める可能性がある.
Duff EP, et al. Plasma proteomic evidence for increased β-amyloid pathology after SARS-CoV-2 infection. Nat Med. 2025 Jan 30.(doi.org/10.1038/s41591-024-03426-4)
◆小児多臓器炎症性症候群(MIS-C)はTGFβの過剰産生によるEBウイルスの再活性化により生じる.
SARS-CoV-2感染から4~8週間後に,小児多臓器炎症性症候群(MIS-C)と呼ばれる川崎病類似の高炎症性の病態が生じうる.ドイツなどによる国際研究で,MIS-CはSARS-CoV-2感染がTGFβを介して免疫機能を抑制することでEBウイルスが再活性化し,過剰な免疫応答を引き起こすことが明らかにされた.まずMIS-C患者の血清TGFβ値(中央値:398 pg/ml)は,健常小児(132.2 pg/ml)や非MIS-C感染児(63 pg/ml)と比べて大幅に高く,重症成人患者(415 pg/ml)と同程度であった(図5左).さらに免疫療法後,MIS-C患者のTGFβレベルは低下し,炎症反応も緩和された(図5右).またこのTGFβの過剰産生がT細胞の機能不全を引き起こすことも示された.具体的には,MIS-C患者のT細胞は,ウイルス抗原に対する反応性が著しく低下しており,特にCD4+およびCD8+メモリーT細胞の活性化マーカーであるCD69の発現が抑制されていた.この免疫抑制状態は,TGFβの中和抗体で回復し,T細胞の抗原特異的応答が改善したことから,TGFβがT細胞の機能を障害することが示唆された.さらにT細胞受容体(TCR)レパトアを解析したところ,EBVに特異的なT細胞の増殖が確認された.特にTCRVβ21.3+ T細胞が顕著に増加しており,これはEBV感染B細胞を排除するためのクローンと一致していた.加えて,MIS-C患者の血清はEBVの再活性化を誘導する作用を持っていた.以上より,TGFβの過剰産生がT細胞の細胞傷害活性を抑制し,EBVの再活性化を招くことで炎症が悪化するものと考えられた.実際にMIS-C患者ではEBVの血清陽性率が健常小児よりも高く(81.4% vs. 16.7%),MIS-CがEBV関連疾患の一形態である可能性も示唆された.
Goetzke CC, et al. TGFβ links EBV to multisystem inflammatory syndrome in children. Nature (2025). (doi.org/10.1038/s41586-025-08697-6)
◆免疫抑制患者における抗スパイク抗体陰性は感染と入院のリスクを示唆する.
英国から,免疫抑制患者におけるSARS-CoV-2スパイク抗体(S抗体)の有無が,COVID-19感染や入院リスクにどのような影響を与えるかを調査したMELODY研究(前向きコホート研究)が報告された.免疫抑制患者として,3グループ(臓器移植患者,自己免疫性・リウマチ性疾患患者,リンパ性悪性腫瘍患者)を募集し,6か月間追跡調査した.S抗体の検出率はそれぞれ,77.0%,85.9%, 79.3%であった.S抗体が検出されることは感染率の低下と独立して関連しており,感染率比は3グループで,それぞれ0.69,0.57,0.62と有意に低下した.S抗体の検出は入院率の低下とも関連しており,それぞれ0.40,0.32,0.41であった.以上より,免疫抑制状態にある人におけるS抗体の評価は,最もリスクの高い免疫抑制状態にある人々を特定し,個々人に合わせた予防策を講じることに役立つ.
Mumford L, et al. Impact of SARS-CoV-2 spike antibody positivity on infection and hospitalisation rates in immunosuppressed populations during the omicron period: the MELODY study. Lancet. 2025 Jan 25;405(10475):314-328.(doi.org/10.1016/S0140-6736(24)02560-1)
◆SARS-CoV-2の持続感染を標的としたlong COVID臨床試験を議論した総説が発表された.
SARS-CoV-2ウイルスが,数カ月から数年にわたり持続感染する証拠が増えてきており,これがlong COVIDを引き起こす可能性がある.このため持続感染を標的とした臨床試験が急務であり,抗ウイルス薬やモノクローナル抗体の試験がいくつか進行中である(図6).しかし持続感染のメカニズムは完全に解明されていないため,候補治療薬の作用機序,参加者の選択,治療期間,リザーバーに関連するバイオマーカーや測定項目の標準化,転帰評価などに関する考慮が必要である.
Proal AD, et al. Targeting the SARS-CoV-2 reservoir in long COVID. Lancet Infect Dis. 10 Feb, 2025.
(doi.org/10.1016/S1473-3099(24)00769-2)
◆免疫吸着療法はCOVID後の筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群を改善する可能性がある.
SARS-CoV-2感染は筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の誘因と考えられている.ドイツより,COVID後ME/CFSに対する免疫吸着療法の有効性を検討した研究が報告された.交感神経系のβ2アドレナリン作動性自己抗体(β2 AR-AB)の上昇が認められた患者20人を対象とした.罹病期間中央値22ヵ月の患者が,5回の免疫吸着療法を受けた.主要エンドポイントは,免疫吸着後4週間までのSF36 Health Survey身体機能領域(SF36 PF)の変化とした.治療の忍容性は良好で,IgG総量は79%減少,β2 AR-ABは77%減少した.患者はSF36 PFが平均17.75点改善し,最も大きな改善は2~3ヵ月目にかけて認められ,効果は6ヵ月目まで維持された(図7).14/20人(70%)の患者が,SF36 PFが10ポイント以上上昇し,反応ありと判定された.さらに,疲労,労作後倦怠感,疼痛,認知,自律神経,免疫学的症状の改善も認めた.この疾患の病態において自己抗体が重要な役割を担っていることを示唆している.
Stein E, et al. Efficacy of repeated immunoadsorption in patients with post-COVID myalgic encephalomyelitis/chronic fatigue syndrome and elevated β2-adrenergic receptor autoantibodies: a prospective cohort study. Lancet Reg Health Eur. 2024 Dec 12;49:101161. (doi.org/10.1016/j.lanepe.2024.101161)

・パーキンソン病との付き合い方
**岐阜大学医学部下畑先生の3月23日のFB投稿です**
岡山脳神経内科クリニック柏原健一先生に貴重な機会をいただき,「市民公開講座 第42回パーキンソン病健康教室 in 岡山」で講演をさせていただきました.「パーキンソン病との付き合い方」という講演タイトルをいただきましたが,私の考える付き合い方のコツは,この病気に対する「正しい知識を持つこと」です.症状と対策,治療法について正しく理解することが大切であることをお伝えしました.
具体的には,運動症状(振戦,筋強剛,運動緩慢,姿勢保持障害),非運動症状(痛み,睡眠障害,認知症,厳格など),そして薬による運動合併症について解説しました.治療法としては抗パーキンソン病薬の種類やその特徴,デバイス補助療法についてもご紹介しました.さらに非運動症状への対策や,外科手術のときの対応についてもお話しました.
私のほか「パーキンソン病の食事の工夫」や「パーキンソン病にともなう認知症の予防方法」に関して管理栄養士の堀川三由紀先生,作業療法士の谷原湧大先生からもご講演があり,とても勉強になりましたし,とても楽しい会になりました.私の使用したスライドは以下からご覧いただけます.もしお役に立つものがありましたらご使用いただければと思います.
https://www.docswell.com/…/800…/Z82QEQ-2025-03-23-060802

・知っておきたい成人ADHD(注意欠如・多動症)の診かた,5つのポイント
**岐阜大学医学部下畑先生の3月25日のFB投稿です**
Neurology Clinical Practice誌の論文です.いままで成人のADHD(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder;注意欠如・多動症)患者さんを診察室で見逃していたのかもと思いました. ADHDは子どもの病気という印象が強いですが,成人になって初めて診断される人も少なくないそうです.しかも彼らが最初に受診するのは精神科とは限らず,脳神経内科であることも多そうです.以下,疑うべき症状,外来受診のパターン,診断のコツのまとめです.
【成人のADHDを疑うべき症状】
以下のような症状が,複数の場面(職場・家庭・人間関係など)でみられるときADHDを疑う.
1. 注意・集中力が持続しにくい(=注意欠如)
2. 物事の計画や整理が苦手
3. 衝動的に行動してしまう
4. 落ち着きがなく,じっとしていられない(=多動)
5. 日常生活での忘れ物やミスが多い
【外来の受診パターン】
1.物忘れ・注意力低下を主訴として受診する
本人や家族がMCIや若年性認知症を心配して受診する.実際にADHD由来の注意・記憶の問題である症例が含まれる.
2.頭痛や不眠,疲労などの身体症状を訴える
慢性的な頭痛,睡眠障害,易疲労感などを主訴に受診する.背景にストレスや自己管理の難しさがあり,それがADHDによる場合がある.
3.多忙な社会人で,精神科への抵抗感がある
精神科ではなく,より受診しやすい「脳神経内科」を選ぶ人も多い.「脳の異常がないか確認したい」という動機もある.
4.他科からの紹介
心療内科,総合診療科,産業医などから「注意力の問題があり,認知機能評価を」と依頼される.
【診断のコツ】
ADHDの診断は,詳細な問診と観察によってなされる.以下のポイントを意識すると,診断の精度が高まる.
• 症状が子どもの頃からあったかを確認する(発症年齢が鍵)
• 家庭・職場など複数の場面で困っているかを確認する
• 各症状について「具体的な例を教えてください」と尋ねる
• 診察時の様子を観察する(遅刻・落ち着きのなさ・話が飛ぶなど)
• 家族歴の聴取をする(家族に類似の特性がないか)
• 本人が意識していない補償行動に注目(大量のメモ,人の真似,パートナーへの依存など)
• 不安,うつ,睡眠障害,薬物の影響などの鑑別診断を確認する
ADHDを正しく診断することで,患者さんは自分の行動特性を理解し,対処法を学び,人生を前向きに歩むことができるようになります.脳神経内科医としてもよく勉強して,「この患者さん,もしかして……」と思ったら,一歩踏み込んだ問診が必要だと思いました.
Mierau SB. Do I Have ADHD? Diagnosis of ADHD in Adulthood and Its Mimics in the Neurology Clinic. Neurol Clin Pract. 2025 Feb;15(1):e200433.(doi.org/10.1212/CPJ.0000000000200433)

・AIによる小脳性運動失調症の正診率90.9%時代に脳神経内科医に求められるものは?
**岐阜大学医学部下畑先生の3月28日のFB投稿です**
Mov Disord誌の衝撃的な論文です.小脳性運動失調症は稀なものも含めると300種類以上の疾患を鑑別する必要がありますが,アルゼンチンのチームは,AIによる驚きの仮想アシスタントを開発しました.OMIM,Orphanet,GeneReviewsなどの情報源から151の運動失調症を選び,臨床像を抽出し,決定木アルゴリズムを構築して作成しました.性別や発症年齢,臨床所見などの質問を通じて(図1,2),回答として鑑別診断リストを提示します.有効性の検証は,文献から抽出した453の遺伝性・非遺伝性の症例を用いました.その結果,仮想アシスタントの正診率は90.9%,一方,運動異常症専門医21人は平均で18.3%,chat GPT-4は19.4%でした!(図3)GPT-4は架空の疾患名(いわゆるハルチネーション)を7件も回答しました.
なぜ運動異常症専門医の正診率がこんなに低いのか疑問でしたが,453症例には頻度の高い疾患から極めて稀な疾患まで均等に含まれているためでした.例えばSCAではタイプ1から50まですべて3例ずつ,常染色体潜性失調症(SCAR)もみな3例,そのほかAOA1/2/4,NPC,CTX,Sandhoff,Tay-Sachs,Sialidosis,Gordon Holmes,Joubert,Lafora,KSS,HSP7,FXTASのような稀ながら知っている疾患から,pontocerebellar hypoplasia type 11,ceroid lipofuscinosis type 11,C9orf72-ataxiaなどよく知らない疾患まで含まれていました.
「正解がある問題に対してはもはやAIに敵わない」と思いました.教室の若いドクターにも「みんなはこういう時代に診療することになるんだよ」と話しました.じつは最近読んだ,大変勉強になった本「人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20(山口周著.図4)https://amzn.to/42ipRJQ」に以下の記載がありました.人間が担ってきた認知的労働がAIにより代替されることへの3つの対抗策として,
1)正解のある仕事を避ける
2)感性的・感情的な知性を高める
3)問題を提起する力を高める
が挙げられていました.
1)は正解を出す能力の価値が下がる時代に突入することをまず意識しなさいということだと思います.2)の感性的・感情的な知性を高めるとは,感情を読み取る力や共感力(empathy),心に響く伝え方といったストーリーテリングの力などの人間ならではの知性を磨きなさいということだと思います.幸いAIには他者の気持ちを察したり,場の空気を感じ取ったりすることはまだ困難です.3)は正解を出す能力が過剰に提供されると,ボトルネックとなるのはその前のステップ「課題設定のプロセス」ということです.医師として,研究者として何に取り組むのか,取り組むべき課題はなにかを考える力を磨きなさいということです.そして2)3)の力を高めるためには,医学の知識だけではダメで,教養=リベラルアーツが求められることになると思います.
結論として,これからの時代の脳神経内科医は,診断はAIに任せるにしても,神経症候をきちんと正しく取ること,感情・感性を磨くこと,さらに自身や社会が取り組むべき課題を見極めることが大切なのだと思います.
Alessandro L, et al. Artificial Intelligence-Based Virtual Assistant for the Diagnostic Approach of Chronic Ataxias. Mov Disord. 2025 Mar 22.(doi.org/10.1002/mds.30168)

関連情報
岐阜大学医学部下畑先生は最新の医学情報を活発に発信されています。前月中のFB投稿については『2025年2月のニュース』をご覧下さい。

(作成者)峯岸 瑛(みねぎし あきら)