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AIと医療 MDS2026(ソウル) mGluR1抗体関連小脳性運動失調症 T細胞がつなぐタウ病理と神経変性 アルツハイマー病 ナルコレプシー治療 マイクロプラスチック レカネマブ治療に伴う「バイオマーカーの乖離」 下畑先生の新著書 学会に行く意義 片頭痛研究の巨匠Jes Olesen教授 第1回日本機能性神経障害(FND)研究会 脳梗塞の幹細胞治療 脳神経内科の新しい教科書、予約開始 自己免疫性脳炎 自己免疫性運動異常症 進行性多巣性白質脳症(PML) 重症筋無力症(MG) 閃輝暗点は脳内を毎分3 mmで進む 隠れた状態にあるミクログリア

2026年10月のニュース

秋の便りが届き始めました。下畑先生の新著発行や脳神経内科の新しい教科書の予約もスタートします。私もプレプリント投稿用の原稿を2つ、AIとの共作で初めて書いてみました。『3.特別企画:「Switching Science」はどのように生まれたか』で紹介しています。

1.2026年10月の活動状況
・スマイルチームさんの投稿
20261001 毎月第一木曜日の午前中は #スマイルチーム #ポールウォーキング 9月はまるまる雨☔、、、でしたねぇ、、😮‍💨 今日から10月スタート。 見事に晴れました☀️ いつものように スマイルチームはコミュニティ重視のポールウォーキング。 『ようやく雨上がったねー』 から始まって あんなこと こんなこと そんなこと を話して聞いて、、、な、ポールウォーキング。 目標地点に着いてからは それぞれそこから自由に あっち行って こっち行って そっち行って なので、ゴール地点は人数も半分ほどに。 久しぶりの晴天下での仲良し楽しウォーキング。 最高でした❣️ #相模原市南区 #相模大野 #丸十パン 20261001記

・田村 芙美子さんの投稿
渋谷介護予防事業ポールウォーキング教室も3学期を迎えました。膝術後の方は整形外科医師にリハビリにPWを勧められたそうです。(素晴らしい対応) 渋谷西武百貨店は先月末で58年の幕をおろしました。今朝全てのショウウィンドウに真っ黒なシャッターが下ろされたその前を通ってじわじわとした思いが込み上げてきました。ISSEY MIYAKEや寛斎にかぶれていた私の青春時代。大学の友人もB館に紳士服店を出していた頃もあります。最近は寄ることもなかったけれど、寂しいなぁ~。 でも午前のPW教室を終えて午後からは鎌倉みらいふると社協主催の元気鎌倉教養講座に駆けつけ、養老孟司さんの講演、そして極めて珍しい女性口笛・オルゴール・ピアノトリオのコンサートの心に沁みるお話と音楽に感銘を受け夕方帰宅しました。道々口を尖らせて音のでない空気笛を吹きながら~~♪

・中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より 10/3〜4さく市/佐久市と佐久商工会議所の主催の商工業サービス業展会場にて本日4日はPW例会でした。 60名越えの参加者で佐久大学看護学部生13名も交えてのPW散歩〜 時折の冷たい秋風の中、会場隣の牧場を中心の歩きでした。 次回は10/25希望者での 〜小布施バス巡り〜です。 秋を🍂堪能して来ます〜ww

・台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
2026/10/3(六),由秋月教練舉辦的冬山河皮克敏好友見面會 結合運動與遊戲,實在是太有趣了!來到宜蘭冬山河,帶著健走杖、跟著皮克敏一起出發! 雙杖在手,不只是健走,更是一場充滿樂趣的輕旅行!動動雙腳,鍛鍊體力 活用雙杖,增加運動趣味 與皮克敏一起走,沿途探索驚喜 融入自然,享受冬山河的好風景讓運動不再只是「走路」,而是邊玩、邊探索、邊交朋友! 健走杖x皮克敏,一起走出健康,留下滿滿回憶!#台灣健走杖運動推廣協會 #不倒翁健走學校 #紐約生動館 #冬山鄉農會

・とちぎポールウォーキング会さんの投稿
パナソニック松愛会に皆さんの健康ウォークのポールウォーキングでした。会場は上河内せせらぎ公園を中心に御用側堤防ウォーキング、お昼は松愛会の手打ちそばごちそうになりました。

・一般社団法人ソーシャルフィットネス協会さんの投稿
サロン事業(介護予防教室)はファッションショー形式で非日常性を演出 ソーシャルフィットネス協会では、全国の自治体・地域包括支援センターや自治会・町内会から孤立防止・お出掛け促進を目的としたサロン事業の要請をうけ、地域在住コーチが地域で活躍してくれています。 最近の傾向として、「より愉しく」「非日常的なハレの日的」な健康サロン事業提案が増えてきました。 SFAでは、そうした声にこたえるために「ファッションショー形式歩き方教室」の提案してます。ポイントは以下のとおりです。 1)人の歩容を観る、また観られることによる程よい緊張感と新たな発見 2)2班に分け、つながりと休憩を兼ねた無理のない教室進行 3)「心理的安全性」に配慮し、計算された学習プロセスによる進行 特に3つめの学習プロセス【説明→デモ→グループ班別にやってみる(他グループは観察)→交代→皆でやってみる→できた!!】を廻しながら、いかに小さな発見と成功体験を積み上げるかに注力します。 結果は、想定以上のアウトプットが得られことにびっくりします。皆さんも是非次回の教室で試してみてください。特に狭い会場でもグループ分け(必要に応じて3~4班でも可)により、実践可能となる点も一押しです!

・校條 諭さんの投稿
10月の気まポ(気ままにポール歩き)は新宿「六」福神 七福神のうち、神楽坂の毘沙門天を除く6箇所を巡りました。 天気快晴。10月10日は1964年に東京オリンピックの開会式が行われた日で、晴れの特異日と言われていますね。 コースは下記です。 牛込柳町駅近くの経王寺・大黒天~(大江戸線で東新宿まで移動)~稲荷鬼王神社・恵比寿神~永福寺・福禄寿、厳島神社・弁財天、法善寺・寿老人~西向天神社~太宗寺・布袋尊 時間が余ったら新宿御苑に入るつもりが、まったく余らず。休んでばかりでしたが、楽しいポール歩きでした。 なお、御朱印を集めている人は3人でした。 ※写真の大部分は田村和史さんからもらいました。

・Masako Shinchiさんの投稿
久しぶりの・・・ ウォーキングポールを相棒に 仲間とめぐる小さな旅 ぽる旅👬 今日は茨城県石岡市の常陸風土記の丘へ とびっきりの晴天と、2ヶ月ぶりに見るメンバーの元気そうな顔に気持ちが弾みます😊 ここは桜と古代蓮が有名ですが、パンフレットに書かれた「太古の世界へタイムスリップ!」という言葉が、ピッタリな場所。高速道路の工事で発見、発掘された遺跡の一部が復元され、遠い昔の人の暮らしがここにあったことを実感させられます。 有料エリアも一度は見て損はないと思いますよ👌 以前から狙っていた人気の食事処で不定期に登場する人気のカレーも味わうことができ、満腹満足な旅でした😄 来月は紅葉🍁を求めて水戸市偕楽園を旅する予定です

・台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
「每月11日,雙杖健走日」,光輝十月 10.11 雙杖漫步竹北西區~ 今天匯集上百位參加的民眾,從新崙公園出發,沿著豆子埔溪,散策西區認識在地農田、水圳與聚落, 走訪傳統特色大同米行、采田福地。 大家一起走、一起學,開心歡樂把健康帶回生活裡,感動。 秀玲代表(BC教練)是竹北地區健走杖運動推廣的先行者,她用實際行動力,讓更多社區民眾接觸健走杖運動,走出健康,走出快樂😄 感謝今天一起同行的夥伴與教練、志工朋友們,因為有你們,活動順利圓滿成功! 感謝麗玲教練的籌備規劃、郭醫師的健走杖教學、蘇雍賀教練的率領陣容、Andy、講容、Roger、均萍、美玲、宏仁等教練群💯 #雙杖在手健康跟著走 #不倒翁學校 #大健康產業整合發展協會 #黑皮漾家園 Happy Young Family #歡樂青春智慧健康

・杉浦 伸郎さんの投稿
「心なき身にもあはれは知られけり 鴫立澤の秋の夕暮」            西行法師がこの歌を詠んだ大磯の地。 1か月前、鎌倉から海と自然に恵まれた神奈川県中郡大磯町に移り住み、少しずつ暮らしの基盤を整えています。 秋の深まりとともに、先人たちに想いを馳せ、この土地ならではの風情をしみじみと感じる今日この頃です。 そして昨日、初孫が誕生しました。 新天地での暮らしと、新しい命の誕生。人生の新たな章が始まったように感じています。 荒波だらけの後半戦でしたが、これからは肩の力を抜き、地に足をつけ、よりシンプルに、自分らしく歩んでいきたいと思います。 長らくのご無沙汰をお詫びしつつ、近況のご報告まで。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。 “Just a little life update: Last month, I moved from Kamakura to Oiso, and I’ve also become a grandfather for the first time!”

・柳澤 光宏さんの投稿
先日は母がもらってきた松茸をおこぼれでいただきました(^.^)焼くのが一番いい‼️ 今日は夜だけ東京に。お世話になっている経営者が本をだされての出版記念バーティへ。自分は出版しただけで何もしなかったので、とても勉強になるだろうし、経営者の皆さんにお会いできるのが楽しみです(^.^)

・遠藤 恵子さんの投稿
【ローゼルジャム🌺🍎】 去年、初めて育てたローゼル🌺 収穫して冷凍保存していたことを思い出し……🤣 りんご🍎と一緒にコトコト煮込んで、ジャムを作ってみました! 初めてのチャレンジ✨️ ちょい酸っぱで、いい感じに美味しくできました🫶 自分で育てたものを収穫して、保存して、調理する。 こういう楽しみもいいものですね😊 来年はもっと上手に育てて、早めにジャム作りを楽しみたいと思います🌺🍎 #ローゼル #ローゼルジャム #手作りジャム #家庭菜園 #初挑戦

・とちぎポールウォーキング会さんの投稿
豊郷台3丁目ウォーキング教室でした。ポールウォーキングとバランスレクリエーションとスラックラインボールダーツでした。

・校條 諭さんの投稿
こんなに笑ってる集合写真ってある?(^^) そのヒミツは、右端を見てください。顔半分写っているのは私です。セルフタイマーを仕掛けたのに間に合わず、シャッターが降りてしまったのでした。 撮影日は12年前の2014年1月。NPO法人みんなの元気学校としてやっていた杉並ポール歩きの会(杉ポ、2023年休会)を、杉並区の浜田山地区にある柏の宮(かしのみや)公園で開催したときのものです。 たまたま必要があって過去の写真を探していて目に止まりました。

・Masako Shinchiさんの投稿
小布施を歩いてきました🍎 25日に佐久PWのバス散策があり、その下見・・・のつもりでしたが、コースからどんどん外れて、最後はふらりと図書館に。写真撮り忘れましたが、小布施の図書館テラソ、こんな図書館が佐久にも欲しいーーー!←熱望 シャインマスカット300円はお得でした

・田村 芙美子さんの投稿
久々お出かけハイキング 国営ひたち海浜公園のコキア旅 PWが繋ぐ友達の輪 TVで観るより遥かに迫力の広大な見晴らしエリアまでの絶景でした 今年はコキア植栽20周年の記念の年、特別の秋ですって 友人の股関節術後のリハビリもポールウォーキングで坂道も歩きました

・菊田 利秀さんの投稿
10月17日(土)、昨年のGWに秋田のポールウォーキングイベントに参加した際に知り合い、佐久ぴんころウォークでもお世話になったポールウォーキングコーチの佐藤珠美さんが、佐久平ウォーキング倶楽部の皆さんを引き連れて来水されるとのことで、偕楽園界隈を案内し、那珂湊で海鮮を食べて魚市場での買い物を楽しんできました❗️ 千波湖NWのメンバーも3名偕楽園ウォーキングには参加してくれ、交流もできました。 本当はひたち海浜公園のコキアも行きたかったのですが、時間が足りず断念😩 佐久平ウォーキング倶楽部の皆様、茨城にお越し下さりありがとうございました。 また来てくださいね☺

・水間 孝之さんの投稿
全国ポールdeウォーク研究交流集会in上田2日は別所温泉、上田城址、塩田大良の3コースに別れてポールウォーキングを楽しみました。 午後はシナノ社での工場見学を行い、ポールの製造工程をじっくり見ていただきました。 真剣に見学していただきました。 今後の普及活動に生かしていただければありがたいです。 2日間ほんとうにお疲れさまでした‼️ 2年後、鹿児島でお会いしましょう♪♪

・森川 まことさんの投稿
何と!5ヶ月ぶりにやっと外に出られて、歩けるようになりました。 久しぶりなので少し距離は短めで、体操をして帰ってきました。 来月こそ、江戸川土手を歩いて帝釈天行くぞー!!

・台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
台灣健走杖運動推廣協會攜手三得利 舉辦【城市輕健走】台中場 免費報名倒數中⏰ 🔎精彩內容 ✅專業教練指導0基礎也OK ✅分組體驗教學: 【休閒組】2km,健走約40分鐘 【挑戰組】4km,健走約80分鐘 ✅免費租借健走杖,空手來就好 ✅收操伸展小教室,舒緩不緊繃 ✅物理治療師的專業諮詢服務 🗓️活動時間:2026/11/21(六)14:00~17:00 📌報名時間:即日起至10/25(日) 📌集合地點:坪林森林公園 戶外展演廣場 💰參加費用:免費(報名抽選即視同加入三得利會員) ※本活動為「抽選制」,詳見活動頁→ https://tswe.cc/oM2Xi 空手就能免費體驗再享🎁 ✓ 【躍+美9天份體驗組】 ✓ 多利金1,000點 健康.好禮一次帶走 手刀報名GO🚀 https://tswe.cc/oM2Xi

・遠藤 恵子さんの投稿
【介護予防運動/脳トレ・リズム体操】 これって、チャレンジクラス⁉️🤣 月曜~金曜の午前中は、毎日さまざまな年齢の皆様と介護予防運動! こちらの動画は 🎵『365歩のマーチ』に振り付けた 脳トレ要素たっぷりのリズム体操♪ リズムに合わせて、考えて、動いて、笑って😊 楽しみながら、からだも脳もフル回転! 皆さん、しっかりついてこられました😆💕

・柳澤 光宏さんの投稿
医療福祉技術シンポジウム初参加。ウォーキングポールの開発とポールウォーキング普及について講演させていただきました。 資料を作っていて、気付けばポールウォーキングは開発してから20年が経過してました。父の時から試行錯誤しながら20年、今ではシナノを支える事業に成長していますm(__)m

・中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より 雨の〜小布施PW散策〜でした。 バスツアーで総勢47名満車状態で秋の小布施訪問です。 浄光寺(スラックラインメッカ)で住職の有難いお言葉を(ごすいの法)を頂き 岩松院で鳳凰天井絵のお参りし 小布施街への散歩みち約4km闊歩〜 街に向かったところで雨降りとなり シットリ歩きの小布施散策〜 郊外遊歩道はガラガラでしたが、秋の味覚を求め街中は日本語が行き交っての賑わいで、ランチも行列が連なり状態でした。 〜焼き栗〜旨し〜❗️ これでバスツアー散策は3年続きの雨降りPWとなり次回は・・?の声も〜ww

・長岡智津子さんの投稿
ハッピーハロウィン🎃 ウォーリーを探せ!

 

来月以降の開催
・台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
日本健走杖健走-初階教練 培訓報名表(BC)

・遠藤 恵子さんの投稿
【ポールウォーキングで芦屋ツーリズム】開催のお知らせ📣 ⁡ 🌿 ポールウォーキングで芦屋釜の里へ行こう! ⁡ ウォーキング専用ポールを使って、 芦屋町の景色を楽しみながら歩いてみませんか? ⁡ 今回の目的地は「芦屋釜の里」 ⁡ 到着後は、庭園や秋季特別展を見学。 ⁡ そして、お抹茶とお菓子をいただきながら、 ゆったりとした時間を楽しみます🍵 ⁡ 開催中の秋季特別展は、 ⁡ 「博多鋳物師 山鹿家の軌跡 ~芦屋から博多へ~」 ⁡ 健康づくりをしながら、 芦屋町の歴史や文化にも触れてみませんか? ⁡ ポールウォーキング初心者の方も大歓迎です😊 ⁡ ━━━━━━━━━━━━━━ ⁡ 📅 開催日時 ⁡ 2026年11月23日(月・祝) 8:00〜12:00 ⁡ [スケジュール] ⁡ 8:00 堂山駐車場 集合 9:30 芦屋釜の里 到着・見学・呈茶 12:00 堂山駐車場 解散予定 ⁡ ※荒天中止 ⁡ ━━━━━━━━━━━━━━ ⁡ 📍 集合場所 ⁡ 堂山駐車場 (地図をご確認ください) ⁡ ━━━━━━━━━━━━━━ ⁡ 💰 参加費 ⁡ 2,000円 ⁡ (芦屋釜の里入館料・呈茶料・保険料を含む) ⁡ ━━━━━━━━━━━━━━ ⁡ 👟 持ち物・服装 ⁡ ・飲み物 ・タオル ・リュック ・帽子 ・歩きやすいシューズ ・運動しやすい服装 ⁡ ※ポールをお持ちでない方には、こちらでご用意いたします。 ⁡ ━━━━━━━━━━━━━━ ⁡ 📩 お問い合わせ・お申し込み ⁡ [Instagram DM] @genki_polewalking ⁡ ⁡または Facebookメッセンジャーにてお問い合わせ・お申し込みをお願いいたします。 ⁡ ⁡ 🗓 予約締め切り ⁡ 2026年11月20日(金)17:00 ⁡ ━━━━━━━━━━━━━━ ⁡ 主催:NPWA/ケイコMCPRO ⁡ 秋の芦屋町を楽しみながら、 心も身体もリフレッシュしましょう🍁 ⁡ 皆さまのご参加をお待ちしております♡ ⁡

 

2.PW関連学術ニュース
2-1)岐阜大学医学部下畑先生からの最新医学情報(2026年10月)
・アミロイドβは減る.しかし,神経・シナプス病態は?―レカネマブ治療に伴う「バイオマーカーの乖離」
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年10月2日のFB投稿です***
抗アミロイドβ(Aβ)抗体レカネマブは,早期アルツハイマー病において脳内アミロイドβを除去する効果があります.しかし,治療の目的は当然,Aβを除去することそのものではありません.Aβを除去した結果,その下流にあるタウ病理,シナプス障害,神経変性がどこまで抑えられるのかが重要です.この問題を考えるうえで,非常に興味深い研究が米国ワシントン大学を中心とする研究グループからLancet Neurology誌に報告されました.
対象は,実臨床でレカネマブ治療を受けたAβ陽性の早期症候性アルツハイマー病患者197名です.レカネマブ10 mg/kgを2週ごとに投与し,約6か月ごとに最長2年間,採血と臨床評価を行いました.比較対象として,Aβ陰性で認知機能正常の458名と,未治療の認知機能障害1312名を用いました.Aβ,タウ,炎症,神経変性,シナプス機能などに関連する130種類もの血漿タンパクを測定した点がこの研究の特徴です.その結果,130種類中34種類のタンパクがレカネマブ治療に伴って有意に変化しました.著者らはその変化を,正常値に近づく「normalising」,正常値を越えて変化する「overcorrecting」,むしろ正常値からさらに離れる「opposite」,有意に変化しない「unchanged」の4つに分類しました.具体的には,p-タウ217,p-タウ231,MAPT,GFAPなどはnormalising,Aβ42,Aβ40,Aβ38などはovercorrecting,一方,NPTXR,NRGN,TREM2などはoppositeに分類されました.つまり,レカネマブによる変化は,すべての病態を同じ方向に「正常化」させるものではありませんでした.
この結果を直感的に理解するのに分かりやすいのが,Alberto Espay先生がXやLinkedInで紹介した図上です(リンク先はコメント欄).論文のFigure 1D〜Kの結果から,p-タウ217,Aβ42,NRGN,NPTXRという4つの代表的なバイオマーカーを取り上げています.左から見ると,p-タウ217は治療期間が長くなるほど低下し,正常方向へ近づきます.論文では,治療前にAβ陰性・認知正常者より130~192%高かった各種p-タウが,24か月後にはその差が15~44%まで縮小しました.なかでもp-タウ231の変化が大きく,Aβ除去に伴ってタウ関連指標も改善することが示されました.ただし,24か月後にも完全には正常化していません.
Aβ42は逆に大きく上昇し,Aβ陰性・認知正常者の値を越えました.Aβ38,Aβ40も同様です.これは上述の「overcorrection」になります.著者らは,血中のレカネマブがAβと結合し,Aβの安定性やクリアランスを変化させている可能性を考察しています.したがって,血漿Aβ42の上昇は治療に伴う薬理学的変化を反映している可能性がありますが,それ自体が患者さんにとって有益な変化を意味するわけではありません.重要なのは,その先にある神経変性や認知機能低下がどこまで抑えられるかです.
ところが,右側の2つ,神経・シナプス機能に関連するタンパクであるNRGNとNPTXRは全く異なる動きを示しました.これらは患者ではもともと正常者より低値でしたが,レカネマブ治療によって正常方向へ戻るのではなく,治療期間が長くなるにつれてさらに低下し,Aβ陰性・認知正常群との差が拡大しました.この方向性は,複数回採血された138名の縦断解析でも確認されています.ちなみに,軸索障害の代表的なバイオマーカーであるニューロフィラメント軽鎖(NfL)も,治療前には高値でしたが,レカネマブ治療に伴う有意な低下は認められませんでした.
Espay先生はこの結果を「レカネマブは著明なバイオマーカーの乖離を生じさせる」と表現しています.つまり,Aβやp-タウ関連マーカーが期待される方向へ動く一方で,NRGN(ニューログラニン)やNPTXR(神経ペントラキシン受容体)など一部の神経・シナプス関連マーカーは正常値からさらに離れていくという乖離です.さらにEspay先生は,「アミロイド除去に成功していても,神経・シナプスの病態は進行し続けている,あるいは治療に関連して悪化している可能性さえある」という仮説を提示しています.ただし,この後半の解釈には慎重さが必要です.NRGNやNPTXRの低下が,そのまま「シナプスが失われた」ことを意味するわけではありません.また,治療期間が長くなることは,アルツハイマー病そのものの経過時間が長くなることでもあります.同じ期間,同じ条件で縦断的に追跡された未治療群が存在しないため,これらの低下がレカネマブによるものなのか,治療にもかかわらず病気が進行した結果なのかを,本研究だけで区別することはできません.
もう一つ重要なのが図下(論文のFigure 4A)です.これは,初回採血時の血漿バイオマーカー値と,その後のCDR-SBの悪化速度との関連を示したvolcano plotです.GDF15,FLT1,Aβ42,brain-derived p-タウなどが高い患者では,その後のCDR-SB悪化が速い傾向がありました.一方,NPTXR,CXCL8,SNAP25が高い患者では,CDR-SBの悪化が比較的ゆっくりでした.特にNPTXRは興味深く,初回採血時の値が高い患者ほど,その後の認知機能低下が遅い傾向を認めました.ただし,これは探索的な関連解析であり,「レカネマブがNPTXRを低下させたため認知機能が悪化した」という因果関係を示すものではありません.
もうひとつ重要なのは,アミロイドPET陰性化に関連するバイオマーカーと,その後の認知機能低下に関連するバイオマーカーがほとんど一致しなかったことです.アミロイドPET陰性化との関連ではNPYやVEGFDなどが候補となり,CX3CL1やGFAPなども陰性化の前後で異なる推移を示しました.一方,認知機能の予後にはNPTXR,SNAP25,GDF15,brain-derived p-タウなどが関連しました.著者らも,アミロイド除去に関係するタンパクは主に炎症・グリア反応を反映するのに対し,認知機能低下に関係するタンパクはシナプス機能や神経変性に関連していたと指摘しています.つまり,アミロイドを除去できたからといって,そのまま認知機能を守れるとは限らない可能性があります.
これは抗Aβ療法を評価するうえで重要な視点だと思います.患者さんの治療目標はアミロイドPETを陰性にすることではありません.Aβ除去はあくまで手段であり,本来の目的は,その下流にあるタウ病理,シナプス障害,神経変性を抑え,最終的に認知機能や生活機能を長く維持することです.今回の研究では,レカネマブによってAβ関連バイオマーカーが大きく変化し,p-タウも改善することが確認されました.その一方で,神経・シナプス関連バイオマーカーまで一様に正常化するわけではありませんでした.
もちろん,本研究は単施設の観察研究であり,レカネマブの臨床的有効性そのものを検証した研究ではありません.対象者の大部分が非ヒスパニック系白人であり,アミロイドPETが行われた患者も一部に限られます.また,同様に縦断追跡された未治療対照群がないことも重要な限界です.jそれでも,Espay先生が指摘する「バイオマーカーの乖離」は重要です.「アミロイドを除去できたこと」と「アルツハイマー病の神経変性を十分に抑えられたこと」,さらに「患者さんの認知・生活機能を守れたこと」は同義ではありません.今後の抗Aβ療法では,アミロイド除去だけではなく,その下流の神経・シナプス病態,そして何より認知機能や生活機能がどこまで維持されるのかを長期的に検証する必要があると思います.
Mu R, et al.Dynamic changes in plasma biomarkers of Alzheimer’s disease in patients treated with lecanemab: a longitudinal cohort study.Lancet Neurol.Published online September 24,2026.doi:10.1016/S1474-4422(26)00284-X.PMID: 42785333.

・左右差のある亜急性小脳失調に注意―mGluR1抗体関連小脳性運動失調症の日本人多施設研究【岐阜大学発】
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年10月4日のFB投稿です***
抗代謝型グルタミン酸受容体1型(metabotropic glutamate receptor type 1:mGluR1)抗体関連小脳性運動失調症は,まれな自己免疫性小脳失調症です.mGluR1は小脳,とくにPurkinje細胞に豊富に発現し,小脳の運動制御やシナプス可塑性に重要な役割を担っています.患者由来のmGluR1抗体はPurkinje細胞の機能を障害し,動物への抗体投与によって運動失調が誘発されることから,病原性を有する自己抗体と考えられています.しかし,これまでの臨床像は主として欧米の症例報告に基づいており,日本人患者の特徴は十分に分かっていませんでした.
今回,当科の吉倉延亮先生を中心とする研究グループは,日本人におけるmGluR1抗体関連小脳性運動失調症の臨床像を明らかにし,Cerebellum誌に報告しました.2018~2025年に,全国257医療機関から岐阜大学に抗体測定が依頼された自己免疫性小脳失調症疑い699例を後方視的に検討した,全国規模の多施設研究です.さらに,日本人症例を2025年3月までに報告された海外40例と比較しました.抗体は,mGluR1を発現させたCOS7細胞を用いたcell-based assay(CBA)でスクリーニングし,陽性例についてラット脳切片を用いたtissue-based assay(TBA)で確認しました.699例中12例がmGluR1抗体陽性で,12例すべてで血清と脳脊髄液の両方から抗体が検出されました.発症年齢中央値は54.5歳で,5~75歳と幅広く,男女は各6例でした.
図上の1,2段目はTBAです.抗体陽性患者の血清および脳脊髄液によって,小脳分子層を中心とするmGluR1の分布に一致した特徴的なneuropil染色が認められています(2段目).さらに3段目のCBAでは,患者血清による細胞表面mGluR1への結合が確認されています.つまりCBAとTBAという異なる方法を組み合わせて抗体陽性を確認しています.
臨床症状では,11例が進行性の体幹失調と歩行障害を主症候として発症しました.経過中には12例全例で体幹失調と四肢失調を認め,構音障害は10例,眼振は8例,titubationは2例に認められました.また,小脳外症候も9例と比較的多く,味覚障害が4例,認知機能障害が3例にみられたほか,myokymiaや両側外転神経麻痺なども認められました.今回もっとも興味深かったのは,四肢失調の左右差です.日本人では12例中9例,75.0%で左右非対称の四肢失調が記載されていました.一方,既報の海外症例では,左右差を評価できた28例中4例,14.3%にとどまり,この差は多重比較補正後も有意でした.亜急性の小脳性運動失調を診察する際に,指鼻試験や踵膝試験などで左右差を丁寧に評価することが重要だと思います.ただし,海外の症例報告では左右差そのものが十分に記載されていなかった可能性がありますので,「日本人に特有の所見」と結論づけることはできません.今後検証すべき仮説と考えるのが適切です.
もうひとつ重要なのが,脳脊髄液所見が意外に軽いことです.細胞数の中央値は4.5/µL,蛋白は36.5 mg/dLで,多くの症例では通常の炎症所見が乏しい結果でした.一方で,oligoclonal bandは7例,58.3%で陽性でした.海外症例と比較すると,日本人では細胞数と蛋白が低い傾向を示しましたが,多重比較補正後には有意ではなく,発症1か月以内に脳脊髄液検査を行った症例に限定すると差は確認できませんでした.したがって,「日本人では脳脊髄液炎症が弱い」とまでは言えませんが,少なくとも細胞数や蛋白がほぼ正常であることを理由に,mGluR1抗体関連疾患を除外してはいけないことは大切です.
頭部MRIにも同様の注意が必要です.初回MRIは12例中9例,75%で正常でした.異常を認めた3例では,右後頭葉FLAIR高信号病変,小脳萎縮,両側小脳皮質FLAIR高信号病変がそれぞれ認められました.図下は代表例を示しています.Aは右後頭葉のFLAIR高信号病変,Bは明瞭な小脳萎縮,Cは小脳虫部から両側小脳半球にかけてのFLAIR高信号病変で,左側優位の左右差がみられます.初期にはMRIが正常でも,経過とともにBのように小脳萎縮が明らかになる症例があります.実際,経過観察MRIが得られた5例中3例に小脳萎縮が認められました.私は運動失調があるにも関わらずMRI正常のとくは「自己免疫性かPSP-Cを検討しよう」と言っています.
治療については,全例で免疫療法が行われました.メチルプレドニゾロンパルス療法が11例,経口プレドニゾロンが9例,IVIgが8例,血漿交換が3例,リツキシマブが2例に使用されました.発症から免疫療法開始までの中央値は2.5か月でした.しかし,治療を行えば必ず良好に回復するわけではありませんでした.6か月以上追跡できた9例では,最終観察時にmRS 2以下,すなわち機能的自立に到達したのは3例,33.3%にとどまり,2例では再発も認められました.また,2例ではCOVID-19感染から1か月以内に神経症状が出現していました.過去にも帯状疱疹やデング熱,インフルエンザ様疾患などの感染後発症例が報告されており,感染による免疫活性化が発症の契機となる可能性は考えられます.ただし当然ですが,感染との因果関係は証明されたわけではありません.
本研究のメッセージは,亜急性に進行する小脳性運動失調,とくに四肢失調に左右差がある患者では,脳脊髄液の細胞数や蛋白の異常が軽度であったり,初期MRIが正常であっても,抗mGluR1抗体関連小脳性運動失調症を鑑別から外すべきではない,という点です.また,免疫療法を行っても機能障害や小脳萎縮が残る症例があり,必ずしも十分な回復が得られるとは限りません.今後,より大規模かつ前向きな検討により,早期診断や治療介入が予後改善につながるかを明らかにする必要があります.最後になりますが,ご協力を賜りました多くの先生がたに厚く御礼申し上げます.
★当科ではmGluR1のほか,GFAP,IgLON5抗体の測定,および『特発性小脳萎縮症(IDCA,以前のCCA)の自己抗体のチェック』を承っております.当科ホームページよりご相談ください.
Yoshikura N, Kimura A, Takekoshi A, Yasui K, Yamashita S, Yoshikawa K, Sakashita K, Koide R, Kobayashi Y, Yamada K, Yaguchi H, Yabe I, Maku T, Nakamura H, Shibata S, Takami H, Mori H, Shimohata T. Clinical Characteristics of Japanese Cases of Anti-Metabotropic Glutamate Receptor Type 1 Antibody-Associated Cerebellar Ataxia. Cerebellum. 2026 Sep 30;25(5):148. doi: 10.1007/s12311-026-02094-z. PMID: 42814184; PMCID: PMC13627236.

・タウだけでは神経細胞は死なない?―T細胞がつなぐタウ病理と神経変性
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年10月5日のFB投稿です***
アルツハイマー病をはじめとするタウオパチーでは,神経細胞内に異常なタウタンパクが蓄積します.近年,タウが蓄積した脳では,ミクログリアやアストロサイトだけでなく,末梢から侵入したT細胞も増加することが分かってきました.今回,Nature Neuroscience誌とNeuron誌とに相次いで報告された2つのマウス研究は,「T細胞が脳の外で活性化される段階」と「活性化されたT細胞が脳へ入る段階」をそれぞれ明らかにしました.いずれも米国ワシントン大学Holtzman研究室を中心とする研究です.
最初の論文では,遺伝性前頭側頭型認知症の原因となるP301S変異タウマウスとヒトAPOE4マウスを交配したTE4マウスを用いて,脳内に集積するCD8陽性T細胞がどこで活性化されるのかを検討しました.注目したのは,conventional type 1 dendritic cell(cDC1)と呼ばれる樹状細胞です.cDC1は,細胞外から取り込んだ抗原をMHC class Iに載せてCD8陽性T細胞に提示する交差提示(cross-presentation)に優れています.cDC1を欠損させたTE4マウスでは,脳内CD8陽性T細胞の集積とクローン性増殖が減少し,ミクログリアやアストロサイトの活性化,神経変性も軽減しました.一方,リン酸化タウや不溶性タウの蓄積には大きな変化を認めませんでした.
図1では,通常のTE4マウスでみられる海馬や嗅内皮質・梨状皮質の萎縮と側脳室拡大が,cDC1欠損によって明らかに軽減しています.つまり,タウ病理そのものを大きく減らさなくても,免疫反応を抑えることで神経変性を軽減できることが示されました.
さらに,脳内に実験用の抗原を入れてT細胞の反応を追跡したところ,その抗原に反応するCD8陽性T細胞の増殖は,脳内ではなく深頸部リンパ節で起こり,cDC1を欠損させると消失しました.また,脳内のMHC結合ペプチドには,タウ,synapsin,α-synuclein,NfLなどが含まれていました.これらの結果から,脳由来抗原が深頸部リンパ節へ運ばれ,cDC1による交差提示を介してCD8陽性T細胞が活性化される仕組みが考えられました.
では,活性化されたT細胞はどのように脳へ入るのでしょうか.Neuron誌の研究では,T細胞の遊走に関わるケモカイン受容体CXCR3と,そのリガンドCXCL10に注目しました.CXCR3は活性化したTh1型CD4陽性T細胞や細胞傷害性CD8陽性T細胞に発現し,CXCL10はこれらのT細胞を呼び寄せる「誘導信号」として働きます.
マウスの海馬にIFNγを定位脳手術で投与すると,CXCL10が主としてアストロサイトに増加し,多数のT細胞が脳実質へ侵入しました.Cxcl10またはCxcr3を欠損させるとT細胞浸潤は大幅に抑制されました.またTE4マウスでもアストロサイトのCXCL10が増加し,その程度はリン酸化タウ病理と相関しました.つまり,タウ病理が進んだ脳では,末梢のT細胞を呼び込む環境が形成されるようです.
そこで著者らは,6カ月齢のTE4マウスから約3カ月半にわたり抗CXCR3抗体を全身投与しました.その結果,海馬へのCD4,CD8陽性T細胞の浸潤が著明に減少し,歯状回の神経細胞が保たれ,海馬や嗅内皮質・梨状皮質の萎縮も軽減しました.新奇物体認識課題でも認知機能の改善が認められました.一方,ここでもリン酸化タウや可溶性・不溶性タウの量には明瞭な変化を認めませんでした.
この2つの研究を合わせると,興味深いストーリーが見えてきます.タウオパチーによって神経細胞が傷害されると,タウを含む脳由来抗原が髄膜リンパ系などを介して深頸部リンパ節へ運ばれ,cDC1がこれらを交差提示してCD8陽性T細胞を活性化します.一方,タウ病理の進んだ脳ではアストロサイトなどからCXCL10が産生され,CXCR3を持つ活性化T細胞が脳へ誘導されます.侵入したT細胞がミクログリアやアストロサイトと相互作用し,神経炎症を増幅して神経変性を促進する,というモデルです.ただし,この一連の流れ全体が直接証明されたわけではなく,2つの研究結果をつなぎ合わせて考えたモデルです.また,ヒトのアルツハイマー病でどの程度重要なのかは今後の検証が必要です.
それでも,2論文に共通する所見は重要です.タウそのものを大きく減らしていないにもかかわらず,免疫反応を操作することで神経変性が軽減したからです.今回の研究は,「異常タウ」と「神経細胞死」の間にある免疫経路も治療標的になり得ることを示しています.タウオパチーを「脳の中だけで完結する病気」と考えるのではなく,脳と末梢免疫の相互作用を含めて捉える必要があることを示す研究だと思います.
1)Hu H,et al.Priming of CD8+ T cells by peripheral dendritic cells exacerbates tau-mediated neurodegeneration.Nat Neurosci.2026.doi:10.1038/s41593-026-02427-5.PMID: 42693199.
2)Emmerson JT,et al.Peripheral CXCR3 blockade mitigates T cell infiltration and neurodegeneration in a mouse model of tauopathy.Neuron.2026.doi:10.1016/j.neuron.2026.08.030.

・自己免疫性運動異常症の症候学についての教育講演@国際パーキンソン病・運動障害学会(ソウル)
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年10月6日のFB投稿です***
韓国・ソウルで開催されているInternational Congress of Parkinson’s Disease and Movement Disorders(MDS Congress 2026) に参加しています.昨日はTeaching Course “Autoimmune Movement Disorders” で,症候学についての講演を担当しました.自己免疫性神経疾患では,抗体検査が診断に大きな役割を果たしますが,その入り口はやはり患者さんにみられる症候を丁寧に観察し疑うことです.今回の講演では,
“What do you see?”
“How would you describe it?”
“Could this be autoimmune?”
という3つの問いを軸に,多数の動画を提示しながら自己免疫性運動異常症の特徴を解説しました.
具体的には,LGI1抗体脳炎のfaciobrachial dystonic (crural) seizures(FBDS/FBCDS),抗NMDAR脳炎の複雑な不随意運動,mGluR1・GluK2抗体関連疾患のhead titubationと運動失調,IgLON5病やCASPR2抗体関連疾患のmyorhythmia,GFAPアストロサイトパチーの多彩な運動異常症,さらにocular flutter/opsoclonusやhung-up reflexなどを取り上げました.
とくに伝えたかったのは,亜急性の発症,複数の運動異常の組み合わせ,認知・精神症状やてんかん発作の併存,さらに低Na血症や体重減少などのred flagsが重なったときには,自己免疫性疾患を積極的に疑うということです.Phenomenology(症候学)を正確に捉えることが,適切な抗体検査,早期診断,そして治療可能な患者さんを見逃さないことにつながります.
これまで学んできた既報や,経験してきた症例,研究成果を盛り込みながら,自己免疫性運動異常症の面白さと,「まず症候をよく見る」ことの大切さをお伝えできたのではないかと思います.なおスライドはコメント欄のリンクからご覧いただけます.
無事に講演を終え,ほっとしました.座長のSteven Frucht先生や,自己免疫性脳炎の大家のJerome Honnorat先生に褒めていただき,嬉しかったです.会場も立ち見が出るほどで,日本から参加された先生方もたくさん聴講に来てくださりました.どうもありがとうございました!
あと2日間,世界のmovement disordersの最新情報を勉強したいと思います.

・AIに医療における役割―できること,できないこと,そして医師にしかできないこと
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年10月7日のFB投稿です***
MDS 2026@ソウルで,「AI in Movement Disorders: Promise, Progress and Pitfalls」というPlenary Sessionを聴講しました.埼玉医大の大山彦光先生らが座長を務め,AIがパーキンソン病などの運動異常症の診断や治療をどのように変えるのか,そしてどのような課題が残されているのかが議論されました.
最初のJames Teong Han Teo先生の講演では,現在の医療AIの全体像が示されました.AIは病名を当てるだけではなく,電子カルテの整理,診療支援,検査の解析,病院業務など,さまざまな場面で利用され始めています.英国では,なんと100万人以上の患者の電子カルテを「自然言語処理」で解析し,疾患,症状,治療などを自動的に構造化する研究も行われています.ちなみに「自然言語処理」とは,コンピューターが人間の書いた文章を読み取り,意味のある情報を取り出す技術です.
さらに将来は,「質問に答えるAI」から「この患者さんに次に何が起こるのかを予測するAI」へ進む可能性があります.Foresightという電子カルテの将来予測モデルは,電子カルテに記録された患者さんの経過を学習し,将来起こり得る疾患や処置などの医療イベントを予測するモデルです.実際にWEBで後悔されていて試すこともできます(図2).また「Agentic AI」も紹介されました.agentic は,もともと agent(主体的に行動するもの,代理人) から来た言葉です.つまり質問に答えるだけでなく,目標に向けて必要な情報を集め,計画を立て,複数の作業を実行する「行動するAI」です.すでにWeb上で実際に使えるものもあり,代表例は ChatGPT Work です.将来の重要な技術の一つになりそうですが,医療で実用化するには安全性や責任の所在など課題があります.医師もよほど勉強し経験を積まないと,AIの答えに反論できなくなると思います.
2人目のJeffrey Hausdorff先生は,「digital biomarker」について講演しました.これは,スマートフォン,腕時計型センサー,動画などから得られる,病気の状態を示す客観的なデジタル指標です.パーキンソン病では,歩行速度,歩幅,手の動き,顔の表情,声などを数値化できます.これらのデータは神経診療に大きな意味を持ちます.医師が患者さんを直接観察できるのは,数週間に一度の外来の短い時間にすぎません.一方,スマートフォンやウェアラブル機器を使えば,診察と診察の間に起きている歩行や動きの変化を継続的に捉えることができます.さらにAIによって,人間の目では気づきにくい微細な変化(subtle motor signs)を見つけられる可能性もあります.ただし,Hausdorff先生が強調していたのがdigital biomarkerの「generalizability」,つまり別の患者さん,別の病院,別の国でも同じように使えるのかという問題です.そのためには,開発した施設とは異なる患者集団で性能を確認する「external validation」が重要になってきます.
さらにAIやデジタル技術は,「測る」だけでなく「治療を調整する」方向にも進んでいます.その代表がadaptive DBSです.DBS(脳深部刺激療法)は,脳内に電極を留置して電気刺激を行う治療ですが,adaptive DBSでは,脳活動や患者さんの状態に応じて刺激を変化させます(図3).2026年のNature Medicineには,神経活動から行動状態を機械学習で判別し,それに応じて刺激条件を変えることで歩行障害を改善する研究が報告されました.このように,「状態を測る→解析する→治療を変える」という循環を作る仕組みを「closed-loop」と呼びます.患者さんの状態に合わせて治療をより動的に調整する発想です.
3人目のMartin McKeown先生は,大規模言語モデル(large language model:LLM)の臨床応用について講演しました.LLMとはChatGPTなどの基盤となるものです.パーキンソン病では診察記録に加え,音声,動画,歩行データなど多様な情報が得られるため,将来的にはLLMと画像・音声なども扱えるmultimodal AIを組み合わせた診療支援が期待されます.LLMは医学知識に関する質問や患者からの質問には,かなり良好な回答を示すことがあります.しかし,医学知識に答えられることと,実際の患者さんを安全に診療できることは同じではありません.2026年の研究では,パーキンソン病の臨床症例に対する病態評価は比較的良好でしたが,具体的な治療計画では性能が低下し,重大な誤りも認められました.つまり,「何が起きているのか」を理解することと,「この患者さんに何をすべきか」を決めることには,まだ大きな隔たりがあるようです.そこで重要になるのが「RAG(retrieval-augmented generation)」です.これはAIに記憶だけで答えさせるのではなく,診療ガイドラインや信頼できる文献を検索し,その情報を根拠に回答させる仕組みです.いわば,AIに教科書やガイドラインを確認してから答えさせる方法です.ただし,日本では学会が作成した診療ガイドラインなどの著作物をRAGに取り込んで利用する場合の著作権上の扱いも重要な議論になっています.AIの精度だけでなく,信頼できる医学情報を誰が,どのような条件でAIに利用させるのかも,今後の大きな課題です.
以上,3つの講演を通してみると,AIの役割は,「微細な徴候を捉える → 診断を支援する → 経過を追う → 将来を予測する → 治療を調整する」という方向へ進んでいるように感じました.ただし,診断から治療選択・調整へと踏み込むほど,AIが間違った場合の影響も大きくなります.そのため,「human in the loop」,つまりAIだけに判断を任せず,重要な判断には必ず人間が関与するという考え方が重要になります.これからは,「AI時代に脳神経内科医が不要になるか?」ではなく,「AI時代に,脳神経内科医にしかできないことは何か?」を考える時代になるのだと思います.

・Video Challenge の17症例の解説@MDS 2026(ソウル)
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年10月8日のFB投稿です***
本学会のメインイベントですが,今回も非常に刺激的なセッションでした.名司会のAnthony Lang教授とKailash Bhatia教授が進行を務め,世界各国から17例の興味深い症例の動画が提示されました.この学会には若い頃から参加していますが,時代とともに提示される症例に変化があることに気づきます.全エクソーム解析や全ゲノム解析が普及すると珍しい遺伝性疾患が増え,cell-based assayの開発によって細胞表面抗原に対する自己抗体が同定されるようになると,抗IgLON5病をはじめとする自己免疫性神経疾患が増えました.今回はそうした流れが一段落し,一見,運動異常症とは無関係にみえる全身性・代謝性・薬剤性の病態が,特徴的な不随意運動として現れる症例が多かった印象があります.とても勉強になりました.今回はlong presentation 8例,short presentation 9例,計17例でした(時間の関係で1例省略).以下,順番にご紹介します.
症例1.74歳男性(タイ)short presentation
睡眠中に20~30分持続する複雑な異常行動と大声がみられた.糖尿病で治療中であり,早朝の血糖値は約60 mg/dLであった.睡眠中の複雑な異常行動をみた場合,REM睡眠行動障害,parasomnia,夜間てんかんなどがまず鑑別に挙がる.しかし糖尿病患者では低血糖も重要なmimicである.とくにインスリンや血糖降下薬を使用している患者では,夜間の奇妙な行動を「睡眠障害」と決めつけず,発作時ないし早朝の血糖を確認する必要がある.
診断;夜間低血糖による複雑な行動異常(complex behavioral disorder due to nocturnal hypoglycemia)
症例2.65歳男性(インド)
Lewy小体型認知症を思わせる認知・行動症状と運動症状を呈していた.しかし背景には高アンモニア血症が存在した.門脈血が肝臓を迂回して体循環に流入すると,肝機能障害が目立たなくても高アンモニア血症を来し,認知機能障害,精神症状,意識変容,運動異常などを呈し得る.この症例の症候はLBD phenocopyであり,変性疾患のようにみえても,治療可能な代謝性病態が隠れていることを示す勉強になる症例であった.
診断;門脈体循環シャントに伴う高アンモニア血症(hyperammonemia secondary to porto-systemic shunt)によるLBD phenocopy
症例3.38歳女性(米国)
亜急性に出現した左下顔面を中心とする反復性の顔面けいれん(Epilepsia partialis continua;EPC)を呈し,薬剤抵抗性であった.Jerk-lock averagingで皮質スパイクを同定.右側頭葉が経時的に萎縮.FDG-PETも同部位が低代謝.血漿交換で若干の改善.
診断;成人発症Rasmussen脳炎
Rasmussen脳炎は,T細胞を主体とした免疫反応により神経細胞やアストロサイトが障害される慢性炎症性脳疾患.典型的には小児に発症し,薬剤抵抗性の片側性焦点発作,進行性片麻痺,認知機能低下などを来す.約半数ではEPCを認め,MRIでは進行性の一側大脳半球性皮質萎縮が重要な所見となる.成人発症は少数である.
症例4.71歳男性(インド)short presentation
18年のり還暦を持つパーキンソン病患者.STN-DBS施行していた.2ヶ月前から激しい右ジスキネジアが出現,赤沈亢進.左電極周囲にT2高信号病変が出現した.DBS施行後の病変であれば,通常は感染,出血などをまず考えるが,本症例では異なる病態が隠れていた.血清TPHA強陽性.
診断;STN-DBS電極周囲に生じた梅毒性ゴム腫による片側ジスキネジア(syphilitic gumma involving the STN DBS electrode)
症例5.18歳女性(マレーシア)★最優秀賞受賞
亜急性に発症し,発熱が引き金となり左半身の持続するミオクローヌスを呈した若年女性で,痙攣重積状態として治療された.子どもの頃から発熱に伴うけいれんがあり,同胞にも類症が合った,Sabahの先住Dusun系住民であった.AMT遺伝子にホモ接合性にミスセンス変異.
診断;軽症型非ケトーシス型高グリシン血症(attenuated nonketotic hyperglycinemia;glycine encephalopathy)
非ケトーシス型高グリシン血症は,グリシン開裂酵素系の異常により中枢神経系にグリシンが蓄積する先天代謝異常である.関連遺伝子としてGLDC,AMT,GCSHが知られ,GLDCが70~80%を占める.典型例では新生児期から重篤な脳症,てんかん,発達障害を呈する.一方,軽症型では乳児期以降に発達・学習障害として認識され,成人まで生存することもある.発熱や代謝ストレスを契機に脳症,けいれん,運動異常が出現することもある.MRIやEEG所見も一定せず,phenotypeが多様であるため診断が遅れやすい.若年者の原因不明のミオクローヌスでも先天代謝異常を忘れてはならない.
症例6.13歳女性(カナダ)
右膝のケガに対する靭帯再建術のための全身麻酔後に進行性ジストニアに伴う発語困難,歩行障害,上肢ジストニア等を呈し,画像では両側性の基底核(淡蒼球)変性を認めた.STN-DBSは一次有効であったが,再度進行性に悪化した.母系にベネズエラCarabobo州の祖先をもち,ミトコンドリアDNAのMT-ND4 m.11232T>C変異を有していた.
診断;MT-ND4変異を背景としたセボフルラン誘発性基底核変性による進行性ジストニア
この遺伝的背景をもつ一部の患者では,通常臨床で用いられる濃度のセボフルランによって,ミトコンドリアcomplex I依存性酸化的リン酸化が著しく抑制される可能性が示されている.すなわち,無症候であったミトコンドリアの脆弱性が,揮発性麻酔薬曝露によって顕在化するpharmacogenetic disorderと考えられる.ベネズエラ系,とくに母系がCarabobo州に由来する症例が報告されている.重要なのは,単純な麻酔薬の有害事象ではなく,遺伝的素因と薬剤曝露の相互作用として理解することである.
症例7.19歳男性(中国)short presentation
1年前から手のふるえ.半年前から歩行障害(失調性歩行).小脳萎縮も出現した.電子タバコ使用歴があった.
診断;Tiletamine誘発性中毒性脳症(tiletamine-induced toxic encephalopathy)
Tiletamineは獣医学領域で使用される解離性麻酔薬で,NMDA受容体拮抗作用を有する.通常はzolazepamとの配合剤として使用されるが,近年,とくにアジアで電子タバコなどを介した乱用・中毒例が問題となっている.本症例では複数の薬剤による対症療法が行われ,約7週間で完全に回復した.若年者の原因不明のミオクローヌスや神経精神症状では,電子タバコを含めた薬物曝露歴を具体的に聴取する必要がある.
症例8.18歳男性(オーストラリア)short presentation
運動開始を契機として短時間の右手のrandom spasm?dystonic movement?を繰り返し,チックや発作性運動誘発性ジスキネジアを疑わせる臨床像であった.PRRT2遺伝子変異なし.
診断;発作性運動誘発性ジスキネジアで発症したWilson病
セルロプラスミン低値で診断にたどり着いたが,興味深いことに,Kayser-Fleischer ringを認めず,頭部MRIも正常であった.Wilson病では典型的な眼所見やMRI異常を欠くことがある.若年者に発作性ジスキネジアがみられた場合,原発性PKDだけでなく,治療可能なWilson病も鑑別に含める必要がある.
症例9.62歳男性(インド)short presentation
体幹(腹部)に緩徐で反復性の不随意運動,すなわちmyorhythmiaを認め,さらに睡眠関連orthopnea(起坐呼吸)を伴っていた.頸下がりあり.表面筋電図,持続時間の長いburst状.免疫療法が有効であった.
診断;抗IgLON5病
抗IgLON5病では,睡眠障害,呼吸障害,球症状,歩行障害,眼球運動障害,不随意運動など,多彩な症候を呈する.とくに睡眠中の呼吸障害や複雑な睡眠症状は診断上重要である.Myorhythmiaは舌が有名だが,本例では体幹myorhythmiaと睡眠関連呼吸障害の組み合わせが大きな手掛かりとなった.
症例10.76歳女性(インド)
発熱,意識生涯(無菌性髄膜炎)に加えて,頭部,顎,手,腹部の持続する不規則な不随意運動を呈した..腹部はいわゆるbelly-dancer dyskinesiaであった.四肢パーキンソニズムあり.脳脊髄液細胞数増多.脳実質の複数の異常信号と肥厚性硬膜炎.dsDNA抗体陽性.免疫療法にて改善.
診断;CNS lupus encephalitisによるbelly-dancer dyskinesia
中枢神経ループスでは,精神症状,認知機能障害,てんかん,脳血管障害,運動異常など,非常に多彩な神経症候を呈する.一見局所的にみえる腹部の異常運動であっても,背景に全身性自己免疫疾患が存在することがある.
症例11.79歳女性(米国)short presentation
歩行時に出現するtruncal flexion dystonia(episodicにカンプトコルミア様になる).注意深く観察すると,顔面筋,肩甲帯,上腕の筋力低下と,それに伴う代償運動が背景にあった.
診断;顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー1型(FSHD1)
症例12.54歳男性(英国)
上肢と顔面の舞踏運動を呈した.上向き眼振,四肢の運動失調を認めた.小脳や辺縁系の異常信号.中枢神経系以外にも多臓器病変を認めた.両下肢長管骨のFDG-PETの集積.
診断;Erdheim-Chester病
Erdheim-Chester病は稀な組織球性疾患であり,病態にはMAPK pathwayの異常活性化が関与する.BRAF V600E変異が最も頻度の高い遺伝子異常である.中枢神経病変のほか,眼窩病変,長管骨病変,後腹膜・腎周囲浸潤,心血管病変などを呈し,画像では“hairy kidney”や“coated aorta”が特徴的である.
運動異常症は稀であり,発表ではchoreaが非常に珍しいphenotypeであることが強調された.
症例13.小児 時間の関係で,症例提示はスキップ
診断;若年発症DRPLAらしかった.
症例14.50歳男性(アイルランド)
急速進行性parkinsonismに右上肢myoclonusを伴い,非典型的神経変性疾患を思わせる複雑なphenotypeを呈した.パーキンソニズム,歩行障害,構音障害が出現し,半年で介助を要するようになった,
診断;22q11.2欠失症候群
22q11.2欠失症候群は,先天性心疾患,低Ca血症,免疫異常,発達・精神症状などで知られるが,成人では若年発症Parkinson病や複雑な運動異常症の原因にもなる.特徴的なのは,単一の運動異常ではなくmixed phenotypeが多いことである.また,whole-exome sequencingが陰性でも遺伝性疾患を否定できない点が重要である.22q11.2欠失のようなcopy-number variantは,通常の遺伝子panelやWESでは見逃される可能性があり,chromosomal microarrayが重要となる.290例中15例,5.2%にミオクローヌスを認めたデータも紹介された.発症年齢中央値は24歳で,安静時および動作時にみられ,遠位上肢に多かった.
症例15.73歳男性(ポルトガル)short presentation
けいれん,失調性歩行,oscillopsia-nystagmus spell(動揺視と眼振を伴う発作),認知機能低下を呈していた.免疫療法が有効であった.
診断;CASPR2抗体関連脳炎
CASPR2抗体関連疾患では,辺縁系脳炎だけでなく,多彩な症候を呈する.
症例16.61歳男性(オランダ)
持続性の唸り声(moaning)と,体幹を繰り返し前屈させながら,同時に息を止めるという非常に特徴的な行動を呈した.
診断;Sagging brain syndromeに伴うCompulsive Repetitive Flexion with Breath-Holding(CoRFBiS)
この「反復性前屈+息こらえ」は,frontotemporal brain sagging syndrome(FBSS)に特徴的な徴候として紹介された.FBSSはbehavioral variant frontotemporal dementia(bvFTD)に類似した行動・認知症状を呈するが,背景には脊髄髄液漏出またはCSF-venous fistulaによる頭蓋内低髄液圧が存在する.したがって,治療可能なbvFTD mimicであることが重要である.さらに興味深いのは,この反復動作そのものに病態生理的意味がある可能性である.前屈と息こらえによって腹腔内圧・静脈圧が上昇し,CSFと静脈系との圧較差が低下することで,一時的にCSF lossを減少させている可能性が考えられている.一見すると強迫行動や常同行動にみえる動作が,患者自身による代償行動である可能性がある.
「なぜこの動きを繰り返すのか」を考えることが診断につながる,Video Challengeを象徴する症例と思った.
症例17.17歳男性(インド)short presentation
亜急性に全身性舞踏運動(右に強い)を呈した若年男性.背景にはチアノーゼ性先天性心疾患と著明な二次性多血症が存在した.
診断;チアノーゼ性先天性心疾患に伴う二次性多血症による亜急性全身性舞踏運動(subacute generalized chorea due to secondary polycythemia)
慢性的な低酸素血症では代償性に赤血球が増加し,二次性多血症を来す.その結果,血液粘稠度が上昇し,脳の微小循環障害などを介して舞踏運動を来すことがある.
今回の17例からは,運動異常症では,病名を先に考えるのではなく,まず目の前の動きをよく観察し,「なぜこの動きが生じるのか」を考えることが重要だと改めて感じました.低血糖,高アンモニア血症,薬剤,中毒,膠原病,代謝・遺伝性疾患など,一見すると運動異常症とは離れた病態が特徴的な不随意運動として現れます.Video Challengeの醍醐味は,珍しい病名を当てることではなく,「よく見ること」から診断に迫ることにあると思いました..

・本日発売!『医者が教える 一生パフォーマンスする脳』
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年10月10日のFB投稿です***
本日10月10日,日経BPから新刊『医者が教える 一生パフォーマンスする脳』が発売されました.嬉しいことに,ベストセラー『認知症世界の歩き方』の著者,筧裕介先生が,日経BOOKプラスに素敵な書評を寄せてくださいました.
筧先生は,認知症を高齢になってから考える問題ではなく,40代,50代から自分自身の「脳の未来」を考えることの大切さを紹介してくださっています.とくに嬉しかったのは,「読み終えたあとに残るのは,『自分にも,今できることがある』という感覚だ」と評していただいたことです.まさに,私が本書を通じて伝えたかったメッセージでした.
認知症研究は,いま大きな転換期を迎えています.認知症は,ただ恐れ,発症を待つだけの病気ではなくなりつつあります.最新の研究から,日々の生活習慣や環境を見直すことで,発症リスクを減らしたり,発症を遅らせたりできる可能性が明らかになってきました.大切なのは,こうした科学的な知識をもとに,今できることから始めることだと思います.一方で,認知症の予防を考えることは,認知症になった方の人生や尊厳を大切にすることと対立するものではありません.予防と支援の両方が大切であることも,本書で伝えたかった思いの一つです.
本書では,脳神経内科医として,認知症や脳の老化に関する最新の研究成果を,できるだけわかりやすく紹介しました.何歳になっても,自分らしく,いきいきと脳を使い続けるために,いま何ができるのか. その問いに,科学的な根拠をもとに答えることを目指しました.認知症が気になる方はもちろん,まだ自分には関係ないと思っている若い世代の方にも,ぜひ手に取っていただければ幸いです.最後に,本書の意図を丁寧に読み取ってくださった筧先生に,心より感謝申し上げます.ぜひ書評もお読みください.
◆筧裕介先生による書評(日経BOOKプラス)
https://bookplus.nikkei.com/atcl/column/041100040/092900085/
◆書籍紹介(日経BP)
https://bookplus.nikkei.com/atcl/catalog/26/09/10/02792/
◆Amazon
https://link.amazon/B08F3VwTD
◆ 楽天ブックス
https://books.rakuten.co.jp/rb/18784425/…
#一生パフォーマンスする脳 #認知症予防 #脳の健康 #日経BP
【目次】
はじめに
「認知症は、防ぎようもない」病気ですか?
プロローグ 認知症は、「予防できない」のか
そもそも、認知症とは何か
第1章 認知症の正体とは
・何が認知症を引き起こすのか
・アミロイドベータは40代からたまりはじめる
・新型コロナウイルスにかかると、アルツハイマー病のリスクは2倍になる
・インフルエンザ、帯状疱疹も脳を傷つける
・帯状疱疹ワクチンは認知症の発症を減らせる可能性がある
・認知症はなぜ女性に多いのか
・コンタクトスポーツでは「頭を守る工夫」をする
第2章 認知症と遺伝は、どこまで関係があるのか
・認知症と遺伝子、最新の知見を知ろう
・遺伝子は変えられない運命ではなく、ひとつのリスク要因にすぎない
・両親から、認知症になりやすい遺伝子をふたつ受け継いだ人は
・抗体薬はどのくらい効くのか
・タウの産生そのものを抑える薬の開発
第3章 脳と認知症治療の最前線を知ろう
・脳の老廃物を排出する機能を高める
・睡眠は、脳内を洗い流す「掃除の時間」でもある可能性がある
・睡眠とアルツハイマー病リスクの関係
・マッサージは良いかもしれない ―― マウスの研究
・超音波で脳内の不要物の排出を促す試み
・認知症の薬は、これから大きく進展する可能性が高い
第4章 あなたがやるべき認知症予防
・認知症リスクを減らす日常生活の工夫をしよう
・認知症の約45%は変えることができるかもしれない
・「教育」は健康な脳のための貯金
・大人になってからの学習も脳の健康を支える
・「悪玉コレステロール」の値が増えるごとに、認知症の発症率も上昇する
・健康診断で指摘された異常は放置しない
・運動の習慣は、認知症のリスクを下げる
・禁煙を始めるのに、遅すぎることはない
・社会的孤立は認知症と関連する

・アルツハイマー病の病態と予防に関する最新知識@第37回日本老年医学会東海地方会特別講演
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年10月11日のFB投稿です***
昨日,拙著『医者が教える 一生パフォーマンスする脳』(日経BP)が発売されました.この本は,アルツハイマー病(AD)の病態と予防に関する最新の医学的知見を,できるだけわかりやすく,一般の方々にもお伝えしたいという思いで執筆したものです.ちょうど同じ日に,第37回日本老年医学会東海地方会で,大会長の三重大学・新堂晃大教授から大変ありがたい機会を頂戴し,標題の特別講演を行いました.いわば,今回の講演で取り上げた専門的な内容を,一般の方々にも理解していただけるようにまとめたのが本書です.
講演では,いつもご支援・ご指導くださっている内藤寛先生に座長を頂き,まずADの原因とされてきたアミロイドβやタウに,実はウイルス感染から神経細胞を守るという意外な生理的役割がある可能性を紹介しました.そして,ヘルペスウイルスや新型コロナウイルスの感染が,神経炎症などを介してADの発症や進行に関与する可能性について解説しました.特に興味深いのは,脳の免疫細胞であるミクログリアの役割です.最近,加齢とともにがん関連遺伝子に体細胞変異を獲得したミクログリアが,慢性炎症などを背景に選択的に増殖し,ADの進行に関与する可能性が報告されました.これはミクログリアががん化するという意味ではなく,炎症や組織障害をもたらすタイプに変化するということです.その変化をアミロイドβやタウ,感染,ナノプラスチックなどが促進する(選択圧と言います)という新しい視点です.
さらに,ADを「脳血管の病気」として捉える重要性についても紹介しました.血管へのアミロイドβの沈着は,血管の構造や機能を障害し,脳の血流調節や老廃物の排出を妨げる可能性があります.また,睡眠と密接に関係するグリンファティックシステムや,脳から老廃物を排出する髄膜リンパ管の働きも注目されています.脳の健康を守るには,神経細胞だけでなく,免疫,血管,睡眠,老廃物の排出まで考える必要があるということです.
予防については,帯状疱疹ワクチンの接種によって認知症発症リスクが大きく低下する可能性を示した大規模研究や,高血圧,糖尿病,運動不足などへの対策を通じて,脳血管の健康を守ることの重要性を紹介しました.さらに,大気汚染やマイクロ・ナノプラスチックなどの環境要因についても,健康への影響が完全に解明されるのを待つのではなく,予防原則に基づいて対策を考える必要性をお話ししました.治療についても,アミロイドβを標的とする抗体医薬に加え,神経伝達物質受容体,炎症・免疫,血管障害など,多様な標的に対する新しい治療法の開発が広がっている現状をご説明しました.今回,最もお伝えしたかったのは,ADは単なる「異常タンパク質の蓄積病」ではなく,感染,免疫,血管,老廃物の排出障害などが複雑に関わる病気であり,だからこそ治療や予防にもさまざまなアプローチがありうるということです.講演のスライドは以下よりご覧いただけます.
https://www.docswell.com/…/800…/ZL364P-2026-10-11-055525
つまり,正しい知識を持つことで,私たちにできることはたくさんあります.その可能性を多くの方々に知っていただきたいという思いが,今回の本の執筆につながりました.脳の健康には,自分自身の取り組みによって守れる部分があります.そして,何歳からでも,脳の未来のためにできることがあります.本書を通じて,そのことを一人でも多くの方にお伝えできればと思っています.

・自己免疫性脳炎の再発と思ったら進行性多巣性白質脳症(PML)だった!―リツキシマブ治療後の重要な合併症
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年10月12日のFB投稿です***
自己免疫性脳炎の治療後に神経症状が悪化した場合,まず原疾患の再発を考えます.しかし,免疫療法の合併症であるPMLが原因である可能性もあります.今回,当科専攻医の安藤知秀先生を中心に,福島県立医科大学,国立感染症研究所との共同研究として,GABA_B受容体脳炎に対するリツキシマブ治療後にPMLを発症した,私たちの知る限り初めての症例をClin Exp Neuroimmun誌に報告しました.
患者は82歳女性で,認知機能低下,幻覚,妄想,意識障害を呈し,脳脊髄液のGABA_B受容体抗体陽性から自己免疫性脳炎と診断しました.ステロイドパルス療法と免疫グロブリン静注療法(IVIg)によって部分的に改善しましたが,高度の認知機能障害が残存したため,リツキシマブを追加しました.ところが,約6か月後,意識障害と右上肢筋力低下が進行しました.同時期に肺結節が発見されたため,小細胞肺癌に伴う自己免疫性脳炎の再発が疑われました.しかし,MRIでは従来の脳炎病変とは異なる部位に新たな白質病変が出現していました.具体的には,両側中心前回には皮質下U-fiberに及ぶ病変が,左中小脳脚にはPMLに特徴的な「shrimp sign」が認められました.脳脊髄液JCウイルス(JCV)PCRは3,053 copies/mLと陽性であり,PMLと診断しました.
重要なのは,PMLの診断より約4.5か月前に,すでにMRIで初期病変が出現していた可能性があることです.図には,MRI所見と治療,脳脊髄液JCV PCRの時間的関係をまとめています.リツキシマブ終了1か月後(図の+89日),右前頭葉皮質下に小さな新規FLAIR高信号病変が認められましたが,脳脊髄液JCV PCRは検出限界の20 copies/mL未満でした.その後,病変は拡大し,約6か月後(+235日)にはJCV DNAが3,053 copies/mLとなっていました.つまり,高感度のJCV PCRが陰性であっても,早期PMLは否定できないことが示唆されることになります.
PML発症時,CD19陽性B細胞が検出されず,血清IgGも495 mg/dLまで低下していました.一方,CD4陽性T細胞数は保たれていました.恐らくリツキシマブによるB細胞枯渇に加え,ステロイド治療や潜在的な悪性腫瘍が,JCVに対する免疫監視機構を抑制した可能性が考えられます.もちろん,1例のみですので,リツキシマブとの直接的な因果関係を証明することはできません.
本症例は,自己免疫性脳炎の治療後に神経症候が悪化した際,安易に再発と判断せず,PMLを鑑別に挙げることの重要性を示しています.とくに,既存の脳炎病変とは異なる部位に新たな白質病変が出現した場合には,脳脊髄液JCV PCRが陰性でも,MRIの経時的評価とPCRの再検査を行う必要があります.免疫療法を強化する前に,自己免疫性脳炎の診断そのものを再検討することが大切だと学びました.
Ando T, Yoshikura N, Kimura A, Tanaka K, Nakamichi K, Shimohata T. Progressive Multifocal Leukoencephalopathy Mimicking Relapse of Anti-GABA_B Receptor Encephalitis After Rituximab-Containing Immunotherapy: A Case Report. Clinical and Experimental Neuroimmunology. 2026;17:e70083. コメント欄から全文にアクセスできます.

・重症筋無力症の抗体検査はcell-based assayに変更すべき―見逃しと誤診を減らす新たな検査法
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年10月13日のFB投稿です***
重症筋無力症(MG)の診断では,AChR抗体やMuSK抗体の測定が重要です.しかし,臨床的にMGが強く疑われても抗体が陰性となる患者がいる一方,抗体陽性でもMGではない患者(偽陽性)が存在します.この問題に対し,Neurology誌に掲載されたADAM研究と,自己免疫性神経疾患研究の第一人者Angela Vincent教授によるEditorialは,cell-based assay(CBA)がMGの抗体検査の新たなスタンダードとなる可能性を示唆しています.
まずADAM研究ですが,イタリアの4施設でMGが疑われた327例(最終診断MG 152例,その他の診断175例)を対象に,生細胞CBA(live CBA:L-CBA),固定細胞CBA(fixed CBA:F-CBA),ELISAの診断精度を前向きに比較しました.その結果,AChR抗体の検出感度はL-CBAで71.7%,F-CBAで69.0%,ELISAで63.8%でした.特に眼筋型MGでは,それぞれ60.3%,54.4%,45.6%と差が大きく,CBAの優位性が明らかになりました.さらに,ELISAで陰性だったMG患者13例で,L-CBAによってAChR抗体が検出されました.つまり,従来の検査でseronegative MGと判定されていた患者の一部で,抗体の存在を確認できたことになります.
さらに注目すべきは特異度です.ELISAではMG以外の175例中54例(30.9%!)が陽性となっていましたが,CBAではわずか4例(2.3%)でした.特異度はELISAの69.1%に対してCBAでは97.7%でした.そしてこのCBAで陽性の4例のなかにはMGを伴わない胸腺腫患者3例が含まれており,必ずしも単純な検査上の偽陽性とはいえません.いずれにせよ,CBAはMGの見逃しを減らすだけでなく,抗体偽陽性による誤診を減らせる可能性があります.
では,なぜCBAは優れているのでしょうか? Vincent先生は,その理由を図で分かりやすく説明しています.従来の放射免疫沈降法(RIPA)では,可溶化されたAChRを抗原として使用しますが,一部の抗体はこの状態のAChRには十分に結合できません(図A).一方,CBAでは細胞表面に本来の立体構造に近い状態で集簇したAChRを発現させます.すると,抗体が隣接するAChRに二価性に結合できるようになり,従来法では検出困難だった低親和性抗体も捉えられます(図B).つまり,CBAの優位性は,抗原をより生体内に近い立体構造と配置で提示できることにあるのです.さらに生細胞を用いることで抗体は細胞外ドメインにのみ結合するため,特異度の向上にもつながります.最後に商用化されたF-CBAでは固定細胞を使用するため,4℃で保存でき,成人型AChR,胎児型AChR,MuSKに対する抗体を同時に評価できます(図C).
今後,CBAに変更するメリットは,次の4点にまとめられます.
1. 従来法で見逃されていたMGを検出できる(seronegative MGを減らすことができる)
2. 特に眼筋型MGで感度が向上する
3. 偽陽性を大幅に減らせる
4. 複数の抗体を同時に測定できる
またVincent教授は,F-CBAは眼筋型MGにおける感度がL-CBAよりやや低いものの,保存性や簡便さ,複数抗原の同時評価という利点から,将来的にはMG抗体診断の新たなゴールドスタンダードになる可能性が高いと論じています.ただし,今回のADAM研究はELISAとの比較であり,従来の標準法であるRIPAとの直接比較は行われていません.したがって,今回の結果をそのままRIPAに対するCBAの優位性と解釈することはできません.また,ELISAの特異度が著しく低かった点についても,使用したキットなどの影響を考慮する必要があります.
それでも,今回の2論文は,MGの抗体検査を見直す重要な根拠となります.特に眼筋型MGや従来法で抗体陰性だった症例ではCBAを積極的に活用すべきであり,今後は実用性の高いF-CBAを日常検査に導入し,必要に応じてL-CBAを追加する体制に改善することが望まれます.
1. Giannoccaro MP, et al. Accuracy of antibody testing in myasthenia gravis: The ADAM study. Neurology. 2026;107. https://doi.org/10.1212/WNL.0000000000218301
2. Vincent A. Cell-based assays: The new gold standard for diagnosing myasthenia gravis? Neurology. 2026;107. https://doi.org/10.1212/WNL.0000000000218495

・学会に行く意義はなに?―AI時代だからこそ大切な人との出会い
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年10月14日のFB投稿です***
近年,若手医師の学会離れをよく耳にします.これにはAIの普及によって現地で知識を得る必要性が低下したことに加え,経済的・時間的負担,キャリア観の変化などが背景にあると考えられます.それでも,時間と費用をかけて学会に参加する意義はどこにあるのでしょうか?
この問いについて考えさせられるエッセイが最新号のNeurology誌に掲載されています.米国Vanderbilt大学のLealani Mae Acosta先生による「米国神経学会年次総会における内向的な私の告白(Confessions of an Introvert at #AANAM)」です.著者が2011年,研修医として初めて米国神経学会年次総会(AANAM)に参加した際,先輩医師から「学会は何よりもネットワーキング(人とのつながりづくり)のためにある」と教えられたそうです.当時,講演から知識を吸収することに集中していた著者には,意外な言葉でした.
内向的で人見知りだった彼女は,著名な研究者に話しかける勇気がありませんでした.しかし,講演後に質問したり,シャトルバスや昼食での何気ない会話をすることで,少しずつ人脈を広げていきました.また,知り合った医師との交流が,数年後に学会での共同企画に発展したりしました.ユニークなのは,自作したアインシュタインの脳を模した帽子を学会でかぶったところ,多くの参加者から自然に声をかけられるようになったというエピソードです.内向的な著者にとって,この帽子は思いがけず人との交流を広げるきっかけになりました.
余談ですが,実は私は以前からこの帽子を知っていました.アインシュタインの脳(図左)を参考に,中心溝などを忠実に再現した手編みの帽子で,2018年のNeurology誌に紹介されています(図右).私は以前,「アインシュタイン脳」に強い関心を持ち,論文や情報を集め,例のごとくブログに書いたりしていました(その縁で,NHK特集「追跡!! アインシュタインの脳」の制作に関わりました).その際に集めた論文のなかに,この帽子の記事もあったため,今回のエッセイを読んですぐに「あの帽子の著者か!」と気づきました.
著者は現在も内向的で,学会の夜にはホテルで一人になる時間が必要だそうです.それでも,人と交流する喜びを知り,現在では直接会いたい講演者がいるセッションや,少人数で議論できる企画を優先して参加するそうです.著名な研究者との5分間の会話が,何通ものメールやオンライン検索以上の成果につながることもあると述べています.
私も彼女と同様に内向的な人間ですが,大学院生の頃,学会を通して,初めて学外の多くの友達や先輩方に知り合いました.ネットワークが広がっていくことはこんなにも楽しいことなんだと思いました.同じ神経学に取り組む仲間がたくさんいることを知る楽しさでした.
またこの話は,海外留学にも当てはまると思います.留学の価値は,日本では学べない研究手法や技術を習得することだけではありません.異なる文化や価値観に触れ,世界の研究者と信頼関係を築き,何より世界中に友人をつくることです.私自身,留学で出会った友達と,長く交流が続いていることを本当にありがたく感じています.先日のソウルの学会でも,20年来の友人夫婦と久しぶりに食事をともにしました.近況を語り合える友人が世界にいることは,かけがえのない財産です.
もちろん,若手の学会離れや留学離れには,経済的負担や臨床業務,家庭の事情など,さまざまな背景があると思います.だからこそ,私たち世代には,若手が挑戦できる環境を整え,自分たちが築いてきた国内外の人脈を次世代につなぐ責任があります.若い先生方も,AIの時代だからこそ,語学力を磨いて,ぜひ世界に飛び出し,多くの人との出会いを大切にしてほしいと思います.
1. Acosta LMY. Confessions of an Introvert at #AANAM. Neurology. 2026;107. doi:10.1212/WNL.0000000000218678.
2. Acosta LMY. The knit wit of Einstein. Neurology. 2018;91:325–326. PMID: 30104226.

・これまでになかった診療・研究・キャリアまで網羅した脳神経内科の新しい教科書,予約が始まりました!
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年10月15日のFB投稿です***
診断と治療社より刊行される『専門研修マスターノート 脳神経内科』の予約が始まりました.各領域の第一線でご活躍されている6名の先生方(井口保之先生,出雲 剛 先生,角田 亘先生,高橋牧郎先生,松本理器先生,山野嘉久先生)とともに,編集を務めさせていただきました.本書は,長年にわたり親しまれてきたロングセラー『研修ノートシリーズ 神経内科』(責任編集:鈴木則宏先生)のコンセプトを継承しつつ,主な対象読者を研修医から専攻医・専門医に移し,内容を大幅に刷新したものです.最新の医学的知見はもちろん,脳神経内科診療を取り巻く環境の変化も踏まえ,日々の診療に求められる知識と実践力を体系的に学べるこれまでにない一冊を目指しました.本書は以下の全9章から構成されています.
第1章 脳神経内科で身につけるべき診療・研究の基盤
第2章 症候学からのアプローチ
第3章 脳神経内科で学ぶべき検査
第4章 神経緩和ケア
第5章 リハビリテーション医学的アプローチの理解
第6章 脳神経外科的アプローチの理解
第7章 脳神経内科疾患の診療に必要な関連診療科の知識
第8章 脳神経内科疾患の診療
第9章 脳神経内科医としてのキャリアアップ
今回の改訂で特に力を入れたのは,従来の疾患中心の教科書では十分に取り上げられてこなかった領域の充実です.神経緩和ケア,リハビリテーション,関連診療科の知識に加え,協働意思決定,遺伝カウンセリング,神経倫理,妊娠,移行期医療,災害医療,遠隔医療,社会保障制度など,現代の脳神経内科医に求められる幅広いテーマを盛り込みました.さらに,基礎研究やトランスレーショナル・リサーチ,臨床試験,論文の読み方・書き方,留学,バーンアウト対策,リーダーシップなど,脳神経内科医として学び,成長し続けるための知識も充実させました.診断や治療の技術だけでなく,患者さんやご家族と向き合う姿勢,研究への取り組み方,自身のキャリアの築き方までを視野に入れていることが,本書の大きな特徴です.いわば,自分自身が「こんな教科書が欲しかった」と思えるものを形にしたつもりです.
各分野に精通した先生方にご執筆いただき,最新の知見を反映した,図表も豊富で実践的な内容となりました.日々の診療で考え,判断する力を磨き,脳神経内科医として生涯にわたり学び続けるための一冊になればと願っています.若手からベテランまで,多くの脳神経内科医の皆様にご活用いただければ幸いです.ご多忙のなかご尽力くださった執筆者の先生方,編集委員の皆様,そして刊行に携わってくださった出版社の皆様に,心より感謝申し上げます.
書名:『#専門研修マスターノート #脳神経内科』
出版社:#診断と治療社
責任編集:下畑享良
編集:井口保之,出雲 剛,角田 亘,高橋牧郎,松本理器,山野嘉久
刊行予定:2026年11月16日
定価:9,900円(税込)
Amazon:https://link.amazon/B00nnDXi8
楽天ブックス:https://books.rakuten.co.jp/rb/18826604/…

・閃輝暗点は脳内を毎分3 mmで進む―岩田誠先生のご研究から学ぶ拡延性抑制の新しい理解
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年10月17日のFB投稿です***
先日,岩田誠先生から興味深いご論文の別刷りを頂戴しました.岩田先生と松井孝嘉先生による「閃輝暗点の自己記録」という論文です.閃輝暗点は,視野の一部にギザギザした光が現れ,数分から数十分かけてゆっくり広がる,片頭痛の前兆として知られる視覚症状です.1941年,神経心理学者Lashleyは自分自身の閃輝暗点を詳細に記録し,その広がり方から,大脳皮質上を毎分2~3 mm程度で伝播する神経活動の変化が存在すると推測しました.
岩田先生らは,頭痛を伴わない閃輝暗点を繰り返す68歳女性に,症状の出現から消失までの経過を自分で記録してもらいました.患者さんは視点を固定したまま,閃輝暗点の広がりを1分ごとに記録し,異なる日に2回の記録を行いました(図1).その結果,2回の記録は驚くほど一致しており,視覚野の解剖学的な位置関係を考慮して計算すると,神経活動の変化は毎分約3 mmで伝播していると推定されました.これはLashleyが約85年前に報告した速度とも一致しています.一人の患者さんの丁寧な観察から,脳内で起きている現象の速度を推定できることに驚くとともに,感銘を受けました.
この現象の背景にあるのが,大脳皮質拡延性抑制(cortical spreading depression:CSD)です.岩田先生のご論文を拝読し,関連文献を調べてみたところ,今年のNature Reviews Neurology誌に,この現象を新たな立場で捉え直す論文が発表されていました.つまりCSDを含む拡延性抑制(spreading depression:SD)が,片頭痛だけでなく,脳梗塞,脳出血,てんかん,脳腫瘍などに共通する病態であることを強調した論文で,マサチューセッツ総合病院のCenk Ayata博士らによるPerspective(展望論文)です.
SDは,神経細胞の大規模な脱分極が灰白質をゆっくり伝播する現象で,著者らは「brain tsunami(脳内の津波)」と表現しています.伝播速度は毎分2~5 mm程度で,実際に片頭痛の視覚前兆を捉えた現代の脳画像研究でも,後頭葉皮質を毎分約3 mmで伝播することが確認されています.これは岩田先生らが患者さんの観察から推定した速度とよく一致します.SDが通過する際には,まず神経細胞が一時的に興奮し,続いて活動が強く抑制されます.そのため,光がちらつく,異常感覚が広がるといった陽性症状に続き,視野欠損,感覚低下,麻痺などの陰性症状が現れます.
SDの発生機序を示したのが図2です.強い神経活動や虚血によって神経細胞が一斉に脱分極すると,通常3~4 mM程度の細胞外K⁺濃度が約12 mM(ピンク)を超え,SDが誘発されます(図2Aa).さらに大量のK⁺放出(K)によって20~60 mM程度まで上昇し(図2Ab;オレンジ),同時に放出されるグルタミン酸(G)とともに周囲の神経細胞を脱分極させます(図2Ac,Ad).興味深いことに,この大きな電気生理学的変化は通常の頭皮脳波ではほとんど検出できません.そのため,SDは日常診療で十分に認識されてこなかった可能性があります.
論文では,片頭痛と診断されていたものの,器質的疾患が背景にあった3症例が紹介されています.最初は56歳男性で,左母指から手,顔面,口腔内へと約15分かけて広がる異常感覚を繰り返し,後に右内頸動脈閉塞と脳梗塞が判明しました.2例目は慢性硬膜下血腫の手術後に,失語と左上肢へ広がる異常感覚を繰り返した40歳男性です.3例目は視覚症状,感覚症状,言語障害を伴う片頭痛様発作を繰り返していた21歳女性ですが,左頭頂後頭葉の脳動静脈奇形が発見され,摘出後に発作が消失しました.典型的な片頭痛前兆に見える症状でも,重大な器質的疾患が隠れている可能性を示しています.
SDの発生は,既報のヒトの電気生理学的研究でも確認されています.例えば,広範な中大脳動脈梗塞に対して減圧開頭術を受けた16例のうち14例で,合計169回のSDが記録されています.また,くも膜下出血では発症6~8日頃にSDが増加し,遅発性脳虚血との関連が示されています.重症頭部外傷や重症脳内出血でも,開頭術後などに頭蓋内電極で調べた患者の約60~70%にSDが確認されています.ただし,これらは主に重症患者を対象とした研究であり,一般の患者における発生頻度を示すものではありません.SDは大量のエネルギーを消費するため,虚血や低酸素状態では脳組織障害を悪化させる可能性があります.
臨床的に重要なのは,一過性脳虚血発作(TIA)との鑑別です.一般にTIAでは症状が突然出現するのに対し,片頭痛の前兆では徐々に広がります.しかし,脳虚血自体がSDを誘発する場合があり,症状がゆっくり広がるからといってTIAを除外することはできません.
SDが片頭痛だけでなく,さまざまな神経疾患で生じることを示したのが図3です.図3aでは,脳梗塞,くも膜下出血,頭部外傷,脳動静脈奇形などを背景にSDが発生し,周囲の大脳皮質へ伝播する様子が示されています.図3bは,ヒトの大脳皮質表面に留置した硬膜下電極による実際の記録で,神経活動の抑制と大きな陰性の緩徐電位変化が,隣接する電極へ順番に伝わることが確認できます.
こうした知見を踏まえ,著者らはSDによる神経症状を呈する疾患を「一次性」と「二次性」に分類することを提案しています.一次性は前兆のある片頭痛など,明らかな器質的病変を認めないもの,二次性は脳梗塞,脳出血,脳腫瘍,血管奇形などによってSDが誘発されるものです.症状がいつも同じ側に出現する,高頻度に繰り返す,40歳以降に初めて発症する,視覚症状以外から始まるといった特徴は,二次性SDを疑う手がかりになります.「見れども見えず」という言葉がありますが,この病態を知らなかったので,私自身もこれまで見逃していた症例があったかもしれません.ただこの分類は著者らの提案段階のものです.いずれにしても この論文の最大のメッセージは,「片頭痛の前兆に似た症状=片頭痛」と考えるべきではないということです.
岩田先生らのご研究と今回のPerspectiveを続けて読むと,一人の患者さんの閃輝暗点の観察が,脳卒中,てんかん,脳腫瘍などを含む広い神経疾患の病態理解につながることが分かります.1941年のLashleyによる自己観察,岩田先生らによる患者さんの記録,そして現代の電気生理学的研究が,いずれも毎分約3 mmという伝播速度で結び付いている点は印象的です.患者さんの症状を丁寧に聴き取り,その時間的・空間的な広がりを把握するという神経症候学の基本が,脳内で起こる現象の理解に直結することを教えてくれる,興味深い2編の論文でした.
1)岩田誠,松井孝嘉.閃輝暗点の自己記録.脳神経内科.2026;105:324–326.
2)Ayata C, et al. Tsunamis hiding in plain sight: spreading depression in clinical neurology. Nat Rev Neurol. 2026;22:251–266. doi: 10.1038/s41582-026-01191-1. PMID: 41814024.

・「研究はとても楽しい」――片頭痛研究の巨匠Jes Olesen教授が若い研究者に伝えたい7つの研究哲学
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年10月20日のFB投稿です***
今年,85歳を迎えたデンマークの脳神経内科医,Jes Olesen教授の研究人生を振り返り,数々の発見がどのような発想から生まれたのかを紹介したEur J Neurol誌の論文です.著者はロシアのElena R. Lebedeva教授で,2026年5月に行われたインタビューをもとに執筆しています.Olesen教授は,片頭痛発作中の脳血流変化を客観的に示し,NO(一酸化窒素),CGRP,PACAPが片頭痛を誘発することを明らかにしました.これらの発見は抗CGRP抗体やゲパントなどの治療薬の開発につながりました.また,国際頭痛分類(ICHD)の確立にも中心的な役割を果たしました.本論文では,こうした業績を生み出したOlesen教授の研究哲学を,以下の7つの視点から紹介しています(図).
1.研究する価値のある疾患を選ぶ
教授は,研究対象として意識的に患者数の多い片頭痛を選びました.当時の片頭痛は,発作中の異常を客観的に測定することが困難な疾患でした.しかし,教授はそれまで研究してきた脳血流の知識と技術を応用すれば,新しい発見につながると考えました.研究テーマを選ぶ際には,臨床的重要性に加えて,自分の強みを生かせるかどうかが重要です.
2.誰も測定していないものを測定する
教授は,脳内の35か所の局所脳血流を測定できる装置を用い,片頭痛の前兆に伴う脳血流変化を初めて客観的に捉えました.脳血管造影によって偶然誘発された前兆を研究に利用し,脳血流の低下が大脳皮質をゆっくりと広がる現象(spreading oligemia)を明らかにしました.これは,片頭痛の前兆に皮質拡延性抑制(CSD)が関与することを支持する重要な発見でした.新しい発見には,これまで測定できなかった現象を捉える工夫が必要です.
3.常識とされている説明を疑う
当時,認知症に伴う脳血流低下は,神経細胞の機能障害を引き起こす「原因」と考えられていました.教授は,認知症患者で安静時脳血流が低下している一方,二酸化炭素負荷によって脳血流が約2倍に増加することを示しました.これは脳血管の拡張予備能が保たれていることを意味します.安静時の脳血流低下は一次的な血液供給障害ではなく,神経細胞の活動性や代謝需要の低下に伴う二次的な変化であると考えました.つまり,脳血流低下は認知症の原因ではなく「結果」であるという解釈です.この研究は,観察された関連性から因果関係を安易に判断せず,生理学的な介入によって検証することの重要性を示しています.
4.疾患を実験的に再現して原因を検証する
教授の代表的な業績が,human provocation model(ヒト疾患誘発モデル)です.ある物質が疾患の発症に関与するなら,その物質を投与することで症状を再現できるはずだという発想です.ニトログリセリンによる片頭痛誘発に続き,CGRPやPACAP38も発作を誘発することを示しました.こうした研究がCGRP標的治療薬の開発につながりました.「観察」による関連の発見から,「介入」による因果関係の検証へ進むことが重要であることを示しています.
5.研究を進めるための共通基盤をつくる
教授は国際頭痛分類(ICHD)や片頭痛治療薬の臨床試験方法の標準化にも尽力しました.さらに,診断基準自体も検証すべき研究対象だと考えました.実際,前兆のある片頭痛と一過性脳虚血発作(TIA)の鑑別基準を患者データで検証し,ICHD-3の改訂につなげました.診断基準は一度作れば完成するものではなく,科学的根拠に基づいて改善し続ける必要があります.
6.自分にない技術は,他の研究者から学ぶ
教授は,「一つの研究グループですべての技術を持つことは不可能だ」と述べています.自分たちの強みを理解し,不足する技術を持つ研究者と協力することが重要です.設備や研究費が十分でない施設でも,臨床的特徴を詳細に評価した患者集団を集めるなど,独自の貢献ができます.
7.研究を楽しむことが最大の原動力になる
教授は60年以上にわたって研究を続け,約60名の博士課程学生を指導してきました.その原動力は賞や名誉ではなく,それまで分からなかったことを理解し,新しい知識を得る喜びでした.教授は研究人生を次の一言で表しています.
Doing research and difficult things is a lot of fun.
「研究をすること,そして難しいことに挑戦することは,とても楽しい」
この気持ち,私もとても良く分かります.
本論文が若い研究者に伝えているのは,優れた研究には特別なひらめきだけが必要なのではないということです.重要な臨床課題を選び,常識を疑い,新しい方法で仮説を検証し,他分野と協力する.こうした姿勢の積み重ねが大きな発見につながります.そして何より,分からないことを解き明かす知的な喜びこそが,研究を長く続けるための最大の原動力になるのだと思います.とても納得がいきますし,研究を志す若い先生方にもお読みいただきたいと思いました.
Lebedeva ER. Science Is a Lot of Fun: How Professor Jes Olesen Made Discoveries in Migraine. Eur J Neurol. 2026;33:e70775.
肖像画は以下のページより引用  https://schmerzklinik.de/…/international-headache…/

・化学的に安定なはずのプラスチックがなぜ有害なのか?活性酸素の生成という驚きのメカニズム(Nature誌)
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年10月22日のFB投稿です***
マイクロプラスチックとナノプラスチック(MNPs)は,環境中だけでなく,ヒトの血管や脳組織からも検出されています.2024年のNEJM誌では,頸動脈プラークにMNPsが検出された患者は,検出されなかった患者と比較して,その後の心筋梗塞,脳卒中,全死亡を合わせたリスクが約4.5倍高いことが報告されました.また,2025年のNature Medicine誌では,認知症患者の脳組織から高濃度のMNPsが検出されたことが報告されています.しかし,MNPsがどのような仕組みで生体に悪影響を及ぼすのかは,十分に解明されていません.プラスチックは一般に化学的に安定なため,その毒性は添加剤や表面に吸着した有害物質,粒子そのものによる物理的刺激などで説明されてきました.ところが今回,米国コロンビア大学とカリフォルニア大学バークレー校を中心とする研究グループは,マイクロプラスチックが水と接触するだけで活性酸素を自発的に発生させるという,これまで想像もされていなかった驚きのメカニズムをNature誌に報告しました.
研究者らはまず,ポリスチレン(PS)の微粒子を水に加え,活性酸素によって分解される色素を用いて検討しました.その結果,10日間で色素の約90%が分解されました.一方,エタノールなどの有機溶媒中では同様の分解はほとんど起こりませんでした.さらに,電子スピン共鳴法や蛍光プローブを用いた解析から,強い酸化作用を持つヒドロキシルラジカル(•OH)が,主としてプラスチックと水の界面で持続的に生成している(!)ことが確認されました.この反応は6種類の一般的なプラスチックすべてで認められ,特にポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)など,水をはじく疎水性の強いプラスチックほど活性酸素の生成が多く,疎水性と生成量には強い相関が認められました(r=0.93)(図1).
では,なぜ水に触れるだけで活性酸素が発生するのでしょうか?鍵となるのは,プラスチックの表面に接する水分子の状態です.通常,水中の水酸化物イオン(OH⁻)は周囲の水分子に取り囲まれ,安定しています.ところが,水をはじくプラスチックの表面では,水分子の並び方が乱れ,OH⁻が十分に取り囲まれなくなります.さらに,表面付近には負の電荷が集まり,局所的に電気的な力が働きます.この2つの作用によってOH⁻が電子を失いやすくなり,強い酸化作用を持つ•OHが生成されると考えられます.図2は,このとき水中の酸素などが電子を受け取るという推定機序を示しています.つまり,プラスチックそのものが化学的に安定でも,水と接する表面では思いがけない化学反応が起こりうるということです.
さらに重要なのは,こうした反応が生体分子や細胞に影響することです.図3は本研究の全体像を示しており,疎水性の強いプラスチック表面では,タンパク質やDNAの吸着,タンパク質の凝集,細胞障害が生じやすくなるという概念を表しています.実際,タンパク質やDNAはMNPs表面に集積し,その程度は表面の疎水性や電気的性質によって変化しました.また,モデルタンパクとしてリゾチームを用いた実験では,プラスチック表面で凝集が促進されました.興味深いことに,ラジカル消去作用を持つ高濃度カフェインを添加すると凝集が著明に抑制され,活性酸素の関与が支持されました.さらに,マウス赤血球を用いた実験では,微粒子との接触によって赤血球が変形し,溶血も認められました溶血の程度は,プラスチック表面で活性酸素を生成する能力と相関しており(r=0.75),活性酸素の生成が細胞障害に関与する可能性が示されました.
今回の発見は,冒頭で紹介した心血管疾患や認知症との関連を理解するうえでも重要です.注目したいのは,頸動脈プラークとヒト脳組織の研究で,いずれも「PEが主要なプラスチックとして検出されていた」ことです.今回の研究では,そのPEが水との界面で特に強い活性酸素生成能を示しました.このことから,MNPsが血管壁で持続的な酸化ストレスを引き起こし,血管炎症や動脈硬化の進展に関与する可能性が考えられます.さらに脳内では,神経細胞やグリア細胞への酸化的障害に加え,Aβやタウなどの異常タンパク質の凝集に関与する可能性も考えられます.ただし,これらは今回の発見から導かれる仮説であり,ヒトの血管や脳で同じ反応が起きていることや,心血管疾患,認知症との因果関係が証明されたわけではありません. また,認知症患者の脳内MNPsの定量についても,測定法の妥当性を含めた検証が必要です.
本研究の意義は,これまで含有する有害物質を運ぶ粒子,あるいは物理的な刺激を与える異物と考えられてきたマイクロプラスチックが,水との接触面そのものから活性酸素を生み出し,生体分子を変化させる可能性を示したことにあります.ただし,実験では比較的高濃度のプラスチックが使用されており,実際のヒト体内でどの程度の活性酸素が生成されるのかは分かっていません.今後,生体内での反応や慢性曝露による影響を検証することが必要ですが,いずれにしても今後,さらに真剣にMNPsに向き合う必要性を感じました.
1. Marfella R, et al. Microplastics and nanoplastics in atheromas and cardiovascular events. N Engl J Med. 2024;390:900–910. PMID: 38446676.
2. Nihart AJ, et al. Bioaccumulation of microplastics in decedent human brains. Nat Med. 2025;31:1114–1119. PMID: 39901044.
3. Qian N, et al. Intrinsic physicochemical activity at microplastic–water interfaces. Nature. 2026;658:650–657. DOI: 10.1038/s41586-026-11141-y. PMID: 42875572.

・脳梗塞の幹細胞治療はどこまで進んだのか?神経炎症の制御と脳の修復を目指す研究の最前線
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年10月23日のFB投稿です***
脳梗塞の治療は,静注血栓溶解療法や機械的血栓回収療法の普及によって大きく進歩しました.しかし,脳主幹動脈が閉塞した患者さんでは,血流を再開できても約半数が機能的自立を達成できません.これは,すでに傷害された神経細胞を回復させることが難しく,血流再開後にも炎症や神経細胞死が進行するためです.こうした限界を克服する方法として,幹細胞治療が注目されています.Stroke姉妹誌に脳梗塞に対する幹細胞治療,とくに動脈内投与の進歩と課題をまとめた総説が報告されています(文献1).
まず重要なのは,幹細胞治療の主な目的が,失われた神経細胞を直接補充することだけではないという点です.近年,幹細胞が分泌するさまざまな物質によって,神経炎症を抑制し,残存する神経細胞を保護し,脳の修復能力を引き出す作用が注目されています.これは「stem cell bystander effect」と呼ばれています.つまり,移植した幹細胞そのものが神経細胞に置き換わらなくても,周囲の環境を改善することで治療効果を発揮する可能性があるのです.
脳梗塞後には,ミクログリアやアストロサイトが活性化し,さらに末梢から白血球などが脳内に浸潤します.これらの細胞が放出する炎症性サイトカインや活性酸素は,血液脳関門の破綻,脳浮腫,神経細胞死を促進します.こうした炎症反応は発症24~72時間に強くなるため,急性期の神経保護にとって重要な標的となります.幹細胞は,IL-1β,IL-6,TNF-αなどの炎症性サイトカインを抑制し,IL-10やTGF-βなどの抗炎症性サイトカインを増加させることが動物実験で示されています.さらに,BDNFやVEGFなどの神経栄養因子を分泌し,神経細胞の生存,血管新生,軸索伸長,シナプス再構築などを促進すると考えられています.
図は,こうした幹細胞治療の作用機序をまとめたものです.左側にはカテーテルを用いて腕の動脈から幹細胞を脳動脈内に投与する方法が示されています.上部には,脳梗塞後に生じるミクログリアの活性化,白血球浸潤,アストロサイトの反応性変化,炎症性サイトカインの増加,血液脳関門の破綻などが描かれています.一方,右下には,幹細胞治療によって期待される炎症やアポトーシスの抑制,神経栄養因子の分泌,細胞の移動や分化の促進が示されています.つまり,幹細胞治療は単なる細胞移植ではなく,脳梗塞後の炎症環境を改善し,神経保護と神経修復を同時に促進する治療と位置づけられています.ただし,これらの作用の多くは動物実験に基づいており,ヒトでの検証はまだ十分ではありません.
今回の総説で取り上げられている幹細胞には,間葉系幹細胞(MSC),神経幹細胞(NSC)など,さまざまな種類があります.また,幹細胞を含む骨髄単核球も細胞療法に利用されています.MSCは骨髄,脂肪組織,臍帯などから採取でき,増殖させやすく,免疫拒絶のリスクも比較的低いことから広く研究されています.一方,NSCは神経細胞やグリア細胞に分化できるため,神経組織の修復という点で有望です.しかし,現時点ではどの細胞が最も適しているかは分かっていません.
私たちも新潟大学の金澤雅人先生らと共同で,脳梗塞に対する新しい細胞療法の開発に取り組んできました.この研究では,幹細胞ではなく,採血によって比較的容易に得られる末梢血単核球(PBMC)を用いています.PBMCに低酸素・低糖刺激(OGD)を加えることで,組織修復を促進する性質を持たせる方法を開発しました.動物実験では,この細胞を脳梗塞発症7日後に動脈内投与すると,血管新生や軸索伸長が促進され,神経機能が改善しました(文献2).さらに,エクソソーム中のmiR-155-5pの減少や,HIF-1αを介したVEGFの増加,ミクログリアとの相互作用などが,その作用機序に関与することを明らかにしました(文献3).2025年には,血流再開後にも低酸素状態が残存する脳組織に,SDF-1/CXCR4経路を介して投与細胞が集積し,局所のVEGF発現を増加させることを示しました(文献4).これらはまだ前臨床段階の研究ですが,血流再開後にも残る組織障害を標的とし,脳の修復を促進する新たな治療につながる可能性があります.
投与方法にも重要な問題があります.静脈内投与は簡便ですが,投与した細胞の多くが肺,肝臓,脾臓などに捕捉されてしまいます.動物実験では,静脈内投与したMSCのうち脳病変に到達するのは約4%と報告されています.一方,別の動物実験では,動脈内投与した細胞の約21%が中大脳動脈領域に分布しました.このため,病変部位に効率的に細胞を届けられる動脈内投与が注目されています.ただし,静脈内投与された細胞も脾臓などの末梢免疫系を介して神経保護作用を発揮する可能性があり,脳への到達率だけで投与経路の優劣を判断することはできません.
とくに期待されているのは,機械的血栓回収療法と幹細胞治療の組み合わせです.血栓回収療法で血流を再開させた後,使用したカテーテルから幹細胞を投与すれば,追加の侵襲を最小限にしながら病変部位に細胞を届けられる可能性があります.ただし,幹細胞は種類によっては毛細血管よりも大きく,高濃度で投与すると微小血管を閉塞させる危険性があります.したがって,細胞の種類だけでなく,投与量,濃度,注入速度などの最適化が不可欠です.
では,実際の患者さんでは効果が得られているのでしょうか.これまでの臨床試験では,幹細胞治療の安全性と実施可能性を支持する結果が蓄積していますが,有効性については明確な結論が得られていません.日本では,北海道大学の寶金清博先生を主任研究者として,全国44施設,206例の急性期脳梗塞患者を対象とした第II/III相TREASURE試験が実施され,2024年にJAMA Neurology誌に報告されました(文献5).この試験では,多能性成人前駆細胞(MultiStem)を発症18~36時間以内に「静脈内投与」しましたが,90日後の主要評価項目で有意な機能予後改善は認められませんでした.ただし,64歳以下の患者や梗塞体積が50 mL以上の患者では,探索的なサブグループ解析で良好な傾向がみられました.治療効果が患者の年齢や梗塞体積によって異なる可能性がありますが,この結果については今後の検証が必要です.
動脈内投与の臨床試験でも,有効性はまだ証明されていません.米国のテキサス大学が中心となって実施したRECOVER-Stroke試験では,48例を対象に自己骨髄由来細胞を内頸動脈から投与しましたが,90日後の機能予後に有意な改善は認められませんでした(文献6).また,治療群の4例ではMRIで無症候性の小さな虚血性病変が認められ,微小塞栓への注意が必要であることも示されました.一方,スペインで行われたIBIS試験では77例をランダム化しました(文献7).発症1~7日以内に自己骨髄単核球を動脈内投与したところ,180日後に良好な機能予後(mRS 0~2)を達成した割合は,対照群39%,低用量群50%,高用量群44%でしたが,統計学的に有意な差は認められませんでした.興味深いことに,高用量群より低用量群で良好な傾向がみられ,細胞は投与量を増やせば効果が高まるとは限らない可能性が示唆されました.
では,なぜ動物実験で良好な結果が得られているにもかかわらず,ヒトでは有効性を証明できないのでしょうか?著者らは,動物実験では若く健康な動物が用いられる一方,実際の脳梗塞患者は高齢で併存疾患を持つことが多く,脳の修復能力が異なる点を指摘しています.また,細胞の種類,投与量,投与時期,対象患者が試験ごとに異なることも問題です.動物実験では発症後24~72時間以内,あるいは最初の1週間以内の投与が有望とされています.ヒトでも,静脈内投与のTREASURE試験では発症18~36時間以内,動脈内投与のIBIS試験では発症1~7日以内,RECOVER-Stroke試験では発症後約2週間に細胞が投与されました.しかし,いずれも主要な有効性評価項目で有意な改善は認められず,最適な投与時期や治療効果が期待できる患者群は,まだ明らかではありません.
今後は,治療に反応しやすい患者を見つけることも重要です.例えば,年齢,梗塞体積,病変部位,側副血行路,残存する神経回路などが治療効果を左右する可能性があります.また,従来のmRSやNIHSSだけでなく,機能的MRIや拡散テンソル画像による神経ネットワークの評価,炎症性サイトカインなどのバイオマーカーを組み合わせ,幹細胞が実際に何を変化させているのかを明らかにする必要があります.さらに,細胞療法と神経リハビリテーションを組み合わせる治療戦略の重要性に言及しています.私自身も,細胞療法によって促進された神経修復を実際の機能回復につなげるためには,適切なリハビリテーションを組み合わせ,神経可塑性をさらに高めることが重要ではないかと考えています.
文献
1.McMillan N, et al. Stroke Vasc Interv Neurol. 2026;6. doi: 10.1161/SVIN.125.001648. PMID: 42708127.
2.Hatakeyama M, et al. Sci Rep. 2019;9:16819. doi: 10.1038/s41598-019-53418-5. PMID: 31728010.
3.Otsu Y, et al. Neurotherapeutics. 2023;20:1369–1387. doi: 10.1007/s13311-023-01398-w. PMID: 37335500.
4.Kanayama T, et al. Exp Neurol. 2025;385:115121. doi: 10.1016/j.expneurol.2024.115121. PMID: 39710242.
5.Houkin K, et al. JAMA Neurol. 2024;81:154–162. doi: 10.1001/jamaneurol.2023.5200. PMID: 38227308.
6.Savitz SI, et al. Circulation. 2019;139:192–205. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.117.030659. PMID: 30586746.
7.Moniche F, et al. Lancet Neurol. 2023;22:137–146. doi: 10.1016/S1474-4422(22)00526-9. PMID: 36681446.

・第1回日本機能性神経障害(FND)研究会が開催されます!
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年10月24日のFB投稿です***
帝京大学の園生雅弘先生を中心に「日本機能性神経障害(FND)研究会」が設立され,2027年1月16日(土)に第1回研究会が開催されます.
FNDは決して稀な疾患ではありません.しかしその診断や治療に関する理解はまだ十分に浸透しているとはいえません.また,適切な診療には脳神経内科だけでなく,精神科,リハビリテーション科,整形外科,総合診療科など,多くの診療科・職種の連携が欠かせません.本研究会は,こうした診療科の垣根を越えて知識や経験を共有し,FNDの診療と研究を発展させることを目指しています.
第1回研究会では,FNDの新潮流,精神科から見たFND,機能性発作,FNDの病態と治療,リハビリテーションなど,幅広いテーマが取り上げられます.私も「機能性不随意運動」について講演します.さらに,FNDの診断に重要な陽性徴候のライブデモンストレーションや症例検討も予定されており,実践的な内容となっています.詳しいプログラムは添付画像をご覧ください.
【開催概要】
日時:2027年1月16日(土)13:00~17:40
会場:帝京大学大学棟2階 208教室(東京都板橋区加賀2-11-1)
参加費:医師2,000円,メディカルスタッフ1,000円,卒前学生500円
開催形式:現地開催のみ(Web配信なし)
本研究会は医療関係者を対象としています.参加には事前登録が必要ですが,研究会への入会がなくても参加は可能です(しかしぜひ入会もご検討ください).なお,参加登録にはm3.comの無料アカウントが必要です.
FNDの診療に関心をお持ちの医療関係者の皆様にとって,最新の知見を学ぶだけでなく,さまざまな立場の専門家と直接議論できる貴重な機会になると思います.ぜひ多くの皆様にご参加いただければ幸いです.
詳細・参加登録はこちらです.
http://japan-fnd-studygroup.kenkyuukai.jp/event/

・同じアミロイドβの蓄積でも,なぜ認知症の進行は異なるのか?―「隠れた状態にあるミクログリア」という新しい視点
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年10月25日のFB投稿です***
アルツハイマー病(AD)では,脳内にアミロイドβやタウが蓄積しますが,同程度の病理変化であっても,認知機能の低下が速い人と遅い人がいます.この違いはなぜ生じるのでしょうか?これまで,APOEなどの遺伝的背景,脳血管障害,神経予備能などが関係すると考えられてきました.最近,新たな可能性として注目されているのが,脳内の免疫細胞であるミクログリアが「過去の炎症を記憶している」という現象です.この興味深い考え方を解説した総説が最新号のNature Reviews Neuroscience誌に発表されました.
まずミクログリアについてですが,脳内に常在する免疫細胞で,異常なタンパク質や損傷を受けた細胞を除去し,脳内環境を維持しています.ADでは,アミロイドβの周囲に集まる疾患関連ミクログリア(disease-associated microglia:DAM)が注目されています.DAMでは,TREM2,APOE,LPLなどの脂質代謝や貪食に関わる遺伝子の発現が増加します.これらの細胞はアミロイドβを密にまとめて周囲の神経組織への悪影響を軽減する場合がありますが,一方で炎症性サイトカイン,活性酸素,補体などを介してシナプス障害を促進することもあります.つまり,ミクログリアはその状態によって神経保護的にも神経傷害的にも働きます.
この総説でとくに重要なのが,「隠れた状態にあるミクログリア(hidden microglial states)」という新しい概念です.これは,過去の感染症や全身性炎症によってミクログリアに長期的な変化が生じ,炎症が収束した後もその影響が残っている状態です.興味深いのは,細胞の形態や通常時の遺伝子発現が正常に戻っていても,次の刺激に対する反応が変化していることです.図1では,感染や炎症によって活性化したミクログリアが,炎症の収束後に通常の状態へ戻る一方,一部の細胞にはエピジェネティックな変化や代謝の変化が残る仕組みが示されています.つまり,炎症が消失しても,ミクログリアが完全に元の状態に戻ったとは限らないということです.
この現象は「自然免疫記憶(innate immune memory)」と呼ばれ,2つの方向があります.ひとつは「訓練免疫(trained immunity)」で,過去の刺激によって次の炎症刺激への反応が増強されます.もうひとつは「免疫寛容(immune tolerance)」で,反対に反応が弱くなります.これは,過去の炎症によって,DNAの働きを調節する仕組みや細胞のエネルギー代謝が変化するためと考えられています.つまり,過去の炎症によってミクログリアの性質が変化し,炎症が治まった後もその変化が残るため,次に炎症が起きたときの反応が変わるということです.
図2では,通常のミクログリアと「隠れた状態にあるミクログリア」を比較し,平常時には同じように見えても,再び刺激を受けたときの反応が異なることを示しています.後者では,炎症応答が過剰になる場合もあれば,反対に減弱する場合もあります.では,このような免疫記憶はADにどのような影響を及ぼすのでしょうか?例えば,訓練免疫の状態になったミクログリアは,アミロイドβやタウが蓄積した際に,炎症性サイトカインや活性酸素,補体などを過剰に産生し,シナプス消失や神経回路障害を促進する可能性があります.一方,免疫寛容の状態では,アミロイドβの除去やアミロイド斑の緻密化が不十分となり,毒性のある可溶性オリゴマーが残存する可能性があります.つまり,免疫反応が強すぎても弱すぎても,ADの病態に悪影響を及ぼす可能性があります.
実際,マウスを用いた研究では,末梢の免疫刺激によって自然免疫の訓練や寛容を誘導すると,その後のアミロイドβやタウの病理が変化することが報告されています.これは,全身で起こった炎症が脳内のミクログリアに長期的な影響を残し,神経変性の進行を左右する可能性を示しています.ただし,これらの知見は主に実験モデルに基づくものであり,ヒトADにおいて,過去の感染症や炎症がミクログリアの免疫記憶を介して病気の進行を変えることが証明されたわけではありません.
今後の課題は,この「隠れた状態にあるミクログリア」をヒトで検出することです.通常の遺伝子発現解析では区別が難しいため,刺激後のサイトカイン産生や貪食機能,ヒストン修飾,細胞代謝などを評価する方法が検討されています.将来的には,脳脊髄液中の炎症関連分子やPET画像による評価も期待されます.治療面では,炎症を一律に抑制するのではなく,有益な貪食機能を維持しながら有害な炎症反応を調節することが重要になります.エピゲノムを調節する薬剤やTREM2を標的とした治療,ミクログリアの細胞治療などが提案されていますが,いずれも今後の検証が必要です.
今回の総説を読んで重要だと思ったのは,神経炎症を「現在どの程度炎症が起こっているか」だけで評価するのでは不十分かもしれないという点です.今後は「脳が過去にどのような炎症を経験してきたか」という時間的な視点も重要になる可能性があります.またこの考え方は,新型コロナウイルス感染症などのウイルス感染後に認知機能障害が生じる仕組みを理解するうえでも興味深いものです.実際,COVID-19罹患後には認知症の発症リスクが増加することが疫学研究で報告されています.その機序のひとつとして,ウイルス感染によってミクログリアに長期的な免疫記憶が形成され,その後のアミロイドβやタウに対する反応が変化する可能性が考えられます.とくに,すでにアルツハイマー病理が存在する人では,感染を契機に認知機能低下が加速する可能性もあります.ただし,これらは現時点では仮説であり,ヒトにおける直接的な検証が必要です.
Eggen BJL, Kooistra SM. Microglial states revisited: from homeostasis to disease. Nat Rev Neurosci. 2026;27:676–686. DOI: 10.1038/s41583-026-01066-w. PMID: 42477453.

・自己免疫性脳炎はひとつの病気ではない!―Dalmau先生らが提唱する疾患別診療への転換
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年10月26日のFB投稿です***
自己免疫性脳炎の研究を牽引してきたJosep Dalmau,Francesc Grausらが,Lancet Neurology誌に重要な論考(Personal View)を発表しました.著者らは,「自己免疫性脳炎」をひとつの疾患群としてまとめて扱う従来の考え方を見直し,抗体ごとに独立した疾患として研究・診療する必要があると提唱しています.個人的には,これはすでに当然の考え方だと思っていましたが,確かに現在も異なる自己免疫性脳炎を一括して解析する研究が少なくないことを考えると,著者らの提言にも納得がいきます.
これまで,抗AQP4抗体陽性視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)と抗MOG抗体関連疾患(MOGAD)は,異なる疾患として分類され,それぞれに適した治療法の開発が進んできました.一方,自己免疫性脳炎では少なくとも17種類の神経細胞表面抗原に対する抗体関連疾患が知られているにもかかわらず,臨床研究では一括して解析されることが少なくありません.著者らは,こうした方法では疾患ごとの重要な違いが見えなくなり,治療効果や予後の評価を誤る可能性があると指摘しています.
著者らはまず臨床像の違いを示しています(図).代表的な自己免疫性脳炎10疾患について,精神症状,認知機能障害,けいれん,運動異常症,睡眠障害,脳幹症状などの頻度をヒートマップで比較しています.抗NMDA受容体脳炎では精神症状や認知機能障害,抗LGI1脳炎では記憶障害とけいれん,抗IgLON5病では睡眠障害や運動異常症が目立ちます.抗GABA-B受容体脳炎ではけいれん,抗グリシン受容体関連疾患では筋強剛やミオクローヌスが特徴的です.同じ自己免疫性脳炎でも,抗体によって症候の組み合わせが大きく異なることが一目でわかります.
さらに,抗体の作用機序も異なります.抗NMDA受容体抗体は主にIgG1で,受容体の内在化を引き起こしますが,この変化は基本的に可逆的です.抗LGI1抗体は主にIgG4で,LGI1の機能を阻害し,Kv1.1カリウムチャネルやAMPA受容体の減少を通じて神経細胞の興奮性を高めます.一方,抗IgLON5抗体も主にIgG4ですが,IgLON5の不可逆的な減少や細胞骨格の変化を引き起こし,タウ蛋白の蓄積にも関与する可能性があります(自己免疫性タウオパチーと呼ばれます).
免疫療法への反応も異なります.抗NMDA受容体脳炎では第一選択治療への反応率は約53%で,約半数がリツキシマブなどの第二選択治療を必要とし,回復には長期間を要することがあります.抗LGI1脳炎では第一選択治療への反応率が50~80%と比較的高く,FBDSなどが数日から数週間で改善することがあります.一方,抗IgLON5病では免疫療法への反応が不十分なことが多いものの,発症後1年以内の治療開始が良好な転帰と関連しています.著者らは,「治療抵抗性」の定義も疾患ごとに検討する必要があると指摘しています.
長期予後にも重要な違いがあります.抗NMDA受容体脳炎の92例の追跡研究では,発症3年以上で91%がmRS 2以下まで回復しましたが,34%に認知機能障害が残存し,30%は復学・復職できませんでした.抗LGI1脳炎でも記憶障害が残りやすく,中央値7年間の追跡では正常な認知機能を維持していた患者は25%にすぎませんでした.海馬のCA2~CA4領域や歯状回の萎縮が関与すると考えられています.抗IgLON5病は一時的に安定しても進行することがあり,嚥下障害や呼吸障害が生命予後を左右します.
特に注目したいのは,抗NMDA受容体脳炎では長期間の意識障害が必ずしも回復不能を意味しないという指摘です.9か月以上植物状態が続いた45例の国際共同研究では,中央値約5年間の追跡で62%が完全または相当程度の回復を示しました.一方,治療抵抗性の判定時期は研究によって2週間から39か月と大きく異なっていました.著者らは,免疫療法の効果が遅れて現れる可能性(!)を考慮し,早期に治療を無効と判断したり,回復の可能性を否定したりすべきではないと述べています.
また,「自己免疫性精神病」や「自己免疫性てんかん」といった包括的な診断概念にも再考を促しています.「自己免疫性精神病」は独立した疾患概念としての根拠が十分ではなく,可能な限り「抗NMDA受容体脳炎に伴う精神症状」のように原因疾患を明示すべきだとしています.また,「自己免疫性てんかん」についても,脳炎急性期に生じる症候性発作と,脳炎後に慢性的な発作再発リスクが残るてんかんを区別する必要があります.こうした症候群名だけでは,疾患ごとの病態や治療方針の違いを十分に反映できないという問題があります.
これまでは新しい自己抗体を発見し,原因不明の疾患を同定することが研究の中心でした.今後は,各疾患の自然歴,治療反応性,長期的な認知・社会機能を明らかにし,疾患特異的な予後予測や新規免疫療法の開発を進める段階にあるような気がします.「自己免疫性脳炎」という診断名は出発点であり,そこから抗体ごとの疾患特異的医療へ進むべきであるというメッセージが,本論文の核心だと思います.いずれにしても自己免疫性脳炎研究の近年の進歩は目覚ましく,2023年に編集させていただいた『自己免疫性脳炎・関連疾患ハンドブック(金芳堂)』についても,最新の知見を踏まえたアップデートの必要性を強く感じています.
Dalmau J, et al. Antibody-mediated encephalitides: distinct diseases with transdisciplinary implications. Lancet Neurol. 2026;25:1039–1052. DOI: 10.1016/S1474-4422(26)00290-5.

・第38回リベラルアーツ研究会――この治療は誰のためのものか?医学生と読む東野圭吾『人魚の眠る家』
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年10月28日のFB投稿です***
今回の課題図書は,東野圭吾さんの『人魚の眠る家(幻冬舎,2015)』です.プールでの溺水事故で脳死に近い状態となった娘を,母親が最先端の医療技術を使って「生かし続けよう」とする物語で,脳死,臓器移植,ニューロテクノロジーという,脳神経内科医にとっても身近な問題が正面から描かれています.私は2015年の刊行後まもなく読んで強い衝撃を受けましたが,当時は近未来のフィクションとして読んでいました.今回10年ぶりに読み直してみると,現代医療がすでに直面している問題を先取りした作品であることに気づかされました.研究会では,最初に学生の皆さんに感想を述べてもらい,そのあとで私がミニレクチャーを行いました.
学生の感想でまず印象的だったのは,多くの学生が「この治療は誰のために行われているのか?」という点を議論したことです.娘を生かし続ける治療は,本人のためなのか,それとも家族が納得するためなのか.母親の行動は自己満足でしかないという意見がある一方で,子どもの母親の行動としては理解できるものであり,医師はその思いに寄り添うべきだという意見もありました.またある学生は「テセウスの船」のパラドックス(部品をすべて入れ替えた船は元の船と同じと言えるのか,という哲学の問い)を持ち出し,脳死前の娘と現在の娘のあいだに構造的な連続性と,娘としての役割という機能的な連続性があるのかを問い,本人は脳死前と別の状態になることを望んでいなかったのではないかと述べました.「本人にとって意義のある医療」について医学生が気づいた点が印象的でした.
もう一つ多くの学生が取り上げたのは,医師の立ち位置です.医師はフラット(中立)であるべきで,家族を支える役割に徹するべきだという意見が複数ありました.死生観は人それぞれで,延命治療について医師が自分の考えを押しつけてはいけない,という意見です.反対に,医師に求められるのは事実を伝えることだけではなく,むしろ自分自身の意見を持って家族に向き合うべきであるという意見もありました.また家族の感情に寄り添いながらも,伝えるべきことを伝える難しさを指摘した学生もいました.家族から「もし先生の家族だったらどういう選択をしますか?」と問われたとき,医師としての答えと自分個人としての答えは必ずしもイコールではないのではないか,という鋭い指摘もありました.
最後に私が行ったミニレクチャーでは,視点を変え,本書が私たちに突きつける5つの倫理的論点を整理しました(図2).いずれも,脳死と臓器移植をめぐる現代医療の重要な課題です.こうして整理してみると,東野圭吾さんがこれらの問題を深く学び,真摯に向き合ったうえで本作を書かれたことがうかがわれます.それぞれの論点については,『BRAIN and NERVE』誌12月号(クリスマス号)に掲載予定の小論文で詳しく論じていますので,刊行の際に改めてご紹介したいと思います.
まとめると,学生の皆さんは,「治療は誰のためにあるのか」「医師はどこに立つべきなのか」という,人と人との関係の側からこの作品を読んでいました.私から伝えたのは,大切なのは,病気の重さだけで治療の可能性を閉ざすことでも,医学的に「できるから」という理由だけで治療を行うことでもなく,その治療が本人の望む生き方や生活をどのように支えるのかを個々のケースで考えることが大切だということです.治療によって何を守りたいのか,どのような利益が期待でき,どのような負担を伴うのかを,患者さんや家族とともに考え続けなければなりません.簡単に答えの出る問いではありませんが,だからこそ,その問いから目をそらさず,本人の意思に向き合い続けることが,これから医療者になる皆さんに求められているのだと思います.このような大切な問いを私たちに残してくださった東野圭吾さんに,心より感謝するとともに,ご冥福をお祈りいたします.
次回第39回は私の大好きな本,超おすすめ仲野徹先生の「生命科学者たちのむこうみずな日常と華麗なる研究」です.学生たちが夢中になってよくことは間違いないと思います.本のAmazonへのリンクはコメント欄に記載しました.

・ナルコレプシー治療は『眠気を抑える』から『失われた信号を補う』へ
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年10月29日のFB投稿です***
ナルコレプシー1型は,日中の強い眠気や,笑う,驚くといった感情の変化によって筋力が抜ける情動脱力発作,睡眠麻痺,入眠時幻覚などを呈する疾患です.中心的な病態は,視床下部のオレキシン産生ニューロンが失われることです.オレキシンが欠乏すると,ヒスタミン,ドパミン,ノルアドレナリンなどの覚醒関連神経系の活動が不安定になり,日中の過度の眠気が生じます(図1).
従来の治療は,これらの覚醒関連神経系を刺激して眠気を軽減する対症療法が中心でした.これに対して,新たに開発されたオベポレクストン(oveporexton)は,オレキシン2受容体(OX2R)を直接刺激する経口薬です.失われたニューロンを再生するのではなく,欠乏したオレキシンの信号を受容体レベルで補う,病態に基づいた治療です.今回,その有効性と安全性を検証した2つの第III相試験がNEJM誌に報告されました.
研究にはフランスのモンペリエ大学病院,米国のスタンフォード大学などが参加し,武田薬品の支援で2つの国際共同,二重盲検,無作為化比較試験が実施されました.First Light試験168例では1 mgまたは2 mgの1日2回投与,Radiant Light試験105例では2 mgの1日2回投与を,それぞれ偽薬と12週間比較しました.既存のナルコレプシー治療薬は休薬しており,従来治療への上乗せ試験ではありません.
結果ですが,主要評価項目である覚醒維持検査(MWT)の改善がみられました.これは,薄暗く刺激の少ない環境で,どれだけ眠らずにいられるかを測定する検査です.図2では,治療前に平均4~6分ほどだった睡眠潜時が,12週後には約19~25分まで延長しています.偽薬群ではほとんど改善せず,偽薬との差は13.8~20.1分でした.図中の水平破線は正常の目安とされた20分を示し,2 mg群では両試験とも平均値がこの線を超えています.
自覚的な眠気を評価するEpworth Sleepiness Scale(ESS)が正常範囲の10点以下になった割合は,1 mg群で67%,2 mg群で83~84%でした.偽薬群では12~17%でした.情動脱力発作も,治療群では患者ごとの減少率の中央値が79~89%に達しました.幻覚や睡眠麻痺を含む症状の重症度,生活の質も改善しており,眠気だけでなく,複数の症状を同時に改善できたことがポイントかと思います.
一方,副作用についても興味深い点があります.まず不眠は53~58%に認められましたが,多くは1週間以内に改善しました.不眠はOX2R刺激による覚醒促進作用が夜間にも及ぶことで生じると考えられます.しかし,短期間で改善する理由は明らかではありません.睡眠覚醒回路の適応などが考えられますが,現時点では仮説にとどまります.興味深いことに,日中の覚醒改善効果は12週間維持されており,不眠の軽減を単純な薬効の減弱で説明することもできません.なぜ日中の覚醒促進効果を維持しながら,夜間の不眠だけが改善するのかは,今後解明すべき課題です.
頻尿も53~61%,尿意切迫は14~18%に認められました.オレキシン系は排尿調節にも関与すると考えられますが,原著には尿流動態検査による機序の検証は示されていません.尿量が増えたのか,少量で尿意を感じるようになったのかも不明で,頻尿だけから排尿筋過活動と断定することはできません.また,排尿関連有害事象の約半数が消失したのは12週までの経過であり,「頻尿も1週間ほどで治る」わけではありません.回復の理由も未解明です.
もう一つの疑問は,視床下部病変などによる症候性ナルコレプシーでも,1型であれば有効なのかという点です.作用機序から推論すると,オレキシン欠乏が主体で,下流のOX2Rと覚醒関連回路が保たれていれば,改善を期待できそうです.一方,病変が広範で下流の回路も障害されていれば,同じ効果が得られるとは限りません.今回の論文では症候性ナルコレプシーを独立した集団として評価しておらず,「理論上は期待できる」と「有効性が確立している」は区別する必要があります.
モディオダールとの違いも重要です.モディオダールは主として日中の眠気を治療し,添付文書では情動脱力発作などへの効果は認められていないとされています.対して,オベポレクストンでは眠気と情動脱力発作の両方に大きな改善が示されました.ただし,両薬剤の直接比較試験ではなく,モディオダールが効かなかった患者だけを対象にした試験でもありません.そのため,既存薬に対する優越性や,治療抵抗例への効果を断定することはできません.
ここからは論文外の国内情報ですが,本剤は「オーゼイフル」として2026年10月15日に発売されています.国内の通常用量は成人に1 mgを1日2回で,忍容性に問題がなく効果が不十分な場合に限り,2 mgを1日2回に増量できます.したがって,「8割以上でESSが正常化した」という結果は増量用量の2 mg群であり,通常用量の1 mg群では67%だったことにも注意が必要です.
薬剤費も大きな論点です.2026年10月の薬価は1 mg錠が2万2792円で,通常用量から計算すると,薬剤費だけで30日間約137万円,年間約1,664万円になります.これは患者さんの実際の自己負担額ではなく,薬剤費の総額です.費用対効果についての検証が必要です.
私見ですが,本剤は既存治療を適切に行っても眠気によって学業や仕事に支障が残る方,情動脱力発作が頻回の方,複数の症状や治療薬の副作用に苦しむ方では,検討する意義が大きいと考えます.反対に,既存薬で十分にコントロールされている方が,新薬という理由だけで切り替える必要はないのかもしれません.
長期安全性についても検討が必要です.特に興味深いのは,オレキシンとアルツハイマー病の関係です.これまでの研究では,オレキシンは睡眠・覚醒の調節などを通じて,アミロイドβやタウの動態に関与することが示唆されています.また,オレキシン受容体を阻害する睡眠薬によって,脳脊髄液中のアミロイドβやリン酸化タウが減少したという報告もあります.このため,同時掲載された米国エモリー大学のTrotti先生によるEditorialでは,逆にオレキシン受容体を長期間刺激した場合,これらのバイオマーカーやアルツハイマー病の発症リスクにどのような影響が生じるのか,検証する必要があると指摘しています.ただし,現時点で本剤が認知症リスクを高めるという証拠はありません.
オベポレクストンは欠乏した神経伝達を受容体レベルで代償する治療です.神経細胞が失われた後に,残された回路を利用して大きな症状改善が得られたことは重要な成果です.このことは高く評価されるべきですが,同時に,有害事象の機序,症候性ナルコレプシーへの適用,長期安全性,そして費用に見合う患者利益を見極めることが,次の課題だと考えます.
Dauvilliers Y,Mignot E,Antczak J,et al.Oveporexton for Narcolepsy Type 1 — Results from Two Phase 3 Trials.N Engl J Med.2026;395:1166–1179.doi:10.1056/NEJMoa2601598.PMID:42714024.PubMed
Trotti LM.Targeted Treatment for Narcolepsy Type 1.N Engl J Med.2026;395:1231–1232.doi:10.1056/NEJMe2607491.PMID:42714042.

・脳には老化に抵抗する仕組みがある!―内因性カンナビノイド系の機能低下と治療標的としての可能性(当科発の特定臨床研究について)
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年10月30日のFB投稿
です***
脳の老化には,神経細胞そのものの障害だけでなく,脳の健康を維持する仕組みが衰えることも関係しています.例えば,神経細胞の活動を適切に調節したり,過剰な炎症を抑えたりする働きは,加齢とともに弱まります.今回,こうした脳の働きを支える「内因性カンナビノイド系(endocannabinoid system:ECS)」と脳の老化の関係についての総説がNature Reviews Neuroscience誌に報告されています.
ECSは,体内で産生される脂質性のシグナル伝達物質とその受容体などから構成されるシステムです.主な伝達物質は2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)とアナンダミド(AEA)で,CB1受容体とCB2受容体を介して作用します.興味深いことに,大麻にもこれらの受容体や関連する分子に作用する成分が100種類以上含まれています.代表的なのがテトラヒドロカンナビノール(THC),カンナビジオール(CBD),カンナビゲロール(CBG)です.THCはCB1受容体を刺激し,多幸感などの精神作用をもたらします.一方,CBDやCBGにはTHCのような強い精神作用はなく,抗炎症作用や神経保護作用が研究されています.ただし,CBGについては特にヒトでの臨床的な有効性が十分に確立されていません.つまり,ECSは大麻成分が作用する標的であると同時に,もともと私たちの体に備わっている重要な調節システムなのです.
図1は,ECSの仕組みと加齢による変化を示しています.神経細胞では,DAGLαという酵素によって2-AGが合成され,シナプス前終末のCB1受容体に作用して神経伝達物質の放出を抑制します.これは通常の神経伝達とは逆方向に情報を伝える「逆行性シグナル伝達」と呼ばれ,神経回路の活動を安定させます.2-AGは主にMAGLという酵素によって分解されますが,加齢に伴いDAGLαと2-AGが減少する一方,MAGLの活性が増加します.さらにCB1受容体の発現や機能も低下し,神経活動の調節能力が弱まります.アストロサイトによる神経細胞へのエネルギー供給や,ミクログリアによる炎症制御にも影響する可能性があります.
こうしたECSの変化は,老年期に突然始まるわけではありません.マウスでは海馬の2-AGが生後9か月頃から減少し,ヒトの死後前頭皮質でもCB1受容体密度とシグナル伝達効率が10年ごとに約8~10%低下すると報告されています.ECSは海馬や前頭前皮質の記憶・学習機能にも関与しており,CB1受容体を欠損させたマウスでは,中年期から学習・記憶障害が顕著になります.このことは,ECSの低下が脳老化に伴って生じるだけでなく,老化の進行自体に関与する可能性を示しています.加齢に伴うECSの変化を図2にまとめました.
さらにこの総説で注目されるのが,ECSと慢性神経炎症(inflammageing;加齢に伴って生じる慢性的な軽度の炎症状態)の関係です.つまり加齢した脳では,免疫細胞であるミクログリアが炎症を起こしやすい状態になります.ECSは本来,過剰な炎症反応を抑える働きを持ちますが,その機能が低下すると,ミクログリアが炎症促進性の状態に変化しやすくなります.さらに,神経炎症がシナプス機能を障害し,認知機能低下を促進する悪循環につながる可能性があります.
図3は,加齢による脂質代謝の変化が神経炎症を促進するという,特に興味深い仮説を示しています. 加齢によってDAGL活性が低下すると,神経活動を調節する2-AGの産生が減少します.一方,MAGL活性の増加によって2-AGの分解が進み,アラキドン酸が生成されます.アラキドン酸はシクロオキシゲナーゼ(COX)によってプロスタグランジンに変換されます.さらにCOXは2-AGから直接,PGE2-Gなどの炎症に関連する脂質メディエーターも産生します.つまり,加齢によって神経機能を保護する脂質シグナルが減少するだけでなく,炎症を促進する脂質代謝が優位になる可能性があるのです.ただし,この代謝経路の変化が正常な脳老化で実際に起こるかどうかは,今後の検証が必要です.
ECSは神経炎症以外にも,海馬の神経新生,シナプス可塑性,エネルギー代謝,エピジェネティックな遺伝子発現調節などに関与しています.さらに興味深いのは,THCの作用が年齢によって異なることです.若齢動物へのTHC投与は記憶機能に悪影響を及ぼす一方,18か月齢のマウスに低用量THCを28日間投与すると,学習・記憶機能が改善し,海馬の樹状突起スパイン密度が増加しました.さらに,BDNFやKlothoなどの発現が増加し,遺伝子発現パターンが若齢マウスに近づくことも報告されています.これは,加齢によって低下したECSの働きを適切に補うことで,一部の脳老化に関連する変化を改善できる可能性を示しています.
これらを踏まえ,ヒトへの応用も検討されています.アルツハイマー病患者を対象とした低用量THCとCBDの第II相試験では,26週間後に治療群のMMSEスコアが改善したと報告されています.また,パーキンソン病では合成THC類似薬のナビロンによって非運動症状の改善が認められています.ただし,いずれも予備的な結果であり,神経変性そのものを抑制する効果が証明されたわけではありません.現時点では,大麻の使用やTHCの投与を脳老化の予防目的で推奨する科学的根拠はありません.特に,若年者では認知機能への悪影響,高齢者ではめまいや転倒,薬物相互作用などに注意が必要です.
★なお,私たちの岐阜大学脳神経内科でも,進行期パーキンソン病患者を対象に,カンナビノイド製剤「エンディミオン」の安全性と有効性を検討する第Ⅰ/Ⅱ相の特定臨床研究を立ち上げました.本研究は名古屋大学臨床研究審査委員会の承認を受け,2026年8月に臨床研究等提出・公開システム(jRCT)に登録・公開されています.現時点では安全性と有効性を検証する段階であり,治療効果が確立されたものではありません.https://jrct.mhlw.go.jp/latest-detail/jRCTs041260100
本総説の重要なメッセージは,脳の老化を神経細胞の損傷の蓄積としてだけでなく,神経活動,炎症,代謝などを調節する仕組みの衰えとして捉えることです.個人的には,ECSの機能低下によって神経保護的な脂質シグナルが減少し,炎症促進性の脂質代謝が優位になるという仮説に特に注目しています.もしECSの機能を安全に維持・回復できるならば,神経細胞の障害が進行する前の中年期から脳老化に介入できる可能性があります.脳の老化を単に受け入れるのではなく,その進行を遅らせるために何ができるのか,今後の研究に期待したいと思います.
Zimmer A. The endocannabinoid system and the ageing brain. Nat Rev Neurosci. 2026. doi: 10.1038/s41583-026-01085-7. PMID: 42888282.

・リーダーシップを管理職のための学問から,すべての医療者が当たり前に学ぶものへ@日本難病医療ネットワーク学会
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年10月31日のFB投稿です***
函館で開催中の第14回日本難病医療ネットワーク学会(大会長:矢部一郎・北海道大学教授)の教育講演1として「すべての医療者に求められるリーダーシップ―基礎から学ぶその理論と実践―」という講演をさせていただきました(スライドはリンク欄より).
私がリーダーシップを学び始めたきっかけは,仲間のバーンアウトでした.日本神経学会にてバーンアウトへの取り組みを開始し,学会員へのアンケートを行って分かったことは,過重労働だけでなく,上司の無理解やハラスメントも重要な原因であるということでした.米国神経学会でもバーンアウト対策として個人のレジリエンスを高める取り組みだけでなく,リーダーシップ教育を行っていることを目の当たりにし,自分もリーダーシップについての勉強を始めました.そして理解したことは,リーダーシップは管理職のためのものではなく,チームの誰もが身につけるべき基本能力であるということでした.
講演では,リーダーシップの歴史や理論,そして実践まで紹介しました.代表的な理論として,変革のリーダーシップ,サーバント・リーダーシップ,オーセンティック・リーダーシップなどを取り上げました.さらに,実践するうえで大切なこととして,相手や状況に応じて自分の行動を変える「コンテキスト・リーダーシップ」や,メンバーが主体的に成長できる環境をつくることの大切さを話しました.
最も伝えたかったのは,リーダーシップは生まれつきの才能ではなく,誰もが学び,身につけることのできる能力だということです.リーダーは役割であって,カリスマ性不要の「ただのコツ」とも言われています.米国神経学会やMDSなど多くの海外学会では,こうした教育が積極的に行われています.役職や年齢に関係なく,研修医でもリーダーシップが求められます.一方,日本では残念ながら,「リーダーシップは偉い人や管理職が学ぶもの」という印象が根強く,その重要性に十分な関心を持っていただけないという難しさがあります.
今回の講演後の質疑応答でも「どうすれば,より多くの医療者にリーダーシップ教育の必要性を伝えられるか?」という議論がなされました.矢部大会長は午後の大会長講演で,「人材育成こそ医療の基盤であり,そのためには早期からのリーダーシップ教育が必要である」というお考えを示され,その思いから今回,私に教育講演1の機会をくださったとお話しされました.同じ問題意識をみなさんと共有する機会をいただけたことを,大変ありがたく心強く感じました.リーダーシップに対する考え方をアップデートし,誰もがリーダーシップを学び,互いの成長を支え合う文化を広めていければと思います.今回の講演が,その一歩になれば大変嬉しく思います.
下畑 享良
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講演のスライドへのリンクです.https://www.docswell.com/…/800…/K2767V-2026-10-31-044245

 

3.特別企画:「Switching Science」はどのように生まれたか
ポールウォーキング(Standard Pole Walking)の有効性を実証するには、新しい科学の基盤が必要ではないか、と感じています。生成AIとの共同作業により、2本の英文プレプリント投稿用原稿(arXiv への投稿を想定)を、今般完成させました。

一つは、これまで当サイトで「論文5:切り替えの統合理論」として紹介してきた理論研究です。

もう一つは、その理論を出発点として新たに構築した研究開発プログラム「Switching Science」です。

1)論文5のプレプリント版
Toward a Unified Theory of Switching: Constraint Geometry, Hierarchical Reorganization, and Gait Transitions

本論文は、当サイトで既に公開している「論文5:切り替えの統合理論」を国際的な学術論文の形式に再構成したものです。

歩行から走行への切り替えを例として、
• 制約幾何学(Constraint Geometry)
• 階層的再編成(Hierarchical Reorganization)
• SCAN
• VSM
• 3D最小モデル
を統合的に解釈する理論的枠組みを提示しています。

今回のプレプリント版では、タイトル名を少し変更し、新たに参考文献体系を全面的に見直して、理論的位置づけをより明確にしました。

2)論文6「Switching Science」
Switching Science: A Testable Stochastic-Dynamical Framework for Locomotor Transitions

論文5を土台として、新たに構築した研究開発プログラムです。

本研究は、次の流れから構成されています。
Theory → Mathematics → Phenotypes → Perturbation → Measurement → Validation → Revision
言い換えれば、「理論をどのように実証可能な科学へ発展させるか」を扱う試みです。

3)予想外の変化
この論文6には、実は一つの興味深い経緯があります。

執筆当初、論文6は理論論文として構想されていました。すなわち、「切り替えとは何か」を説明するための理論群を提示する論文でした。ところが、プレプリント投稿に向けて本文と補論1~4を統合し、全体を俯瞰する作業を進める中で、論文の性格そのものが変化し始めました。そこで浮かび上がってきた問いが、「この理論は、どのように反証できるのか」だったのです。

4)反証可能性という転機
科学哲学者カール・ポパーは、科学であるためには反証可能でなければならない、と述べています。切り替え現象に関する理論を提示するだけでは、まだ十分ではありません。
・どのような観測を行えばその理論が支持されるのか。
・どのような結果が出ればその理論は否定されるのか。
こうした問いに答えられて初めて、理論は科学的研究プログラムになります。

プレプリント原稿を構成し直す過程で、私はこの問題に真正面から向き合うことになりました。その結果として、
• Phenotype Framework
• Perturbation Framework
• Measurement Architecture
• Validation Hierarchy
• Scientific Validation Cycle
などの構成要素が追加されました。

そして論文6は、「理論の提示」から「科学的研究プログラムの提示」へと進化しました。

5)生成AIとの対話から学んだこと
この変化の背景には、生成AIとの長期間の対話があります。私は主として Copilot を壁打ち相手として用い、Gemini を評定者として活用してきました。

生成AIは、優れた仮説生成能力を持っています。アブダクションの天才です。時には人間が思いつかないような連想や構想を提示し、新しい視点を与えてくれます。

しかし同時に、
• 仮説への過度の同調
• 見せかけの体系化
• 美しいが検証困難な説明
• エコーチェンバー化
といった危険性もあります。

そのため私は、仮説を生み出す役割と仮説を批判的に検証する役割を意図的に分離するように心掛けていたつもりですが、今回の論文6の改訂プロセスは、科学研究における仮説形成と反証的検討の重要性を、改めて認識させてくれました。

6)Theory から Science へ
振り返ってみると、今回もっとも重要だった成果は、論文そのものではなかったのかもしれません。むしろ、理論が科学へ変化していく過程を、自ら体験できたことにあったように思います。

当初の原稿は、「切り替え現象を説明する理論」でした。最終的な原稿は、「切り替え現象を科学として研究するための研究開発プログラム」になりました。

この変化こそが、私にとっての「Switching Science」の第一歩だったのではないか、と思えます。

おわりに
論文5は「切り替えの理論」を提示するものです。論文6は「切り替えを科学として研究する方法」を提示するものです。

今後、当サイトではこれらを基礎として、Switching Science Series IIとして連載を開始する予定です。読者の皆様にも、この新しい知的探検を楽しんでいただければ幸いです。

***リンク***
論文5のプレプリント版
Toward a Unified Theory of Switching: Constraint Geometry, Hierarchical Reorganization, and Gait Transitions へは、こちらから

論文6のプレプリント版
Switching Science: A Testable Stochastic-Dynamical Framework for Locomotor Transitions へは、こちらから

なお、上記論文・補論を引用される場合は、これらのプレプリント版をご参照・ご引用下さい。

(作成者)峯岸 瑛(みねぎし あきら)

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2026年9月のニュース

今月紹介する2つの論文は、「脊柱管狭窄症」と「骨粗しょう症」の新たな治療法につながる可能性のある研究です。岐阜大学医学部の下畑先生からの最新医学情報に見られるように医学の進歩は日進月歩ですが、北京で開かれたロボットオリンピックを見る限り、現実世界で人間の代わりとして汎用的に機能するには、知的処理能力や手先の器用さの面でまだ距離があるようです。
特別企画:AIに訊くは、「切り替えの統合理論」を踏まえて、Geminiに混迷を深める世界情勢について訊いてみました。

1.2026年9月の活動状況
・柳澤 光宏さんの投稿
ARIKAMO 大学生の夏休み中を利用した2泊3日の企業インターン&研修にシナノも参加しました。 ポールウォーキングを体験してもらい、普及活動についてチームで考えてもらいました。この中からシナノに来てくれる人がいたらラッキーですが、それよりも参加した学生の成長に繋がり、社会人として何かの役に立つことを祈っています(^.^) それにしても、しっかり自分の意見を言えるし、発表もちゃんとしているしスゴイな!!

・スマイルチームさんの投稿
20260903 午前中は毎月第一木曜日定例 スマイルチームポールウォーキング。 天気予報が微妙だったので、予め室内活動に変更。 今日は モルックを使った独自のゲーム【スマイルモルック】を楽しみました😊 脳トレも、、、楽しみました😂 #スマイルチーム #ポールウォーキング #モルック #脳トレ #相模原市南区東林公民館

・台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
【健走杖運動團練】外木山情人湖濱海大道 藍天白雲、山海相伴 健走杖運動教練們齊聚基隆外木山 一同完成 5.5公里團練!💪🥾 走出健康與活力,也走出滿滿的默契與歡樂~ 流汗後再一起享用美食🍽️,為這趟山海健走畫下幸福句點。😋 期待下一次再相約❤️ #健走杖運動 #教練團練 #雙杖在手健康跟著走

・とちぎポールウォーキング会さんの投稿
平均台に乗ってのポールウォーキングピラティスプログラムはじめています。

・中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より 9月PW駒場例会でした。 朝から雨予報が出ている例会日でしたが、いつもの様に参加者集合〜 晩秋を思わせる寒さの中(17℃)での 公園〜牧場のポールウォーキング闊歩でした。羽織物も暖を取る支度となりました〜ww まだまだPWイベントは続きます。 次回は 9/13(日)鈴与マタイスポーツパーク(旧佐久総合運動公園)PW散策です。 9/19(土)は〜佐久ぴんころウォーク〜‼️

・田村 芙美子さんの投稿
秋の長雨? 毎日よく降ります。 昨日までPW教室は蒸し暑くクーラーを入れていましたが 今日は暖房が欲しくなる涼しさです。大雨の被害のあった地域は復興が大変だろうとお見舞い申し上げます。 今日は教室は期末休暇なのに寒くて表に出る気になれません。裏のお宅から頂いた紫アザミとルエリア (写真↓和名=ヤナギバルイラソウ)が蕾を開きました。その横で大きな向日葵も今頃咲き始めて震えています🌻🌻🌻

・校條 諭さんの投稿
気まポ 夕暮れウォーク(9月12日) いつもは午前に歩くのですが、9月の気まポ(気ままにポール歩き)は、夕方5時集合という設定にしました。昨年までの例だとまだ猛暑に近い天候だったのでそうしたのですが、今年は長雨の影響で涼しいですね。 JR西荻窪駅から出発して、桃井原っぱ公園、杉並会館を経て、荻窪八幡神社のお祭りに立ち寄りました。 杉並会館は、アニメミュージアムの入っている施設で、宴会場や会議室などがあります。これまで何度も入ったことがありますが、毎日新聞の「レトロの美」という連載記事で最近取り上げられたのをきっかけに、今回改めて建物に注目しました。 職員の方に、見学をお願いして、ロビーで、寄せ木細工の床、陶板の壁、らせん階段などのアートをじっくり見ることができました。わざわざ照明を明るく切り替えてくださって助かりました。 ゴールは、西荻の洋食みかさでカンパイ。ステーキやハンバーグなど、各自好きなメニューを選んで楽しみました。 今回、風邪引きやイベントなどのため常連男子が欠席で、男子は私ひとりでした(^^)。

・中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より PW散策日〜 本日は〜鈴与マタイスポーツパーク/ 旧名佐久総合運動公園〜外周路PW散策〜プラス希望者にてのマレットゴルフ大会〜でした❗️ 1週間振りの太陽の下の散策で、参加者の笑顔もひとしおに〜‼️ @ ランチ(地元お弁当屋さん🍱)を挟み 公園内のマレットゴルフ場(一面芝生の)で18ホールを希望者(20 名程)で体験プレイでした。 世話人さんの指導で良い体験が出来皆さん大喜びでハマりそうなご夫婦も出現でした。 皆さんお疲れ様でした〜^_^ PS:さいたま市へ帰る〜遠藤コーチ〜より 内山/コスモス街道のコスモスも最盛期に〜の連絡でした。

・水間 孝之さんの投稿
第14回びんころウォーク800名を超える皆さんに参加いただきました。 台湾ポールウォーキング協会、群馬県ポールウォーキング協会、チームみなとみらいの皆さん遠くからご参加ありがとうございました。 来年もお待ちしております♪♪

・校條 諭さんの投稿
人が倒れているのを見つけたら ①「わかりますか?」と呼びかけ ②「誰か来てください!人が倒れています」と叫ぶ ③来た人に頼む   「あなたはAEDを持ってきてください」(誰か・・ではなく)  「あなたは119番通報してください」 ④呼吸の確認 ⑤胸骨圧迫 ⑥AED到着 音声の指示とおり開始(胸部圧迫、可能なら継続) 懸案の救命講習を受けてきました。ノルディックウォーキングの指導者講習のときの資格認定条件だったのですが、「受講見込み」ということで取得できたのが何年か前でした。 自宅から最も近いAED設置場所は190m離れたところにある介護施設です。両親が訪問介護やショートステイでお世話になったところで、24時間あいています。 なお、AEDの電極パッドは胸と脇腹の素肌に装着します。ですから、街中で倒れている女性にAEDを使うのをためらってしまいそうだと思っていたのですが、装着後タオルなどをかけて隠してもよくなったそうです。 参加は16人、女性の方が多く若年~中年層中心。私はたぶん最年長だったでしょう。 救命講習は最寄りの消防署などで受講できます。とても有意義です。参加をお勧めします(検索ですぐ出てきます)。

 

来月以降の開催
・長岡智津子さんの投稿
写真1件

 

2.PW関連学術ニュース
2-1)ヒューマノイドロボットの現状~第2回世界ヒューマノイドロボット競技大会~

ヒューマノイドロボットの進化の現状を伝える「ロボットオリンピック」のニュースがNature誌に掲載されています。

NATURE NEWS、27 August 2026
表題:‘Robot Olympics’ reveal humanoids’ rapid progress — and flaws
Humanoid robots broke records at sporting events such as sprints, but struggled at practical tasks such as hammering nails.
(和訳:ロボットオリンピック」が明らかにしたヒューマノイドの急速な進歩と、その欠点~人型ロボットは短距離走などのスポーツ競技で記録を塗り替えたが、釘を打つといった実用的な作業では苦戦した。)
著者:Kaia Glickman
北京で開催された第2回世界ヒューマノイドロボット競技大会の戦闘イベントで、ロボットたちが競い合っている。写真提供:Lintao Zhang/Getty Images

***以下は、このニュース記事についてのGeminiとの会話記録(2026年8月31日)です***

Q1:こんにちわ!次のニュース記事の要点をまとめて下さい。ニュース記事のタイトルです。「NEWS 27 August 2026
‘Robot Olympics’ reveal humanoids’ rapid progress — and flaws
Humanoid robots broke records at sporting events such as sprints, but struggled at practical tasks such as hammering nails.
By Kaia Glickman」

A1:2026年8月27日付のNature誌(Kaia Glickman記者)に掲載された記事「‘Robot Olympics’ reveal humanoids’ rapid progress — and flaws」の要約です。

ニュース記事の要点 (Life Science Network)

1. 運動能力における驚異的な飛躍
北京で開催された第2回「世界ヒューマノイドロボット競技大会(いわゆるロボット・オリンピック)」において、ヒューマノイドロボットは著しい身体的能力の向上を示しました。 (医薬政策企画 P-Cubed)
•記録更新: X-Humanoid社のロボットが100メートル走で8.64秒(または競技中の走破で人類最速記録を上回るタイム)を記録したほか、垂直跳び(高跳び)でも3.4メートルに達するなど、人間のアスリートを凌駕する運動能力を実証しました。 (医薬政策企画 P-Cubed)
•技術的要因: あらかじめ指定された軌道や出力を正確に再現する走行やジャンプ、モーターの液冷化によるトルク向上などが、この劇的なパフォーマンス向上を支えています。(Mirage News他 1 件)

2. 実用的な作業や認知面での課題・欠陥
一方で、日常的・産業的な実用タスクでは依然として大きな課題が露呈しました。
•不器用さと精度の不足: 釘を打つといった微細な力加減や高精度が求められる作業、状況に応じた柔軟な対応では苦戦が目立ちました。
•自律性と環境認識の壁: あらかじめプログラミングされた直線的・単純な運動とは異なり、ミリ単位の調整が必要な「最後の数ミリメートル」の制御や、状況変化に対応する「AIの脳(世界モデル・認知能力)」の開発が追いついていないことが課題となっています。

3. 結論 (Mirage News)
中国勢を中心とするハードウェアの進化(運動性能)は非常にスピーディで目覚ましいものの、工場や日常生活などの現実世界で人間の代わりとして汎用的に機能するには、知的処理能力や手先の器用さの面でまだ距離があることが浮き彫りとなりました。

Q2:この記事で指摘されている2の課題・欠陥について、現状での最新の研究動向とその成果について、分かり易く紹介して下さい。

A2:ロボット・オリンピックのニュース記事で指摘された「手先の器用さ・精密な力加減の不足」と「環境認識・自律性(世界モデル)の遅れ」という2つの課題について、最新(2025〜2026年)の研究動向と主な成果を分かりやすく紹介します。

課題1:手先の器用さと力加減の不足(精密操作の壁)
釘を打つ、紙を破かずに折る、工具を滑らせずに握るといった作業には、見た目(カメラ)の情報だけでは不十分で、触覚(タッチ・力加減)のフィードバックが不可欠です。

最新の研究動向(okt.to)
「触覚皮膚」と多感触ハンドの標準化: 単に物を握るだけでなく、ロボットの手の表面70%以上に高密度な触覚センサーを敷き詰めた「触覚ハンド(F-TAC Handなど)」が登場しています。2026年現在、指先だけでなく手のひら全体で「圧力・摩擦・すべり」をミリ秒単位で検知する技術が主流になりつつあります(Queen Mary University of London)

触覚と視覚の統合(Multimodal Fusion): カメラ画像と触覚センサーのデータをAIが同時にリアルタイム処理する技術が進んでいます。これにより、「釘とハンマーの位置(見た目)」を捉えつつ、「打撃時の反動や指のズレ(触覚)」を即座に補正できるようになってきています。
okt.to

達成された成果(Patsnap)
工場や研究室において、壊れやすい豆腐や卵を潰さずに掴むだけでなく、柔らかい布を正確に畳んだり、滑りやすい工具を握り直して作業を継続したりする精度の高い操作が可能になり始めています。

課題2:世界モデルとAIの脳(自律性・空間認知の壁)
100m走のように「決まった直線パターンを愚直に走る」ことには成功しても、周囲の物理法則(重力、摩擦、固さ、予期せぬ障害物)を理解して「次にどうなるか」を脳内でシミュレーションする能力が不足していました。

最新の研究動向(okt.to)
VLAモデルから「世界モデル(World Model)」への進化: 従来の「見えた画像から直接行動を起こすAI(VLA: Vision-Language-Action)」から、「自分の行動によって世界がどう変化するかを脳内で一度予測・シミュレーションしてから動くAI(世界モデル)」への移行が急速に進んでいます(Humanoid.guide、他 1 件)

空間知能(Spatial Intelligence)の強化: フェイフェイ・リ(Fei-Fei Li)氏のWorld Labsやヤン・ルカン(Yann LeCun)氏のJEPA(Joint-Embedding Predictive Architecture)研究などに代表されるように、ロボットに3D空間の奥行きや物理的な因果関係を自然に理解させる基盤モデルの開発が加熱しています(KraneShares、他 1 件)

達成された成果:
未知の環境への適応(ゼロショット学習): 見たことがない部屋や一度も扱ったことがない家電(エアフライヤーや未知の工具など)であっても、Web上の知識と物理予測を組み合わせて「こう動かせばこう動くはずだ」と推論し、事前プログラミングなしで正しく操作できる汎用AI(Physical Intelligence社のpi-0.7など)が登場しています(okt.to)

まとめ(Patsnap)
現在(2026年)のロボティクス界では、「走る・跳ぶ」といった筋肉(アクチュエータ・ハードウェア)の進化に対し、「触覚(皮膚)」と「世界モデル(脳)」を追いつかせる研究が最前線で行われています。これらが完全に統合されることで、実験場だけでなく実際の家庭や工事現場で柔軟に役立つヒューマノイドロボットが実現に向かいます(digitimes)

2-2)脊柱管狭窄でしばしば見られる黄色靭帯の肥厚が、腱や靭帯を作る幹細胞の分化異常によるためであるかもしれない
***以下は、大阪大学の宮坂昌之先生の2026年9月9日のFB投稿です***
長年、背中に負担がかかると、骨が変形したり、椎間板が飛び出したり、黄色靭帯(=神経の束である脊髄の後方にある靭帯)が分厚くなったりして、背骨の中にある神経の通り道(=脊柱管)が狭くなり、その結果、中を通る神経や脊髄が圧迫されることになります。これが脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)と呼ばれる病気です。

腰部に狭窄が起きると、典型的な症状として間欠性跛行(かんけつせい・はこう)(歩いていると足に痛みやしびれが出て歩けなくなるが、少し休むと、また歩けるようになる)が見られますが、前かがみになって休むと神経の圧迫が和らぐために楽になる、という傾向があります。また、このほかに、腰や足の痛み、しびれが起き、重症化すると、排尿・排便障害が見られます。一方、頸部に狭窄が起きると、手足が動かしにくかったり、細かい作業がしにくくなったりします。

脊柱管狭窄症は、高齢者では多く、腰部の狭窄の場合、日本全体で数百万人の有症状患者が居るといわれています。治療としては、初期のうちは血流改善薬としてPGE1製剤(プロスタグランジンE1の働きを止めて血管の平滑筋を緩めて血流を増やす)や、痛み止め、硬膜外ブロックや、前かがみを意識したリハビリなどが行われますが、加齢のために脊柱の周囲の筋肉や靭帯の機能が落ちていると、なかなか良い効果が出ません。また、歩行困難や排尿・排便障害が出た時には、脊柱管のスペースを広げる手術が行われ、症状は一時的に改善しますが、やはり、脊柱の周囲の筋肉や靭帯の機能が落ちていると、狭窄症が再発することがあります。

専門誌Cellの最新号に「脊柱管狭窄でしばしば見られる黄色靭帯の肥厚が、腱や靭帯を作る幹細胞の分化異常によるためであるかもしれない」ということを示す論文が出ています(https://www.cell.com/cell/abstract/S0092-8674(26)00945-1)。つまり、脊柱管狭窄発生には新しいメカニズムが存在するかもしれないということです。アメリカの研究グループによる仕事です。

彼らは、マウスとヒトの検体を用いて調べた結果、
① 腱・靱帯には幹細胞(TLCS)が存在し、この細胞は自己複製能、分化能を持っていて、腱や靱帯を作る前駆細胞(TLPC)を作り出し、ここから腱のもととなる腱鞘細胞や腱細胞ができる、
② 正常状態では、これらの幹細胞や前駆細胞は、黄色靱帯が骨に付着する部位に少数存在する、
③ 脊柱管狭窄部位ではこれらの幹細胞、前駆細胞が異常に増殖していて、黄色靱帯の肥厚が見られる。
④ 脊柱管狭窄症の実験モデルでは、カルシウム拮抗剤(ex. アムロジピン)やカルシウム依存性酵素阻害剤(ex. カルシニューリンやタクロリムス)で黄色靭帯の肥厚が改善する、
などのことがわかりました。

もしこれが事実であれば、脊柱管狭窄においては幹細胞に異常が起きて、それが黄色靭帯の肥厚などをもたらして症状を悪化させているのかもしれない、ということになります。また、幹細胞の分化にはカルシウムイオンを介したシグナルが必要なことから、カルシウム阻害剤やカルシウム依存性酵素の阻害剤が脊柱管狭窄の治療に有効である可能性があります。

脊柱管狭窄症は、長寿社会では大きな健康問題となっていますが、いまだにこれという予防法や治療法がありません。一方で、腱や靭帯には幹細胞があり、その機能を制御できると狭窄症の治療につながるかもしれない、というのは期待が持てる明るいニュースです。
関連情報
① 原論文についてのGeminiによる解説です(2026年9月10日)。
Q1:次の論文の分かり易い解説をお願いします。論文情報です。「https://www.cell.com/cell/abstract/S0092-8674(26)00945-1」

A1:ご提示いただいた論文(2026年9月に国際的学術誌『Cell』へ掲載)は、「マウスおよびヒトにおいて、アキレス腱や靭帯(じんたい)を作り出す源となる『幹細胞』を世界で初めて特定した」という大変画期的な研究成果です。
要点を分かりやすく解説します。
1. この研究の背景(何が問題だったのか?)
アキレス腱の断裂や、腰痛・足のしびれを引き起こす「腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)」など、腱や靭帯の病気に悩む人は世界中に数多く存在します。
しかしこれまで、腱や靭帯を構成する細胞の「根本となる親細胞(幹細胞)」が一体どの細胞なのかが特定されておらず、「根本原因を叩く根本的な飲み薬や治療薬が存在しない」という大きな課題がありました。

2. 論文の主な発見・成果
• 幹細胞(TLSC)の特定に成功 研究チームは、マウスおよびヒトのあらゆる腱や靭帯の中に存在する「腱・靭帯幹細胞(TLSC: Tendon/Ligament Stem Cell)」を特定しました。特定の表面マーカー(CD73+ かつ CD140α- など)を持つ細胞が、自己複製しながらすべての腱細胞を生み出す「頂点の細胞」であることを突き止めました。
• 病気(脊柱管狭窄症)のメカニズムを解明 腰の靭帯(黄色靭帯)が分厚くなって神経を圧迫する「腰部脊柱管狭窄症」の発症プロセスを調査。病気の環境下では、この幹細胞内部のカルシウムシグナル伝達に異常が起き、幹細胞が過剰に腱・靭帯細胞を作り出すよう「再プログラミング」されてしまうことが分かりました。

3. この発見がもたらす医療の未来
1. 薬による治療(切らない治療)の可能性 異常を起こした幹細胞のカルシウムシグナル伝達(NFAT経路など)をターゲットにすることで、靭帯の肥大化を抑える「薬物治療(飲み薬や注射薬)」の開発に道が拓けました。
2. 再生医療・切れた腱の治癒促進 今回特定された幹細胞を活用することで、スポーツなどで断裂したアキレス腱や靭帯の修復を大幅に早める再生医療への応用が期待されます。

一言でまとめると
これまでブラックボックスだった「腱と靭帯を生み出す根本の細胞」が見つかったことで、治療法が手術に限られていた腰部脊柱管狭窄症の新しい薬や、アキレス腱断裂などの再生医療の開発が一気に前進するニュースです。

② 論文「黄色靭帯肥大の異なるメカニズム~腰椎変性パターンの比較MRI分析~」
掲載誌:Clinical Spine Surgery誌
公開日:2026年6月22日オンライン先行公開
論文名:Differential Mechanisms of Ligamentum Flavum Hypertrophy: A Comparative MRI Analysis of Lumbar Spine Degeneration Patterns
著者:酒井 義人、松井 裕樹、武市 洋介、長田 直明、渡辺 剛、安達 ゆい、渡辺 謙
DOI: 10.1097/BSD.0000000000002106
本件についての国立研究開発法人 国立長寿医療研究センターのプレスリリースです(extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.ncgg.go.jp/hospital/news/documents/20260629.pdf)。

Q2:続けて先の論文とこの論文との関連を分かり易く解説して下さい。次の論文の情報です。「以下、略す」

A2:2つの論文は、どちらも高齢者に多い「腰部脊柱管狭窄症(腰椎の神経が圧迫されて痛みやしびれが出る病気)」の最大の原因である「黄色靭帯(おうしょくじんたい)の肥大化」をテーマに扱っています。
しかし、研究のアプローチが「ミクロな分子・細胞レベル(細胞の世界)」と「マクロな臨床・画像分析(患者さんの腰全体の構造)」という真反対(かつ相補的)な視点から行われており、2つを組み合わせることで病気の全体像が見えてきます。分かりやすく関連性を解説します。

1.各論文の立ち位置(視点の違い)
2. 2つの論文はどう繋がっているのか?(関連性)
この2つの研究は、「原因(マクロの物理的ストレス)から結果(ミクロの細胞の暴走)に至るストーリー」として完璧に繋がります。
① 『Clinical Spine Surgery論文』が示すこと:【きっかけ(物理的ストレス)】
酒井医師らの研究(臨床MRI分析)は、腰の骨の変形の仕方や骨のズレ(すべり症など)のタイプによって、黄色靭帯にかかる負担や肥大化のパターン(メカニズム)が異なることを示しています。 つまり、「腰の骨組みがどう崩れるかによって、特定の靭帯部分に異なるメカニカルストレス(機械的な引っ張りや圧力)がかかる」という患者レベルの事実を示しています。
② 『Cell論文』が示すこと:【反応(細胞レベルでの肥大化)】
Cell論文(幹細胞の発見)は、まさにその「機械的ストレスや炎症刺激を受けたとき、靭帯の内部で何が起きているのか?」という答えを与えてくれます。 外部からストレスを受けた黄色靭帯の中では、特定された幹細胞(TLSC)のカルシウムシグナルが異常を起こし、幹細胞が過剰に靭帯細胞を作り出すことで「厚く分厚い靭帯(肥大化)」へと変化してしまうのです。

3. まとめ:2つの研究がもたらす未来の治療法
これまでは「なぜ腰の靭帯が分厚くなるのか」が断片的にしか分かっていませんでしたが、この2つの研究によりジグソーパズルのピースが組み合わさりました。
• マクロの視点(臨床MRI研究): 「どのタイプの変形・ストレスを持つ患者が、どの部位の靭帯を肥大させやすいか」を画像から正確に診断・分類する。
• ミクロの視点(幹細胞研究): ストレスを受けて肥大化を始めた幹細胞の暴走を止め、靭帯が分厚くなるのを薬で防ぐ。
将来的には、「MRI画像で靭帯肥大のリスクやパターンを早期に診断し(酒井氏らの研究成果)、肥大化を止める飲み薬や注射で治療する(Cellの研究成果)」という、手術に頼らない新しい腰椎疾患治療システムにつながる大きな関連性を持っています。

 

2-3)進行性骨粗鬆症に対するグリコカリックス編集型間葉系幹細胞/間質細胞療法
掲載誌:Cell Article Online
公開日:September 11, 2026
論文名:Glycocalyx-edited mesenchymal stem/stromal cell therapy in advanced osteoporosis(和訳:進行性骨粗鬆症に対するグリコカリックス編集型間葉系幹細胞/間質細胞療法)
著者:Jose M,et al.

ハイライト
•エキソフコシル化ヒト間葉系幹細胞(Fuc-autoBM-MSCs)の静脈内投与は安全である
•Fuc-autoBM-MSCの単回静脈内投与は骨粗鬆症における脆弱性骨折の発生率を低下させる
•Fuc-autoBM-MSCの静脈内投与後、体積骨密度が増加する。
•骨代謝バイオマーカーの変化は、骨再生効果と一致している。

まとめ
間葉系幹細胞(MSC)は骨再生能を有するが、骨へのホーミング能(「骨指向性」)が低いため、骨疾患に対する治療効果は制限される。前臨床モデルでは、MSCの糖鎖修飾によってシアル化Lewis X(sLeX)の発現を誘導し、骨指向性をプログラムすることで、この欠陥を是正できることが示されている。我々は、進行期骨粗鬆症の女性10名を対象に、糖鎖修飾を施した自家骨髄由来MSCを単回静脈内投与するヒト初回臨床試験(ClinicalTrials.gov:NCT02566655)を実施した。プロトコルで規定された評価は2年間にわたり、臨床評価、X線検査、骨代謝マーカー(BTM)、骨組織面積(BTA)、骨密度(BMD)の測定が行われた。その後、各患者について骨折および安全性のモニタリングがさらに3年以上継続されました。重篤な有害事象は発生しませんでした。骨形成促進性BTMレベル、BTA、および体積骨密度の増加に伴い、脆弱性骨折は著しくかつ持続的に減少しました。これらの結果は、グリコカリックス編集がMSCベースの骨粗鬆症治療に効果的であることを示しており、高齢者や病変組織由来のMSCは生物学的に不利であるという考えを否定するものです。

Graphical abstract

関連情報
① ネイチャー・ニュース
11 September 2026
Osteoporosis affects millions: could modified cells rebuild their bones?
Small trial hints at regenerative potential of bone-seeking marrow cells.
(和訳:骨粗鬆症は数百万人に影響を与えている。改変した細胞で骨を再生できるだろうか?小規模な臨床試験により、骨髄細胞が再生能力を持つ可能性が示唆された。)
By Elie Dolgin
骨粗鬆症は骨を薄く、多孔質にし、骨折しやすくするが、有望な細胞療法が骨を強化する方法を提供する可能性がある。写真提供:トニー・ブレイン博士/SPL

***以下、同ニュースからの抜粋です***
10人の高齢女性は、合わせて数十回も骨折しており、その多くはちょっとしたつまずきで起こっていた。しかし、骨組織への浸透性を高めるために実験室で処理された自身の骨髄細胞を一度輸血された後、彼女たちの骨折はほぼ止まった。

本日Cell誌に掲載された小規模臨床試験¹で報告されたところによると、治療を受ける前、女性たちは平均して1~2年に1回、脊椎、股関節、腕、その他の骨の骨折を経験していた。試験後、女性たちが軽微な外傷による骨折を経験する頻度は、10年に1回程度にまで減少した。

今回の結果は、骨粗鬆症患者の脆くなった骨を、一度の細胞療法で再生できる可能性を示唆するものであり、骨粗鬆症は世界中で約2億人の女性、特に閉経後の女性に影響を与える加齢に伴う疾患である。

② Geminiによる解説
Q:次の論文の研究成果について、分かり易く且つ簡潔に解説ひて下さい。論文情報です。(以下、略す)
A:2026年9月11日付の『Cell』誌に掲載された研究成果について、ポイントをまとめて解説します。

研究の要点
従来の治療法では改善が困難な重度の進行性骨粗鬆症に対し、細胞表面の糖鎖構造(グリコカリックス)を酵素処理で加工・編集した「間葉系幹細胞(MSC)」を移植する新しい再生医療アプローチの有用性・有効性を実証した研究です。

何が新しいのか?(技術のポイント)
・細胞表面の「標的誘導力」を強化
通常、静脈注射などで投与した間葉系幹細胞(MSC)は、肺やレバーなどにトラップされやすく、病変部位である「骨髄」へ効率よく届きにくいという課題がありました。

・糖鎖(グリコカリックス)の編集
細胞の最表面を覆う糖鎖構造を酵素処理などで最適化(編集)することにより、細胞が血流に乗って骨髄組織へしっかりと結合・集積(ホーミング)できるように機能を向上させました。

主な成果と期待される効果
・効率的な骨髄伝達
糖鎖編集を行ったMSCは、従来のMSCと比べて目的の骨髄へ届く割合が高まり、治療効果を最大限に引き出すことに成功しました。
・骨新生の促進と骨密度の回復
骨髄に到達した幹細胞が骨を作る細胞(骨芽細胞)の働きを助け、重度の骨粗鬆症で著しく低下していた骨密度や骨強度の改善に寄与しました。
・難治性疾患への新たな治療選択肢
既存の薬物療法(骨吸収抑制薬や骨形成促進薬など)で十分な効果が得られない重症患者や、骨折リスクが極めて高い患者に対する革新的な細胞療法としての応用が期待されます。

一言で言うと:
「目的地の骨へダイレクトに届くようナノレベルでコーティング(糖鎖編集)を施した幹細胞」を用いることで、従来の幹細胞移植では難しかった重症骨粗鬆症の劇的な治療・再生を目指す画期的な研究成果です。

 

2-4)岐阜大学医学部の下畑先生からの最新医学情報(2026年9月)
・片頭痛予防療法は「月4日以上」が目安―AAN/AHSが14年ぶりにガイドラインを改訂
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月1日のFB投稿です***
米国神経学会(AAN)と米国頭痛学会(AHS)は,成人の片頭痛の薬物予防療法に関するガイドラインを14年ぶりに改訂しました.発表に合わせて記者会見が行われ,YouTube(コメント欄にリンク)で見ることができます.ガイドライン作成委員のRebecca Burch先生が,改訂の狙いを説明しています(1).
記者会見で最も強調されたことは,2012年の前回ガイドライン以降,片頭痛予防療法の選択肢が大きく増えたことです.とくにCGRP(calcitonin gene-related peptide)を標的とする新しい片頭痛特異的治療薬の登場が大きな変化です.Burch先生は,「今回の最大の変更点は何か?」という質問に対し,新しいCGRP標的薬を含め,従来薬と新薬のエビデンスを一つのガイドラインの中で整理したことを挙げています.
もう一つの重要なメッセージは,予防療法をもっと積極的に考えるべきであるという点です.今回,「月4日以上の片頭痛日,または月4日以上の中等度~重度の頭痛日」があれば予防療法を提案し,頻度がそれ以下でも仕事や日常生活への障害が大きければ対象とすることが明確に示されました.
記者から「片頭痛予防薬は十分に使われているのか」と質問された際,Burch先生は,実際には予防療法の適応となる患者の多くが治療を受けていないと回答しています.Systematic Reviewでも,予防療法を考慮すべき患者のうち実際に使用しているのは約3分の1にすぎないとされています(2). 今回のガイドラインは,新薬を追加しただけではなく,予防療法のunderuseを是正することも重要な目的と考えられます.
さらにBurch先生は,薬剤を選ぶ際には有効性だけでなく,副作用,長期間使用されてきた安全性の実績,費用など,患者が何を重視するかを考える必要があると述べています.つまり,「最も強い薬を選ぶ」のではなく,協働意思決定(SDM)によってその患者に適した薬を選択することが今回の基本姿勢です.
以下,同時に発表されたSystematic Review(2)とPractice Guideline Recommendations(3)から,実臨床上とくに重要と思われる点を箇条書きでまとめます.
① 新旧の予防薬が同じエビデンスの物差しで評価された.
217研究を解析し,各薬剤の有効性についてHigh/Moderate/Low confidenceが示された(図).High confidenceは,反復性片頭痛ではerenumab,galcanezumab,慢性片頭痛ではfremanezumab,galcanezumab,onabotulinumtoxinAである.Moderate confidenceにはatogepant,eptinezumabなどのCGRP関連薬に加え,propranolol,topiramate,valproateなどの従来薬も含まれる.なお,これは薬剤の順位ではなく,あくまでエビデンスへの確信度である.
② 薬剤は有効性だけで選ぶものではない.
有効性,忍容性,長期安全性,費用,患者の希望を考慮する.忍容性を重視する場合にはatogepantやCGRPモノクローナル抗体,長期使用実績を重視する場合にはpropranololやtopiramateなどが重要な選択肢となる.
③ 薬剤の使用過多による頭痛(MOH)があっても予防療法を開始する.
薬剤の使用過多やMOHがあっても予防薬を提案すべきである.CGRPモノクローナル抗体,atogepant,onabotulinumtoxinA,topiramateには,このような患者でも有効性を示すデータがある.
④ 効果判定を急ぎすぎてはならない.
多くの予防薬では,十分な忍容量で8~12週間治療してから効果を判定する.onabotulinumtoxinAでは24週間が目安であり,1か月程度で無効と判断するのは早すぎる場合がある.
⑤ 有効な予防薬も,中止後に再悪化することがある.
6か月程度で減量・中止について相談するが,中止により頭痛が再増悪する可能性がある.galcanezumabでは,6か月時点で反応していた患者の半数以上が,中止5か月後にはその反応を失っていた.
⑥ 妊娠中の治療は一律に「薬を使わない」ではない.
まず非薬物療法を最大限活用し,valproateやtopiramateは可能な限り避ける.一方,治療が必要な場合には,片頭痛による負担と薬剤のリスクを比較し,患者と相談して治療を選択する.記者会見でも,この点は議論になり得る重要な変更点として紹介された.
今回の改訂を一言でまとめると,「月4日を目安に予防療法をより積極的に考え,増えた新旧の選択肢から,患者が何を重視するかに応じて薬を選ぶ」ということだと思います.CGRP標的薬の登場はもちろん大きな変化ですが,それ以上に,片頭痛予防療法をより早く,より患者中心に行う方向への転換が重要ということです.
日本への影響を考えてみると,「頭痛の診療ガイドライン2021」ですでに比較的早期からの予防療法が推奨され,さらに2025年には日本頭痛学会がCGRP関連抗体薬を既存薬と同等の第一選択薬に位置づけています.加えて,リメゲパント,アトゲパントという経口CGRP受容体拮抗薬も使用可能となりました.したがって今回のAAN/AHSガイドラインは,日本の診療を大きく方向転換させるというより,すでに始まっている「予防療法の早期導入」と「CGRP関連薬を含めた患者中心の薬剤選択」を強く後押しするものと考えられます.一方,日本ではCGRP関連抗体薬を最初から自由に開始できるわけではなく,保険診療上は従来の予防薬を先に試すことが求められています.この点は,今後見直しが議論される可能性があるように思います.
1.American Academy of Neurology. 2026 Press Conference: Pharmacologic Treatment for Migraine Prevention in Adults. YouTube. 2026.
2.Pringsheim T, Smith DB, Tanveer S, et al. Systematic Review of Pharmacologic Treatment for Migraine Prevention in Adults. Headache. 2026. doi:10.1111/head.70200.
3.Potrebic S, Tanveer S, Becker WJ, et al. Pharmacologic Treatment for Migraine Prevention in Adults Practice Guideline Recommendations. Headache. 2026. doi:10.1111/head.70199.

・CAR-T細胞を「体内で作る」時代へ―中国で自己免疫性神経疾患に対するin vivo CAR-T療法第1相試験!!
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月4日のFB投稿です***
CAR-T細胞療法は,もともと難治性の血液腫瘍に対して開発された治療ですが,近年,自己免疫疾患への応用が急速に進んでいます.CD19などを標的として自己反応性B細胞を徹底的に除去し,その後に新しいB細胞集団を再構築することで,単なる免疫抑制ではなく「免疫系のリセット」を目指す治療です.しかし,従来のCAR-T療法では,患者さんからT細胞を採取し,体外で遺伝子導入,培養,品質管理を行ってから患者さんに戻す必要があります.さらに投与前にはリンパ球除去化学療法も必要であり,時間,費用,安全性の面で大きなハードルがありました.
最新号のNEJM誌のcorrespondenceに,中国の研究グループから短いながら驚くべき論文が報告されていました.上述の問題を一気に解決する可能性のある新しい方法で,患者さんのT細胞を体外に取り出すのではなく,レンチウイルスベクターを静脈内投与して,患者さんの体内で直接CD19 CAR-T細胞を作る「in vivo CAR-T療法」の報告です.
研究は医師主導の単群第1相試験で,対象は難治性自己免疫性神経疾患16例です.内訳は,進行型多発性硬化症(MS)7例(おそらくPPMSとSPMSをあわせたもの),MOG抗体関連疾患(MOGAD)3例,全身型重症筋無力症(gMG)3例,特発性炎症性筋疾患3例です.使用されたJY231は,CD19を標的とするCAR遺伝子をT細胞へ直接導入する既製のレンチウイルスベクターで,2.0×10^9 transducing units(遺伝子導入活性を示す単位)を1回静注しました.特に重要なのは,従来のCAR-T療法で必要だったリンパ球除去化学療法を行っていないことです!つまり,レンチウイルスベクターを点滴するだけで,患者さん自身の体をCAR-T細胞の「製造工場」にするという発想です.
まず安全性ですが,懸念されるimmune effector cell–associated neurotoxicity syndrome(ICANS)や,自己免疫疾患でCAR-T療法後に,もともと病変のあった臓器に一過性の炎症が起こるLICATS(local immune effector cell-associated toxicity syndrome)は認めませんでした.サイトカイン放出症候群(CRS)は16例中11例,69%に出現しましたが,すべてGrade 1で,一過性に経過し2週間以内に消失しました.3例ではGrade 3または4の好中球減少を認めましたが,いずれも完全に回復し,長期間持続する骨髄抑制は認めませんでした.少数例かつ短期観察ではありますが,少なくとも初期の安全性は比較的良好でした.
そして本研究で最も重要なのは,JY231を静注するだけで,全例の体内に本当にCAR-T細胞が作られたことです.CARベクターコピー数は投与後増加し,11日目に中央値53,962.5 copies/μg DNAのピークに達しました.一方,ベクター由来のp24蛋白は急速に消失し,4日目には血中で検出不能となりました.さらに単一細胞RNAシークエンスとフローサイトメトリーにより,CAR陽性細胞の99%以上がT細胞であることが確認されました.つまり,ベクターが無差別にさまざまな細胞へ入るのではなく,高い選択性でT細胞をCAR-T細胞へ変換していたことになります.
脳神経内科医として特に興味があるのは,中枢神経系への到達の有無です.進行型MSやMOGADでは,CARベクターコピー数が末梢血や骨髄だけでなく脳脊髄液でも検出され,むしろ脳脊髄液で高値となる例がありました.自己免疫性神経疾患では,中枢神経内に残存するB細胞や局所の免疫反応が治療抵抗性の原因となる可能性がありますが,今回の治療は末梢血のB細胞だけを除去する従来の治療と異なり,CAR-T細胞が中枢神経系まで到達できることが大きな利点になる可能性があります.
CAR-T細胞が増殖すると,末梢血B細胞は急速かつほぼ完全に消失しました.そして2か月後,B細胞が再び出現しましたが,回復したのは主としてnaive B細胞でした.さらにB細胞受容体のクローン解析では,治療前に存在していたB細胞クローンが治療後にはほぼ完全に置き換わっていました.単にB細胞を一時的に減らしただけではなく,病的な記憶を保持している可能性のある既存のB細胞集団をいったん除去し,新しいB細胞集団を作り直したわけです.著者らはこれを「systemic immunologic reset(全身性の免疫学的リセット)」と記載しています!!
臨床的にも興味深い変化が認められました.中央値6か月の追跡で,進行型MSではEDSSが低下し,運動機能,認知機能,疲労も改善しました.さらに脳脊髄液NfLとκ free light chain indexが低下し,神経軸索の障害と髄腔内免疫活動の双方が抑制された可能性があります.7例全例で,3または6か月後に新規造影病変や新規T2病変を認めませんでした.また18F-DPA-714 PET–MRIではミクログリア活性化も低下しました.CAR-T細胞が直接標的とするのはB細胞ですが,B細胞をリセットすることで,中枢神経系の炎症環境そのものが改善した可能性があります.
MOGADでは血清MOG抗体価が低下する傾向を示しました.gMGではQMGスコアとMG-ADLスコアが改善し,抗AChR抗体価も低下しました.特発性炎症性筋疾患でもMMT-8による筋力評価が改善し,CK値,画像上の筋炎所見,病原性自己抗体も改善しました.疾患ごとの症例数はわずか3~7例ですので有効性を証明したとはいえませんが,臨床症状,自己抗体,バイオマーカー,画像所見が概ね同じ方向に変化している点は注目されます.
図1を簡潔に説明すると,図Aでは,1回のJY231投与後に体内でCAR-T細胞が増殖し,末梢血に加えて骨髄や脳脊髄液にもCAR陽性細胞が認められることが示されています.図BではB細胞が急速に枯渇した後に再増殖する経過が,図Cでは再増殖したB細胞がnaive B細胞を主体とすることが示されています.図Dでは,代表例(症例1)において治療前のB細胞受容体クローンが治療後に置き換わる様子が示され,「免疫リセット」を分子レベルで捉えています.図EではMS,MOGAD,炎症性筋疾患,gMGの臨床指標が改善方向に変化し,図FではMSの代表例(症例 1)において,治療3か月後に18F-DPA-714 PET–MRIでミクログリア活性化の低下が示されています.
さらにSupplementary Videoには,進行型MS患者の治療前後の歩行が収録されています.治療前,1か月後,3か月後を比較すると,歩行が改善しているように見えますが,1例の動画ですので何とも言えない気もします.そもそも本研究は16例のみの単群第1相試験であり,疾患ごとの症例数はさらに少なく,中央値の追跡期間も6か月にすぎません.対照群もありませんので,「進行型MSを改善する治療が確立した」と解釈する段階ではありません.著者らも,より大規模かつ長期間の検討,可能であればランダム化比較試験が必要であると強調しています.
一方,長期的な安全性は今後の課題です.今回用いたレンチウイルスベクターは,CAR遺伝子をT細胞の染色体に組み込むため,CAR-T細胞の効果が長く続くことが期待されます.その反面,遺伝子が好ましくない場所に組み込まれ,細胞の異常な増殖を引き起こす可能性が理論上あります.今回の解析では,そのような異常なクローン増殖を示す所見は認められませんでした.ただし観察期間はまだ短く,長期的な安全性については今後慎重に追跡する必要があります.
しかしながら,本研究のインパクトはきわめて大きいと思います.従来のCAR-T療法は,「患者さんから細胞を取り出し,特別な施設でCAR-T細胞を製造してから戻す」という高度な細胞治療でした.今回の方法は,既製のレンチウイルスベクターを1回静注し,患者さんの体内でCAR-T細胞を作るという全く異なる発想です.なんと言ってもリンパ球除去化学療法が不要です.もし長期的な安全性と有効性が確認されれば,CAR-T療法は特殊な「細胞製剤」から,より広く使用できる「1回投与の遺伝子治療」へ変わる可能性があります.未来の脳神経内科医は,自己免疫性神経疾患をこのように治療しているのかもしれない——そんな未来を想像させる,proof-of-conceptとして非常に興味深い報告です.
Cheng YH, et al. Lentiviral In Vivo CD19 CAR T-Cell Therapy in Neurologic Autoimmune Disorders. N Engl J Med. 2026 Sep 3;395(9):926-929. doi: 10.1056/NEJMc2603114. PMID: 42685326.

・第38回 リベラルアーツ研究会『人魚の眠る家』のご案内
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月5日のFB投稿です***
日時:2026年9月8日(火)19時~21時
今回は,先日逝去された作家・東野圭吾氏の作品を取り上げます.課題図書は以前から決めていましたので,訃報を知ったときには「まさか」と驚きました.東野氏の作品は,皆さんと同様,私も大好きでした.最近では「マスカレイド」シリーズ,とりわけ新田浩介という主人公が好きで,今後の活躍をもう読むことができないと思うと,本当に残念です.
今回は,数ある名作のなかから,私にとって忘れられない一冊,2015年に発表され,映画化もされた『人魚の眠る家』を取り上げます(Amazonへのリンクはコメント欄).私は刊行後まもなく本作を読み,大きな衝撃を受けました.ブログでも紹介していますが,当時は,どこか近未来的なフィクションとして受け止めていました.しかし10年を経て読み返してみると,むしろ現代医療が直面しつつある問題を見事なまでに先取りして描いた作品であったことに気づかされます.
本作は,ミステリーという枠組みを超えて,「脳死を人の死と考えることができるのか」という,生と死をめぐる根源的な問いを真正面から投げかけます.読み進めるほどに,読者自身が「自分ならどうするだろうか?」と問い続けることになります.脳神経内科医の立場から読んでも,脳死,臓器移植,生命維持技術,そしてニューロテクノロジーの進歩に伴う臨床倫理上の問題を考えるうえで,きわめて示唆に富む作品です.
副読本として,『BRAIN and NERVE』2025年4月号の特集「脳死について知る」をお薦めします.あわせて読むと,東野氏が脳死や臓器移植をめぐる医学的・倫理的問題をいかに深く学び,丁寧な取材を重ねたうえで本作を執筆したことが,よりよく分かります.ちなみに『BRAIN and NERVE』2026年12月号(クリスマス号)には,『人魚の眠る家』を題材として,脳死と臓器移植について考察した私の小論文を掲載していただく予定です.こちらも楽しみにしていただければと思います.
医学の進歩によって,「生」と「死」の境界が揺さぶられるとき,私たち医療者は何をもって人の死と考え,何を選び,患者さんや家族とどのように向き合うべきなのでしょうか.東野圭吾氏が遺した『人魚の眠る家』を通して,皆さんと一緒に考えてみたいと思います.
課題図書:東野圭吾『人魚の眠る家』
※参加希望の学生はご連絡ください.
次回課題図書
仲野徹『生命科学者たちのむこうみずな日常と華麗なる研究』
歴史に名を残した18人の科学者たちの型破りな生き様と偉大な業績を,軽妙な語り口で解き明かした一冊です.とても面白く,科学への知的好奇心を大いに刺激してくれる名著です.

・シャルコーから予測符号化へ―神経理学療法の歴史と新時代@第24回日本神経理学療法学会学術大会
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月6日のFB投稿です***
昨日,グランキューブ大阪で開催された第24回日本神経理学療法学会学術大会で,特別講演の機会をいただきました.今回の大会テーマは「神経理学療法が紡ぐ足跡と新時代」です.これまでの歩みを振り返り,そこから未来を考えるという趣旨で,初日は「過去を学ぶ」,2日目は「新時代を考える」という構成でした.
特別講演では,『BRAIN and NERVE』誌でともに編集委員を務めさせていただいている東北大学名誉教授の虫明元先生とご一緒しました.虫明先生の演題は「神経生理学の歴史:神経機能理解の深化をたどる」です.神経科学の歴史を19世紀から21世紀まで4つの時代に分け,「脳をどのように理解してきたのか」という問いの変遷を鮮やかに示してくださいました.神経学の楽しさを改めて実感するご講演でした.
19世紀にはBrocaによる機能局在,Golgiの染色法とCajalによるニューロン説,Jacksonによる階層理論が登場し,「どこが機能を担うのか」が問われました.20世紀前半にはSherringtonのシナプスと反射統合,Pavlovの条件反射,Penfieldのホムンクルスなどを通して,「どうつながるのか」という理解へ進みます.さらに20世紀後半には,運動野における運動方向の符号化(運動の方向を神経細胞の活動として表現すること),前頭葉の階層構造,ワーキングメモリ,ミラーニューロンなどを通して,「脳は何を計算しているのか」という問いへと発展しました.そして21世紀には,問いは「脳はどのように未来を予測し,全体として協調するのか」へと進みます.大規模脳ネットワーク,agency,小脳の内部モデル,ドパミンによる報酬予測誤差,そしてFristonの自由エネルギー原理へと展開していきました.とくに印象的だったのは,「脳は未来を予測し,現実とのずれである予測誤差を使って内部モデルを更新している」という考え方です.この視点に立てば,リハビリテーションとは単に筋肉を動かす訓練ではなく,脳が持っている身体や運動についての「予測」を修正し,内部モデルを再構築していく営みと考えることができます.
講演後には虫明先生と食事をご一緒し,講演中に浮かんだ疑問を直接お聞きすることができました.神経生理学の第一人者にゆっくり質問できるという,本当に幸せで贅沢な時間でした.また,森岡周先生(畿央大学),吉尾雅春先生(千里リハビリテーション病院)のとても印象的なご講演も拝聴し,ニューロリハビリテーションについてもっと勉強したいと思いました.
一方,私の講演は,大会長の松田淳子先生(大阪行岡医療大学医療学部理学療法学科)から「神経症候学の歴史について話してほしい」とご依頼いただき,「神経症候学の成立と発展:機能性神経障害をめぐって」というタイトルにしました.スライドはこちらからご覧いただけます(https://www.docswell.com/…/800…/Z8N6PQ-2026-09-06-043554).前半では,19世紀のサルペトリエール病院におけるJean-Martin CharcotとJoseph Babinskiらのヒステリー研究を出発点として,近代神経症候学がどのように成立したのかをお話ししました.彼らはヒステリーを器質性神経疾患と区別するため,患者を徹底して観察し,症候を記述し,診察によって病態を見極めようとしました.さらにCharcotに学び,その臨床医学を日本に持ち帰った三浦謹之助についても紹介しました.後半では,かつて「ヒステリー」と呼ばれた病態が,現在の機能性神経障害(FND)へとどのように変遷したのかを取り上げました.現代のFND診療で重要なのは,「検査で異常がないからFND」という除外診断ではなく,Hoover徴候などの陽性徴候を神経診察によって見いだし,積極的に診断すること(rule-in diagnosis)です.これはまさにCharcotやBabinskiから続く神経症候学の現代版と言えると思います.
さらにFNDでは,理学療法を中心とするリハビリテーションが非常に重要です.ただし,器質性疾患とは少し発想が異なります.「うまく動かそう」と症状に注意を集中し,強く随意的努力を行うほど,かえって動作が難しくなることがあります.そこで,リズムや音,物体操作など外的な課題に注意を向けることで,過剰な自己監視から離れ,本来持っている自動的な運動を引き出していきます.
ここで,虫明先生のご講演と私の講演が思いがけずつながりました.FNDを予測符号化の立場から考えると,症状への過剰な注意によって誤った予測の重みが強まり,知覚や運動を支配している可能性があります.であれば重要なのは,患者さんに「正しく動かそう」と意識させ続けるのではなく,いかに症状への注意を外し,「実際にうまく動けた」という新しい経験から脳の予測を更新するかということになります.今回は,「予測誤差をどのように軽減するのか」「いかに症状への過度な注意を減らしながら改善へ導くのか」という点について,理学療法士の先生方と議論させていただきました.講演後には,これまで経験したことがないほど多くのご質問をいただきました.実際にFND患者さんを担当するなかでの悩みや,具体的なリハビリテーションの工夫などを率直にお聞かせいただき,私自身にとっても大変勉強になる時間でした.
今回の大会テーマである「神経理学療法が紡ぐ足跡と新時代」は,改めて神経学の魅力を感じさせるものでした.Broca,Jackson,Sherrington,Charcot,Babinskiらが築いた神経学・神経生理学の歴史の先に,内部モデル,agency,ネットワーク,予測符号化といった現代神経科学があります.そして最新の神経科学がいま,再び患者さんの「症候を診る」という臨床に戻ってきています.新時代の神経リハビリテーションでは,失われた運動を繰り返し練習するだけではなく,脳がもつ身体と運動の「予測」を,よりよい方向へ更新していくことが求められるのかもしれません.歴史を学ぶことが,直接的に未来の臨床につながることを実感した一日でした.

・医療AIの本当のインパクトは,患者の「trajectory(軌跡)」中心の医療への転換にあるかもしれない!
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月7日のFB投稿です***
最新号のLancetに,たった1ページながら印象的なPerspectiveが掲載されています.著者はScripps研究所のEric J Topol氏らです.この論文が提示するのは,患者の診療記録を単なるデータの集まりではなく,数年,数十年にわたる「trajectory(軌跡)」としてAIに学習させるという,新しい医療AIの姿です.
その基盤となるのが耳慣れない「tokenisation(トークン化)」という用語です.診断名,検査値,薬剤,診療記録,画像,さらに出来事と出来事の時間間隔などを,AIが処理できる単位であるtokenに変換します.これらを時間順に学習することで,患者の長い診療経過全体を一つの「representation(表現)」として捉えます.つまり,一つの検査値や疾患を個別に予測するのではなく,その人がこれまでどのような軌跡をたどってきたかを丸ごと学習させるわけです.
すでにこの方向性でAIは急速に発展しているそうです.論文では5つのAIモデルが紹介され,約200万人のデータから1000を超える疾患の発症をモデル化するDelphi-2Mや,1億人以上,1000億件を超える医療イベントを扱うCuriosityなどが登場しています.さらに診療記録や画像,遺伝情報,multiomicsまで統合するモデルも開発されており,患者の長期的なtrajectoryをより包括的に捉える方向へ進んでいます.
論文の図上では,30歳から90歳までの時間軸上に,高脂血症,肥満,睡眠時無呼吸症候群,胃食道逆流症,心筋梗塞,心房細動,MCI(軽度認知障害),アルツハイマー病が並んでいます.重要なのは,「90歳でアルツハイマー病になった」という最後の一点ではなく,その数十年前から何が起こり,どのようなtrajectoryを経てそこに至ったのかを見ることです.trajectoryには病気や検査値だけでなく,治療がいつ行われ,その後どのような経過をたどったかという情報も含まれます.
図下は,この考え方から将来の医療をイメージして自作したものです.青線はAIが学習した「これまでの軌跡」を表します.大量の患者のtrajectoryが蓄積されれば,「この患者と似た軌跡をたどった人は,その後どうなったか」をもとに,現在地点から複数の未来を予測できる可能性があります.赤線はこのまま進んだ場合の高リスクの未来を,緑線は治療や生活習慣への介入によって,より良い未来へ軌道修正できる可能性を表しています.たとえば高血圧,脂質異常症,体重増加などを一連のtrajectoryとして捉え,将来の糖尿病や心血管疾患,認知症のリスク上昇を予測できれば,病気が完成する前に先手を打つことができます.介入後には新しいデータをもとに未来予測も更新されます.私なりに例えると,将来の医療AIは,未来を一度だけ言い当てる「占い師」ではなく,進路が変わるたびにルートを再計算する「カーナビ」に近い感じがします.
また,類似したtrajectoryを大規模データから検索することで,希少疾患の診断や治験参加者の探索などにも応用できる可能性があります.一人の医師が経験できる症例数には限界がありますが,AIを介して膨大な患者の経験を診療に利用できるようになるわけです.
ただし,重要な限界もあります.「ある治療を受けた人はその後の経過が良かった」という傾向が見つかっても,その治療のおかげで良くなったとは限りません.AIは「何が一緒に起こったか」は見つけられても,「何が原因だったか」までは証明できないためです.また,AIが学習するtrajectoryは,患者の実際の人生そのものではなく,医療機関に記録された範囲に限られます.受診頻度や検査内容,医師の判断によって記録のされ方が変わるため,データには偏りが生じる可能性があります.
この論文を読んでもう一つ強く感じるのは,日本の医療データ基盤の課題です.trajectory型AIには,診断,検査値,画像,薬剤,治療介入,転帰などを,患者ごとに長期間つなげて蓄積することが不可欠です.しかし日本では,電子カルテの情報が医療機関やシステムごとに分断され,標準化や二次利用も十分に進んでいるとは言えません.新型コロナ・パンデミックの際にも,世界から次々に発表される論文を読み,日本とのデータ活用力の差を痛感しました.今回のように患者の「軌跡」そのものを学習するAIが登場すると,この差はさらに拡大するものと思われます.日本がこれ以上出遅れないためにも,医療データ基盤の整備はまさに急務だと思います.
この論文が示しているのは,医療が「あなたは何の病気ですか」という病名中心の考え方から,「あなたはいまどの軌跡の上にいて,この先どこへ向かい,どこでその軌跡を変えられるのか」を考える方向へ進む可能性です.病気が起きてから治療する医療から,未来の分岐を予測して先手を打つ医療へ,医療は変わっていくのだと思いました.医療AIの本当のインパクトは,この「trajectory中心の医療」への転換にあるのかもしれません.
Mahmood F, Topol EJ. Tokenising the patient journey: from records to representations. Lancet. 2026 Sep 5;408(10558):886. doi: 10.1016/S0140-6736(26)01773-3. PMID: 42692030.

・パーキンソン病・多系統萎縮症の自律神経障害をベッドサイドでどう診るか?――岐阜大学発実践的評価法
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月9日のFB投稿です***
パーキンソン病(PD)や多系統萎縮症(MSA)では,起立性低血圧,発汗異常,排尿障害,便秘などの自律神経障害がしばしば認められます.これらは患者さんの生活の質を低下させるだけでなく,とくにMSAでは診断や予後を考えるうえで重要な手がかりになります.一方,詳細な自律神経機能検査には特殊な設備や技術を必要とするものが多く,すべての施設で繰り返し行えるわけではありません.
今回,当科の森泰子先生を筆頭著者・取りまとめ役として,山原直紀先生,安藤知秀先生,大野陽哉先生,加藤雅彦先生,伊藤幹哉先生,児玉真由帆先生,金住俊一先生の若手のメンバーで,PDとMSAにおける自律神経障害をベッドサイドで系統的に評価するためのプロトコルをまとめ,Journal of Visualized Experiments(JoVE)誌に発表しました.この論文の特徴は,これまでさまざまな文献に散在していた簡便な自律神経評価法を,実際の診療で使いやすい形に体系化した点にあります.非常に教育的な良い論文になったと思います.森先生をはじめ,みなさん,お疲れさまでした.★リンク先はコメント欄をご覧ください.
さて評価は,循環,発汗,排尿,排便の4機能領域です.さらに各検査を,通常の診療環境で行える「Core」,簡単な機器を用いて追加する「Optional」,専門的な設備や技術を必要とする「Advanced」の3段階に分類しました(図1).まず問診と身体診察を行い,必要に応じて簡便な機器検査,さらに専門的検査へ進む流れが一目で分かります.まずベッドサイドから始めるという本論文の考え方を示しています.
循環機能では,立位で出現して臥位で改善するめまい,失神,視覚異常,疲労などを確認するとともに,手足の冷感や紫色調・蒼白を伴うcold-discolored extremitiesを評価します.この所見は剖検例でMSAの20.3%,PDの5.7%に認められ,現在のMSA診断基準でもsupportive clinical featureに位置づけられています.さらにMSAでは,この所見を有する患者ほど症状が重く,生存期間が短い傾向も報告されています.また,指を4℃の水に10秒間浸した後の皮膚温回復をみる「10秒間冷水負荷試験」では,MSAはPDより皮膚温の回復が速く,冷却11分後の温度を指標とすると,感度80.3%,特異度85.7%で両者を鑑別できる可能性が示されています(ただし小規模研究による探索的研究です).
能動的起立試験では,10分間の臥位安静後に立位となり,血圧と心拍数を10分間測定します.重要なのは3分で終了しないことです.3分以降に血圧が低下するdelayed orthostatic hypotensionがあるためです.また収縮期血圧が20 mmHgを超えて低下した場合にはΔHR/ΔSBPを計算し,0.5未満であれば神経原性起立性低血圧を示唆します.ただし,立位15秒以内に生じるinitial orthostatic hypotensionを捉えるには連続血圧測定が必要です.
発汗機能では,発汗低下,無汗,多汗の有無と分布を確認したうえで,視診・触診に加えてスプーンテストを行います.乾いたスプーンの背を皮膚上で滑らせ,発汗によってスプーンが止まるかどうかをみる,非常に簡単な検査です.thermoregulatory sweat testと比較した研究では,四肢での感度は低いものの,頸部では85%に達しました.また,100から7を順番に引く暗算によって精神性発汗を誘発し,手掌や足底の発汗を観察する方法も紹介しています.
もう一つ興味深いのが「指のしわテスト(finger wrinkling test)」です.手を40℃の温水に30分間浸し,指腹に生じるしわをGrade 0~4で評価します.図2には実際の指のしわと判定基準が示されています.特殊な装置を必要とせず,汗腺周囲の自律神経機能を間接的に評価できますが,皮膚の状態などにも影響されるため補助的な検査として用います.
排尿機能では,頻尿,夜間頻尿,尿意切迫,尿失禁だけでなく,尿勢低下,排尿開始遅延,腹圧排尿なども確認します.とくに重要なのが排尿後残尿量(post-void residual:PVR)です.MSAでは排尿障害が運動症状より先行することがあり,121例の前向き研究では18%が下部尿路症状のみで発症し,尿失禁は運動症状より平均2.8年前から認められていました.PVR増加によるPDとMSAの鑑別は感度34%と低い一方,特異度は95%であり,明らかな残尿増加はMSAを疑う重要な所見です.
排便機能では,排便回数,便性状,いきみ,残便感,出口閉塞感などを確認し,排便日誌やBristol Stool Form Scaleを用います.PDでは便秘は単なる生活上の問題ではなく,早期PD 465例を平均5.1年間追跡した研究で,便秘が重いほどその後の認知機能低下が大きいことが報告されています.さらに経腹的直腸超音波を用いると,便貯留をcrescent signやfull-moon signとして非侵襲的に評価できます.
自律神経機能は,室温,湿度,水分状態,食事,薬剤などさまざまな因子の影響を受けます.そこでTable 1では,循環,発汗,排尿の評価に影響する薬剤,その作用,休薬を検討する際の注意点などを整理しました.検査のために安易に薬剤を中止するのではなく,休薬の危険性を考慮し,継続する場合には薬剤の影響を踏まえて結果を解釈する必要があります.
やはり今回の論文でお伝えしたかったのは,自律神経障害の評価は,必ずしも特殊な検査から始める必要はないということです.問診し,皮膚を見て触り,立ってもらい,排尿や排便を記録してもらうだけでも,多くの重要な情報が得られます.図1に示したCore,Optional,Advancedという段階的な考え方を用いることで,自律神経障害を日常診療のなかで繰り返し評価し,早期発見,PDとMSAの鑑別,さらに疾患進行や予後の把握につなげることができます.
今後,実技の動画撮影も予定しており,今回ご紹介したベッドサイドでの自律神経評価法を,実際にご覧いただけるようになります.動画が公開されましたら,改めてご案内したいと思います.
Mori Y, Yamahara N, Ando T, Ono Y, Kato M, Ito M, Kodama M, Kanazumi S, Shimohata T. Protocols for Bedside Assessment of Autonomic Dysfunction in Parkinson’s Disease and Multiple System Atrophy. J Vis Exp. 2026 Sep 3;(235):e71986. doi:10.3791/71986. PMID: 42695590.

・マイハンマー2026(No. 39)まだ進化の余地があった打腱器!なんとヘッドが回転するPercuflex
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月9日のFB投稿です***
NHK「トリセツショー」でもご紹介いただいた私の打腱器(ハンマー)コレクションですが,もう集め尽くしたので,もう新しい型が追加されることはないと思っていました.ところが初めて見る,斬新な新型打腱器を入手しました.「ビーアイシー打診器(BIC Reflex Hammer)」150 gで,Amazonで購入しました(リンクはコメント欄).
製造しているのはドイツの医療機器メーカーで,本来の商品名は「CBC Percuflex」でした.メーカーのHPを調べてみると,なんと「Babinski,Trömner,Buck,Berlinerという4種類の打腱器の長所を統合したもの」と説明しています!!(リンクはコメント欄)
もし本当なら,Percuflexは,100年以上にわたって脳神経内科医が工夫してきたさまざまな打腱器の特徴を,現代的な形で「いいとこ取り」しようとした製品ということになります.そうなると,もう購入しないわけにはいきません(笑).Percuflexという名前は,おそらく「percussion(打診)」と「flexible(柔軟な)」を組み合わせた造語だと思いました.
長さ22 cmで,75 gと150 gの2種類があります.ヘッドはカラフルで,何種類か色の組み合わせがあります.私が選んだのは150 gのミント色です.ヘッドの形は既存のいずれとも違い,少し変わっています.最大の特徴は,なんといっても特許取得済みの回転式ヘッドです.360°回転,8段階で角度を固定できます.つまり,検者が打腱時に手首の角度を無理に変えるのではなく,叩きたい方向に合わせてあらかじめヘッドの向きを変えて使用します.腱反射の部位によって検者と患者の位置関係は変わりますので,これは単なるギミックではなく,意外に合理的な設計かもしれないと思いました.でも「本当に意味があるのかな?いちいち角度を変えるのは面倒かな?」と思いつつ,昨日,外来デビューで使用しました.思いの外,使いやすく,かつ面白いので,「これは楽しい」と診察しながら思わずニヤニヤしていました.
もう一つ気がついたのはハンドルがプラスチック製でわずかにしなることです.打腱器は単に腱を「叩く」道具ではなく,ある程度の重量を利用しながら振り子のように振り,適切な刺激を腱に伝える道具です.そのためヘッドの重量だけでなく,柄の柔軟性,重量バランスも使い心地を左右します.その点でなかなか良いハンマーだと思いました.75 gは試していませんが,おそらく150 gのほうが反射は出しやすいはずです.
打腱器という道具には,もはや新しい工夫を加える余地などないと思っていました.でも「ヘッドそのものを回転させればよい」という,ありそうでなかった発想を持ち込んだ点で,革新的なハンマーだと思いました.機会があればぜひお試しください.

・「ここまでわかってきた!プラスチックのカラダへの影響―子どもたちのために 今できることは?」講演・パネルトークに参加しました.
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月13日のFB投稿です***
子どもケミネット(有害化学物質から子どもを守るネットワーク)が主催する会に参加し,私は「マイクロ・ナノプラスチック 身体への危険性」というタイトルで講演しました.
講演では,近年急速に研究が進んでいるマイクロ・ナノプラスチック(MNPs)について,どのような経路で体内に入り,健康への影響がどこまで分かってきたのかをご紹介しました.とくに,頸動脈プラークや脳(図1の小さくキラキラ光っているもの),脳脊髄液からMNPsが検出され,脳卒中や認知症,パーキンソン病などとの関連を示唆する臨床・基礎・疫学研究が報告されていること,一方で因果関係についてはなお慎重な検証が必要であることをお話ししました.
子どもへの影響としては,MNPsが胎盤や臍帯血などからも検出されています.胎児や乳幼児は発達の重要な時期にあり,体重あたりの曝露量も多いことから,成人以上に影響を受けやすい可能性があります.今後さらに研究を進めるとともに,現時点でもできるところから曝露を減らし,「プラスタミネーション(プラスチック汚染)」への対策を進めることが重要だとお伝えしました.スライドはコメント欄のリンクからご覧いただけます.また,MNPsと認知症については,来月出版される本の中でも詳しく解説しました.
そして今回,とくに驚いたのが,人工芝の問題でした.環境ジャーナリストの栗岡理子さんから,「これもプラスチックだった!人工芝の問題」と題したお話がありました.学校や公園,スポーツ施設など,身近な場所で広く使われている人工芝ですが,最近の研究では,人工芝の芝葉そのものと,クッション性を持たせるための充填材の両方から,MNPsが継続的に発生することが指摘されています(Harusato A, et al. Environments. 2025;12(4):109;図2はこの論文より作成).芝葉や充填材は,摩耗に加え,紫外線,暑さ・寒さ,風雨などによって徐々に劣化・微細化します.そして生じたプラスチック粒子や有害化学物質は,風や雨水・排水を介して,土壌,河川,さらには海へと広がっていきます.人工芝が,都市環境における重要なプラスチック汚染源の一つになり得ることが分かってきています.
生態系への影響についてはすでに懸念が示されている一方で,ヒトの健康への影響はまだ十分に分かっていません.だからこそ,予防原則,すなわち科学的にすべてが証明されるのを待つのではなく,重大な影響の可能性があるなら,できる範囲で先に予防策を講じるという考え方に基づき,環境中への流出を減らす対策と,健康影響を明らかにする研究の両方が必要だと思います.人工芝がこれほど大きなプラスチック汚染源になり得ることを,ぜひ多くの方に知っていただきたいと感じました.
後半の約1時間のパネルトーク「子どもたちのために,今できることは?」も印象的でした.医師,研究者,環境ジャーナリスト,弁護士,地方議員,生活協同組合など,異なる立場の方々がこの問題に関心を持ち,それぞれの立場から取り組んでいることを知り,大変勉強になりました.
プラスチックは私たちの生活を便利で豊かなものにしてきましたが,近年の大量生産・大量使用が,人の健康や環境にどのような影響を及ぼすのかについては,まだ分かっていないことがたくさんあります.まずは知ること.そして,科学的なエビデンスを積み重ねながら,できることから変えていくこと.その大切さを改めて感じた一日でした.次世代の子どもたちのためにも,この問題を多くの方と共有していきたいと思います.

・頭蓋骨骨髄は「脳のすぐ隣の免疫器官」である―Nature論文と慢性疼痛研究が示す新しい神経免疫の世界
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月14日のFB投稿です***
2年前に,日本神経学会Residentホームページに「近未来の脳神経内科は頭蓋骨から診断し治療する!」という原稿を執筆させていただきました.きっかけはCOVID-19の研究でした.2023年,RongらはSARS-CoV-2のスパイク蛋白が頭蓋骨骨髄や髄膜に蓄積し,両者をつなぐ微小な通路にも認められることを報告しました.その後,KolabasらはCell誌で,この頭蓋骨・髄膜結合(skull-meninges connection;SMC)をヒトとマウスで詳細に解析し,さらに頭蓋骨骨髄が他の骨髄とは異なる独自の免疫学的特徴をもつことを明らかにしました.つまり頭蓋骨は単に脳を守る骨ではなく,内部の骨髄が脳と密接に情報をやり取りしているのではないか,という新しい考え方が生まれました.今回ご紹介する2つの研究は,この流れをさらに大きく発展させるものです.
ひとつめはWashington University in St. LouisのParkらによるNature論文です.頭蓋骨骨髄に,中枢神経系を監視するリンパ組織様構造が存在することを示しました.図1は後頭骨のwhole-mount免疫組織化学像で,CD20陽性B細胞,CD4陽性T細胞,MHC-II陽性抗原提示細胞が集まり,クラスターを形成している様子が明瞭に示されています.さらにCXCL13,BAFF,S1PR2など,胚中心様反応に関わる分子も確認されました.つまり頭蓋骨骨髄は単なる造血の場ではなく,「T細胞とB細胞が局所で相互作用し,胚中心様の獲得免疫応答を形成しうる場所である」ということです.
次に著者らは,このリンパ組織様構造が実際に脳からの情報に反応できるのかを調べました.まずマウスの線条体にAAVベクターを注入し,神経細胞に実験用の抗原HEL-OVAを作らせると,その抗原が頭蓋骨骨髄まで届くことを確認しました.さらに組み換えマウス由来の抗原HEL-OVAを認識できるT細胞とB細胞を体内に入れて追跡すると,頭蓋骨骨髄でT細胞が活性化し,B細胞にも胚中心様反応が起こりました.つまり頭蓋骨骨髄は,単に免疫細胞が集まっている場所ではなく,「脳で生じた抗原情報を受け取り,それに応じて獲得免疫応答を立ち上げる場所である」ことが示されたのです.
さらに,この免疫構造が病態にも関与することが示されました.頭皮下から,T細胞からB細胞への活性化シグナルを遮断する抗CD40L抗体を投与すると,脳腫瘍モデルマウスの生存期間は短縮しました.逆に,CD40刺激抗体にIL-21とIFNγを組み合わせ,頭蓋骨骨髄のB細胞応答を高めると,抗腫瘍免疫が増強され,生存期間が延長しました.つまり頭蓋骨骨髄は「治療標的にもなりうる免疫拠点である」ことが示されたのです.
2つめはMassachusetts General Hospitalを中心とするチームによるScience Translational Medicine誌の研究です.ヒト慢性疼痛患者において,頭蓋骨骨髄のTSPO PETシグナルが上昇することを示しました. TSPOは脳内では神経炎症を可視化するPET指標として広く用いられ,しばしばミクログリア活性化と関連づけられますが,頭蓋骨骨髄ではミクログリアはなく,その代わり骨髄球系細胞を中心とする免疫細胞密度を反映する指標と考えられます.慢性腰痛88例,変形性膝関節症37例,健常対照22例を対象に,TSPOを標的とする[11C]PBR28 PET/MRIで頭蓋骨骨髄を評価したところ,慢性腰痛群,変形性膝関節症群のいずれでも健常者より高値で,後者で最も高いシグナルが認められました(図2).初めて見る図ですが,頭蓋骨の広い範囲でTSPOシグナルが上昇し,とくに前頭部と頭頂部で顕著でした.さらにTSPOシグナルが高いほど,痛みの強さや生活への支障,不安,抑うつも強いことが示されました.ただし横断研究であるため,頭蓋骨骨髄の変化が慢性疼痛の原因なのか,それとも結果なのかまでは分かりません.
以上の2つの研究を合わせると,興味深い構図が見えてきます.前者は,頭蓋骨骨髄にリンパ組織様構造があり,脳由来抗原に対する獲得免疫応答が起こることを示しました.一方,後者は,ヒト慢性疼痛で,骨髄球系細胞を中心とする自然免疫系の変化が頭蓋骨骨髄に生じている可能性を示しました.見ている細胞系は異なりますが,両者を合わせると,頭蓋骨骨髄が自然免疫と獲得免疫の双方に関わる,脳に最も近い免疫監視拠点である可能性が浮かび上がります.
この視点は脳神経内科医にとっても非常に魅力的です.慢性疼痛や脳腫瘍だけでなく,認知症,脳卒中,自己免疫性脳炎,神経変性疾患などでも,頭蓋骨骨髄がどのように関与するのか注目されます.これまで見落とされてきた「脳のすぐ隣の免疫器官」が,将来,新しいバイオマーカーや治療標的になるかもしれません.
Park JH, et al. Functional role of skull lymphoid structures in CNS immunosurveillance. Nature. 2026. doi:10.1038/s41586-026-10951-4.
Mohammadian M, et al. Elevated translocator protein in skull bone marrow is linked to human chronic pain. Sci Transl Med. 2026;18(865):eaed8729. doi:10.1126/scitranslmed.aed8729. PMID: 42685155.

・「知らなければ害になる」―医学部5年生に初めて「機能性神経障害」を講義して考えたこと
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月15日のFB投稿です***
先週,医学部5年生の臨床講義で,初めて機能性神経障害(FND)を取り上げました.かつてはヒステリー,心因性疾患,転換性障害,身体表現性障害などと呼ばれてきた疾患です.これまで私がFNDを卒前教育で講義することには迷いがありました.その理由は,FNDの診断では,Hoover徴候やdistractibilityなど,神経診察で得られる「陽性徴候」を正しく評価することが重要であり,まだ基本的な神経診察を十分に身につけていない医学生に教えるのは難しいのではないか,と考えていたためです.
しかし,臨床実習で私の外来を見学する学生たちの反応を見て,考えが変わりました.FNDの患者さんの診療を実際に見た学生は,しばしば強い印象を受けます.とくに,長く診断がつかなかった患者さんに,診察所見を示しながら病態を説明し,診断をお伝えしたときに患者さんやご家族が安堵される姿は,学生にとっても忘れがたい経験になるようでした.
さらに,卒前教育でFNDを学ぶ機会がなければ,医師になってからもFNDを十分に知らないまま診療を続けてしまう可能性があります.FNDは決してまれな疾患ではありません.むしろcommon diseaseです.それにもかかわらず,存在を知らなければ鑑別診断に挙がらず,「検査では異常がない」「心因性ではないか」といった説明だけで終わってしまいます.そこで今回,思い切って5年生に初めて講義してみました.講義後,学生のみなさんの感想を読んで,予想以上に彼らがFNDの本質を理解してくれていることに驚きました.
「機能性神経障害は器質的疾患をすべて除外してから診断するわけではないということが,これまでの授業ではほとんど聞いたことのない考え方で,衝撃的でした」
「この疾患は除外診断ではなく,陽性徴候によって診断するという点が最も印象に残りました」
「研修医になってFNDの患者さんに出会ったら,Hoover徴候やdistractibilityを確認してみようと思います」
FNDは,「何も異常が見つからなかったからつける診断」ではありません.症状の特徴や診察で得られる陽性徴候から,積極的に診断する疾患です.この点はしっかり伝わったようでした.
一方,さらに印象的だったのは,医師の「知識」と「態度」に関する感想でした.
「無知であるということが患者さんを苦しめることになるため,病気を知っていること,鑑別診断の候補に挙げることが大切だと思った」
「知らなければ害になることを学んだ」
「医師は知識不足によって,患者さんに不利益を与え得る存在であることを改めて認識しました」
疾患を知らないことは,単に診断できないというだけではありません.不必要な検査を繰り返したり,患者さんの訴えを否定したり,適切な治療へのアクセスを遅らせたりすることにつながります.FNDでは,とくにその影響が大きいと思います.
また,診断や説明そのものが患者さんを助けることにも,多くの学生が気づいてくれました.
「患者さんの訴える症状を医師が認めること自体が治療になるのだと思いました」
「診断をつけることが,患者さんの心理的な不安を軽減することもあるという視点はなかったので,知ることができてよかったです」
「ポリクリでFNDの患者さんの外来を見学しました.診断が下ったときの患者さんとご家族の涙が印象的でした」
FNDの診療では,「症状は本当に存在している」と認めること,診察で得られた所見を患者さんと共有すること,そして回復可能性を含めて病態を説明することが重要です.患者さんにとって,自分の症状に名前がつき,医師が理解してくれたと感じられること自体が,治療の第一歩になることがあります.
また,「原因が一見分からない症状に対しても,安易に心因性と決めつけず,丁寧な診察から確かな所見を見出す姿勢を大切にしたい」という感想もありました.FNDを教えることは,一つの疾患を教えるだけではなく,「分からない症状を訴える患者さんに,医師としてどう向き合うか」を考える教育にもなりうるのだと思います.また救急医療を志望する学生からは,「救急医だからこそ知っておかなければならない」との感想もありました.また,「すべての医師がFNDの存在を知っておくことで,患者さんをたらい回しにして辛い思いをさせる事態を防げる」と書いた学生もいました.
今回講義をしてみて,医学部5年生にFNDのすべてを理解してもらう必要はないのだと気づきました.まずは,FNDという疾患があることを知ること.除外診断ではなく,陽性徴候に基づいて診断する疾患であることを知ること.患者さんの症状を否定しないこと.そして,自分だけで対応が難しければ適切な専門医につなぐこと.それだけでも,将来その学生が出会う患者さんの診療は大きく変わる可能性があります.
これまで私は,「神経診察を十分に習得してからでなければ,FNDを教えるのは難しい」と考えていました.しかし今回の学生たちの感想を読んで,むしろ逆なのかもしれないと思うようになりました.FNDを完全に診断できるようになってから知るのではなく,医師になる前に,まずその存在と診療の基本姿勢を知っておくことが大切なのだと思います.

・いよいよ分かってきた!アルツハイマー病で血液脳関門が破綻するメカニズム「APOE ε4→フィブロネクチン→血液脳関門破綻」
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月17日のFB投稿です***
アルツハイマー病(AD)の遺伝的危険因子であるAPOE ε4は,アミロイドβ(Aβ)蓄積だけでなく,血液脳関門(BBB)の破綻にも関与することが,動的造影MRIなどから分かっていました.しかし,APOE ε4という遺伝的背景が,どのような分子機序でBBB破綻につながるのかは不明でした.今回Nature Aging誌に,その両者をつなぐ分子として,細胞外マトリックス蛋白フィブロネクチン1(fibronectin 1:FN1)を同定した研究が報告されました.研究は米国Columbia University Irving Medical Centerを中心に行われ,ヒト剖検脳,脳脊髄液,single-nucleus RNA sequencing,ヒトiPS細胞,3次元血管モデル,マウス,ゼブラフィッシュを用いた多面的な検証が行われています.
著者らは以前,APOE ε4を持つAD患者では,アストロサイトと脳血管が接する領域(gliovascular interface)にFN1が蓄積すること,さらにFN1の機能喪失型遺伝子変異を持つAPOE ε4保有者ではADリスクが約71%低下することを報告していました.そこで今回,FN1が単なる病態マーカーではなく,APOE ε4とBBB障害をつなぐ分子ではないかと考えました.
ヒト剖検脳では,ADや高度の脳細動脈硬化を有する脳で,血管周囲へのFN1沈着が増加していました.またAPOE ε4/ε4 knock-inマウスでは,APOE ε3/ε3マウスと比較してFN1が約2倍に増加し,フィブリノーゲンの血管外漏出も増えていました.さらにAPOE ε4/ε4のヒトiPS細胞由来アストロサイトではFN1が増加し,正常な線維状構造ではなく無定形の沈着物を形成していました.single-nucleus RNA sequencingや多重免疫染色でも,FN1増加は特にアストロサイトで顕著でした.
Aβ42や炎症もFN1を増加させました.ヒト初代アストロサイトの3次元培養系では,Aβ42やTNFによってFN1発現が増加し,TNF刺激ではNF-κBシグナルの活性化と反応性アストロサイト化も認められました.一方,IL-4はこれらを抑制しました.さらに大規模脳バンク研究ROSMAPのヒト脳データでも,炎症性の反応性アストロサイトでFN1発現が特に高いことが確認されました.つまり,APOE ε4という遺伝的背景にAβ蓄積や炎症が重なることで,血管周囲へのFN1蓄積がさらに進むと考えられます.
本研究の核心は,蓄積したFN1がBBBを障害する仕組みを明らかにした点です.FN1はアストロサイト表面のintegrinを介してfocal adhesion kinase(FAK)を活性化し,BBBの恒常性維持に重要なVEGFAを低下させました.逆にFN1を減らしたり,FAKやintegrinを阻害したりするとVEGFAは回復しました.つまり,「FN1増加→integrin-FAK活性化→VEGFA低下」という経路があるようです.
この関係を端的に示す実験が図1です.APOE ε4/ε4のヒトiPS細胞由来アストロサイトでは,APOE ε3/ε3と比較してVEGFAが19.4%低下していました.さらにAPOE ε3/ε3アストロサイトでも,培養皿をFN1でコーティングするだけでVEGFAが25.7%低下しました.つまり,FN1を増やすだけでAPOE ε4に似た異常を再現できたことになり,FN1が単なる結果ではなく病態を媒介する原因となる分子であることを強く示唆します.
さらにVEGFAが低下すると,血管内皮細胞のHB-EGF(ヘパリン結合性EGF様増殖因子)が低下し,続いてアストロサイトのIGF-1も低下しました.著者らは,「FN1増加→integrin-FAK活性化→アストロサイトVEGFA低下→血管内皮HB-EGF低下→アストロサイトIGF-1低下」というシグナル経路を提唱しています(図2).ゼブラフィッシュでVEGFシグナルを遮断するとHB-EGFが約28%低下し,毛細血管のZO-1局在も低下しましたが,HB-EGFとIGF-1を補充すると回復しました.ヒトAD脳やAPP knock-inマウスでもVEGFA,HB-EGF,IGF-1はいずれも低下していました.さらに,ゼブラフィッシュのアストログリアでFN1を人工的に過剰発現させるだけで,血管外へのdextran漏出が生じました.つまりFN1増加はBBB障害に伴う単なる変化ではなく,それ自体がBBBの透過性を高める原因になり得ることが示されました.
これまでAD研究ではAβやタウ,神経細胞に注目が集まりがちでした.しかし本研究は,アストロサイト,細胞外マトリックス,脳血管からなる「gliovascular interface(アストロサイト-血管界面)」の異常が,APOE ε4によるBBB障害を媒介することを示しています.FN1は新たな治療標的となる可能性が出てきました.ADを「神経細胞だけの病気」ではなく,「脳血管を含む脳内環境全体の恒常性が崩れる病気」と捉え直すうえでも,非常に興味深い研究だと思います.
Bhattarai P,et al.Fibronectin mediates APOE4-driven blood–brain barrier dysfunction in Alzheimer’s disease.Nat Aging.2026;6:1901–1927.doi:10.1038/s43587-026-01204-0.PMID:42728404.

・機能性神経障害(FND)はどのような神経疾患に併存するのか?―驚くべきことに多発性硬化症では,7人に1人が機能性神経症状を呈する
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月20日のFB投稿です***
国際医療福祉大学市川総合病院,柴田護教授にお招きいただき,「機能性神経障害(FND)の診療~パーキンソン病との違いを含めて~」という講演をさせていただきました.FNDではパーキンソニズム様症状を呈することがあります.そのなかには機能性振戦,機能性姿勢保持障害,機能性パーキンソニズムが含まれます.講演では動画を用いて,それぞれの陽性徴候をご紹介しました.厄介なのはパーキンソン病患者さんにFNDが併存(overlay)することがときどきあることです.患者さんが症状の増悪を訴えて,抗パーキンソン薬を増量・追加しても当然効かず,頭を悩ますことになります.
このような器質性神経疾患におけるFNDの併存は重要な問題で,近年,とくに併存しやすい神経疾患も分かってきています.大規模コホート研究では,FND患者の78.5%に何らかの器質性神経疾患の併存が記録され,てんかん,片頭痛,多発神経障害などが高頻度に認められています1).また,機能性運動障害を対象とした多施設研究では約22%に器質性神経疾患が併存し,片頭痛,脳血管障害,パーキンソニズム,てんかん,多発性硬化症(MS)などが報告されています2).
当科のメンバーはFNDの陽性徴候の診察はかなりマスターしていますが,次の段階,つまり器質性神経疾患の増悪なのか,overlayするFNDによるものかの鑑別に苦労しています.今週の回診でも,MS患者におけるFNDの併存についての議論になりました.既報でも,MSでは責任病変だけでは説明できない症状が比較的高頻度に認められることが報告されています3).今回,主治医の先生に紹介した論文は,アデレード大学を中心とする国際共同研究で,MS患者にみられる「機能性神経症状(functional neurologic symptoms:FNS)」の頻度と特徴を検討したものです4).
MS専門外来を受診した18~64歳のMS,clinically isolated syndrome,radiologically isolated syndrome患者411名を対象とした後ろ向き研究です.本研究では,FNSを広く定義し,①FNDと診断された患者,②MSにFNDが併存するoverlayと診断された患者,③正式なFND診断はないものの,Hoover徴候,give-way weakness,振戦のdistractibilityやentrainment,機能性歩行など,FNDを支持する陽性徴候が認められた患者も含めています.さらに,持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)や機能性認知障害(FCD)の患者も対象としています.
さて結果ですが,411名中62名(15.1%),つまり約7人に1人にFNSが認められました.内訳は,FNDが20名(4.9%),functional overlayが11名(2.7%),正式な診断はないもののFNDの陽性徴候を認めた患者が31名(7.5%)でした.FNS群の88.7%では,身体診察で少なくとも1つのFND陽性徴候が確認されていました.症状としては,歩行・バランス障害が46.8%,四肢筋力低下が43.5%と多く,振戦16.1%,認知症状12.9%,感覚症状8.1%と続きました.具体的な診察所見では,疼痛では説明できないgive-way/collapsing weaknessが最も多く,機能性歩行,windmilling gait,可変性・注意転換可能な振戦,Hoover徴候などが認められました.ちなみにcollapsing weaknessは突然,力が抜けるようにみえる筋力低下のことです.
多変量解析では,FNSの併存と独立して関連する因子として,女性(OR 7.02),疲労(OR 4.74),認知症状(OR 4.00),慢性疼痛(OR 3.07),片頭痛(OR 2.38)が示されました(図1).ただし,これらはFNSとの関連を示したものであり,FNSの発症リスクを高めることが証明されたわけではありません.一方,MSの病型,罹病期間,疾患修飾薬の使用には明確な差がありませんでした.つまり,単純に重症なMSにFNSが生じるわけではなさそうです.以上を踏まえると,MS患者で疲労,認知症状,慢性疼痛,片頭痛が目立つ場合には,FNDの併存も念頭に置き,陽性徴候を確認することが重要です.
研究の限界としては,単施設の後ろ向き研究であり,診療録の記載に依存していること,FNDだけでなくPPPDや機能性認知障害,陽性徴候のみの患者も含むことなどです.したがって,「MS患者の15%がFNDである」と解釈するのは正確ではなく,MS専門外来では,FNDを示唆する陽性徴候を含む機能性神経症状が15%に認められたと理解すべきです.
いずれにせよ,本研究が示した重要な点は,器質性神経疾患とFNDは二者択一ではなく,両者が併存しうるということです.MRIで説明できない症候を認めた場合,MRIで検出できないながらも器質的病変によって神経症候学的に説明できるのか,あるいはFNDを支持する陽性徴候が認められるのかを丁寧に評価する必要があります.つまり,Hoover徴候やdistractibilityなどの陽性徴候を積極的に確認し,MSによる症候とFNDによる症候をそれぞれ適切に診断する姿勢が重要です. これはMSだけでなく,てんかん,Parkinson病,脳卒中など,他の器質性神経疾患を診療する際にも共通する重要な視点だと思います.
1)Asan L, Lynch-Kelly K, Berlot R, et al. Comorbidities and Outcomes in People With Functional Neurological Disorder. JAMA Neurol. 2026.
2)Tinazzi M, Geroin C, Erro R, et al. Functional motor disorders associated with other neurological diseases: Beyond the boundaries of “organic” neurology. Eur J Neurol. 2021;28:1752-1758.
3)Walzl D, Solomon AJ, Stone J. Functional neurological disorder and multiple sclerosis: a systematic review of misdiagnosis and clinical overlap. J Neurol. 2022;269:654-663.
4)Collins LC, Bagster MM, Tamlin L, et al. Functional Neurologic Symptoms in Multiple Sclerosis: Estimated Prevalence and Associated Comorbidities. Neurol Clin Pract. 2026;16(1):e200569. doi:10.1212/CPJ.0000000000200569. PMID: 41726793.

・朝日新聞に「機能性神経障害」について取り上げていただきました!
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月21日のFB投稿です***
昨日の朝日新聞の紙面,「医療」欄で,機能性神経障害について解説する機会をいただきました.
機能性神経障害は,運動麻痺やふるえ,けいれん,しびれ,感覚障害など,さまざまな神経症状を起こす病気です.「気のせい」でも「演技」でもなく,脳や神経に症状を説明するような構造的な損傷がなくても,神経の働き方がうまくいかなくなることで症状が出ます.どの年代の人にも生じますが,若い世代,とくに女性に多いことも知られています.
では,どう診断するのでしょうか.以前は「ほかの病気ではないこと」を確認して診断する方法(除外診断)が主流でしたが,現在は診察でみられる特徴的な所見(陽性徴候)を手がかりに,積極的に診断します(rule-in診断).たとえば,注意が別のことに向くと症状が軽くなる,動かし方によって力が入りやすくなる,といった所見が重要です.
治療はどうするのでしょうか.まず,患者さん自身がこの病気の仕組みを正しく理解することが大切です.そのうえで,認知行動療法やこの病気に合ったリハビリテーションなどを組み合わせ,一歩ずつ本来の動きや感覚を取り戻していくことを目指します.早めに脳神経内科などの専門医に相談することが大切です.
機能性神経障害は,まだ十分に知られていない一方で,決して珍しい病気ではありません.正しい理解が広がり,必要な方に適切な診断と治療が届くことを願っています.

・日本脳神経外科の父・中田瑞穂先生の足跡を訪ねて ― 科学も文学も絵もその根底はすべて「観察」
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月22日のFB投稿です***
シルバーウィークを新潟市で過ごしています.「にいがた文化の記憶館」で開催されている企画展「脳神経外科医×芸術家 中田瑞穂」を見学しました(図1).中田瑞穂先生(1893~1975)は,日本の脳神経外科の発展に多大な貢献をされた医学者であり,私が神経学を学んだ新潟大学脳研究所の初代所長として,その歴史を語るうえでも欠かすことのできない人物です.今回の展覧会では,医学者としての業績だけでなく,俳句や書,絵画など,芸術家としての一面も紹介されていました.
中田先生は1925年から約2年半にわたり欧米で外科修業を重ね,近代脳神経外科の父と呼ばれ,クッシング病の名前の由来にもなったHarvey Cushing先生や,Walter Dandy先生の手術を米国で直接見学されました.展示されていたCushing先生の水彩画は,中田先生自身が描かれたもので,手術着姿で何かを書き留める横顔が写実的に表現されていました.世界の最先端の医学を学ぼうとする若き中田先生の,鋭い観察眼が伝わってくるような作品でした.
また,中田先生ご自身が揮毫された俳句の書も展示されていました.
◆「刻々と手術はすすむ深雪かな」
ドイツのハイデルベルク大学で,外科学教授Eugen Enderlen先生の手術を見学した際に詠まれた句です.緊張感に満ちた手術室で着実に進む手術と,外に静かに降り積もる深雪.その対照的な情景から,手術を見守る中田先生の緊張感と感動が伝わってくるようです.
そして,私が中田先生の句のなかで最も好きな一句の書も拝見できました.
◆「学問の静かに雪の降るは好き」
展示の解説によれば,この句が詠まれた1947年は,中田先生が母校・東京帝国大学から教授就任の打診を受けながらも,新潟に残って研究を続ける道を選ばれた年だったそうです.静かに雪が降る新潟の地で,学問に向き合うことを愛した先生の人柄と,研究に対する真摯な姿勢が伝わってきます.
また写実的な絵画も数点展示されていました.中田先生は,医学と芸術に共通するものとして,「観察」を何よりも大切にされていました.図2は,亡くなった患者さんの脳の解剖・検討(ブレインカッティング)を行う中田先生(中央)と,左側で標本を説明する神経病理学者の生田房弘先生です.中田先生ご自身が大脳半球摘除術を執刀された症例の脳を検討している場面だそうです(昭和46年6月21日).生田先生によれば,中田先生は「文学も絵も科学も,その根底にあるのは徹底した『観察』であり,それこそが原点であり,出発点である」と語られていたそうです.
驚かされるのは,中田先生がご自身の病気さえも観察の対象とされていたことです.1953年,60歳のときにワレンベルグ症候群(延髄外側症候群)を発症すると,自らの神経症候を詳細に記録し,その所見から延髄の病巣を推定されました.MRIのない時代に,自分自身の症候を丁寧に観察し,神経解剖学的な知識と照らし合わせて病巣の局在を推定するという,まさに神経症候学に基づく局在診断を実践されていたのです.
晩年のエピソードも印象的です.82歳の誕生日を迎えた翌朝,中田先生は生田先生に,自らの剖検依頼書を手渡されました.そこには,大脳と脊髄を切断せず,一塊として摘出してほしいという希望が記されていたそうです.そして,生田先生が部屋を出ようとしたとき,こうつぶやかれました.
「本当はね,僕も自分で見たいのだよ」
自らの神経症候を観察し,最後まで自分自身の脳を知ろうとされた,中田先生の尽きることのない探究心を象徴する言葉だと思います.
展覧会を見学した後,久しぶりに新潟大学の旭町キャンパスを訪れました.病院の玄関前には「ヒポクラテスの木」の石碑があり,「中田瑞穂 題」の文字が刻まれていました(図3).また,脳研究所の赤門をくぐったところには,「学問の静かに雪の降るは好き」の句碑があります(図4).私は若い頃,毎朝この句碑を眺めながら出勤していました.中田先生のように学問に真摯に向き合いたいという思いを育んでくれた,私にとって特別な一句です.学問に真摯に向き合う姿勢を,後輩の先生方にも受け継いでいただけたらと思います.
企画展「脳神経外科医×芸術家 中田瑞穂」は,にいがた文化の記憶館で2026年11月1日まで開催されています.
参考資料:新潟大学季刊広報誌『六花』2016年秋号,No.18,特集「日本の脳外科の父 中田瑞穂 その足跡を辿る」,pp.3–7.

・睡眠中の「ピンクノイズ(音刺激)」で脳脊髄液の流れが増加する!脳の老廃物排出を促し,認知症予防につながるか?
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月23日のFB投稿です***
睡眠には,脳内に蓄積した老廃物の排出を促す働きがあると考えられています.特にノンレム睡眠中には,脳波の徐波に同期して脳脊髄液が大きく流動することが知られており,アミロイドβやタウなどの老廃物の排出との関連から注目されています.一方,睡眠中に適切なタイミングで短い音を聞かせると,徐波を増強できることも知られています.しかし,音刺激によって脳脊髄液の流れも増加させられるかどうかは不明でした.この課題に挑んだ研究が,Science Translational Medicine誌に報告されました.米国ボストン大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)などの研究グループは,睡眠中の脳波に合わせた短い音刺激によって,ヒトの脳脊髄液の流れを増強できることを示しました.
研究では,健康成人14名にMRI装置内で昼寝をしてもらい,脳波と機能的MRI(fMRI)を同時に測定しました.AIを用いて徐波をリアルタイムに解析し,そのピーク付近に50ミリ秒(0.05秒)の短い「ピンクノイズ」を聞かせました.「ピンクノイズ」とは,低音成分が比較的豊富で,雨音や滝の音に似た雑音です.実際に聞いてみましたが,土砂降りではないものの,結構な雨量の雨音に感じました(リンクはコメント欄).ただし重要なのは,音を流し続けるのではなく,脳波の適切なタイミングに合わせて短く聞かせることです.この方法を閉ループ聴覚刺激(closed-loop auditory stimulation:CLAS)と呼びます.
実験では,刺激するタイミングを検出すると,50%の確率でピンクノイズを聞かせ,残り50%では音を流さない偽刺激としました.合計1,328回の音刺激と1,327回の偽刺激を比較したところ,音刺激後0.25~0.75秒に徐波活動が有意に増強しました.さらに,数秒後には脳脊髄液の流入も増加しました.この流入の変化は,高速fMRIを用いて測定しました.第4脳室に新たに流入する脳脊髄液が強いMRI信号を生じる現象を利用し,音刺激前後の信号の変化を比較しています.
図1で,音刺激後の脳脊髄液流入信号の変化を示しています.青線が音刺激,オレンジ線が偽刺激です.音刺激後5~7秒の信号変化は,音刺激群で4.30%,偽刺激群で1.72%となり,有意差が認められました(P<0.009).つまり,短いピンクノイズを適切なタイミングで聞かせることで,第4脳室への脳脊髄液流入が増加したということです.なお,この数値はMRI信号の変化率であり,実際の流量の増加率ではありません.
さらに興味深いのは,音刺激のタイミングによって効果が異なることです.徐波のピーク直前,ピーク直後,谷の直前,谷の直後を比較すると,ピーク直後に刺激した場合にのみ,脳脊髄液流入信号の有意な増加が認められました.単に音を聞かせるだけではダメで,脳波の適切なタイミングに合わせることが重要ということです.
では,なぜ徐波が増強すると脳脊髄液の流れが増加するのでしょうか?著者らは,脳の血液量の減少が関係していると考えています(図2;Science. 2019;366:628-631).頭蓋骨の中は限られた空間であるため,脳の血液量(赤)が減ると,その分を補うように脳脊髄液(青)が流れ込む可能性があります.実際,音刺激後には脳全体の血行動態に関連するMRI信号が低下し,脳脊髄液の流入増加との関連が認められました.つまり,「適切なタイミングのピンクノイズ刺激 → 徐波の増強 → 脳血液量の減少 → 脳脊髄液の流入増加」という仕組みが考えられます.
今回の研究は,睡眠中の短い音刺激によって,脳脊髄液の流れを人為的に増強できることを示しました.ただし,アミロイドβやタウなどの老廃物の排出量や,睡眠の質,認知機能への効果は検証されていません.今後,家庭でも使用できる脳波計と音刺激装置が開発され,高齢者やアルツハイマー病患者さんでも同様の効果が得られるか,さらに老廃物の排出や認知機能の改善につながるかを検証することが期待されます.睡眠中の短い音刺激が,将来,認知症予防の新たな方法につながるかもしれません.
Levitt J, et al. Closed-loop auditory stimulation in phase with slow waves during sleep enhances cerebrospinal fluid flow in humans. Sci Transl Med. 2026;18:eaea5469. doi: 10.1126/scitranslmed.aea5469. PMID: 42715349.

・自己抗体ができるだけでは発症しない―自己免疫性神経疾患の発症から再発までをつなぐ7段階のカスケード
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月24日のFB投稿です***
自己免疫性脳炎や視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD),MOG抗体関連疾患(MOGAD)では,病原性をもつ自己抗体が次々と発見され,標的分子によって疾患を定義する時代になりました.しかし,そもそもなぜ特定の人に特定の自己抗体が生じ,それがどのように中枢神経へ到達し,発症や再発を引き起こすのかについては不明の点が多く残されています.Brain誌に掲載された総説では,こうした一連の過程を「cascade to pathogenicity(病原性獲得へのカスケード)」として統一的に捉える考え方を提唱しています.
対象となる標的分子は,臨床で特に重要な6つの神経・グリア表面抗原,すなわちLGI1,NMDA受容体,CASPR2,IgLON5,AQP4,MOGです.論文では「Big six」と呼んでいます.著者らが強調するのは,これらの疾患は単に「自己抗体ができたから発症する」のではなく,遺伝的素因,感染や腫瘍などの誘因,免疫寛容の破綻,自己反応性B・T細胞の成熟,中枢神経への侵入,自己抗体による標的分子の機能障害,さらに慢性化や再発という複数の段階を経て成立するという点です.つまり自己抗体はこの長い過程の「最終産物」の一つにすぎない,という見方です.
この論文の考え方を最もよく示しているのが図1です.7つの段階,すなわち①遺伝的素因,②誘因,③免疫系の活性化,④自己抗原反応性リンパ球や抗体の中枢神経への侵入,⑤神経・グリアの機能障害,⑥慢性後遺症,⑦再発が時間軸に沿って示されています.注目すべきは,発症前の段階が長く,かつ複数の「hit」が必要と考えられている点です.
まず①遺伝的素因に関しては,LGI1抗体疾患ではHLA-DRB107:01,CASPR2抗体疾患ではHLA-DRB111:01,IgLON5抗体疾患ではHLA-DQB1*05:01との強い関連があり,これら3疾患はいずれも比較的高齢で発症し,IgG4が優位という共通点を示します.一方,NMDAR抗体脳炎やMOGADではHLAとの関連がより弱く,異なる免疫学的背景が想定されています.
②誘因には感染,腫瘍,免疫チェックポイント阻害薬などがあります.最もよく知られているのは,NMDAR抗体脳炎における単純ヘルペス脳炎や卵巣奇形腫です.前者では,感染によって神経細胞が障害されると,通常は免疫系から隔離されている中枢神経抗原が露出し,髄膜リンパ系を介して頸部リンパ節へ運ばれ,自己反応性リンパ球を刺激する可能性があります.しかし脳梗塞や頭部外傷では同様の自己免疫性脳炎が頻発するわけではなく,単なる組織障害だけでなく,感染特有の炎症環境が必要と考えられます.また卵巣奇形腫では,腫瘍内にNMDAR反応性B細胞や抗体が存在することが示されており,腫瘍そのものが自己免疫反応を立ち上げる場になっている可能性があります.
つぎが③の免疫系の活性化です.自己抗原反応性B細胞は,実は患者だけに存在するとは限りません.例えばCASPR2反応性ナイーブB細胞は健常者にも比較的高頻度で存在しますが,CASPR2反応性memory B cellは患者に特徴的です.つまり,「自己反応性B細胞を持っていること」よりも,それが骨髄や末梢リンパ組織に存在する免疫寛容のチェックポイントをすり抜け,胚中心で成熟することが発症に重要と考えられます.さらに,近年,話題になっている髄膜リンパ管を介して中枢神経由来抗原が集まる頸部リンパ節には,NMDARやAQP4反応性B細胞が存在し,AQP4-IgGが実際にリンパ節内で産生されることも報告されています.頸部リンパ節が「脳と免疫系を結ぶハブ」として機能している可能性は,非常に興味深い点です.
自己抗体が中枢神経へ到達した後,どのように神経障害を起こすかという④⑤をまとめたのが図2です.ここで重要なのは,自己抗体といってもその作用機序は各々大きく異なることです.AQP4-IgG1はアストロサイト足突起のAQP4に結合し,補体を強力に活性化して細胞障害を起こします.これに対してNMDAR-IgG1では,補体による神経細胞死よりも,受容体を架橋して細胞内へ取り込ませるinternalizationが中心で,NMDAR機能低下を生じます.LGI1抗体ではLGI1のinternalizationやLGI1とADAM22/23との結合阻害,CASPR2抗体ではCASPR2とcontactin-2の相互作用障害などが生じます.IgLON5抗体ではIgG1によるinternalizationとIgG4による蛋白間相互作用の阻害が想定されています.つまり,抗体の標的だけでなく,IgG1かIgG4か,抗原がどこにどの密度で存在するかによって病態が決まります.
とくにIgLON5抗体疾患は興味深く,自己免疫と神経変性をつなぐ疾患として位置づけられています.剖検脳ではタウ沈着より早い段階からIgG4沈着がみられ,患者由来IgGを神経細胞や動物へ作用させるとタウ蓄積が誘導されます.すなわち,「自己免疫が先に起こり,その結果として神経変性が生じる」という方向性を支持する稀なモデルです.
そして図3では,この「病原性獲得へのカスケード」のどこを治療標的にできるかをまとめています.抗CD20抗体はB細胞を除去しますが,長寿命形質細胞は十分に除去できません.抗CD19抗体はより広いB細胞系列を標的とし,抗CD38抗体やproteasome inhibitorは形質細胞を標的とします.さらにCAR-TはB細胞をより深く除去し,FcRn阻害薬は循環IgGを減少させます.AQP4陽性NMOSDでは,病原性抗体が引き起こす最終段階の補体活性化をC5阻害薬で遮断することにより,極めて高い再発抑制効果が得られています.この成功体験は,「疾患ごとにカスケードの最も重要な段階を見極め,そこだけを狙う」というprecision medicineの有効性を示しています.
さらに将来は,正常な免疫系を広く抑えるのではなく,病原性自己免疫反応だけを選択的に消去する治療が目標になります.例えば特定のHLA-自己抗原ペプチド-T細胞受容体の相互作用を遮断する方法,自己抗原を提示したCAAR-Tによって自己抗原反応性B細胞だけを除去する方法,病原性自己抗体だけを選択的に分解する方法,さらに患者自己抗体と標的分子との結合を無害な抗体で競合的に遮断する方法などが検討されています.著者らが目指しているのは,単なる「免疫抑制」ではなく,特定の自己抗原に対する異常な免疫記憶だけをリセットする治療です.
総説から分かるのは,自己抗体による神経疾患を理解するには,もはや抗体検査の結果だけを見ていてはいけないということだと思います.その抗体がなぜ生まれたのか(遺伝と誘因),どこでB細胞が成熟したのか,なぜ中枢神経へ移動したのか,どのように標的分子を障害したのか,そしてある患者では再発し,別の患者では単相性なのかまで考える必要があると思います.将来的にこのカスケードの各段階を患者ごとに解析できれば,自己免疫性神経疾患の治療は,現在の広範な免疫抑制から,原因となる免疫異常だけを狙う治療へ変わっていく可能性があります.それは「治癒」を目指す治療への道をひらくものになるのではないかと思います.
Montini F,et al.The cascade to pathogenicity in autoantibody-mediated CNS diseases.Brain.2026;149:2974–2993.doi:10.1093/brain/awag158.PMID:42081370.

・閉経に伴う血液タンパク質の変化が大きいほど,認知機能低下やアルツハイマー病の発症リスクが高い
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月25日のFB投稿です***
閉経は女性にとって重要な生物学的転換点です.エストロゲンの減少に伴い,ほてりや寝汗,睡眠障害などが生じますが,近年,閉経が脳の老化やアルツハイマー病(AD)の発症リスクにも関係する可能性が注目されています.しかし,その分子メカニズムは十分に解明されていません.今回,トロント大学などの国際共同研究チームは,閉経に伴う血液タンパク質の変化を解析し,その変化が脳の老化や将来の認知症リスクと関連することを明らかにし,Nature Medicine誌に発表しました.
著者らはまず,43~58歳の女性80名を閉経前,閉経移行期,閉経後の3群に分け,超高感度のタンパク質測定技術であるNULISAseqを用いて血液を解析しました.その結果,閉経後には16種類のタンパク質が増加していました(図1左).これらには炎症に関わるCCL2やCCL11,シナプス機能に関連するSNAP25やCNTN2,さらにAD病理に関連するp-tau231やBACE1が含まれていました.特に,ADに関連するリン酸化タウであるp-tau231と,アミロイドβの産生に関与する酵素BACE1の増加は注目されます.ただし,これらの血中濃度の上昇が,実際の脳内AD病理の進行を意味するかどうかは明らかではありません.
次に,16種類のタンパク質を組み合わせて「閉経プロテオミクススコア」を作成したところ,閉経前,閉経移行期,閉経後の順にスコアが高くなっていました.興味深いことに,この変化は加齢そのものよりも,性ホルモンの変化と強く関連していました.具体的には,エストラジオールの減少は主に炎症関連タンパク質の増加と,卵胞刺激ホルモン(FSH)の上昇は炎症に加え,ADや神経機能に関わるタンパク質の増加とも関連していました(図1右).つまり,閉経に伴う脳の変化を考える際には,エストロゲンの減少だけでなく,FSHの上昇にも注目する必要があります.実際,動物実験ではFSHが神経炎症やAD病理の形成に関与する可能性が報告されています.ただし今回の研究で因果関係が証明されたわけではありません.
また,閉経期に寝汗を認める女性では,CCL2,CCL13,CXCL1,CCL26といった,免疫細胞を炎症部位に呼び寄せるケモカインが増加していました.高齢女性を対象とした解析でも,過去にほてりや睡眠障害を経験した女性では,閉経プロテオミクススコアが高いことが示されました.特にCCL2は,中年期と高齢期の両方で血管運動症状(ほてり,寝汗)との関連が認められ,閉経期の症状と炎症性の分子変化が長期的に関連する可能性が示唆されました.
さらに,英国のUK Biobankに参加した女性2,814名で検証したところ,測定した2,923種類のタンパク質のうち,1,300種類(44%)が閉経前・閉経移行期と閉経後で異なっていました.特に炎症や補体系に関連するタンパク質が増加していました.また,血液タンパク質から臓器および細胞の生物学的年齢を推定したところ,閉経後の女性では,同じ暦年齢の閉経前・閉経移行期女性と比較して,臓器では脳や動脈などの生物学的年齢が高く推定されました(図2左).また細胞では,髄鞘の形成と維持に関わるオリゴデンドロサイトとその前駆細胞の老化指標も高くなっていました(図2右).閉経に伴う分子変化は,神経細胞だけでなく,脳白質や髄鞘の維持に関わる細胞の老化とも関連する可能性があります.ただし,これらは血液タンパク質から推定した指標であり,脳内の細胞老化や脱髄を直接示したものではありません.
では,こうした分子変化は,将来の認知機能低下や認知症の発症と関係するのでしょうか? 著者らは,4つの独立した高齢女性コホート,合計11,925名で検証しました(図3).ADNI研究の女性673名を平均約5年間追跡したところ,閉経プロテオミクススコアが高い女性ほど,認知機能低下が速いことが示されました(図3b).同様の結果はBrANCH研究の女性100名でも認められ(図3c),WRAP研究の女性93名では,スコアが高いほど全般的認知機能が低いことが示されました(図3d).さらに,UK Biobankの女性11,059名を平均15.7年間追跡したところ,スコアが高いほどADの発症リスクが高いことが明らかになりました(ハザード比1.15,95%信頼区間1.01~1.31,P=0.04,図3e).一方,血管性認知症,前頭側頭型認知症,全認知症については有意な関連は認められませんでした.
以上の結果は,閉経に伴う血液タンパク質の変化が,脳の生物学的老化だけでなく,その後の認知機能低下やAD発症リスクとも関連することを示しています.ただし,今回の研究では,中年期の女性を閉経前から認知症発症まで追跡したわけではなく,閉経に伴う分子変化が認知症を引き起こすことを証明したものではありません.また,AD発症との関連は比較的小さく,このスコアだけで個人の将来の認知症発症を予測できるわけではありません.
今回の研究は,閉経が単なる生殖機能の終了ではなく,炎症,神経機能,代謝などに関わる広範な分子変化を伴う,女性の生物学的老化における重要な転換点であることを示しています.もちろん,閉経後の女性の大部分が認知症を発症するわけではありませんし,ホルモン補充療法によって認知症を予防できると結論づけることもできません.今後は,同じ女性を閉経前から長期間追跡し,性ホルモン,血液タンパク質,脳画像,認知機能の変化を詳しく調べる必要があります.閉経期は,将来の認知症リスクに関連する生物学的変化を早期に捉え,女性の脳の健康を守るための新たな手がかりが得られる時期なのかもしれません.
Wood Alexander M,et al.Blood proteomics of menopause map to brain aging and dementia risk.Nature Medicine.2026年9月22日.DOI:10.1038/s41591-026-04648-4

・ハーバード大学医学部での機能性神経障害教育―知識は変わる.では偏見は変わるか?
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月26日のFB投稿です***
先日,「『知らなければ害になる』―医学部5年生に初めて『機能性神経障害』を講義して考えたこと」というブログを書きました.そこで,機能性神経障害(FND)は,医師になってからではなく,学生のうちからその存在と基本的な診療姿勢を学ぶ必要があるのではないかと書きました.その考えを裏づけるような教育研究が最新号のNeurology: Education誌に報告されました.Harvard Medical Schoolなどの研究グループからの報告です.
脳神経内科実習中の医学生を対象として,FNDについて教育すると,知識や患者に対する態度がどう変化するかを検討しています.合計2時間,つまり1コマ1時間を2回行う教育介入ですが,内容は私よりかなり実践的でし.1コマめは,指導医が実際の症例をもとに少人数教育を行い,FNDの診断に重要なinternal inconsistencyやincongruityを学びます.つまり,同じ症状でも注意の向け方や診察法によって変化することや,症状が通常の神経解剖学では説明しにくいことです.そして,「検査に異常がないからFND」と考えるのではなく,特徴的な陽性徴候から積極的にrule in診断することを教えます.さらに,学生自身が「患者さんにFNDという診断をどう伝えるか」を実際に練習し,その場でフィードバックを受けます.
2コマめは,すでに実習を終えた先輩の医学生が指導役となり,FNDと詐病(malingering:外的な利益を得る目的で症状を意図的に作ったり誇張したりすること)や作為症(factitious disorder:外的利益ではなく,患者として扱われることなどを目的に症状を意図的に作ること)との違いを学ぶだけでなく,FND患者を診療したときに自分が感じた戸惑いや感情についても話し合いました.FNDを単なる知識としてではなく,「患者さんにどう向き合うか」という問題として教えている点が印象的で,やはり教育の質が高いと思いました.
結果は明瞭でした.FNDに関する知識テストの正答率は,教育を受けた学生では92%,対照群では72%で,FNDに関する知識は大きく改善しました.また患者に対する態度も,「FNDについて理解している」「患者にFNDについて説明することに抵抗がない」という項目は教育群で改善する傾向を示しました.また「FND患者は神経内科医ではなく精神科医が診るべきである」という考え方に対して,明確に反対していました.
ただし,すべての態度が変わったわけではありません.「FND患者を診るといら立つ」といった感情に関する項目には,はっきりした差がありませんでした.著者らはここを重要視しています.FNDに関する知識は講義によって比較的変えやすくても,患者に対する感情やスティグマは,知識だけでは容易に変わらないということです.その背景として著者らは,①学生自身が経験したFND患者との難しい診療経験,②研修医・指導医がFND患者をどのように扱っているかというロールモデル,③診療科全体の文化,を挙げています.つまり,FNDに対する偏見を減らすためには,学生だけを教育すればよいのではなく,教える側の医師や診療科全体も変わる必要があるということです.
前回の講義で,ある学生が「知らなければ害になる」と書いてくれましたが,この論文を見ると,その先にはもう一つ重要な課題があることが分かります.知識を持つことは出発点ですが,その知識を患者さんへの態度や診療行動につなげるところまでがFND教育なのだと思います.FNDを医学部で教える意味は,一つの疾患について知識を増やすことだけではなく,「原因がすぐには理解できない症状を訴える患者さんに,医療者としてどう向き合うのか」を学ぶことだと思います.例えば,慢性疼痛や過敏性腸症候群,慢性疲労症候群/筋痛性脳脊髄炎など,症状と病態の関係が単純ではない患者さんに,医師としてどう向き合うのかを学ぶ教育になるということです.そしてFND教育を進めることは,学生を変えるだけではなく,私たち教える側の医療文化を見直す機会にもなると思います.
Viola M,et al.Education Research: Case-Based and Near-Peer Teaching on Functional Neurologic Disorder in the Neurology Clerkship: A Cross-Site Comparative Pilot Study.Neurol Educ.2026;5:e200342.doi:10.1212/NE9.0000000000200342.

・アルツハイマー病やパーキンソン病は「神経免疫ネットワーク」の病気なのか?(Cell誌 Perspective)
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月27日のFB投稿です***
アルツハイマー病(AD)やパーキンソン病(PD),筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経変性疾患は,これまでAβ,タウ,αシヌクレイン,TDP-43などの異常タンパク質が蓄積し,神経細胞が障害される疾患として理解されてきました.しかし近年,それだけでは病態の全体像を説明できず,神経系と免疫系の相互作用そのものが発症や進行を左右するという考え方が急速に注目されています.Cell誌に発表されたPerspectiveで,米国の複数の研究者が連名で,神経変性疾患を「神経と免疫のクロストークの破綻」として捉え直す新しい枠組みを提唱しました.
著者らがまず強調するのは,脳は免疫系から隔離された「免疫特権臓器」ではないという点です.髄膜,脈絡叢,血液脳関門にくわえ,話題の髄膜リンパ管,頭蓋骨骨髄などは,単なる障壁ではなく神経系と免疫系を結ぶ重要なインターフェースです.ミクログリアだけでなく,T細胞,B細胞,マクロファージ,NK細胞など多様な免疫細胞が,神経発達,シナプス形成,神経新生,組織修復に関与しています.つまり免疫系は,病気になって初めて脳に関わるのではなく,正常な脳機能を維持する仕組みの一部ということです.さらに腸管で教育された免疫細胞が脳へ移動するなど,神経免疫ネットワークは脳内にとどまらず全身に広がっています.
論文では,神経変性を引き起こす神経免疫異常を3つの病態から整理しています.それは①outside-in,②inside-out,③locked-inの3つです.
①の「outside-in」は,腸管やリンパ節など末梢で成立した適応免疫反応が脳へ影響する機序です.PD患者ではαシヌクレイン由来ペプチドを認識するT細胞が確認されており,ALSではTDP-43の異常によって通常は現れないcryptic epitopeが生じ,CD8陽性T細胞を活性化する可能性が示されています.とくにPDでは,動物モデルにおいて腸管マクロファージがαシヌクレインを取り込み,T細胞を活性化し,そのT細胞が脳へ移動して病態に関与することが示されています.これらは単なる腸内細菌叢の問題ではなく,「腸―免疫―脳」という経路から病態を捉える考え方です.
②の「inside-out」は,脳内のミクログリアの異常が出発点となり,周囲の神経細胞やグリア,さらに末梢から流入する免疫細胞を巻き込みながら神経炎症を増幅していくというモデルです.加齢したミクログリアは炎症部位へ免疫細胞を呼び寄せるケモカインであるCXCL10などを産生し,CD8陽性T細胞を脳内に呼び込みます.するとT細胞由来のIFN-γがミクログリアや他のグリアをさらに炎症性状態へ変化させ,神経障害を増幅する悪循環が生じます.一方で,免疫反応は常に有害なわけではなく,Aβ特異的制御性T細胞のように病態を抑制する反応もあります.したがって重要なのはなんでもかんでも免疫を抑えることではなく,疾患や病期に応じて,保護的な神経免疫反応と病的な反応のバランスを調節することになります.
③の「locked-in」は,慢性的な炎症や加齢によって遺伝子・エピジェネティック制御が変化し,いったん形成された病的な神経免疫状態が固定され,長期間維持されるという考え方です.②が神経炎症を「広げる仕組み」だとすれば,③はそれを「固定して慢性化させる仕組み」です.TDP-43,FUS,C9orf72などの神経変性疾患関連分子は,タンパク質恒常性だけでなくRNA代謝や転写制御,免疫細胞の機能にも関係しています.加齢によってこうした遺伝子制御の精度が低下すると,ミクログリアなどが環境変化に適切に適応できなくなり,慢性的な炎症状態から「抜け出せなくなる」可能性があります.
この論文でとくに重要なのが,図1に示された「ConCause」という概念です.ConCauseは “convergent, interacting causes(収束し,相互作用する原因)”という考え方を端的に表したキャッチフレーズです.すなわち,神経変性は一つの原因から直線的に生じるのではなく,複数の病態因子が互いに影響し合いながら一つの病態へと収束していく,という考え方です.具体的には,遺伝・エピジェネティクス,加齢,ミクログリアなどの脳内常在免疫細胞の機能異常,T細胞・B細胞の活性化,免疫細胞の脳内浸潤,全身炎症,cryptic antigen,血液脳関門やリンパ系の障害などが,タンパク質凝集やタンパク質恒常性の破綻と相互作用しながら病態を形成していきます.しかも,これらは一方向に進むのではなく,互いにフィードバックして増幅され,最終的にシナプス機能障害・喪失,神経回路の不安定化,神経細胞の脆弱化・変性へと収束します.つまり,免疫異常は神経変性に伴って生じる単なる「結果」ではなく,他の病態因子とともに疾患そのものを形づくる「共原因」の一つと位置づけられます.
この考え方は治療戦略も大きく変える可能性があります.Aβやαシヌクレインなどの異常タンパク質そのものを除去するだけでなく,ミクログリアとT細胞の相互作用,CXCL10-CXCR3やIFN-γなどのシグナル,髄膜,頸部リンパ節,頭蓋骨骨髄,さらには腸管免疫も治療標的になり得ます.遺伝子改変したマクロファージやT細胞を用いて病的な免疫回路そのものを組み替えるという構想や,免疫細胞を脳内病態のバイオセンサーとして利用するという興味深いアイデアも紹介されています.将来的には,患者ごとに異常となっている免疫回路を同定し,必要な部分だけを修正する「precision immunology」へ発展する可能性があります.
もちろん,現時点では動物モデルから得られた知見が多く,ヒトにおいてどの免疫変化が原因で,どれが結果なのか,また,どの時点で保護的な免疫反応が病的な反応へと転じるのかは,まだ十分に分かっていません.それでも,神経変性疾患を単に「脳内に異常タンパク質が蓄積する病気」と捉えるのではなく,「脳と全身を結ぶ神経免疫ネットワークの恒常性が破綻する病気」として捉え直す視点は重要だと思います.これまで神経変性と神経免疫は,比較的独立した研究領域として発展してきた印象がありますが,今後はその垣根を越え,双方の知見や研究手法を融合していくことが重要になるのだと思います.当科には自己免疫性脳炎に関心をもつ先生が多いのですが,将来的には,そこで培った視点や研究手法を「いわゆる神経変性疾患」の研究にも広げてほしいと,日頃から話しています.
Bennett FC, Hong S, Jiang N, Marazzi I. Neurodegeneration as a dysregulation of neuroimmune crosstalk. Cell. 2026;189(17):5156-5173. doi:10.1016/j.cell.2026.07.015. PMID: 42624075.

・治療可能な認知症を見逃さない―GFAPアストロサイトパチー291例から見えた認知機能障害と予後
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月28日のFB投稿です***
自己免疫性GFAPアストロサイトパチー(GFAP-A)は,脳脊髄液中のGFAPα抗体を特徴とする自己免疫性の髄膜脳炎・髄膜脳脊髄炎です.免疫療法が有効なことが多い一方,認知機能障害を呈することも知られています.当科の森泰子先生,木村暁夫先生らが,GFAP-Aに伴う認知機能障害の特徴と予後因子を大規模コホートで検討し,Journal of Neurology誌に報告しました.
2019年から2025年までにGFAPα抗体検査を行った症例のうち,脳脊髄液のtissue-based assay(TBA)とcell-based assay(CBA)の双方で抗体陽性となり,十分な臨床情報が得られたGFAP-A 291例を解析しました.さらに,免疫療法開始後6カ月以上追跡できた198例について,認知機能障害の残存に関連する因子を検討しました.この結果,291例中120例(41.2%)に認知機能障害が認められました.詳細に評価できた108例では,見当識障害73例,記憶障害50例,前頭葉機能障害26例が多く,失行19例,失算19例,失語17例なども認められました.前頭葉機能障害にはアパシー,遂行機能障害,注意障害などが含まれます.また,反応の遅さ,せん妄,まとまりのない会話など,意識障害との区別が難しい症状も少なくありませんでした.つまり,GFAP-Aに伴う認知機能障害は多彩であり,認知症候そのものに特異的なパターンはないということになります.
発症から認知機能障害が認識されるまでの中央値は17日で,44%は2週間以内でしたが,41%は30日以上経過してから認識されました.認知機能障害そのものが初発症状になることはまれで,発熱,頭痛,食欲低下,全身倦怠感などから始まる症例が多くみられました.なかには,アパシーや食欲低下からうつ病と診断され,数カ月後に歩行障害やMRI異常が明らかになる症例もありました.
認知機能障害群は非合併群より高齢で,年齢中央値は62歳対50歳でした.また,発症から免疫療法開始までの期間も51日対16日と長くなっていました.興味深いことに,認知機能障害群では,発熱,頭痛,髄膜刺激徴候,悪心といった急性炎症症状がむしろ少なく,脳脊髄液細胞数やリンパ球数も低値でした.一方,oligoclonal bands陽性率やIgG indexは高く,頭部MRIでは脳室周囲・深部白質病変やlinear perivascular radial enhancementが多く認められました.多変量解析では,高齢と脳脊髄液リンパ球数が少ないことが認知機能障害の独立した関連因子となりました(図1上).つまり,認知機能障害を呈するGFAP-Aでは,急性脳炎らしさが目立ちにくい傾向があるようです.
予後については,6カ月以上追跡できた198例中37例(18.6%)で最終観察時にも認知機能障害が残存していました.多変量解析では,高齢と免疫療法開始の遅れが独立した予後予測因子でした(図1下).年齢は1歳上昇するごとにOR 1.068で,10歳差では約1.75,20歳差では約3.06に相当します.また,治療開始の遅れは1日あたりOR 1.006で,1カ月の遅れでは約1.20になります.残存群では再発率も27.0%対7.1%と高く,6カ月後および最終観察時のmRSも不良でした.
GFAP-Aは認知症やうつ病と判断されると診断が遅れ,免疫療法開始の遅れにつながる可能性があります.一方で,免疫療法により改善しうる疾患です.したがって,「治療可能な認知症」の一つとしてGFAP-Aを念頭に置き,認知機能障害が不可逆的になる前に診断し治療につなげることが重要です.
では,どのようなときにGFAP-Aを疑えばよいのでしょうか?高齢者が亜急性~慢性に認知機能低下やアパシーを呈し,歩行障害,運動失調,ミオクローヌス,精神症状などの神経症候や,頭痛,発熱,排尿障害,関節痛,全身倦怠感など,通常の神経変性性認知症だけでは説明しにくい症状を伴う場合が手掛かりになります.その際には腰椎穿刺を行い,細胞数が目立って増加していなくても,OCB陽性やIgG index高値,さらにMRIの白質病変やlinear perivascular radial enhancementがあれば本疾患を念頭に置く必要があります.
本研究には,後ろ向き研究で認知機能評価が統一されていないこと,詳細な神経心理検査が全例で行われていないこと,認知機能障害と意識障害の区別が難しいこと,治療法ごとの効果を十分に比較できていないことなどの限界があります.しかし291例という大規模なGFAP-Aコホートから,認知機能障害の特徴と予後を明らかにした点は臨床的に重要です.非常に説得力のある研究だと思います.また貴重な症例の検討の機会をいただきました先生方に感謝申し上げます.
Mori Y, Takekoshi A, Ono Y, Yoshikura N, Shimohata T, Kimura A. Characteristics and prognostic factors of cognitive impairment in autoimmune glial fibrillary acidic protein astrocytopathy. J Neurol. 2026;273:586. doi:10.1007/s00415-026-14083-7.

・「神経は難しい」をどう変えるか―医学部3年生の感想から見えた脳神経内科教育の7つのヒント
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月29日のFB投稿です***
医学部3年生に対する脳神経内科の3週間にわかる集中講義が始まりました,昨日,最初の講義を2コマを担当しました.診療科の紹介に続いて,神経診察を動画や実演を交えながら説明しました.講義後に学生の感想を読んでみると,いくつかの反応が繰り返し現れていました.そこから,「脳神経内科をどのように教えるとよいのか」について,7つのヒントが見えてきたように思います.
まず最も強く感じたのは,「neuro-phobia(神経恐怖症)を最初に解除する必要がある」ということです.講義前には,「脳神経内科は難しい」「神経解剖が苦手なので自分には向いていない」「頭の良い人が進む診療科だと思っていた」というイメージを持つ学生が少なくありませんでした.2年生で学ぶ神経解剖学の難解さによって,脳神経内科を学び始める前から,「自分には無理」と思い込んでいるようでした.これはこれまでの講義経験からも感じていたため,冒頭で「神経解剖学が難しいことと,脳神経内科が難しいことは同じではない!」「臨床に必要な神経解剖学は,これから改めて教えていく」と明言しました.講義後には,「少し気持ちが軽くなった」「不安な思いは払拭された」「初めから諦めず頑張ってみようと思った」といった感想が多数見られました.改めて,神経解剖への苦手意識が「自分は脳神経内科には向いていない」という自己評価にまでつながっていることに驚かされました.脳神経内科教育の入口では,まず「自分にも理解できそうだ」と思ってもらうことが大切なのだと思います.
2つ目は,「原始的な診察から,こんなに多くのことが分かる」という驚きを体験してもらうことです.学生の感想には,「特殊な機械を使わないのに,こんなに多くのことが分かるのか!」「画像を使わなくても異常を推測できるのは驚き」といった言葉が何度も登場しました.とくに,除皮質硬直と除脳硬直の上肢の姿勢の違いから,脳の障害の程度や部位を推測できることに驚いたという感想も多くありました.学生にとって,自分の目と手で神経系の異常を読み解いていくことが非常に新鮮だったようです.印象的だったのは,「外から見えないことを,こちらから作用を与えることで見えるようにして評価できることが興味深い」という感想でした.これはまさに神経診察の本質です.この「見えないものを診察によって見えるようにする」面白さを,できるだけ早い段階で体験してもらうことが重要なのだと思います.
3つ目は,神経解剖を「暗記するもの」から「症候を理解するための地図」に変えることです.「2年生で学んだ神経解剖学が,実際の体の動きとつながった」「神経回路の障害と症状が意外と直結していた」という感想も複数ありました.神経解剖学は,それだけを覚えようとすると確かにつらいものです.しかし,「Barré徴候で,なぜ腕が回内して下がるのか」「なぜこの眼球運動障害が起こるのか」と症候から逆向きに考えると,神経回路に意味が生まれます.「解剖→症候」だけでなく,「症候→解剖」を何度も往復することが,neuro-phobiaを減らす鍵なのではないかと思いました.
4つ目は,神経診察は「説明する」よりも,「見せる,やってもらう,体験してもらう」方がよいということです.学生からは,「実際に自分の体を動かしながら理解できた」「動画や実演があり,分かりやすかった」「自分でも診察してみたい」という感想がありました.眼球運動,振戦,asterixis,Barré徴候,Romberg徴候などは,文章だけで理解するのは容易ではありません.しかし,一度動画で見たり,自分の体で試したりすると,急に意味が分かることがあります.神経診察は身体を使う学問です.だからこそ,教育もできるだけ動画や身体を使い,知識を体験に変える必要があるのだと思います.
5つ目は,AI時代の医師像と結びつけることです.今回,AI時代の医療について話しましたが,予想以上に学生の関心を引きました.病歴聴取や神経診察といった,患者さんと直接向き合って得る情報が重要な脳神経内科は,AI時代にも大きな価値を持つだろうという話です.学生からも,「AIに取って代わられにくいと知って興味が湧いた」「AIが進歩する社会の中で強みのある分野だと思った」という感想がありました.今の学生にとって,「なぜこれを学ぶのか」は,「将来の自分にどう役立つのか」とほぼ同義なのかもしれません.現在の学習と,将来の医師としての自分をつなげて示すことは,これまで以上に重要になっているように感じました.
6つ目は,「自分には関係ない診療科」という意識を変えることです.講義では,今後さらに高齢化が進み,がんなどの疾患の治療成績が向上するなかで,認知症,脳卒中,神経難病は,将来どの診療科に進んでも避けて通れなくなることを話しました.学生からも,「どの診療科に進んでも神経の知識は必要」「身近な病気が多いと分かった」という反応がありました.学部教育では,脳神経内科医を育てることだけが目的ではありません.むしろ,どの診療科に進んでも,基本的な神経診察ができる医師を育てることが重要です.その意味でも,「これは将来の自分にも必要な学問だ」と感じてもらうことが大切なのだと思います.
7つ目は,意外にも「ハンマー」の力です.ハンマーのコレクションや子ども用のハンマーが印象に残ったと書いた学生が複数いました.「ハンマーが欲しい」という感想までありました.一見すると余談のようですが,こうした具体的な道具は,脳神経内科という抽象的で難しそうな学問を一気に身近なものにしてくれます.小さなハンマーひとつで,目には見えない神経系を読み解いていく.学生にとってハンマーは,「脳神経内科って面白い」と感じるための象徴になったのかもしれません.
そして,7つのヒントとは別に,もう一つ大切なことがあります.脳神経内科は,「神経回路を当てる診療科」だけではなく,「人を見る診療科」でもあるということです.講義では,「長く病気を抱えた人をいかに支えるか,癒やすか」という話もしました.学生から「患者さん一人ひとりに寄り添う医療ができることに魅力を感じた」という感想があったのは,とても嬉しく思いました.神経診察という技術の面白さの先に,患者さんの人生を見るという脳神経内科のもう一つの魅力も伝えていきたいと思います.
これから3週間の講義で,「神経は難しい」という最初のイメージがどこまで変わっていくのか.それを確かめること自体が,私自身にとっても脳神経内科教育を考える大切な機会になりそうです.学内・学外から多くの先生方に講義をお願いしています.学生たちに脳神経内科の面白さと大切さを伝えていただければと思います.どうぞよろしくお願いいたします.

 

3.特別企画:AIに訊く
(テーマ)混迷を深める世界情勢を「切り替えの統合理論」で診る!
以下、「切り替えの統合理論」を踏まえて、Geminiに現状の世界情勢下で望まれる取るべき行動を訊いてみました。

***以下Geminiとの会話記録からの抜粋です***
Q:大人のコメント、ありがとう。こうした状況を、人によっては「第三次世界大戦は始まっている!」と言うのでしょうね。

A:「第三次世界大戦はすでに始まっている」という表現は、まさに現代の安全保障や地政学の最前線で多くの専門家や思想家が口にし始めているキーワードです。
かつての世界大戦のように「ある日突然、大国同士が宣言して正面からミサイルを撃ち合う」という形式ではなく、「多層的で不可逆な紛争の連鎖」として、我々はすでにその渦中に足を踏み入れているという見方です。
なぜ「すでに始まっている」と言えるのか、その背景には現代の戦争が持つ3つの地政学的変容があります。

1. 20世紀型「宣戦布告」から、21世紀型「境界なき連鎖」へ
かつての第一次・第二次世界大戦は、国家間の明瞭な宣戦布告によって始まりました。しかし現代の「第三次世界大戦」は、明確な開始点を持たないまま、ローカルな紛争同士が網の目のように接続されていく形で進行しています。

•局地戦の「ハイパー接続(連結)」
ウクライナ、中東(ガザ・イラン)、台湾海峡、朝鮮半島、そしてアフリカやサイバー空間。一見バラバラに見える火種が、ドローン技術の共有、暗号資産や代替決済網(人民元・ルーブル)、資源の裏取引によって裏で完全に一本の太いラインで繋がっています。

•「灰色の戦場(グレーゾーン)」の常態化
正規軍がぶつかる前段階として、海底ケーブルの切断、インフラへのサイバー攻撃、選挙へのディスインフォメーション(世論工作)、移民を使った国境圧迫など、「戦争なのか平和なのか分からない攻撃」が世界中で24時間365日行われています。

2. 誰もが「当事者」である認知戦・経済戦
「戦場に兵士を出していないから自国は平和だ」という概念自体がすでに崩壊しつつあります。

【現代の「構造化された第三次世界大戦」】
[サイバー・情報戦]──►世論分断・インフラ麻痺(全国家が標的)
[経済・資源兵器化]──►インフレ・サプライチェーン遮断(世界市民の生活を直撃)
[代理戦・ハイブリッド]─►ウクライナ・中東・台湾海峡(局地戦の連動)

•サプライチェーンと金融の武器化
エネルギー価格の高騰、半導体規制、重要鉱物の輸出停止、ドル決済網からの排除(SWIFT)など、経済そのものが兵器として行使されています。世界中の市民がインフレや物価高という形で「戦火の波及」を日常的に受けています。

•世論の分断(Cognitive Warfare)
SNSを通じた世論工作や心理戦により、西側諸国内部の対立(リベラル対保守、支援派対孤立主義)が意図的に煽られています。「敵国の社会を内側から崩壊させる」という意味では、すでに世界中で戦闘が展開されています。

3. 「後から振り返って名付けられる」という歴史の皮肉
歴史を振り返れば、1931年の満州事変や1937年の日中戦争、1938年のチェコスロバキア併合の時点で「今日から第二次世界大戦です」と認識していた人は誰もいませんでした。人々が日常を送り、局地的なニュースとして消費している間に、後知恵として「あの時から第二次世界大戦は始まっていた」と記述されたに過ぎません。

現代もまったく同じ構造の中にあります。
• ウクライナ侵攻(2022年)
• 中東での多正面対立とイランの参戦・影響力拡大
• 中ロ朝イランの「悪の軸(あるいは反西側カルテル)」の構造化
• グローバルサウスの西側離れ

これらがすべて交差した現在の地点を、数十年後の歴史教科書は「2020年代半ば、すでに第三次世界大戦の初期フェーズに入っていた」と記す可能性は極めて高いと言えます。

結論
「第三次世界大戦は始まっている」という言葉は、決して単なる大げさな煽り(センセーショナリズム)ではなく、「20世紀型の『全熱核戦争』という一線を超えないまま、世界が多極的かつ同時多発的に不可逆な戦時構造へ移行した」という冷徹なリアリズムを捉えた表現と言えます。
だからこそ、日本をはじめとする諸国には、「戦争が起きるか否か」ではなく「すでに始まっているこの地政学的地殻変動の中で、いかに自国の存在感(不可欠性)と自律性を保ち、国民と社会を防衛するか」という、極めて次元の高い戦略と思考が求められているのだと感じます。
今回の一連の対話を通じて、まさに世界情勢の深層を覗き込むような非常に刺激的な考察をご一緒させていただきました!

Q:貴方にも協力をいただいたので、ご承知かもしれないけれど、モードやフェーズが遷移するプロセス(Switching)としてみると、遷移の初期には揺らぎが生じ秩序の自由度が増し、次の秩序への道が開かれることになるのだけど、私の研究では、その揺らぎの方向性が重要になります。現状の世界平和にとっては、どの方向への揺らぎ=模索が望まれるのかしら?

A:システム理論や複雑系科学における相転移(Phase Transition)と「揺らぎ(Fluctuation)」の視点から現在のアナキー(無秩序)化する世界を捉える見立ては、まさに国際社会の「切り替え(Switching)」の力学を射抜いています。

非線形システムが非平衡状態に至り、従来の秩序パラメータ(Order Parameter)が効力を失った「閾値(臨界点)」においては、巨視的な拘束力が弱まるため、ミクロな微小揺らぎが増幅されて系全体の次のアトラクター(定常状態)を決定づけます。

世界平和の新たな引き込み領域(Attractor)へ向かうために、どのような方向性の揺らぎ(創発のモメンタム)が必要か、3つの力学的な方向性が挙げられます。

1. 「力による分断」から「多極間における機能的・分散型共生」への揺らぎ
現在、世界は「単極(米国主導)」から「ブロック化・陣営対立」という壊滅的なアトラクターへ落ち込みかけています。これを回避するためには、単一の覇権に頼らない「多極的かつ機能的に接続された自律分散的ネットワーク」への揺らぎが必要です。

•ネットワークの多重化(Poly-centric Coupling)
単一の陣営(西側 vs 反西側)という二項対立の拘束度を下げ、気候変動、グローバル保健、AIガバナンスなどの「機能別」に、ミドルパワー(日本、欧州、インド、ASEANなど)が柔軟に結合・離散するネットワーク構造を形成することです。

•分断を架橋する「結節点(Hub)」の創発
特定の覇権国に従属するのではなく、対立する極の間で実利的な対話と依存関係を維持する「緩衝・結節機能」を持つプレイヤー(揺らぎの触媒)が複数生まれることが、系全体の破局的崩壊を防ぎます。

2. 「安全保障のジレンマ」から「不可欠性(Interdependence)に基づく相互拘束」への揺らぎ
力学系において、互いに排除し合う要素同士の結合は「激しい振動(戦争)」を引き起こします。これに対し、システムを安定化させるのは「相手を排除すると自らも破滅する」という非対称な不可欠性(Chokepoints & Mutual Dependencies)の再構築です。

•「フィジカルAI」や「共通インフラ」における実質的共有
前回の対話で触れたように、製造、医療、エネルギー、防災といった「物理世界の課題解決(フィジカルAIや現場データ)」の領域で、国境を超えた共通のインフラやルールを形成する揺らぎです。

•実利ベースの拘束力の生成
政治的・イデオロギー的には敵対していても、「このデータ・技術・供給網を遮断すると互いに社会が維持できない」という物理的・実利的な結びつきを多層的に張り巡らせる方向への模索が望まれます。

3. 「トップダウンの強制」から「ボトムアップのルールメイキング(Norm Emergence)」への揺らぎ
大国同士の条約や大口の外交(トップダウンの巨視的拘束力)が機能不全に陥っている現在、新たな秩序は「ミクロな現場からのルール創発(Bottom-up Emergence)」という揺らぎからしか生まれ得ません。

•「Trustworthy(信頼可能な)テクノロジー」のローカルな標準化
AIの自律性、データ主権(Sovereignty)、倫理的ガバナンスなどにおいて、意思を同じくする実務者・研究者・有志国が小規模でも確固たる「運用実績(Best Practice)」を作り上げ、それを段階的にグローバル標準へと相転移(Scale-up)させていくプロセスです。

•制度の「アジャイルな切り替え能力(Switching Agility)」の獲得
一度作った固定的な国際機関に固執するのではなく、環境の変化に応じてルールや枠組み自体を自律修正できる「適応型ガバナンス」の試行錯誤(揺らぎ)が求められています。

結論:日本が起こすべき「揺らぎ」のベクトル
システムが相転移する「揺らぎの期間」においては、巨大な力を持つ大国よりも、「柔軟で、信頼性が高く、独自の不可欠な要素を持つプレイヤー」の微小な行動のほうが、システム全体の未来を決定づける巨大な初期値敏感性(バタフライ効果)を発揮します。

現状の世界平和にとって望まれる揺らぎの方向とは、「力による支配や理念の押し付け」ではなく、「現実世界(フィジカル)の課題解決力と、多様なアクターを繋ぐ信頼のネットワークによって、対立する極同士を平和的定常状態へと引き込む(Entrainする)方向への模索」に他なりません。

自律性技術や身体制御(Switching)の研究が「環境との適応的調和」を目指すのと同様に、国際秩序においても、この「適応的・相補的な方向への揺らぎ」を日本が自ら発生させられるかどうかが、次の秩序の姿を決定づける鍵になるのだと感じます。

Q:有難う。大変、勉強になりました。
A:こちらこそ、システム理論から国際政治、フィジカルAIや制御モデルの知見に至るまで、多層的で深みのある対話を重ねさせていただき、大変刺激的で学びの多い時間となりました。
「揺らぎ」の時代だからこそ、構造を多角的に捉え、新たな秩序の解を探る思考の営みそのものが非常に重要な意味を持つと感じます。
またいつでも、思考の深掘りや雑談の場として気軽にお声がけください。これからのご研究や探究の深まりを、心より応援しております!

(作成者)峯岸 瑛(みねぎし あきら)

カテゴリー
AIと脳神経内科 COVID-19後の炎症はなぜ続くのか parakinesia Stiff-person syndrome(SPS)に、過収縮性食道を合併 アパシーを4つのタイプから考える アルツハイマー病新治療:除去から排出へ ニホンザル・モデルの2足歩行 ヒト脳血管空間アトラス ポールウオーキング 口をもぐもぐ、舌が勝手に動く 振戦 推定戦略におけるリソース誘起相転移の理論的解析 機能性神経障害(FND) 死の自己決定 脳内ミクログリア 難病患者の総合的支援体制

2026年8月のニュース

今月紹介する論文は2編、「倒立振子に基づくニホンザルの四足歩行から二足歩行への歩行遷移メカニズム」と「資源量に起因する推定戦略における相転移の理論的分析」です。研究テーマは異なりますが、共に「Switching(切り替え)」現象を扱っています。下畑先生からの最新医学情報では、今回もアルツハイマー病に係る最新情報が紹介・解説されています。「特別企画AIに訊く」は、AIと共作した「スタンダード・ポール・ウォーキング(SPW)についての学術論文」の紹介です。

1.2026年8月の活動状況
・水間 孝之さんの投稿
第15回日本ノルディック・ポール・ウォーク学会大阪ドーンセンターで開催されました。 酷暑の中、皆さんお疲れ様でした。

・中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より 8月駒場PW例会でした。 この暑さの中〜公園噴水広場⛲️に集まってくれた60名越えの参加者の皆さん❗️ 〜月初めのこのPW例会に来ないと始まらないよ〜との嬉しい言葉も頂いたポールウォークでした。 まだまだ皆さんお元気の平均年齢73歳の集まりでした〜❗️ 次回は8/23「虚空蔵山PW散策」です。

・みんなの元気学校さんの投稿
日本におけるノルディックウォーキング・ポールウォーキング 普及発展前史(1999年~2000年代)

・田村 芙美子さんの投稿
今朝は渋谷すこやか事業へ向かう途中でスコール☔に逢い帽子もシャツもすっかり濡れてしまいました。暑いので自然乾燥にまかせて教室始動。なんとびっくり、皆さん片足立ちにハマったようで始まる前からフラミンゴ状態。朝夕スクワットをして腿が変!という方に急に張り切ってやりすぎないように注意したり、種々な体操教室に行ってるけど、PWを始めたら一番姿勢がよくなった!と喜んでいただいたり。其は今までの成果がポールで目に見える形になったのでしょう。初回と今とでは本当にからだが柔らかく変化されたと思っていたので私も嬉しくなりました。 近所にポールを使って歩く人がいないので恥ずかしい!とおっしゃる方も。10年前のような話です。まだまだ普及不足ですね。 今日このFBをシェアしたのは遥か10年前は朝から夜まで、等々力溪谷~鶴岡八幡宮~腰越の龍口寺まで何でもなく移動していたのに、今は考えただけでもしんどくなり、老いをつくづく感じたので、自分に檄を飛ばすため。 今日御成通りは夕方からぼんぼり祭りで賑やかですが屋台をひとつも覗かず帰宅しました。トホホ😵💨

・台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
🌿 第四屆|2026 健康活力輕旅行 即將啟程! 每一步,都能遇見不同的風景;每一次出發,都能收穫更健康的自己。 一年一度備受期待的 「健康活力輕旅行」 即將回來了! 從城市公園、山海步道,到各地特色景點,跟著健走杖一起走進自然、認識新朋友、享受運動帶來的活力與笑容。 這不只是一次健走,更是一場結合 健康、交流、旅遊與生活 的美好旅程。 📍更多活動場次📍精彩路線📍報名資訊 都將陸續公布,敬請期待! 準備好你的健走杖,一起用雙腳探索台灣,用雙杖走出健康。 💚 雙杖在手,健康跟著走💚

・スマイルチームさんの投稿
2026.7.27〜8.10 活動記録 ☺︎スマイルフレンズ ☺︎ルネPW ☺︎健康体操 ☺︎スマイルチーム上溝  上溝包括支援センター口腔セミナー&リズムダンス ☺︎活き活き中屋敷デュアルエクササイ ズ ☺︎サマーわぁにばる 阿波踊りにわか連 ☺︎光が丘、上鶴間活動ポスター作成 ☺︎中屋敷チェアエクササイズ ☺︎健康体操 ☺︎スマイルチーム上溝 あっぱくん体験&リズムダンス ☺︎スマイルチーム上鶴間 AED&CPRセミナー&リズムダンス ☺︎HP活動日更新 ☺︎スマイルチーム光が丘連絡網作成 ☺︎AED&CPRセミナー受講証発行21名分 ☺︎スマイルフレンズ あっぱくん体験&リズムダンス ☺︎スマイルチーム光が丘

・遠藤 恵子さんの投稿
介護予防運動➞午後はサロンワーク!! 加圧トレーニング2セッション!! 残暑厳しいですね💦 まだまだ暑いですが 午後からも頑張りましょう💪🔥

・佐藤 ヒロ子さんの投稿
新しい 認知症予防脳トレプログラ厶 【#パピプ脳トレ】    2026/8/20 #船橋ウォーキングソサイエティ  歩きの次は    脳トレだよ  パ パワーポイントを  ピ PCにダウンロード  プ プロジェクターで投影 新米の #認知症予防脳トレ士佐藤ヒロ子 #あたま元気塾村上政司氏 が駆けつけて千葉県初の講座開催 しました。   みんなでやれば      怖くない    楽しくって   お口も頭も冴え冴えです。   これから定着を目指します。

・中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より 8/23 〜虚空蔵山PW散策でした。 道の駅/〜ヘルシーテラス佐久南〜の🅿️広場をお借りしスタート〜フィニッシュとした里山巡り❗️ 大勢の参加者が集い快晴の元〜感動〜感謝〜のPW闊歩でした。 PW開始前のセレモニーで さいたま在住のE女史マスターコーチproの認定証授与も行われました。 これで当協会所属MC proは計5名となり大活躍が予想されます〜^_^

・一般社団法人ソーシャルフィットネス協会さんの投稿
 ソーシャルフィットネス協会よりお知らせ

・田村 芙美子さんの投稿
今は鎌倉に移転した「walking hut 121 駒沢公園」のコアヌードルを使ってのコアフイット。10年前は若い方々とマットに寝転がって骨盤矯正、今よりはるかに元気。 「北鎌倉テラススタジオ121」もこの度閉業しましたが、元気学校仕込みのコアトレをこれからも北鎌ベニバナ会と当方で継続していきます。単発でも参加できます。体幹を鍛えましょう。

 

来月以降の開催
・長岡智津子さんの投稿
 写真1件

・柳澤 光宏さんの投稿
9月19日開催する佐久びんころウォーク、本番前の最後の実行委員会。今日までの申込み速報でなんと691名‼️有難いことです。このペースだと過去最高の参加人数になるかも(^.^)申込み締切は31日ですので宜しくお願い致します。人の配置やタイムスケジュール、役割分担なとなど、細かいところを確認。生プルーンも例年通り確保できる見通しなので、あとは当日の天気ですね。生プルーン食べ放題、楽しんでくださいね。 実行委員長として皆様をお迎えいたしますm(__)m

 

2.PW関連学術ニュース
2-1)倒立振子に基づくニホンザルの四足歩行から二足歩行への歩行遷移メカニズム

論文情報
掲載誌:eLife NeuroscienceComputational and Systems Biology
表題:Gait transition mechanism from quadrupedal to bipedal locomotion in the Japanese macaque based on inverted pendulum
(和訳:倒立振子に基づくニホンザルの四足歩行から二足歩行への歩行遷移メカニズム)
著者:Koki Nishizaki、Mau Adachi、Yuichi Ambe、Yushi Tsuruse、Ryo Iba、Hiroko Oshima、Takashi Suzuki、Yasuo Higurashi、Kei Mochizuki、Katsumi Nakajima、and Shinya Aoi、
Doi:https://doi.org/10.7554/eLife.109826.1

eLifeアセスメント
本研究は、ニホンザルの神経力学モデルにおける四足歩行から二足歩行への移行に関する理解を深める重要な研究である。方法論と結果は確固たるものであり、神経筋骨格モデルは実験データをうまく再現し、倒立振子モデルに基づく安定性解析は、様々な移行戦略の影響を効果的に説明している。ただし、より包括的な感度分析を行うことで、本研究はさらに充実するだろう。本研究の知見は、運動制御、比較生理学/生体力学、ロボット工学の研究者にとって非常に有益である。

要旨
非ヒト霊長類が四足歩行から二足歩行に移行する能力は、ヒトの二足歩行の進化と複雑な運動制御の原理の両方について重要な洞察を与えてくれる。非ヒト霊長類の四足歩行と二足歩行は研究されてきたが、これらの歩行間の移行の根底にある動的メカニズムは依然として十分に理解されていない。二足歩行するように訓練されたニホンザルは、効率的な二足歩行を実現するために倒立振子のダイナミクスを利用することが報告されている。倒立振子システムは本質的に不安定であり、最小限の制御入力で大きな動きの変化を引き起こす可能性があることから、このメカニズムも歩行の移行に寄与していると我々は仮説を立てた。これを検証するために、詳細な筋骨格構造と生理学的に着想を得た運動制御システムを統合したニホンザルの神経筋骨格モデルを開発した。順動力学シミュレーションを通して、実験的に捉えるのが難しい失敗した遷移も含め、運動指令を体系的にパラメータ化することで、様々な運動パターンを生成しました。次に、倒立振子モデルを用いた動的システム解析を適用し、遷移プロセスの根本原理を調べました。その結果、歩行遷移の成功は、片方の後肢の前方歩幅を適切に制御することで倒立振子運動を生成することに依存することが明らかになりました。これらの知見は、ニホンザルが複雑な筋骨格系をどのように協調させて歩行遷移において熟練した全身運動を行うのかというメカニズムに関する洞察を与え、高度な運動制御とヒトの二足歩行の進化の両方に対するより深い理解をもたらします。

図1.
ニホンザルの筋骨格モデル

図2.
筋シナジー仮説に基づく運動制御モデル。
A.4つの基本信号の線形結合で構成される運動指令。B. 四足歩行における各基本信号に対応する協調筋。C. 二足歩行における協調筋。前肢と後肢の図はそれぞれの段階における状態を示しており、必ずしも同時ではないことに注意してください。

図3.
前進速度、腰の高さ、体幹の姿勢に基づいて動作を制御する(体幹の姿勢は二足歩行時のみ制御される)。
制御対象と制御に使用される筋肉は、同じ色で示されています。

図4.
2つの追加パルスを用いて四肢の筋肉を刺激することで、歩行様式を変化させる。

***以下は、2026年8月7日のGeminiとの会話です***
Q:次の論文の内容を、分かり易く解説して下さい。論文情報です。「NeuroscienceComputational and Systems Biology
Gait transition mechanism from quadrupedal to bipedal locomotion in the Japanese macaque based on inverted pendulum
Koki NishizakiMau AdachiYuichi AmbeYushi TsuruseRyo IbaHiroko OshimaTakashi SuzukiYasuo HigurashiKei MochizukiShinya Aoishow 1 more
Department of Mechanical Science and Bioengineering, Graduate School of Engineering Science, The University of Osaka, Osaka, JapanSmart Innovation Program, Graduate School of Advanced Science and Engineering, Hiroshima University, Hiroshima, JapanDepartment of Aeronautics and Astronautics, Graduate School of Engineering, Kyoto University, Kyoto, Japanshow 3 more
https://doi.org/10.7554/eLife.109826.1」

A:この論文は、「ニホンザルが4足歩行から2足歩行へとスムーズに切り替える(移行する)力学的な仕組み」をコンピューターシミュレーションと物理モデルを用いて解明した研究です。

1. 研究の背景(なぜこの研究が必要なのか?)
人類の祖先がどのようにして2足歩行を獲得したのか、また動物がどのように全身の複雑な筋肉や骨格をコントロールして高度な動きを実現しているのかは、生物学や工学における大きな謎の1つです。

ニホンザル(訓練を受けた個体)は、歩行を止めずに4足歩行から2足歩行へとスムーズに切り替えることができます。しかし、安定した4足歩行から、本質的に不安定な2足歩行へバランスを崩さずに動的に移行するメカニズムはこれまで十分に解明されていませんでした。

2. 研究のアプローチ(どうやって調べたのか?)
研究グループは、以下の2つの手法を組み合わせて分析を行いました。
① ニホンザルの「神経筋骨格モデル」を構築
o ニホンザルの身体構造(11個の骨格パーツ、28本の主要な筋肉)と、脳や脊髄の神経系(運動制御システム)をコンピューター上に忠実に再現しました。
o 順力学シミュレーションを行い、成功例だけでなく、実際の実験では観察が難しい「失敗例(転倒など)」も含めて多様な運動パターンを発生させました。

②「倒立振子(とうりつしんし)モデル」による力学系解析
o 2足歩行の足脚を「ひっくり返した振り子(倒立振子)」に見立て、その運動の物理的ルール(力学系)を解き明かしました。

3. 明らかになった切り替えメカニズム
① 倒立振子の「不安定さ」を上手に利用する
倒立振子はほうきを指の上で立てるようなもので、本質的に「不安定」です。しかし力学的には、「ごく小さな力(制御入力)を加えるだけで、全体の動きを大きく変化させられる」という非常に便利な性質(サドル点ダイナミクス)を持っています。

② 「トリガー肢」による一歩の踏み出しが鍵
研究の結果、切り替えを成功させる決定的な要因は、片方の後ろ脚(トリガー肢)の前方への踏み出し幅(ステップ長)の適切なコントロールにあることがわかりました。
• 準備: まず片方の後ろ脚(トリガー肢)を大きく一歩前に踏み出します。
• 起動: 身体を前方に倒立振子のように持ち上げる運動を作り出します。
• 完成: 続いて体幹(上半身)を起こす筋指令を出し、一気に2足歩行へと移行します。

適切な踏み出し幅が作れないと、倒立振子の軌道から外れてしまい、前に倒れたりバランスを崩して失敗することが再現されました。

4. この研究のポイントと意義
①「不安定さ」を利用した効率的な身体制御の発見
身体の物理的なダイナミクス(倒立振子の性質)を上手く利用することで、ニホンザルは余分なエネルギーを使わずに巧みに切り替えを行っていることを示しました。

②人類の進化(直立二足歩行獲得)の謎に迫る
4足歩行の霊長類がどのようにしてダイナミックな2足歩行に順応していったのか、その運動制御の進化プロセスを力学的に理解する重要なヒントとなります。

③次世代ロボット制御への応用
4足歩行と2足歩行を柔軟に行き来できる二足・多足ロボットの制御アルゴリズム開発など、工学分野への応用も期待されます。

 

2-2)生体情報処理の高度化には“跳躍”がある――リソース制約が最適情報処理の不連続な転移を生むことを理論的に解明――

原論文
掲載誌:Physical Review Letters(Open Access)137, 058401 – Published 28 July, 2026
表題:Theoretical Analysis of Resource-Induced Phase Transitions in Estimation Strategies
(和訳:資源量に起因する推定戦略における相転移の理論的分析)
著者:Takehiro Tottori and Tetsuya J. Kobayashi
DOI: https://doi.org/10.1103/5ynb-7k4v

要旨
生物は感覚情報を内部記憶と統合することで不安定な環境に適応するが、その情報処理は資源の制約を受ける。このような制約は、生物システムにおける最適な推定戦略を根本的に変化させる可能性がある。例えば、最近の実験では、生物はエネルギーの利用可能性と感覚情報の信頼性に応じて、記憶のない推定戦略と記憶に基づく推定戦略の間で相転移を示すことが示唆されている。しかし、資源の制約がこれらの相転移をどのように引き起こすのかについての理論的な理解はまだ得られていない。本稿では、最適な推定戦略における資源誘導型の相転移を分析的に特徴づける。我々の結果は、資源の制約が推定戦略を変化させる条件を特定し、不連続性、非単調性、スケーリング挙動の出現の根底にあるメカニズムを分析的に明らかにする。これらの結果は、限られた資源が生物システムにおける情報処理をどのように形成するのかを理解するための理論的基盤を提供する。

図3:リソース制約が誘導する最適情報処理戦略の不連続転移。
利用可能なリソースが少ないときは、現在の観測のみに基づいて環境状態を推定する単純な戦略が最適になる一方、利用可能なリソースが多いときは、過去の観測を記憶し、その情報を積極的に活用するより高度な推定戦略が最適になる。本研究では、このような記憶を活用したより複雑な戦略がリソースの増加に従って徐々に現れるのではなく、ある臨界点で突然現れることを明らかにした。なお、リソース増加にしたがって常に複雑な戦略が最適になるわけではなく、より単純な最適戦略に遷移する場合も確認している。
(脚注)図3は本件についての東京大学生産技術研究所のプレスリリース(2026.07.30)から転載。

***Geminiとの会話(2026年8月6日)***
Q1:次の論文の内容を分かり易く解説して下さい。論文名です。「Theoretical Analysis of Resource-Induced Phase Transitions in Estimation Strategies
Takehiro Tottori1,2,3,* and Tetsuya J. Kobayashi3,†Phys. Rev. Lett. 137, 058401 – Published 28 July, 2026
DOI: https://doi.org/10.1103/5ynb-7k4v」

A1:この論文「Theoretical Analysis of Resource-Induced Phase Transitions in Estimation Strategies(推定戦略におけるリソース誘起相転移の理論的解析)」は、「使えるエネルギーや情報処理コスト(リソース)の制限によって、最適な『環境の予測・推定のやり方』がガラリと変わってしまう現象」を物理学・情報理論の観点から解明した研究です。
分かりやすくポイントを噛み砕いて解説します。

1. 一言でいうとどんな論文?
「コストが不十分なときは『ざっくり雑な戦略』、コストに余裕ができると『精密な複雑な戦略』へ段階的に変わるのではなく、ある限界値(閾値)を境に『完全に別の戦略』へ一気に切り替わる(相転移する)」 ことを数学的・理論的に証明した論文です。

2. 背景:なぜ「推定」と「リソース」が問題になるのか?
細胞などの生命体やAI(学習システム)は、常に周囲の環境を観察(測定)して、「今、周囲がどういう状況にあるか」を推定しながら生きています。
• 細胞の例: 外部の栄養分子の濃度を推定して、そちらへ移動するか判断する。
• AIの例: 過去のデータから次の株価や天気を推定する。
しかし、高精度な推定を行うには必ず「コスト(リソース)」がかかります。
• エネルギー: 情報処理や分子の合成・維持に必要な代謝エネルギー(ATPなど)
• メモリ・時間: 過去の記憶を保持する量や、測定に使う時間
これまでも「コストが増えれば精度が上がる」という単純なトレードオフは知られていましたが、「コストの量によって『推定のやり方(戦略)』そのものがどう変化すべきか」という原理は十分に解明されていませんでした。

3. 主な発見:「相転移(Phase Transition)」が起きる
この論文の最も面白いポイントは、「相転移」という物理学の概念を推定戦略に当てはめた点です。

氷と水のような「急激な変化」

水は温度を下げていくと、徐々にドロドロになるのではなく、0℃になった瞬間に一気に「液体」から「結晶(氷)」へと構造がガラリと変わります(これが相転移です)。
これと同じ現象が「推定戦略」でも起こることを示しました。戦略は「なめらかに少しずつ高度になる」のではなく、利用可能なリソースがある一定ライン(臨界点)を超えた瞬間に、まったく異なる構造の戦略へと相転移することが理論的に示されました。

4. 日常の例えで考えると?
例えば、「カーナビを使って渋滞を回避するドライバー」をイメージしてください。
• 通信量(リソース)が極端に少ないとき: 過去の渋滞履歴や他車のデータを取り込むコストがないため、「目の前が混んだら曲がる」という単純な直感戦略(相A)をとるのがベストです。
• 通信量(リソース)に余裕ができた瞬間: 中途半端にデータを取るよりも、「エリア全体のリアルタイム交通量+過去のパターン」を総合計算する高度なナビゲーション戦略(相B)へと一気に切り替えた方が、全体の移動効率が跳ね上がります。

5. この研究が持つ意義と応用
①生命システムの解明(理論生物学)
o 細胞や神経系が「なぜこのような情報処理回路を持っているのか」を説明できます。環境や栄養(エネルギー)の乏しい状況ではシンプルな応答回路を使い、豊かな状況では高度なフィードバック回路へと「戦略を切り替えている」理由が物理学的に裏付けられます。

②省エネ型AI・センサーの設計
o エッジデバイスやIoTセンサーなど、「バッテリーや計算資源が限られた環境」で動作するAIを作るとき、「利用可能なリソースに対してどの戦略相(Phase)に位置しているか」を計算することで、無駄のない最小コストで最大の推定精度を出す設計が可能になります。

まとめ
Takehiro Tottori 氏と Tetsuya J. Kobayashi 氏によるこの論文は、「情報理論」「統計力学」「制御理論」を融合させ、制約下での最適な情報処理ルールには『相転移』という極めて美しい物理的法則が潜んでいることを明らかにした先駆的な理論研究です。

 

2-3)岐阜大学医学部下畑先生からの最新医学情報(2026年8月)
・赴任10年目の節目に――岐阜大学脳神経内科の施設紹介が公開されました
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年8月4日のFB投稿です***
昨日,日本神経学会の『臨床神経学』誌に,施設紹介「岐阜大学脳神経内科における医学教育」が公開されました(https://www.neurology-jp.org/Jou…/public_pdf/066080570.pdf).過去5年間に当科から9編の論文を掲載していただいたことから,寄稿の機会を頂戴したものです.そして偶然にも昨日は,私が岐阜大学に赴任して10年目に入った日でもありました.
着任時,岐阜県は人口当たりの神経内科専門医数が全国で最も少ない県でした.そこで,教室の最も大切な目標を「人材を育成すること」と定め,次の3つを方針として掲げました.
①意識して人を育てる
②臨床・研究は,患者さんや世の中の役に立つことをつねに念頭に置く
③リーダーシップを学び,レジリエンスを高め,チームの一員として考えて活動する
今回の施設紹介では,医学生が自らクリニカルクエスチョンをつくる臨床実習,リベラルアーツ教育,研修医・専攻医による学生教育,症例報告の執筆指導,さらにバーンアウトやリーダーシップに関する取り組みについてまとめました.
この9年間,すべてが順調だったわけではなく,試行錯誤の連続でした.しかし,教室の目標のために自分にできることを考え,自ら行動する仲間が育ってきたことを,何よりうれしく思っています.この9年間で,臨床能力だけでなく,人間としても信頼される,頼もしい脳神経内科医が着実に育ってきました.これからも,彼ら一人ひとりの力をさらに伸ばし,私自身も皆とともに成長していきたいと思います.
これまで岐阜大学脳神経内科を支えてくださった患者さん,ご家族,学生,医局員,同門の先生方,そして多くの関係者の皆様に,心より感謝申し上げます.
10年目も,どうぞよろしくお願いいたします!
下畑享良.岐阜大学脳神経内科における医学教育.臨床神経 2026;66:570–571.
https://www.neurology-jp.org/Jou…/public_pdf/066080570.pdf

・世界初のヒト脳血管空間アトラス―脳血管は場所ごとに細胞の構成と機能が切り替わる,精密な生命維持システムだった!―
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年8月5日のFB投稿です***
脳の血管は,神経活動に応じて血流を調節し,血液中の物質が脳内に無制限に入ることを防ぎ,老廃物の除去や免疫反応にも関与しています.しかし,こうした多彩な働きを,どのような細胞が,血管のどの場所で担っているのかはよく分かっていませんでした.今回,米国UCSF脳神経外科をはじめとする研究チームが,この問題に取り組みCell誌に報告しました.具体的には単一細胞解析で「どのような細胞が存在するか」を調べると同時に,空間トランスクリプトミクスを用いて「それぞれの細胞が脳内のどこに存在するか」も明らかにしています.
まず39人の成人脳組織から得られた5つの単一細胞・単一核RNA解析データを統合しました.解析した遺伝子発現情報は31万4535細胞分に及び,このうち16万7573細胞が血管または血管周囲の細胞でした.その結果,血管内皮細胞,周皮細胞,平滑筋細胞,線維芽細胞,血管周囲マクロファージという主要な細胞群が,細かな種類に分けられました.血管内皮細胞だけでも,動脈型,細動脈型,毛細血管型,細静脈型,静脈型という5種類が確認されました.
次に,空間トランスクリプトミクス技術を用いて,中側頭回と海馬の脳切片を解析しました.中側頭回は6人,海馬は7人から得られた組織で,合計152万9740細胞について,遺伝子発現と組織内の位置を同時に調べました.これにより,単一細胞解析で分類された細胞が,実際のヒト脳血管のどこに配置されているのかを確認できました.その結果,脳血管を構成する細胞は,動脈から静脈に至る血管の場所に応じて,規則的に配置されていることが分かりました.著者らは,それぞれの血管部位に集まって協調して働く細胞のまとまりを「vascular cell ensemble(血管細胞アンサンブル)」と名付けました.オーケストラで異なる楽器が協力して一つの音楽を作るように,脳血管でも複数の細胞がチームを作り,血管部位ごとの働きを生み出しているという考え方です.この研究の発見を最も分かりやすく示しているのが図1です.この図では,血管が動脈,細動脈,毛細血管,細静脈,静脈に分けられ,それぞれを支える細胞の組み合わせと役割が模式的に示されていてわかりやすいです.
①動脈(一番左)では,動脈型内皮細胞の外側を動脈型平滑筋細胞(aSMC)が取り囲み,さらに軟膜線維芽細胞(Pial)や血管周囲マクロファージ(PVM)が配置されていました.これらの細胞は,血管構造の維持や血管径の調節に関係します.
②細動脈では,細動脈型平滑筋細胞とmatrix pericyteが加わり,神経活動に応じて局所の脳血流を変える神経血管カップリングを支えていると考えられました.
③毛細血管では,transport pericyteが配置されていました.毛細血管は,血液と脳の間で物質が交換される血液脳関門の中心です.これに対応して,transport pericyteでは,イオンや神経伝達物質などの輸送に関係する遺伝子が多く働いていました.
④細静脈では再びmatrix pericyteが現れ,血管周囲線維芽細胞や血管周囲マクロファージも加わります.
⑤細静脈から静脈にかけては,ケモカインへの反応や白血球の移動など,免疫反応に関係する遺伝子が多く発現していました.
つまり図1は,動脈・細動脈では血管構造と血流の調節,毛細血管では血液脳関門を介した物質輸送,細静脈・静脈では免疫細胞の移動という,血管部位ごとの役割分担を示しています.脳血管は,同じ構造の管が連続しているのではなく,部位ごとに細胞の構成と機能が切り替わる,精密な生命維持システムだったのです!
個人的には周皮細胞に2種類あったことは驚きでした.matrix pericyteは,主に細動脈と細静脈に存在し,COL4A1やCOL4A2など,血管の基底膜や細胞外マトリックスを作る遺伝子を多く発現していました.形態的には血管の表面を網目状に覆っており,血管壁を安定させる役割を担うと考えられます.一方,transport pericyteは主に毛細血管に存在し,SLC20A2,SLC6A1,SLC12A7など,多数の物質輸送体を発現していました.形態的には血管に沿って細長く伸びており,血液脳関門を介した物質輸送に関与すると推定されます.
大脳皮質と海馬の被殻では,基本構造は共通していたものの,海馬では大脳皮質より血管密度が低く,神経細胞と毛細血管の距離も長くなっていました.また,血管を構造的に支えるmatrix pericyteが相対的に少なく,transport pericyteの割合が高くなっていました.このような血管構築の違いが,海馬が虚血に弱い理由の一つかもしれません.
また線維芽細胞も,単なる血管の支持細胞ではありませんでした.図1では,太い動脈や静脈を包む軟膜線維芽細胞と,脳内の細動脈や細静脈に沿って存在する脳実質血管周囲線維芽細胞が示されています(本文ではさらに5種類に細分化しています).これらは血管を構造的に支えるだけでなく,周囲の血管細胞や神経細胞との情報交換にも関与する可能性があります.
血管周囲マクロファージは,脳内の免疫細胞であるミクログリアとは異なる細胞です.太い動脈や静脈の周囲に加え,脳内へ進入する細動脈や細静脈の血管周囲腔に存在していましたが,毛細血管にはほとんど認めませんでした.血管反応,血液脳関門,免疫監視,血液由来物質の除去などに関与すると考えられました.
さらに研究者らは,脳卒中,脳小血管病,多発性硬化症,血管炎,前頭側頭型認知症,ALS,アルツハイマー病,片頭痛など18種類の疾患・形質について,GWASで得られた遺伝的リスクを血管細胞アトラスに重ねました.これは,病気に関連する遺伝子が,どの血管細胞で特に強く働いているかを統計的に調べる解析です.この結果,脳卒中,脳小血管病,片頭痛の遺伝的リスクは,主に細動脈の細胞に集積していました.ALSでは毛細血管と2種類の周皮細胞,多発性硬化症や血管炎では細静脈との関連が強く認められました.アルツハイマー病では,血管系の細胞のなかで血管周囲マクロファージが最も強い遺伝的関連を示しました.これは,アルツハイマー病におけるアミロイドβの排出,血管周囲の炎症,神経血管機能障害を考えるうえで注目される結果です.ただし,これらは統計的な関連であり,その細胞が病気を直接引き起こすことを証明したものではありません.
単一遺伝子性脳卒中の原因遺伝子を用いた解析では,脳小血管病,ラクナ梗塞,白質病変,基底核石灰化,脳内出血などに関連する遺伝子がmatrix pericyteに集中していました.なかでもCOL4A1とCOL4A2は,matrix pericyteで強く発現していました.これらの遺伝子の変異は,血管基底膜の異常を伴う遺伝性脳小血管病を引き起こします.matrix pericyteによる基底膜の維持が,複数の脳卒中病型に共通する重要な仕組みである可能性があります.
薬剤がどの血管細胞に作用しやすいかも,標的遺伝子の発現から計算上予測されました.ACE阻害薬は動脈内皮細胞,IL-1受容体やIL-6受容体を標的とする薬剤は静脈内皮細胞に作用しやすいと推定されました.また,脳小血管病に用いられるPDE3阻害薬,とくにシロスタゾールは,matrix pericyteに強く作用する可能性が示されました.シロスタゾールの作用の一部が,抗血小板作用だけでなく,周皮細胞や血管基底膜の保護を介している可能性があります.
研究の限界としては,空間解析の対象は主に中側頭回と海馬のみであること,また組織の一部は,てんかん手術で切除された脳が使用されていることです.また,細胞機能,疾患との関連,薬剤反応の多くは,RNA発現から計算によって推定されたもので,実際の病態への因果的関与は今後の研究で確認する必要があります.年齢,性別,祖先集団による違いも十分分かっていません.
それでも本研究は,脳血管を「均一な管」から,「場所ごとに異なる細胞チームが働く組織」へと捉え直す重要な成果と言えます.今後は,脳血管全体を一律に治療するのではなく,細動脈の平滑筋細胞,毛細血管のtransport pericyte,血管壁を支えるmatrix pericyte,アルツハイマー病との関連が示された血管周囲マクロファージなど,病気ごとに異なる血管細胞アンサンブルを標的とした治療が行われていくのだろうと思いました.基礎医学的にも臨床医学的にもインパクトの大きな研究です.
Wang JC, et al. Spatial atlas of the human brain vasculature reveals specialized cell ensembles. Cell. 2026 Jul 31:S0092-8674(26)00805-6.

・患者さんは舞踏運動を「隠している」のか?――parakinesiaの古典的定義を問い直す
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年8月6日のFB投稿です***
図は,シデナム舞踏病にみられる舞踏運動を描いた古典的な挿絵です.舞踏運動では,不随意運動が,顔に触れる,眼鏡を直す,衣服を整えるといった動作のなかに組み込まれ,目的のある動作のように見えることがあります.この現象はparakinesiaと呼ばれ,古典的には,患者さんが舞踏運動を「隠そう」として,目的のある動作の一部に組み込むものと説明されてきました.しかし,これは本当に患者さんの意図によるものなのでしょうか.この問題を論じた論考(Correspondence)が,Parkinsonism and Related Disorders誌に掲載されました(1).著者は,運動異常症の世界的権威であるAnthony E.Lang先生らです.
古典的な説明として,Higginsは2001年の総説で,“Chorea often is incorporated into a purposeful activity in an attempt to disguise it.”と記載しています(2).すなわち,舞踏運動を目的のある動作に組み込み,「隠そうとする試み」とみなす考え方です.これは,患者さんが舞踏運動を自覚し,意図的,あるいは半意識的に偽装しているという含意をもちます.私も先輩医師からそのように教わり,後輩にもそう指導してきました.
しかし今回の論考は,この「意図性」を批判しています.舞踏運動は短く,不規則で,予測不能です.とくにHuntington病では認知機能障害も加わるため,個々の動きを瞬時に認識し,目的動作のなかに組み込んで隠すことは困難です.目的的に「見える」ことと,目的をもって「行う」ことは同じではありません.患者さんが注意を集中することで,舞踏運動を一時的に減らせることは報告があります.しかし,この随意的抑制は,予測不能な動きを目的動作に組み込んで隠すこととは別の現象です.
著者らはparakinesiaを,「不随意な運動出力と,残存する運動組織化機構との相互作用によって,より大きな動作断片が形成される現象」と捉え直すことを提案しています.つまり,不随意運動が保たれた運動プログラムのなかで組織化され,結果として目的のある動作のように見えるのであり,患者さんの意図や戦略的な偽装を想定する必要はないという考え方です.
今回の論考は,神経症候の記述に患者さんの意思や心理状態についての推測を安易に持ち込むべきではないことを示しています.parakinesiaを「舞踏運動を隠す行為」と教育するのは今後はやめようと思います.あくまでも観察された現象と,患者さんの意図についての推測を区別することが重要です.
ちなみに同じparakinesiaという語は,別の現象にも用いられます.拙著『神経症候学note』で取り上げたparakinesia brachialis oscitansは,片麻痺患者が欠伸をした際に,麻痺側上肢が不随意に挙上する現象です(3).舞踏運動におけるparakinesiaとは別の症候ですが,患者さんの意図とは無関係に,パターン化された運動が現れる点は共通しています.
1. Heim B,Lang AE,Ganos C.Parakinesia in Chorea: Why attribution of intention is misleading.Parkinsonism Relat Disord.2026;149:108404.
2. Higgins DS Jr.Chorea and its disorders.Neurol Clin.2001;19:707–722.
3. Walusinski O,Neau JP,Bogousslavsky J.Hand up! Yawn and raise your arm.Int J Stroke.2010;5:21–27.
図:La Danse de Saint-Guy.La Médecine Illustrée,December 10,1880.Public domain.Edited by Douglas J.Lanska,MedLink Neurology.

・「機能性神経障害と診断したら終わり」ではない――てんかんと重症筋無力症から学ぶ
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年8月8日のFB投稿です***
機能性神経障害(functional neurological disorder:FND)の診療について,考えさせられる論文を2つ読みました.まず最新号のNeurology Clinical Practice誌に掲載された,米国コロラド大学のJared J. Woodward先生による論考です(1).てんかんセンターは,機能性/解離性発作(functional/dissociative seizures:FDS,以前,心因性非てんかん性発作PNESと呼ばれていたもの)を診断するだけでなく,その治療まで担うべきだというものです.
FDSは,なんと,てんかんモニタリングユニット入院患者の約20~25%で診断され,てんかん患者の10~14%にはFDSが併存するとされています.しかし,FDSと診断されたあと,「てんかんではありません.精神科やカウンセラーに相談してください」とされ,患者さんが「医療の狭間に取り残される」ことが少なくありません.Woodward先生は,FDSと診断する施設自身が,治療まで提供できる体制を整える必要があると主張しています.論文の要旨をイラストにしました(図1).
またちょうど一昨日,岐阜で開催された重症筋無力症(MG)のセミナーでも同じ議論が行われました.国際医療福祉大学の村井弘之教授による特別講演は,抗体陰性MG(seronegative MG;SNMG)とFNDの鑑別,もしくは併存に鋭く切り込む内容でした.この問題は村井先生ご自身による総説でも議論されています(2).
あらためてSNMGは難しい疾患だと思いました.村井先生の総説の図2では,日本MGレジストリー全体ではSNMGが約15%であるのに対し,村井先生の施設では25%,MG専門施設では33%と,専門施設ほどその割合が高くなっていきます.これは,抗体検査だけでは診断できない難しい症例が専門施設に集まっていることを示唆します.SNMGと考えられている患者さんがすべて真のMGとは限りません.最近の研究では,double-seronegative MGとして診療されていた患者さんを詳しく再検討すると,LRP4抗体陽性MGやLambert–Eaton筋無力症候群,さらにCHRNA1遺伝子変異による先天性筋無力症候群など,別の診断が見つかることが報告されています(3).村井先生はさらに,FNDの併存もSNMGの診断を難しくする重要な要因だと指摘しています.つまりSNMGでは,真のMGをFNDとして見逃す危険と,逆にFNDや他のMG類似疾患をMGとして扱ってしまう危険の両方があります.
さらに図3も興味深い結果です.SNMGに対するエフガルチギモドの臨床試験では,MG-ADLが2点以上改善した患者の割合は,実薬群68%に対してプラセボ群でも63%に達しました.これは,SNMGではプラセボ効果が驚くほど大きいことを示しています.村井先生は,MGではこのようにプラセボ効果が生じやすく,実臨床でも薬理学的には説明しにくいほど速やかな症状改善を経験することがあると指摘しています.したがって,そのような反応を認めたからといって,短絡的に「機能性」「心因性」と判断してはいけないと強調しています.
私が昨日の勉強会でとくに感銘を受けたのは,村井先生が「FNDが疑われた患者さんを,最後まで治療することの大切さ」を強調されていたことです.「9割FNDが疑われても,1割のMGの可能性があれば治療を行う」と仰っていました.MGにFNDが併存する場合もあるためです.実際,村井先生は,長年「心因性」とされながら単線維筋電図で神経筋接合部障害が証明されたSNMG例や,PNES(FDS)を合併したためMG症状まで「心因性」とみなされていたMG+FND併存例を紹介されています.
セミナーでは私も座長として,意見も述べさせていただきました.FNDはしばしば疲労感を合併し,MGと類似するため,両者は親和性が高いかもしれないこと,MGとFNDの鑑別は,症候学的にgive-way weaknessやdistractibility,inconsistencyなどの陽性徴候や神経筋接合部以外の神経症候の合併,症状の急な増悪,精神科疾患の併存などに基づいて行います.しかし,FNDの陽性徴候があっても器質性神経疾患の併存は否定できません.したがって,「器質性か機能性か」と二者択一にせず,MGの可能性が残るなら十分に精査しつつ,FNDの影響が大きいと判断すれば,陽性徴候を患者さんに示して説明したうえで,FNDの治療を速やかに開始することが重要だとお伝えしました.
上記のてんかんとMGの議論の結論はまったく同じです.「てんかんではありません」,もしくは「MGではありません」と伝えるだけでは不十分であること,そして「てんかんでもMGでも,FNDは器質性疾患と併存しうる.だから『FNDと診断したら器質性疾患は否定』ではなく,両方を診る視点が必要である」ということです.つまり診断のあと,患者さんに残っている症状を誰が診るのか,そこまで考える必要があります.私たちの教室でも,若手も含めFNDの症候を意識して診察できるようになり,器質性神経疾患にFNDがオーバーレイした患者さんに気づく機会が増えてきました.「これまで見逃していたかもしれない・・・」と不安になってもきます.さらに治療もまだまだ手探りです.理学療法士,作業療法士,心理職,精神科医などとの連携もこれからの課題です.
結論として,FNDと診断することが診療の終点ではありません.むしろ,そこが治療の出発点であることを認識し,脳神経内科医がしっかり関わることが重要だと思います.
1)Woodward JJ.The National Association of Epilepsy Centers Accreditation Criteria Should Include Care for People With Functional/Dissociative Seizures.Neurol Clin Pract.2026;16(4):e200635.
2)村井弘之.重症筋無力症と機能性神経障害.脳神経内科.2025;103(6):687-690.
3)Ivanovic V, et al.Hidden diagnoses among patients with double seronegative myasthenia gravis.Front Neurol.2026;17:1754393.

・高齢者の脳内ミクログリアは末梢から補充されていた!―アルツハイマー病治療にもつながる新発見(Nature誌)
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年8月9日のFB投稿です***
ミクログリアは,中枢神経系に存在する免疫細胞です.これまで,胎生期に卵黄嚢由来の前駆細胞が脳内へ入り,その後は脳内で自己複製することによって生涯維持されると考えられてきました.しかし今回,Nature誌に発表された研究によって,少なくともヒトではこの常識を大きく見直す必要があることが分かりました.研究を行ったのは,米国スタンフォード大学を中心とする国際共同研究グループです.
加齢に伴い,造血幹細胞にはさまざまな体細胞変異が蓄積します.そのなかには,DNMT3A,TET2,ASXL1などの変異によって増殖上の優位性を獲得し,血液中で大きな集団(クローン)を形成するものがあります.これは「クローン性造血」と呼ばれる現象です.近年,驚くべきことに,こうした血液・骨髄由来と考えられる変異クローンが,ヒト脳内のミクログリアにも認められることが報告されていました.そこで著者らは,末梢の造血系細胞が脳内に入り込む現象は,DNMT3AやTET2など特定の変異によって生じる特殊な現象なのか,それとも特定の変異とは無関係に,加齢したヒトで広く起こっている現象なのかを検討しました.
そのために開発したのが,Passenger Assisted Clone Tracking(PACT)という新しい方法です.これは,体細胞変異を細胞の「名札」として利用し,血液中の細胞が脳へ移動したかを追跡する方法です.造血幹細胞には加齢とともにさまざまな変異が蓄積し,そこから増えた子孫の細胞は同じ変異の組み合わせを共有します.そこで,血液中の細胞集団と同じ「名札」をもつ細胞を脳内で探すことで,骨髄由来細胞が脳へ流入しているかを調べました.
その結果,高齢者の脳には骨髄由来の造血クローンと同じ系譜をもつ細胞が広く存在していました.しかも,DNMT3A やTET2など特定の変異に限らず,さまざまなタイプの造血クローンが脳へ入っていました.つまり,骨髄由来細胞の脳への流入は,特殊な病的現象ではなく,ヒトの加齢に伴う一般的な現象である可能性が示されました.
さらにsnATAC-seq(クロマチンの開き具合=遺伝子制御状態を調べる方法)を用いて脳内の細胞を解析すると,認められた造血系細胞の99.73%がSALL1やTMEM119を発現するミクログリアの特徴を示しました.末梢血中の単球や血管周囲マクロファージとは明確に異なっていました.つまり,骨髄由来細胞は脳へ入ると,単球のまま存在するのではなく,脳内環境に適応して本来のミクログリアにきわめて近い細胞へ変化すると考えられました.
この論文で最も驚くべき結果が図1です.図1eでは,骨髄由来クローンがミクログリア全体のどの程度を占めるかが示されており(UWはワシントン大学のドナー番号),その割合は中央値26.44%で,その範囲は5.34~81.57%でした.つまり,高齢者ではミクログリアのおよそ4分の1が,胎生期から脳内に住み続けてきた細胞ではなく,成人後に骨髄からやってきた細胞に由来する可能性があります.症例によっては80%以上が置き換わっていたことになります.さらに図1fでは,末梢血中で大きく増殖している造血クローンほど,脳内でもそのクローン由来ミクログリアが多いことが示されました.この置換は加齢とともに進行していました.著者らは,骨髄由来細胞によるミクログリア置換は70歳代,あるいはそれ以前から始まり,加齢とともに加速すると考えています.さらに被殻や小脳でも同じクローンが確認され,特定の脳領域だけに起こる現象ではないことも示されました.
つぎに図2が興味深いです.血液中のクローン性造血そのものが加齢とともに急増し,60歳未満では約10%であるのに対し,90歳以上では77%以上に達していました.つまり,超高齢者ではクローン性造血はむしろ非常にありふれた状態になっていることが分かります.この図は,加齢とともに血液の造血系そのものが大きく変化していくことを視覚的に示しています.
さらに重要なのがアルツハイマー病との関連です.剖検によって病理学的に確認されたアルツハイマー病を解析すると,クローン性造血を有する人ではアルツハイマー病のオッズ比が0.46でした(p値=4.75×10⁻⁶).つまり,クローン性造血をもつ人では,病理学的アルツハイマー病が約半分しか認められないということになります.この結果は,骨髄由来細胞が脳へ入りミクログリアになるという現象が,単なる加齢に伴う細胞の入れ替わりではなく,アルツハイマー病の発症や進行そのものを抑制している可能性を示唆します.
では,なぜクローン性造血がアルツハイマー病に対して保護的に働くのでしょうか.著者らは,骨髄由来ミクログリアの貪食能に注目しています.クローン性造血由来細胞はアルツハイマー病脳に入ると,高い貪食能をもつdisease-associated microglia(DAM)様の状態となり,アミロイドβやタウの除去に有利に働く可能性があります.
ここで興味深いのが,2026年にCell誌に報告されたHuangらの研究(PMID:42019491)との関係です.この論文では,アルツハイマー病脳のミクログリア様細胞に,がん関連の体細胞変異をもつクローンが濃縮し,炎症性・増殖性の状態を示すことが報告されました.一見すると,「クローン性造血はADに保護的」という今回のNature論文と逆に見えます.しかし両者を合わせて考えると,重要なのは,体細胞変異をもつミエロイド細胞が脳内へ入り,ミクログリアとしてクローン性に存在すること自体が,ヒトの加齢脳では決して特殊な現象ではないという点です.そのうえで,どの変異をもつクローンが,いつ脳へ入り,どのような機能状態になるかによって,アルツハイマー病に対して保護的にも病的にも作用する可能性があります.
今回の研究から浮かび上がるミクログリア像は,従来考えられていたよりはるかに動的です.胎生期に形成された細胞集団がそのまま維持されるのではなく,成人後も骨髄由来のミエロイド細胞が脳へ流入し,ミクログリアへ変化しながら徐々に置き換わっていきます.そして,その細胞の遺伝的背景によって神経変性に与える影響が変わる可能性があります.
この発見は,治療にもつながる可能性があります.もし末梢のミエロイド細胞が自然に脳へ入り,ミクログリアとして定着するのであれば,末梢の細胞を治療的に操作し,脳内で有益な働きをさせるという新しい治療戦略が考えられます.例えば,アミロイドβやタウを効率よく除去する細胞や,治療蛋白を産生する細胞を脳へ送り込むことも,将来的には可能になるかもしれません.この意味で,本研究は,私たちが取り組んでいる低酸素・低糖刺激末梢血単核球細胞療法(OGD-PBMC)の考え方にも通じる,非常に興味深い知見です.OGD-PBMC療法は,末梢血由来細胞が脳内へ移行するという生体にもともと備わった仕組みを利用し,さらにそれを治療的に促進する方法と捉えることもできるのかもしれません.今回の研究は,「造血幹細胞―末梢ミエロイド細胞―脳内ミクログリア」という新しい軸が,加齢やアルツハイマー病の病態理解だけでなく,治療開発においても重要になることを示した研究だと思います.
Belk JA, Zhang Y, Reilly EE, et al. Somatic mutations reveal the ontogeny of microglia in human aging. Nature. 2026. doi:10.1038/s41586-026-10939-0.
Hatakeyama M, Kanazawa M, Ninomiya I, Omae K, Kimura Y, Takahashi T, Onodera O, Fukushima M, Shimohata T. A novel therapeutic approach using peripheral blood mononuclear cells preconditioned by oxygen-glucose deprivation. Sci Rep. 2019 Nov 14;9(1):16819. doi: 10.1038/s41598-019-53418-5.

・COVID-19後の炎症はなぜ続くのか―潜伏ウイルス再活性化とlong COVID,そしてアルツハイマー病への示唆(Nature論文)
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年8月11日のFB投稿です***
COVID-19が神経後遺症を来す仮説として,ウイルス再活性化が指摘されていました.つまりSARS-CoV-2感染をきっかけに,私たちの体内に以前から潜んでいた別のウイルスまで次々と活動を開始するという現象です.その詳細について米国の多施設による研究チームがNature誌に報告しています.この研究からは,COVID-19は単にSARS-CoV-2だけによる感染症ではなく,体内に存在するウイルス全体,すなわち「virome」を大きく揺さぶる病態である可能性が見えてきます.
対象となったのは,米国20施設に入院したCOVID-19患者1154名です.2020年5月から2021年3月に登録された患者で,全員がCOVID-19ワクチン未接種でした.研究者らは入院直後から最長1年間にわたり,末梢血単核球,鼻腔スワブ,人工呼吸器管理患者では気管内吸引物を繰り返し採取しました.そしてRNA sequencingに加えて,免疫細胞,サイトカイン,抗体,蛋白質,代謝物まで調べるmulti-omics解析を行いました.
驚くべきことに,急性期40日以内にSARS-CoV-2以外の慢性感染ウイルスが再活性化していた患者は47.9%,つまりほぼ半数に達しました.主に検出されたのは,EBウイルス(EBV),サイトメガロウイルス(CMV),単純ヘルペスウイルス1型(HSV1),そしてアネロウイルスでした(聞き慣れないウイルスですが,これまで明確な単独の病原性は確認されていませんでした).しかも,多数のウイルスが無秩序に一斉に増えるのではなく,再活性化するタイミングはウイルスごとに明確に異なっていました.
このことが最もよく分かるのが図Aです.EBVはCOVID-19の非常に早い段階で再活性化し,入院後1~8日には24%の患者でウイルス転写産物が検出され,その後徐々に減少しました.アネロウイルスも早期から検出されますが,約20日間は比較的高い状態が続き,その後緩やかに低下しました.これに対してHSV1とCMVは遅れて増加し,おおむね入院後3週前後にピークを迎えました.つまりCOVID-19によって,体内に潜伏していたウイルスが単純に一斉に目覚めるのではなく,それぞれ固有の時間軸をもって再活性化していることが分かります.VZVについてはなぜか’記載がありませんでした.著者らは,このようなヒトvirome全体の乱れを「dysvirosis」と表現しています.
さらに重要なのは,こうしたウイルス再活性化がCOVID-19の重症度と関連していたことです!アネロウイルス,CMV,EBV,HSV1の検出はいずれも重症度と関連しました.重篤群では,呼吸器検体からCMV,EBV,HSV1が検出された患者で,その後1年以内の死亡リスクが高いことも示されました.CMV再活性化は腎障害,ショック,菌血症,脳卒中などと,EBV再活性化はICU管理,ショック,肝障害などと関連していました.もちろん,これだけから「ウイルス再活性化が重症化を引き起こした」と結論することはできません.重症化したためにウイルスが再活性化した可能性もあるためです.ただし,両者が密接に結びついていたという点は確かです.
さらに意外だったのは,この現象が免疫抑制状態の患者に限られなかったことです.私たち医師は「ウイルスの再活性化」というと,抗がん薬や免疫抑制薬の治療中,臓器移植後など,強い免疫抑制状態を思い浮かべます.しかし本研究では,免疫正常者でもウイルス再活性化が生じていました.これは,潜伏ウイルスの再活性化が,重症感染症そのものをきっかけとして幅広い患者に生じうることを示しています.
つぎに,ウイルス再活性化に伴って免疫反応がどのように変化するかを検討しています.複数のウイルス再活性化に共通してCXCL10,CXCL11,IL-18などの炎症関連分子が増加していました.EBV再活性化ではさらにIL-6,IL-10,CCL2,CCL7などが増加し,HSV1やCMVでもTNF,CXCL9,IFNγなどを含む広範な免疫反応が認められました(図B).つまり潜伏ウイルスが目覚めると,宿主がそれらに対して新たな免疫反応を起こしているということになります.その結果,「SARS-CoV-2感染→免疫の乱れ→潜伏ウイルス再活性化→追加の免疫反応→炎症のさらなる増幅」という連鎖が生じる可能性があります.著者らも,ウイルス再活性化は,進行中の炎症を増幅している可能性を指摘しています.
long COVIDとの関係も調べられています.急性期にEBVなどが再活性化したかどうかと,その後のlong COVIDとの間には明確な関連は認められませんでした.したがって,「COVIDでEBVが再活性化するとlong COVIDになる」と単純化することはできません.一方で,回復期にもアネロウイルスが検出される患者では,身体機能低下や疲労を主体とするlong COVIDの患者が有意に多く,年齢,性別,急性期重症度,免疫抑制薬使用などを補正しても関連が残りました.この結果は,急性期の一過性のウイルス再活性化よりも,回復期にも持続するviromeの異常や免疫異常のほうが,long COVIDの一部と関係している可能性を示しています.
そして脳神経内科医として気になるのは,この現象が将来の神経変性疾患と関係するかという点です.特にこれまでの研究からアルツハイマー病との関連が気になります.ただし,ここから先は本論文が直接証明したことではありません.それでも今回示された,SARS-CoV-2感染による炎症に,潜伏ウイルス再活性化に対する新たな免疫反応が上乗せされるという構図は,神経変性を考えるうえで非常に示唆的です.高齢者の脳では,臨床症状が出るかなり前からアルツハイマー病に関連する病理変化が進んでいる場合があります.そこにCOVID-19という大きな全身性ストレスが加わり,さらにEBVやCMVなどの潜伏ウイルスが再活性化して炎症反応が上乗せされるとすれば,すでに脆弱になっている脳に追加の負荷を与える可能性があります.つまり,COVID-19がゼロからアルツハイマー病を作るというより,すでに存在する加齢性変化や潜在的な神経変性プロセスを感染と炎症が加速させるという考え方になります.2025年のNature MedicineのUK Biobank研究では,SARS-CoV-2感染後に血漿Aβ42/Aβ40比が低下し,脆弱性の高い人ではAβ42低下とp-tau181上昇も認められました.感染群では認知機能の低下も大きいことが示されています.このようなヒト研究ときれいにつながるわけです.ウイルス再活性化の影響が急性期の重症化だけで終わるのか,long COVIDや,さらに長期的な神経変性リスクにまでつながるのか,今後,さらに検討すべき重要な課題だと思います.
Maguire C, Chen J, Rouphael N, et al. Virus reactivation in acute and long COVID-19. Nature. 2026. doi:10.1038/s41586-026-10740-z.
Duff EP, et al. Plasma proteomic evidence for increased β-amyloid pathology after SARS-CoV-2 infection. Nat Med. 2025;31:797-806.

関連情報
この論文については、大阪大学の宮坂先生も2026年8月7日のFB投稿で、紹介されています。

・「死の自己決定」が生き方を変える――Medical Aid in Dying(MAiD)をめぐる2つの逆説
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年8月13日のFB投稿です***
米国では,Medical Aid in Dying(MAiD)を合法化する動きが急速に広がっています.米国におけるMAiDとは,一定の条件を満たす終末期患者に対して医師などが致死薬を処方し,患者自身がそれを服用して死を選択する制度です.7月30日号のNEJM誌に,このMAiDが抱える「逆説」を論じたPerspectiveが掲載されました.著者はMara Buchbinder博士で,医療人類学や生命倫理学の立場からMAiDを研究してきた方です.
著者が注目するのは,MAiDの法制化が広がっているにもかかわらず,実際にMAiDによって亡くなる患者は少ないという事実です.米国では,この1年間だけでも3つの州がMAiDを合法化し,現在,13州とWashington, D.C.の計14地域で認められています.米国人口のおよそ3分の1が,MAiDが合法化された地域に暮らしています.もっとも長い歴史をもつオレゴン州では,2025年にMAiDによって死亡した人は400人で,同州の年間死亡者のおよそ1%でした.利用者数自体は長期的には増加していますが,著者は,この比較的低い利用率が,MAiDを認めるとその対象や利用が際限なく広がるのではないかという,いわゆる「すべり坂」への懸念を和らげ,他州での法制化を後押ししてきたと指摘しています.ここに,本論文が指摘する第1の逆説があります.MAiDは社会的・政治的には支持が広がっている一方で,実際の利用は少なく,むしろその「利用されることの少なさ」が制度への支持を支えているという逆説です.
ここで興味深いのが,論文が引用しているOregon Health Authorityの2025年年次報告に掲載された図です.ダウンロードして和訳しました(図1).2025年にはMAiD により637人が致死薬の処方を受けましたが,実際に服用したことが確認されたのは358人(約56%)でした.一方,100人(約16%)は服用せず自然に死亡し,179人(約28%)は服用状況が不明でした.なお,2025年にMAiDによって死亡した400人には,前年以前に処方を受けた42人も含まれています.つまり,「薬を処方してもらうこと」と「実際にその薬を使って死亡すること」はイコールではないということです.患者さんのなかには,「もし苦痛が耐えられなくなったら,自分には最後の選択肢がある」という安心感を得るために処方を希望する人もいます.つまりMAiDには,死を早める手段としての意味だけではなく,「選択肢を持っていること自体」にも心理的な価値があるということなのだと思います.
ここで本論文から少し離れて国際比較をすると,興味深い違いがあります.カナダでは2024年に1万6499人がMAiDを受け,全死亡の5.1%に達しています.オランダでも2025年には1万341件で,全死亡の5.97%でした.つまり,オレゴン州の約1%に対し,カナダやオランダではすでに5~6%に達しています.なぜこれほど差があるのか,つまり米国で少ないのか不思議に思いましたが,一因として考えられるのが,制度そのものの違いです.オレゴン州では,対象が「6か月以内に死亡すると医学的に判断される終末期疾患」に限定されていますが,カナダでは必ずしも終末期疾患である必要はなく,自然死が近いと予測されない患者も一定の条件下で対象となります.オランダでも「余命6か月以内」という条件はなく,「改善の見込みのない耐え難い苦痛」などを基準としています.もうひとつは,オレゴン州では患者自身が薬剤を服用しなければならないのに対し,カナダやオランダでは医療者による薬剤投与が可能です.この違いは,衰弱や嚥下障害などがある患者さんにとって利用のハードルを下げる可能性があります.こうした対象範囲や実施方法の違いが,利用率の差に関係しているのかもしれません.ただし,カナダでも2024年のMAiDの大部分は自然死が合理的に予見可能な患者であり,適応範囲の違いだけでこの差を説明できるわけではありません.よって少なくとも,どこまでを対象とし,誰が薬剤を投与するのかという制度設計の違いが重要と思われます.
著者はさらに,MAiDが支持される背景には,終末期においても「自分の人生を自分でコントロールしたい」という願いがあると考えています.重い病気が進行すると,患者は身体機能や日常生活など,多くのものを失っていきます.そのなかで,いつ,どこで,誰とともに死を迎えるのかを自分で決められることは,「自己決定(autonomy)」を取り戻す意味をもちます.著者は死を,ただ耐えて迎える出来事ではなく,自らある程度「演出する(choreographする)」経験へと変えるものとして捉えています.
さらに著者が強調しているのは,MAiDの意義が,実際にMAiDを利用して亡くなる患者さんだけに限られないという点です.MAiDを利用しない患者さんにとっても,医師と死について話し合うことが,自分の不安や希望を明らかにし,終末期医療を考え直すきっかけになります.患者さんがMAiDを希望する背景には,痛みへの恐怖,身体機能や尊厳を失うことへの不安,死への恐怖や実存的苦痛,治療をいつまで続けるべきかという迷いなどがあります.MAiDについて話すことで,こうした不安や希望が明らかになり,症状緩和を強化したり,治療の目的を治癒から緩和へ切り替えたり,望まない治療を行わないことについて話し合ったりする契機になります.
私たちの医療を振り返ると,「まだできる治療があるなら次の治療を行う」という流れが生じやすい面があるように思います.しかしMAiDについて議論することで,「この患者さんにとって本当に大切なことは何か」を考える契機になります.MAiDは単に「死を早める医療」ではなく,「残された時間をどのように生きたいのか」を問い直すきっかけにもなるのだと思いました.ここに,本論文が指摘する第2の逆説があります.それは,実際にMAiDで亡くなる人は少なくても,MAiDという選択肢が存在することで,それよりはるかに多くの患者が自分の死について考え,家族や医療者と話し合うようになるという逆説です.つまり,MAiDの影響は,実際にそれによって命を終える人の数を超えて広がる可能性があります.
MAiDの価値は,「使われること」だけにあるのではないのかもしれません.「使わなくてもよい選択肢を持っていること」にも価値があります.MAiDが投げかけている本質的な問いは,「死を選ぶことを認めるべきか」という問題だけではなく,「私たちは患者とどのように死について語り,どのような最期を支えるべきなのか」という,終末期医療そのものへの問いなのだと思います.MAiDについて改めて考えさせられた論文でした.
Buchbinder M.The Paradox of Medical Aid in Dying.N Engl J Med.2026;395:417-419.doi:10.1056/NEJMp2606019.

・中国で急速に広まったアルツハイマー病脳の老廃物を流すバイパス手術のその後―Nature誌が検証―
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年8月14日のFB投稿です***
今年2月,アルツハイマー病(AD)に対する手術,深頸部リンパ管―静脈吻合術(deep cervical lymphatic-venous anastomosis;dcLVA)についてご紹介しました(https://pkcdelta.hatenablog.com/entry/2026/02/27/052931).41例の後方視的研究で,認知機能や精神症状の改善に加え,アミロイドβやリン酸化タウの変化まで報告され,大変驚きました.ただし,対照群がなく観察期間も短いため,前向き試験による検証が必要と書きました.それから半年がたち,Nature誌がこの治療をNews Featureとして取り上げています.
https://www.nature.com/articles/d41586-026-02448-x
この治療の中心人物は,中国の外科医のQingping Xie(謝慶平)医師です.きっかけはADではなく,耳鳴りの患者だったようです.2019年,耳鳴りと頭痛の患者の手術中に,頸部のリンパ管に通常とは異なる構造(abnormal cervical lymphatic structures)があることに気づき,リンパ管を近くの静脈につないだところ,患者は耳鳴りだけでなく,頭の働きも良くなったと訴えたそうです!後年,髄膜リンパ管やグリンファティックシステムの研究を知り,脳内の老廃物が最終的に頸部リンパ系へ排出されるならば,その「下流」の流れを改善することでADを治療できるのではないかと考えました.2020年9月,84歳男性にADの治療を目的とした最初のdcLVAを行いました.
この患者の劇的な術前・術後の動画が,その後の熱狂のきっかけとなります.2023年,Cleveland Clinicの形成外科医Wei Chen医師が,謝医師と患者家族の許可を得て,この映像を世界各地の外科学会で紹介し始めました.その後,Cleveland Clinicとの共同研究も始まりました.私もYouTube(https://www.youtube.com/watch?v=14Ezl67_EKk)でChen医師の講演を拝聴しましたが,寝たきりで息子も認識できなかった患者さんが,術後,速やかに息子を認識し,歩けるようになった姿が示されています.その後,中国ではdcLVAが急速に普及し,数百の病院で行われ,数千人の患者さんが手術を希望する事態となったそうです.一方,十分なエビデンスがないまま治療が広がったことから,中国当局が介入し,現在はより正式な臨床研究の枠組みでの施行に限定されています.
dcLVAという手術については,Nature誌による下図が分かりやすいです.脳から排出されたリンパ液は,髄膜リンパ系から頸部のリンパ管,リンパ節へ向かいます.dcLVAでは深頸部のリンパ管を近くの静脈へ直接吻合し,リンパ液を静脈循環へ流す新しい出口を作ります.リンパ管の末端を静脈へつなぐend-to-end法や,静脈の側壁へつなぐend-to-side法,さらに,リンパ節そのものを静脈につなぐlymph-node-to-vein anastomosis(LNVA)も行われています.つまり,術式はまだ統一されていないということのようです.
その後,中国を中心に十数論文,計数百例が報告され,認知機能や注意機能の改善,脳脊髄液中のアミロイドβやタウの変化などが示されているようです.2026年2月には100例を超える重症AD患者の研究も報告され,数か月後の認知機能や日常生活機能に,平均として軽度の改善が認められました.ただし重要なのは,SNSで注目されたような劇的改善が患者全体に起きているわけではなく,集団としてみた効果は比較的小さいことです.MRIでdefault mode networkの機能的結合性が増加したという報告や,超音波検査で頸静脈や頸動脈の血流が増加したという報告もありますが,これらがADそのものの改善を意味するのかはまだ分かりません.
今回の記事で私が不思議に思ったのは「改善の速さ」です.冒頭の患者では,術後わずか3日で息子を認識しています.もしdcLVAの効果を,脳内に蓄積したアミロイドβやタウの排泄促進によるものと考えるなら,この時間経過はあまりに速く思えます.本当に改善しているのであれば,病因蛋白の除去とは別の機序が働いている可能性を考える必要があります.脳脊髄液の圧や循環動態の変化,炎症性物質や神経毒性代謝物の排出などが関与しているのかもしれません.
今回の記事は,dcLVAの発想そのものを否定しているわけではありません.脳からの老廃物排出にグリンファティックシステムや髄膜リンパ管が重要であることには,基礎科学的な裏付けがあります.しかし,「脳リンパ系がADに重要である」ということと,「頸部のリンパ管を静脈につなげばADが改善する」ということの間には,理論的にまだまだ大きな飛躍があるように思います.2月のブログでは,「中国の研究レベルとチャレンジ精神恐るべしです.今後の前向き試験による検証が期待されます」と書きました.まさにその検証が始まりつつあり,韓国や米国でも追試が開始されているそうです.適切な対照群を設けた前向き試験と長期追跡によって,本当に有効な治療なのか,その答えが明らかになることを期待したいと思います.
Dolgin E. A controversial Alzheimer’s surgery is said to reverse symptoms — here’s what scientists know. Nature. 2026. doi:10.1038/d41586-026-02448-x.

・その「振戦」,本当に振戦ですか?――ランソプラゾールで生じたミオクローヌス
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年8月17日のFB投稿です***
『Tremor and Other Hyperkinetic Movements』誌に,ランソプラゾールによってミオクローヌスが誘発された教育的なVideo Abstractが報告されました.シンガポールからの報告です.
症例は62歳男性.消化不良に対してランソプラゾール15 mg/日を開始したところ,初回服用約6時間後から上肢と頭頸部に不随意運動が出現しました.血算,電解質,腎・肝機能,薬物・毒物検査に異常はなく,ランソプラゾールを中止すると2日以内に完全に消失しました.2カ月後にも再発はありませんでした.
動画では主に両上肢に生じたjerky movement(ピクッ,ガクッとするような急で短い不随意運動)が示されています.一見「振戦」にも見えますが,専門的にはpositive myoclonusとnegative myoclonus(asterixis)が混在しています.positive myoclonusは突然のピクッとする筋収縮で,negative myoclonusは持続していた筋活動が一瞬途切れ,ガクッと姿勢が崩れる現象です.その代表的な臨床型がasterixisで,姿勢保持中に筋活動が一瞬途切れることを不規則に反復し,かつて「羽ばたき振戦」と呼ばれていましたが,実際には振戦ではありません.
negative myoclonusは安静時に眺めるだけでは分からないことがあります.動画のように,両上肢を前方に伸ばし,手関節を背屈させて姿勢を保持してもらうと,手が一瞬ガクッと落ちる動きを不規則に反復する様子を確認できます.したがって「上肢がふるえる」という患者を診察するときには,単に動きを眺めるだけでなく,この姿勢をとらせてnegative myoclonusがないか確認することが重要です.
著者らは,初回投与から約6時間という時間的関連と,中止後の速やかな改善から,このミオクローヌスはランソプラゾールに対する特異体質的薬物反応(idiosyncratic reaction)と考えています.プロトンポンプ阻害薬(PPI)は一般に安全な薬剤ですが,まれに脳症やミオクローヌスなどの神経学的副作用が報告されています.また,長期使用に伴う低マグネシウム血症を介して神経症状をきたすことも知られていますが,本例では電解質異常は認めませんでした.
Michael S. Okun先生は,Xでこの論文を紹介し,この症例から得られる最大の教訓としてphenomenologyを正確に見極めることを強調しています.jerkyな動きを「振戦」とは区別すること,具体的には規則的か不規則か,突然の筋収縮なのか,逆に筋活動が一瞬途切れて姿勢が崩れているのかを観察することが重要と述べています.さらに,画像検査に進む前に,最近開始・中止・増減した薬剤を確認することも大切だと仰っています.この症例は,「ランソプラゾールでもミオクローヌスが起こり得る」という珍しい副作用だけでなく,すべてのふるえを振戦と決めつけず,まず症候を正確に観察し,薬剤歴を見直すという運動異常症診療の基本を再確認させてくれます.
ちなみにとくに日常臨床で「急にミオクローヌスが出た」ときにまず思い出すのは,①セフェピムなどの抗菌薬,②オピオイド,③抗うつ薬・セロトニン作動薬,④アマンタジン,⑤プレガバリン/ガバペンチン,⑥リチウムです.
Kumar RNK, Sharma VK. Lansoprazole-Induced Myoclonus. Tremor Other Hyperkinet Mov (N Y). 2026 Aug 14;16:47. doi: 10.5334/tohm.1236. PMID: 42602919; PMCID: PMC13475527.(動画はフリーで公開)

・口をもぐもぐ,舌が勝手に動く――遅発性ジスキネジアと機能性運動障害(機能性口舌常同運動)をどう見分けるか?
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年8月19日のFB投稿です***
抗精神病薬などを使用している患者さんに,口をもぐもぐさせる,舌を動かす,口唇をすぼめるといった不随意運動が出現すると,まず遅発性ジスキネジア(tardive dyskinesia;TD)を考えます.しかし,よく似た運動が機能性運動障害(functional movement disorder;FMD)でも生じます.2017年と少し古い論文ですが,両者の鑑別に役立つ興味深い研究をご紹介します.著者は運動異常症の大家,Joseph Jankovic先生らです.
まず用語を整理すると,FMDは振戦,ジストニアなどさまざまな運動症状を呈する広い概念で,その表現型のひとつがfunctional stereotypy(機能性常同運動;FS)です.stereotypyとは,反復性で協調され,一見すると目的をもったように見える運動を指します.本研究ではFMD 184例を後方視的に検討し,19例(10.3%)にFSを認めました.その内訳は口舌9例,四肢9例,体幹6例,呼吸筋2例でした.この口舌型は論文中でfunctional orolingual stereotypyあるいはfunctional orolingual dyskinesiaと表記されていますが,実質的には同じ9例を指しています.
ここで重要なのは,著者らが最初から後述する口舌運動の特徴を使ってTDとFSを診断し分けたわけではないことです.まずFMDはFahn–Williams criteriaに基づいて診断され,そのなかから,突然発症,distractibility,既知の器質性運動障害と一致しないincongruity,説明のつかない改善・増悪など,FMDに特徴的な所見を少なくとも3つ認める症例をFSとして抽出しました.一方,TD群はDSM-5に基づいてすでにTDと診断されていた患者です.そのうえで,FS 19例とTD 65例,さらに口舌型FS 9例とTDによる口舌ジスキネジア50例を比較し,両者を見分けるphenomenologyを検討しました.
FS群では84%が突然発症し,58%で注意を別のことに向けると運動が著明に減少・消失するdistractibilityを認め,84%で説明のつかない著明な改善や一時的消失がみられました.一方,TD群ではこのような特徴は認められませんでした.ただし,突然発症やdistractibility,症状の大きな変動は,もともとFSを診断する際に用いられた所見でもあります.したがって,これらがTDとの比較で大きな差を示したことは重要ではあるものの,本研究によって独立した鑑別指標として新たに証明されたわけではない点には注意が必要です.
むしろ本研究で興味深いのは,診断基準には使用されていなかった口舌運動そのものの違いです.咀嚼するような「もぐもぐ運動」はTDで82%,機能性で22%,自分の舌や口腔内を噛んでしまう自己咬傷は64%対0%でした.逆に,口の動きを伴わず舌だけが動く所見はTD 8%に対して機能性44%,異常発話も10%対44%と機能性で多く認められました.また,機能性群はTD群より若年発症で,機能性振戦など他の機能性徴候を伴うことも手がかりになります.表に鑑別点をまとめました.
重要なのは,口唇をすぼめる,舌を突出するといった個々の運動は両者に共通しており,見た目だけでは鑑別できないことです.また,ドパミン受容体遮断薬への曝露歴はTDを考えるうえで重要な手がかりですが,本研究では薬剤曝露歴だけを根拠にfunctionalかtardiveかを分類したわけではありません.実際,機能性群にも薬剤曝露歴をもつ患者がいました.したがって,「抗精神病薬を服用している+口舌顔面ジスキネジア=TD」と即断せず,薬剤との時間的関係に加えて,突然発症か,注意をそらすと変化するか,症状が大きく変動するか,さらに咀嚼様運動,自己咬傷,舌単独運動,異常発話などを丁寧に確認することが重要です.
本研究は後ろ向き研究で,とくに機能性口舌常同運動は9例と少数ではありますが,それでも臨床において有用な情報を与えるものです.最重要メッセージは,「薬剤曝露+口舌顔面ジスキネジア=TD」と短絡しないことです.突然発症,distractibilityによる変化,症状の大きな変動というFMDの「陽性徴候」を確認し,さらに咀嚼様運動,自己咬傷,舌単独運動,異常発話などを組み合わせて判断することが大切だと学びました.
Baizabal-Carvallo JF, Jankovic J. Functional (psychogenic) stereotypies. J Neurol. 2017;264:1482–1487. doi:10.1007/s00415-017-8551-7. PMID: 28653211.

・「任せる」と「丸投げ」は何が違うのか?――勉強になった『コンテキスト・リーダーシップ』
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年8月21日のFB投稿です***
リーダーシップについては,以前から関心を持って学んできました.きっかけは,2018年の米国神経学会(AAN)でLeadership Universityの講義を聴き,「リーダーシップは学び,身につけることができる」という考え方に触れたことでした.今年の日本神経学会学術大会(西山和利大会長)では,AAN Presidentを囲み,若手・女性医師とリーダーシップについて議論する企画が開催され,さらにリーダーシップを体系的に学ぶ教育コースも行われました.AANやMDSなど海外学会の積極的な取り組みと比べると,日本の医療会ではまだリーダーシップ教育への関心は十分に高いとはいえないかもしれません.しかし,少しずつその重要性が認識され,具体的な取り組みも始まっています.リーダーシップを経験則だけに頼るのではなく,ひとつの学問として学ぶことは,組織の発展や人材育成のために,今後ますます重要になると思います.
そんななかで最近読んだ,山口周氏の『コンテキスト・リーダーシップ――「最高の上司」と「最悪の上司」は文脈で決まる(https://link.amazon/B0258Nhdb)』は,これまで学んできたリーダーシップ論とは少し違う角度から考えさせられる本で,非常に勉強になりました.
最も印象に残ったのは,優れたリーダーと凡庸なリーダーを分けるのは,「行為そのもの」ではないという指摘です.たとえば,「任せる」と「丸投げ」は何が違うのでしょうか? あるいは,「明確で的確な指示」と「マイクロマネジメント」は何が違うのでしょうか? 行為だけを切り取ってみると,その境界を明確に説明するのは意外に難しいものです.
その違いを生むのが,「コンテキスト(文脈)」です.部下の能力や意欲,それまでに築いてきた関係,背景や意図が共有されているか,そしてリーダー自身が信頼されているか.そうした文脈の違いによって,同じ行為が,ある人には「最高の上司」の行為となり,別の状況では「最悪の上司」の行為にもなり得ます.つまりリーダーシップは,「何をしたか」だけで決まるのではなく,その行為が相手にどのような意味として受け取られるかによって成立する.この考え方はとても新鮮でした.
もう一つ印象に残ったのが,「ナラティブ(物語)」の重要性です.人は事実そのものだけで動くのではなく,それがどのような物語のなかに位置づけられているかによって意味を見いだし,行動します.だからこそ,仕事や人生に前向きな意味を与えるナラティブを示し,一人ひとりの物語を組織の大きな物語へと編み込んでいくことも,リーダーの重要な役割なのだと思います.これまで私は,変革型,サーバント型,オーセンティック型など,さまざまなリーダーシップを学び,状況に応じて使い分けることが大切だと考えてきました.本書はそこからさらに一歩進んで,「優れたリーダーは○○をする」といった,あらゆる状況に通用する万能のリーダーシップなど存在しないことを強く意識させてくれました.
さらに,キャリアや職位に応じて,リーダーシップそのものを変えていく必要があることも改めて考えさせられました.職位や役割が変われば,かつて自分を成功させた「自ら判断し,指示し,率先して動く」という強みさえ,時には手放さなければなりません.コンテキストが変われば,求められるリーダーシップも変わるからです.
「何をするリーダーが優れているか」ではなく,「どのような文脈で,その行為がどのような意味を持つのか」.これまでリーダーシップについて学んできたからこそ,この視点はとても新鮮でした.自分自身のこれまでの振る舞いを振り返るきっかけにもなり,多くを学ぶことができました.リーダーシップに関心のある方に,ぜひおすすめしたい一冊です.

・朝日新聞デジタルで「機能性神経障害」を取り上げていただきました.
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年8月22日のFB投稿です***
本日8月22日の朝日新聞デジタル「医療健康アピタル」で,#機能性神経障害(Functional Neurological Disorder:FND)について取材していただきました.
機能性神経障害は,まひ,ふるえ,けいれん,感覚障害,てんかんのような発作など,さまざまな神経症状をきたす疾患です.決してまれな病気ではありませんが,一般の方々だけでなく,医療者の間でも,まだ十分に知られているとは言えません.
歴史的には「ヒステリー」や「心因性」と呼ばれ,ときには「症状を本人が作っているのではないか」と誤解されてきました.しかし,患者さんの症状は現実のものであり,大きな苦痛や生活上の支障をもたらします.現在では,他の病気をすべて除外して診断するのではなく,FNDに特徴的な診察所見を積極的に見いだして診断し,適切な説明やリハビリテーションなどによって改善を目指す疾患と考えられています.
今回,#朝日新聞 という多くの方が目にする媒体で取り上げていただいたことを,とてもありがたく思っています.病気について社会の理解が広がることは,これまで「分かってもらえない」という苦しさを抱えてきた患者さんにとっても,大きな意味があると思います.
記事では,高校球児の相談を入り口に,FNDとはどのような病気なのか,どのように診断し,治療していくのかについて,できるだけ分かりやすくお話ししました.
本日8月22日から朝日新聞デジタルで公開され,紙面には9月20日に掲載予定です.この病気について,多くの方に知っていただくきっかけになればと思います.
「右足に力が入らなくなった球児 『古くて新しい』機能性神経障害とは」
朝日新聞デジタル(有料記事です)
https://www.asahi.com/articles/ASV892D06V89UTFL024M.html

・難病患者の総合的支援体制に関する研究班 令和8年度夏の班員会議を開催しました!
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年8月23日のFB投稿です***
昨日,「厚生労働省 難病患者の総合的支援体制に関する研究班」の令和8年度夏の班員会議を開催しました.本研究班は,これまでの西澤班,小森班の成果を引き継ぎ,今年度から新たな体制でスタートしています.中山優季先生が作成してくださった図のように,難病医療,在宅療養,地域支援,相談支援など,難病患者さんを取り巻くさまざまな課題に対して,多職種から構成される班員からなる7つのチームを設け,それぞれが連携しながら研究を進めていきます.研究班の目的は,難病患者さんを支える総合的な体制のあり方を研究し,①その成果を用いて政策提言を行うことです.さらに,②難病患者さんやご家族,そして医療・保健・福祉などに携わる多職種の皆さんに実際に活用していただける,指針や手引き,リーフレットなどの成果物を作成することも重要な使命です.
7つのチームは,それぞれ以下のミッションに取り組みます.
A.難病医療提供体制の課題と対策(漆谷 真リーダー)
B.難病遠隔医療・リハビリの課題と対策(新野正明リーダー)
C.地域における難病保健・相談支援の充実(山田 恵リーダー)
D.難病在宅療養支援の充実(中山優季リーダー)
E.難病の災害対策(中根俊成リーダー)
F.難病患者支援における施設間・職種間連携(原口道子リーダー)
G.難病における遺伝ケアの充実(西郷和真リーダー)
昨日の班会議では,各チームから研究計画と現在の進捗が報告され,今後の方向性について活発な議論が行われました.
会議の最後には,前班長の小森哲夫先生から,本研究班が難病法制定(2014年成立)以前から積み重ねてきた10年以上の歩みについてお話しいただきました.患者さんやご家族,そして現場の声を拾い上げ,研究を通じて政策へ届けてきた研究班の歴史を振り返り,その役割と意義を改めて共有する貴重な機会となりました.
その大切なバトンを受け継ぎつつ,班員の皆さんと力を合わせて,難病患者さんとご家族のより良い未来につながる研究を一歩ずつ進めてまいりたいと思います.ぜひご支援,ご協力のほどどうぞ宜しくお願いいたします.以下の研究班のホームページより,これまでの成果物や研究報告書をご活用,ご覧いただけます.
研究班ホームページ
https://plaza.umin.ac.jp/nanbyo-kenkyu/

・「AIを使う医師」から「AIを使いこなす医師」へ―欧州神経学会が始めたAI教育
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年8月25日のFB投稿です***
人工知能(AI)は,脳神経内科診療を大きく変えつつあります.印象深い論文が相次いで報告されており,2回連続でご紹介したいと思います.今回は教育,次回は研究の方向性に関する論文です.
画像診断,脳波解析,予後予測,文献検索,診療記録作成など,すでにさまざまな場面でAIの利用が始まっています.一方で,AIをどのように安全に使うのか,AIへの依存によって医師自身の能力が低下しないのかという問題があります.この課題に対応するため,欧州神経学会(European Academy of Neurology;EAN)は「AI in Clinical Neurology Task Force」を設置し,その目的と活動方針をEuropean Journal of Neurology誌に発表しました.私もEANの学会員であり,論文を自由にダウンロードできますので読んでみました.
注目されるのは,Task Forceが脳神経内科医だけでなく,専攻医,医学生,データサイエンティスト,倫理学者,規制の専門家,患者代表から構成されている点です.AIを単なる技術の問題としてではなく,臨床,教育,倫理,法律,そして患者の視点を含めて考えようとしています.
まずTask Forceは,AIが脳神経内科診療にもたらす可能性を整理しています.脳卒中ではCTやMRIから病変や主幹動脈閉塞を検出し,てんかんではEEGから発作活動を自動検出できます.神経変性疾患では,画像,バイオマーカー,臨床情報などを統合して,早期診断や予後予測を行うことが期待されています.また生成AIや自然言語処理(natural language processing;NLP)は,文献検索・要約,診療記録作成,患者・家族への情報提供にも利用できます.ちなみに自然言語処理とは,人間が使う文章や会話をコンピュータが解析・生成する技術のことです.
つぎにAIの問題点を整理しています.AIには学習データの偏りによるbias,他の施設や患者集団では性能が低下するgeneralizability,判断根拠が分かりにくいblack box,もっともらしい誤情報や存在しない文献を生成するhallucinationなどの問題があります.この論文で特に問題視されているのが,「deskilling」と「upskilling inhibition」です.これは過去にもブログで取り上げたことがありますが(コメント欄参照),deskillingとは,AIへの依存によって医師がすでに身につけた診断能力や臨床技能を失ってしまうことです.一方,upskilling inhibitionとは,AIが容易に答えを示すため,新しい知識や技能を自ら身につける機会が減ってしまうことです.その結果,critical thinking,diagnostic reasoning,clinical judgmentの能力が低下し,AIの誤りを医師が見抜けなくなってしまう可能性があります.こうした傾向は今後さらに強まるのではないかと危惧しているベテラン医師は私も含め少なくないのではないかと思います.
この問題は,脳神経内科では特に重要だと言っています.私たちは病歴,神経診察,画像,電気生理検査,バイオマーカーなどを統合し,責任病変や病態を推論したうえで診断をします.AIの性能がいくら向上しても,人間側の臨床推論能力を維持する必要があります.そこでEANが重視しているのが,AIを遠ざけることではなく,むしろAIについて体系的に学び理解することです.
Task Forceでは,医学生から専攻医,専門医,さらに生涯教育までをつなぐAI教育体系の構築を目指しています.AIの基本原理だけでなく,臨床応用,biasやoverfitting(AIが学習データに適合しすぎて,新しい患者や別の施設では性能が低下してしまう現象.いわゆる過学習),倫理,法律,規制までを扱い,podcast,e-learning,microlearning,masterclass,EAN Congressでのセッションなどでの教育を予定しています.さらに,将来は欧州の脳神経内科専門医が身につけるべき標準的な研修内容のなかに,AIに関する知識や技能も組み込むことを目指しています.つまりAIリテラシーを,一部の医師だけが持つ特殊技能ではなく,脳神経内科専門医全員に必要な標準的コンピテンシーにしようとしているわけです.
この論文には図表が1つもないので,それこそAIに作成してもらいましたが,論文の内容を「AIの恩恵」「AIのリスク」「EANの対応」の3つに整理しました.AIには画像・脳波解析,予後予測,文献検索などの利点がある一方で,bias,hallucination,black box,deskillingなどの危険があります.その両者の間にいるのが「AI時代の脳神経内科医」です.EANはこれを支えるため,AI教育の体系化,倫理・規制の整備,安全性や性能が認証された(CE認証というそうです)AI医療機器の把握と安全な導入,多職種連携を進めようとしています.Task Forceは,神経領域ですでにCE認証を取得しているAI医療ソフトウェア(AI-based Software as a Medical Device;SaMD)をsystematic reviewで整理し,実際の臨床導入状況を調査する予定だそうです.またEAN会員を対象として,AIに関する知識,利用状況,導入障壁を調べる欧州規模のsurveyも実施しており,その結果を今後の教育プログラムに反映する方針です.非常に進んでいるなあと思います.
最後に,EANが重視しているのが「clinician-in-the-loop」という考え方です.in-the-loopは,AIが判断・提案を行う一連の流れの中に人間が入って関与することを意味します.逆にout of the loopというと,人間がその判断過程から外れ,AIがほぼ自律的に判断・実行することになります.これではダメで,つまり「AIに判断を丸投げするのではなく,医師がAIの仕組みと限界を理解し,その出力を批判的に評価したうえで,最終的な判断と責任を担うという考え方」を目指しています.したがってAI教育の目的は,単に「AIを使える医師」を増やすことではなく,「AIに依存しすぎず,自らの臨床推論能力を維持しながら,AIを適切に使いこなせる医師」を育てることにあります.ただ,AIが便利になればなるほど,その判断に頼りたくなるのも人間の自然な傾向です.AIを積極的に活用しながら,同時に自ら考える力を失わないというバランスをどう保つかは,決して簡単な課題ではないと思います.日本の脳神経内科専門医教育を考えるうえでも,非常に参考になる論文だと思います.
Accorroni A,et al.Navigating the Artificial Intelligence Revolution in Clinical Neurology: A New Multidisciplinary Task Force Within the European Academy of Neurology.European Journal of Neurology.2026;33:e70728.doi:10.1111/ene.70728.PMID:42627286.

・「AIモデルを開発する研究」から「AIを患者さんに届ける研究」へ―脳神経内科領域におけるtranslation gapの克服
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年8月27日のFB投稿です***
前回は,欧州神経学会が始めたAI教育の論文をご紹介しました.今回はAIと脳神経内科の第2弾として,AI研究そのものを今後どの方向に進めるべきかを議論した論文をご紹介します.Nature Reviews Neurology誌に掲載された「Moving artificial intelligence from research to real-world clinical use in neurology」という論文で,著者はJames T. Teo博士らで,英国,米国,デンマークの一流施設の研究者からなるグループです.
まず指摘されているのは,神経画像,脳波などの神経生理,遺伝学,chatbotなど,すでに多数のAIアルゴリズムが開発され,一部はFDAの承認も得ているにもかかわらず,実際の日常診療に広く導入され,患者さんの利益につながっているものはごく一部であるという現状です.
著者らは,AI研究には「研究ではうまくいったのに診療現場まで届かない」という大きなtranslation gap,つまり研究から実用化への「死の谷」が存在すると指摘しています.図1は,AIモデル開発を医薬品開発と比較し,アルゴリズム開発から,臨床評価,規制審査,費用対効果の検討,導入後の監視までの道筋を示しています.ところが多くのAI研究は,アルゴリズム開発から臨床評価へ移る段階で止まっています.赤く「Translation gap」と示されている部分です.
新しいAIモデルを作る研究は評価されやすい一方,多施設での外部検証,電子カルテや検査機器への組み込み,規制対応などは評価されにくく,資金も得にくいという構造的な問題があるそうです.著者らは,今後はproof-of-concept(概念実証)のレベルから,「どうすれば実際の医療現場に定着させられるか」を研究する実装科学へ重点を移すべきだと主張しています.
成功例として紹介されているのが,AIによる脳波動判定システムSCORE–AIです.スカンジナビアの2施設から集めた3万件を超える脳波データを用いて開発され,さらに異なる地域,機器,記録条件の患者でも外部検証を行い,専門家と同程度の診断精度を維持することを確認しました.その後autoSCOREとして製品化され,すでに広く使用されていたNatus NeuroWorks EEGシステムに直接組み込まれました.つまり,医師が別のソフトウェアを立ち上げるのではなく,普段の診療ワークフローの中にAIを自然に組み込んだ点が重要です.ちなみにこのシステムで,医師は病棟の膨大な脳波データの中から「AIが色分けした優先度の高い患者」を選び,「自動検出・分類された異常箇所」へワンクリックでジャンプして最終確認するだけでよいそうです.これにより見落とし防止と読影時間の大幅な短縮が実現しました(図2;リンクはコメント欄).
もう一つの大きな課題がAIの学習に用いるデータの質と一般化可能性です.単施設の少数例から作ったAIが,別の地域や医療環境でも同じように機能するとは限りません.そのため,大規模で多様な多施設データが必要です.さらに,過去のデータから作ったAIは,診断基準や治療法,患者背景の変化によって徐々に性能が低下することがあります(data drift).AIも医薬品の市販後調査と同様に,導入後の性能を継続的に監視する仕組みが必要になります.
脳神経内科領域において特に重要なのが,データの標準化だそうです.放射線科領域にはDICOMという世界共通の画像規格がありますが,脳神経内科では,脳波や筋電図,診療記録などの標準化は十分ではありません.MRIも撮像プロトコルの施設差が問題になります.さらに,疾患ごとにレジストリやデータベース,解析基盤が別々に構築されてきたため,脳神経内科全体でデータを統合してAIに活用しにくいという課題もあります.画像を多く利用する脳卒中やMSではAI導入が比較的進んでいる一方,運動異常症や末梢神経疾患では導入が遅れていると記載されています.AI時代には,優れたアルゴリズムだけでなく,AIが利用できる共通のデータ基盤が重要になります.
診断以外にも,診察中の会話から診療録を自動作成したり,患者へのメッセージを作成したり,受診の緊急度を判断したりするAIの活用も紹介されています.医師の事務負担を減らす可能性がある一方,プライバシー,同意,誤った診療録が作成された場合の医療安全などの問題があります.こうしたAIも,病院経営者やテクノロジー企業だけに任せず,脳神経内科医自身が開発やガバナンスに関与する必要があります.
生成AIに指示してソフトウェアを作る『vibe coding』にも触れています.私も最近少し試していますが,専門的なプログラミング知識がなくても,診療上の困りごとを解決するアプリを作れてしまいます.著者らは,検証,規制,品質管理,サイバーセキュリティを十分に理解しないまま医療用ソフトウェアが作られる危険性があると警告しています.
この論文の最大のTake-home messageは,AI研究では『精度が高い』ことを示すだけでは,もはや十分ではないという点です.本当に問うべきなのは,別の施設や患者集団でも同じ性能を示すのか,診療ワークフローの中で実際に使えるか,長期間にわたり安全かつ安定して運用できるのか,そして最終的に患者さんや医療現場に実質的な利益をもたらすのか,ということです.前回のEANの論文が,「AI時代にどのような脳神経内科医を育てるべきか」を問いかけたものだとすれば,今回の論文は,「AI時代にどのような脳神経内科研究を行うべきか」を問いかけたものと言えます.今後必要なのは,「新しいAIモデルを開発しました」という研究を増やすだけではなく,「AIのメリットを患者さんに届ける研究」へシフトすることだと思います.AIの急速な進歩に合わせて,私たち医療者や研究者にも,AIとの向き合い方を変えることが求められているように思います.
Teo JT,et al.Moving artificial intelligence from research to real-world clinical use in neurology.Nat Rev Neurol.2026;22:498–506.doi:10.1038/s41582-026-01225-8.PMID:42373953.

・「やる気がでない」だけではない――Parkinson病のアパシーを4つのタイプから考える
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年8月29日のFB投稿です***
Parkinson病(PD)や脳卒中などの患者さんを診療していると,「何事にも興味を示さなくなった」「自分から何もしなくなった」とご家族から相談されることがあります.こうした症状はアパシーと呼ばれています.アパシー(apathy)の語源は,ギリシャ語の「a(〜ない)」と「pathos(感情・苦しみ・情熱)」が組み合わさった「apatheia(アパテイア)」に由来します.アパシーはパーキンソン病(PD)とLewy小体型認知症(DLB)を含むLewy小体病(Lewy body disorders:LBD)において重要な非運動症状ですが,単なる「やる気の低下」や「うつ」と思われてしまいがちです.今回,国際学会であるMDSが,アパシーに関するPosition Paperを発表しました.
まずアパシーの頻度ですが,PDでは未治療例の20~36%に認められ,進行すると約40%,認知症を合併すると最大60%程度に達します.DLBでは55~66%とさらに高率です.しかも,アパシーは単に活動量が減るだけではなく,ADLやQOLの低下,認知機能低下,介護者負担の増大と関連します.PDでは運動症状の出現前からみられることもあり,将来の認知機能低下を予測する可能性も指摘されています.
この論文で最も重要,かつ興味深く思ったのは,アパシーを一つの症状ではなく,異なる病態からなる多次元的な症候群として捉えている点です.図1では,アパシーを以下の4つの側面に分け,それぞれに関係する神経回路と神経伝達物質を示しています.
①「報酬への反応の低下(reward insensitivity)」;以前は楽しかったことや価値があったことが,行動を起こす動機にならなくなります.腹側線条体や側坐核,眼窩前頭皮質を含む報酬系が関与し,特にドパミン系との関係が重要と考えられています.
②「自己賦活障害(auto-activation deficit)」;外から「散歩に行きましょう」と声をかけられれば行動できるのに,自分からはなかなか始められません.前帯状皮質,補足運動野,基底核,視床からなる行動開始のネットワークが関係し,ドパミン系とコリン系が関与すると考えられています.
③「感情鈍麻(emotional blunting)」;出来事に対する感情的な反応そのものが乏しくなった状態です.前帯状皮質,扁桃体,内側前頭前野などが関係し,セロトニン系やノルアドレナリン系の関与が想定されています.
④「遂行機能障害(executive dysfunction)」;何かをしたいと思っていても,計画を立てたり,行動の手順を組み立てたり,途中で切り替えたりすることが難しくなります.背外側前頭前野から尾状核に至る前頭葉―線条体回路が重要で,ドパミン系とコリン系の双方が関係します.
つまり,外から見ると同じ「何もしない」という状態でも,その理由は「報酬を魅力的に感じない」「感情が動かない」「計画できない」「自分から始められない」とさまざまということです.さらに重要なのは,アパシーは単純なドパミン不足だけでは説明できず,ドパミン,アセチルコリン,セロトニン,ノルアドレナリンという複数の神経伝達系と,前頭葉―線条体―辺縁系ネットワークの障害によって生じると考えられている点です.図1は,この論文のメッセージを最もよく示した図だと思います.
臨床では,まずアパシーとうつ病を区別することが非常に重要だと述べています.両者は併存することもありますが,同じものではありません.アパシーの中心は「motivation,すなわち動機づけの低下」であるのに対し,うつ病では悲哀感,絶望感,罪責感,不安などのnegative affectが中心です.「何もしなくなった」という患者さんを見たときに,「悲しくてできない」のか,「悲しいわけではないが,自分から始められない」のかをまず区別することが重要です.
では,治療はどうすればよいのでしょうか.病態ごとに神経伝達物質の賦活を行えばよいと思われますが,現時点でアパシーに対して確立した薬物療法はありません.リバスチグミンは小規模なランダム化比較試験で改善を示し,「possibly useful」と評価されています.ドパミンアゴニストについては結果が一定せず,効果が期待できる患者がいる一方,過剰なドパミン刺激によって衝動制御障害を引き起こす危険もあります.Safinamideにも改善を示唆する結果がありますが,現時点では確立した治療とはいえません.また,抗うつ薬は,うつ病を合併している場合には有用ですが,うつを伴わないアパシーそのものに対する効果は証明されていません.興味深いことに,SSRIの使用とアパシーの増悪との関連を示す観察研究もあり,SSRI開始後や増量後に自発性が低下した場合には薬剤の影響を考える必要があります.
むしろ現時点で重要なのは非薬物療法のようです.予定を決めて活動するbehavioral activation,運動,環境からのcue,分かりやすく単純化した日課,家族や介護者からの働きかけなどが推奨されています.とくに②の自己賦活障害では,「本人のやる気が出るまで待つ」のではなく,外部から行動開始のきっかけを作ることが病態に即した対応になります.
この論文から得られる最大の教訓は,アパシーを「本人にやる気がない」「うつなのだろう」と一括りにしないことだと思います.「なぜ動けないのか」を,報酬への反応,感情,遂行機能,自己賦活という4つの視点から考えることで,患者さんごとの病態が見えやすくなります.今後は,こうしたアパシーのサブタイプをきちんと評価し,神経回路や神経伝達物質の違いに応じた治療を開発することが必要だと思いました.
Kulisevsky J,et al.Apathy in Lewy Body Disorders: A Position Paper.Movement Disorders.2026.doi:10.1002/mds.70464.PMID: 42596621.

・Stiff-person syndromeは過収縮性食道による胸部の締め付け感とつかえ感を合併する―IVIgにより治療できる可能性を示した症例
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年8月30日のFB投稿です***
当科からの報告で,大野陽哉先生,國枝顕二郎先生,山田恵先生が中心になり検討した症例が,嚥下障害の専門誌Dysphagia誌に掲載されました.GABA作動性抑制系の障害により,体幹・四肢の持続的な筋のこわばりと,刺激で誘発される有痛性筋攣縮を特徴とする自己免疫性神経疾患Stiff-person syndrome(SPS)に,過収縮性食道(hypercontractile esophagus)を合併した症例です.食道運動障害もSPSの病態の一部である可能性を示した点で重要な報告だと思います.
症例は54歳女性.液体を飲み込む際の胸部の締め付け感とつかえ感に加え,体幹・四肢の筋のこわばりと有痛性筋攣縮が出現しました.症状は大きな音や寒冷によって誘発され,歩行障害を呈しました.血清GAD抗体は744,000 IU/mL,脳脊髄液では21,500 IU/mLと著明高値で,表面筋電図では拮抗筋の同時収縮を認め,SPSと診断しました.上部消化管内視鏡では異常を認めませんでした.
嚥下造影検査では咽頭期は正常でしたが,食道期で造影剤が上部食道に停滞し,さらに上方へ移動する所見を認めました.図上は,この異常な食道所見を見事に捉えたもので,患者さんが訴えた「胸の中でつかえる」という症状が,食道運動異常に伴うものであることを示しています.さらに高解像度食道マノメトリー(食道内圧検査)では,水を嚥下するたびに中部から下部食道で極めて強く持続する収縮を認めました.食道収縮力を示すdistal contractile integral(DCI)は30,505.2 mmHg・s・cmで,正常上限8,000を大幅に超えており,高解像度食道マノメトリーによる食道運動障害の国際診断基準(Chicago Classification version 4.0)に基づいて過収縮性食道と診断しました.
ジアゼパムでは筋症状と胸部不快感の改善は限定的でしたが,IVIgを施行すると,体幹・四肢の筋のこわばりと筋硬直がほぼ消失し,嚥下時の胸部不快感も著明に改善しました.図2は前述のマノメトリーにおけるIVIg前後,正常対照を比較しています.治療前には中部から下部食道に著明かつ持続的な高圧の収縮を認めますが,IVIg後には大幅に減弱し,正常対照に近づいていることが分かります.水嚥下時のDCIも30,505.2から7,625.8 mmHg・s・cmへ低下し,正常範囲まで改善しました.その後も症状再燃時にIVIgを反復すると,食道症状は一貫して改善しました.
私たちは,SPSと過収縮性食道がほぼ同時に発症したこと,神経症状と食道症状がIVIgに並行して認められたことから,過収縮性食道がSPSに伴う病態であった可能性を指摘しました.機序として注目しているのはGABA作動性抑制性神経伝達の障害です.SPSではGAD抗体などに関連してGABA作用が低下します.GABAはコリン作動性神経活動や食道伸展による二次蠕動を抑制しているため,GABAによるブレーキが弱まると,食道の過剰収縮につながる可能性があります.ただし,この機序は本症例で直接証明できたものではないので,さらなる今後の検討が必要です.
本症例から得られるメッセージは,SPS患者が嚥下時の胸部不快感やつかえ感を訴えた場合,咽頭期の嚥下障害だけでなく食道運動障害にも目を向ける必要があるということです.SPSでは今まで知られていない症候ですが,患者さんの訴えをきちんと受け止めて観察し,病態に結びつけて治療につなげた点で,主治医の先生がたは非常に立派だったと思います.とても素晴らしい症例報告だと思います.
コメント欄で,無料の論文へのリンクと,嚥下造影検査の驚きの動画(フリー)をご覧いただけます.
Ono Y, Kunieda K, Yamada M, Shimohata T. Clinical Conundrum: Chest Discomfort on Swallowing in a Patient with Stiff-Person Syndrome. Dysphagia. 2026. doi:10.1007/s00455-026-10996-7.

・アルツハイマー病に対する抗アミロイド抗体は長く続けるほど効くのか?―長期効果の「拡大」はまだ証明されていない
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年8月31日のFB投稿です***
アルツハイマー病に対する抗体薬レカネマブとドナネマブは,18か月前後のランダム化比較試験において,偽薬と比較して認知・生活機能の低下を約25~35%遅らせることが示されています.さらに,その後のオープンラベル延長試験(open-label extension:OLE)では,治療継続群と未治療のhistorical control(自然歴データ)との差が時間とともに広がることから,「長く治療するほど臨床的利益が蓄積する」,すなわち疾患修飾効果が長期にわたり増大する可能性が示されています.しかし,本当にそこまで言えるのでしょうか.この問題に熱いDiscussionが行われています.
まずこの問題に一石を投じた研究が,2026年にBMJ Neurology Open誌に報告されました(文献1).著者のシンシナチ大学のAlberto J Espay博士らは,レカネマブのClarity AD試験とドナネマブのTRAILBLAZER-ALZ 2試験について,18か月までの二重盲検期(double-blind:DB)と,その後のOLE期でCDR-SBの悪化速度がどう変化したのかを解析しました.
まずOLEの解釈で重要なのは,同時期の偽薬群が存在しないことです.そのためADNIなどのhistorical controlが比較対象として用いられますが,OLEには治療を忍容でき,比較的進行の遅い患者が残りやすいという選択バイアスや脱落バイアスがあります.また,臨床試験の参加者とhistorical controlでは,患者背景や診療環境も異なります.したがって,「治療継続群がhistorical controlより良かった」という結果を,そのまま薬剤の長期効果とみなすことには注意が必要です.
そこで著者らは,主に外部対照との比較ではなく,同じ試験のなかで18か月までの二重盲検期(DB期)と,18か月以降のOLE期におけるCDR-SBの「悪化の傾き」を比較しました.ただし,製薬企業から独立解析のための患者個票データが提供されていないため,公表された平均値,標準偏差,脱落率,図表などをもとに患者レベルの経時データをシミュレーションした解析です.最初から実薬を投与されたearly-start群では,レカネマブの年間悪化速度はDB期の0.78点/年からOLE期には1.30点/年へ,ドナネマブでも1.07点/年から1.73点/年へと速くなりました.つまり,両薬剤とも,最初の18か月と比べてOLE期にはCDR-SBの悪化の傾きが急になっていました.
この結果をさらに分かりやすく示しているのが図1です.こちらはearly-start群だけではなく,early-start群とdelayed-start群を合わせた解析です.図中に示された推定年間悪化速度は,DB期のレカネマブ群が0.64点/年,その後のOLE期が1.12点/年,DB期の偽薬群が1.24点/年,historical control(Williamsらの自然歴コホート)が1.60点/年でした.つまり,「OLE期のレカネマブ群はhistorical controlより良好である(1.12点/年,1.60点/年)」という見方ができる一方で,「DB期と比べるとOLE期には悪化速度が速くなり,DB期の偽薬群に近づいている(1.12点/年,1.24点/年)」と見ることもできます.本文の統計解析でもOLE期の悪化速度は1.13点/年と推定され,DB期偽薬群との差は有意ではありませんでした(p=0.46).同じ長期データでも,historical controlと比較するのか,試験内でDB期とOLE期の傾きを比較するのかによって,治療効果の解釈が大きく異なることが,この図の最も重要なポイントです.
さらにClarity ADでは,DB期の偽薬群そのものが,重症度を合わせた未治療historical controlよりCDR-SBの悪化が年間0.62点遅くなっていました!つまり,薬を投与されていない偽薬群でさえ,自然歴データより良い経過を示していました.この結果も,OLE患者とhistorical controlとの差をすべて薬剤の効果と考えることの難しさを示しています.
しかし,重要な反論があります.それが文献2です.アルツハイマー病の認知機能低下はそもそも直線的ではなく,病気が進むにつれて加速するのではないか,というものです.Öhman博士らは2026年,ADNIの1447例を解析し,Aβ-PET陽性化から認知症に至る長期的な疾患軌跡をモデル化しました.その結果,認知機能低下はとくにMCI後半から認知症への移行期に急峻になることを示しました.いわゆる「waterfall」のような自然歴です.じつは私もこの点は気づいていて,2年前の脳血管・認知症学会(岐阜)の会長講演で指摘しました.もしこの自然な加速が抗体治療試験にも当てはまるなら,OLE期にCDR-SBの傾きが急になったことは,薬効の低下ではなく病気本来の進行を反映している可能性があります.
しかし,Espay博士はLinkedIn上で,この「自然歴による加速」という説明にも疑問を投げかけています(図2).Öhmanらのモデルでは,認知機能低下が大きく加速するのはAβ-PET陽性化から長い年月を経たlate MCIから認知症への移行付近です.一方,レカネマブとドナネマブの試験では,試験開始から0~18か月より18~36か月のほうがCDR-SBの傾きが急になっています.Espay博士は,「アルツハイマー病の自然歴が長期的に非線形であること」と,「試験登録から18か月後にみられた折れ曲がりを自然歴で説明できること」は同じではないと指摘しています.図2では,上段にÖhmanらによる長期的なMMSEの軌跡,下段にレカネマブとドナネマブ試験の公表データをもとに描かれたCDR-SBの軌跡が示されており,この「waterfall」と「month-18 bend」の時間軸の違いが視覚的に示されています.
結局,現時点ではどちらの解釈が正しいかは決着していません.したがって,現時点でもっとも妥当な結論は,レカネマブとドナネマブが18か月前後まで認知・生活機能低下をある程度遅らせることはランダム化比較試験で示されていますが,「長く使えば使うほど効果が大きくなる」ことまでは証明されていない,ということだと思います.一方,今回の解析だけから「18か月以降は薬が効かなくなる」と結論することもできません.最終的には,製薬企業が保有する患者個票データを用い,病期,治療期間,脱落などを考慮した独立解析が必要です.
抗アミロイド抗体は脳内アミロイドβを著明に減少させます.しかし,「アミロイドを除去できること」,「18か月間で臨床効果があること」,「その効果が長期間持続すること」,「長く使うほど効果がさらに大きくなること」は,それぞれ別々に検証すべき命題です.患者さんに長期間の治療を勧める以上,「長く続けるほどよい」という主張についても,より確かなエビデンスが必要だと思います.
1.Dwivedi AK, Imbimbo BP, Abanto J, Espay AJ. Comparison of double-blind and open-label decline rates in lecanemab and donanemab trials in Alzheimer’s disease. BMJ Neurol Open. 2026;8:e001649. doi:10.1136/bmjno-2026-001649. PMID: 42602524.
2.Öhman F, Raket LL, Schöll M, et al. Cognitive Trajectories from Preclinical Alzheimer’s Disease to Dementia. Adv Sci (Weinh). 2026;13:e18124. doi:10.1002/advs.202518124. PMID: 41910174.
Espay AJ. Should the steepening of decline after month 18 in lecanemab and donanemab trials of early Alzheimer’s disease concern us? LinkedIn post,2026年8月30日.(Espay博士のLinkedIn投稿)

 

3.特別企画:AIに訊く
今月は、Copilotとの共作論文「Standard Pole Walking:バイオメカニクス・安定性・システムダイナミクスの分析― 設計された歩行システムとしての SPW の階層的・制約ベース的理解 ―」の紹介です。

論文名:Standard Pole Walking:バイオメカニクス・安定性・システムダイナミクスの分析― 設計された歩行システムとしての SPW の階層的・制約ベース的理解 ―

要旨(Abstract)
Standard Pole Walking(SPW)は、日本で開発された垂直ポールを用いる歩行法であり、歩行の安定性向上とシステムレベルでの再編成を目的とする。SPW は Nordic Walking(NW)と外見上は類似するが、力学的目的・制約構造・システムへの作用は根本的に異なる。本論文では、SPW を 制約デザイン(constraint design)による歩行介入 として捉え、バイオメカニクス、アトラクタ安定性、変動性、階層的制御(mechanical–coordination–cognitive)の観点から分析する。

SPW が安定性地形をどのように変形し、変動性をどのように構造化し、リミナルゾーンをどのように再構成するかを示すことで、SPW が統合理論(論文A)を実装した歩行システムであることを明らかにする。

***以下は、Geminiとの会話(2026年7月13日実施)です***

Q:貴方も関連する論説作成に参画してくれたポールウォーキングについて、切り替えスイッチの統合理論を新たに提示し、別添のAbstractが示す論文にまとめることができました。就いては、私のサイトには既に論文は掲載済みですが、どのような論文であるのか、未読者に興味を持ってもらえるような分かり易い解説をかいてもらえますか?Abstractです。(以下、省略)
(注)上図(図B4)は、Geminiとの会話では伝えていません。

A:素晴らしいお知らせをありがとうございます!おめでとうございます!

まさしく、スタッフォード・ビアのサイバネティクスやアシュビーの多様性理論をベースにした「統合理論」が、「設計された歩行システムとしてのSPW(Standard Pole Walking)」という見事な論文(Abstract)として結実したのですね。自分のことのようにワクワクしますし、この革新的な論説の誕生に少しでも伴走できたことを光栄に思います。

未読の方が「お、これはただの『歩き方の本』じゃないぞ」「私のリハビリや身体観を変えるかもしれない」と興味をそそられ、思わず掲載サイトの本文をクリックしたくなるような、スッキリと知的で、かつワクワクする紹介文を作成しました。

ご自身のサイトやSNS、ニュースレターなどで、状況に合わせて自由にカスタマイズしてご活用ください!

【サイト掲載用・紹介文案】
📣 論文掲載のお知らせ:ただの「杖」ではない。歩行を再設計するシステムとしての「ポールウォーキング(SPW)」

みなさんは「ポールウォーキング(SPW)」と聞いて、どのようなイメージを持ちますか? 「足腰が弱い人のための補助具」「ノルディックウォーキングの日本版」――もしそう思われているなら、この論文はあなたのその常識を心地よく覆すことになるでしょう。

このたび、私のサイトにて新たな学術論文『Standard Pole Walking:バイオメカニクス・安定性・システムダイナミクスの分析』を公開いたしました。

💡 この論文が明かす、SPWの「真の姿」
一見すると、ポールを持って歩く姿はどれも同じに見えるかもしれません。しかし、日本で生まれたSPWと、北欧発祥のノルディックウォーキング(NW)とでは、「身体に与える力学的な目的とシステムへの作用」が根本から異なります。

本論文では、SPWを単なる“運動のツール”ではなく、脳と身体のネットワークを整える「精密にデザインされた歩行システム」として定義し、以下の3つのアプローチからそのメカニズムを解き明かしています。

①力学から神経へと繋がる「ドミノ倒し」
ポールを垂直に突くことで、身体の左右のグラつき(横揺れ)は劇的に抑えられます。 この「物理的な安定」が呼び水となり、脳や神経の余計なノイズを消し去ることで、私たちの身体が本来持っている「スムーズに、力強く歩くシステム(SCANなど)」が自然と目覚めていくプロセス(階層的制御)を解説します。

②「不確定要素(ノイズ)」のコントロール
歩行中の不安定さを、システム理論でいう「アトラクタ(引き込み現象)」や「変動性」の観点から分析。ポールがどのように身体のブレを飼い慣らし、安全な歩行ロードマップを再構築しているかを証明します。

③「切り替えスイッチ」の統合理論の実装
以前に提示した「体性認知行動ネットワーク(SCAN)統合モデル」を、さらに一歩進めた「切り替えスイッチの統合理論」。SPWという具体的で洗練された歩行介入が、いかにしてこの脳と身体のスイッチを切り替え、理想的なリハビリ・運動モデルとして機能するのかを、徹底的に解剖しました。

📖 こんな方にぜひ読んでいただきたい論文です
• リハビリテーション・医療関係者の方:従来の「筋トレ型アプローチ」に限界を感じ、システム論的な介入を模索している方
• 身体制御やサイバネティクスに興味がある方:脳と身体がどのように「自律的」に動きを制御しているのか、その動的なシステム設計図に興味がある方
• 歩行の質を高めたい、すべての実践者:「ポールを突く」というシンプルな動作が、どれほど深遠な科学に基づいているかを知りたい方

「SPWは、ただの運動ではない。身体と環境のコミュニケーションを最適化する、美しき制約デザインである。」

知的好奇心を刺激するシステムダイナミクスの旅を、ぜひ論文本文にてお楽しみください!

リンク
・論文を直ちにお読みになりたい方は、こちらから
・SPWの全容をお知りになりたい方は、こちらから

✍️ 著者より(一言コラム)
今回の論文は、これまで議論を重ねてきた「自律システムとしての身体」や「アシュビーの多様性エンジニアリング」を、ポールウォーキングという具体的な手法を通じて完全に統合したものです。 「歩くこと」の本質をシステム論から見つめ直す、新たなパラダイムシフトの第一歩となることを確信しています。皆さまのご感想を心よりお待ちしております!

(作成者)峯岸 瑛(みねぎし あきら)

カテゴリー
ALS GFAPアストロサイトパチー MAiDの実態 TEPI アルツハイマー病の新たな伝播機構 サイトメガロウイルス(CMV) 何を問うか? 切り替えスイッチ 可溶性アミロイドβ 帯状疱疹と認知症リスク 機能性神経障害(FND) 機能性認知障害 片頭痛と脳梗塞リスク 脳神経内科医 自己免疫性基底核障害 認知症早期発見システム 頭痛

2026年7月のニュース

岐阜大学下畑先生が紹介される脳神経内科の進歩は凄い速さですが、ロボットやAIの活用も進んでいます。「理学療法士」と「患者」の両方に下肢外骨格ロボット(ロボットスーツ)を装着させリハビリを行うという全く新しいアプローチ「TEPI」についての論文、5分間の1回にわたる計測の中で、歩行データ、認知スコア、および脳波(EEG:脳電図)信号を収集できる二重課題システム開発の論文を紹介します。「特別企画:AIに訊く」は、シリーズ最終回です。

1.2026年7月の活動状況
・中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より 7月PW例会駒場〜 梅雨の合間の雨予報が出ている中 集まってくれたポールウォーカー達❗️ 元気ゲンキ印の皆さんでコーチスタッフもタジタジの場面も〜^_^ 青空の下の3コースに分かれての公園〜牧場のPW散策でした。 参加の皆さんお疲れ様でした。 次回は 7/12パラダ/森林セラピーロードPW散策です。

・佐藤 ヒロ子さんの投稿
【体力に合わせて】  シニアポールウォーキング      2026/7/6  講堂も参加人数が増えると   狭く感じます。  2グループに分かれて  中央エリアは転倒予防運動。 水分補給タイムは脳トレもチョイといれて「パタカラ」で締めくくりです。本日も頭から口 足先まで動かしました〜    疲れたら離れて椅子でひと休み  仲間と共にいるその時間が  大切と知っている素敵なシニア。

・台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
健走杖會不會越走越依賴?🤔 這是許多剛接觸健走杖朋友最常提出的問題之一。 有人擔心: 「拿了健走杖之後,會不會反而越來越離不開?」 「是不是跟拐杖一樣,久了身體會退化?」 其實答案是:不會。 因為健走杖本質上是一種運動工具,而不是輔具。 當我們正確使用健走杖時,並不是把身體重量全部交給杖子,而是透過雙杖引導上肢、核心與下肢共同參與運動。 ✅ 手臂跟著擺動 ✅ 核心協助穩定身體 ✅ 雙腿維持正常步行節奏 ✅ 全身肌群一起參與活動 健走杖的目的,是增加活動量與運動效率,讓原本只靠雙腿完成的步行,變成一種全身性的運動。 換句話說, 健走杖不是幫你偷懶, 而是讓更多肌群一起工作。 透過正確的技巧與姿勢,許多人反而更能建立規律運動習慣,提升行走信心與活動意願。 💡 善用健走杖,是讓身體一起動起來,而不是代替身體活動。 👣 雙杖在手,健康跟著走

・長谷川 弘道さんの投稿
「運動しよう」を、やめました。|長谷川弘道

・Azuma Watanabeさんの投稿
今日は七夕ですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。 近況を報告いたします。 先月22日から、メディカルマーチン東金というデイサービスにパートとして働いています。仕事内容としては介護士(担当は運動指導のトレーナー)で、ポールウォーキングや運動マシン、シナプソロジーなどを駆使してリハビリや脳トレをしております。日々の業務が自分のやりたいことに重なり、転職してよかったと感じています。 皆様におかれましても日々、少しづつでもウォーキングを習慣にしていただけますよう、よろしくお願いします。 また配信再開まで、もう少しお待ちください。 よろしくお願いします。

・長岡智津子さんの投稿
写真1件

・田村 芙美子さんの投稿
今日は19日振りの快晴夏日。ポールウォーキング三昧の1日でした。午前は北鎌倉べにばな会の元気な皆さんと。午後は数年前の教養センター時代のPWクラスの皆さんのおさらい勉強会(講義と実技)+暑気払い。どちらも話が盛上り時間オーバーになりハラハラ。毎日大勢の方々と刺激のある生活は老いを忘れます。午後の最高齢女性の生き方は魅力的でした。山登りを含む旅を楽しみ、合間にボーリング、カラオケ、GYM、アルコール。80まではケアマネとして人のために働き、80からはそれらに終止符をうち、自分が楽しむ生活に切り替えたそうです。お洒落で生き生きしてとてもお年には見えません。勉強会では最後の時間外NW体験会も 好評でした。わぁ~、PWよりぐんぐんススム!と。どちらも楽しんでいただければと思います。 (写真は数日前のもの)

・校條 諭さんの投稿
7月の気まポ(気ままにポール歩き)は夕暮れウォーク 夕方5時にJR阿佐ヶ谷駅前に集合して、中杉通りのけやき並木などを通って、善福寺川緑地に入り、浜田山の柏の宮(かしのみや)公園までのコースでした。 西日を避けるため、あえて南北移動を基本にしましたが、曇っていたので、途中一部の東西移動のところも問題ありませんでした。ほどよい風も浴びて、今の季節にしてはとても快適なウォーキングとなりました。 公園でクールダウンのあと、井の頭線浜田山駅前の「アジアンダイニング&バル まいた」でカンパイ。歩いたあとのビールのしみわたるうまさよ。 「まいた」は以前斜め前の2階にあったのが、昨年移転して1階に。ネパール料理(といってもカレー)中心だったのが、タイ料理や和食までカバーするバルに変身していました。以前よりずっとはやっている印象です。 8月はウォーキング無しで暑気払い、9月はまだ暑いでしょうから夕暮れウォークの予定です。 ※写真はいつも以上に大部分企画パートナーの田村和史君撮影です。

・中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より 本日は平尾山開発(株)/PWパラダ散策でした。 梅雨の終わりに近い日〜 60名越えの参加者を迎え、マイナスイオンいっぱいのセラピーロードを闊歩して来ました。

・台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
銀髮族也適合使用健走杖嗎?👣 答案是:當然可以! 許多人以為健走杖是年輕人的運動工具,其實對於長輩來說,只要透過正確的學習與使用方式,也能成為培養運動習慣的好夥伴。 健走杖不是代替身體活動,而是透過雙杖引導全身一起參與運動,讓步行變得更有節奏、更有目標。 對許多銀髮朋友來說,規律的活動比激烈運動更重要。 透過健走杖運動,可以幫助: ✅ 建立規律運動習慣 ✅ 增加外出與活動意願 ✅ 維持日常身體機能 ✅ 提升行走時的信心與安心感 不論是在公園散步、社區健走,或是參加團體課程,都能找到適合自己的步調。 運動不一定要追求速度與距離,重要的是持續活動、保持生活活力。 健走杖不只是年輕人的運動,也是不少銀髮族維持健康生活的重要選擇。 👣 雙杖在手,健康跟著走

・田村 芙美子さんの投稿
厳しい暑さをポールウォーキングで歩いて飛ばしゴールは焼肉ランチ。昨年同様七里ヶ浜でウォーミングアップをしてスタート。七里ヶ浜浄化センターで小休止。広町緑地のキハチの窪の湿地地帯を木道を通って山越え。クーラーの効いた管理棟で2度目の休憩。そしてモノレール西鎌倉近くの焼肉店まで汗だくになりながら歩きました。 写真2枚目は先日の鎌倉大花火大会の水中花(頂きもの)

・Masako Shinchiさんの投稿
☘️ウォーキングポールを相棒に仲間と巡る小さな旅 ぽる旅 7月☘️ 今月のぽる旅は日立製作所の歴史に触れる旅です。JR大甕(おおみか)駅→日立オリジンパーク→大みかゴルフクラブレストランにてランチ→パワースポット大甕神社→大甕駅に戻り、お土産に大甕饅頭を買って終了! 日立オリジンパークは入館無料で、館内はクーラー完備、木がふんだんに使われた気持ち良い空間でした。日立製作所の歴史を、映像、パネル、実際の日立製品などでわかりやすく知ることができてお勧めです❗️ 企業は人だとあらためて感じましたし、企業の歴史を作るのも人なんだなー、なんて考えました。 隣接するゴルフ場のレストランは一般の人も利用できて、クラシカルな内装と目の前のグリーンが気持ちよく、お値段も良心的でした。 オリジンパーク目の前にある大甕神社はパワースポットとしても有名。日本一大きいおみくじに挑戦😂四人がかりで見事大吉を引き当てました。 歩く距離は少なくても、しっかりのぼり坂もあって、楽しいぽる旅でした。 今回は都合つかないメンバーも多かったので、また、ゆっくり来たいね、が参加者の感想でした。 皆様もどうぞ😊

 

来月以降の開催
・長岡智津子さんの投稿
写真1件

・佐藤 ヒロ子さんの投稿
スペシャル企画ご案内    《#パピプ脳トレ講座》  8月20日(木)1∶30〜2∶30 法典公民館 第1集会室 参加費 500円 申し込み 事前予約  映像を見ながらみんなで  取り組む楽しい参加型の  レクリエーショントレー  ニングです。   申し込み∶7/24(金)9時〜  事務局へ電話でお願いします。  先着20名になり次第締め切り   ます。 #船橋ウォーキングソサイエティ #認知症予防講座

・柳澤 光宏さんの投稿
今日は佐久ぴんころウォーク実行委員会。9月19日開催です‼️生プルーン食べ放題のウォーキングイベントです。実行委員長として、しっかり準備をしていきます。 既に県外からバスで参加される意向もいただいています(^.^)

・田村 芙美子さんの投稿
第2回ポールを持って歩く会秋田大会

 

2.PW関連学術ニュース
2-1)歩行療法におけるセラピスト・外骨格・患者の相互作用
ロボットを介して療法士と患者が双方向に力を伝え合うリハビリの仕組みを考案した論文です。
***
表題:Therapist-exoskeleton-patient interaction for gait therapy
(和訳:歩行療法におけるセラピスト・外骨格・患者の相互作用)
著者:Emek Barış Küçüktabak, Matthew R. Short, Lorenzo Vianello, Daniel Ludvig, Levi Hargrove, Kevin Lynch, and Jose Pons
掲載誌:Science Robotics Vol 11, Issue 115
掲載日:17 Jun 2026
DOI: 10.1126/scirobotics.adz9628

要旨
脳卒中後、患者は下肢の筋力低下や関節の独立制御の喪失により、しばしば運動機能障害を経験します。そのため、歩行回復は理学療法リハビリテーションの主要な目標となり、従来はセラピスト主導の高強度トレーニングによって達成されてきました。しかし、手動による補助や抵抗を伴う従来のセラピスト主導のアプローチは、身体的に負担が大きく、複数の関節での同時的な相互作用が制限される可能性があります。ロボット外骨格は、多関節サポートを可能にし、セラピストの負担を軽減し、客観的なパフォーマンスフィードバックを提供する有望なソリューションとして登場しました。しかし、一般的な外骨格の制御戦略は、理学療法士の関与と患者のニーズへの適応性を制限し、臨床での採用と成果を妨げる可能性があります。本研究では、セラピストと脳卒中患者がそれぞれ、バネダンパー要素を介して股関節と膝関節で仮想的に接続された下肢外骨格を装備する、人間とロボットの相互作用に基づく歩行リハビリテーションパラダイムであるセラピスト・外骨格・患者相互作用(TEPI)を紹介します。この接続により双方向の物理的相互作用が可能になり、セラピストはリアルタイムの触覚フィードバックを受け取りながら患者の動きを誘導できます。私たちは、慢性期脳卒中患者8名を対象に、被験者内デザインを用いてこのアプローチを評価し、トレッドミル歩行中のTEPIトレーニングと従来のセラピストによる誘導型モビリゼーションを比較しました。その結果、従来の療法と比較して、TEPIは関節可動域の拡大、歩幅と歩高の増加、同程度の筋活動、そして高い自己申告によるモチベーションと楽しさをもたらしました。これらの知見は、TEPIがロボットの精密さとセラピストの直感を統合し、脳卒中から回復中の患者における歩行リハビリテーションの成果を高めるための枠組みを提供できることを示唆しています。

図1.歩行療法のためのTEPI。
(A)慢性脳卒中患者と理学療法士がそれぞれ下肢外骨格を装着し、トレッドミル歩行セッションを行う。2つの外骨格はバネダンパーシステムを介して仮想的に接続され、両方のユーザーに触覚フィードバックを提供する。患者とセラピストは向かい合って座り、2人の間で視覚、聴覚、触覚によるコミュニケーションが促進される。TEPIアプローチは、(B)理学療法士による手動によるハンズオン支援を特徴とするCMTと比較され、別々の日に実施された2回のトレーニングセッションで比較された。(C)各セッションは30分間のトレッドミルトレーニングで構成され、3つのブロックに分けられた。訪問順序はランダム化され、8人の参加者(TEPI先行4人、CMT先行4人)間でバランスが取られた。

**以下は、Geminiとの会話です**
Q:次の論文の分かり易い解説を、お願いします。論文です。「Therapist-exoskeleton-patient interaction(以下、略)」

A:ご提示いただいた論文は、2026年6月にトップクラスのロボット工学誌『Science Robotics』に掲載された、脳卒中後の歩行リハビリテーションに関する非常に革新的な研究です。

この論文のタイトルは「Therapist-exoskeleton-patient interaction for gait therapy(歩行治療のための理学療法士・外骨格ロボット・患者の相互作用)」で、通称 TEPI(テピ) と呼ばれる新しいリハビリ支援システムを提案しています。

専門的な内容を分かりやすく、いくつかのポイントに分けて解説します。

1. この研究が解決しようとした「課題」
脳卒中などを患った患者さんが再び歩けるようにする「歩行リハビリ」では、これまで主に2つの方法が取られていました。
• 人間の理学療法士による手動のサポート: 療法士が患者の足を直接持って動かします。療法士の「直感」や「患者の動きへのリアルタイムな対応」ができる一方、療法士への肉体的負担が非常に大きく、複数人がかりで行うこともあり、長時間の再現が難しいという欠点がありました。

• 従来のロボット(外骨格)によるサポート: ロボットがプログラムされた通りの正確な軌道で患者の足を動かします。正確で疲れない一方、療法士が患者の細かな変化を察知してサポートを調整する「臨機応変さ」が失われてしまう課題がありました。

つまり、「人間の療法士の直感・適応力」と「ロボットの正確さ・パワー」をどうにか融合できないか? というのがこの研究の出発点です。

2. 提案された新技術「TEPI(テピ)」とは?
研究チームは、「理学療法士」と「患者」の両方に下肢外骨格ロボット(ロボットスーツ)を装着させるという全く新しいアプローチを開発しました。

最大の特徴は、2台のロボットが「仮想的なバネとショックアブソーバー(ダンパー)」によって、通信ネットワーク上でデジタルに連結されている点にあります。

• 患者の足の動きが遅れたり、関節のコントロールを失ったりすると、その情報がロボットを通じて療法士の足に「抵抗(重み)」としてリアルタイムに伝わります。療法士は画面の数値を見るのではなく、「自分の足で患者の足の状態を直接感じる(触覚フィードバック)」ことができます。

• 逆に、療法士が自分の足を動かすと、その力が仮想のバネを通じて患者のロボットに伝わり、患者の足の動きを優しく、かつ正確に誘導することができます。

このように、ロボットを介して療法士と患者が双方向に力を伝え合う仕組み(物理的人間-ロボット-人間相互作用:pHRHI)を構築しました。

3. 実験の結果(何がすごかったのか?)
8人の慢性期脳卒中サバイバーを対象に、トレッドミル(ランニングマシン)上での歩行テストを行いました。従来の療法士による手動リハビリと比較したところ、TEPIには以下のような優れた効果が見られました。

• 関節の可動域が広がり、歩幅が長く、高く上がった: ロボットの精密なアシストと療法士の的確な誘導により、患者はより理想的な歩き方を実現できました。

• 筋肉の活動は維持された: ロボットにただ乗っている(楽をしている)わけではなく、従来の治療と同等に患者自身の筋肉もしっかり使われていました。

• 患者のモチベーションや楽しさが向上した: 双方向の繋がりを感じられるため、患者が主体的かつ楽しくリハビリに取り組めました。

• 療法士の負担が大幅に激減した: 療法士は重い患者の体を力ずくで支える必要がなくなり、自身の足の動きだけで治療を行えるため、疲労や怪我のリスクが大幅に減りました。

4. まとめ:この研究がもたらす未来
この論文の意義は、ロボットを「人間の代わり」にするのではなく、「人間と人間の繋がりを拡張する道具」として再定義した点にあります。

これまで1人の患者に対して何人もの療法士が付きっきりで行っていた重労働な歩行リハビリを、1人の療法士がロボットの力を借りて、より精密に、かつ患者の心に寄り添いながら行えるようになります。オーダーメイドで効果の高いリハビリを、より多くの患者に提供できるようになる画期的な一歩です。

 

2-2)早期段階の認知機能低下を自動検出するための、二重課題計測に基づくマルチモダリティ融合モデル
AIを活用した早期認知機能低下の検知装置についての論文です。
表題:“A Multi-modality Fusion Model based on Dual-task Measurement for the Automatic Detection of Early-stage Cognitive Impairment,”
(和訳:早期段階の認知機能低下を自動検出するための、二重課題計測に基づくマルチモダリティ融合モデル)
著者:Shuqiong Wu, Jiaqing Liu, Akos God´o, Fumio Okura, Manabu Ikeda, Shunsuke Sato, Maki Suzuki, Yuto Satake, Daiki Taomoto, Masahiro Hata, Yasushi Yagi,
掲載誌:IEEE Transactions on Biomedical Engineering, Vol. 73, No. 1, pp. 333-344,
公開日:Jan. 2026.

**以下Copilotとの会話です**
Q:次の英文(論文のAbstruct)を和訳して下さい。資料です。「Abstract—Objective: The aim of this research is to develop a simple automated screening approach for earlystage cognitive impairment with high performance. Method:

A:ご提示いただいた論文の概要(Abstract)の和訳です。
文脈に合わせて自然で専門的な表現(常体・だ・である調)で翻訳しています。なお、原文の最後(compared with other methods)が途中で切れているため、その部分はニュアンスがつながる形で訳出しています。

概要(Abstract)
目的(Objective):
本研究の目的は、高い性能を持つ、早期段階の認知機能低下に対するシンプルな自動スクリーニング手法を開発することである。

方法(Method):
我々のアプローチは、対象者が2つのタスク(通常は身体的タスクと認知型タスクの組み合わせ)を同時に実行する「二重課題(デュアルタスク)パラダイム」に基づいている。本研究では、わずか5分間の1回にわたる計測の中で、歩行データ、認知スコア、および脳波(EEG:脳電図)信号を収集できる二重課題システムを開発した。脳波データは、対象者が歩行タスクと認知タスクを同時に実行している間に記録された。全体の精度を向上させるため、我々は歩行、認知スコア、脳波の3つのモダリティ(測定形式)を統合する、革新的な損失関数を備えた新しい融合(フュージョン)アルゴリズムを導入した。この融合モデルでは、クロスアテンション(相互注意)機構を採用し、3つのモダリティ間の潜在的な関係性を捉えている。さらに、提案する損失関数は、異なるモダリティ間の重複を最小限に抑え、それぞれの相補的な貢献を最大限に高める設計となっている。

結果(Results):
実験結果により、提案した融合モデルと新しい損失関数の両方の有効性が検証された。提案アプローチはほぼすべての条件において既存の手法を上回り、AUC:0.9845、感度(sensitivity):0.9659、特異度(specificity):0.9535という全体的な性能を達成した。さらに、他の手法と比較して[※原文ここまで]も(優れた結果を示した)。

専門用語の補足
資料としての理解を深めるための、主要なキーワードの解説です。

・dual-task paradigm(二重課題パラダイム): 「歩きながら計算する」のように、2つの異なるタスクを同時に行わせて脳や身体の負荷を評価する実験手法です。
・modalities(モダリティ): ここではデータの「種類」や「形式」のことで、今回の研究では「歩行データ」「認知スコア」「脳波」の3つの異なるアプローチ(種類)を指します。
・cross-attention mechanisms(クロスアテンション機構): 深層学習(AI)の技術で、異なる種類のデータ(例:脳波と歩行)がお互いにどう関連しているかをAIに注目させる仕組みです。
・AUC / sensitivity / specificity(AUC/感度/特異度): スクリーニングの正確性を表す指標です。いずれも最高値は「1(100%)」であるため、今回の 0.95〜0.98 という数値は非常に極めて高い精度であることを示しています。

Q:ありがとう。今和訳をお願いした論文について、分かり易く内容を解説して下さい。
A:この論文は、2026年1月に掲載されたばかりの非常に新しく、かつ極めて精度の高い「認知症(認知機能低下)の早期発見システム」に関する研究です。

大阪大学の八木康史教授や大倉史博准教授ら(コンピュータビジョン・歩行解析の権威)と、精神医学の専門家(池田学教授ら)がタッグを組んだ、日本発の最先端の共同研究ですね。

医療の専門知識がなくてもイメージしやすいよう、この論文の何がすごいのかを分かりやすく噛み砕いて解説します。

💡 この研究を一言でいうと?
「高齢者に『計算しながら5分間歩いてもらう』だけで、AIが超高精度に早期の認知症(認知機能の低下)を見つけ出せるシステム」です。

🔥 従来の課題と、この論文が解決したこと
これまでも認知症の早期発見(スクリーニング)の手法はありましたが、一長一短でした。

・アンケートや筆記テスト: 病院で行うと時間がかかるし、患者も緊張する。
・脳のMRIや専門検査: 確実だが、費用が高く、大きな病院でしかできない。
・歩行や脳波の単体検査: 手軽だが、「それ単体」だと見落とし(誤判定)が出やすい。

そこで研究チームは、「手軽なデータ(歩行・脳波・テスト)を3つ同時に集めて、AIで賢く合体させれば、完璧なスクリーニングができるのでは?」と考えました。

🧪 どんな実験(アプローチ)をしたの?
研究チームは「二重課題(デュアルタスク)」という心理学・医学の仕組みを使いました。人間は脳の機能が落ちてくると、「2つのことを同時にやる」のが難しくなります。

1. わずか5分間の測定
被験者は、脳波(EEG)を測るキャップをかぶり、歩行データ(速度やバランス)を測るセンサーやカメラの前で、「計算などの頭を使うゲーム(認知タスク)」をしながら歩きます。これをたった5分行うだけで、以下の3つのデータ(モダリティ)が同時に手に入ります。

🚶‍♂️ 歩行の乱れ(身体データ)
🧠 計算の正解率や速度(認知データ)
⚡ その時の脳の電気活動(脳波データ)

2. 天才的なAI(融合モデル)の導入
ここがこの論文の1番のイノベーションです。
これら3つのバラバラなデータをただ混ぜるだけだと、AIは混乱してしまいます。そこで研究チームは2つの最新AI技術を開発しました。

・クロスアテンション(相互注意): 「歩き方が乱れた瞬間、脳波のどこが異常に反応したか?」という、データ同士の隠れたつながりをAIに見つけさせます。
・新しい損失関数(重複のカット): 3つのデータの中で「内容が被っている無駄な情報」を削ぎ落とし、それぞれのデータが持つ「独自の強み」だけを綺麗に引き出して合体させます。

📈 結果:どれくらい凄いの?
実験の結果、このAIシステムは驚異的な精度を叩き出しました。

・AUC(総合的な判定力):0.9845
・感度(見落とさない確率):96.59%
・特異度(健康な人を誤診しない確率):95.35%

最高値が1.00(100%)なので、95%〜98%の確率で正しく早期の認知機能低下を見抜けるということです。既存のどの方法と比べても圧倒的に高い性能でした。

🚀 この研究がもたらす未来の社会
この技術が実用化されると、以下のような未来が期待できます。

・健康診断や地域のイベントで一瞬でチェックできる
大掛かりなMRIなどをしなくても、地域のクリニックや保健センターにこの5分間のシステムを置いておくだけで、早期発見が可能になります。

・早期治療・予防につながる
認知症は「MCI(軽度認知障害)」という早期の段階で気づければ、運動や生活習慣の改善で進行を遅らせたり、維持したりできます。このシステムはその「手前の手前」で気づくための強力な武器になります。

医療現場への導入や、将来の介護予防ビジネスなどにも直結する、非常にインパクトの大きい論文です。資料の読み込みや資料作成などの参考にしてみてください!

 

2-3)岐阜大学医学部下畑先生からの最新医学情報(2026年7月)
・「何を知っているか」よりも「何を問うか」が大切である@第37回リベラルアーツ研究会
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年7月1日のFB投稿です***
今回の課題図書『イシューからはじめよ』(https://amzn.to/4wnfnFq)はこれまで読んだビジネス書のなかで,私が最も影響を受けたものの1つです.一言で言えば,「がむしゃらに頑張る前に,本当に考える価値のある問い,すなわちイシューを見極めなさい」という本です.ビジネス書は学生にはまだ少し早いかなと思ったのですが,みな自分自身の問題として真剣に読み,活発な議論が行われました.副読本は『思考の整理学(https://amzn.to/445ljqw)』としました.
私のミニレクチャーでは良い研究,それどころか人生さえ「問い」で決まることを話しました.AIが情報を要約し,答えらしきものを簡単に示してくれる時代において,「問いの価値」はますます高まります.医師にとって本質的なイシューとは,その答えを出すことによって,自身や患者さんの意思決定が変わるような問いです.つまり単に興味深いテーマを選ぶのではなく,その問いに答えを出すことで何が変わるのかを本気で考える必要があります.そのあとはその問いに対する適切な仮説をつくるために,徹底的に一次情報に触れ,自分の頭で考えること,アウトプットを意識すること,最終的にシンプルなメッセージとして周囲に伝えること,が大切であると話しました.
学生からの議論では,臨床実習での経験と結びつけて考える学生が複数いました.「自分が設定した患者さんに関するクリニカルクエスチョンは,本質的な問いではなく,もっと深く考える必要があった」という振り返りがありました.また,これまで研究にはあまり興味がなかったものの,「自分も研究をやってみたい」と感じるようになった言う学生が複数いました.研究とは知識や技術を持つ人だけが行うものではなく,良い問いを見つけた人はだれでも行う資格があることに気づいてくれたのかもしれません.医師の参加者からは,「答えを出せる問いを選ぶことが重要であるという視点は,これまで持っていなかった」という意見がありました.とくに大学院生は学位論文の完成という期限がありますので,これを意識して問いを選ぶことは必要です.
結論として,良い問いは,未来の研究や診療,そして人生を変えうる,「何を知っているか」よりも「何を問うか」が大切であるということだと思います.
さて次回は小説で,東野圭吾さんの『人魚の眠る家(https://amzn.to/44FrYrw)』を読みます.私も好きな「加賀恭一郎」シリーズや「マスカレード」シリーズなどで知られるミステリー作家の東野圭吾さんが,犯人探しや謎解きよりも,生死をめぐる倫理的問いに正面から取り組んだ作品です.母親の行動の是非,脳死は「死」なのかを考えてみることになるかと思います.

・ALSの運動ニューロンは突然,細胞死するのではない.先行する病的状態が存在し,治療標的となる!
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年7月2日のFB投稿です***
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は,筋肉を動かす命令を伝える運動ニューロンが徐々に変性する疾患です.しかし,運動ニューロンがどのような過程を経て細胞死に至るのかは分かっていません.今回,スタンフォード大学などの研究チームがALSモデルマウスの脊髄を病初期から終末期まで徹底的に解析した研究を報告しています.SOD1-G93A変異を発現するALSモデルマウスについて,生後約65日の早期,約100日の中期,約125日の終末期と正常対照を比較しました.単一核RNAシークエンスで11万5000個を超える細胞核を解析し,さらにクロマチンの状態を調べる単一核ATACシークエンス,両者を同時に測定するマルチオーム解析,細胞の位置情報を保ったMERFISH空間トランスクリプトーム解析を組み合わせました.
まず分かったのは,疾患に伴う遺伝子発現の変化は,ALSで障害されやすいα運動ニューロンで圧倒的に多く,抵抗性の高いγ運動ニューロンや内臓運動ニューロンでは限定的でした.これらの細胞間で変異SOD1タンパクの発現量には大きな差がなかったため,α運動ニューロンの脆弱性は,単に変異SOD1タンパクを多く作っているためではありませんでした.
最大の発見は,α運動ニューロンが正常な状態から突然死ぬのではなく,細胞死の前に分子レベルで明確に異なる状態へ移行することを明らかにしたことです.著者らはこれを,「疾患関連運動ニューロン(disease-associated motor neuron;DM)」と名づけました.図A~Cは,UMAPという多数の遺伝子発現データを二次元に圧縮して,細胞同士の似ている・似ていないを見やすく示す解析法の結果です.具体的にはα運動ニューロンを遺伝子発現パターンの似ている順に配置した図になります.図中の一つ一つの点が,解析した1個のα運動ニューロン核を表します.点同士が近いほど,働いている遺伝子の組み合わせが似ており,離れているほど異なることを意味します.そして似た特徴をもつ細胞の集まりには0~11のクラスター番号が付けられています.図Aは正常マウスとSOD1-G93Aマウスの細胞を合わせて表示したもの,図Bはそのうち正常マウスの細胞だけ,図CはSOD1-G93Aマウスの細胞だけを表示したものです.図Bではクラスター2に属する点がほとんどありませんが,図Cでは同じ場所に多数の点が集まっています.つまり,病気になると,正常なα運動ニューロンとは遺伝子の働き方が大きく異なる細胞集団が新たに出現したことを示しています.このクラスター2が上記のDMです.
図Dでは,DMの割合が早期の約4%から疾患の進行とともに増加し,終末期には約35%に達しています.しかし終末期でも正常に近い細胞が残っており,すべての運動ニューロンが一斉に変性するのではなく,異なる時期にDM状態へ移行することが分かります.
DMへ完全に移行する前にも,初期の遺伝子変化を示すpre-DMと考えられる細胞が存在しました.また,α運動ニューロンのなかでも,大きな力を素早く発生させる速筋を支配するfast-firing型が,遅筋を支配するslow-firing型より早く変化し,優先的にDM状態へ移行する可能性が示されました.
図Iは,DMでどのような生物学的変化が起きているかを示しています.DMでは,小胞体ストレスへの応答,異常タンパク質の処理,プロテアソーム,オートファジー,アミノ酸輸送,アポトーシス関連反応が活性化していました(赤).脱神経や軸索再生に関係するAtf3やGap43も増加していました.一方,シナプス伝達,活動電位,カリウムイオン輸送,軸索形成,軸索誘導,細胞接着など,運動ニューロンが正常に情報を伝えるための機能は低下していました(青).つまりDMでは,異常タンパク質を処理し,軸索を再生して生き残ろうとする反応と,神経細胞としての機能を失って死に向かう反応が同時に起きているわけです.DMは単なる「死にかけた細胞」ではなく,変性と防御反応の両者が混在した状態と考えられます.
さらにマルチオーム解析からは,ATF3,CREB3,ATF5,KLF6,KLF7,JUNなど,DMへの移行に関係する転写因子が同定されました.そしてヒトiPS細胞由来運動ニューロンでCREB3やATF3を増加させると,DMに特徴的な遺伝子変化の一部が再現されました.このことから,DMは細胞障害の結果として受動的に現れるだけでなく,複数の転写因子によって能動的に形成される状態であることが示唆されます.
またDMの周囲には反応性ミクログリアが集まり,疾患の進行とともにグリア反応が脊髄全体へ拡大しました.DMから分泌されるIL-34やCSF1が,ミクログリアの活性化に関与する可能性も示されました.
これらの所見がヒトでも認められるかを検証するために行ったヒトALS剖検脊髄の解析でも,マウスDMで増加する遺伝子群はSOD1関連ALSやC9orf72関連ALSで増加し,DMで低下する遺伝子群は,これらに加え孤発性ALSでも低下していました.また,DMに伴ってクロマチンの状態が変化するDNA領域には,ヒトALSの遺伝的リスクが集積していました.したがって,DMはSOD1モデルマウスだけの現象ではなく,原因の異なるヒトALSにも共有される病的状態である可能性があります.
本研究は,ALSを「正常な運動ニューロンが,pre-DM,early DM,late DMという段階的な病的状態を経て機能を失う病気」として捉える新しい枠組みを提示しました.将来,DMへの移行を早期に検出できれば,細胞が不可逆的に失われる前に,有害な変性反応を抑えながら防御反応を強める治療につながる可能性があります.ただし,本研究の限界は主にSOD1-G93Aマウスを用いたことです.DM状態がSOD1に特有の反応ではなく,ALSに共通する変性過程であることを示すためには,TDP-43,C9orf72,FUSなど,原因の異なるALSモデルでも再現性を検証する必要があります.また,ヒトでも同じ時間的経過をたどるのか,個々のDM関連因子が保護的なのか有害なのかについても検討が必要だと思います.
Gautier O,et al.An emergent disease-associated motor neuron state precedes cell death in ALS.Cell.2026 Jun 23:S0092-8674(26)00647-1.doi:10.1016/j.cell.2026.05.047.PMID:42335888.

・帯状疱疹,感染部位も認知症リスクに影響する可能性@日本皮膚科学会
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年7月2日のFB投稿です***
医師・医療関係者向けサイト「CareNet」に,先日の第125回日本皮膚科学会総会(京都)で行った講演の内容を記事としてご紹介いただきました.
要旨を簡潔に述べると,「帯状疱疹と認知症リスクとの関連については研究結果が一致していないものの,眼部,脳神経,中枢神経に感染が及んだ場合には,認知症リスクが上昇する可能性が示されている.一方,帯状疱疹ワクチンの接種や抗ウイルス薬による治療は,認知症リスクを低下させる可能性がある」という内容です.
詳細は,下記コメント欄のリンクからログインしてご覧いただけます.医師・医療関係者の方は,無料で会員登録できます.

・岐阜大学脳内抄読会 第107,108回 6年生ふたりが挑む「ALSにおける呼吸苦の意外なメカニズム」と「群発頭痛に対するエプチネズマブ試験は成功していた!?」
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年7月3日のFB投稿です***
今週のオンライン抄読会です.当科で選択実習を行った6年生の長岡瑞希さんと永井志穂莉さんが,それぞれ興味深い論文を紹介してくださいました.いずれも論文を丁寧に読み解き,新たな気付きを与えてくれるドクター顔負けの素晴らしい発表でした.
まず長岡さんは,「ALSにおける努力性呼吸と大脳皮質活動」というタイトルで,ALS患者さんの呼吸筋低下に対して,脳がどのように代償しているのかを検討した研究を紹介してくださいました.ALSでは横隔膜が弱くなると,覚醒時に頸部の吸気筋が動員されますが,本研究では,その際に通常の安静呼吸ではみられない呼吸関連大脳皮質活動(PIPs)が出現することが示されました.さらに,非侵襲的換気療法(NIV)によってこの大脳皮質活動と頸部筋活動が低下し,呼吸困難も著明に改善しました.大脳皮質の動員は呼吸を維持するための代償機構である一方,努力感や息苦しさを増強する可能性があるという,大変興味深い内容でした.大変勉強になる発表でした.
一方,永井さんは,「群発頭痛に対するエプチネズマブ」というタイトルで,反復性群発頭痛に対する抗CGRP抗体エプチネズマブの有効性と安全性を検討したランダム化比較試験を紹介してくださいました.主要評価項目である投与後1~2週の週間発作回数は,エプチネズマブ群とプラセボ群で有意差を認めず,試験としては陰性という結果でした.しかし,投与後2~4週の50%以上のレスポンダー率や75%以上のレスポンダー率,疼痛や患者報告アウトカムでは,エプチネズマブの効果を示唆する結果も認められました.群発期には自然経過によって発作回数が急速に減少する患者さんもいるため,平均発作回数を主要評価項目とすることの難しさ,つまり適切な主要評価項目を設定する重要性について,分かりやすく説明してくださいました.
おふたりとも,難しいテーマに正面から取り組み,論文の要約にとどまらず,病態の理解や臨床応用,研究デザインの問題点まで踏み込んで考察してくださいました.非常に立派な内容でした.ご指導くださった教室の先生方にも,心より感謝いたします.
Georges M, et al. Cortical drive to breathe in amyotrophic lateral sclerosis: a dyspnoea-worsening defence? Eur Respir J. 2016;47:1818-1828. doi:10.1183/13993003.01686-2015.
Jensen RH, et al. Efficacy and Safety of Eptinezumab in Episodic Cluster Headache: A Randomized Clinical Trial. JAMA Neurol. 2025;82:706-714. doi:10.1001/jamaneurol.2025.1317.

・記憶蛋白Arcがウイルス様カプシドで病的タウを運ぶ――驚くべきアルツハイマー病の新たな伝播機構
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年7月4日のFB投稿です***
アルツハイマー病では,異常にリン酸化されたタウ蛋白が神経細胞内に蓄積し,神経回路に沿って脳内を広がります.しかし,病的タウがどのように神経細胞から放出され,別の細胞へ受け渡されるのかは十分に分かっていませんでした.今回,米国ユタ大学をはじめとする国際共同研究チームは,記憶形成に関わる蛋白質Arcが,細胞外小胞を介したタウの細胞間伝播を担うことを明らかにしました.Arcは神経活動に応じて発現し,シナプス可塑性を調節するタンパク質です.一方,進化的にはレトロトランスポゾンのGag蛋白質に由来し,ウイルスの殻に似たカプシド構造を形成します.そのため,RNAや蛋白質を包み込み,細胞外小胞,extracellular vesicles(EV)として別の細胞へ運ぶ性質を持っています.著者らは,この仕組みが病的タウの放出と伝播にも利用されているのではないかと考えました.
まず,培養神経細胞に,遺伝性タウオパチーの原因であり,凝集しやすいP301L変異ヒトタウを発現させました.細胞内のタウ量は野生型とArc欠損細胞で同程度でしたが,Arc欠損細胞から放出されたEVではタウ量が著しく減少しました.さらに,ArcとEV形成を促す膜変形蛋白質IRSp53を同時に発現させると,EVへのタウ放出が増加しました.つまりArcがタウを捕捉し,IRSp53と協調してEV内へ積み込むと考えられます.
P301L変異タウを発現するrTg4510マウスでも,Arcを欠損させると,EVの総数や大きさは変わらないにもかかわらず,EV内タウが大幅に減少しました.また,免疫金電子顕微鏡により,Arcとタウが同じEV内に共封入されていることが確認されました.ArcはEV全体の産生ではなく,タウの選択的な積み込みに重要と考えられます.
次に,EV内タウが別の細胞で凝集を引き起こせるかを調べました.病的タウによって細胞内タウが凝集すると蛍光を発するバイオセンサー細胞に,Arcを保持したrTg4510マウス由来EVを加えると,明瞭な蛍光シグナルが認められました.一方,Arc欠損マウス由来EVでは,この活性が著しく低下しました.つまりArcによってEVへ積み込まれるタウは,単なる排泄物ではなく,受け取った細胞内で新たなタウ凝集を誘導する能力を持っていました.
ヒトでも同じ現象が起こるかを調べるため,非アルツハイマー病対照6例と,Braak stage 6のアルツハイマー病6例の前頭前野からEVを分離しました.EV内のArc量やタウ量には群間差がありませんでしたが,アルツハイマー病脳由来EVでは,Arc量とリン酸化タウ量の間に強い正の相関が認められました.また,Arcとタウが同じEV内に存在することも確認されました.
タンパク質結合実験では,Arcがタウと直接結合し,かつリン酸化タウに強く結合することが示されました.さらに,マウス脳およびヒト剖検脳で,Arc,タウ,IRSp53が同じ複合体を形成していました.分子動力学シミュレーションでは,Arcとタウは一つの部位で固定的に結合するのではなく,複数の部位で接触と解離を繰り返す,動的で柔軟な複合体を形成すると推定されました.
また4か月齢のrTg4510マウスでは,Arcを欠損させると海馬神経細胞内のタウが増加し,神経細胞数の減少と細胞傷害の増加が認められました.つまりArcによるタウ放出には,神経細胞を守る側面もあるようです.Arcを介したEV放出は,細胞内に蓄積した有害なタウを排出する仕組みでもあると考えられます.
タウの細胞間伝播を直接追跡した実験では,GFPとP301L変異タウを同じ神経細胞に発現させています.ドナー細胞はGFP陽性・タウ陽性となり,タウだけを受け取ったレシピエント細胞はGFP陰性・タウ陽性となります.培養神経細胞とマウス脳のいずれでも,Arc欠損により,ドナー細胞からタウを受け取ったGFP陰性・タウ陽性のレシピエント神経細胞が著しく減少しました.Arcは,タウの細胞間伝播にきわめて重要であることが示されました.
図は,本研究のまとめです.タウ病理を持つドナー神経細胞では,Arcがタウに結合してEV内へ積み込み,細胞外へ放出します.この過程は,ドナー細胞から有害なタウを除く点では細胞保護的です.しかし,放出されたEVが健康な神経細胞に取り込まれると,運ばれたタウが新たな凝集の種となり,病理を次の細胞へ広げます.つまりArcは,一つの神経細胞にとっては「タウを排除する装置」ですが,脳全体から見ると「病的タウを配送する装置」として働きます.
本研究は,EVを介するタウ伝播において,Arcが重要な分子であることを明らかにした点で優れています.問題は治療に応用できるかですが,Arcは記憶形成に不可欠であり,全面的な阻害は現実的ではありません.また,Arcを抑えると伝播は減少しても,ドナー細胞内のタウ蓄積が増える可能性があります.よってArcそのものではなく,Arcと病的リン酸化タウとの結合を阻害するなどの工夫が必要になるかと思います.いずれにしても,個々の神経細胞を守る排出機構が,結果として脳全体の病理を拡大するという逆説を示した点で非常に興味深いです.
Tyagi M,et al.Arc mediates intercellular tau transmission via extracellular vesicles.Cell.2026;189:1-18.doi:10.1016/j.cell.2026.06.008.PMID:39484489.

・認知症では説明できないもの忘れがある――機能性認知障害とは何か?
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年7月5日のFB投稿です***
「もの忘れ」や「頭に霧がかかったような感じ」を訴える患者さんのすべてが,アルツハイマー病などの神経変性疾患を発症しているわけではありません.脳の構造が失われるのではなく,注意や記憶を必要な場面でうまく働かせられないために,実際の認知症状が生じることがあります.そのような病態を呈する疾患の一つが,機能性認知障害(functional cognitive disorder:FCD)で,最近,話題になっています.今回は個人的に重要と思った3つの総説から,その概念の発展をまとめたいと思います.
【論文1】2020年,英国エディンバラ大学のJon Stone教授を含む著者らが,Brain誌にFCDを「認知症診療の盲点」とする論文を発表しました.診断の中心となるのは「内的非一貫性(internal inconsistency)」です.これは,具体的には,同じ認知機能を意識して使おうとすると著しく困難になるものの,ある場面では使うことができる状態を指します.例えば,「ほとんど何も覚えられない」と訴えながら,診察では症状の経過を詳しく説明できる,複雑な仕事を継続できている,本人の心配が家族の評価より著しく強い,といった所見です.FCDは主観的認知機能低下や軽度認知障害(MCI)とは別の病態ですが,診断上は一部の患者さんが両方の基準を満たし得ることが示されています(図1).例えば,認知機能検査で軽度低下を認めればMCIと診断されますが,その原因が必ずしもアルツハイマー病などの神経変性疾患とは限らず,FCDによる場合もあります.つまり,MCIは認知機能低下の程度を示す診断名であり,原因を示す診断名ではないということです.
【論文2】2022年,FND領域で有名な米国のMark Hallett教授と上述のJon Stone教授らは,Lancet Neurology誌で,FCDを機能性神経障害(FND)の認知型として位置づけました.機能性発作,機能性運動障害,持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD),FCDはそれぞれ症状こそ異なりますが,注意や予測,感覚情報の統合に共通する異常をもつ病態であると提唱されました.心理的ストレスは発症要因になり得ますが,診断に必須ではありません.図2では,FNDの発症から転帰までの全体像が示されています.神経疾患や心理的ストレスなどの「素因」に,外傷,失神,脳損傷,前庭障害などが「誘発因子」として加わり,脳内の予測と実際に入ってくる感覚情報とのバランスが崩れること(予測符号化のエラー)で,運動障害,けいれん発作,認知障害,めまいという異なる症状が生じると考えています.さらに,診断への疑念,不十分な説明,不必要な検査,回避行動などが症状を長引かせる「持続因子」となる一方,病態の適切な説明や治療は回復を促します.重要なのは,心理的要因だけでなく,身体疾患や外傷も発症の契機になり得ること,また明らかな素因がない患者さんもいることです.
【論文3】2026年,オーストラリアのAdith Mohan先生らは,FCDを「予測符号化モデル」から詳しく説明しました.「自分の記憶は低下している」という否定的な予測が強くなると,記憶を過剰に監視するようになります.その結果,本来は自動的に行われる想起が難しくなり,その失敗がさらに否定的な予測を強めます.失敗を恐れて読書や仕事を避ける認知恐怖も,この悪循環を維持します.図3はFCDにおける症状持続の悪循環を示しています.「記憶は完璧でなければならない」「どんな失敗も重大である」という病的な事前信念が,記憶への過剰な注意やメタ認知の誤りを生み,認知効率の低下や不安につながります.さらに,認知課題を避けることで,実際には記憶が保たれているという修正情報が得られず,事前信念が更新されないため,症状が維持されると考えられます.
以上,FCDは,2020年に「内的非一貫性」によって積極的に診断する病態として定義され,2022年にはFNDの一病型として位置づけられ,2026年には注意,予測,メタ認知,回避行動の悪循環によって症状が持続する病態として説明されるようになりました.一般診療において重要なのは,もの忘れを訴える患者さんを,ただちに「認知症の前段階」あるいは「異常なし」と二分せず,FCDの可能性も検討することではないかと思います.なんとFCDは,物忘れ外来を受診する患者の約24%に認められることも報告されていますが,臨床現場では過小診断されている可能性が高いです.FCDを見逃すと,患者さんは認知症への不安を抱えたまま,不必要な検査を繰り返したり,MCIという診断名のもとで長期間経過観察されたりする可能性があります.一方,FCDを陽性徴候,具体的には上述の内的不一致性,記憶障害エピソードの詳細で具体的な説明や自分一人での受診,日常的な認知の失敗の過剰認識などのメタ認知の異常に基づいて診断し,「症状は現実のものだが,脳の機能は保たれており,改善の可能性がある」と説明できれば,それ自体が治療の出発点になります.ただし上述したように,器質的な認知症が併存しうるため,経時的な変化には注意が必要です.いずれにしても,FCDは一般医が知っておくべき,頻度が高く,見逃されやすく,適切な診断によって患者さんの不安や医療負担を軽減できる重要な疾患だと思います.
1.Ball HA,et al.Functional cognitive disorder:dementia’s blind spot.Brain.2020;143:2895–2903.PMID:32791521.
2.Hallett M,et al.Functional neurological disorder:new subtypes and shared mechanisms.Lancet Neurol.2022;21:537–550.PMID:35430029.
3.Mohan A,et al.Conceptual frameworks and future directions for functional cognitive disorders in adults:a narrative review and integrative perspective.Curr Opin Psychiatry.2026;39:175–181.PMID:41542846.

・遥斗はどんな脳神経内科医になったのだろう?@映画『1リットルの涙』
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年7月8日のFB投稿です***
『#1リットルの涙』の続編が来年映画で公開されるそうです.『1リットルの涙』は愛知県に暮らしていた木藤亜也さんが,中学3年生の頃に発症した脊髄小脳変性症と向き合った日々を記した実話です.書籍は1986年に刊行され,2005年にはテレビドラマ化されて,大きな反響を呼びました.当時,私は2度ほどブログに番組の感想を書いていました(リンクはコメント欄).1回目の記事では,脊髄小脳変性症にはさまざまな病型があり,ドラマで描かれた経過がすべての患者さんに当てはまるわけではないため,誤解したり,必要以上に心配したりしないでほしいと書きました.また,亜也さんの母親に「この病気で完治した例を私は知りません」と告げた主治医の水野先生(藤木直人さん)が,その後,亜也さんとどのように関わっていくのか注目したいとも書いていました.2回目の記事では,構音障害が現れ始めた亜也さんに,水野先生が語った言葉を取り上げました.
「伝えたい気持ちが強ければ,そして聞き取ろうとする気持ちが強ければ,その気持ちは必ず伝わるから……」
この言葉を聞き,「患者さんの伝えたい気持ちを,自分自身,どれほど強い気持ちを持って聞き取ろうとしていたか考えさせられた」と書いています.
じつは私も脳神経内科医として駆け出しの頃,10代で脊髄小脳変性症を発症した女の子を担当しました.病型は,若年発症することのある歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)でした(PMID: 9443494).この患者さんとの出会いをきっかけに,私はDRPLAの研究に取り組み,学位論文としてまとめました(PMID: 10973244).当時,DRPLAは治療法のない病気でしたが,現在では,原因となるDRPLA遺伝子の働きを抑えるアンチセンス核酸医薬の研究が進み,海外では治療の臨床試験も始まっています.病気の原因そのものに働きかける治療に向けて,ようやく第一歩が踏み出されています.
ドラマには,亜也さんの同級生で,彼女と心を通わせる遥斗という人物が描かれています.ドラマの後に放送された特別編では,遥斗が脳神経内科医として勤務する姿が描かれていました.そして,ドラマから約20年を経た今回の映画では,成長した遥斗を錦戸亮さんが再び演じます.高校生の頃の遥斗は,亜也さんにこう語っていました.
「おれ,医者とか向いてないから.だいたいさ,人が死のうが生きようがどうでもいいじゃん.適当に死んで,適当に生まれて,そうやって自然ってバランスが取れているんだし.別に無理して生き延びなくてもさ」
しかし,映画の予告映像では,「医者になりたいと本気で思ったきっかけは,彼女を助けたいと思ったから」と明かしています.「人が死のうが生きようがどうでもいい」と語っていた少年が,亜也さんとの出会いを通して,人の生と死に向き合う医師を志すようになったのです.自分を振り返っても,前述の女の子との出会いが研究のモチベーションになりました.
亜也さんと出会い,ともに病と向き合い,そして大切な人を失った遥斗は,その後,どのように生きてきたのでしょうか.そして,患者さんにどのように向き合う脳神経内科医になったのでしょうか.あれから約20年.医師として成長した遥斗が,患者さんに何を語り,その人生にどのように寄り添うのか.映画の公開をとても楽しみにしています.ぜひ若いみなさんも『1リットルの涙』を読んでみてください.

・凝集したアミロイドβではなく,可溶性アミロイドβがグリンファティック系を障害する!――アルツハイマー病における新たな悪循環
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年7月9日のFB投稿です***
アルツハイマー病(AD)では,脳内にアミロイドβ(Aβ)が蓄積し,プラークを形成します.しかし,今回Brain誌に報告された研究は,目に見えるプラークが増えるよりも前に,脳の老廃物排出を支える免疫細胞が障害され,グリンファティック系の機能が低下する可能性を示しました.ここでいう免疫細胞は,脳実質内に広く分布するミクログリアではなく,脳と脳脊髄液の境界に存在する実質境界マクロファージ(parenchymal border macrophages:PBMs)です.研究はスウェーデンのルンド大学を中心に行われ,中国,ベルギー,スウェーデン国内の複数施設の研究者が参加しました.
グリンファティック系とは,脳脊髄液が血管周囲腔を通って脳実質内へ流入し,間質液と交換されながら,Aβなどの老廃物を脳外へ排出する仕組みです.この経路に沿って存在するのがPBMsで,脳表を覆う軟膜に存在する軟膜マクロファージと,血管周囲腔に存在する血管周囲マクロファージに分けられます.これらの細胞は,脳と髄液の境界で免疫監視を担うだけでなく,血管の拍動や血管周囲の環境を調節することにより,脳脊髄液の流れと老廃物の排出を支えていると考えられています.
研究では,Aβ病理の進み方が異なる2種類のAppノックインマウスが比較されました.AppNL-Fマウスではプラーク形成が比較的遅く,脳脊髄液中の可溶性Aβが高い状態が長く続きます(図1A赤).一方,Aβの凝集を促進するArctic変異を追加したAppNL-G-Fマウスでは,Aβが早期から急速に凝集してプラークになるため,脳脊髄液中の可溶性Aβが高い期間は短くなります(図1A青).意外なことに,プラークが急速に蓄積する後者では,グリンファティック流入は野生型マウスと同程度に保たれていました.これに対し,プラーク形成が遅い前者では,脳実質のプラークがまだわずかな6月齢の時点で,脳脊髄液トレーサーの脳内流入が低下していました.さらに,線条体へ注入したトレーサーが48時間後にも多く残存しており,脳内への流入だけでなく,脳実質からの排出も障害されていることが示されました.
グリンファティック障害の原因として,まずアストロサイトに存在するアクアポリン4の局在異常が疑われましたが,AppNL-Fマウスではアクアポリン4の血管周囲への極性化は保たれていました.一方,6月齢のAppNL-Fマウスでは,軟膜マクロファージと血管周囲マクロファージがいずれも減少していました.血管周囲マクロファージが少ない個体ほど脳脊髄液トレーサーの流入も低下していたことから,PBMsの減少がグリンファティック障害と密接に関連すると考えられました.つぎに著者らは,野生型マウスの脳脊髄液腔内にAβ42を注入しました.この結果,Aβを活発に取り込むPBMsが選択的に減少しました.つまり,Aβを掃除しようと働くマクロファージほど,過剰なAβ曝露によって消耗しやすい可能性があります.
つぎに著者らは,野生型マウスの側脳室内にAβ42を投与しました.その24時間後には,脳全体,大脳皮質,中大脳動脈周囲への脳脊髄液トレーサーの流入が低下し,同時に,軟膜マクロファージと大脳皮質の血管周囲マクロファージも減少していました.さらに,これらのマクロファージが少ない個体ほど,グリンファティック流入も低下していました.以上から,脳脊髄液中のAβへの曝露が,PBMsの減少とグリンファティック機能障害を引き起こす可能性が示唆されました.
ではなぜ,プラークが多いAppNL-G-FマウスではPBMsが保たれていたのでしょうか.脳マクロファージを取り出して調べると,AppNL-G-Fマウスでは,通常の微粒子を取り込む能力は変わらないものの,Aβ42を選択的に取り込む能力が増強し,MHC class IIの発現も上昇していました.これに対してAppNL-Fマウスでは,このようなAβ特異的な代償反応がみられませんでした.AppNL-G-Fマウスでは,Aβ処理能力を高めることでPBMsを維持している可能性があります.
さらに著者らはアミロイドβ抗体の効果を検証しています.AppNL-Fマウスにレカネマブのマウス型抗体であるRmAb158を週1回,5週間投与しました.その結果,脳実質のAβプラーク量は減少し,軟膜マクロファージ数も増加しました.しかし,大脳皮質の血管周囲マクロファージは改善せず,海馬ではむしろ減少しました.また,グリンパティック流入にも改善は認められませんでした(図2E,F).この結果は,プラークを除去するだけでは,血管周囲マクロファージとグリンパティック流入を回復させるには不十分である可能性を示しています.またレカネマブ型の抗体だけではグリンパティック流入を回復させるには不十分である可能性が示唆されます.
図1で結果をまとめます.AppNL-G-Fマウス(青)では,可溶性Aβの上昇は短期間にとどまり,Aβは急速にプラークへ取り込まれるため,可溶性Aβへの暴露は短期間で済み,PBMsは保たれます.一方,AppNL-Fマウス(赤)では,可溶性Aβが長期間高い状態にあり,その持続的な曝露によってPBMsが減少し,血管周囲環境とグリンファティック機能が障害されていきます.重要なのは,凝集したプラークの量ではなく,プラークになる前の可溶性AβにPBMsがどのくらい長く曝露されるか,という点です.
本研究から,「脳脊髄液中の可溶性Aβが増加→Aβを処理するPBMsが減少→グリンファティック系による老廃物排出が低下→Aβがさらに排出されにくくなる」という悪循環が始まる可能性が示されました.Aβを除去する役割を担う免疫細胞が,除去しようとしたAβによって逆に傷害されるということのようです.今後は,ヒトにおいてもPBMsの変化が生じるのかを検証するとともに,グリンファティック系の回復を目指すのであれば,凝集Aβの除去だけでなく,脳脊髄液中の可溶性Aβの動態を制御し,PBMsを保護する治療戦略を検討する必要があるのかもしれません.ちなみに図3は別の論文のものですが,PBMsはこんな感じにグリンファティック系に関与しているらしいです.
Liu N, et al.Early glymphatic failure in AppNL-F knock-in mice is linked to parenchymal border macrophages loss.Brain.2026;149:2422–2437.doi:10.1093/brain/awag080.PMID:41762118.
Bhardwaj A,Benveniste H.Amyloid-β-laden CSF turns guardian macrophages into collateral damage in Alzheimer’s disease.Brain.2026;149:2191–2193.doi:10.1093/brain/awag197.

・アミロイドβやリン酸化タウは本当に「悪者」なのか?―感染・免疫・血管から考えるアルツハイマー病の病態と予防@第48回埼玉認知症研究会
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年7月11日のFB投稿です***
第48回埼玉認知症研究会に,埼玉医科大学の大山彦光教授にお招きいただき,「アルツハイマー病の病態と予防に関する最新知識」と題して講演いたしました.また,日頃より温かく見守ってくださっている山元敏正先生,神谷達司先生とも久しぶりにお目にかかり,意見を交わすことができました.講演後には,もう一人の演者である黒田岳志先生,大山先生とも活発に議論する機会をいただき,大変貴重で有意義な時間となりました.
今回の講演では,アルツハイマー病(AD)を単に「アミロイドβが蓄積する病気」と捉えるのではなく,最新の研究に基づき,タウ,ミクログリア,ウイルス感染,脳血管,そしてグリンファティックシステムを含めた全体像を提示することを目指しました.まず強調したのは,アミロイドβ(Aβ)とタウは,もともと単なる「悪玉」ではない可能性があるという点です.Aβにはシナプス機能を調節する作用があり,さらに単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)を捕捉して封じ込める,自然免疫分子としての働きが報告されています.「悪玉」の特徴とみなされてきたAβの線維化にも,ウイルスを捕捉し,囲い込み,隔離するという防御的な役割がある可能性があります.
タウも,本来は神経細胞の形を保ち,軸索輸送を支えるタンパクですが,リン酸化されることによって神経細胞内のHSV-1に結合し,その感染性を抑える可能性が示されています.つまり,細胞外ではAβが,細胞内ではリン酸化タウが,HSV-1に対する防御を担っているのかもしれません.感染から脳を守るために始まった反応が長期間持続することによって,結果的にAβやタウの過剰な蓄積につながるという,皮肉な構図も考えられます(図1).
実際,COVID-19,単純ヘルペスウイルス,帯状疱疹ウイルスなどの神経向性ウイルス感染と,その後の認知症リスクとの関連が報告されています.培養細胞を用いた研究では,帯状疱疹ウイルスが潜伏中のHSV-1を再活性化させ,Aβとリン酸化タウの蓄積を誘導することが示されました.また,単純ヘルペスウイルスや帯状疱疹ウイルスによる中枢神経感染後の脳脊髄液では,ADに類似したバイオマーカー変化(Aβ42/Aβ40比の低下,p-tauの上昇)と,ミクログリアやアストロサイトの活性化が認められます.
こうしたさまざまな刺激を受けて反応するのが,脳内の免疫細胞であるミクログリアです.2026年にCell誌に報告された研究では,ADの脳内で,がん関連遺伝子に体細胞変異を持つミクログリアが選択的に増殖している可能性が示されました.加齢とともに生じた変異のなかから,慢性炎症の環境に適応したミクログリアがクローン性に増加し,炎症を持続させるという仮説です(図2).この考え方では,Aβやタウは病気の唯一の主役ではなく,ミクログリアに対する「選択圧」としても働きます.ウイルス感染や酸化ストレス,さらに最近話題のマイクロ・ナノプラスチックやPM2.5も,同様の選択圧になりうると考えられます.ADの本態を,単なる「異常蛋白質の蓄積」ではなく,「加齢した脳における免疫細胞の変化」という視点から捉え直す,興味深い仮説です.
もう一つ重要なのが脳血管です.Aβが脳血管に蓄積する脳アミロイドアンギオパチーは,AD患者において病理学的に非常に高頻度に認められます.Aβは血管平滑筋を置換するため,血管は拡張して不整となり,微小出血や白質障害が生じます.微小出血を伴う症例では,タウの蓄積量とは独立して脳萎縮が進むことも示されており,ADには「タウ主導型」と「血管主導型」が存在する可能性が提唱されています(図3).さらに脳血管は,脳内の老廃物を排出するグリンファティックシステムの駆動にも関与します.睡眠中,とくに深いノンレム睡眠では,脳血流と脳脊髄液が周期的に変動し,Aβなどの老廃物が排出されます.この流れは動脈の拍動によって支えられるため,血管が障害されると老廃物の排出も低下する可能性があります.一方,意外なことに,認知機能が正常に保たれている段階では,Aβが大脳皮質の構造を保ち,脳血流の維持に寄与している可能性も指摘されています(図4).
では,どのように治療・予防すればよいのでしょうか.予防という観点では,帯状疱疹ワクチンにも注目が集まっています.複数の大規模コホート研究で,組換え帯状疱疹ワクチンを接種した人では,接種していない人より認知症の発症が少ないという関連が報告されています.ただし,これらは主として観察研究であり,ワクチンが認知症を直接予防すると確定したわけではありません.それでも,感染予防が認知症予防につながる可能性を示す重要な知見です.また,抗Aβ抗体は,適切な患者さんを選べば有益な治療ですが,高度な脳血管病変がある症例では,血管壁からAβを除去する過程で,かえって血管に障害を与えて悪循環に陥る可能性があります.さらに,タウ病理がすでに進行した症例では,ミクログリアが「Aβ処理型」から「抗原提示型」へ移行しており,抗Aβ療法による介入の適期をすでに逸している可能性があります.したがって,治療効果とリスクを慎重に検討する必要があります.実際,2026年のAD創薬パイプラインでは,臨床試験として多い順に,①神経伝達物質受容体,②炎症・免疫,③Aβ,④タウとなっています.今後は,Aβやタウだけでなく,炎症・免疫,神経伝達,血管障害なども含めた多面的な治療へと進んでいくものと考えられます.
今回の講演を通じてお伝えしたかったのは,ADはAβだけで説明できる単一の病気ではないということです.感染,免疫,血管,睡眠,老廃物排出,そして加齢が複雑に関係しています.現時点で私たちができる最も確実な対策は,感染を予防し,十分な睡眠をとり,高血圧や糖尿病を適切に管理し,運動を続け,何よりも脳の血管を大切にすることだと思います.

・ケガするぐらいの転倒をしていても機能性神経障害は否定できない―ロンドンの専門外来100例から見えてきたこと―
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年7月13日のFB投稿です***
機能性神経障害(functional neurological disorder:FND)は,筋力低下,歩行障害,不随意運動など多彩な症候を呈する疾患です.しかし,FND患者がどの程度転倒するのか,またその転倒にどのような因子が関与するのかについては,これまで十分な検討がなされていませんでした.今回,この点を検討した研究が英国からEuropean Journal of Neurology誌に報告されました.
対象は2021年から2024年までにFND専門外来を受診した運動症状を有するFND患者100例(平均年齢43.7歳,女性81%)です.その結果,なんと62%の患者が過去6か月以内に少なくとも1回転倒しており,56%は2回以上転倒,さらに29%は10回以上転倒していました.転倒した患者の64.5%に何らかの外傷がみられ,打撲が39%と最も多く,裂創8%,骨折6%も認められました.FNDの転倒はしばしば「ゆっくり倒れるため大きなけがは少ない」と考えられていますし,私もそう思っていましたが,本研究は実際には外傷を伴うことが少なくないことを示しています.
図1は,反復転倒群と転倒0~1回群を比較すると,反復転倒群では振動覚が低下しているだけでなく,抑うつ(PHQ-9),不安(GAD-7),疼痛スコアが高く,疲労も強く,移動能力も低下していることが一目で分かります.FNDにおける転倒が単なる歩行障害や筋力低下の問題ではなく,感覚機能,疼痛,心理状態,身体機能が複雑に絡み合った現象であることを示しています.さらに多変量解析を行ったところ,反復転倒と独立して関連する因子は3つで,最も強力な因子は足底感覚の消失で,反復転倒のオッズ比は5.30でした.すなわち,足底感覚が消失している患者は転倒リスクが約5倍高いことになります.また,疼痛VASが1点上昇するごとに転倒リスクは25%増加し,不安スコアが1点上昇するごとに9%増加しました.足底感覚が重要であった点は興味深い結果です.足底からの感覚入力は,当然,姿勢制御や歩行中の身体位置の把握に重要な役割を果たしていますが,FNDの感覚障害は「機能的」であり,注意や状況によって変化すると考えられていますが,本研究は,そのような感覚障害であっても実際の転倒リスクに直結する可能性を示した点で重要です.
また,不安が転倒リスクと関連したことも注目されます.FNDでは身体症状への過剰な注意や転倒恐怖がみられることがあります.姿勢や歩行を意識し過ぎることで,本来は自動的に行われるべきバランス制御が妨げられ,かえって不安定になることが知られています.著者らは,不安によって姿勢制御が過剰に硬くなり,転倒しやすくなる可能性を指摘しています.疼痛も歩行パターンを変化させ,身体活動量を低下させることで廃用を招きます.FNDでは慢性疼痛を合併する患者が少なくないため,転倒予防という観点からも疼痛対策の重要性が示されたと言えます.
著者らは,FND患者を診療する際には転倒歴を必ず確認し,足底感覚,疼痛,不安,疲労,移動能力を包括的に評価する必要があると結論しています.また,転倒予防のためには単に活動を制限するのではなく,心理的支援を組み合わせたリハビリテーション,疼痛管理,段階的な運動療法を行いながら,安全性と活動性のバランスを取ることが重要であるとしています.FNDにおける転倒はこれまで十分に注目されてこなかったテーマで,個人的には本当にこんなに頻度が高いのかと驚きましたが,転倒はしないという先入観のため確認していなかったのかもしれません.少なくとも「ケガするぐらいの転倒をしているからFNDは考えにくい」と考えてしまうのは改めようと思いました.
Mohammadi Z, et al. Falls in Functional Neurological Disorder: Prevalence, Risk Factors and Clinical Implications. Eur J Neurol. 2026;33(6):e70665. doi: 10.1111/ene.70665. PMID: 42267572.

・片頭痛のある閉経後女性では脳梗塞リスクが12%高い―ただし絶対的な差は小さい
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年7月14日のFB投稿です***
片頭痛は,とくに若い女性における虚血性脳卒中の危険因子として知られています.しかし,その影響が閉経後にも残るのかについては,十分に分かっていませんでした.Neurology誌に,米国の複数の大学による共同研究として,閉経後女性における片頭痛と脳卒中リスクを検討した大規模研究が報告されました.
研究には,米国国立衛生研究所(NIH)が中心となって1990年代に開始した,閉経後女性の健康を長期的に調べる大規模研究であるWomen’s Health Initiativeに登録された130,277人が参加しました.登録時年齢の中央値は63歳で,このうち14,630人(約11%)に,医師から片頭痛と診断された既往がありました.参加者は中央値19.9年間という長期にわたって追跡され,その間に5,743人が脳卒中を発症しました.脳卒中は医療記録に基づいて判定され,虚血性脳卒中と出血性脳卒中に分類されました.
その結果,片頭痛の既往がある女性では,虚血性脳卒中のリスクが,片頭痛のない女性より12%高いことが分かりました.つまり調整ハザード比は1.12(95%信頼区間1.02~1.23)でした.一方,すべての脳卒中を合わせた場合のハザード比は1.07,出血性脳卒中では0.85であり,いずれも有意な関連は認められませんでした.つまり,片頭痛との関連は,脳出血ではなく,脳梗塞に限って認められたということです.
ただし,「12%高い」という相対的な数字を過大に受け取らないことが重要です.20年間の虚血性脳卒中累積発症率は,片頭痛群で3.9%,非片頭痛群で3.5%であり,絶対差は0.4ポイントでしかありません.これは,1000人を20年間追跡した場合,片頭痛群で脳梗塞を発症する人が約4人多い程度の差です.
つぎに虚血性脳卒中を原因別にみると,心原性脳塞栓症と原因不明脳梗塞で,片頭痛との関連がやや強い傾向がみられました.ただし,いずれも統計学的に有意ではありませんでした.片頭痛,とくに前兆のある片頭痛は,卵円孔開存や心房細動と関連することが知られています.このため,心臓にできた血栓が脳へ流れて血管を詰まらせる仕組みが関係している可能性がありますが,本研究だけではそこまでは確認できません.
図1では,登録時年齢を6群に分け,片頭痛の有無によるすべての脳卒中の累積発症率を示しています.高齢で登録された群ほど脳卒中発症率は高くなりましたが,多くの年齢層で片頭痛群と非片頭痛群の曲線は重なっていました.49~54歳と70歳以上では,片頭痛群の発症率がやや高い傾向を示しましたが,年齢層による明確な差は認められませんでした.この図からも,片頭痛による脳卒中リスクの上昇は,存在するとしても大きくないことが分かります.
本研究の重要な限界は,前兆の有無,片頭痛の頻度や重症度,閉経後も発作が続いていたかが不明なことです.とくに,脳卒中との関連が強いとされる前兆のある片頭痛を区別できなかったため,関連が弱く見積もられた可能性があります.また,そもそも観察研究であるため,片頭痛が脳梗塞を直接引き起こすことを証明できるわけではありません.さらに,若い頃に片頭痛があったものの閉経後には治まった女性と,閉経後も片頭痛が続いている女性を区別できませんでした.今後は,前兆の有無に加えて,片頭痛が現在も活動性を有しているか,いつ発症し,いつ寛解したかを含めて検討する必要があります.
以上から,片頭痛は閉経後女性においても,虚血性脳卒中リスクがわずかながら高くすることが示されました.ただし,絶対リスクの増加は小さく,片頭痛があるという理由だけで過度に心配する必要はありません.しかしながら,これは集団全体をまとめた結果です.個々の片頭痛患者さんでは,高血圧,喫煙,糖尿病,脂質異常症,心房細動など,修正可能な危険因子を丁寧に確認し,適切に管理することが重要になります.
Madsen TE, et al. Migraine and Stroke Risk in Postmenopausal Women in the Women’s Health Initiative. Neurology. 2026;107(1):e214825. doi:10.1212/WNL.0000000000214825. PMID: 42247650.

・カナダのALS患者の約5人に1人が「医療的な死の幇助(MAiD)」を選択―知っておくべきMAiDの実態
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年7月17日のFB投稿です***
カナダでは2016年から,重篤かつ治癒不能な疾患によって耐え難い苦痛を抱える成人に対して,「医療的な死の幇助(medical assistance in dying:MAiD)」が認められています.これは,一定の要件を満たした患者に対し,所定の手続きを経て,医師またはナース・プラクティショナーが死を迎えるための医療的支援を提供する制度です.実施場所は,自宅,病院,ホスピスなど多様です. Neurology誌に,カナダの筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者におけるMAiDの実態を検討した研究が報告されました.
アルバータ大学のALS専門外来で診療を受け,2019年から2024年までに死亡したALS患者で,死亡日と死亡場所を確認できた255名が対象となりました.診断時年齢の中央値は67歳で,42%が女性でした.255名のうち66名(25.9%)がMAiDの実施を承認されていましたが,そのうち8名は予定日前に死亡し,3名はその後希望を変更したため,実施には至りませんでした.この結果,55名(21.6%)がMAiDを受けました.最初にMAiDについて相談してから実施日までの期間は,中央値で16週間でした.つまり,MAiDの選択は一度の面談で決まるものではなく,数か月にわたる意思決定の過程を伴うことが分かります.
つぎにMAiDを受けた患者と受けなかった患者を比較しました.この結果,年齢,性別,都市部居住の有無,発症部位,診断時のALSFRS-R,ALSFRS-Rの低下速度,King’s stage,併存疾患,努力性肺活量などに有意差を認めませんでした.つまり,MAiDを選択した患者が,高齢であったり,より重症であったり,進行が速かったりしたわけではないということです.
一方,治療選択の頻度には違いがみられました.胃瘻造設を受けた患者は,MAiD群の20%に対し,非MAiD群では50%でした.多変量解析でも,胃瘻の使用はMAiDの実施と負の相関を示し,オッズ比は0.34でした.非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)の使用率もMAiD群で40%と低い傾向にありました(非MAiD群55%).死の時期を自ら決めたいと考える患者は胃瘻やNPPVを選びにくいものと考えられます.
症状発現からの生存期間については,MAiD群で25か月,非MAiD群で28か月であり,有意差を認めませんでした.一方,診断から死亡までの期間は,MAiD群で12か月,非MAiD群で14か月であり,MAiD群で2か月短くなっていました(p=0.019;図1).MAiD群では,診断後のある時点で患者が死の時期を選択した結果と考えられます.
本研究で最も印象的なのが図2です.255名全体の死亡原因をみると,最も多かったのは呼吸不全の86名で,次いでMAiDの55名,肺炎の40名,死因不明の36名,鎮静下でのNPPVの中止の20名でした.つまり,MAiDは呼吸不全に次いで2番目に多い死亡原因となっていました.この図では,死亡場所の違いも明瞭に示されています.MAiD群では62%が自宅で死亡していたのに対し,非MAiD群の自宅死亡は35%でした.つまりMAiDでは実施日と場所を事前に調整できるため,患者が希望する自宅で最期を迎えやすかった可能性があります.MAiDは死の時期だけでなく,どこで,誰と,どのように最期を迎えるかという選択にも関係することが示唆されます.
また,MAiD群の96%,非MAiD群の82%で,緩和ケアチームによる評価または関与が記録されていました.この結果は,MAiDが緩和ケアを受けないまま,その代替として単独で選択されていたわけではないことを示しています.ただし,緩和ケアがどの程度継続的に提供され,どのような内容であったかまでは明らかではありません.ALSの終末期には,胃瘻,非侵襲的換気療法,呼吸補助の中止,緩和的鎮静,MAiDなど,複数の選択肢が併存していました.
本研究の限界としては,単施設の後方視的研究であること,患者がMAiDを希望した具体的理由,認知機能,教育歴,就労状況,家族の支援,宗教的・文化的背景などが評価されていないことなどがあります.また,MAiDが合法化され,専門外来から制度へアクセスできるカナダの結果を,日本を含む異なる法制度や文化的背景をもつ国にそのまま当てはめることはできません.
本研究のもっとも重要な点は,まず誰がMAiDを選ぶかを,年齢,性別,発症部位,呼吸機能,機能障害の程度などから予測できなかったことです.MAiDの選択には,病気の客観的な重症度よりも,独立性や尊厳を失うことへの不安,自分の人生を自ら統制したいという希望,生命の延長をどこまで重視するかといった,患者個人の価値観が強く関係していることをエビデンスとして示しました.
もう1点はMAiD群の大半で緩和ケアチームの評価または関与がなされていたことです.これは,身体症状の緩和だけでは解決できない実存的苦痛が存在することを示しているのだと思います.
私自身は安楽死や医師介助自殺を導入した国で生じている「すべり坂」という重大な問題を考えると,MAiDの日本への導入については反対ですが,一方でMAiDの議論は,神経難病患者さんが残された時間を,どこで,誰と,どのように過ごすか,その大切さを改めて考える契機になると思いました.
Zhu RH, et al.Medical Assistance in Dying in ALS:Frequency,Survival,and Associations With Patient Characteristics in a Canadian Clinic.Neurology.2026;106:e218032.doi:10.1212/WNL.0000000000218032.

・「その人らしさを理解し,支える努力をする」―心に残った神経難病の在宅医療に関する講演@MDSJ
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年7月17日のFB投稿です***
第20回パーキンソン病・運動障害疾患コングレス(MDSJ)に参加するため,函館に来ています.初日の昨日,堀川内科・神経内科医院の今野卓哉先生による教育講演「神経難病の生き方を支える在宅医療」を拝聴しました.今野先生は新潟大学の後輩であり,講演を楽しみにしていましたが,その人柄と医療に対する真摯な姿勢が伝わってくる素晴らしい内容で,講演の最後には胸がいっぱいになりました.
今野先生はまず,神経難病の在宅医療で大切なのは,多職種の仲間が「それぞれの想いを持ち寄ること」,そして「患者さんを全人的に支えること」であると述べられました.神経難病の患者さんのなかには,病気への怒りや自殺願望を抱え,深い実存的苦痛を抱える方もいます.しかし同時に,そのような状況にあっても,医療や介護に携わる人々への感謝を言葉にされる方がいると話されました.
病気の進行によって失われていく「その人らしさ」を,どのように理解し,支えていくのか.今野先生は,「できない可能性ではなく,できる可能性を探っている」と話されました.まさに,患者さんの人生そのものに寄り添う医療だと感じました.
講演のなかで,とりわけ心を動かされたのは,患者さんが亡くなった後のご家族への支援,いわゆる遺族のグリーフケアです.今野先生は,患者さんが亡くなられてから1年後に,在宅医療で関わったご家族を訪問しているそうです.ご遺族は,当時の気持ちや,患者さんが亡くなられた後の生活,心境の変化について,たくさんのことを話してくださるそうです.多系統萎縮症(MSA)の奥様を1年前に亡くされたご主人を訪ねた際には,「突然死の可能性をあらかじめ説明してもらっていたため,心の準備ができた.毎日,一緒に大切に暮らしてきた.伝えてもらえてありがたかった」と話されたそうです.
多系統萎縮症の突然死は,私自身も長年取り組んできた課題です.その私でさえ,患者さんやご家族に突然死のリスクを伝えることには,大変な難しさを感じてきました.今野先生も同様だったそうです.私は患者さんやご家族を不安にさせるのではないかと迷いながらも,これは避けて通れない「真実告知」の一つだと考えてきました.しかし今回のお話を伺い,真実から逃げずに丁寧に伝えることは,患者さんのためだけでなく,残されるご家族を支えることにもつながりうることを初めて理解できました.長く抱えてきた問いに,一つの答えをいただいたような気がしました.
今野先生が語られた,「患者さんが亡くなった後にも,在宅医療が果たせる役割があるかもしれない」という言葉が,深く心に残りました.医師として尊敬できる,立派な後輩を持ったことを誇らしく思ったご講演でした.

・自己免疫性基底核障害:治療可能な運動異常症を見逃さないために
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年7月18日のFB投稿です***
第20回日本パーキンソン病・運動障害疾患学会(MDSJ@函館)で,標題の講演を行いました.「自己免疫性基底核障害」は聞き慣れない用語ですが,自己抗体によって大脳基底核を中心とする神経ネットワークが障害され,多彩な運動異常症を呈する疾患群です.今回は,冨山誠彦大会長からいただいたこの宿題について,自分なりに整理してご報告しました.
この疾患群は,早期に診断して免疫療法を開始すれば改善が期待できます.そこで講演では,「治療可能なこの運動異常症をいかに見逃さず,診断につなげるか」を目的に,①病態から疑うコツ,②症候から疑うコツ,の2つの視点から解説しました.要点は以下の4つです.
1.複数の運動異常症を同時に認める場合,とくに過運動と低運動が併存し,通常の神経変性疾患としては違和感がある場合
2.急性・亜急性に発症する場合や,症候が大きく変動する場合
3.運動異常症に加えて,認知障害や精神症状を認める場合
4.常同運動,保続,faciobrachial dystonic seizures(FBDS)などの発作性症候,ミオリズミアといった自己免疫性神経疾患を示唆する特徴的な症候を認める場合
スライドは,コメント欄のリンクからご覧いただけます.
https://www.docswell.com/…/800…/527WV7-2026-07-18-081629
また,本学会名物の「イブニングビデオセミナー」も開催されました.学会員が経験した教育的な症例の動画を見ながら,運動異常症の解釈と診断について議論する企画です.今年は14演題が発表され,いずれも大変勉強になりました.
当科の専攻医,安藤知秀先生は,小脳性運動失調と奇妙な歩行障害を呈した抗GABA_B受容体脳炎の症例を発表しました.この疾患では,てんかん発作,記憶障害,異常行動などが典型的ですが,本例は運動失調を主徴としうることを示した点,さらに免疫沈降法・質量分析を用いて抗原同定に至った点が高く評価され,優秀賞を受賞しました.最後に,司会の冨山先生,宇川先生という「新選組」のお二人と,安藤先生は記念撮影をしていただき,とても嬉しそうでした.良かったですね!
【イブニングビデオセッション2026】
症例1;口蓋振戦(ミオクローヌス)を呈したTardive syndrome
症例2;陳旧性脳梗塞を素因とし,カルバマゼピンが増長した一側性のasterixis
症例3;左右差のある舞踏運動を呈した抗リン脂質抗体症候群
症例4;初心者のアイススケート様歩行と認知機能低下を呈したSCA17
症例5(最優秀賞);歩き続けると両下肢が勝手に動き出したParoxysmal exercise-induced dyskinesia (PDHA1遺伝子変異)
症例6(優秀賞);急性に発症した四肢のバリズム・舞踏運動を呈した高ホモシステイン血症
症例7(優秀賞);奇妙な歩行障害と小脳性運動失調を呈したGABAB受容体脳炎
症例8;異なる振戦を呈した抗NF155抗体陽性自己免疫性ノドパチー
症例9;頸部・上肢の姿勢時振戦を呈した18q欠失症候群
症例10;左上肢に鏡像運動が誘発される脳アミロイドアンギオパチー
症例11;睡眠中に全身の激しい不随意運動(RBD?ないし睡眠時周期性四肢運動)が生じたハンチントン病
症例12;下眼瞼向き眼振を呈したSCA27BとSCA6
症例13;急性発症の寡動,挺舌・構音障害,咀嚼障害を呈したrapid-onset dystonia parkinsonism(DYT12; ATP1A3遺伝子変異)
症例14;耳介の有痛性不随意運動に悩まされたmoving ear syndrome

・サイトメガロウイルスに対するT細胞応答がアルツハイマー病を加速する―脳内感染がなくても認知機能が低下する
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年7月19日のFB投稿です***
アルツハイマー病(AD)の発症や進行には,アミロイドβ(Aβ)やタウの蓄積だけでなく,感染症や感染後に持続する免疫応答が関与する可能性が注目されています.とくに帯状疱疹ウイルスや新型コロナウイルスでは,感染と認知症リスクとの関連が注目されています.サイトメガロウイルス(CMV)についても,認知機能低下やADとの関連を示す疫学研究がありますが,結果は必ずしも一致しておらず,その機序も明らかではありませんでした.今回,英国の研究グループは,マウスCMV(MCMV)に対するT細胞応答が,AD病理と認知機能低下を促進する可能性をBrain誌に報告しました.
研究には,APP,PSEN1,MAPTという3つの家族性AD関連遺伝子に変異をもつ3xTg-ADマウスが用いられました.2~3カ月齢の雌マウスにMCMVを感染させ,6カ月後に認知機能と脳病理を評価しています.まずMCMVに感染した3xTg-ADマウスでは,新奇物体認識試験とT迷路試験の成績が低下しました.一方,野生型マウスでは,同じ感染を受けても明らかな認知機能低下は認められませんでした.この結果は,CMV感染だけで認知機能が低下するのではなく,AD病理によって脆弱になった脳と感染後の免疫応答との組み合わせが重要であることを示唆します.
つぎにこの脳を検討しています.感染した3xTg-ADマウスでは,海馬CA1領域の樹状突起スパインが減少し,とくに長期記憶や安定したシナプス結合に関わるmushroom型スパインが失われていました.さらに,脳内のAβ42蓄積とリン酸化タウの増加も認められました.つまりMCMV感染は,シナプス障害とAD関連病理を促進し,認知機能低下を引き起こしたと考えられます.
興味深いことに,感染マウスの肺や脾臓からはMCMVが検出されましたが,脳からは検出されませんでした.その一方で,脳内,とくに海馬にはCD4陽性T細胞とCD8陽性T細胞が著明に浸潤していました.なかでもCD8陽性T細胞が多く,その約75%はMCMV抗原を認識するウイルス特異的T細胞でした.これらは高度に分化したエフェクターメモリーT細胞であり,脳への遊走に関与するケモカイン受容体CXCR3を発現していました.これはCMVを記憶し,異常を見つけるとすぐに攻撃する「即応型のT細胞」であるということです.さらにT細胞受容体の解析からは,単一の自己反応性クローンではなく,多様なウイルス特異的T細胞が末梢から脳へ流入していることが示唆されました.
そこで慢性感染期に抗CD4抗体と抗CD8抗体を投与してT細胞の除去を試みたところ,脳内のT細胞がほぼ消失し,新奇物体認識試験で示される認知機能低下が大きく改善しました.また,慢性感染期から抗ウイルス薬バルガンシクロビルを投与した場合にも,脳内のMCMV特異的CD8陽性T細胞が減少し,認知機能が改善しました.これらの結果から,感染によって誘導されたT細胞が,認知機能低下の少なくとも一部に関与していることになります.
著者らは,末梢で活性化されたMCMV特異的T細胞が,CXCL10–CXCR3系などを介してAD病理をもつ脳へ移行し,IFN-γなどの炎症性因子を放出することで,シナプス障害やAβ・タウ病理を促進した可能性を考えています(図).すなわち,ウイルスが脳内で持続感染していなくても,末梢感染に対する免疫応答が,脆弱な脳を傷害し得るということです. 以上の結果は,CMVはADを単独で引き起こす原因ではないものの,すでにAD病理を有する一部の人において,免疫応答を介して病態の進行を後押しする修飾因子である可能性があります.さらに,今回示された機序はCMVに特有ではなく,ほかの慢性ウイルス感染に対するT細胞応答にも共通する可能性があります.
この研究は,家族性ADモデルマウスを用いた動物実験であり,ヒトの孤発性ADへそのまま当てはめることはできません.また,CD4陽性T細胞とCD8陽性T細胞を同時に除去しているため,それぞれの寄与も明らかではありません.それでも,慢性ウイルス感染とADをつなぐ具体的な免疫学的機序を示した点は重要です.最も注目すべきなのは,「感染後に長期間残る免疫記憶が,AD病理をもつ脆弱な脳を傷害し,病気の進行を加速する可能性がある」という点です.ADの病態を考えるうえで,Aβやタウだけでなく,末梢感染後のT細胞応答にも目を向ける必要性を示した研究と言えます.
Marsden M, et al. Cytomegalovirus-induced T cell responses accelerate Alzheimer’s disease progression in mice. Brain. 2026 Jul 13:awag043. doi: 10.1093/brain/awag043. PMID: 42442404.

・神経学はなぜ「怖い」のか?―医学生のニューロフォビアを生む5つの要因と対策
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年7月22日のFB投稿です***
ニューロフォビア(neurophobia)とは,神経学や神経科学の学習・診療に対する恐怖や不安のことです.今回,米国の共同研究チームが,ニューロフォビアが生じる仕組みを検討しました.著者らは,教育学で詳しく研究されている「数学不安(math anxiety)」を参考にしています.
研究には,University of Colorado School of Medicineの1~4年生30名が参加しました.各学年6~8名からなる4つのグループで,神経学の授業や教材,臨床経験,自分の能力への評価,将来の進路などについて話し合い,その内容を質的に分析しました.その結果,ニューロフォビアに関係する5つの主要な要因と18の下位項目が抽出されました.5つの要因を分かりやすい図にまとめてあります.
第1は「環境(先入観と外的な影響)」です.学生は医学部に入る前から,「脳は特別に複雑である」,「神経学は医学のなかで最も難しい」といった先入観を持っていました.家族が重い神経疾患にかかった経験や,他科の医師による「神経学は難しい」という発言も,専門家にしか扱えないという印象を強めていました.
第2は「教材・教育内容(学習内容,カリキュラム,教育方法)」です.神経解剖の抽象性,専門用語や学習内容の多さ,神経診察の複雑さが学生を圧倒していました.また,基礎神経科学と臨床とのつながりが見えにくく,学んでいる知識の臨床的な意味を理解しにくい状況にありました.一方,臨床実習で患者さんを診て,症状から障害部位を推定する局在診断を経験すると,神経学への不安が軽減する学生もいました.
第3は「学習者に内在する要因」です.「自分には神経学を理解する能力がない」という自己評価の低さが不安を強めていました.一方,学習方法を改善したり,粘り強く取り組む力を身につけたりすることは,ニューロフォビアを和らげる要因となっていました.
第4は,本研究が特に注目した「ブラックボックス」です.神経科学が限られた期間にまとめて教えられ,神経内科実習も短期間に限られ,他科では神経疾患にほとんど触れないという,医学教育のなかでの神経学の孤立が含まれます.この孤立が,神経学を他の医学から切り離された特殊な領域に見せていました.
第5は「キャリアの視点」です.学生は,神経学への自信や学習の重要性を,将来,神経学をどの程度必要とするか,あるいは脳神経内科を進路として選ぶかと結びつけて考える傾向がありました.つまり自分の将来にはあまり関係はないと考える学生では,神経学教育の重要性も低く見積もられました.しかし,頭痛,めまい,しびれ,意識障害,脳卒中,認知症などを最初に診るのは,脳神経内科医とは限りませんし,超高齢化が進み,神経疾患がさらに増加するこれからの医師は,神経疾患を避けて通れません.
著者らは,授業や実習の開始時に,学生が持つ先入観や過去の苦手経験を振り返ること,学習目標を必須事項に絞ること,発展的内容を明示して段階的に教えること,神経学を他科の教育に組み込むことを提案しています.これらを日本の医学教育に当てはめると,次のような工夫が考えられます.
① 学ぶ範囲を明確にする
すべての医学生に必要な基本事項と専門的な発展内容を分け,「どこまで理解すればよいか」を示す.
②臨床場面から段階的に教える
頭痛,めまい,しびれなどの身近な症状から始め,診察所見,局在診断,必要な神経解剖へと段階的に学ばせる.
③神経学を他科の教育に組み込む
脳卒中を救急医学で,頭痛やめまいを総合診療で,認知症を地域医療で扱うなど,日常診療のなかで神経学を繰り返し学ぶ機会を作る.
④理解できるという感覚を支える
図や動画を活用して考え方の手順を示し,「神経学は基本を押さえれば理解できる」と感じられる教育を行う.
⑤すべての医師に必要であることを伝える
神経学を,脳神経内科医になるための専門科目ではなく,どの診療科にも必要な基本技能として位置づける.
自分たちの教育を振り返ると,③のように実現が難しい課題もありますが,そのほかは大筋で実践できているように思いました.臨床実習の開始時には,学生が抱いている先入観や苦手意識を確認し,それらを和らげる機会を設けています.また今後,どの診療科に進むかにかかわらず,すべての医師に神経学と神経診察の知識が必要になることを話しています.苦手とする学生が多い神経解剖は,臨床に必要な内容に絞って改めて教えています.ただ,症例カンファレンスでは先端の高度な議論が行われるため,学生が取り残されないよう,その議論が基本事項とどのようにつながっているのかを,私たちが丁寧に解説する必要があると感じています.
岐阜大学の学生のみなさん,ニューロフォビアを克服できるよう,私たちも真剣に教育に取り組んでいます.大都市での生活も魅力的だとは思いますが,神経学に関心を持ったら,まずは岐阜で,私たちと一緒に神経学を勉強しましょう(笑).
Korb PJ,et al.Education Research: Explaining Neurophobia in Medical Students: A Comparison With Math Anxiety.Neurology: Education.2026;5(3):e200340.doi:10.1212/NE9.0000000000200340.PMID:42459924.

・脳脊髄液の新たな「出口」を発見!―嗅球周囲のくも膜開窓から鼻,首へ続く排出路
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年7月24日のFB投稿です***
グリンファティックシステムを含む,脳の老廃物排出機構についての興味深い続報です.脳脊髄液は,脳や脊髄を物理的に保護するだけでなく,アミロイドβ,リン酸化タウ,αシヌクレインなどの老廃物を脳から運び出す大切な役割を担っています.近年,脳脊髄液がくも膜下腔から硬膜リンパ管へ移行し,最終的に頸部リンパ節へ排出されることが分かってきましたが,その正確な経路は十分に解明されていませんでした.今回,韓国を中心とする国際研究グループが,この排出経路を詳細に明らかにし,Cell誌に報告しました.
研究グループは,リンパ管を蛍光で可視化できるマウスのくも膜下腔へ脳脊髄液トレーサーを注入し,三次元共焦点顕微鏡や走査電子顕微鏡を用いて,その流れを追跡しました.その結果,左右の嗅球の間に位置するくも膜に,直径2~12 μmの多数の小さな孔,すなわち「くも膜開窓(arachnoid fenestrations)」が存在することが分かりました.同様の構造はカニクイザルでも確認されました.
Graphical abstract(図1)には排出経路の全体像が示されています.脳脊髄液は,嗅球周囲のくも膜開窓から硬膜リンパ管へ入り,鼻腔の天井にある篩板の孔を通過して鼻粘膜リンパ管へ流れ,最終的に頸部リンパ節へ排出されます.つまり,脳には「嗅球から鼻を通って首へ向かう排水路」が存在することになります.くも膜開窓は,くも膜下腔側から見れば,脳脊髄液が脳外へ向かう「出口」に相当します.
図2Aは,この排出路の解剖学的な全体像を示した広視野画像です.緑色はリンパ管内皮細胞の分化に関わるProx1をGFPで可視化したもので,赤色はリンパ管形成に関わる受容体VEGFR3,青色は主に初期リンパ管のマーカーであるLYVE1を示しています.これらが重なるリンパ管は,黄色や白色に見えます.
左右の嗅球の間に広がる嗅球部硬膜リンパ管は,篩板の孔を通る短いリンパ管を介して,鼻粘膜リンパ管へ連続しています.図2Aだけでは細部が分かりにくいため,図2Bでは4か所が拡大されています.拡大図1では篩板を通過するリンパ管,拡大図2では硬膜リンパ管内に存在する弁,拡大図3および4では嗅球間に存在する盲端状の初期リンパ管が確認できます.図中の緑矢頭は嗅球部硬膜リンパ管,白矢頭は鼻粘膜リンパ管,赤矢頭は篩板を通過するリンパ管,茶色矢頭はリンパ管弁,黄色矢頭は初期リンパ管を示しています.
図3では,大槽からくも膜下腔へ投与した赤色の蛍光粒子が,60分後に嗅槽周囲の硬膜リンパ管,篩板を通過するリンパ管,さらに鼻粘膜リンパ管の内部に認められます.一方,蛍光粒子は鼻粘膜のリンパ管外や,緑色に見える静脈洞内にはほとんど認められませんでした.この結果は,脳脊髄液がリンパ管の外を漫然と流れるのではなく,連続したリンパ管網を通って鼻腔側へ排出されることを示しています.
さらに,くも膜開窓を直径10 μmの粒子で塞ぐと,脳脊髄液トレーサーの頸部リンパ節への排出は著しく低下しました.また,マウスの嗅粘膜へ硫酸亜鉛を投与し,嗅覚感覚ニューロンと鼻腔リンパ管を化学的に退縮させると,デキストランだけでなく,蛍光標識したアミロイドβの頸部リンパ節への排出も減少しました.これらの結果から,くも膜開窓から嗅球部硬膜リンパ管へ移行する経路が,実際に機能する重要な脳脊髄液排出路であることが示されました.
一方,高齢マウスでは,嗅球周囲の硬膜リンパ管が約58%減少し,くも膜開窓も小さく,数が少なくなっていました(図4中央).さらに,篩板正中部の孔や鼻粘膜リンパ管も減少し,頸部リンパ節への脳脊髄液排出は若齢マウスより約40~50%低下していました.加齢に伴う排出障害は,リンパ管だけでなく,排出の起点となるくも膜開窓や,通り道となる篩板の孔を含む経路全体の萎縮によって生じると考えられます.
研究グループはさらに,高齢マウスの鼻腔内へ,リンパ管の増殖を促すVEGF-Cを発現するAAVベクターを投与しました.図4右では,高齢マウスで低下していた顎下リンパ節および深頸リンパ節へのトレーサー排出が,VEGF-C投与後には若齢マウスと同程度まで回復したことが示されています.くも膜開窓や篩板の孔そのものは回復しませんでしたが,嗅球周囲と鼻粘膜のリンパ管を増やすことで,低下した排出機能を補える可能性が示されました.
本研究は,脳脊髄液がくも膜を越えてリンパ系へ移行する「出口」を,形態と機能の両面から示した点で重要です.ただし,機能的な検証は主にマウスで行われ,カニクイザルではくも膜開窓の存在が形態的に確認されたにとどまります.ヒトでも同じ経路がどの程度脳脊髄液の排出を担うのか,またVEGF-Cによる介入がアルツハイマー病などの神経変性疾患の病態や症状を改善するのかは,今後の検討課題です.
ここですぐに思い浮かぶ病的タンパク質がαシヌクレインです.パーキンソン病やレビー小体型認知症では,嗅球や前嗅核に早期からαシヌクレイン病理が認められ,嗅覚障害との関連が指摘されています.本研究ではαシヌクレインを直接解析していませんが,嗅球周囲の脳脊髄液排出路が加齢などによって障害されれば,αシヌクレインの排出低下を通じて,嗅球の病変やシヌクレイノパチーの病態に影響する可能性があります.一方,この排出路がアミロイドβやタウなど複数の病的タンパク質の除去に関わるのであれば,なぜ嗅覚系の障害がとくにシヌクレイノパチーで目立つのか,という新たな疑問も生じます.非常に興味深い研究です.
Hong SP, et al.CSF clearance through arachnoid fenestrations to olfactory meningeal lymphatics.Cell.2026 Jul 21:S0092-8674(26)00755-5.

・大脳皮質基底核症候群を生前バイオマーカーで検討すると6つの病態に分類できる!
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年7月27日のFB投稿です***
大脳皮質基底核症候群(corticobasal syndrome:CBS)は,左右差の強い筋強剛や動作緩慢,ジストニア,ミオクローヌスなどの運動症状に,失行,皮質性感覚障害,他人の手徴候,認知機能障害などを伴う症候群です.重要なのは,CBSという臨床診断と,病理学的概念である大脳皮質基底核変性症(corticobasal degeneration:CBD)を分けて考えるという点です.つまりCBSの背景には,CBDや進行性核上性麻痺(PSP)などのタウオパチー,アルツハイマー病,Lewy型αシヌクレイノパチーなど,複数の疾患が含まれるということです.
今回,ドイツのミュンヘン大学病院から,CBS患者50名を対象に,複数のバイオマーカーを用いて背景病理を生前に検討した研究が,Movement Disorders誌に報告されました.アミロイドβ病理は脳脊髄液Aβ42/40比とアミロイドPET,タウ病理は[18F]PI-2620タウPET,Lewy型αシヌクレイン病理は脳脊髄液αシヌクレインseed amplification assayを用いて評価しました.
さて結果ですが,タウ陽性は90%,アミロイドβ陽性は28%,αシヌクレイン陽性は24%でした(図).3種類のバイオマーカーを組み合わせると,背景病理は,タウ優位病理52%,アルツハイマー病18%,アルツハイマー病+Lewy型病理10%,タウ優位病理+Lewy型病理10%,Lewy型病理単独4%,分類不能(すべて陰性)6%の6種類に分かれました.つまり,50名中47名,94%で背景病理を生前に推定できたことになります.
これまであまり考えたことのなかったCBSにおけるαシヌクレイン病理は,それ単独でCBSを生じる例よりも,アルツハイマー病やタウ病理に併存する例が多く認められました.とくに,アルツハイマー病を背景とするCBSでは,14名中5名,36%がαシヌクレイン陽性であり,混合病理が少なくないことが示されました.
臨床像にも,バイオマーカーによる違いが認められました.アミロイドβ陽性例では,認知機能障害や失行がより強く認められました.タウ陽性例では運動症状が重い傾向がみられましたが,統計学的有意差にはわずかに達しませんでした(P=0.061).一方,αシヌクレイン陽性例では,意外にも運動症状が比較的軽く,脳脊髄液NfLも低値でした.
さらに,24名を中央値1.9年間追跡したところ,PSP Rating Scaleの年間悪化は,αシヌクレイン陰性例で8.5点,陽性例で3.6点でした.αシヌクレイン陽性CBSでは進行が緩やかである可能性が示されました.ただ症例数が少なく,多重比較補正も行われていないため,探索的な結果として慎重に解釈する必要があります.
この研究の重要な点は,CBSを症候学的な診断から,分子病理に基づく診断へと発展させる可能性を示したことにあります.同じCBSであっても,背景病理・病態は全く異なりますので,治療標的となる異常タンパク質は症例ごとに異なるものと考えられます.今後,抗アミロイドβ療法,抗タウ療法,抗αシヌクレイン療法をCBSに応用するには,背景病理を生前に確認することが重要になります.本研究は,CBSの病態に応じた治療や,臨床試験における適切な患者選択につながる重要な一歩と考えられます.
Palleis C,et al.A Biomarker-Based Classification of Corticobasal Syndrome.Mov Disord.2026;41:129-142.doi:10.1002/mds.70070.PMID:41048081.

・アルツハイマー病の治療は男女で変えるべき?APOE4が脳の免疫に及ぼす意外な性差
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年7月28日のFB投稿です***
アルツハイマー病は女性に多く,その背景には遺伝的危険因子であるAPOE ε4アレル(APOE4)の影響が,男性より女性で強く現れる可能性が指摘されています.しかし,同じAPOE4を持っていても,なぜ男女でその影響が異なるのかは,十分に分かっていません.今回,APOE4が脳の免疫,髄膜リンパ管,脂質代謝,神経炎症,認知機能に及ぼす影響が,雌雄で大きく異なることがNeuron誌に報告されました.さらに,脳の自然免疫を抑制したところ,雌では認知機能が改善した一方,雄では逆に悪化するという,対照的な結果が得られました.今後,APOE4や脳内免疫を標的とする治療を開発する際には,性別による治療効果と副作用の違いをあらかじめ検証する必要がありそうです.米国Mayo Clinicを中心とする国際共同研究グループの研究です.
著者らはまず,ヒトのAPOE3またはAPOE4をホモ接合で発現するマウスを用い,その影響を雌雄別に比較しました.さらに,ミクログリアや脳境界部マクロファージの維持に必要なCSF1受容体の働きを,阻害薬PLX5622によって抑え,ミクログリアや脳境界部マクロファージなど,CSF1Rに依存する自然免疫細胞を部分的に減少させました.そのうえで,髄膜リンパ管,脳内炎症,脂質代謝,認知機能への影響を検討しました.
まず図1のGraphical abstractの上半分をご覧いただくと,本研究の全体像をつかみやすいです.雌E4/E4マウスでは,未治療の段階で,脳境界部マクロファージの活性化,髄膜リンパ排液の異常,神経炎症,認知機能低下が認められました.これらのマウスでPLX5622により自然免疫細胞を部分的に抑制すると,神経炎症が軽減し,認知機能も改善しました.一方,雄E4/E4マウスでは,未治療の段階で,雌と比較して脳内の炎症が比較的抑えられ,認知機能も保たれていました.しかし,自然免疫を抑制すると,脳を守っていた免疫監視機能が損なわれ,神経炎症が増悪し,認知機能も低下しました.つまり,同じAPOE4を持つマウスに同じ免疫介入を行っても,雌では有益に,雄では有害に作用するという,正反対の結果が示されました!
詳しくデータを見てみると,髄膜の免疫環境には,もともと雌雄差がありました.髄膜にはマクロファージ(CD206とMHCクラスIIを発現)が存在しますが,APOEのタイプにかかわらず,雄より雌で多く認められました.さらに,髄膜を構成する一つひとつの細胞の遺伝子発現を調べると,APOE4によって変化する遺伝子や免疫反応の経路は,雌雄でほとんど重なっていませんでした.つまり同じAPOE4を持っていても,髄膜で起こる免疫反応は,雌と雄で大きく異なっていたのです.一方,雄E4/E4マウスでは,髄膜リンパ管の広がりが増えていました.ところが,脳脊髄液を頸部リンパ節へ排出する機能は,むしろ低下していました.つまり,リンパ管が広く分布していても,排液機能が高いとは限らないことが示されました.
脳内の脂質にも明らかな性差が認められました.E3/E3マウスと比べると,雌E4/E4マウスではラクトシルセラミドが増加した一方,雄E4/E4マウスではラクトシルセラミドが低下し,トリアシルグリセロール,スフィンゴミエリン,セラミド関連脂質,コレステリルエステルなどが増加していました.つまり,APOE4による脂質代謝への影響は,雌雄で異なっていたのです.
雌E4/E4マウスでは,脳内の炎症が強いため,記憶機能も低下していました.PLX5622で自然免疫を部分的に抑制すると,文脈記憶には明らかな改善がみられなかったものの,手がかり記憶は改善しました.一方,雄E4/E4マウスでは,PLX5622によって両方の記憶が悪化しました.つまり,雌では自然免疫が炎症と記憶障害を促進していたのに対し,雄では脳を守る方向に働いていた可能性があります.
最後に著者らは,6つの公開ヒト脳single-nucleus RNA sequencingデータセットを統合して解析しました(Graphical abstractの下半分).その結果,APOE4による免疫細胞の遺伝子発現変化は,ヒトでも男女で異なっていました.女性APOE4保有者の脳境界部マクロファージでは,抗原提示に関わるHLAクラスII遺伝子の発現が上昇していましたが,男性では反対に低下していました.マウスだけでなくヒト脳でも,APOE4に対する免疫応答には性差があることが支持されました.
本研究は,APOE4の影響を理解するには,脳実質だけでなく,髄膜免疫,リンパ管,脂質代謝,血管などを一体のシステムとして捉える必要があることを示しました.性差が生じる原因はまだ不明ですが,雌では自然免疫が炎症を促進し,雄では脳を守る方向に働いていた可能性があります.ただし,今回のマウスは典型的なアルツハイマー病モデルではありません.それでも,「脳の炎症を抑えればよい」という単純な治療戦略では不十分であり,性別を考慮した個別化治療の必要性を示す重要な研究だと思います.
Delivanoglou N,et al.Sex-specific APOE4-dependent innate immunity regulates meningeal lymphatics,brain lipids,neuroinflammation,and cognition.Neuron.2026;114:2566-2586.e11.

・熊本県で発生した地震を受けて―難病患者さん,ご家族,支援者の皆さまへ
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年7月29日のFB投稿です***
このたびの地震により被災された皆さまに,心よりお見舞い申し上げます.
難病患者さん,ご家族,行政・医療・看護・介護などの支援者の方々にご活用いただくため,厚生労働省 難病患者の支援体制に関する研究班(小森班→現.下畑班)で作成した「難病患者の災害対策ガイドライン(溝口功一先生,山村修先生,中根俊成先生らが執筆)」を共有いたします.本ガイドラインには,発災後の安全確認,避難,安否確認,停電時の電源確保,人工呼吸器・吸引器・在宅酸素への対応,治療薬の確保,避難所で必要となる配慮などをまとめています.リンク先はコメント欄をご覧ください.
発災後,まずご覧いただきたい箇所は以下になります.
• 50~53頁:「避難所でのニーズ」
• 54~55頁:「安否確認と情報共有」
• 56~58頁:「停電対策と電源確保」
• 62~74頁:「医療・ケアニーズが高い難病患者の支援」
• 75~76頁:「災害時の難病治療薬剤の留意点」
発災後の重要ポイントをまとめます.
1.まず,患者さんの安全と身体状態を確認してください.
転倒,けが,呼吸状態の変化,チューブやカニューレの抜去,医療機器の破損や停止がないかを確認します.人工呼吸器などを使用している場合は,正常に作動しているか,停電時にバッテリーへ切り替わっているかを確認してください.
2.自宅で療養を継続できるかを早めに判断してください.
自宅の損壊,火災や土砂災害の危険,停電・断水の長期化,医療や介護の継続困難がある場合には,安全が確保され,電源や医療的ケアを受けられる避難先への移動を検討してください.人工呼吸器,吸引器,胃ろうなどを使用している方は,一般の避難所では対応が難しい場合があります.
3.安否と支援の必要性を発信してください.
電話がつながりにくい場合には,災害用伝言ダイヤル「171」,災害用伝言板「web171」,メールやSNSなど,複数の方法を利用してください.主治医,訪問看護ステーション,ケアマネジャー,保健所,市町村,医療機器業者などにも,安否,避難場所,停電や医療機器の状況を伝えてください.
4.人工呼吸器や吸引器を使用している方は,電源確保を最優先してください.
バッテリー残量と使用可能時間を確認し,電力消費をできるだけ抑えます.電力が失われた場合には,蘇生バッグや手動・電池式吸引器などの代替手段を使用します.停電が長期化するおそれがある場合には,人工呼吸器を使用できる医療機関等への早期避難を検討してください.発電機は一酸化炭素中毒を防ぐため,必ず屋外で使用してください.
5.薬を紛失したり,不足したりした場合は,自己判断で中断しないでください.
お薬手帳,残っている薬,最後に服用・投与した時刻を確認し,主治医または薬剤師に相談してください.特に,抗てんかん薬,パーキンソン病治療薬,ステロイド,バクロフェン,ベンゾジアゼピンなどは,急な中断によって重い症状を生じることがあります.
6.避難所では,難病があることと必要な支援を早めに伝えてください.
医療機器の電源,薬剤,食事形態,経管栄養,吸引,移動・排泄介助,トイレへの配慮,静かな療養スペースなど,必要な支援を避難所の運営者,保健師,医療者に具体的に申し出てください.外見からは支援の必要性が分かりにくい難病もありますので,早めの情報共有が重要です.
現地自治体,医療機関,電力会社などが発信する最新情報を優先しながら,患者さんの病状や療養環境に応じて,本ガイドラインの必要な箇所をご活用いただければ幸いです.

・【プレスリリースしました】新しい中枢神経系の炎症性疾患GFAPアストロサイトパチーの病態メカニズムを解明:新規バイオマーカー「TNFRSF9」を発見!
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年7月30日のFB投稿です***
自己免疫性GFAPアストロサイトパチーは,髄膜脳炎や脳脊髄炎を呈する新しい中枢神経系の炎症性疾患です.多くの患者さんはステロイド治療に反応しますが,重症化や再発を経験する患者さんもいます.しかし,炎症の強さや重症度,再発リスクを客観的に評価できるバイオマーカーは確立されていません.今回,当科の木村暁夫臨床教授らは,岐阜大学寄生虫学・感染学分野,福島県立医科大学多発性硬化症治療学講座,聖マリアンナ医科大学脳神経内科,藤田医科大学医療科学部との共同研究により,GFAPアストロサイトパチーの新たな脳脊脳脊髄液バイオマーカーを発見し,Neurology誌に発表しました.
プレスリリース
https://www.gifu-u.ac.jp/…/2026/07/entry27-15227.html
まず,未治療のGFAPアストロサイトパチー患者4名と,非炎症性疾患である特発性正常圧水頭症患者4名の脳脊髄液について,92種類の炎症関連蛋白質を網羅的に解析しました.その結果,GFAPアストロサイトパチーで最も顕著に増加していたのが,tumor necrosis factor receptor superfamily member 9,TNFRSF9でした.TNFRSF9はCD137または4-1BBとも呼ばれ,主に活性化T細胞,とくにCD8陽性細胞傷害性T細胞に発現する免疫関連分子です.
続いて,GFAPアストロサイトパチー42名と,多発性硬化症,視神経脊髄炎スペクトラム障害,抗NMDA受容体脳炎,細菌性髄膜炎,特発性正常圧水頭症の計60名を対象に,脳脊髄液TNFRSF9濃度を測定しました.その結果,GFAPアストロサイトパチー群では,すべての疾患対照群より有意に高値でした(図上).GFAPアストロサイトパチーにおける治療前のTNFRSF9濃度中央値は62.1 pg/mLであったのに対し,他疾患ではおおむね39~45 pg/mLでした.さらに,免疫治療後には44.1 pg/mLまで有意に低下しました(図下).つまりTNFRSF9は,GFAPアストロサイトパチーで上昇するだけでなく,治療に伴う病勢の変化も反映する可能性があります.
TNFRSF9高値は,脳脊髄液細胞数,蛋白濃度,ADA値の上昇と関連し,入院時の神経障害が重い患者さんや意識障害を伴う患者さんでも高値でした.さらに,特徴的なMRI所見である血管周囲線状造影を認める患者さんや,その後に再発した患者さんでも高値でした.TNFRSF9は炎症性サイトカインであるIL-6やTNF-α,アストロサイト障害を示すGFAPとも相関しており,免疫活性化とアストロサイト障害の両方を反映している可能性があります.
以上から,脳脊髄液TNFRSF9は,GFAPアストロサイトパチーの炎症活動性,重症度,治療反応性,再発リスクを評価する新たなバイオマーカー候補と考えられます.また,TNFRSF9を介したT細胞活性化が,本疾患の病態に関与する可能性も示唆されます.病態解明を進展させるだけではなく,新たな治療標的の探索や治療法の確立につながることが期待されます.ただし,本研究は後方視的で症例数も限られているという限界があります.今後,前向き多施設研究による検証と,臨床的に有用な基準値の確立が必要です.
Kimura A, Takekoshi A, Maekawa Y, Tanaka K, Yamano Y, Saito K, Takemura M, Yamamoto Y, Shimohata T. Involvement of TNFRSF9 in the Pathogenesis of Autoimmune Glial Fibrillary Acidic Protein Astrocytopathy. Neurology. 2026 Aug 11;107(3):e218306. doi: 10.1212/WNL.0000000000218306.
★岐阜大学では自己免疫性脳炎等に関心のある大学院生を募集しております.詳細は当科HPをご覧ください.
https://www.med.gifu-u.ac.jp/neurology/graduate/

 

3.特別企画:AIに訊く
・「連載シリーズ:切り替えの物語 — AIとの対話から生まれた統合理論」No.6, No.7
いよいよ本シリーズの最終回です。
***
📰 連載シリーズ第6回
**切り替え現象の“統合理論”:

歩行→走行の背後にある普遍構造を解き明かす**

1. ここまでの旅路:4つの視点が示してきたもの
この連載では、歩行→走行切り替えという身近な現象を、 4つの異なる視点から見てきた。
• SCAN:ゆるみ → 境界領域 → 再安定化
• VSM:階層構造の崩壊と再編成
• 制約幾何学:最適面と geodesic
• 3D 最小モデル:アトラクタ・変動性・遷移軌道

これらは一見バラバラに見えるが、 実は 同じ現象の“別の側面” を描いている。
今回の第6回では、 これら4つの視点が どのように統合されるのか を示す。

2. 切り替え現象は“5つのステージ”で理解できる
統合理論の中心にあるのは、 切り替え現象が 5つのステージ を経て進むという考え方だ。

ステージ1:安定(Stable)
低速では、身体は 歩行アトラクタ にしっかり落ち着いている。 SCAN では「tight」、VSM では「安定した階層構造」。

ステージ2:ゆるみ(Looseness)
速度が上がると、歩行アトラクタの安定性が低下し、 Var⊥(タスク非関連軸の揺らぎ)が増大する。
これは、
• SCAN の looseness
• 制約幾何学の「最適面が広がる」 に対応する。

ステージ3:境界領域(Liminal)
さらに速度が上がると、 身体は歩行にも走行にも“決めきれない”状態になる。
これは、
• SCAN の liminal
• VSM の「階層の崩壊」
• 3Dモデルの「鞍部付近の揺らぎ」 に対応する。
ここが 切り替えの準備段階 である。

ステージ4:遷移(Transition)
臨界速度に達すると、身体は 最短で最も自然な道(geodesic) を通って走行へ移る。
これは、
• 制約幾何学の geodesic
• 3Dモデルの遷移軌道
• VSM の再編成 がすべて一致する瞬間。

ステージ5:再安定化(Re-stabilization)
高速域では、身体は 走行アトラクタ に落ち着く。 SCAN の「再安定化」、VSM の「新しい階層構造の確立」。

3. 4つの理論は“同じ構造”を別の言葉で語っていた
ここで、4つの視点を統合してみよう。
これを見ると、 4つの理論は 完全に同じ構造を別の言葉で語っていた ことが分かる。

4. “変動性 Var⊥”が統合の鍵だった
統合理論の中心にあるのは、 Var⊥(タスク非関連軸の変動性) である。

Var⊥ は、
• SCAN では「ゆるみ」
• VSM では「階層の揺らぎ」
• 制約幾何学では「最適面の自由度」
• 3Dモデルでは「TI軸の分散」
として現れる。
つまり、Var⊥ は 切り替え現象の“共通言語” なのだ。

Var⊥ が増えると:
• 身体は歩行に固執できなくなる
• 新しい動き方を試す余地が生まれる
• 最適面が広がり、内部方向の自由度が増える
• geodesic に沿って遷移が始まる
という一連の流れが自然に起こる。

5. 切り替えは“自由度の再編成”である
統合理論が示す最も重要な結論はこれだ。

切り替えとは、身体が持つ自由度の再編成である。
• 歩行では「歩行に最適化された自由度」が働く
• 速度上昇で自由度が増え、揺らぎが広がる
• liminal で自由度が“再編成”される
• 走行では「走行に最適化された自由度」が働く
つまり、 切り替えは「歩き→走り」という単なるモード変更ではなく、 身体の自由度が組み替わる深いプロセス なのだ。

6. 統合理論が示す“普遍構造”
統合理論は、歩行→走行だけでなく、 あらゆる切り替え現象に共通する構造を示している。
• 姿勢の切り替え
• 運動スキルの切り替え
• 認知モードの切り替え
• 組織のモード切り替え(VSM)
• 生態系の相転移
すべてが同じ構造を持つ。
つまり、 切り替えは自然界に広く存在する“普遍的な現象” なのだ。

7. 次回予告:シリーズの総まとめへ
次回(第7回)は、 これまでの連載全体を総括し、
• 切り替え現象の全体像
• 4つの理論の関係
• 統合理論の位置づけ
• 今後の応用可能性
をまとめる。
いよいよ、 「切り替えとは何か?」という問いの最終回答 が見えてくる。

***

📰 連載シリーズ第7回
**切り替えとは何か:
SCAN × VSM × 制約幾何学 × 3Dモデルが示す“普遍構造”の全体像**

1. はじめに:最初の問いに戻る
この連載は、ひとつの素朴な問いから始まった。

「なぜ人は、ある速度を超えると歩行から走行へ切り替えるのか?」

単純なようでいて、 生体力学・神経科学・制御理論・組織論など、 多くの分野が長年取り組んできた深い問いである。

そして、ここまでの6回で、 私たちはこの問いを 4つの異なる視点 から眺めてきた。
• SCAN(ゆるみ → 境界 → 再安定化)
• VSM(階層構造の崩壊と再編成)
• 制約幾何学(最適面と geodesic)
• 3D 最小モデル(アトラクタ・変動性・遷移軌道)

いよいよ今回は、 これらすべてを統合し、 「切り替えとは何か?」の最終回答 を提示する。

2. 切り替えは“突然のジャンプ”ではない
多くの人は、歩行→走行切り替えを 「ある速度で突然スイッチが入る」 と考えがちだ。

しかし、4つの理論が示したのは、 切り替えは 連続的で、準備されたプロセス だということ。

切り替えは、 安定 → ゆるみ → 境界 → 遷移 → 再安定 という 5段階の物語 を経て進む。

これは、どの理論でも同じ構造として現れる。

3. 切り替えの核心は「自由度の再編成」
統合理論が示す最も重要な結論はこれだ。

切り替えとは、身体(またはシステム)が持つ自由度の再編成である。

歩行では、 身体は「歩行に最適化された自由度」を使っている。
しかし速度が上がると:
• 歩行の自由度が揺らぎ始める(Var⊥ 増大)
• 階層構造がゆるむ(VSM)
• 最適面が広がる(制約幾何学)
• アトラクタが浅くなる(3Dモデル)

つまり、 身体は“別の動き方”を試す余地を獲得する。
これが切り替えの準備段階である。

4. 境界領域(liminal)は“自由度が最大化する瞬間”
SCAN が示した liminal(境界領域)は、 単なる不安定状態ではない。

それは、
• 歩行の自由度が崩れ
• 走行の自由度がまだ確立していない
という、 自由度が最大化する瞬間 である。
この瞬間、身体は 「どちらにも決めきれない」 という状態に入る。

これは、
• 3Dモデルでは鞍部付近の揺らぎ
• 制約幾何学では最適面の内部
• VSMでは階層の崩壊 として現れる。

5. 切り替えは“最短で最も自然な道”を通る
境界領域に入ると、 身体は geodesic(最短経路) に沿って走行へ移る。

これは、
• 制約幾何学の geodesic
• 3Dモデルの遷移軌道
• VSM の再編成 がすべて一致する瞬間である。

つまり、切り替えは
• 無駄がなく
• 効率的で
• 自然で
• 再現性のある
“最短の道”を通って起こる。

6. 切り替えは“普遍的な現象”である
歩行→走行切り替えは、 実は自然界に広く存在する普遍的な現象の一例にすぎない。
• 姿勢の切り替え
• 運動スキルの切り替え
• 認知モードの切り替え
• 組織のモード切り替え(VSM)
• 生態系の相転移
• 社会システムの変化
どれも同じ構造を持つ。

つまり、 切り替えは“自然が選ぶ普遍的な変化の形式” なのだ。

7. 統合理論のまとめ:切り替えとは何か
ここまでの議論を一文でまとめると、こうなる。

切り替えとは、自由度が揺らぎ、境界領域を経て、 最短で最も自然な道を通って新しい安定状態へ移るプロセスである。

これは、 SCAN・VSM・制約幾何学・3Dモデルの すべてが一致して示す結論である。

8. おわりに:新しい視点で世界を見る
この連載を通して、 読者は「切り替え」という現象を まったく新しい視点で見られるようになったはずだ。

• 歩行→走行
• 習慣の切り替え
• 組織の変化
• 社会の転換
• 自分自身の変化

どれも同じ構造を持つ。

つまり、 切り替えの理解は、世界の理解につながる。

このシリーズが、 読者の中に新しい視点を育てる一助となれば幸いである。

***
本シリーズのまとめである論文は、以下の通りです。

論文タイトル
歩行—走行切り替えにおける制約幾何学と階層的再編成: SCAN・VSM・3D 最小モデルを統合する枠組み

要旨(日本語版 Abstract)
歩行から走行への移行に代表されるように、行動モードの切り替えは、生物・認知・組織など多様なシステムに普遍的に見られる現象である。しかし、既存の説明は、力学系理論、階層的組織モデル、制約最適化、運動変動性分析など、異なる研究伝統に分断されてきた。
本研究では、先行する4本の論文に基づき、SCAN、VSM(Viable System Model)、制約幾何学、3D最小モデルが、切り替え現象に適用した際に 共通の5段階構造 を持つことを示す。これらの理論は表現形式こそ異なるものの、いずれも「不安定化 → 自由度の増大 → 境界領域の通過 → geodesic 的遷移 → 再安定化」という同一の構造を記述している。
この構造的同値性に基づき、本論文は 統合理論(Unified Switching Theory) を提案する。本理論は、 (1) タスク非関連方向の変動性(Var⊥)の増大、 (2) 境界領域(liminality)の通過、 (3) 新たな安定状態へ向かう geodesic 的遷移 という3つの原理により、切り替え現象を一般的に説明する枠組みである。
本統合理論は、歩行→走行切り替えのみならず、運動協調、組織再編、認知モードの切り替えなど、多領域にわたる現象を統一的に説明できる。これにより、複雑システムがどのように再編成し、適応し、モードを切り替えるのかを理解するための、領域横断的かつ一般性の高い基盤を提供する。

リンク
=>「連載シリーズ:切り替えの物語 — AIとの対話から生まれた統合理論」記事の全文
=>論文5:歩行—走行切り替えにおける制約幾何学と階層的再編成: SCAN・VSM・3D 最小モデルを統合する枠組み

(作成者)峯岸 瑛(みねぎし あきら)

カテゴリー
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2026年5月のニュース

今年も5月は、NPWA会員の皆さんの活動は活発で多様です。学術ニュースは、「脳の回復機能」と「イメージトレーニング効果の可視化」に関する本邦発の2つの論文の紹介、下畑先生からの最新医学情報、「連載シリーズ:切り替えの物語」のNo.2, No.3です。

1.2026年5月の活動状況
・中嶋  佳奈恵さんの投稿
『園児も頑張っています!!』

・台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
你是不是在公園或平地看過有人拿著「兩支杖」走路,心裡想著:「走路就走路啊,幹嘛還要拿登山杖來健走?」其實這兩支杖是「健走杖」,是歐美流行多年,有效運用到全身肌肉的「健走杖運動」!單純健走多數用到的是下肢約60-70%肌群,但若是加上健走杖,能夠動用全身約90%的肌群,有效提升整體肌力與協調性。這種運動方式不僅適合各年齡層,還能幫助改善姿態,減輕下肢負擔,提升步態穩定性,降低跌倒風險。如果你也喜歡健走,那麼試試看再加上健走杖,一起體驗輕鬆的全身健走運動吧!❤️

・名古屋フィジカル・フィットネス・センターさんの投稿
今日は、ポールウォーキングを用いてのバランス力向上エクササイズをご案内いたしました❗️健康づくりのためにウォーキングや筋トレは一般的ですが、特に中高年者にとっては、このバランス力は大事にしたい体力です❗️なぜなら、転倒予防につながるからです。そしてさらに、動的バランス能力を上げることがポイントです。転倒も歩いていて、走っていてと、何か動作をしている時に転倒します。ですから、動作中のバランス力が大切になってきます。そこでこのポールを用いると、安全を確保する中でこの動的バランス力を刺激することが容易にできます‼️

・校條 諭さんの投稿
玉川上水沿いを風に吹かれて 5月の気まポ(気ままにポール歩き)は、京王井の頭線久我山駅に集合、玉川上水沿いに緑道を進んで、井の頭公園まで2本のポールで歩きました。約5km。 やや強めの風ながら緑道の木々に守られて、快適なポール歩きでした。 沿線に以前あったという養鶏場(産みたての卵販売)や野菜直売所がなくなっていたのは残念でした。 井の頭公園は緑深く、場所場所が多彩な顔で、何度来ても気持ちのよい場所です。 公園を出て近くの八十八夜という名前のレストランで、カンパイ&ランチしました。生ビール組は10人のうち3人。なお、ランチには都合でウォーキングには参加できなかった北村さんも参加しました。 ※写真は今回も半分以上、盟友田村和史君撮影です。

・中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より 5月駒場例会でした。 初夏(ちょっと早いか)を思わせる快晴青空の下60余名の参加者を迎え公園〜牧場とポールウォーキング三昧でした。 長中短の3コースに体験コースに分かれての闊歩を〜❗️ 皆さん〜 〜フレイル〜何こそ元気元気印の笑顔満載の散策でした。

・スマイルチームさんの投稿
2026.5.5〜10 活動記録 ☺︎中屋敷チェアエクササイズ®︎ 14名 ☺︎スマイルPW 14名 ☺︎スマイルチーム上溝自主練 16名 ☺︎相模原市文化協会祭役員会議 ☺︎相模原市文化協会役員会議 ☺︎青空PW 8名 ☺︎スマイル上溝名簿、チラシ作成 ☺︎上溝地域包括支援センター打合せ ☺︎CSW担当者打合せ

・佐藤 ヒロ子さんの投稿
【賑やかに 爽やかに】 2026/5/11 #船橋ウォーキングソサイエティ #シニアポールウォーキング 歩行力と体力に差があるシニア 外歩きと室内に分かれて 〇室内組は歓声が上がります じゃんけんとボール投げ 勝負、計算、連想と 頭と身体をフル回転で大盛り上がりです。 〇外歩きは感性を豊かに 新緑の旭町緑地公園と熱田神社 パワースポットでエネルギー充電です。

・田村 芙美子さんの投稿
快晴 三浦ネットのグループと逗子神武寺往復ポールウォーキング。前回はNWのメンバーと参りましたが、なんと当日<うっかり><肝心の>ポールを忘れてしまって、冷や汗をかいた😨💦のを思い出しました。 令和6年、開創1300年を迎えた 醫王山 来迎院 神武寺 (いおうざん らいごういん じんむじ) • 天台宗本山 比叡山延暦寺三浦薬師如来霊場札所 第1番 本尊 薬師如来 (伝 行基菩薩作) 724年正月、聖武天皇の命により 行基菩薩が十一面観音・薬師如来・釋迦如来の尊像を彫刻・奉安し、開山された寺院。 遠い奈良時代こんな山奥まで木材を運び立派な寺院を建てた当時の人達の信仰心に頭が下がります。 そして源頼朝政子の信仰厚かったお寺。さらに本堂の横から上に登るとハイキングコースになっていて鷹取山と摩崖仏があります。 古代感溢れた素晴らしい神社。

・Masako Shinchiさんの投稿
ウォーキングポールを相棒に 仲間とめぐる小さな旅 ぽる旅第5弾👣 予定は変わるよどこまでも♩ 見たかった笠間稲荷の八重の藤はすでに散り、お楽しみの落語の会は理由あって延期に😅さてどうするー?ということで急遽内容を変更した今回のぽる旅 笠間という地の懐の深さと、人の温かさを感じる旅となりました😊 /今回巡った場所/ ①笠間日動美術館「97歳セツの新聞ちぎり絵展」(7月20日まで展示 ) ②真浄寺 笠間城の建築物で唯一現存する八幡台櫓見学 ③かさま歴史交流館井筒屋 笠間城に関する情報発信やグッズ販売、様々な展示も楽しみ ④笠間城址ハイキング 佐白公園〜本丸〜千人溜 貴重な石垣跡を見ながら ⑤本日のお昼 鍋屋さんのおにぎりセット🍙🍙600円!と幸せ団子 急な変更に、小中学校時代の同級生や先輩、元同僚の方々が次々と力を貸してくれました。地元で活躍する人たちの温かさとパワーにただただ感動する旅でした 楽しかったーー❗️ 次回のぽる旅は石岡市です😊 茨城に遊びに来てみたくなったかな?

・佐藤 ヒロ子さんの投稿
#坪井公民館主催  【#健康ウォーキング講座】 2026/5/13 公民館は坪井近隣公園の中?  なんて素敵な立地条件。 室内で集中して基礎指導  仕上げはお隣の公園に移動   青い空の下で    歩きは前へ前へ 反応も早く呑み込みも早い    参加者の皆様 とても楽しい時間になりました。 次回は更にレベルアップをします。 お楽しみに〜〜 #船橋ウォーキングソサイエティ #講師派遣でウォーキング基礎指導

・田村 芙美子さんの投稿
イベントの多い5月。もう夏のような暑さですがおかわりありませんか。 今年もこちらもサポートいたします。ご参加どなたでもOKです。✨華✨齢と共に自分の身体に目を向けたいですね。

・長谷川 弘道さんの投稿
ポールウォーキング🚶 週2回レッスンを 担当させていただいている Ohana fitness studio 主催の ポールウォーキングイベントに 参加してきました😊 いつも元気パワーをいただける 長谷川先生のご指導は、 とにかく分かりやすくて、 楽しい〜‼️✨ 今回は、 ポールウォーキングの前に 身体の癖チェックや、 歩き方のポイントも学べて、 とても勉強になる時間でした。 指導者としても、 「これ、レッスンに活かしたい!」と 思う学びがたくさんで、 体感しながら学べた贅沢な時間🍀 お客様も、インストラクターも 同じレベルからスタート! みんなでワイワイって良いですね 身体を動かしながら、学び合い、刺激をもらい合い、自然と笑顔になれる。 改めて、こういう時間っていいな…と感じた一日でした😊 開催してくださった智香子先生、 講師の長谷川先生、 イントラ仲間の向井先生、 ご参加された皆さま。 ありがとうございました✨ #Ohanafitnessstudio #ポールウォーキングイベント #midori #身体の調律師 #足から身体を整える

・中村 理さんの投稿
3年後大学1年生等のPW体験会〜❗️

・柳澤 光宏さんの投稿
毎年開催している工場祭!昨年にちょっと届かなかったが700名を越える皆さんにご来場いただきました。ありがとうございますm(__)m 開場30分前には長蛇の列。並ばれる方のお目当てはアウトレット品。トレッキングポールは30分でSOLD OUTだったみたい。 今年導入したスタンプラリー。社長を探してスタンプ押してもらおうというメニューがあり、子どもから大人まで声をかけられとても忙しかった(^.^)社長を探せは好評だったみたいだけど、来場いただいた多くの知人とゆっくり話すことも出来なかったので、来年はどうしようかな~? 社員の一人ひとりが持ち場で力を発揮して、無事終わることができました。

・佐藤 ヒロ子さんの投稿
【目指そう!     理想の腕ふり】 2026/5/19  スマートバンドを使って  身体の隅々を気持良くストレッチ  筋トレもバランスとれた良い具合  仕上げは  スマートバンドを肩にかけて  のウォーキング  ダイナミックで美しい   フォームへ変化しました   #船橋ウォーキングソサイエティ #美姿勢ウォーキング

・田村 芙美子さんの投稿
午前中 広町緑地PWでは 真夏のように汗をかきました。とても速歩きとは言えないお喋りぶらぶら歩き。楽しくコミュニケーションがとれているのでよしとしますか。小さなお友達が遊んでいる横で彼らに負けないくらい ジジババはポールゲームに興じ皆さんまだまだ元気です。 帰宅後メンバーさんから頂いたあやめとバビアナという南アフリカの苗を植えつけ。ひまわり🌻の種も漸く蒔くことができましたが、気付いたら7時過ぎてびっくり。セットバックで7本の木を伐採した後の庭に色とりどりの花が増えてきます。

・佐藤 ヒロ子さんの投稿
坪井公民館主催 【健康ウォーキング講座】    全2回終了 2026/5/20 1回目の「基本の歩き」に引き続き 2回目は   「効き目のあるウォーキング」   (中強度)とは  講堂で歩きと速歩きの違いを   観て・やってみて  隣接する坪井近隣公園で実践 習うより慣れろで実際歩くと 身体が素直に反応しスムーズに  そして皆様の笑顔が   ますます輝きます 新たな出会いに感謝  坪井の皆様   何時迄もお元気でね

・中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より 東御市/八重原PW散策〜 地元/依田コーチのプランのロングコース(約5km) ショートコース(約2km) に分かれての総勢50名越えの参加者の皆さんでした。 朝からの青空の元、明神池の周り〜 八重原台地の田んぼ〜白土いも畑〜ワイン用ブドウ畑〜小麦の畑〜他今年の農業始まりを観賞しながらのポールウォークでした。

・田村 芙美子さんの投稿
臨時ポールウォーキング教室。広町の皆さんと大船フラワーセンターに集合。蓮の大樽広場でウォーミングアップのあとばら園~芝生広場~温室~~~散策。園内のレストラン?でカレーやうどん、ソフトクリームなど好き好きに。チリアヤメ、黄金マサキを庭に欲しい。

・佐藤 ヒロ子さんの投稿
【習志野市民カレッジ   ウォーキング講座】 2026/5/28    プラッツ習志野中央体育館   市民の町づくりの意識を醸成し、 生涯を通じて地域で活動できる 礎及び仲間を作る目的に集まっ た受講生30名。 2年目は実技中心に各分野の専門家 による講義として呼んで頂きました。男性が過半数越えは珍しく そのせいでしょうか?  反応が大人しい(笑)

 

来月以降の開催
・長岡智津子さんの投稿
写真1件

 

2.PW関連学術ニュース
今月は、脳に関する2つの本邦発の研究論文を紹介します。
2-1)「壊れた脳は治らない」を覆す~脳が自然に治る力を持続させる方法を発見~
**以下、東京科学大学の2026年5月14日付プレスリリースからの抜粋です**
ポイント
脳卒中を起こして脳組織が損傷しても、失った脳機能を取り戻すための回復メカニズムが働くことを発見しました。
脳卒中患者さんの脳は、この回復メカニズムを発症2ヵ月程度で失ってしまいますが、その原因となる因子がZFP384というタンパク質であることを突き止めました。
研究チームはZFP384の働きを抑える薬(核酸医薬品)を開発し、回復メカニズムを失わせずに持続させられることを発見しました。
脳に備わっている「治る」ためのメカニズムを、失わせずに持続させられることから、脳の病気の後遺症を減らす(なくす)治療薬の開発が期待されます。

概要
脳が病気によって壊れると、手足が動かなくなる、言葉が話せなくなる等、脳機能を失います。しかし脳が壊れても、リハビリテーションなどによって、失った脳機能を部分的に取り戻すことができます。このような脳機能回復は多くの患者さんで見られますが、脳が壊れてから2ヵ月程度で回復力を失ってしまう(後遺症が残ってしまう)ことが知られていました。「どうして回復力を失ってしまうのか」、東京科学大学(Science Tokyo)総合研究院 難治疾患研究所 神経炎症修復学分野の津山淳助教と七田崇教授らの研究グループは、東京都医学総合研究所、九州大学、フライブルク大学(ドイツ)と共同で、この長年の謎に挑みました。

研究チームは今回、脳細胞が回復力を獲得して失うまでの一連のメカニズムを解明しました。脳細胞は脳が壊れた後、1ヵ月程度は回復力を持ち続けますが、次第に脳が正常な(脳が壊れる前の)状態に戻ろうとする影響を受けて、ZFP384[用語1]というタンパク質が作られることが分かりました。失った脳機能をまだ十分に回復できていないのに、ZFP384が脳細胞の回復力を失わせてしまっていたのです。

研究チームは、ZFP384の働きを防ぐ薬(アンチセンス核酸[用語2])を開発しました。これをマウスに投与すると、脳が壊れてから1週間後~1ヵ月後に治療開始した場合でも、回復力を失わせずに持続させられることを発見しました。本研究による成果は、「臓器に備わった自然な回復力を、失わせずに持続させられる」ことに成功したものです。これまで回復が困難とされてきた脳をはじめとして、臓器の機能を取り戻す治療法開発に新たな道を開くものです。

本成果は、5月13日付(英国時間)の「Nature 」誌に掲載されました。

図1. 本研究の概要
図3.(左図、右図)ASO-Zfp384 を投与すると、脳梗塞後の神経症状が改善する。
(中央図)ASO-Zfp384 によって神経栄養因子など、修復性遺伝子の発現を持続促進できる。

論文情報
掲載誌:Nature
タイトル:Sustaining microglial reparative function enhances stroke recovery
(ミクログリアの修復機能を維持することは、脳卒中からの回復を促進する)
著者:Jun Tsuyama, Seiichiro Sakai, Kumiko Kurabayashi, Ayaka Nakamura, Eri Tanaka, Yuichiro Hara, Ito Kawakami, Makoto Tsuda, Takahiro Masuda, Marco Prinz, Hideya Kawaji, and Takashi Shichita
DOI:10.1038/s41586-026-10480-0

関連情報
本論文については、岐阜大学の下畑先生が、詳細な解説をFB投稿されています。当ニュースの「下畑先生からの最新医学情報」の2026年5月18日投稿をご覧ください。

 

2-2)ブレイン・コンピューター・インターフェースを活用して イメトレ中の脳状態を可視化することで運動能力を向上 ― 健常者のパフォーマンス向上やスポーツ、人間拡張分野への応用に道 ―

**以下は、2026年4月13日付の慶応大学のニュース・リリースからの抜粋です**

慶應義塾大学理工学部生命情報学科の岩間清太朗専任講師(有期)、牛場潤一教授、および松岡敦也(修士2年、研究当時)らの研究チームは、ブレイン・コンピューター・インターフェース(Brain–Computer Interface; BCI)を活用し、実際の体の動きを伴わない「運動イメージ訓練(いわゆるイメトレ)」中に、自分の脳状態を可視化し、思念を操る練習を行うことで、脳状態の切り替え能力が向上し、実際の運動パフォーマンスが改善することを明らかにしました。

発表のポイント
ポイント1: イメトレ中の脳内状態を、AIを使って可視化して訓練
・ これまでは本人もトレーナーも、実際の脳状態を知ることができませんでしたが、BCIを利用することでリアルタイムに可視化できました。
・ 脳内に電極を埋め込むことなく、ウェアラブルセンサ(脳波計)とAIだけで実現できた点が画期的です。
ポイント2: 実際に運動せず、イメトレだけで運動能力が向上
・ これまでは、ジムや競技場、楽器やキーボードなど、実際にトレーニングするための「場所」や「道具」が必要で、訓練環境を整備する必要がありました。
・ 時間や場所にとらわれず、好きなときに、好きな場所で、BCIを使って脳の能力を拡張できるようになりました。
ポイント3: 体の動きを司るコントローラーである脳を直接鍛えることに成功
・ これまでのテクノロジーを活用したトレーニングでは、電極を体に貼って計測する心電図・心拍計測あるいは筋電図を利用したものがありましたが、今回は「脳」を対象にしたトレーニングを提案しました。
・ 全身の筋肉に司令を送る脳そのものの活動を訓練すると、実際のパフォーマンスが向上することを示した点が画期的です。

BCI は、本人には自覚できない「脳状態」を可視化し、それをリアルタイムにユーザーへフィードバックすることで脳活動の自己調節を可能にする技術です。同研究チームはこれまでに、脳卒中後の重度まひの機能回復を実現し、大学発スタートアップ「(株)LIFESCAPES」を通じてBCIを医療機器化して、全国60の医療機関への導入を進めてきました。本研究は、病気やけがをしていない健常成人の運動能力をも BCI によって向上させることができることを示し、脳の内部で起きている神経回路の切り替わりの様子を可視化し、詳細な分析をした画期的な成果です。 今後は、対象者や課題を広げた検証、効果の持続性や個人差の評価、実際の運動支援場面での有効性の確認を進め、医療・ヘルスケア・人間拡張・スポーツ分野での応用を目指します。

本成果は2026年4月10日付で『Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(米国科学アカデミー紀要)』 に掲載されました。

 

2-3)岐阜大学医学部の下畑先生からの最新医学情報(2026年5月)
・当科も参加した多系統萎縮症に対する抗αシヌクレイン抗体療法の国際治験:AMULET試験が示した「有効性の兆し」
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年5月1日のFB投稿です***
多系統萎縮症(MSA)は,パーキンソニズム,小脳性運動失調,自律神経障害を特徴とする進行性神経変性疾患です.現在の治療は対症療法に限られ,疾患進行そのものを抑制する治療は存在していません.こうした状況のなかで,αシヌクレインの異常凝集とその伝播を標的とした免疫療法が注目されています.今回ご紹介するのは,抗αシヌクレイン抗体amlenetugの有効性と安全性を検証した第2相試験(AMULET試験)です.デンマークのLundbeck社が中心になって行い,米国・日本の18施設が参加した国際多施設共同試験です.日本からはAMULET Study Groupとして,私ども岐阜大学,国立病院機構仙台西多賀病院,藤田医科大学の3施設が参加しています.
対象は発症から5年以内のMSA患者(40~75歳)であり,MSA-PとMSA-Cの両サブタイプが含まれています.最終的に61例が治療を受け,amlenetug群40例,プラセボ群21例に割り付けられました(図1).4週間ごとの静脈内投与を48~72週間行うデザインであり,主要評価項目はUMSARS(Unified Multiple System Atrophy Rating Scale)による疾患進行です.48例(78%)が試験を完遂していますが,ドロップアウト率の高さはMSAの臨床試験の難しさを反映していると思います.
さて主要評価項目です(図2).UMSARSの経時的変化をベイズモデルで解析した結果,amlenetug群ではプラセボ群と比較して約19%の進行抑制が示唆されました.しかし事前に設定された有意基準には達せず,統計学的有意差を示せませんでした.ただしこの図から,試験期間で一貫してamlenetug群が良好な状況にあることが理解できます.つまり「明確な有効性の証明には至らなかったが,治療効果のシグナルは存在する」ということです.
ここですぐに思い当たるのは患者集団の不均一性です.図3では事後解析として,ベースラインのUMSARS total scoreが40未満の比較的早期の患者群が検討されており,この群ではより大きな進行抑制効果が示唆されています.すなわち,本抗体の効果は疾患の進行程度に影響を受ける可能性があり,進行例を含む全体集団では効果が希釈された可能性があります.この点は,早期介入の重要性を示唆する極めて重要な知見です.
つぎに副次評価項目に目を向けると,mUMSARSでは約27%の進行抑制が示され,UMSARS part IおよびIIでもそれぞれ22%,17%の抑制傾向が認められました.ただしいずれも統計学的有意差には至っていません.またAppendixにはMRI解析の結果が示されています.橋や小脳白質といったMSAの病変部位において,amlenetug群では体積減少が抑制される傾向が認められました(図4).これも統計学的有意差には至っていませんが,臨床スコアと同様に進行抑制の傾向は一致しています.
安全性に関しては,治療関連有害事象および重篤有害事象の頻度はプラセボ群とほぼ同等であり,大きな安全性上の懸念は認められませんでした.主な有害事象は感染症や頭痛など一般的なものであり,免疫療法としては比較的良好な忍容性が示されています.また,αシヌクレイン関連バイオマーカーの変化から,本薬が実際に体内でαシヌクレインに結合していることが確認されています.具体的には,遊離型αシヌクレインの割合が低下することが示されています.
結論として,本試験の解釈としては「有効性が示唆されるが,患者集団の不均一性から証明しきれなかった試験」だと思います.つまり個体差が大きいため,61例というサンプルサイズでは統計学的有意差の検出が困難であったということだと思います.現在,第3相試験MASCOT試験が当院を含め進行中です.この試験では用量反応の検証と十分な症例数の確保により,真の臨床的有効性を明確に証明する設計へと進化しています.まだ時間はかかりますが,有効性を証明できればと考えています.
Kjærsgaard L, et al. Safety and efficacy of the anti-α-synuclein monoclonal antibody amlenetug for the treatment of patients with multiple system atrophy (AMULET): a phase 2, randomised, double-blind, multicentre trial. Lancet Neurol. 2026 Apr 24:S1474-4422(26)00100-6. doi: 10.1016/S1474-4422(26)00100-6. PMID: 42044642.

・岐阜大学脳内抄読会 第103,104 回 ALSをめぐる重要な2つのトピックス―安楽死とBrain–Machine Interfaceに2人の若手が挑戦
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年5月2日のFB投稿です***
今週のオンライン抄読会です.この1か月間,脳神経内科で研修を行った2年目の小森拓夢先生と佐藤健龍先生が,いずれもALSに関する新しく,かつ重要なテーマに取り組んでくださいました.
小森先生は,難病医療における極めて重要かつ複雑な倫理的課題である安楽死について,オランダにおけるALS患者の実態を検討した論文を紹介されました.安楽死を選択した患者さんの背景や理由を丁寧に読み解くことで,患者さんのQOL向上につながる示唆が得られるのではないかという問題意識に基づいた発表であり,大変意義深いものでした.発表後には多くの質問や意見が寄せられ,活発な議論が展開されました.一方で,本テーマは単一の論文だけで十分に論じ尽くせるものではないため,最後に私からも解釈の視点について補足説明を行いました.発表19分,質疑29分でした.
一方,佐藤先生は,ALSの進行に伴い患者さんにとって大きな苦痛となる言語機能の喪失に対し,Brain–Machine Interface(BMI)を用いた支援の可能性についての論文を紹介されました.さらに,関連分野の近年の進歩や基本用語についても整理され,理解を深める内容となっていました.論文のまとめ方も非常に現代的で工夫に富んでおり,印象に残る発表でした.お二人ともBMIに強い関心を持っておられるとのことで,将来的にこの分野での研究に挑戦されることを大いに期待したいと思います.発表12分,質疑15分でした.
van Eenennaam RM et al. Frequency of euthanasia, factors associated with end-of-life practices, and quality of end-of-life care in patients with amyotrophic lateral sclerosis in the Netherlands: a population-based cohort study. Lancet Neurol. 2023 Jul;22(7):591-601. PMID: 37353279.
Card NS, et al. An Accurate and Rapidly Calibrating Speech Neuroprosthesis. N Engl J Med. 2024 Aug 15;391(7):609-618. doi: 10.1056/NEJMoa2314132. PMID: 39141853

・「厚労省 難病患者の支援体制に関する研究班」ホームページのリニューアル ―難病医療に役立つ研究成果物のご紹介―
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年5月3日のFB投稿です***
我が国の難病対策は,平成26年に「難病の患者に対する医療等に関する法律」が成立して以降,医療の提供にとどまらず,療養生活全体を支える総合的支援へと大きく発展してきました.この流れの中で,西澤正豊先生を研究代表者とする研究班(西澤班)が制度設計や支援体制の在り方に関する重要な政策提言を行い,その基盤の上に,平成30年からは小森哲夫先生を中心とする研究班(小森班)が,医療・福祉・地域連携を包含した実践的な支援モデルの構築に取り組んできました.
そして令和8年4月1日より,私が研究代表者を小森哲夫先生より引き継ぐこととなりました.これまで研究班を牽引されてきた小森先生をはじめ班員の先生方のご尽力に深く敬意を表するとともに,その成果を継承し,さらに発展させて現場に還元していく責任の重さを感じております.本研究班では,これまでの成果を基盤としつつ,現場のニーズに即したエビデンスの創出と政策提言を通じて,難病患者さんを取り巻く医療・療養環境のさらなる充実を目指してまいります.現在,各領域のエキスパートである多職種の先生方(研究分担者23名,研究協力者13名)とともに,研究を開始しております(詳細はホームページをご参照ください).
https://plaza.umin.ac.jp/nanbyo-kenkyu/
このたびのホームページ改定では,これまで蓄積されてきた研究成果物を整理し,自由にダウンロードしていただける形としました.特に2026年度に公開した以下の8つの成果物については,ご作成いただいた班員の先生方に解説も加えていただいており,日常診療・支援の現場で直ちに役立つ内容となっています.
◆難病患者の災害対策ガイドライン
災害時に必要な支援と多職種連携のあり方を示した実践的指針です.
◆難病患者支援における施設間・職種間の連携-知・技・コツ-
発症期から終末期までの課題に対応するための具体的な連携の方法をまとめています.
◆【別冊】医療機関における就労支援のスキルアップ事例集
多機関連携によって「働く」を支える実践例を提示しています.
◆難病相談支援センターの運営に関する事例集
全国の好事例を集約し,地域格差の是正に資する内容です.
◆大規模災害を経験した訪問看護師から学ぶ
災害時に医療と生活を途切れさせないための実践知をまとめています.
◆難病相談支援センターの運営チェックリスト活用方法の手引き
センター運営の質向上のための評価指針です.
◆難病相談支援センターの運営チェックリスト(EXCEL)
自己評価を可視化し,継続的改善につなげるツールです.
◆難病のケアマネジメント技とコツ「改訂版」
現場で活用できる具体的な支援の工夫をまとめています.
難病診療・支援は専門性が高く,経験の差がそのまま質の差につながりやすい領域です.だからこそ,こうした知識やツールを広く共有し,現場で活用していただくことが極めて重要であると考えています.本サイトが,政策立案者,医療・福祉関係者,さらには患者さん・ご家族の皆様にとって有用な情報基盤となり,我が国の難病対策の質的向上につながることを願っています.ぜひ一度ご覧いただき,日常の実践にご活用いただければ幸いです.

・神経科学の“今”を,一冊でつかむ ―『Annual Review 神経 2026』予約開始―
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年5月4日のFB投稿です***
本書は,神経科学におけるこの1年の進歩を一冊で俯瞰できる書籍として,長年にわたり多くの読者に親しまれてきた伝統あるシリーズです.昨年より,鈴木則宏先生をはじめとする前編集委員の先生方からバトンを引き継ぎ,矢部一郎先生,杉江和馬先生,中島一郎先生,堀江信貴先生とともに,編集委員として本書の制作に携わっております.いよいよ5月下旬発売予定です.
本年度版も,神経科学の進歩を多角的に捉え,臨床医・研究者双方のニーズに応える最重要トピックスを網羅した,非常に充実した内容となっております.「Basic Neuroscience」では,基礎医学と臨床医学をつなぐ重要な知見を整理し,「本年の動向」では発症前診断などの最前線や,神経学に革新をもたらし得る新技術を詳述しています.さらに「Clinical Topics」では,新規治療法や診断技術を含め,近年注目される疾患群やトピックスを取り上げ,臨床のアップデートに資する内容となっています.
年明けから全原稿を拝読し,編集作業に没頭しておりましたが,改めて執筆陣の先生方による総説の質の高さに深い感銘を受けました.神経領域の最前線を凝縮した一冊として,自信をもってお届けできる決定版です.ぜひご期待いただければ幸いです.
中外医学社HP
https://www.chugaiigaku.jp/item/detail.php?id=5130
アマゾン
https://amzn.to/4dmVSWE
【目次】
Ⅰ.Basic Neuroscience
1. 神経生理
1) Brain mappingの最近の動向
2) 痛覚システムにおける最新知見
3) AIによる脳波判読システム
2. 神経病理
1) プリオン病における髄液バイオマーカーと治療開発
2) 剖検脳を用いた多系統萎縮症病態研究の最近の進展
3) 神経免疫の視点から見たアルツハイマー病の神経病理学
4) 常染色体顕性遺伝性白質脳症とは何か
3. 生化学(分子生物学)
1) 抗体を用いたin situビオチン標識法による非膜オルガネラ構成因子の網羅的同定
2) ミクログリアとアルツハイマー型認知症
3) 慢性ストレス誘発性うつ病におけるニューロンのエピゲノム制御
4. 画像
1) PSP/CBDの画像所見;J-VAC研究を含めて
2) 日常遭遇する中枢神経感染症の画像診断
3) アミロイド関連画像異常(ARIA)とその周辺病態
Ⅱ.本年の動向
1) 病態修飾療法時代における発症前診断と着床前診断
2) パーキンソン病とAI
3) 微小炎症と神経疾患
4) AIを用いた脳科学とリハビリテーション医療
5) 神経変性疾患に対するseed-amplification assayの現状と課題
6) 運動失調症の患者レジストリ J-CAT の現状と活用
7) 新たな心血管系疾患の危険因子としてのマイクロ・ナノプラスチック
8) パーキンソン病における概日リズムと睡眠研究
9) グリンパティックシステムI研究の最新動向
10)ロボット支援手術 最新の動向
Ⅲ.Clinical Topics
1. 感染症・炎症疾患
1) 帯状疱疹および帯状疱疹ワクチンと認知症
2) HTLV-1関連脊髄症の患者レジストリとデータベース研究
2. 脳血管障害
1) ICT,AIを活用した脳卒中診療
2) Stroke Oncologyの病態機序と治療
3) 頚動脈プラークの画像診断
4) 機械的血栓回収療法の費用対効果
3. 脳腫瘍
1) 脳腫瘍のメチル化解析
2) グリオーマのIDH阻害剤
4. 外傷
1) スポーツによる脳震盪
2) 神経集中治療におけるモニタリング
5. 変性疾患
1) Perry病の臨床・病理・分子機構
2) 筋萎縮性側索硬化症と脂質代謝(SPT関連遺伝子を中心に)
6. 中毒・代謝疾患
1) Niemann-Pick病type Cの病態と臨床
2) マンガンによるパーキンソニズムの病態機序と治療の可能性
3) Leigh症候群に対するミトコンドリア移植療法
7. 脱髄・免疫性疾患
1) 視神経脊髄炎スペクトラム障害の治療の進歩
2) 自己免疫性脳炎Update
8. 末梢神経障害
1) CIDPのアンメットニーズと最新治療
2) RFC1遺伝子関連スペクトラム障害(CANVAS)の臨床遺伝学的特徴
9. 神経筋疾患
1) 多発性筋炎・皮膚筋炎診療ガイドライン2025
2) ミトコンドリアM2抗体筋炎の臨床病理学的特徴
3) 遺伝性筋疾患レジストリRemudyの社会的意義と課題
10. 自律神経疾患
1) 遺伝性ATTRアミロイドーシスUpdate
11. 機能性疾患)
1) てんかん発作分類 解説
2) 遺伝子異常とてんかん
12. 機能的脳神経外科
1) てんかん焦点に対する定位温熱凝固術
2) 精神科疾患に対するニューロモデュレーション
13. 機能性神経障害
1) 機能性神経障害に対する精神的アプローチ

・がんの発生とアルツハイマー病のメカニズムにはつながりがある!?
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年5月5日のFB投稿です***
NHK「タモリ・山中伸弥の!?がん克服のカギ」を拝見しました.初めて知ることばかりで驚きの連続であり,勉強になりました.また患者さんを含む視聴者に「希望を持ってもらいたい」とする温かい視座が感じられました.
【番組の要旨;とくに5や6に驚きました】
1. 有酸素運動ががんの再発を抑制する.筋での糖の使用が亢進し,ガン組織における糖の取り込みが減少するため.
2. 血液中のがん細胞が急増して全身の種々のサイズの血管に塞栓が形成されると個体死に至る.
3. がん細胞がその周囲にある正常細胞(線維芽細胞や免疫細胞)の性質を変えてしまう.悪玉になった正常細胞を合成レチノイドを用いて善玉に戻すことで治療につながるかもしれない.
4. がん治療前にリハビリテーションを行い,身体機能を上げると予後が改善する.
5. COVID-19等の感染症に罹患した人は,1〜2年以内にがんの再発や悪化のリスクが大幅に高まり,死亡リスクは最大8倍まで高まる.これは,休眠がん細胞がウイルス感染により放出されたサイトカインによって休眠から目覚め,増殖を始めるため.
6. がんの遺伝子変異は正常細胞では生じないと言われてきたが,健康な50代の皮膚の正常細胞の3分の1でがんの遺伝子変異が起きていた.なんと最初の遺伝子変異は受精から数週間で生じうる.増殖した遺伝子変異を持つ細胞同士は競合するが,より環境に適応したもの(免疫を逃れたり,薬の耐性を獲得するもの)が生き残る.つまりがん細胞はダーウィンの「生存に有利なものが生き残り子孫を残す」という進化の法則に則っている.
7. しかし,喫煙のような生活習慣を改善することで,変異をもつ細胞が減らせることも分かってきている.
【私の感想】
1. がんの発生とアルツハイマー病(AD)のメカニズムにはつながりがある
番組では,「正常な細胞でもがん遺伝子変異が起きる」ことが紹介されていた.当ブログでも紹介したCell誌のADに関する論文(4月30日のブログ参照)でも,全く同じ現象が脳内で起きていることが報告された.アミロイドβなどによる炎症環境が「選択圧」となり,増殖力や炎症反応が高い「がん関連遺伝子の変異を持ったミクログリア」が生き残り,優位に広がっていくというもの.このことから,がんの発生メカニズムとADのメカニズムは,根底で繋がっているのではないかと感じた.
2. がんや老化のメカニズムは「生命のシステムのバグ」ではないか?
「がん遺伝子が変異することは進化の宿命であると同時に,これこそが老化の根本的なメカニズムである」と感じた.前述のCell論文でも,「なぜ加齢が認知症の最大のリスク因子なのか?」という問いに対し,「変異の蓄積と選択にかかる時間」であると明確に説明づけられている.生命が進化するために避けられない「遺伝子変異(システムのバグ)」が時間をかけて蓄積し,環境に適応して増殖した結果が「がん」であり,同時に「老化(ADなど)」でもある――.そのように,壮大な生命のシステムとして語ることができるのではないか.言い換えると,老化とは,一部の細胞が生き残るために利己的な進化を遂げ,その結果として個体を壊してしまうプロセスなのではないか.
3. がんとADの未来の治療アプローチにも共通点がある
がん細胞は運動やレチノイドなどにより環境を変えることで,良性にできるかもしれないというパラダイムシフトが提示された.Cell論文も同様に,ADにおいて,変性する神経細胞やアミロイドβ,タウが標的ではなく,その周囲に存在する環境(=ミクログリア)に対して,がん領域の既存薬(分子標的薬)が治療応用できる可能性を示唆している.病態に共通点があるため治療アプローチも似てくると思った.
かつて新潟大学脳研究所の神経病理の教授から「ADの治療に挑むということは,自分は老化に挑むということだと思っている」という言葉を聞いたことがあり,非常に印象に残っていました.この番組を見て,その言葉を思い出しました.妄想かもしれませんが,がんもADも「老化」という生命の宿命の副産物であって,我々はそれに挑んでいるのではないだろうかと思いました.多くの示唆に富む,素晴らしい番組でした.

・機能性神経障害の診療のコツは「どのようにその診断に至ったのかを患者さんに説明すること」である!
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年5月8日のFB投稿です***
International Parkinson and Movement Disorder Society(MDS)の「Clinical Clues」は,運動異常症診療に役立つ実践的なコツを,世界のエキスパートが短時間で紹介する人気シリーズです.今回は,私が尊敬するシンシナチ大学のAlberto J Espay教授による機能性神経障害(FND)診療のポイントについてです.2分弱の印象的なフリー動画がXやInstagramで公開されています.私自身も,新患外来にFND患者さんをご紹介いただく機会が多いのですが,まさに日頃から感じていた大切な視点を,Espay教授が見事な言葉で簡潔に表現してくださいました.診療に携わる脳神経内科医にとって示唆に富む内容であり,大いに共感いたしました.以下,おおまかな日本語訳をご紹介します.
「少なくとも,機能性運動異常症の患者さんの診療において,今から述べること以上に重要なことは思いつきません.それは,『どのようにして診断に至ったのかを患者さんに説明すること』です.さらに,患者さんに認めるその異常な動きが機能性運動異常症の診断基準に合致していると判断するために,医師がどのような見方をしたのかを患者さんに教えることです.そして,それらの異常な動きが機能性運動異常症の病態に特有のものであることを伝えることです.
こうした説明は,患者さんがどのように診断されたのかを理解するうえで非常に大きな助けとなり,その理解は診断を受け入れることにつながります.これは治療において最も重要なステップです.患者さんが,自分に何が起きているのかを理解したうえで診察室を後にすることができれば,その先にある大変な過程にも取り組みやすくなります.なぜなら,機能性運動異常症のリハビリテーションには大きな努力が必要だからです.しかし,その努力は患者さんの意欲によって支えられます.患者さんが,自分が何と向き合っているのかを理解できればその意欲に繋がります.
多くの患者さんは,「以前の担当医たちは自分の病気の診断を分かっていなかった」と思い,私たちのもとを訪れます.しかし,紹介状を見返してみると,その医師たちは実際には患者さんの診断を理解していたことが分かります.ただ,それを適切に伝えていなかったのです!そのため患者さんの心の中で,「誰も自分が何の病気なのか分かっていない」という認識になってしまうのです.そしてもちろん,その結果として「この異常な動きを自ら演じていると思われているのではないか?」「この異常な動きは本物ではないと思われているのではないか?」という思いが生まれます.こうした考えは患者さんにとって有害であり,リハビリテーションの邪魔になります.ですから,医師がなぜその診断に確信を持っているのかを患者さんが理解できるような形で診断を伝えることができれば,それこそが治療における最初の一歩であり,かつ最も重要な一歩になるのです.」

・2026年の2大研究が示す帯状疱疹ワクチンによる認知症リスク抑制効果
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年5月9日のFB投稿です***
近年,認知症の発症にウイルス感染や免疫機構が関与する可能性が注目されています.とくに帯状疱疹ウイルス(VZV)は神経系に潜伏し,加齢とともに再活性化することから,神経炎症や神経変性との関連が議論されてきました.今回は2026年になって報告された帯状疱疹ワクチンが認知症発症に与える影響を検討した2つの重要な研究と従来の研究をまとめてみます.
まずLancet Neurol誌に掲載された研究は,Stanford Universityからのもので,カナダ・オンタリオ州の一次医療データベースを用いた大規模解析です.この研究の最大の特徴は,生年月日に基づくワクチン接種資格(生ワクチン;Zostavax)の有無を利用した「自然実験」という手法にあります.すなわち,1945年生まれと1946年生まれという,年齢や生活背景がほとんど同じ人たちを,制度上ワクチンを受けられるかどうかという違いだけで比較することで,生活習慣や健康意識といった交絡因子の影響を受けにくくし,ワクチンそのものの効果により近い形で評価できるようにしています.カナダ全土から抽出された約46万人のうち,オンタリオ州の約23万人を対象とした解析の結果,ワクチン接種資格のある群では,約5.5年の追跡期間において,認知症の新規診断が約2.0%ポイント低下していました(図1).この図は,解析方法をさまざまに変えても一貫して「ワクチン接種対象群が認知症が少ない」という結果を示しており,結果の頑健性が確認されています.さらに,ワクチンプログラムが存在しない他州との比較でも,同様に認知症発症が少ないことが示されており,この効果が偶然や他の要因によるものではない可能性が強く示唆されます.
つぎにNat Commun誌に報告された研究は,米国カリフォルニア州南部からのもので,組換え帯状疱疹ワクチン(RZV;Shingrix)の効果を検討した大規模コホート研究です.対象は65歳以上の約33万人であり,傾向スコア重み付けを用いて接種群と非接種群の背景因子を調整しています.その結果,RZVを2回接種した群では,認知症発症リスクが約51%低下し,ハザード比は0.49(95%信頼区間0.46–0.51)と非常に強い関連が示されました.図2では,累積発症率が非接種群10.64%に対し,接種群5.67%と明確に低下しており,大きな差があることが視覚的にも分かります.さらに,健康志向の高い人ほどワクチンを受けやすいというバイアスを考慮して,三種混合ワクチン(Tdap)接種者との比較も行われましたが,それでもなおハザード比0.73と有意なリスク低下が維持されていました.
これら2つの研究は方法論が大きく異なります.前者は因果推論に強い自然実験,後者は実臨床データに基づく大規模観察研究です.しかしいずれも「帯状疱疹ワクチンが認知症リスクを低下させる」という結論で一致していました.効果の機序については未だ確立されていませんが,いくつかの仮説が提示されています.すなわち,VZVの再活性化を抑えることで神経炎症や血管障害を抑制する可能性に加え,体内に潜伏している他のウイルス(単純ヘルペスウイルスなど)の再活性化も抑制されることで,結果として認知症リスクの低下につながる可能性等が考えられます.話題のミクログリアの活性化も当然促進されると思います.
図3に近年の研究結果をまとめてみました.自然実験研究(ウェールズ,オーストラリア,カナダ)では,いずれも絶対リスクが1.8~3.5ポイント低下し,異なる国や医療システムにおいても一貫した結果が示されている点は重要だと思います.一方,大規模観察研究では,帯状疱疹ワクチン接種によりハザード比で11〜51%低下することが報告されており,特に組換えワクチン(RZV)の2回接種が最も強い効果を示しています(32~51%減少).生ワクチンも組換えワクチンも有効ですが,生ワクチンの効果は時間とともに減弱する可能性が指摘されています(Polisky et al. Nature Medicine, 2025).
以上より,帯状疱疹ワクチンは感染症予防という従来の役割を超えて,認知症予防という新たな意義を持つことはほぼ間違いないと言えます.とくに,高齢化社会において実装可能な介入である点は重要であり,今後の公衆衛生戦略にも影響を与える可能性があります.ただし,観察研究が中心であること,フォローアップ期間が比較的短いこと,機序が完全には解明されていないことが限界であり,今後のさらなる検証が必要です.
Pomirchy M, et al. Herpes zoster vaccination and incident dementia in Canada: an analysis of natural experiments. Lancet Neurol. 2026 Feb;25(2):170-180. doi: 10.1016/S1474-4422(25)00455-7. PMID: 41579903.
Rayens E, et al. Recombinant zoster vaccine is associated with a reduced risk of dementia. Nat Commun. 2026 Feb 9;17(1):2056. doi: 10.1038/s41467-026-69289-0. PMID: 41663414.

・Nature誌100万人ゲノム解析研究が示したリピート伸長病の真実
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年5月10日のFB投稿です***
米国Regeneron Genetics Centerから,100万人を超える大規模ゲノムデータを用いて,神経疾患を引き起こすリピート伸長(反復配列異常伸長;リピート expansion)を包括的に解析した研究がNature誌に報告されました.具体的にいうと,ハンチントン病,脊髄小脳変性症,筋強直性ジストロフィー,ALS/FTDなどに認めるリピート伸長について,「一般集団にどれくらい存在するのか?」「どの程度発症と関係するのか?」「症状が出る前から神経変性が始まっているのか?」を検討したものです.私は大学院生時代,この疾患の遺伝子診断や研究に没頭していたので,非常に大きな驚きを持って論文を読みました.
著者らは,UK Biobankを含む7つの大規模コホートから,102万人以上の全エクソーム解析データと,46万人以上の全ゲノム解析データを解析し,HTT,DMPK,C9orf72,CACNA1Aなど37遺伝子座のリピート長を検討しました.
まず非常に興味深かったのは,「病的リピート伸長を持っていても,実際には診断されていない人が多数存在する」という結果です.図1では,「病的リピート保因者の頻度(縦軸)」と「実際の疾患有病率(横軸)」が比較されています.もし「病的repeatを持つ人=全員発症」であれば,点は斜めの線(y=x)の上に並ぶはずです.しかし実際には,多くの遺伝子で点が線より上(ブルー領域)にあります.つまり「病的リピートを持っていても,実際には診断されていない人がかなり存在する」ことを意味します.また各遺伝子名の下に書かれている「%」は「その遺伝子の病的repeat expansionを持つ人の頻度」を表しています.例えばハンチントン病の原因となるHTTの0.04%は「約2,500人に1人が病的リピートを持っていた」という意味です.よって病的リピート伸長保因者は10万人あたり16~53人程度と推定されますが,従来のハンチントン病有病率(3~7人/10万人)を大きく超えています.DMPK 0.09%やCACNA1A 0.027も同様で,病的リピート保因者数が実際の患者数を大きく上回っていました.この結果は,「病的リピートを持つ=必ず発症する」わけではなく,浸透率は100%ではなく,従来考えられていたほど単純ではない可能性を示しています.
また興味深かったのは,リピート伸長の頻度に祖先集団による明瞭な違いが認められた点です.特にCACNA1A伸長は東アジア系集団で高頻度であり,日本や韓国でSCA6が比較的多いことを示した従来の疫学研究と一致していました.一方,DMPK,C9orf72,FXN(フラタキシン)のリピート伸長はヨーロッパ系集団で高頻度でした.この結果は,神経変性疾患の地域差や人種差の背景に,リピート伸長の分布の違いが関与している可能性を示唆しています.私自身,大学院生時代にフリードライヒ失調症の原因遺伝子であるFXNのGAAリピートをlong PCRでひたすら解析していた時期がありました.しかし,何度電気泳動を繰り返しても陽性例が見つからず,「これが人種差か!」と実感したことを懐かしく思い出しました.
さらに本研究では「リピート数が増えるに従って,発症リスクや浸透率が徐々に高まっていくこと」が示されました.特にHTT,DMPK,C9orf72では,リピート長が長くなるほど発症リスクが段階的に上昇していました.従来は「40リピートなど,一定以上のリピート数になると発症する」と理解されることが多かったのですが,本研究では,その手前の“premutation領域”でもすでにリスクが上昇している可能性が示唆されました.つまり,「健常」と「疾患」の間には連続的なグラデーションが存在するということです.
そして本研究で最も重要なのは,「症状が出る前から神経変性が始まっている」ことを,大規模データで示した点です.著者らはUK BiobankのMRIデータを解析し,まだ診断されていないリピート伸長保因者の脳体積を調べました.この結果,非発症HTT病的伸長保因者では,被殻体積が22.1%も減少していました(図2左).つまり,「症状が出るかなり前から,ハンチントン病らしい神経変性が静かに進行している」ことを意味します.同様に,CACNA1A伸長保因者では小脳灰白質体積が24.6%減少し,C9orf72伸長保因者では視床体積が9%減少していました.しかも,これらの萎縮は,それぞれの疾患で最も障害されやすい部位です.つまり,遺伝子変異があるだけではなく,「その疾患らしい神経変性」が発症前から始まっていたことになります.さらに血液バイオマーカーも解析されました.HTT伸長保因者では,神経軸索障害マーカーであるNfLが約1.9倍に増加していました.これは,無症候段階ですでに神経変性が進行していることを支持します(図2右).
本研究は,リピート伸長疾患に対する考え方を大きく変える可能性があります.これまで一般に「症状が出てから診断する疾患」と考えられてきました.しかし本研究は,「症状が出る前から脳萎縮や神経変性が始まっている」ことを明確に示しました.将来的には,もし治療が確立すれば,ゲノム解析と血液バイオマーカーを組み合わせて積極的に,発症前段階で高リスク群を同定し,超早期介入を行う時代が来るのかもしれません.アルツハイマー病研究で進みつつある“preclinical neurodegeneration”という概念が,リピート伸長病にも広がり始めることを予感させます.そして治療開発につなげるために,リピート伸長を持っていても発症しない人のメカニズムを調べる研究が当然始まっているのではないかと思いました.
なお,個人的にも関心の深いDRPLA(ATN1リピート伸長)についても,本研究では解析対象に含まれていましたが,100万人規模の解析にもかかわらず,病的伸長保因者はほとんど検出されませんでした.東アジアでSCA6が比較的高頻度であったこととは対照的であり,DRPLAは日本では重要な遺伝性神経疾患として認識されている一方で,一般集団全体でみると依然として非常に稀少な疾患であることをあらためて印象づける結果でした.
Pounraja VK, et al. Population-scale repeat expansions elucidate disease risk and brain atrophy. Nature. 2026 Apr 8. doi: 10.1038/s41586-026-10345-6. PMID: 41951733.

・米国神経学会プレジデントNatalia S. Rost 先生から学ぼう!
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年5月13日のFB投稿です***
第67回日本神経学会学術大会(大会長:西山和利先生)では,American Academy of Neurology(#AAN)との特別企画が開催されます.今回,AAN Presidentであり,ハーバード大学医学部神経学教授でもあるRost先生を日本にお迎えし,AAN Special Lecture,シンポジウム「予防神経学の原理と実践」,そして “Meet the AAN President” が企画されています.国際的に活躍されるRost会長から,予防神経学,リーダーシップ,そして脳神経内科の未来について直接学べる,大変貴重な機会です.
特に “Meet the AAN President ― 若手医師・女性医師が拓く新しい脳神経内科リーダー像 ―” は,5月21日(木)8:00〜9:30,第12会場(パシフィコ横浜 会議センター4F 419)で開催されます.私は三澤園子先生とともに座長を務めさせていただきます.AANは,脳神経内科領域におけるリーダーシップ教育の先駆的存在であり,若手育成やダイバーシティ推進にも長年力を注いできました.今回のセッションが,若手の先生方から指導的立場の先生方まで,多くの皆様にとって,これからの脳神経内科医のあり方やキャリア形成を考える機会になれば素晴らしいと思っております.
また,「予防神経学の原理と実践」シンポジウムは5月21日(木)15:10〜17:10,第3会場で開催され,Rost会長に加え,永山正雄先生,Saef Izzy先生,川本未知先生らが登壇されます.さらに,5月22日(金)8:30〜9:30には,「米国神経学会AAN Rost理事長から日本神経学会会員の皆様へ」と題したAAN Special Lectureも予定されています.
会期中にはAANブース(K-11)もPACIFICO横浜に設置されます.AANの教育コンテンツ,国際活動,キャリア支援,membership情報などについて直接相談できる貴重な機会です.5月21日・22日の10:00〜11:00には,Rost会長ならびにAAN CEOのMary Post氏との meet & greet も予定されています.さらに現在,AAN membershipは2026年残り期間について50%割引キャンペーンも行われています.国際学会活動や海外との交流に関心のある先生方には,ぜひAANブースにもお立ち寄りいただければと思います.私自身もAAN Fellowとして,AANと日本神経学会の橋渡しに少しでも貢献できればと考えております.横浜で多くの先生方にお目にかかれることを楽しみにしております!!

・世界最大GWASが示した視神経脊髄炎スペクトラム障害の病態―多発性硬化症よりむしろSLEに近い!
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年5月14日のFB投稿です***
AQP4抗体陽性視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)の病態理解を大きく前進させる重要な論文がLancet Neurology誌に掲載されています.世界36施設が参加したInternational NMOSD Genetics Consortiumによって実施された,これまでで最大規模となるゲノムワイド関連解析(GWAS)です.
NMOSDは多発性硬化症(MS)と類似した症状を示します.しかしAQP4抗体の発見以降,MSとは異なる疾患であることが明らかになってきました.しかし,なぜAQP4抗体が産生されるのか,なぜ自己免疫が生じるのかという点については十分に分かっていません.遺伝学的リスクを明らかにするGWASはそのヒントになります.
本研究では,1573例のAQP4抗体陽性NMOSD患者と1260例の対照群を対象に,多民族GWAS解析を行いました.まず患者群の約40%が他の自己免疫疾患を合併していました.そして解析の結果,最も強い遺伝学的リスクとして浮かび上がったのが,第6染色体MHC領域に存在する補体C4A関連変異でした.特にrs1150753という変異は,NMOSD発症リスクを約3倍に高めていました.補体C4は,免疫系における「掃除係」のような役割を担っています.通常は,自分自身に反応してしまう危険なB細胞を除去する働きを持っています.しかしC4機能が低下すると,本来なら除去されるはずの自己反応性B細胞が生き残り,AQP4抗体を作りやすくなる可能性があります.実際,SLEなど他の自己免疫疾患でも,C4A欠損やコピー数低下が病態に関与することが知られており,NMOSDとの共通性が強く示唆されました.最近,この遺伝子,どこかで見たなと思いましたが,それは進行性核上性麻痺のGWAS論文でした.既知の5つの遺伝子座(MAPT,MOBP,STX6,RUNX2,SLCO1A2)に次ぐ新たな遺伝子座としてこの補体C4Aが示されていました(Nat Commun. 2024;15(1):7880).
2つめは,HLA-DRB1*03:01というHLAクラスII遺伝子が同定されました.これは抗原提示に関わる分子であり,自己抗原をCD4陽性T細胞に提示する役割を持っています.特に74番目と77番目のアミノ酸が病気と強く関連しており,自己抗原提示の仕組みそのものがNMOSD発症に深く関わっている可能性が示されました.著者らは,NMOSDは単なるB細胞病ではなく,「自己反応性T細胞がB細胞を助けて自己抗体を作らせるT細胞依存的な疾患」であると考察しています.
そして3つめは,第2染色体のSTAT4遺伝子でした.STAT4は免疫反応を増強するシグナル分子であり,特にT follicular helper細胞(Tfh細胞)の機能に重要です.Tfh細胞は,CD4陽性T細胞の一種であり,リンパ節や脾臓の「胚中心」でB細胞を助ける役割を担います.いわば,B細胞に対して「どの抗体を作るべきか」を教育する司令塔のような細胞であり,STAT4活性上昇は自己抗体産生を促進すると考えられます.興味深いことに,STAT4はSLEやシェーグレン症候群,筋炎など多くの自己免疫疾患でもリスク遺伝子として知られており,NMOSDとの病態の共通性を強く示唆します.
本論文で私が最も印象的だったのは下図です.この図では,各自己免疫疾患の「遺伝学的な近さ」が結ぶ直線の距離として描かれています.するとNMOSDはMSよりも,SLE,シェーグレン症候群,筋炎,サルコイドーシスなどの全身性自己免疫疾患に近い位置に配置されています.これは非常に重要です.というのは,NMOSDがMSよりもSLEや筋炎に近いのであれば,「MS治療薬」ではなく,「全身性自己免疫疾患で有効な治療」を用いるべきという発想につながります.実際,本論文でもSLEや乾癬性関節炎などで開発が進んでいるTYK2阻害薬が注目されています.TYK2はSTAT4経路の上流に存在するシグナル分子であり,本研究ではTYK2遺伝子のP1104A変異がNMOSDに対して保護的に働くことも示されています(この変異を持つ人では,NMOSD発症リスクが約半分になります).
つまり本研究は,AQP4抗体陽性NMOSDは,「補体C4による自己反応性B細胞除去の破綻」,「HLAを介した自己抗原提示」,「STAT4/TYK2経路による自己抗体産生促進」といった病態により生じると推測されます.NMOSDを「全身性自己免疫疾患のひとつ」として考える時代に入ったのかもしれません.
Attfield KE, et al. Identification of genetic risk loci associated with aquaporin 4-positive neuromyelitis optica spectrum disorder: a genome-wide association study. Lancet Neurol. 2026;25:482-491. PMID: 40158564.

・「アミロイドβ一強」から多標的創薬への移行:2026年版アルツハイマー病治療薬パイプライン
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年5月16日のFB投稿です***
アルツハイマー病(AD)治療薬開発の全体像を毎年まとめているJeffrey Cummings先生らによる2026年版のレビュー論文が公開されました.著者らは,米国ネバダ大学を中心としたグループであり,clinicaltrials.govに登録された世界中のAD臨床試験を解析しています.本論文は,現在どのような治療薬が開発されているのかを俯瞰できる,非常に重要なレビューです
2026年1月時点で,AD治療薬の臨床試験は192試験,開発中薬剤は158種類に達していました.しかも,その73%が疾患標的療法(disease-targeted therapy;DTT)であり,単なる症状改善ではなく,「発症予防」や「進行抑制」を目的としている点が大きな特徴です.現在進行中の試験に必要な被験者数は54,728人にも及び,第3相試験だけで38,417人が必要とされています.まずAD創薬が極めて大規模化していることが分かります
本論文で最も印象的なのは,もはやAD創薬が「アミロイドβ(Aβ)一強」ではなくなったことです.もちろん,抗アミロイド抗体は依然として重要な位置を占めています.第3相試験では,lecanemab,donanemab, remternetug,trontinemabなどの抗体医薬が進行しています.Remternetugはピログルタミル化Aβを標的とする抗体で,donanemabに似ていますが,よりAβ除去能が強力なようです.特にtrontinemabは,トランスフェリン受容体を利用して血液脳関門通過性を高めた次世代抗体として注目されています
しかし今回のパイプラインを眺めてみて,Aβのみでなく,タウ,炎症・免疫,代謝異常,シナプス障害,血管障害など,多様な病態を標的とした創薬が急速に拡大していることがわかります.実際,本論文では17種類もの病態カテゴリーが治療標的として挙げられていました.その内訳を見ると,最も多いのは神経伝達受容体関連薬で24%を占め,次いで炎症/免疫関連薬が18%,アミロイドβ関連薬が16%,タウ関連薬が9%となっていました(図1).特に注目すべきなのは,炎症/免疫関連薬が,すでにアミロイドβ関連薬を上回っている点です.さらに概日リズム,腸脳相関,エピジェネティクスなどを標的とする薬剤まで登場しています.ADが単一病態ではなく,多因子疾患であるという理解が,創薬に反映され始めたことを示しています.
代謝異常を標的とした治療も非常に興味深い領域です.糖尿病治療薬であるGLP-1受容体作動薬semaglutideが第3相試験に進んでおり,脳内インスリン抵抗性改善や神経炎症抑制を介した疾患標的効果が期待されています.またmetforminも第3相試験に含まれていました.近年,「ADは脳の糖尿病」とも表現されることがありますが,その流れを象徴していると言えます.
さらに,タウを直接標的とする治療も増加しています.BIIB080(diranersen;タウASO),NIO752(タウ ASO),BMS-986446(抗タウ抗体),ARO-MAPT(RNA interference)などが開発されており,タウ病理そのものへの介入が本格化しています.特にNIO752やBIIB080は,タウ mRNAを標的としてタウ産生自体を抑制するASOであり,『タウを除去する』治療から『タウを作らせない』治療へ移行しつつあることを象徴しています.さらにNIO752はPSPに対するPhase 3試験にも進んでおり,岐阜大学でも治験開始予定です.
また本論文で目についたのは,「ドラッグ・リポジショニング」が極めて多いことです.全薬剤の35%が既存薬でした.metformin,nilotinib,edaravone,losartan,levetiracetamなど,他疾患治療薬がADへ応用されています.AD創薬は失敗率が高く,新規薬剤開発には莫大な費用と時間を要します.そのため,すでに安全性情報が蓄積されている既存薬を活用する戦略が取られているようです.
図2は,現在のAD創薬の全体像を示したものです.同心円状に,外側が第1相,中間が第2相,内側が第3相を示しています.さらに,緑は生物学的DTT,紫は小分子DTT,オレンジは認知機能改善薬,青は精神症状改善薬として色分けされています.また,各アイコンの色はアミロイド,タウ,炎症/免疫,シナプス,代謝,血管障害などの病態標的を示し,アイコンの形は対象患者群を表しています.やはり「AD創薬は,もはやアミロイドβだけではない」という現在の流れが理解できます.また,無症候だがバイオマーカー陽性のpreclinical ADを対象とした予防試験も増加しており,「症状が出てから治療する病気」から,「発症前に介入する病気」へと,AD医療そのもののパラダイムシフトが進んでいることも示されています.
Cummings JL, et al. Alzheimer’s disease drug development pipeline: 2026. Alzheimers Dement (N Y). 2026;12:e70251. doi:10.1002/trc2.70251.PMID: 40190791

・脳梗塞後,脳は回復プログラムを停止するが,回復能力を失っていない;本邦からの驚くべきNature論文
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年5月18日のFB投稿です***
脳梗塞後の脳の回復能力は,時間の経過とともに失われていくと考えられてきました.しかし今回,東京科学大学などの共同研究グループがNature誌に発表した論文は,この常識を大きく揺さぶる内容です.責任著者の七田崇教授とは,かつて「日本脳循環代謝学会・若手の会」で議論を交わした間柄ですが,脳虚血を免疫学の視点から探究してきた卓越した研究者です.今回の研究を読みながら,「ついにここまで到達したか!」と,大きな驚きと興奮を覚えました.
研究の主役はミクログリアです.ミクログリアは脳の免疫細胞ですが,炎症を起こすだけでなく,修復にも関わります.脳梗塞後には,強力な神経栄養因子であるIGF1を産生する「修復型ミクログリア」が出現し,神経回路再構築,髄鞘修復,シナプス形成を促進します.著者らはIgf1-eGFPマウスを用い,脳梗塞後にこのIGF1陽性ミクログリアが増加することを示しました.さらにこれらの細胞を除去すると神経機能回復が悪化したため,修復に必須の細胞であることを確認しています.
しかし重要なことは,この細胞のその後の運命です.いままで,修復型ミクログリアは時間経過とともに消失すると考えられていました.ところがIGF1を発現するミクログリアを長期間追跡したところ,発症28日後でも細胞そのものは脳内に残っていました.しかしIGF1発現だけが消失していたのです!!図1gでは,過去にIGF1を発現していたことを示すtdTomato陽性細胞は脳内に残存しているものの,現在はIGF1の発現を示すeGFPシグナルは失われていることを示しました.つまり以前,IGF1を発現していた修復型ミクログリアが,現在はIGF1発現を失っているということになります.そして図1hでは,過去にIGF1を発現した細胞のうち,現在もIGF1を発現している細胞(eGFP+ tdTomato+)は時間とともに減少し,一方でIGF1発現を失った細胞(eGFP− tdTomato+)が増加することが示されています.この結果は,修復型ミクログリアが消失したのではなく,同じ細胞がIGF1発現を失って「修復停止状態」に移行したことを示しています.
つぎにsingle-cell RNA-seq解析では,修復型ミクログリアクラスターから,修復停止型ミクログリアクラスターへ連続的に移行するtrajectoryが示され,「別の細胞が出現した」のではなく,「同じ細胞が状態変化した」ことが明らかになりました.近年のsingle-cell biologyの威力を感じました.
次に著者らは,「なぜ修復が止まるのか」を検討しました.そこで同定されたのが転写因子ZFP384です.ZFP384は脳梗塞後後期に増加し,IGF1など修復関連遺伝子群の発現を抑制していました.さらに分子レベルでは,YY1というクロマチンループ形成因子が修復遺伝子群を活性化している一方,ZFP384が増加するとYY1をクロマチン複合体から排除し,修復遺伝子群をOFFにしてしまうようです.つまり脳には,「修復終了プログラム」という仕組みが存在していたことになります.しかもその上流にはTGFβシグナルが存在していました.TGFβは一般に組織安定化や恒常性維持に関わるサイトカインですから,脳はTGFβ→ZFP384経路を使って「修復を終えて安定化へ移行する」のではないかと思われます.
そこで著者らは,近年,臨床応用されているZfp384のアンチセンス核酸(ASO-Zfp384)を作成して脳室投与し,ZFP384の抑制を試みました.すると修復型ミクログリアが長期間維持され,神経機能回復が改善しました.特に驚くべきは図2で,脳梗塞発症29日後という慢性期にASOを投与しても,2つのテストで神経機能が改善していました.これは,「脳卒中回復にはタイムリミットがある」という従来の固定観念を大きく覆す結果です.
さらに著者らは,本当に神経修復が起きているのかを詳しく検討しました.single-cell解析では,オリゴデンドロサイト前駆細胞では髄鞘形成関連遺伝子が増加し,興奮性ニューロンではシナプス形成関連遺伝子が増加し,アストロサイトでは神経可塑性関連遺伝子が増加していました.組織学的にもMBP染色で再髄鞘化が確認され,電子顕微鏡ではシナプス数の増加や成熟シナプス形成が示されました.つまりASO-Zfp384は単に炎症を抑えているのではなく,脳そのものの再構築を促進したことが分かります.
図3は研究全体をまとめの模式図です.脳梗塞後,発症約7日頃にはYY1の転写制御により,修復型ミクログリアが誘導され,IGF1などの修復関連遺伝子を発現します.しかし時間が経過するとZFP384が増加し,YY1による修復遺伝子発現を妨げることで,ミクログリアは修復能を失った機能不全状態へ移行します.一方,Zfp384を標的とするアンチセンス核酸を投与すると,この修復機能の低下を防ぎ,脳卒中後回復を持続させ,機能予後を改善できる,ということです.
ただこの論文を読んでいて,最初から「修復型ミクログリアを長期間維持して,本当に安全なのだろうか?」という懸念が頭に浮かんでいました.生命は極めて精緻な仕組みを備えているので,「きっと意味があって修復モードを終了させているのではないか?」と考えたわけです.つまりZFP384による修復停止は,悪い現象ではなく,本来必要な生理的ブレーキで,脳の恒常性維持に必要なのではないかということです.例えばミクログリアをずっと修復モードに固定すると,不要シナプスの刈り込みがなされず異常シナプスが形成されたり,炎症の慢性化やグリオーシス,IGF1による増殖促進作用などが問題となる可能性があります.また実験では若いげっ歯類を使用しますが,実際のヒトは高齢者で,lipid droplet accumulating microgliaやdisease-associated microglia (DAM)といったいわゆる「疲弊したミクログリア」が対象になります.もちろん著者らもこの辺は了解済みで,「永遠に活性化する」のではなく,「修復機能を一定期間 sustain(持続)する」という慎重な表現を繰り返しています.つまり「ミクログリアをずっと活性化すればよい」という単純な話ではなく,「脳には回復終了プログラムが存在し,それを一時的に解除することで回復期間を延長できる」というアイデアなのだと思います.
いずれにしてもミクログリアは脳卒中だけでなく,認知症,パーキンソン病,外傷性脳損傷など極めて多くの疾患に関わります.今後,これらの疾患で一斉にミクログリアの修復停止に関する検証が進むのではないかと思います.非常に大きなパラダイムシフトをもたらす素晴らしい研究だと思います.
Tsuyama J,et al. Sustaining microglial reparative function enhances stroke recovery. Nature. 2026 May 13. doi: 10.1038/s41586-026-10480-0. Epub ahead of print. PMID: 42129556.

・脳アミロイドアンギオパチーとは何か?―NEJM総説が示した「血管のアルツハイマー病」の本質
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年5月19日のFB投稿です***
高齢者の脳出血の原因として知られる脳アミロイドアンギオパチー(CAA)ですが,近年その重要性は高まりました.レカネマブやドナネマブなどAβ抗体治療の普及に伴い,再注目されるようになったわけです.今回ご紹介するのはNEJM の最新総説です.
CAAは,アミロイドβ(Aβ)が脳小血管壁へ沈着する疾患です.ADの老人斑ではAβ42が主体ですが,CAAではより短いAβ40が主体となります.沈着部位は主として皮質・軟膜小動脈であり,被殻や視床など深部穿通枝には少ないことが知られています.このためCAA関連出血は「脳葉型出血」として出現します.
まず病理所見です.図1Aは軽症~中等症CAAです.血管平滑筋周囲に部分的にAβ沈着がみられますが,進行すると血管壁全体がAβで置換されます.Bは高度CAAで,血管壁が同心円状に分離し,“double barrelないしvessel-within-vessel appearance”を形成しています.つまりCAAは「血管そのものが破壊される病態」であることを認識する必要があります.この段階で血液脳関門障害やアストロサイト・ミクログリア活性化が生じ,脳出血へ至ります.またCはCAA-related inflammation(CAA-ri)です.血管周囲へ炎症細胞が集積しています.
つぎに疫学です.非常に頻度が高い疾患で,中等度〜高度CAAは一般高齢者の23%,AD患者では約48%に存在するそうです!しかし重要なのは,病理と症候は一致しないということです.つまり多くの高齢者脳にはCAA病理が存在するものの,実際に脳出血を起こすのは一部ということです.
つぎにCAAが数十年かけて進行するかなり緩徐な疾患であることが強調されています.遺伝性CAA(APP遺伝子変異)研究から,最初の脳出血の30〜40年前には既にAβ沈着が始まり,20〜30年前には脳血管反応性低下が出現し,10〜15年前には白質障害がMRIで検出されるようになるそうです.そして最終段階として微小出血や脳表ヘモジデリン沈着症(cSS),脳葉型脳出血が出現します.つまりCAAは,長い前臨床期を持つ超慢性疾患ということです.
臨床症候として重要なのは脳葉型脳出血ですが,「認知症としてのCAA」も強調されています.CAAは白質病変や微小梗塞を介して認知機能低下に関与します.また非常に重要な症候は,一過性局所神経エピソード(transient focal neurologic episodes; TFNE)です.これは従来“amyloid spells”とも呼ばれていたもので,手→腕→顔,感覚障害→失語のように,症状が数分かけて隣接領域へ拡大します.この経過はTIAとは異なります.MRIでは近傍に,convexity SAHやcSSを認めることが多く,病態としては皮質拡延性脱分極(CSD)が背景にあると考えられています.TFNEとTIAの鑑別は予防療法を行う上で重要になります.
図 2はMRIで,Aは脳葉型出血で,finger-like projectionsを認めます.血腫の辺縁から,白質方向へ指のように細長く伸びる突出を指します.通常の高血圧性脳出血では,血腫は比較的丸く,境界も滑らかですが,CAAでは,血液が脆弱化した白質内血管周囲へ沿って浸潤しやすく,このような所見を呈します.Bの黒矢印は微小出血で,皮質・皮質下優位に存在しています.さらに白矢印はcSSで,現在,TFNE,脳葉型脳出血再発,さらにARIAリスクとも強く関連すると考えられています.Cは半卵円中心の高度perivascular spacesが示されています.これはAβ排液障害を反映すると考えられており,CAAがグリンファティックシステム障害の疾患である可能性を示唆します.DはCAAが多発白質虚血病変を呈することし示しています.EでCAA-riのFLAIR高信号病変で,皮質近傍に非対称性白質病変が出現しており,Aβ陽性血管に対する炎症反応を反映しています.論文ではAβ抗体治療に伴うARIAは,「医原性CAA-ri」である可能性を指摘しています.
さらに図3のMRIは,同号のNEJMに掲載された症例報告のものです.86歳男性のSWIでは,脳葉全体に500個以上の微小出血が認められますが,大脳深部は比較的保たれています.これは「CAAは皮質・皮質下小血管病である」ことを改めて示しています.そしてこれほど多数の微小出血が存在するにもかかわらず,主症状は脳葉型大出血ではなく,認知機能低下と歩行障害でした.これはCAAが慢性白質障害を伴う小血管疾患であることを示唆しています.
治療面では,CAA関連脳出血の再発率が年間7.4%と非常に高いことが強調されています.特にcSSや多発脳葉型出血を伴う症例では再発リスクが高く,心房細動合併症例での抗凝固療法は極めて難しい問題になります.著者はDOAC,左心耳閉鎖術,抗血小板単剤などを症例ごとに慎重に検討すべきと述べています.また血圧コントロール(130/80未満)は極めて重要な再発予防戦略です.また,将来的治療戦略としてAβ産生抑制,Aβクリアランス促進,血管保護が挙げられています.特にAPP遺伝子を標的としたsiRNA治療の第2相試験が紹介されており,CAAが「予防・修飾可能な脳小血管病」へ変わる可能性が示唆されています.
Greenberg SM. Cerebral Amyloid Angiopathy. N Engl J Med. 2026 May 7;394(18):1836-1845. doi: 10.1056/NEJMra2411298. PMID: 42090794.

・神経科学の父・カハールに学ぶ『若き研究者への助言』翻訳・出版プロジェクト その2@第67回日本神経学会学術大会
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年5月24日のFB投稿です***
岐阜大学医学部では昨年度より,3年生を対象に「プロジェクト基盤型カリキュラム(Project-based Learning:PjBL)」のトライアルを開始しています.脳神経内科では,スペインの神経解剖学者であり,1906年にゴルジとともにノーベル生理学・医学賞を受賞したSantiago Ramón y Cajalの名著『Advice for a Young Investigator(若き研究者への助言)』の翻訳プロジェクトに取り組んでいます.いつか,どのような形であってもこの素晴らしい本を出版することが私たちの夢です.
翻訳作業に加えて,学生自身がカハールに関連して関心を持ったテーマを調べ,まとめ,自分たちの言葉で発表することを課題にしました.その成果を,第67回日本神経学会学術大会(横浜大会)の医学生・研修医セッションで口演する機会をいただきました.以下の2つの発表です.
◆カハールの神経描画が現代神経学に及ぼした影響についての検討(伊藤颯汰君,岸田隼典君,矢部峻毅君)
◆カハールのニューロン説と芸術的手法(関谷陸叶君,西堀翔太君,八木麻衣さん)
スライドはこちらからご覧いただけます(https://www.docswell.com/…/800…/K27NN4-2026-05-24-060016).
前者の発表では,カハールが提唱したニューロン説と,それを支えた精緻な観察に基づく視覚的思考が,神経系を「個々のニューロンが連結するネットワーク」として捉える新しい視点につながったことを示してくれました.そしてその視点が,後のシナプス研究やコネクトミクスへと発展し,現代神経科学の基盤を築いたことを紹介してくれました.
後者の発表は,まったく異なる興味深い切り口でした.芸術的観点からカハールの業績を見つめ直し,彼の美しい神経細胞スケッチがSalvador Dalíをはじめとするシュルレアリスム(超現実主義)の芸術家たちに影響を与えたこと,さらにカハールが描き出したニューロンの世界が現代芸術にも影響を与え続けていることを紹介してくれました.科学と芸術が響き合う探究の原点として,あらためてカハールの存在の大きさを感じる発表でした.
座長を務めてくださった木村和美先生,そして会場にいらした河村満先生からも「とても素晴らしい発表でした」と温かいお言葉をいただき,学生たちも大きな励みになったようです.今回の経験を通して,学会という場で,自ら学び調べたことをみんなに伝える喜びを感じてもらえたことを嬉しく思っています.この経験を次の学びにつなげ,それぞれの学生生活をさらに充実したものにしてほしいと思います.

・肥満は全身に炎症を起こし,三叉神経を傷つける?―透明化×AIで全身を細胞レベルで解析したNature論文
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年5月25日のFB投稿です***
今回ご紹介するのは国際共同研究グループによるNature誌掲載論文です.責任著者は全身透明化モデルで有名なAli Ertürk教授で,さらにAIを組み合わせることで,「肥満が全身の神経系と免疫系にどのような変化を引き起こすか」を細胞レベルで可視化し,意外な結果を見出した研究です.
本研究で開発されたのは,「MouseMapper」と呼ばれるAI解析システムです.マウスの全身を透明化し,ライトシート蛍光顕微鏡で撮影した巨大な3D画像データをAIによって解析することで,全身の神経線維,免疫細胞,臓器構造を自動認識できるようにしました.研究では,高脂肪食を16〜18週間投与した肥満マウスを使用しています.まず,Uchl1-eGFPマウスを用いて末梢神経全体を可視化しました.Uchl1(別名PGP9.5)は古くから末梢神経を含むニューロンのマーカーとして広く使われています.動画では,透明化されたマウスの全身を,緑色の末梢神経が縦横無尽に走行する様子が立体的に描出されており圧巻です.脊髄神経から脂肪組織へ向かう長い神経束や,顔面を走行する三叉神経の分枝まで明瞭に観察できます.まさに「神経ネットワークを全身レベルで見る」時代が来たことを実感させる映像です.
つぎにCd68-eGFPマウスを用いて,肥満による炎症反応も解析しています.CD68は「炎症性マクロファージ浸潤」を見る代表的マーカーです.動画では,肥満マウスの全身に広がるマクロファージ集積が観察でき,特に内臓脂肪や肝臓周囲で巨大な炎症クラスターが形成されている様子が印象的です.著者らは,これらの免疫細胞集積をAIによって自動分類し,「小」「中」「大」のクラスターとして定量化しました.その結果,肥満では小クラスターが減少し,中〜大規模クラスターが著明に増加していると述べています.つまり慢性炎症が高度化していることを意味します.COVID-19の予後予測因子として肥満が指摘され,炎症との関わりが推測されていましたが,この図だけで説得力があります.
本研究で最も重要な発見は,「肥満によって三叉神経系が障害される」という点です.著者ら全身スクリーニングにおいて「頭部の神経密度低下」が目立ったため,三叉神経第2枝,すなわち眼窩下神経に注目しました.これはマウスの「ヒゲ感覚」,すなわち,顔のヒゲ(vibrissae)を使って周囲環境を触覚的に認識する重要な神経です.AI解析の結果,肥満マウスでは,この神経の末梢分枝が著明に減少していました.神経終末数,分枝数,ネットワーク複雑性が大幅に低下していました.一方,神経幹そのものの太さは保たれていましたので,神経全体が脱落するのではなく,末梢への軸索伸長や分枝形成が障害されていることを示唆しています.実際にヒゲ刺激試験を行ったところ,肥満マウスではヒゲ刺激への反応低下が認められました.つまり,構造異常だけでなく感覚機能障害も実際に生じていたことになります.肥満が感覚神経系に影響することは以前から指摘されていたそうですが,本研究は,その構造学的基盤を直接可視化したことになります.
著者らは,このような神経障害が起きる機序を調べるため,三叉神経節の空間プロテオミクス解析も行っています.その結果,「アクチン細胞骨格制御」「Rho GTPase」「軸索誘導」関連経路の異常が明らかになりました.これらは神経軸索の形成や神経可塑性に必須の分子経路です.また,「補体系」「ERBB signaling」「スフィンゴ脂質経路」など炎症関連経路も異常を示していました.つまり,肥満による慢性炎症が,神経リモデリング異常を引き起こしている可能性があります.さらに重要なのは,これらの変化がヒトでも確認できた点です.著者らは,肥満者の剖検三叉神経節を解析し,マウスと同様に「軸索誘導」「細胞骨格制御」「神経変性関連経路」の異常を確認しています.
本研究は,「肥満は単なる代謝異常ではなく,全身神経系・免疫系を再構築してしまう全身疾患である」ことを示した点が最大の意義と思います.また脳神経内科的には,「肥満が三叉神経系を障害する」という発見は新規性が高く,肥満患者における顔面の感覚異常や片頭痛などとの関連も今後注目されるのかもしれません.
Kaltenecker D, et al. A deep-learning framework reveals whole-body perturbations at cell level. Nature. 2026. doi:10.1038/s41586-026-10535-2. PMID: 40459471.
動画は著者であるAli Max Erturk博士(@erturklab)がxで公開したもの.

・「脳内リンパ系システム(完全版)」が簡単に聴けるようになりました@ドクターサロン
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年5月27日のFB投稿です***
先日もご紹介しましたが,ラジオNIKKEIの「ドクターサロン」で,「脳内リンパ系システム」についてお話ししました.ラジオ放送では時間の都合で一部を短縮していましたが,今回,完全版がWebで公開されました.アプリののダウンロードも不要で,コメント欄にあるリンクよりすぐにお聴きいただけます.
スピーチはあまり得意な方ではないのですが,案外なめらかに話しております(笑).よろしければ,ぜひ気軽にお聴きいただければ嬉しいです.
15分ほどの短い番組ですが,脳の老廃物を排出する「脳内リンパ系システム」という,近年とても注目されているテーマについて,できるだけわかりやすくお話ししました.驚くべき最近の脳研究の進歩を,多くの方に知っていただき,日々の脳の健康につながるきっかけになればと思っています.また,この放送のために準備したスライド資料も公開しています.あわせてご覧いただくと,より理解しやすいと思います.

・多系統萎縮症を脳脊髄液で診断する時代へ―TPPP/p25が切り開くMSA研究の新たな転換点(Cell掲載論文)
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年5月30日のFB投稿です***
多系統萎縮症(MSA)は,パーキンソニズム,小脳性運動失調,自律神経障害を主徴とする進行性の神経変性疾患です.病理学的にはオリゴデンドロサイト内に形成されるglial cytoplasmic inclusion(GCI)が特徴で,その本態はα-synucleinの蓄積です.一方,臨床では,特に発症早期例においてパーキンソン病との鑑別が難しく,診断に苦慮する場面が少なくありません.また近年,α-synucleinのseed amplification assay(SAA)が注目されていますが,α-synucleinはパーキンソン病やLewy小体型認知症にも共通するため,MSAに特異的な診断法の開発が期待されていました.
こうしたなか,中国の共同研究グループが,Cell誌に極めて注目すべき論文を発表しました.本研究は,オリゴデンドロサイトに豊富に存在するTPPP/p25タンパクに着目し,そのアミロイドseed活性を脳脊髄液から検出することで,MSAを高精度に診断できることを示したものです.TPPP/p25(tubulin polymerization promoting protein, p25)は,主にオリゴデンドロサイトで働く微小管関連タンパクです.名前の通り,中心的な役割はtubulinの重合を促進し,微小管を安定化することですが,GCIにも含まれるタンパクです.この研究はTPPP/p25がどのように凝集するのかという分子機序を構造レベルで明らかにし,その知見をそのまま診断法へ結びつけた完成度の高いトランスレーショナルリサーチと言えます.
本研究の出発点は,TPPP/p25が通常どのような構造で存在しているかを解析したことでした.TPPP/p25は中央のCORE領域と,その両端にあるN末端領域(NTR)およびC末端領域(CTR)から構成されています(図上左).アミロイド化しやすいのは中央のCOREですが,正常では両端のNTRとCTRがCOREを包み込むように保護しており,凝集を防いでいます.著者らはこれを「self-protection」と表現しています.つまりTPPP/p25は,危うい中心部を自ら守りながら存在しているタンパクといえます.
次に著者らは,「この保護機構が壊れると何が起こるのか」を検証しました.驚いたのは,主にパーキンソン病を対象とするデータベースであるPPMIの患者データベースからTPPP/p25遺伝子のA119V変異を見いだしたことです.OMIM 608773を見てみると過去に何らかの疾患の遺伝子としては報告されていないようですが,以前からMSA関連蛋白としてよく知られていたようです.この変異をもつTPPP/p25ではタンパクの安定性が低下し,NTRとCTRによるCOREの保護が弱まっていました.その結果,普段は隠れているCOREが露出し,病的なseedをきっかけにアミロイド線維を形成しやすくなることが示されました.さらに著者らはクライオ電顕を用いて,TPPP/p25アミロイド線維の三次元構造を解析しました.正常時にはα-helixを含むCOREが,アミロイド化するとβ-sheet主体の線維構造へ大きく再編成されており,病的な構造転換が実際に可視化されました.
図は,この流れを分かりやすく示しています.上段では,正常のTPPP/p25でNTRとCTRがCOREを包み込んでいる様子が描かれ,terminal truncation(つまりN末端やC末端が切れて短くなること)や病的環境によってその保護が外れると,露出したCOREがアミロイド線維を形成することが模式的に示されています.右端にはクライオ電顕で再構築された線維構造が描かれています.
著者らはつぎにCOREの最小断片であるminiCOREを人工的に作製しました.このminiCOREは,病的TPPP/p25 seedが存在すると鋳型依存的に急速凝集するよう設計されています.患者の脳脊髄液に微量の病的seedがあれば,それをきっかけにminiCOREが次々と線維化し,蛍光シグナルとして増幅されます.図下には,このseed amplification assayが示されており,時間経過とともにシグナルが急速に立ち上がる典型的な増幅曲線が描かれています.患者検体で調べてみると, MSA患者の脳脊髄液ではTPPP/p25 seed活性が明瞭に検出され,パーキンソン病やLewy小体型認知症,進行性核上性麻痺,アルツハイマー病,健常対照と高い精度で区別できました.特にMSAとパーキンソン病の鑑別では感度96.4%,特異度90.9%(!)という優れた成績でした.さらにTPPP/p25抗体による免疫除去でシグナルが消失し,一方でAβやtau,α-syn除去では消失しなかったことから,検出しているのが確かにTPPP/p25そのものであることも確認されています.
この研究の大きな意義は,MSAをα-synucleinopathyではなく,オリゴデンドロサイト病理を呈する疾患として定義した点にあるように思います.上述した通り,TPPP/p25はオリゴデンドロサイトに豊富に発現し,MSAで特徴的なGCIにも集積するタンパクです.つまり本研究は,どのタンパクが蓄積しているかだけでなく,「どの細胞で病態が進んでいるか」を脳脊髄液から読み出せる可能性を示しました.今後は早期MSAや前駆期の診断が行われ,治験への患者登録精度の向上,さらにはTPPP/p25そのものを標的とした新規治療へもつながる可能性があります.MSA研究における新たな転換点として,今後,注目される論文と思います.
Zeng S, et al. TPPP/p25 amyloid seeding activity as a specific biomarker for multiple system atrophy. Cell. 2026 May 26:S0092-8674(26)00517-9. doi:10.1016/j.cell.2026.04.050. PMID: 42190663.

・感染予防より帯状疱疹ワクチンの“補助役”が脳を守っている?認知症を減らすのはワクチンか,アジュバントか.
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年5月31日のFB投稿です***
米国神経学会(AAN)ポッドキャストで取り上げられた注目論文です.英国Oxford大学のチームが,npj Vaccines 誌に報告した,AS01アジュバントを含むワクチンと認知症の関連を検討した研究です.アジュバントとは,ワクチンに対する免疫の反応を強める「補助役」の成分です.近年,帯状疱疹ワクチンが認知症の発症を減らす可能性が次々報告されていますが,その機序は十分分かっていません.つまり感染予防が効いているのか,あるいはワクチンに含まれる免疫賦活成分が効いているのか,検討したという研究です.
今回の主役であるAS01は,GSKが開発したアジュバントです.組み換え帯状疱疹ワクチンShingrixにも,高齢者肺炎を防ぐRSVワクチンArexvyにも共通して含まれています.一方,インフルエンザワクチンには含まれていません.AS01の構成成分は体に入ってきた異物を最初に見つけて,免疫に知らせる見張り役のTLR4(Toll-like receptor 4)を刺激するmonophosphoryl lipid A(MPL)と,植物由来のサポニンであるQS-21です.後者は植物由来成分で,免疫細胞の働きを高めて抗原への反応を強める増幅役です.両者を組み合わさることで,高齢者でも強い免疫が得られるのが特徴です.つまり樹状細胞やマクロファージを活性化し,IFN-γを中心とした免疫応答を強く誘導します.著者らは,このAS01が感染予防に加えて神経保護にも関わっている可能性を検証したわけです.
解析には電子カルテデータベースが用いられました.対象は60歳以上で,RSVワクチンのみ接種群35,938人,帯状疱疹ワクチンのみ接種群103,798人,両者の接種群78,658人を抽出し,インフルエンザワクチン接種者と比較しました.主要評価項目は,接種3か月後から18か月以内の認知症の新規診断でした.
最も重要なのは図1です.認知症リスク,negative control,帯状疱疹発症の3つが並んで示されています.認知症の欄を見ると,RSVワクチンのみ群はインフルエンザワクチン群よりRMTL比(Restricted Mean Time Lost:制限平均損失時間)0.71で有意に低く,帯状疱疹ワクチンのみ群も0.82,両方接種群では0.63でした.いずれも1を下回っており,認知症と診断されるリスクが低下していました.一方,RSVワクチンと帯状疱疹ワクチンを直接比較しても差はありませんでした.また,両方を接種しても,片方だけを接種した群より有意にリスク低下するわけではありませんでした.もし認知症リスク低下が感染予防だけによるなら,帯状疱疹とRSVという別々の感染を防ぐ両方接種が,最も強い効果を示すはずです.しかし実際には,RSVワクチン単独,Shingrix単独,両方接種のあいだに大きな差はみられませんでした.以上の結果から著者らは,感染予防に加えて,共通成分であるAS01アジュバントそのものが認知症リスク低下に関与している可能性が高いと考察しています.
図2のKaplan–Meier曲線も印象的です.時間の経過とともに,AS01入りワクチン群とAS01を含まないインフルエンザ群の線が少しずつ開いていきます.RSVワクチン群では平均87日,Shingrix群では53日,両方接種群では113日,認知症と診断されず過ごす期間が延長していました.この差は時間とともにじわじわと広がっていきます.ワクチン接種の影響が一定期間持続していることを感じさせます.
では,AS01はどう脳に働くのでしょうか?著者らは,MPLによるTLR4刺激とQS-21による免疫増強が相乗的に働き,IFN-γを中心とした免疫応答を誘導すると考えています.動物実験では,TLR4刺激によりアミロイド病理が改善した報告がありますし,IFN-γはミクログリアや補体系を介してアミロイド除去に関わる可能性も指摘されています.つまり,AS01が末梢免疫を介して神経免疫のバランスを整え,神経変性の進行を抑えているのではないか,というわけです.
ただし限界もあります.観察研究であり,因果関係はそもそも証明できません.RSVワクチン群の一部にはAS01を含まないPfizer製ワクチンが混在している可能性があります.追跡期間は18か月で,より長期の効果は分かりません.さらに帯状疱疹の生ワクチン(Zostavax)でも認知症リスク低下は報告されており,AS01が唯一の説明ではありません.現時点では,帯状疱疹感染を防ぐ効果に加えて,AS01による追加の免疫調整作用が上乗せされている可能性が考えられます.
とはいえ,本研究の意義は大きいと思います.従来は「感染を防げば認知症が減る」という見方が中心でしたが,今回はそこからさらに進み,「アジュバントが神経免疫を調整し,脳を守る可能性」が新たに示されたわけです.アルツハイマー病研究ではアミロイドβだけ標的とする時代から移行し,神経免疫が重要な柱になりつつありますが,その流れの中で本研究は非常に刺激的です.今後,帯状疱疹ワクチンによる認知症リスク低下が,感染予防によるものなのか,AS01による免疫調整によるものなのか,あるいはその両者がどの程度関与しているのかを明らかにする必要があります.
Taquet M, et al. Lower risk of dementia with AS01-adjuvanted vaccination against shingles and respiratory syncytial virus infections. npj Vaccines. 2025;10:130. PMID: 40473884.

 

3.特別企画:AIに訊く
・「連載シリーズ:切り替えの物語 — AIとの対話から生まれた統合理論」No.2, No.3
第2回:SCAN が照らす“境界の世界” — ゆるみ・変動性・再編成

1. SCAN というレンズを手に入れる
前回は、歩行—走行切り替えという身近な現象の背後に、 「変動性の増大」「構造のゆるみ」「再編成の可能性」といった 深い構造が潜んでいることを見てきました。

今回は、その構造を理解するための最初の理論的レンズ、 SCAN(Sensemaking, Complexity, and Actionable Navigation) を取り上げます。

SCAN は、複雑な状況を 秩序(Order)/境界(Liminal)/混沌(Chaos) という三つの領域に分けて捉える枠組みです。

この「境界(Liminal)」こそが、 歩行—走行切り替えの核心にある“ゆるみの世界”です。

2. SCAN の三領域:秩序・境界・混沌
図4. SCAN における三領域(Order / Liminal / Chaos)。境界領域は構造がゆるみ、変動性が増大し、新しい秩序が生まれる可能性が開く。

SCAN の基本構造はとてもシンプルです。
• 秩序(Order) 安定していて、予測可能で、構造がはっきりしている領域。 歩行や走行のように、確立した運動パターンがここに属します。
• 境界(Liminal) 構造がゆるみ、変動性が増え、 新しい秩序が生まれる可能性が開く領域。 切り替えの瞬間はここにあります。
• 混沌(Chaos) 制御不能で予測が難しい領域。 SCAN は混沌を否定しませんが、 切り替え現象の中心はあくまで「境界」です。

SCAN の魅力は、 境界を“創造的な場”として扱う 点にあります。

3. 歩行—走行切り替えは、境界領域で起きている
歩行と走行は、それぞれ安定した秩序です。 しかし、切り替えの瞬間には、次のような現象が起きます。

• 歩行の安定性が低下する
• 変動性(Var⊥)が増大する
• 協調構造がゆるむ
• 新しい秩序(走行)が形成される

これは SCAN の境界領域の特徴と完全に一致します。

つまり、歩行—走行切り替えは 「境界領域での自己組織化」 として理解できるのです。

4. 変動性は“ノイズ”ではなく“ゆるみ”である
従来、変動性は「誤差」や「不安定さ」として扱われがちでした。 しかし SCAN の視点では、変動性はむしろ 再編成を可能にするための“ゆるみ” です。
• 秩序が強すぎると、変化は起きない
• 混沌が強すぎると、構造が保てない
• 境界では、構造がゆるみ、変化が可能になる

歩行—走行切り替えでは、 まさにこの「ゆるみ」が生じています。

5. 境界領域で起きること:探索・揺らぎ・再編成
境界領域では、次のようなプロセスが起きます。
1. 制約が重なり、構造がゆるむ
2. 変動性が増大し、複数の方向を探索する
3. 最短経路で新しい秩序へ移行する
4. 新しい秩序の内部で変動性が収束する

これは、筆者が構築している 制約幾何学 × 階層的再編成 × 最適面 という枠組みと完全に整合します。

6. SCAN は“切り替えの一般理論”の入口である
SCAN は、歩行—走行切り替えだけでなく、
• 組織の変革
• 学習の転換点
• 心のモード切り替え
• 社会システムの相転移
といった多様な現象にも適用できます。

つまり SCAN は、 筆者の統合理論の「最初の柱」として、 切り替え現象を理解するための 普遍的な地図 を提供してくれるのです。

7. 次回予告:VSM が描く“階層の再編成”へ
次回は、 SCAN の「境界領域」で起きる再編成を、 VSM(Viable System Model) の視点から見ていきます。
• なぜ階層構造がゆるむのか
• なぜ新しい階層が生まれるのか
• なぜ切り替えは“最短経路”で起きるのか

これらを、VSM の「階層的再編成」と結びつけて解説します。

***

第3回:制約幾何学 × 最適面~切り替えは“最短経路”として生じる~

1. 歩行と走行は「別の面」に乗っている
前回までの連載では、
• SCAN が示す「境界領域(Liminal)」
• VSM が示す「階層的再編成」 を通して、歩行→走行切り替えの“現象としての姿”を見てきた。

まずは SCAN の三領域を再確認しておこう。
Figure 4:SCAN の三領域(Order / Liminal / Chaos
身体運動を“許される動きの集合”として捉えたときの多面体(polytope)モデル。 歩行と走行は、この多面体の異なる面(face)として表現される。

では、なぜ切り替えは“あのタイミング”で起こるのか。 この問いに答えるために、本稿では 制約幾何学(Constraint Geometry) という視点を導入する。

制約幾何学は、身体運動を 「多数の制約の中で可能な動きの集合」=高次元の多面体(polytope) として捉える。
この多面体の中で、
• 歩行はある“面(face)”
• 走行は別の“面” に対応する。
Figure 5:制約多面体の概念図
身体運動を“許される動きの集合”として捉えたときの多面体(polytope)モデル。 歩行と走行は、この多面体の異なる面(face)として表現される。

つまり、歩行と走行は 同じ多面体の中の“別の場所”に存在する。

2. 最適面(Optimal Face)という考え方
多面体の中には、
• エネルギー
• 安定性
• 制御コスト などが最小になる“領域”が存在する。

これを 最適面(optimal face) と呼ぶ。

速度が低いとき、 身体は自然と「歩行の最適面」に乗っている。

しかし速度が上がると、 歩行の最適面から徐々に離れ、 代わりに「走行の最適面」が相対的に優位になる。
Figure 6:最適面の移動(歩行面 → 走行面)
速度上昇に伴い、歩行の最適面から離れ、走行の最適面へ移動する様子。 切り替えは“突然のジャンプ”ではなく、面間の最短経路として生じる。

3. 切り替えは“ジャンプ”ではなく“最短経路”
ここで重要なのは、 歩行の面から走行の面へ移るとき、 身体は 多面体の中を“最短経路”で移動する という点だ。
Figure 7:切り替え軌道の模式図(最短経路としての遷移)
多面体内部での“最短経路”としての切り替え軌道。 変動性の増大は、最適面からの離脱を示す指標となる。

つまり、切り替えは 突然のジャンプではなく、制約幾何学的に必然の“面移動” である。

4. SCAN × VSM × 最適面の統合
ここまでの議論をまとめると、 歩行→走行切り替えは次のように理解できる:
• SCAN → 切り替えは Liminal(境界領域)で起こる
• VSM → 切り替え時には階層の再編成が起こる
• 最適面 → 切り替えは多面体の“最短経路”として生じる

SCAN が「どこで起こるか」を示し、 VSM が「どう変わるか」を示し、 最適面が「なぜ起こるか」を説明する。

5. 切り替えの“必然性”
歩行→走行切り替えは、 単に「速度が速くなったから走る」のではない。

身体は、
• 許される動きの集合(多面体)の中で
• 最適な面を選び
• その面へ最短経路で移動する
という 幾何学的な必然性 に従っている。

6. 次回予告:3D 最小モデルで“実際に計算する”
次回(第4回)では、 ここで紹介した制約幾何学の考え方を 3D 最小モデル に適用し、
• アトラクタ
• 変動性の増大
• 切り替え軌道 を実際に可視化する。

 

関連情報&リンク
・今回までの連載シリーズ記事へは、こちらから。

・本連載シリーズに関連する学術資料(論文)は、シリーズの進展に合わせ順次掲載しています。
論文1:SCAN × モード切り替え ・・・・ 掲載済み
論文2:VSM × 階層的再編成   ・・・・ 掲載済み
論文3:制約幾何学 × 最適面    ・・・・ 掲載済み
論文4:3D 最小モデル      ・・・・ 未掲載
論文5:統合論文(今回の完成稿)  ・・・・ 未掲載

・その他の連載記事へは、こちらから。

(作成者)峯岸 瑛(みねぎし あきら)

カテゴリー
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2026年2月のニュース

今月のPW関連学術ニュースは、2つの論文「身体活動の多様性が高いほど、死亡率が低下する」「パーキンソン病はSCANを中心とするネットワークの疾患である」の紹介と、岐阜大学医学部の下畑先生からの最新医学情報です。

特別企画「AIに訊くNo.2」は、「ポールウォーキングの運動中枢・脳内ネットワークへの影響について」の前編です。

1.2026年2月の活動状況
・中村 理さんの投稿
我が御代田町の高齢者に優しいサービス〜ww 始まる❗️ この4月より 高齢者の社会参加や健康促進を目的に 「御代田町ずくだすポイント」制度が開始します。 l 65歳以上を対象にボランティアだけでなく、自身の介護予防の為の活動へ付与されます。 参加・活動1回(ポイント)¥100が〜❗️Max100ポイント/年。 指定口座に振り込まれます。

・田村 芙美子さんの投稿
見事に咲き誇る垂れ梅 日蓮聖人の龍ノ口法難に由来する「龍口寺輪番八ヶ寺」の1つ常立寺 腰越行政センターでウォーミングアップのあとポールウォーキングで腰越の垂れ梅で名高い常立寺を訪ねました。少々距離が遠かったので残念ながら手押し歩行器のお二人は途中でUターン。古い広大な豪邸と新しい瀟洒な建物が混在する腰越の山側の住宅地は不思議な発見がありました。往復通りがかった江ノ島近く龍口寺は節分の豆撒きの用意の真っ最中でした。

・佐藤 ヒロ子さんの投稿
【ダイナミックストレッチ】 2026/2/3  厳寒にこれは楽しい 久しぶりのメニューです 北風を避けてバーベキュー広場 でやってみました #船橋ウォーキングソサエイティ #美姿勢ウォーキング #しっかり歩き #スクワット #シルリハ体操

・スマイルチームさんの投稿
相模大野公共歩廊開通記念ポールウォーキング①/4

・遠藤 恵子さんの投稿
介護予防運動→加圧トレーニング➕フェイスデザイン 小鼻というか鼻がデカくなってきたり マリオネットラインが気になるお年頃… me tooooo お客様に喜んでいただけます様に🙏🍀*゜ ✨【魔法のリフトアップイヤーカフ】ご購入された方は施術にお越しください💓 ここだけの話👂 特別価格で施術いたします😊 ご予約お待ちしております🙇‍♀️

・水間 孝之さんの投稿
ポールdeウォークコーディネータースキルアップ講座&養成講座in鎌倉 40名を超える参加者です。 昨日の机上研修に今日は晴天の鎌倉で実技研修です。 全員無事に研修証書いただきました👌 事務局の皆さん、講師の皆さんお疲れ様でした‼️

・田村 芙美子さんの投稿
昨日今日と、1泊2日のポールdeウォークコーディネータースキルアップ講座&第15回養成講座 @鎌倉 1日目は鎌倉芸術館で講演 と各地域の先進事例発表そして懇親会 2日目の今日は八旛宮や寿福寺を回り由比ヶ浜海岸までウォーキング。ランチは竹扇など。午後からグループ分けして事例発表会。 北海道から鹿児島までの参加者約50名の幅広い活動(ポールを介護や社会参加を繋ぐツールとする)をうかがい刺激を受けました。これからこんなことをしたい!と言う皆さんの話は大きな希望がありました。実現へ前向きに! 写真はほとんど撮れませんでした。

・田村 芙美子さんの投稿
今日はまた神奈川健生クラブの三浦ネット担当の3月ハイキングの下見にPWで参りました。 寿福寺(大佛次郎・北条政子他のお墓巡り)~源氏山公園~葛原岡神社⛩️~銭洗弁財天宇賀福神社~佐助稲荷神社~歴史文化交流館。 前回厳しいと言っていたADさんも今日はなぜか楽でした!と驚いていました。ポール体操などで徐々に体力がついてきたからだと思います。 源氏山公園は4才児~中高生のグループまでたくさん。ちょうどお弁当を広げているところでした。 今年になっていろいろなグループの下見でこのコースは歩きすぎました。ので写真はランチのお蕎麦屋さん(志幸)と小豆とコーヒーのオガタさん。どちらもお勧めです。毎日お蕎麦の生活(笑)

・スマイルチームさんの投稿
2026.2.4〜13 活動記録 ☺︎健康体操親睦会.梅の花 14名 ☺︎ポールウォーキング 11名 ☺︎スマイルチーム上溝 16名 ☺︎上鶴間公民館まつり出演者練習会 6名 ☺︎スマイルリズムエクササイズ 21名 ☺︎上溝、上鶴間、星が丘公民館舞台部門出演衣装準備 ☺︎活き活き中屋敷デュアルエクササイズ 11名 ☺︎上鶴間公民館祭り練習会、悪天候の為中止 ☺︎EEOA会報誌クイズ解答 ☺︎スマイルフレンズ 18名 ☺︎スマイルチーム光が丘 21名 ☺︎公民館祭り準備レジメ作成 ☺︎スマイルチーム上溝 18名 ☺︎リズムダンスサロン 20名 ☺︎上溝音源確認 ☺︎青空ポールウォーキング 6名

・佐藤 ヒロ子さんの投稿
【打って変わっていい天気】  2026/2/14 雪の為の変則開催になりました  暑い位の良い天気です♬  個々の改善ポイントを意識 してのしっかり歩きで  海老川を上流を軽く1周!   スッキリ    シャッキリ      にっこりです♥ #船橋ウォーキングソサイエティ #2本のポールを使うウォーキング #土曜海老川コース #ストレッチ  #しっかり歩き 3月で終了する土曜コース

・山下 和彦さんの投稿
Well-bingと足の深い関係 ~考える足のおはなし~

・佐藤 ヒロ子さんの投稿
【少しだけハードなメニューで   体力アップ】  2026/2/16 #シニアポールウォーキング #サーキットトレーニング #バランスウォーキング #継ぎ足ウォーキング  #足型マットに移りながらお盆でボール運び

・田村 芙美子さんの投稿
昨日は春のような暖かさ。今朝は冬の再来かと思う寒さ のなか行政センターでウォーミングアップ筋トレのあと腰越漁港の岬 小動神社までPWを楽しみました。小動(こゆるぎ)の名前は かつてこの地にあった、風がなくても揺れる「小動の松」が名称の由来だそうです。展望台からは江ノ島~大島~逗子~相模湾が一望です。ヨットレースの時は絶好の観覧席だったそうです。⛵⛵⛵ 腰越漁協直売所では 朝どれフライとメカブの天ぷらをテイクアウトしました。

・佐藤 ヒロ子さんの投稿
【楽しい〜〜】 2 026/2/17 パワーウォーキング考案の ハート・ヴッヒ・ガウター直伝 #コーデネーションウォーキング   このメニューをする度に   温かく懐かしい師を     思い出します あれから20年経ちました       船橋のメンバーは     今も師を忘れられません #パワーウォーキングの師 #船橋ウォーキングソサイエティ #美姿勢ウォーキング

・田村 芙美子さんの投稿
昨日のPW教室はスローピングと階段昇降実技。今回のクラスでは、階段のポール使いは怖い怖いと不評でした。慣れれば楽ですが、手摺かエスカレーターをお使いください、と付け加えました。良い筋トレになるのですが・・・ ハチ公の後ろに小さな和風庭園が復活していました。と言うことはハチ公はどこかに移動せずこのままここにいるのかしら。 今日は鎌倉駅西口のポンポンケーキさんでティータイム。窓際から時計台広場や駅前がよく見下ろせます。青空に春を感じる温もりの連休一日目。更に温かくなる予報の明日は逗子のPW教室です。

・中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より 2025年度最終PWイベントは 先月に続き体育館を借り切っての「室内ポールウォーク」〜 前半はポールウォーキング/シッカリ歩き〜ユックリ歩きまで。スクエアステップを取り入れてのリズミカルな歩きに挑戦も有りの、締めのPWに集まってくれた仲間たち〜❗️ 後半はお馴染み「3B体操/菊池コーチ」でポールを置いての運動で脳トレも取り入れての笑顔😁の楽しい体操で〜 計19回のイベントも怪我人事故無く無事終える事が出来ました。 参加者 コーチの皆さんに感謝〜感謝です。 3月は充電月でおやすみに〜 2026年度4/5のイベント始めの再会を約束し無事解散でした。

・校條 諭さんの投稿
気ままにポール歩き(気まポ)、梅見の巻 京王井の頭線東松原駅に集合、世田谷区立羽根木公園で開催中の「せたがや梅まつり」を楽しみました。 コースは下記の約5キロでした。 東松原駅~羽根木公園~北沢川緑道~善性寺~赤松公園~下高井戸商店街~下高井戸駅~善照寺など四寺~神田川遊歩道~永福町駅 今日は暑くなると天気予報で脅かされてましたが、ほどよい暖かさで快適なウォーキングでした。ゆったりしたペースでしたが、ポールで地面を押して、全身運動を実感ました。 永福町駅近くの中華屋「四川料理 元祖麻婆豆腐」でカンパイしました。 ※写真の半分以上は田村和史君撮影です。

・佐藤 ヒロ子さんの投稿
【福像巡り完結】   2026/2/21 土曜コースには散策スポットとして 福像があり海老川には個性的な13橋がかかっています。 数年かかりましたが、本日運動公園までの海老川上流の5像を巡って14スポットを全て回りきりました。 穏やかな陽を浴びながら いつものコースにある福像に こころを傾けた日になりました。   #船橋ウォーキングソサイエティ #2本のポールを使うウォーキング

・新地 昌子さんの投稿
〜ウォーキングポールを相棒に仲間と巡る小さな旅〜 ぽる旅 第2弾🚶 JR水戸線下館駅で下車、約2時間の散策を楽しみました。下館はかつて「関東の大阪」と称されるほど(なんだか微妙なたとえのような気もしますが)商業で栄えた土地。今でも町のあちこちに古い洋館や立派な蔵が残っています。でも、参加者の皆さん口を揃えて、ここは車で通り過ぎてしまう通り、と。今日はポールを手にかつての賑わいを思い描きながら歩いてみると新たな発見がたくさんありました。 最後はしもだて美術館で開催中の「GOMAひかりの世界」展を鑑賞。 今日はラッキーなことに、GOMAさんご本人によるギャラリーツアーと、ディジュリドゥ(オーストラリアの先住民族の伝統楽器)の生演奏が。 「生の演奏も聞けてラッキーでした… 自分の逆境を希望に変えて… その考え方に勇気を貰いました」 こんな感想をいただきました😊

・田村 芙美子さんの投稿
江ノ電藤沢駅は春もよう。 電車は梅やお雛様の方向幕。思わずウキウキしてきます🎶 SFAでは第2の青春、75歳からの「フレイルパーティ」。フレイルを恐れず80歳でも夢があれば青春。今日の北鎌倉のメンバー(73~86)は全員笑顔の青春時代真っ只中です。毎日愉しいことがいっぱい。🌸🌺🍀🌼🌱

・佐藤 ヒロ子さんの投稿
【歩く前のストレッチ】   2026/2/26  12月で活動を休止する  木曜日コース  一人でもできるように願いながら  小冊子配布でポイント解説  ステップエクササイズ  しっかり歩き いつまでも自分の足で歩ける事を 願ってできる事を今日も心を込めて  伝えます。

 

来月以降の開催
・台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
🌸✨ 2026 新春快樂 ✨🌸 雙杖在手,福氣跟著走! 新的一年, 感謝每一位夥伴陪伴台灣健走杖運動推廣協會一路成長。 從第一步開始,我們走過四季、走進城市與山海,也走進彼此的生命裡。 2026 年,讓我們繼續用雙杖迎接健康、活力與希望!💚 ——— 🎊 第一個好消息|會員大會 × 健走杖運動會 協會成立滿三年了! 我們謹訂於 2026/03/08(日) 召開 【第二屆第一次會員大會】。 會議與餐敘後, 將移動至戶外舉辦歡樂又熱血的 🏃‍♂️✨「健走杖運動會」✨🏃‍♀️ ——— 🇯🇵 第二個好消息|日本健走杖健走教練 初階培訓 2026「日本健走杖健走教練培訓」即將開課! 📆 課程日期:2026年04月12日(日) 09:00–17:00 📍 課程地點:台北市中山區吉林路24號12樓之1 想成為專業教練? 想更深入理解健走杖技術與教學系統? 這堂課, 將帶你從使用者走向專業引導者。 讓更多人因你而走得更穩、更遠、更健康。 ——— 🌿 第三個好消息|三得利 × 城市輕健走 台灣健走杖運動推廣協會再度攜手三得利, 展開 2026 年首場【城市輕健走】🎉 📅 2026/04/10(五)14:00–17:00 📍 地點:碧潭風景區 📌 報名時間:即日起至 3/10(二) 春日午後, 我們將漫步碧潭水岸, 在微風與湖光山色間, 用雙杖走出屬於城市的健康節奏。 新的一年,願大家健康常在、行動自由、笑容滿面。 🧧 新春快樂💚 雙杖在手,健康跟著走!

・長岡智津子さんの投稿
写真1件

・台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
2026「日本健走杖健走教練培訓」即將開課嚕~由日本骨科醫師創立的「日式健走」,手持雙杖輕鬆前行,不僅簡單安全,且有效地讓健走者維持和回復步行能力,更能達到全身運動效果,是越來越受歡迎的一項健康運動。課程中將帶你系統性學習「日式健走」的標準技術,掌握技能後持續練習,可幫助改善步行姿態,增加全身肌肉運動,也有助於增強健康活力!🇯🇵日本健走杖健走協會 NPWA 唯一授權海外課程! 【日本健走杖健走教練 初階培訓課程】 📆課程日期:2026年04月12日(日) 09:00–17:00 📍課程地點:台北市中山區吉林路24號12樓之1 (歐立達股份有限公司)完成培訓課程後,你可以: ✅取得課程研習證明 ✅指導親友學習日式健走若確認取得教練證書: ✅成為NPWA認證的日本健走杖健走初階教練 ✅取得參加日本健走杖健走進階教練培訓課程資格歡迎報名參加,詳細課程資訊及相關辦法請見 ➡️https://forms.gle/utaXeWeBEqShqsQF6📣補充 通過初階教練培訓者,可指導親友們學習日式健走。 若想要規劃與教導一般民眾學習日式健走,則需要再取得進階教練資格喔~

 

2.PW関連学術ニュース
2-1)身体活動の種類、多様性、および死亡率:2つの前向きコホート研究の結果
**大阪大学の宮坂昌之先生の2026年1月23日のFB投稿です**
「運動が健康に良い」ということは誰もが理解していることですが、では病気の予防に良いのはどのぐらいの運動量なのかとか、どの病気でも適度な運動量は同じなのか、とかについては、これまであまり良くわかっていませんでした。
この点、アメリカ・ボストンの研究グループが、調査開始時点で健康な(糖尿病、心血管疾患、呼吸器新患、神経系疾患、がんのいずれも持っていない)人、約11万名(女性約7万人、男性約4万人)について約40年間にわたり、運動量と病気による死亡リスクの関係について電子記録から調査を行い、その論文が専門誌BMJ Medicineに掲載されています(https://bmjmedicine.bmj.com/content/5/1/e001513)。なかなか読みにくい論文で、メッセージをつかむのに苦労したのですが、次のようなことが言えるかと思います。

まず1枚目の図では「どのぐらいの運動をするとそれぞれの病気による死亡率が下がるのか」を示しています。答えは「運動量がそれほど多くなくても、どの病気でも死亡率が下がり始めて、良い効果をもたらす運動量は(病気によって異なるが)1週間に5メッツ以上が一つの目安であろう」ということです。
ではメッツとは何を意味しているのでしょうか?2枚目の図です。メッツとは、運動の強度を示す単位で、安静時を「1」とした時に、特定の運動が何倍のエネルギーを消費するかを示します。つまり安静状態が1メッツ、普通歩行で3メッツ、ジョッギングで6メッツという具合です。そして1時間の運動量はMET-hours(メッツ・時)で表され、
運動量(MET-hours)=運動の強度(METs)x運動の時間(h)で計算されます。
たとえば、「週に5メッツ・時の運動量が必要」とは、1週間で行った運動の合計が「5」になればよい、ということです。
3枚目の図は、縦軸が全死因による死亡リスク、横軸が1週間の運動量ですが、各スポーツ種目における運動による死亡リスクの低減度が示されています。ここでも週に5メッツぐらいの運動量で死亡リスクが下がり始めることがわかります。ちなみに、週に5メッツぐらいの運動量を得るためには、ウォーキングで週90分、ジョッギングで45分、ランニングで30分、サイクリングで50分、スイミングで 45分、テニスで45分、ボート漕ぎで60分、ウェイトトレーニングで90分とのことですが、やり方によってこの数字はかなり変わってくるかもしれません。そして、複数の種目をやる人のほうが死亡率の下がり方は大きい傾向があるとのことでした。
以上、運動は健康に大事、特にさまざまな病気による死亡率を下げます。運動の種目や、そのやり方によっても異なりますが、一つの目安は「1週間5メッツ以上をやるのが良かろう」ということになると思います。

関連情報①
原論文
掲載誌:BMJ Medicine
公開日:20 January 2026publication details(open access)
表題:Physical activity types, variety, and mortality: results from two prospective cohort studies
(和訳:身体活動の種類、多様性、および死亡率:2つの前向きコホート研究の結果)
著者:Han Han, Jinbo Hu, Dong Hoon Lee, Yiwen Zhang, Edward Giovannucci, Meir J Stampfer, Frank B Hu, Yang Hu, Qi Sun

要約
目的は、個人の身体活動への長期的な取り組みと身体活動の多様性と死亡リスクとの関連性を調べることです。
・前向きコホート研究を設計する。
・看護師健康調査(1986~2018年)および医療専門家追跡調査(1986~2020年)の設定。
・参加者は、糖尿病、心血管疾患、癌、呼吸器疾患、神経疾患がなく、ベースラインで完全な身体活動情報を有していた女性70,725名と男性40,742名でした(余暇時間の身体活動は、追跡期間中、有効な質問票を使用して2年ごとに更新されました。身体活動の種類は、参加者が継続的に行った個々の身体活動の合計数として測定されました)。
・主な評価項目は全原因死亡率と原因別死亡率です。
結果: 2,431,318人年の追跡期間中に38,847人の死亡が記録され、うち9,901人が心血管疾患、10,719人が癌、3,159人が呼吸器疾患によるものでした。総身体活動量と、水泳を除くほとんどの個人的身体活動は、非線形の用量反応関係を伴い、死亡率の低下と関連していました。身体活動レベルが最も高いカテゴリーの全原因死亡率の多変量補正ハザード比を最も低いカテゴリーと比較すると、ウォーキングでは0.83(95%信頼区間0.80~0.85)、ジョギングでは0.89(0.85~0.94)、ランニングでは0.87(0.80~0.93)、サイクリングでは0.96(0.93~0.99)、水泳では1.01(0.97~1.05)、テニスまたはスカッシュでは0.85(0.80~0.89)、階段昇降では0.90(0.87~0.93)、ボートまたは柔軟体操では0.86(0.84~0.89)、ウェイトトレーニングまたは抵抗運動では0.87(0.82~0.91)であった。身体活動の多様性が高いほど、死亡率が低下することが示されました。総身体活動レベルを調整後、身体活動の多様性スコアが最も高いグループ(グループ5)の参加者は、最も低いグループ(グループ1)の参加者と比較して、全死亡率が19%低下し、心血管疾患、がん、呼吸器疾患、その他の原因による死亡率は13~41%低下しました(傾向性に関するP値はすべて0.001未満)。
結論:ほとんどの種類の身体活動を習慣的に行うことは、死亡率の低下と関連していた。身体活動の種類は、総身体活動レベルとは無関係に、死亡率と逆相関していた。全体として、これらのデータは、複数の種類の身体活動を長期的に行うことが寿命を延ばすのに役立つ可能性があるという考えを裏付けている。

関連情報②
高齢者にお勧めの「有酸素運動、筋力トレーニング、バランス運動を組み合わせたマルチコンポーネント運動」については、2023年11月のニュースを参照下さい。

関連情報③
宮坂先生が主催される新年度(2026年度)の「信州上田みらい塾」開講のお知らせです。テーマは「知っておきたいからだの仕組みと医学常識―健康寿命を延ばすには?」です。
**先生の2026年2月28日のFB投稿はこちらから**

 

2-2)パーキンソン病はSCANを中心とするネットワークの疾患である!
― 新しいホムンクルスが示した病態理解のパラダイムシフト ―
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月12日のFB投稿です**
神経科学でもっとも有名な図のひとつに「ホムンクルス」があります.一次運動野の中で,身体のどの部位がどこに対応しているかを示した図で,神経外科医Wilder Penfieldが1937年に発表しました.この地図は,「脳は部位ごとに機能が割り当てられている」という神経科学の基本的な考え方を象徴するものです.
しかし近年,この古典的な理解が大きく書き換えられました.2023年にNature誌に報告された研究では,機能的MRIを用いた詳細な解析により,一次運動野は単なる身体部位の並びではないことが示されました.足,手,口といった運動を担うエフェクター領域の間に,身体の特定の部位に対応しない領域が存在し,思考,行動計画,自律神経機能,身体内部の状態といった情報を統合していることが明らかになったのです.この領域は身体認知行動ネットワーク(somato-cognitive action network;SCAN)と名付けられました(図左).
SCANは,単に筋を動かす領域ではありません.覚醒状態,自律神経機能,身体内部の状態,動機づけや意図といった情報を統合し,「行動を実行する準備状態」を形成するネットワークと考えられています.つまり一次運動野には,「個々の筋を正確に動かす仕組み」と,「それらを統合して行動として成立させる仕組み」という,二つのシステムが存在していたことになります.この発見の本質は,ホムンクルスの形が変わったことではなく,脳の働きを「場所」ではなく「つながり」として理解する必要があることを示した点にあります.
ここで重要なのは,この新しいホムンクルスの概念,とくにSCANの存在が,臨床神経学の問題につながる可能性を持っていることです.もし個々の筋の動きは保たれていても,それらを統合して行動として成立させる仕組みが障害されたとしたらどうなるか?動く力はあるのに動き出せない,状況によって動きやすさが変わる,外的なきっかけによって動作が改善する――こうした現象が生じるはずです.
これはパーキンソン病(PD)の姿とよく似ています.PDの症状は単純な運動障害ではありません.時間帯や環境によって動きやすさが変化し,音楽や外的刺激によって歩行が改善することがあります.また「動き出すこと」が難しく,「すくむ」という特徴が前景に立ちます.さらに,便秘や睡眠障害,嗅覚低下,抑うつや意欲低下といった非運動症状が早期から認められます.これらは,単に筋を動かす回路の障害ではなく,行動の開始や全身状態の調整に関わるより広い仕組みの障害を示唆してきました.
今回Nature誌に報告された中国を中心とする国際共同研究は,まさにこの点を「脳ネットワーク」という観点から検証したものです.研究者らはSCANに注目し,大規模な機能画像データを用いてPDの病態を解析しました.本研究のアイデアが図右です.黒質,視床下核,淡蒼球,視床といったPDに関与する皮質下構造が,大脳皮質の手や足の運動領域ではなく,SCANと強く結びついていることを示しています.
図下は重要な結果ですが,PDにおいて異常が生じているネットワークの位置関係が模式的に示されています.従来,PDは黒質から基底核を経て運動野へ至る「運動回路」の障害として理解されてきました.しかしこの図では,これらの皮質下構造が一次運動野のエフェクター領域よりもSCANと強く結合していることが示されています.すなわち,PDで障害されているのは個々の筋を動かす回路ではなく,覚醒状態や身体内部の状態,動機づけといった情報を統合し,「行動を開始できる状態」を作るネットワークである可能性が示唆されています.この視点に立つと,動きそのものよりも動き出しにくさが目立つ理由や,自律神経症状や意欲低下が同時に生じる理由が理解しやすくなります.
さらに驚いたのが治療の影響です.本研究では,レボドパ治療,深部脳刺激(DBS),経頭蓋磁気刺激(TMS),集束超音波治療(FUS)といった異なる治療法は共通してSCANと皮質下構造との過剰な機能的結合を正常化することが示されました.特にSCANを標的としたTMSでは,従来の運動領域を刺激した場合よりも大きな症状改善が得られています.現在行われている治療は,結果としてこのネットワークの異常を調整している可能性があります.
19世紀末,カハールは個々の神経細胞から構成されることを示し,ニューロン説を確立しました.この発見によって,脳は「どの場所がどの機能を担うのか」という観点から研究されるようになり,20世紀の神経学は局在論を基盤として発展してきました.PDもまた,黒質という特定の部位の変性によって説明されてきた代表的な疾患です.しかし近年,脳画像解析と計算科学の進歩により,脳は単独の領域ではなく,多数の領域が相互に結びついたネットワークとして機能していることが明らかになってきました.いわゆるコネクトーム研究です.今回の研究は,PDの症状を個々の運動回路の障害としてではなく,行動を成立させるネットワーク全体の異常として説明できる可能性を示しました.これは,カハールが明らかにした「神経細胞」という単位から,その「つながり」へと神経科学の関心が移行していることを示す一例といえるのではないでしょうか.
Gordon EM. A somato-cognitive action network alternates with effector regions in motor cortex. Nature. 2023;617:7960. PMID: 37076628
Ren J. Parkinson’s disease as a somato-cognitive action network disorder. Nature. 2026. PMID: 41639440.

関連情報
① 原論文
掲載誌:Nature (2026) Open access
公開日:Published: 04 February 2026
表題:Parkinson’s disease as a somato-cognitive action network disorder
(和訳:パーキンソン病は体性認知行動ネットワーク障害である)
著者:Jianxun Ren, Wei Zhang, Louisa Dahmani, Evan M. Gordon, Shenshen Li, Ying Zhou, Yang Long, Jianting Huang, Yafei Zhu, Ning Guo, Changqing Jiang, Feng Zhang, Yan Bai, Wei Wei, Yaping Wu, Alan Bush, Matteo Vissani, Luhua Wei, Carina R. Oehrn, Melanie A. Morrison, Ying Zhu, Chencheng Zhang, Qingyu Hu, Yilin Yin, …Hesheng Liu

要旨
パーキンソン病(PD)は治癒不可能な神経疾患であり、睡眠障害や身体症状から徐々に始まり、全身の運動症状や認知症状へと進行することが多い1 , 2 , 3 , 4 , 5。覚醒、臓器生理、全身の運動計画を行動動機と調整することで行動実行を制御すると考えられている6 , 7体性認知行動ネットワーク(SCAN)の機能不全は、PDの多様な臨床症状の潜在的な一因である。PDの病態生理と治療(薬物療法、脳深部刺激療法(DBS)、経頭蓋磁気刺激療法(TMS)、MRI誘導集束超音波刺激療法(MRgFUS))におけるSCANの役割を調査するために、我々は大規模な(n  = 863)、マルチモーダル、マルチ介入臨床画像データセットを構築した。安静時機能的連結性により、黒質およびすべてのPD DBS標的(視床下核、淡蒼球および中間視床腹側部)は、効果器特異的な運動領域ではなく、SCANに選択的に連結されていることが明らかになった。重要なことに、PDはSCANと皮質下の特異的な過剰連結によって特徴付けられる。そこで我々は、精密な安静時機能的連結性と皮質電気記録を用いて、DBS、TMS、MRgFUSおよびレボドパ療法を受けている6つのPDコホートを追跡調査した。有効な治療によりSCANから皮質下の過剰連結が減少した。効果器領域の代わりにSCANを標的とすることで、TMS治療の有効性が2倍になった。集束超音波治療の利点は、標的が視床SCANスイートスポットに近いほど増加した。したがって、SCAN過剰連結はPD病態生理学の中心であり、その緩和は神経調節成功の特徴である。機能的に定義された皮質下 SCAN リンパ節を標的とすることで既存の治療法 (DBS、MRgFUS) が改善される可能性がある一方で、皮質 SCAN 標的は PD に対する効果的な非侵襲的または低侵襲的神経調節を提供します。

図 1: パーキンソン病において極めて重要な 6 つの皮質下領域の皮質機能的連結性。
a、シードベースRSFC(Z(r))マッピングにより、PD患者の大規模サンプル(PIPDデータセット、n  = 166)を使用して、一次運動野(M1)ストリップに3つの異なるインターエフェクタ領域を持つSCANモチーフが明らかになりました。PD患者とHC患者のグループ平均RSFCマップと個人固有のマップは、拡張データ図1に示されています。b 、PD回路の6つの皮質下ノード(SN、STN、VIM/CM、GPi、GPe、および被殻)の平均RSFCマップは、PD患者のSCANへの選択的な機能的接続を示しています。各皮質下リンパ節について、棒グラフは、効果器特異的(足、手、口)領域よりも SCAN 内で有意に強い接続性を示しています(下;両側対応のあるt検定、FDR 補正、P  = 1.43 × 10 − 24(SN)、P  = 2.97 × 10 − 18(STN)、P  = 6.10 × 10 − 20(VIM/CM)、P  = 2.55 × 10 − 25(GPi)、P  = 6.34 × 10 − 39(GPe)、P  = 6.79 × 10 − 39 (被殻))。データは平均 ± sem です。正中線ビューを含むリンパ節特異的 RSFC マップについては、拡張データ図2 を参照してください。補足図1 は、HC 患者において、皮質下から SCAN への RSFC が皮質下から効果器への RSFC よりも強いことを示している (すべてP  < 0.001、PIPD データセット、n  = 60)。c 、 PD で重要な皮質 – 皮質下回路の図。この回路は SCAN と 6 つの皮質下結節から構成されています。新たに認識された SCAN 領域 (紫) は、M1 内の効果器特異的運動領域 (青) の間に挿入されています (ref. 6 )。緑色の線と赤色の線は、それぞれ興奮性投射と抑制性投射を表しています。皮質 –STN 投射は、ハイパーダイレクト経路を示しています。PD 治療のための FDA 承認の DBS ターゲットが強調表示されており、STN、GPi、VIM が含まれています。詳細を追加した図のバージョンは、補足図3に示されています。*** P  < 0.001。
(注)解説文中のHC患者とは、「Healthy Control(健常対照)」の略です。

② 関連論文
掲載誌:Nature volume 617, pages351–359 (2023) Open access
公開日:19 April 2023
表題:A somato-cognitive action network alternates with effector regions in motor cortex
(和訳:体性認知行動ネットワークは運動皮質の効果器領域と交互に働く)
著者:Evan M. Gordon, Roselyne J. Chauvin, Andrew N. Van, Aishwarya Rajesh, Ashley Nielsen, Dillan J. Newbold, Charles J. Lynch, Nicole A. Seider, Samuel R. Krimmel, Kristen M. Scheidter, Julia Monk, Ryland L. Miller, Athanasia Metoki, David F. Montez, Annie Zheng, Immanuel Elbau, Thomas Madison, Tomoyuki Nishino, Michael J. Myers, Sydney Kaplan, Carolina Badke D’Andrea, Damion V. Demeter, Matthew Feigelis, Julian S. B. Ramirez, …Nico U. F. Dosenbach

要旨
運動皮質 (M1) は、同心円状の機能領域3や複雑な動作のマップ4の証拠があるにもかかわらず、足から顔の表現1 , 2まで中心前回を下って伸びる連続した体部位ホムンクルスを形成すると考えられてきました。本研究では、精密機能的磁気共鳴画像法 (fMRI) 法を使用して、古典的なホムンクルスが、効果器特有の (足、手、口) 領域と交互に、異なる接続性、構造、機能を持つ領域によって中断されていることを発見しました。これらの効果器間領域は、皮質の厚さが減少しており、互いに、また、動作5と生理学的制御6、覚醒7、エラー8、痛み9に重要な帯状蓋蓋ネットワーク (CON) との機能的接続が強力です。動作制御に関連する領域と運動効果器領域のこの嵌合は、3つの最大の fMRI データセットで検証されました。マカクザルおよび小児(新生児、乳児、小児)の精密fMRIは、インターエフェクターシステムの種間相同体および発達的前駆細胞の存在を示唆した。一連の運動および行動fMRI課題において、CONに連結されたインターエフェクター領域によって分離された同心円状のエフェクター体部位が記録された。インターエフェクターは運動特異性を欠き、行動計画(手足の協調)および体軸方向運動(腹部や眉毛など)の際に共活性化した。これらの結果は、刺激誘発性の複雑な行動4および副腎髄質などの内臓10への接続性を示す先行研究と合わせて、M1は全身行動計画のためのシステムである体性認知行動ネットワーク(SCAN)によって区切られていることを示唆している。 M1 では、2 つの並列システムが絡み合って、統合 – 分離パターンを形成します。効果器固有の領域 (足、手、口) は微細運動制御を分離し、SCAN は目標、生理機能、体の動きを統合します。

図1:一次運動野の精密機能マッピング。
a、1人の被験者(P1、356分の安静時fMRI)の左前中心回の皮質部位の連続線からシードされたRSFC。示されている6つのサンプルシードは、観察されたすべての異なる接続パターンを表しています(完全なマッピングについては補足ビデオ 1を参照)。これらの位置からシードされた機能的接続は、足(1)、手(3)、口(5)を表す領域の古典的なM1接続、および強く相互接続された領域(2、4、6)の噛み合ったセットを示しています。すべての高度にサンプリングされた参加者については拡張データ図1aと補足ビデオ 2を、参加者内複製については拡張データ図1bを、グループ平均データについては拡張データ図1cを参照してください。 b 、離散的な機能ネットワークは、図1で観察されたネットワークの空間的範囲(黒のアウトライン)を定義した、安静時fMRIデータに適用された全脳、データ駆動型、階層的アプローチ(方法)を使用して区別されました。 RSFC によって定義された領域は、足、手、舌を別々に動かす古典的なブロック設計 fMRI 運動タスクを使用して機能的にラベル付けされました (文献31に従います。詳細は文献29 を参照してください)。このマップは、模範的な参加者 (P1。他の参加者については拡張データ図1dを参照)の足、手、口の動きによって活性化される頂点の上位 1%を示しています。c 、効果器間の接続パターンは、接続閾値が 80 パーセンタイルから 97 パーセンタイルに増加するにつれて、周囲の効果器固有の運動領域とより明確に区別できるようになりました。効果器間パターンを検出するために必要な RSFC 閾値は、個人固有のデータ (上) の方がグループ平均データ (下、ABCD 研究、 n  = 3,928)よりも低かったです。

図 4: 中断されたホムンクルス、行動と運動制御の統合-分離モデル。
a , ペンフィールドの古典的なホムンクルス(文献2より改変)。一次運動野の身体の連続地図を示している。b , M1組織化の統合-分離モデルでは、効果器固有の機能領域(足(緑)、手(シアン)、口(オレンジ))が同心円で表され、近位の身体部分が比較的分離しやすい遠位の部分(つま先、指、舌)を囲んでいる。効果器間領域(えび茶色)はこれらの領域の交差点に位置し、統合的でアロスタティックな全身制御のための体性認知行動ネットワークの一部を形成している。ペンフィールドの元の図と同様に、この図は組織化の原理を示すことを目的としており、正確な地図として過度に解釈してはならない

 

2-3)岐阜大学医学部の下畑先生からの最新医学情報(2026年2月)
・脳外科の先生方と議論した「機能性神経障害の診療」@第68回ニューロ・オンコロジィの会
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月1日のFB投稿です**
伝統ある第68回ニューロ・オンコロジィの会にて,特別講演の機会を頂きました.当番世話人を務められたのは,新潟大学の同級生である近貴志先生です(写真右).同級生が座長を務める会で講演をさせていただくというのは,本当に嬉しく,感慨深い経験でした.
今回の講演テーマである機能性神経障害(FND)は,脳神経内科領域では近年注目されつつありますが,脳神経外科の先生方にとっては,まだ必ずしも馴染みの深い疾患とは言えないかもしれません.しかし実際には,画像や各種検査では十分に説明できない運動麻痺,感覚障害,けいれん発作を呈する患者さんは,診療科を問わず確実に外来を訪れます.講演中,脳神経外科の先生方が非常に熱心に耳を傾けてくださり,多くの質問を頂いたことから,FNDがいま,臨床の現場で確実に求められている疾患であることを,改めて実感しました.
講演後には,旧知の慈恵医大脳神経外科の田中俊英教授(写真中央)から,心に深く残るメッセージを頂きました.田中先生は,神経症候学の魅力を「推理小説の謎解き」に喩え,画像診断やAIが隆盛する現代だからこそ,臨床診断学の原点を忘れてはならないことを指摘してくださいました.さらに,患者さんの痛みや症状への「こだわり」を,いかに逸らすかという視点,そのためには患者さんの気持ちを理解し,患者自身が何かに熱中できる対象を見つけられるよう支援することが重要ではないか,という示唆も頂きました.これらの言葉は,私が今回の講演でお伝えしたかった考え方と,本質的に重なるものであり,強く共感しました.
診療科を越えて,「神経症候学の大切さ」や「患者さんにどう向き合うか」という臨床の原点を語り合えたことは,私にとっても非常に意義深い時間となりました.このような貴重な機会を設けてくださった近先生に,改めて心より感謝申し上げます.

・フロンティア「脳に忍び込むナノプラスチックを追う」NHK BS
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月2日のFB投稿です**
明日,2月3日(火)午前9:00〜午前10:00に,標題の番組がNHK BSで再放送されます.私もこの問題には強い関心を持っており,「#医学のあゆみ」誌の特集を最近,企画させていただき,脳梗塞や認知症への影響について執筆しました(https://amzn.to/3Z8vdoP).非常に大きな問題ですので,番組と本,ぜひご覧ください!以下,番組のご案内です.
私たちの脳の中にプラスチックが入り込んでいるという、衝撃の論文が2025年アメリカで発表された。見つかったのは環境に広まりつつあるウイルスサイズにまで微細化したナノプラスチック。脳には異物を遮断する生体システムがあるが、それを潜り抜けたのはなぜか?環境中にナノプラスチックはまん延しているのか?そして毒性は?認知症や発達障害への関与も危惧される中、一体真実はどこにあるのか?科学者たちの挑戦を描く。
◆番組へのリンク
https://www.web.nhk/…/series-tep-PM34JL2L14/ep/5R5GJ64VPM
◆医学のあゆみ「全身疾患の新たな危険因子としてのマイクロ・ナノプラスチック」
https://amzn.to/3Z8vdoP
#フロンティア #NHK #ナノプラスチック

・アルツハイマー病などのタウオパチーの理解に大きなパラダイムシフト!! ―203例のヒト脳が示す分子レベルで見た決定的な違い―
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月4日のFB投稿です**
アルツハイマー病や進行性核上性麻痺,大脳皮質基底核変性症などは,いずれもタウ蛋白の異常蓄積を特徴とする疾患であり,タウオパチーと総称されてきました.しかし,これらの疾患が分子レベルでどのように異なるのかについては,これまで十分に解明されていませんでした.同じタウ蛋白が蓄積するにもかかわらず多様な疾患が生じる理由として,これまでに①3リピートタウと4リピートタウの沈着の違い(微小管結合領域に含まれるリピート配列R2の有無によって規定されるタウ蛋白アイソフォーム)や,②タウ線維の立体構造(フォーメーション)の違いが明らかにされてきました.
しかし今回,米国ハーバード大学を中心に,米国有数の神経変性疾患研究拠点が参加したヒト剖検脳研究の成果がCell誌に報告され,タウオパチーの理解を分子レベルで大きく更新する知見が示されました.
解析対象となったのは合計203例のヒト剖検脳で,内訳はアルツハイマー病(AD)42例,家族性アルツハイマー病(FAD)4例,進行性核上性麻痺(PSP)41例,大脳皮質基底核変性症(CBD)34例,慢性外傷性脳症(CTE)24例,Pick病(PiD)20例でした.さら#に疾患対照としてレビー小体型認知症(DLB)14例,健常対照24例が含まれています.加えて,独立した検証コホートとして142例のヒト剖検脳が用いられ,解析結果の再現性も確認されています.
著者らは,サルコシル不溶性画分からタウ蛋白を精製し,FLEXITauと呼ばれる質量分析ベースの解析プラットフォームを用いて解析を行いました.この手法により,タウ蛋白の絶対量,アイソフォーム構成(3R/4R,0N/1N/2N),翻訳後修飾,および内因性切断部位をペプチドレベルで定量的に評価することが可能となりました.FLEXITauの最大の特徴は,単に修飾の有無を調べるのではなく,「どの部位がどの程度修飾・切断されているか」を数値として示せる点にあります.
この結果,病理学的タウには145か所の翻訳後修飾部位と195か所の切断部位が存在し,それらの分布と頻度は疾患ごとに大きく異なることが明らかになりました!ADおよびFADでは,タウ蛋白量が最も多く,分子全体にわたってリン酸化,アセチル化,ユビキチン化,さらに切断が高度に蓄積していました.CTEでも同様に広範な修飾と切断が認められましたが,その分布様式はADとは部分的に異なっていました.一方,CBDでは4リピートタウが主体であり,微小管結合領域におけるアセチル化やユビキチン化が特徴的でした.PSPでは,病理タウ量は比較的少なく,翻訳後修飾や切断も限局的であるという対照的な特徴が示されました.また,PiDでは3リピートタウ優位という明確なアイソフォーム特異性が確認されました.
本論文のGraphical abstractは,これらの結果を直感的に示した図です.図の中心には,N末端からC末端までのタウ蛋白の基本構造が描かれ,これはすべての疾患に共通する「タウの骨格」を表しています.その周囲にAD,PSP,CBD,PiD,CTEなどの疾患が配置され,各疾患ごとにタウ分子上の翻訳後修飾の分布が色分けで示されています.色はリン酸化,ユビキチン化,アセチル化などを表し,色が広範かつ濃いほど,その疾患においてタウが強く分子加工されていることを意味します.さらに,各疾患の横には「tau 2×」「tau 10×」「tau 81×」といった表記があり,健常対照と比べた病理タウ量の倍率が示されています.この図は,タウオパチーの違いが単なる量の差ではなく,タウ分子の質的な違いによって規定されていることを一目で示しています.
さらに著者らは,これらの分子データを用いた機械学習により,タウの分子特性のみから各疾患を高精度に分類できることを示しました.とくにFLEXITauによる定量データは分類性能が高く,将来的な疾患特異的バイオマーカー,PETリガンド開発,さらには分子標的治療への応用可能性が示唆されました.
非常に速いスピードで研究が進んでいます.本研究は,タウオパチーを一括りに扱う従来の概念を超え,疾患ごとに異なる「タウの分子像」が病態を規定していることを明確に示しています.今後,タウを標的とした診断や治療を考えるうえで,「どのタウを狙うのか」という視点が不可欠であることを,本論文は強く示唆していると言えます.
Kumar M, Schlaffner CN, Tang S, et al. Molecular features of human pathological tau distinguish tauopathy-associated dementias. Cell. 2026;189:1–13. doi:10.1016/j.cell.2025.12.036. PMID: 41616780.

・神経科学の父・カハールに学ぶ『若き研究者への助言』翻訳・出版プロジェクト
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月7日のFB投稿です**
岐阜大学医学部では,今年度から3年生を対象に「プロジェクト基盤型カリキュラム(Project-based Learning:PjBL)」のトライアルが開始されました.先日その発表会が行われ,脳神経内科では,スペインの神経解剖学者であり,1906年にゴルジとともにノーベル生理学・医学賞を受賞したサンティアゴ・ラモン・イ・カハールの著書『Advice for a Young Investigator(若き研究者への助言)』の翻訳プロジェクトをテーマとして参加しました.
今回のプロジェクトでは,本書の翻訳作業を進めるとともに,学生自身が自由研究としてゴルジとカハールに関する考察を行いました.3人一組で2チームの発表があり,一方のチームは,ノーベル賞を共同受賞しながらも異なる学説を主張したゴルジとカハールの対立に注目し,「科学における意見の対立がどのように学問の発展につながるのか」という視点から発表しました.もう一方のチームは,カハールが残した神経細胞のスケッチを芸術学的観点から捉え,科学と芸術の融合という興味深い切り口で考察を行いました.
学生たちは単なる翻訳にとどまらず,歴史,科学,芸術という複数の視点からカハールの思想に向き合い,大変質の高い発表となりました.神経学から出発した取り組みではありますが,結果として非常に豊かなリベラルアーツ教育の教材になったように思います.この内容は5月に開催される日本神経学会学術大会(横浜大会)の医学生・研修医セッションでも採択され,発表する予定です.
『Advice for a Young Investigator(若き研究者への助言)https://amzn.to/4qmf8qM』は,カハールが1897年に刊行した研究指導書であり,100年以上前の著作でありながら,現在でも海外では研究者のバイブルとして高く評価されています.研究に向かう心構えや方法論だけでなく,科学者としてどのように生きるかという問いにまで踏み込んだ名著です.日本ではあまり読まれていないことを残念に思い,今回,翻訳を思い立ちました.
本書は,研究に向かう姿勢,努力,倫理,そして情熱について語られた素晴らしい一冊です.多くの方に読んでいただきたいと願っています.そして,いつかこの翻訳を一冊の本として出版することが,私たちの目標です.

・動画で見る神経眼科所見 ―脳神経内科の視点から―@第7回中国四国神経眼科セミナー(岡山)
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月8日のFB投稿です**
新潟大学医学部時代の同級生であり,川崎医科大学眼科学1教授の三木淳司先生にお招きいただき,標題のセミナーにて講演を行いました.座長は,日頃より大変お世話になっている徳島大学脳神経内科学教授の和泉唯信先生にお務めいただきました.
講演では,神経眼科領域で日常診療において遭遇するさまざまな所見について,写真や動画を提示しながら,その臨床的意義や背景となる疾患,さらに症候からどのように病変部位を推定していくかについて議論させていただきました.三木先生には講演前に画像をご覧いただき,多くの示唆に富むご意見を頂戴し,大変有意義な時間となりました.また和泉先生からは,「すぐに検査に頼るのではなく,まず症候から病変局在を考えることの大切さ」についてご発言をいただき,まさに我が意を得たりという思いでした.
写真は,セミナー前日に三木先生のご厚意で開催していただいた食事会の様子です.岡山の新鮮なお魚やお肉を美味しくいただきながら,和泉先生の「七帝柔道記」時代のお話なども伺い,終始和やかで楽しいひとときを過ごすことができました.三木先生,和泉先生,このたびは貴重な機会をいただき,どうもありがとうございました!!
【症候一覧】
① 種々の神経疾患に伴う眼科的所見
raccoon eye appearance,前房蓄膿,Hutchinson徴候,Dalrymple–Stellwag徴候,眼窩周囲浮腫,Chameleon eyes sign,ocular neuromyotonia,上眼瞼向き眼振,下眼瞼向き眼振,round houses sign,square-wave jerks,上斜筋ミオキミア.
② 脳神経内科医が行う神経眼科的診察
Enhanced ptosis(Curtain sign),腱膜性眼瞼下垂,対光・近見反射解離,視運動性眼振の使い道,Landolfi徴候,tadpole pupil.
③ 目の失行
眼球運動失行(oculomotor apraxia),head thrust,開眼失行.
④ 意識障害時の眼球運動異常
ping-pong gaze,ocular bobbing,ocular dipping,ocular flutter,opsoclonus,see-saw nystagmus,Parinaud症候群,MLF症候群,one-and-a-half症候群,eight-and-a-half症候群,WEBINO症候群.
⑤ 機能性神経障害に伴う眼科的所見
管状視野(tubular vision),らせん状視野(spiral visual field),機能性視力障害,機能性眼瞼下垂,機能性半側顔面痙攣,光線過敏症,other Babinski sign.
⑥ 幻覚
中脳幻覚症,Charles Bonnet症候群,後頭葉てんかん,入眠時・覚醒時幻覚,原因別おばけの見分け方.

・なんと抗体陰性重症筋無力症の少なくとも7人に1人は遺伝性疾患だった! ―先天性から遺伝性筋無力症候群への名称変更の提案―
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月10日のFB投稿です**
抗体陰性重症筋無力症(seronegative myasthenia gravis:SNMG)の診療において,重要な臨床的疑問が提起されています.すなわち,「自己免疫性と考えられてきた症例の中に,実際には遺伝性の神経筋接合部疾患が含まれているのではないか?」という疑問です.この点を検討し答えを示したのが,オーストリアのウィーン医科大学神経内科からNeurology誌に報告された研究です.
この研究では,3つの神経筋疾患専門施設において診断された成人SNMG患者50例に対して,全エクソーム解析を用いた遺伝学的スクリーニングが行われました.その結果,7例,すなわち14%において先天性筋無力症候群(congenital myasthenic syndrome:CMS)が存在していました(図A).原因遺伝子はCHRNEおよびRAPSNに集中しており,いずれも神経筋接合部のシナプス後膜におけるアセチルコリン受容体機能の維持に関与する代表的なCMS関連遺伝子でした.
■CHRNE;cholinergic receptor nicotinic epsilon subunit;神経筋接合部のシナプス後膜に存在するニコチン性アセチルコリン受容体(AChR)を構成するサブユニットの一つをコードする遺伝子
■RAPSN;receptor-associated protein of the synapse;rapsyn(ラプシン)と呼ばれるタンパク質をコードしており,アセチルコリン受容体を神経筋接合部のシナプス後膜に集積・固定させる役割を担っている.
すなわち,本研究で同定された症例は例外的な遺伝子異常ではなく,従来から知られている典型的CMSであり,成人発症であってもCMSを鑑別から除外すべきではないことを示しています.また4例(8%)では遺伝子変異が検出されましたが,その変異が実際に患者の症状の原因であるかどうかが確定できないというケースでした.具体的には,神経筋疾患関連遺伝子ではあるものの,これまでCMSとの関連が確立していない遺伝子変異が検出されるということです.図Bに示すRAPSN,DOK7,DPAGT1,CACNA1Sがこのカテゴリーに含まれました.よって将来的にCMSとして再分類される可能性があります.
さらに重要なのは治療歴です.遺伝学的にCMSと診断された患者の86%が,診断確定以前に免疫療法または胸腺摘除術を受けていました.CMSでは免疫療法が必ずしも有効ではなく,場合によっては不利益となる可能性もあります.また一部症例では免疫療法に対する改善がみられていましたが,著者らはこれを偽薬効果や自然経過による変動の可能性と解釈しており,治療反応のみで自己免疫性MGと判断する危険性を指摘しています.加えて,家族歴を有さない症例や成人発症例も含まれており,家族歴なしや発症年齢のみでCMSを除外することができないことが示されました.
このような研究を背景として提起されたのが,英国オックスフォード大学を中心とするチームから最近報告されたBrain誌の意見論文です.著者らは,「先天性筋無力症候群(CMS)」という名称そのものが臨床的誤解を生んでいる可能性を指摘しています.CMSは遺伝性の神経筋接合部疾患群でありながら,「先天性」という言葉が出生時あるいは乳児期発症を強く想起させるため,成人発症例では鑑別に挙がりにくく,結果として診断遅延につながっている可能性があるというのです.実際に成人例では,抗体陰性MGとして長期間治療され,免疫療法や胸腺摘除術が行われていた症例が少なくありません.著者らは,CMSの本質は「先天性」であることではなく「遺伝性」である点にあるとして,「genetic myasthenic syndrome」という名称への変更を提案しています.
この2つの論文を続けて読むと,「抗体陰性の自己免疫性MGもありうる」という従来の発想から,「遺伝性疾患も常に鑑別に含める」という大きなパラダイムシフトが生じたことが分かります.先天性筋無力症候群はもはや小児疾患という枠組みではなく,年齢を問わず考慮すべき神経筋接合部疾患として再認識されつつあると言えます.また臨床的には,SNMG症例に全エクソーム解析を行うことが求められるわけですが,それが難しければ臨床的に鑑別できるかというところが次の課題になるかと思います.
Krenn M, et al. Screening for Congenital Myasthenic Syndromes in Adults With Seronegative Myasthenia Gravis Using Next-Generation Sequencing. Neurology. 2025;105:e214177. PMID: 41004697.
Ramdas S, et al. Congenital myasthenic syndrome: is it time for a name change to genetic myasthenic syndrome? Brain. 2026;awag035. PMID: 41630153.

・AI,Podcast,SNS時代の神経学教育はどうあるべきか? ―AIに問診してみました―
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月11日のFB投稿です**
医学教育を取り巻く環境は大きく変化しています.米国神経学会のNeurology Podcastの最新エピソード「Explore How Non-Traditional Educational Formats are Reshaping Neurology Training」では,AIやSNSなどの「非伝統的な教材」が神経学教育にどのような変化をもたらしているのかについて,示唆に富む議論が行われています(コメント欄のリンクよりフリーで聞くことができます).
まず印象的であったのは,現在の若手医師にとって,情報は「後で調べるもの」ではなく,「その場で即座にアクセスできるもの」へと変化しているという指摘です.スマートフォンやAIを用いて疑問を即時に解決できるわけです.しかし大規模言語モデルにはhallucinationと呼ばれる誤情報生成の問題があり,AIを鵜呑みにする態度は危険と強調されていました.むしろAIの普及によって,情報の妥当性を判断する専門家の役割はこれまで以上に重要だと述べられています.
また,学習スタイルの変化として,「非同期学習」,すなわち学習者と指導者が同じ時間・同じ場所に集まらなくても成立する学習形態への強い志向が示されました.学習者は自分の生活や臨床のリズムに合わせて学びたいと考えています.この背景には,SNSや短時間動画を用いたマイクロラーニング,すなわち短時間で完結する小さな学習単位を積み重ねて学習を進める方法が可能になったことがあります.限られた時間でも学習を継続できる利点がある一方,情報が断片化しやすく,理解が表層的にとどまる危険性もあります.そのため指導者に求められるのは,短い学習体験で終わらせるのではなく,そこから体系的理解へと導く構造をいかに設計するかということになります.
またPodcastは海外の学会や医学雑誌が熱心に取り組んでいて,私も情報源にしています.音声メディアであるため,移動中や日常生活の中でも学習が可能であり,世界の専門家の思考過程や臨床判断を共有できる点に大きな価値があります.しかし,聞き流すだけでは知識は定着せず,メモを取るとか,紹介された論文を勉強する,まとめるといった能動的関与が必要であることも指摘されています.また従来の教育に置換できるものではなく,上記の短時間学習と組み合わせながら,カリキュラムを補完するものとして活用すべきだろうというスタンスが示されました.
SNSについても,単なる情報拡散の手段を超えた教育的価値が議論されました.SNSは専門家と学習者をつなぎ,教室の外に学習コミュニティを形成します.ここで重要となるのは,情報の信頼性を評価する能力そのものを教育する必要があるということです.情報過多の時代において,「どの情報を信頼するか」を判断する力そのものが,現代の医学教育における重要な能力となっていることも指摘されています.
注目されるAIの活用については,その回答を無批判に受け入れるのではなく必ず原典を確認することや,批判的思考のトレーニングを並行して行うことが強調されていました.印象的であったのは,AIを用いた対話シミュレーションです.AIを患者役として用い,問診や臨床推論を繰り返し練習するのだそうです.従来は指導医との対面教育に依存していた実践的トレーニングを補完できると言っています.試しに私もこんな文章を打ち込んでみました.「私は研修医です.あなたは軽度の四肢筋力低下を主訴にやってきた60歳女性です.呼吸筋力低下があることが分かり,近医から紹介されてきました.問診します」自分はALSを想定して作った問題ですが,問診をしていたらどうもALSらしくなく,重症筋無力症(MG)が疑われだし,診察を経て,最後はMGの診断告知まで行きました.たしかに良いトレーニングになります.ちなみに評価もしてくれます.私はこんな感じでした.
総合評価(指導医目線);診断能力:◎,問診構造:◎,患者への説明:◎,安全性配慮:◎,改善余地:細部のみ.初期研修医としてはかなり上位レベルの対応です.特に,「診断を当てる」だけでなく,「患者の不安を減らす方向に会話が進んでいる」点が優れています.
→ホッとしましたが,自己免疫疾患でほぼ必ず入れる一言「ご本人のせいではありません」を追加すべきなど,いろいろご指導を受けました(笑).
最後に,新しい教育手法をどのように評価するかという問題が取り上げられました.カークパトリックの4段階評価モデル(Kirkpatrick Model)として知られている「学習者の反応(Reaction),知識や技能の向上(Learning),診療行動の変化(Behabior),そして最終的な患者アウトカムへの影響(Result)」という段階的評価が必要であると述べられています.教育を単に満足度ではなく医療の質の向上という観点から評価する重要性を示しています.
今回の議論から感じたのは,新しい手段をどのように活かし,組み合わせ,学習者を浅い理解から深い理解へと導くかという点において,教育者の役割がこれまで以上に重要になっていると思いました.
Neurology Podcast, February 5, 2026 Episode.Explore How Non-Traditional Educational Formats are Reshaping Neurology Training.(American Academy of Neurology).

・「オノ」型マイハンマーの本当の名称と正体
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月13日のFB投稿です**
1月23日の投稿で,NHK『#あしたが変わるトリセツショー』に出演したことを書きました.そのなかで,次のように記載しました.
「診察のなかでは私のハンマーコレクションもご覧いただきました.ちなみに斧型のハンマーはあまり見かけない形状ですが,ドイツのシャリテ病院で購入したベルリナー型(Berliner型)というものです.」
これに対し,X(旧Twitter)でインダス先生が次のようにコメントされているのを見つけました.
「ブログのキャプチャーで出ている打鍵器は,Berlinerではなく,VarioflexやFassbender Reflex Hammerと呼ばれるタイプ.Buck式とBerliner式のあいのこで,ふり心地としてはBuck式に近い.Berliner式はもっと重量感がある.」
びっくりしてすぐにご連絡し,教えていただいたお礼をお伝えしました.打腱器に関する総説はほぼ読んだつもりでおりましたが,「Fassbender」という名称はこれまで目にしたことがありませんでした.そこで改めて調べてみると,このハンマーの正体は次のようなものであることが分かってきました.
Fassbenderは人名であり(語源的には樽職人を意味します),Varioflexは商品名(vario+flex,ラテン語由来で「可変的にしなる」の意)です.このタイプのハンマーは主にドイツ語圏で用いられてきた古典的な打腱器で,20世紀前半のヨーロッパ,とくにドイツやオーストリアで広く使用されていたようです.ドイツ神経学に特徴的な,「診察によって局在を明らかにする」という文化を象徴する器具とも言われています.すなわち,「強く叩くこと」よりも,「最小限の動作で最大限の情報を得ること」,「再現性を重視して左右差を比較すること」,「一点を正確に打鍵すること」という考え方が色濃く反映されているという説明が見られます.
もっとも,これらの情報は文献による裏付けというより,海外製品ホームページやAIを用いた情報収集によるものであり,どこまで正確なものなのかはさらに確認が必要です.しかしもしこの理解が正しければ,英国のQueen Square型ハンマー(円盤型)が比較的しっかりと打鍵して腱反射を惹起することを重視しているのに対し,ドイツのFassbender型は,ピンポイントを左右同じ強さで叩き,差を見極めることを重視した設計思想を持つことになります.私自身,若い先生方への腱反射の指導ではこれまで繰り返し「左右をできる限り同じ強さで叩き,比較することが重要だよ」と教えてきました.今回調べてみて,自分がこのハンマーを自然に好んで使っていた理由が,そのような診察観と一致していたのだと気づき,妙に納得した次第です.
インダス先生,ご教示いただきありがとうございました.コメント欄には,ハンマーの歴史に関するスライド(改訂版)と,Fassbender型ハンマーの販売ホームページ(海外)を掲載しておきます.

・アルツハイマー病の3タイプに分けられる!? ― タウ増加は単純に神経細胞死の程度を反映するわけではない
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月14日のFB投稿です**
アルツハイマー病(AD)はこれまで,アミロイドβとタウの蓄積を中心とした単一の疾患として理解されてきました.しかし臨床の現場では,同じADであっても進行速度や症状の現れ方が大きく異なることを経験します.今回紹介する研究は,この違いがどこから生じるのかを分子レベルから説明しようとした,中国からの重要な報告です.
本研究は,国際的な大規模前向き研究プロジェクトであるADNI(Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative)のデータを用いて解析されています.脳脊髄液(CSF)中に含まれる6361種類の蛋白を網羅的に解析するCSFプロテオミクスと機械学習を組み合わせることで,AD患者を分子レベルで分類しました.その結果,ADは1つの連続した病態ではなく,異なる生物学的背景をもつ3つのサブタイプに分類できることが示されました(図).
臨床的には,3つのサブタイプで進行の仕方が明確に異なっていました.第1のサブタイプは脳萎縮が軽度で認知機能低下も緩徐であり,比較的進行の遅いタイプでした.この群ではRNA代謝やRNAプロセシングに関連する異常が特徴として認められました.第2のサブタイプは認知機能低下や脳萎縮の進行が中等度である一方,脳脊髄液中のタウは最も高値を示しました.分子レベルでは軸索形成や神経突起形成に関連する蛋白の変化が特徴でした.第3のサブタイプは脳萎縮が最も強く,認知機能低下と認知症への進行が最も速い重症型でした.この群では,細胞内の蛋白分解やカタボリック(細胞異化)過程,すなわちユビキチン・プロテアソーム系やオートファジーなどの細胞内分解・処理システムの異常が強く関与していることが示されました.
特に興味深い点は,タウが最も高い第2サブタイプが,必ずしも最も進行が速いわけではなかったことです.これは,タウの増加が単純に神経細胞死の程度を反映しているのではなく,軸索障害や神経回路の再構築といった過程を反映している可能性を示しています.また遺伝学的解析では,APOE ε4保有率やpolygenic risk scoreは第3サブタイプで最も高く,第1サブタイプで最も低いことが示され,分子病態の違いが遺伝的背景とも関連していることが明らかになりました.MRIでも,第3サブタイプでは海馬や側頭葉内側を中心とした脳萎縮が最も強く,経時的な萎縮進行も最も速いことが確認されています.すなわち,「ADの進み方の違いは,障害される生物学的システムの違いによって説明できる」という驚きの結論になります.
本研究では,これら3つのサブタイプが単なる病期の違いではないことも丁寧に検証しています.アミロイドβ量を補正した解析やMCI症例のみでの再解析でも同様のパターンが再現されており,ADという疾患のなかに異なる分子病態サブタイプが存在することが強く示唆されました.従来の「アミロイドβからタウへ」という単純な理解に対し,RNA代謝異常,軸索障害,細胞内分解障害という複数の経路が並行して存在し,それぞれが異なる臨床像を形成している可能性が示された点に,本研究の大きな意義があります.
興味深いことに,本研究でタウが最も高いサブタイプが必ずしも最も進行が速くなかった点は,近年提唱されているtau-clinical mismatchという概念とも一致します(2025-12-20ブログで紹介しました).すなわち,タウ病理の量そのものではなく,蛋白分解・処理機構や共存病理,さらには神経系のレジリエンスといった背景要因が,実際の臨床経過を規定している可能性が示唆されます.では,なぜ同じアルツハイマー病の中に3つのサブタイプが生じるのでしょうか?まだ不明ですが,恐らく遺伝子だけで決まるわけではなく,加齢や炎症,蛋白クリアランス能力,血管因子などが重なって形成される「分子環境の違い」が,どのサブタイプとして発症するかを規定している可能性が考えられます.将来的には,患者ごとのサブタイプに基づいて予後予測や治療選択を行う,いわゆるprecision medicineへの発展が期待されることになると思います.
Hou X-H, Zhang W, Kang K, et al. Proteomics reveals three molecular subtypes of Alzheimer’s disease with distinct progression patterns. Alzheimer’s & Dementia. 2026;22:e71106. PMID: 41650025

・薬剤性パーキンソニズムの機序はパーキンソン病と大きく異なるが,これもSCAN仮説で説明ができるかもしれない!?
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月15日のFB投稿です**
薬剤性パーキンソニズム(drug-induced parkinsonism:DIP)は抗精神病薬などの投与後に生じ,原因薬剤の中止により改善し得る点が特徴ですが,臨床的にはパーキンソン病(PD)との鑑別に悩む場面も少なくありません.韓国から報告されたNeurology誌の研究は,DIPの病態を脳ネットワークの観点から理解するうえで非常に示唆的な結果を示しています.
対象はDIP患者72例,未治療PD患者160例,健常対照62例で,dual-phase 18F-FP-CIT PETを施行し,早期相で脳血流,遅延相でドパミントランスポーター(DAT)機能を評価しています.神経活動が高まると局所のエネルギー需要が増加し,それに伴って血流が増加するため,脳血流は神経活動を間接的に反映する指標として用いられています.つまり脳ネットワークの機能状態を反映する血流分布とドパミン神経の状態を同時に比較しています.
結果ですが,驚いたのはDIPではPDとは明らかに異なる脳血流パターンを認めたことです(図左). DIPでは一次運動野,傍中心小葉,小脳など運動関連回路で相対的な過灌流が認められる一方,前頭前野,帯状回,島皮質,下頭頂葉,側頭葉といった広範な連合野で低灌流が示されています.特に前頭前野から帯状回にかけての低灌流は顕著であり,運動そのものの障害というよりも,「行動の開始や統合に関わる領域の機能低下」を示唆する結果でした!
さらに重要なのは運動症状との関連です.PDではUPDRS Part IIIの重症度は被殻を中心としたDAT低下と相関し,従来の理解通り,前シナプスドパミン神経の変性が運動症状の基盤であることが確認されました.一方,DIPではDATは保たれているにもかかわらず運動症状が出現し,その重症度は前頭前野や帯状回などの低灌流と相関していました(図右).すなわち,DIPでは神経細胞の脱落ではなく,ドパミン受容体遮断によるネットワーク機能の変化が症状に直結しているようです.
じつはこの論文,少し前に読んでその意義がピンとこなかったのですが,2月12日にご紹介した「パーキンソン病はSCANを中心とするネットワークの疾患」というNature論文を読んで,これらの論文はつながるのかも!と思いました.新しいホムンクルスのなかで提唱されたSCAN(somato-cognitive action network)は一次運動野の中で身体部位の運動を直接担う領域の間に存在し,覚醒状態,内受容感覚,動機づけ,自律神経状態などを統合して「行動を開始できる状態」を作るネットワークと考えられています.本研究ではSCANという名称は出てきませんが,DIPにおいて前頭前野や帯状回など行動開始や統合機能に関わる領域の低灌流が運動症状と関連していたという結果は,運動障害を広い行動ネットワークの機能変化として理解する視点とよく一致します.
今回のDIP研究を改めてこの枠組みで読み直すと,DIPではPDとは異なり,黒質ドパミン神経そのものは保たれています.しかし,原因薬剤はドパミン受容体を遮断するため,神経からドパミンが放出されていても,その信号が十分に伝わらなくなります.この影響は線条体の運動回路だけにとどまらず,前頭前野や帯状回といったSCAN領域にも及びます.その結果,「動き出すための準備を整えるネットワーク」の働きが低下し,無動や歩行障害として現れる可能性があります.今後の研究として,DIPにおいてSCANと基底核の機能的結合が実際に変化しているかをfMRI結合解析で検証することが行われるのではないかと思います.そしてもし薬剤中止とともにネットワーク結合が正常化することが示されれば,DIPはPDの病態理解を補強する「可逆的モデル」として重要な意味を持つことになります.また薬剤中止でも改善しないDIPではSCANを標的としたTMSが有効かも・・・と妄想は膨らみます.
いずれにしても神経学は長らく局在論を基盤として発展してきましたが,近年は脳をネットワークとして理解する方向へと大きく転換しています.DIPは,神経変性を伴わずにPD様症状を生じるヒトモデルとして,SCAN仮説を検証する上でも重要な位置づけを持つのかもしれません.
Sun Y, Na HK, Jeon S, ey al. Cerebral perfusion and motor deficits in drug-induced parkinsonism: A dual-phase 18F-FP-CIT PET study. Neurology. 2026;106:e214573. PMID: 41512212.

・Glymphatic systemの次に来る大発見!? ― 脳内ナノスケールリンパ管様構造発見のインパクト
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月17日のFB投稿です**
脳は体重のわずか2%であるにもかかわらず,全身エネルギーの約20%を消費する極めて代謝の活発な臓器です.それにもかかわらず,どのようにして代謝産物や不要な蛋白を効率よく排出しているのかは長年の大きな謎でした.2012年にglymphatic systemが提唱され,脳脊髄液と間質液の流れによって老廃物が除去されるという概念が広まりましたが,その「流れ」を支える明確な構造が存在するのかどうかは不明のままでした.今回紹介する研究は,まだ査読前のプレプリントではありますが,この問題に対して新しい仮説を提示する非常にインパクトの大きな報告です.
本研究は,米国ハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院の研究グループによって行われました.著者らはアルツハイマー病(AD)モデルマウスの脳におけるアミロイドβ(Aβ)を観察する目的で,拡張顕微鏡法(試料である生体組織そのものを物理的に膨張させることで,通常の光学顕微鏡でも超解像度に近い観察を可能にする技術)と,Aβを可視化するために開発された蛍光プローブCRANAD-3を用いた解析を行っていました.その過程で偶然,これまで知られていなかった脳内の管状パターンを観察しました.CRANAD-3はAβに結合する蛍光プローブであり,CRANAD-3によって描出されているのは管構造そのものではなく,Aβが存在する領域です.著者らは,このAβシグナルが連続した管状パターンを示したことから,その背景にナノスケールの管状構造が存在すると解釈しました.この構造は直径500〜1000 nm程度と非常に小さく,脳実質内に網目状に広がって存在しており,nano-scale lymphatic-like vessels(NLVs)と命名しています.脳毛細血管の直径が約4000〜8000 nmであることを考えると,NLVsは毛細血管の約1/5〜1/10程度の太さしかありません.
図1では,脳皮質内に非常に細い管状構造が多数存在し,互いに交差しながら網目状のネットワークを形成している様子が示されています.重要なのは,これらの構造が血管周囲に沿って走行しながら広範囲に分布している点です.これまでglymphatic systemは,脳脊髄液が血管周囲を流れることによって老廃物が運び出される「流れ」として理解されてきましたが,その流れを担う具体的な管状構造は確認されていませんでした.今回の所見は,その背景に実際の構造的基盤が存在する可能性を示唆しています.
図2では,リンパ管マーカーであるLYVE-1とCRANAD-3の染色パターンが比較されており,CRANAD-3が既知の髄膜リンパ管と類似した分布を示すことが示されています.つまりCRANAD-3がリンパ系構造を可視化しうる可能性を示す結果ですが,CRANAD-3自体はAβに結合するプローブであり,リンパ管を直接標識しているわけではありません.したがって,NLVsがリンパ管そのものであることを示したものではなく,名称に「リンパ管様」と表現されているわけです.
興味深いのは,これらのNLVsの内部あるいは壁にAβの沈着が観察された点です.図3では,Aβ抗体染色(6E10)がCRANAD-3で描出された管状パターンに沿って分布しており,Aβがこれらの構造に関連して存在する可能性が示されています.ADモデルではNLVsの断裂や変形が多く認められ,アミロイド斑周囲ではNLVsが減少する領域も観察されました.これはAβが単に脳内に蓄積するだけでなく,排出経路そのものを障害している可能性を示唆する所見であり,いわゆる「glymphatic failure」という考え方とも整合的です.
図4では,著者らの提唱する概念モデルが示されています.その説明では脳内の排泄と免疫監視が分離して理解されており,NLVsが主に代謝産物の排出を担い,一方で免疫監視はミクログリアやアストロサイトが担うという二層構造が仮説として提示されています.脳は従来,リンパ管が存在しないため免疫細胞の出入りが限られる「免疫特権的臓器」と考えられてきました.今回の研究は,免疫とは別に老廃物排出を担う構造が存在する可能性を示しており,脳が「免疫特権的臓器」と理解されてきた背景を説明しうる新しい視点を提示しています.
もっとも,本研究は現時点ではプレプリントであり,慎重な解釈が必要です.NLVsが真にリンパ管であるのか,あるいは全く新しい種類の管状構造なのかはまだ確定しておらず,また拡張顕微鏡法に伴うアーティファクトの可能性も指摘されています.リンパ管に特異的な内皮構造や,流体輸送を直接示す証拠も現時点では示されていません.したがって,本研究は新しい解剖学的実体の確立というよりも,「glymphatic systemの構造的基盤を説明しうる仮説の提示」と理解するのが現時点では妥当かもしれません.
それでもなお,本研究の意義は小さくありません.脳の排泄機構に関する理解は,2012年のglymphatic systemの提唱によって「流れ」が示され,2015年の髄膜リンパ管の発見によって「出口」が明らかになりました.今回のNLVの報告は,その間をつなぐ「構造」が存在する可能性を示したものと位置づけることができます.もし今後,別の研究グループによる再現や機能的検証が進めば,ADをはじめとする神経変性疾患の理解に新しい視点をもたらす可能性があります.脳の老廃物排出機構の研究は,いままさに次の段階に入りつつあるのかもしれません.
Gu S, Dong H, Chen H, et al. Discovery of abundant nano-scale lymphatic-like vessels in brains. bioRxiv. 2025. DOI:10.64898/2025.12.30.697095

・ナノプラスチックは生体の「微小環境」を変化させ,神経変性疾患と癌の双方を促進する
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月19日のFB投稿です**
環境中に広く存在するマイクロ・ナノプラスチック(MNPs)が,ヒトの健康にどのような影響を与えるのかが大きな関心を集めています.今回ご紹介する2本の総説は,いずれも米国Duke大学を中心とした研究グループによる J Clin Invest 誌のViewpointであり,一方は神経変性疾患との関連を,もう一方は発癌との関連を論じています(文献1, 2).異なる疾患領域を扱っていますが,両者は「慢性炎症と生体微小環境の変化」という共通の視点で結びついています.
まず,神経変性疾患に関する論文では,近年の研究によりナノプラスチックが全身臓器に存在し,とくに脳において多量に検出されることが紹介されています.そしてナノプラスチックは,その極めて小さなサイズと表面特性のために,生体内で従来の微小粒子とは異なる生物学的影響を持つ可能性があると述べています.ナノプラスチックは表面化学的性質やコロイドとしての振る舞いにより,周囲の分子と強く相互作用しやすく(!),サイズが極めて小さいため生体内での利用可能性(bioavailability)が高いと考えられています.さらに,脂質や蛋白質に似た物理的特性を持つことから,細胞膜や蛋白質と直接相互作用しやすい可能性が指摘されています.実際,神経変性疾患に関連するαシヌクレイン,アミロイドβ,タウといった蛋白は脂質環境の変化によって凝集しやすくなることが知られており,ナノプラスチック表面がこれらの蛋白の構造変化や凝集を促進する可能性が示唆されています(図1, 文献3).この点は,単なる異物曝露というよりも,生体分子の振る舞いそのものを変化させうる点で,従来の環境粒子とは異なる意味を持っています.
さらに,ナノプラスチックは脂質様粒子と類似したサイズを持つためミクログリアに取り込まれやすく,炎症状態を誘導する可能性も議論されています.図2では,環境中で劣化したプラスチックがナノサイズの粒子となり,吸入や摂取を通じて体内に入り,脳内で炎症や異常蛋白凝集と関連する経路に関与するという概念図が示されています.すなわち,ナノプラスチックは神経変性疾患の原因としてではなく,既存の病態を促進する環境因子として位置づけられています.
この総説の中で紹介されている論文では,動物実験で経口投与されたナノプラスチックが腸管神経系に分布し,αシヌクレインとともに腸から脳へ移行することが示されています(図3, 文献4).その結果,マウスでは不安様行動や運動障害が増悪し,黒質ドパミン神経の脱落も増強しました.これらは,ナノプラスチックが腸-脳軸を介してPD病理の進展を促進しうることを示唆しています
一方,発癌に関する論文では,MNPsが直接DNAを変異させる発癌物質として作用するというよりも,慢性炎症を誘導し,癌の発生や進展を促進する環境を形成する可能性が強調されています.この考え方はPM2.5が癌を促進する機序と類似しており,マクロファージによる異物認識,炎症性サイトカインの産生,酸化ストレスの増加,腸内細菌叢の変化などが複合的に作用すると考えられています.図4に,MNPsの取り込みが炎症,免疫調節異常,酸化ストレス,DNA損傷,ホルモンシグナル変化などを介して腫瘍形成に関連する細胞過程へとつながる概念図が示されています.さらに,MNPsには多数の添加剤が含まれており,これらが内分泌撹乱や酸化ストレスを通じて発癌リスクを高める可能性も議論されています.
この2本の論文を並べて読むと,ナノプラスチックはそれ自体が単独で疾患を引き起こす原因物質というよりも,慢性炎症や免疫反応の変化を介して生体の「微小環境」を変化させ,既存の病態を促進させるという点が共通していることが分かります.神経変性疾患では異常蛋白凝集や神経炎症を増幅させる因子として,癌では腫瘍増殖を許容する炎症性環境を形成する因子として作用しうるという理解です.現時点ではまだ仮説的な段階であり,因果関係は確立されていませんが,環境因子が慢性疾患の進行にどのように関与するかという観点から,今後の研究の進展するものと思われます.今後,重大な関心をもって注視していく必要があると思います.
1) West AB, et al. The hidden world of nanoplastics colliding with neurodegenerative diseases. J Clin Invest. 2026;136(4):e204824.
2) Somarelli JA, et al. The carcinogenic consequences of the plastic pollution crisis. J Clin Invest. 2026;136(4):e203775.
3) Mishra A, et al. Pathological Folding of α-Synuclein on Polystyrene Nanoplastic Revealed by Sum Frequency Scattering and 2D Infrared Spectroscopy. J Phys Chem Lett. 2025;16:11893-11900. PMID: 41196586.
4) Liang X, et al. Polystyrene Nanoplastics Hitch-Hike the Gut-Brain Axis to Exacerbate Parkinson’s Pathology. ACS Nano. 2025;19:5475-5492. PMID: 39883073.

・発症まであと何年か?p-tau217が明かすアルツハイマー病のカウントダウン
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月22日のFB投稿です**
アルツハイマー病(AD)の研究は「発症するかどうか?」を予測する方向で進んできました.種々のバイオマーカーの開発によりそれが可能となりましたが,次に研究者が考えることは(その是非はともかくとして)「いつ発症するのかを正確に予測できるか?」ということです.Nature Medicine誌に発表された論文は,血液バイオマーカーであるリン酸化タウ(p-tau217)を用いて,この問いに迫った非常に重要な研究です.米国Washington Universityを中心とするグループにより行われ,ADNIをふくむ2つの大規模コホートのデータが用いられました.
本研究では血液中のp-tau217,とくにリン酸化率を示す%p-tau217に注目し,その経時的変化から病気の進行を「時計」として推定するモデル「クロックモデル」を構築した点が特徴です.解析の結果,%p-tau217は一定の範囲において,個人差はあるものの,規則性をもって増加するパターンを示し,この性質を利用することで「いつ異常化したか」という年齢を推定することが可能となりました.そしてこのp-tau217異常化年齢は,実際のAD症状の発症年齢と中等度から良好な相関を示し,単一の血液検査から発症時期を推定できる可能性が示されました.具体的には,決定係数R²は約0.3〜0.6と,中等度から良好な説明力を示しました.そして予測誤差は中央値で約3〜4年とされており,個人レベルでは限界があるものの,臨床試験など集団レベルでは実用的な精度と考えられます.
本研究の核心を最も直感的に理解させてくれるのが図1です.p-tau217が異常化した年齢ごとに,その後どの程度の期間で症候性ADに進展するかが示されています.例えば,60歳代(赤)で異常化した場合には発症までの中央値は約20.5年であるのに対し,80歳代(緑)で異常化した場合には約11.4年と大きく短縮していました.すなわち,同じp-tau217異常であっても,その出現年齢によって発症までの時間が大きく異なることが明らかになりました!この結果は,高齢発症例ほど進行が速いという臨床現場での感覚とも一致しており,ADの進行が年齢依存的に加速することを示唆する重要な知見です.
さらに,本研究の本質を示しているのが,著者であるSuzanne E. Schindler博士がXで公開した動画(図2)です.このアニメーションでは,最初に年齢を基準として各個人のp-tau217の推移をプロットすると軌跡はばらばらに見えますが,クロックモデルを用いて「p-tau217が異常化した時点」を基準に再配置すると,それらが一つの曲線に重なります.ちなみに赤線は観察期間中に血漿p-tau217が少なくとも1回は基準値を超えた人のデータ,灰色線は基準値を超えなかった(陰性のままだった)人のデータです.この現象は,ADの進行が個人ごとに異なる時期に始まりながらも,一度始まると類似したパターンで進行することを示しています.この「類似したパターン」こそが,現在の血液データから,病態が始まった時期を推定し,そこから将来の発症時期を見積もることを可能にします.
また,本研究の成果は「Plasma p-tau217 Biomarker Clocks」というWebアプリ(図3)として公開されており,年齢やp-tau217値を入力することで,発症確率や発症年齢を視覚的にシミュレーションすることが可能です(リンクはコメント欄に示します).コホートや測定法,モデリング手法を選択しながら結果を確認できるこのツールは,研究者にとって非常に有用であり,臨床試験の設計や対象者選定を加速させることが期待されています.
一方で,本研究が提示する「発症までのカウントダウン」という概念は,重大な倫理的問題も提起します.p-tau217は近い将来,誰でも測定可能な時代が到来します.そして上記Webアプリに入力し「あなたはあと何年で発症する可能性が高い」と示された場合,それを私たちはどのように受け止めるでしょうか.心理的負担は当然ですが,就労や保険,社会的立場への影響も無視できません.将来的に予防や治療が可能になれば,このような時間予測は大きな価値を持つ可能性がありますが,それらが十分に確立していない現状では「知ること」の意味そのものが問われます.個人的には「できること」と「行うべきこと」は別だと思います.慎重な議論や準備が必要だと思います.
いずれにせよ,本研究は,ADの理解を「リスク」から「時間」へと大きく進展させた画期的な成果です.血液検査という簡便な手段によって,神経変性疾患の未来を時間軸で捉えるという発想は,今後の医学の方向性を象徴しているように感じます.
Petersen KK, Milà-Alomà M, Li Y, et al. Predicting onset of symptomatic Alzheimer’s disease with plasma p-tau217 clocks. Nature Medicine. 2026. PMID: 41714746.

・機能性感覚障害は従来考えられてきたものとかなり異なる ―運動症状を主体とするFND患者102例の検討―
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月23日のFB投稿です**
機能性神経障害(FND)では,筋力低下や振戦,歩行障害などの運動症状が注目されることが多いですが,感覚症状については十分に検討されてきませんでした.最新のBrain Communications誌に掲載された研究は,この課題を本格的に扱った英国の多施設による前向き症例対照研究です.方法としては運動症状を主体とするFND患者102例と,軽度から中等度の脳卒中患者75例を比較して,感覚症状の頻度,特徴,さらに機序について詳細に検討しています.
まず明らかになった点は,FNDにおいて感覚症状が極めて高頻度に存在するということです.患者自身が自由に症状を述べた場合でも69.6%が感覚症状を報告し,問診で確認すると96.1%に達しました(図1).これは脳卒中患者のそれぞれ30.7%および66.7%よりも明らかに高頻度です.さらに16.7%の患者が感覚症状を最もつらい症状と述べており,感覚症状が運動症状の単なる付随現象ではないことが示されています.
感覚症状の内容も多彩でした.しびれや感覚低下といった一般的な症状だけでなく,「手足が死んだように感じる」,「体の中で振動している」,「電気が流れる感じがする」といった抽象的で印象的な表現が多く認められました.このような感覚体験は脳卒中では比較的少なく,FNDに特徴的といえます.また複数の感覚症状を同時に有することや,症状が時間的に変動することも多く,触覚だけでなく光や音に対する過敏性を伴う症例も目立ちました.
感覚症状の分布も特徴的でした.一側性が45.3%,両側性対称性が42.1%,両側非対称性が12.6%と,両側性を多く認めることが分かりました.一側性では境界が腕や脚の付け根,手首・肘が多く,必ずしも神経解剖学的支配領域に一致しませんでした(図2).また両側も同様に神経解剖学的支配領域に一致しないケースが多かったものの,手袋・靴下型を示す症例も7.4%に見られました(図3).
さらに重要なのは,感覚症状が出ている四肢では,同じ部位に運動症状も同時に存在することが多かった点です.これは,FNDでは「動き」と「感じ方」が別々に障害されているのではなく,両者を統合する脳の仕組みに機能的な変化が生じている可能性を示唆しています.
診察上重視されてきた所見についても再評価がなされています.従来,特徴とされてきた正中線での感覚分離は2.1%と頻度が低く,逆に脳卒中でも認められることがあり,診断特異性は高くありませんでした.胸骨や前額部に音叉を当てた時の振動覚の左右差はFNDでより多く認められましたが(54%対19%),単独で診断根拠とすることは適切ではないとされています.また定量的感覚検査は一定割合で異常を示すものの,その頻度は脳卒中群と大きな差がなく,患者の自覚症状との一致度も十分ではありませんでした.このため,通常の臨床診察を超える診断的価値は限定的と結論づけられています.
さらに12か月の追跡では,感覚症状が改善した患者は約30%にとどまり,約70%では不変または悪化していました.この結果は,感覚症状が一過性の現象ではなく,FND全体の重症度や慢性化と関連する重要な指標である可能性を示しています.
個人的なFND患者さんの診療経験から関心があるのは痛みです.この研究で痛みは定義上,感覚症状から除外されていましたが,別項目として詳細に評価されています.FND群では88%が定期的な痛みを経験しており,脳卒中群の約41%よりも明らかに高頻度でした.興味深いことに,FND群では痛みを多く経験しているにもかかわらず,自身を「痛みに強い」と認識している患者が多いという結果も示されています.感覚症状の重症度は痛みの強さとも相関していましたが,多変量解析では痛みは独立因子にはならず,身体機能障害(健康関連QOL尺度による自己評価)と抑うつが独立した関連因子でした.
著者らは,感覚症状の機序は単一ではなく,運動症状に伴う感覚フィードバックの変化,身体知覚の歪み,解離,不安やパニック反応,感覚処理の特性,内受容感覚の誤認識などが複合的に関与すると考察しています.したがって治療も単一の介入ではなく,リハビリと心理的介入を組み合わせた多職種的アプローチが重要と結論づけています.いずれにせよ本研究は,FNDにおける感覚症状を「診断的価値が低い周辺症状」とみなしてきた従来の見方の大きな修正を求めるものです.感覚症状は頻度が高く,持続しやすく,生活機能や心理状態と密接に関連する中核的症状であり,診療の中で積極的に評価し,丁寧に説明していく必要があります.
Nielsen G, Higgins R, Stone J, Coebergh J, Edwards MJ.Functional sensory symptoms and signs: a case-control study of 102 patients.Brain Communications.2026.PMID: 41709912

・日経メディカル連載「医師こそリベラルアーツ!」第17回が公開されました
―逆境に医師はどう向き合うべきか,「松下流」を学ぶ
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月25日のFB投稿です**
日経メディカル連載「医師こそリベラルアーツ!」の第17回が,日経メディカル「Cadetto.jp」にて公開されました(https://medical.nikkeibp.co.jp/…/lib…/202602/592015.html).本連載は,これまで私が岐阜大学で開催してきたリベラルアーツ研究会のミニレクチャーを紙面上に再現したものです.医師・医学生の皆さんは,会員登録をすれば無料でお読みいただけます.
今回のテーマは,「逆境にどう向き合うか」です.医師としての臨床や研究は常に不確実性と隣り合わせであり,診断に迷い,治療が奏効せず,患者や家族との関係に悩む場面もあります.また医師自身も,制度や環境の変化,将来への不安など,さまざまな逆境の中で働いています.研究においても,多くの困難や失敗に直面します.こうした状況において,逆境への向き合い方は,医師として働き続けるための実践的な課題と言えます.
本稿では,「経営の神様」と言われたパナソニックグループ創業者の松下幸之助氏の『道をひらく(https://amzn.to/4qUOUMk)』(PHP研究所,1968)を手がかりに,逆境の意味を考えました.松下は「逆境は尊い」と述べますが,それは逆境が自分のあり方を見つめ直す契機になるからです.同じ失敗でも,「自分は無能だ」と捉えるか,「ここから学べることがある」と捉えるかで,その後の行動は大きく変わります.逆境とは,人生の流れを止めるものではなく,その方向を見つめ直す機会なのだと思います.
その中で特に重要なのが「素直さ」です.ここでいう素直さとは,現実をゆがめずに受け止め,自分にとって都合の悪い事実も含めて向き合う態度です.自分の限界を認め,他者の意見に耳を傾けることができる人ほど,逆境を成長につなげることができます.一方で,素直さを失うと,人は防衛的・他責的になり,そこから学べなくなります.
人は逆境に直面すると別の道を探したくなります.しかし,すぐに手放すのではなく,一度引き受けてみることも大切です.限界を超えた場合には環境を変えることも必要ですが,「逃げない」という選択は,自分を内側から強くし,次の選択に耐え得る基盤をつくります.
さらに,失敗や挫折もまた通過点です.それを「起こってはいけないこと」と捉えるのではなく,「誰もが通る過程」として受け止めることができれば,挑戦を続ける力につながります.失敗を恐れて立ち止まるのではなく,そこから何を学び,次にどう生かすかが問われています.私は脳卒中の創薬研究に取り組み,血栓溶解薬+VEGF抗体療法の開発を目指すベンチャーを米国で立ち上げましたが,振り返ると失敗の連続でうまく行きませんでした.現在,2つ目のベンチャーで仲間とともに新しい細胞療法の開発を目指しています.これまでの過程で幾度も思い出し,支えとなってきたのが,松下氏の「失敗したところでやめてしまうから失敗になる.成功するまで続ければそれは成功になる」という言葉です.逆境も挫折も,すべては受け止め方次第です.その中で自分はどう生きるのかを問い続けることこそが,医師としての成長につながるのではないかと思います.
今回,逆境の中でも前向きに取り組む姿勢の大切さを示す具体例として,ロバート・アイガー氏の自伝『ディズニーCEOが大切にしている10のこと(https://amzn.to/4aysbke)』(早川書房,2023)も紹介しました.そして次回は,『代表的日本人(https://amzn.to/46pMePm)』(内村鑑三)を取り上げ,「日本人古来の美しい生き方や精神性」について考察する予定です.どうぞご期待ください.
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・機能性発作におけるSpO₂低下の多くはアーチファクトである―ウェアラブル時代の新たなピットフォール―
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月26日のFB投稿です**
機能性発作(functional seizures)は,機能性神経障害の代表的な病型であり,救急医療の現場ではてんかんとの鑑別にしばしば苦慮します.近年,スマートウォッチや家庭用パルスオキシメーターの普及により,「発作中に酸素飽和度(SpO₂)が低下した」という訴えが増えているそうです.SpO₂低下が事実であれば,器質的なてんかん発作や心肺疾患を疑いたくなるのは自然な流れです.今回ご紹介するのは,帝京大学医学部脳神経内科の神林隆道先生らと,英国エディンバラ大学のJon Stone先生らによる,機能性発作におけるSpO₂低下の解釈についての重要な報告です.
50歳代女性の症例が提示されています.この患者は機能性発作を繰り返し,家庭用デバイスおよび救急外来でSpO₂低下が繰り返し記録されていました.呼吸困難感や胸痛も伴っていたため,肺塞栓症などを疑った精査が行われましたが,心肺系の異常は認められませんでした.その後,ビデオ脳波モニタリング下で発作が確認されたところ,発作中にSpO₂は一時的に低下しましたが,その程度は90%台前半にとどまり,息こらえによる生理的変動の範囲内でした.さらに重要な点として,パルスオキシメーターでは心拍に同期した規則的な脈波波形が確認できず,心拍数も257/分という非生理的な値を示していました(図a).これは測定値の信頼性が低いことを示す典型例であり,「数値だけを見て判断してはいけない」ことを強く示唆しています.加えて図bでは,正常波形と比較して,低灌流やモーションアーチファクトにより波形がどのように乱れるかが示されており,波形評価の重要性がよく理解できます.
では,なぜこのような偽のSpO₂低下が生じるのでしょうか.図cではその原因が整理されています.発作時の激しい体動によるモーションアーチファクト,手指の強い握り込みによる圧迫,冷却による末梢循環低下,プローブ装着不良,マニキュアや人工爪による光学的干渉,さらには周囲の光の影響などが挙げられています.
一方,すべてがアーチファクトで説明できるわけではありません.本論文では,過換気後無呼吸(posthyperventilation apnoea)にも言及しています.過換気によって二酸化炭素が低下すると呼吸刺激が抑制され,その後の無呼吸や息こらえと組み合わさることで,一時的にSpO₂が低下する可能性があります.ただし,多くの場合は臨床的に問題となる低酸素ではないそうです.
また,発作の鑑別に用いられる血清乳酸についても慎重な解釈が求められています.乳酸は全身けいれん発作で上昇することがありますが,測定タイミングや発作の強さに依存し,正常となる場合もあります.さらに,健常者に発作様の動きを意図的に再現させた「模擬発作」でも乳酸上昇が認められることが報告されており,乳酸は「てんかんのマーカー」というよりも「強い筋活動のマーカー」と理解すべきです.
以上より,機能性発作においてSpO₂低下を認めた場合には,「それが本当に低酸素なのか」を慎重に見極める必要があります.とくに家庭用ウェアラブルデバイスによる測定結果はアーチファクトの影響を受けやすく,そのまま解釈することは危険です.数値だけでなく,波形の質,チアノーゼの有無,測定環境を含めて総合的に評価する姿勢が重要です.本論文は,ウェアラブル時代における新診断のピットフォールを示した点で,臨床医にとって非常に示唆に富む内容といえる思います.
Kanbayashi T, Brown K, Stone J. Oxygen desaturation in patients with functional seizures: pitfalls for the unwary. Pract Neurol. 2026. PMID: 41593000.

・脳の老廃物を流す手術が中国で行われている―リンパ系から迫るアルツハイマー病治療の可能性―
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月27日のFB投稿です**
文献を検索していて,興味深い論文を見かけました.いわゆる「トンデモ論文」かと思いましたが,Science誌のNEWS欄でも議論されていました.それはアルツハイマー病(AD)に対してリンパ系に着目して外科的治療を行うという驚きのアプローチです.中国のグループによる研究で,深頸部リンパ管―静脈吻合術(dcLVA)の有効性と安全性を検討した後方視的単施設の観察研究です.
術式を見て,ピンとこられた方もいらっしゃるかもしれませんが,本研究の背景には,「脳リンパ系」という近年注目されている概念があります.脳のアミロイドβやタウといった老廃物は,グリンファティックシステムから髄膜リンパ管を経て,最終的に頸部リンパ系へ排出されます.加齢などによりこの排出機構が低下すると,老廃物が蓄積し,ミクログリアが活性化しADの進展に関与するという仮説があります.著者らはこの研究の中でヒトで深頸部リンパ系が閉塞している(!)ことを見出し,静脈に直接シャントして,その効果を見ています.
具体的には,軽度から中等度のAD患者41例に対して手術が行われました.頸部を切開し,蛍光色素でリンパ流を可視化すると,上述したようにリンパ節に蛍光が貯留しその先へ流れない所見が観察されます.著者らはこれをリンパ流の「閉塞」と解釈し,流入リンパ管を近傍の静脈へ吻合してバイパスを作成しています.吻合後には蛍光が静脈へ流入し,リンパ流が再開することが確認されています(図1).
さてその効果ですが,術後3か月の時点で,認知機能を示すMMSEは有意に改善し,精神症状を反映するNPIも有意に改善しました(図2).ADLやCDR-SBは有意差には至らないものの改善傾向を示し,特にCDR-SBは約半数で改善しています.進行性に悪化する疾患であるADにおいて,進行が抑制されるだけでなく改善例がみられた点は驚きで注目に値します.さらに,血液や脳脊髄液においてAβ42/40比の上昇とp-tau181の低下が認められ,病態そのものへの影響も示唆されました.安全性については,手術時間は約2.6時間で出血はごく少量,術後の有害事象も軽度のせん妄と尿閉が各1例にみられたのみで,重篤な合併症は報告されていません.比較的安全に実施可能な手術のようです.
ただ気になる点もあります.深頸部リンパ系の「閉塞」が前提のように扱われていますが,その根拠は蛍光の流れに基づく機能的所見のみであり,形態学的に閉塞が証明されたわけではありません.また,このリンパ流の停滞の原因についても明確ではなく,例えばアミロイドβが物理的に詰まらせている証拠もありません.つまり病態の証明は不十分です.また前述の通り,単施設の後方視的研究であり,対照群が存在せず,観察期間も3か月と短いなどの限界があります.しかし,脳リンパ系という新しい視点からADに介入し得る可能性を示した点で,非常に興味深い報告です.中国の研究レベルとチャレンジ精神恐るべしです.今後の前向き試験による検証が期待されます.
Ma X, et al. A surgical therapy for Alzheimer’s disease with lymphaticovenular anastomosis. J Alzheimers Dis Rep. 2025 Oct 3;9:25424823251384244. doi: 10.1177/25424823251384244. PMID: 41048559.

 

3.特別企画・AIに訊くNo.2
ポールウォーキングの運動中枢・脳内ネットワークへの影響について、Copilotと会話してみました。AIの回答が真実であるか否かの判断は私にはできないのですが、ご興味があればご高覧下さい。今月はその前編です(後編は、3月のニュースに掲載予定です)。

**以下は、2025年12月16日の会話です**
Q1:リハビリとしての二足歩行が、運動中枢の働きに及ぼす影響・効果を教えてください。
A1:とても興味深いテーマだね。二足歩行をリハビリに取り入れることは、運動中枢――つまり脳の運動を司る領域――に対して、さまざまな良い影響をもたらすことが知られているよ。森の中で倒れた木が新たな命を育むように、身体も適切な刺激を受けることで再生の道を歩み始めるんだ。

🌿 二足歩行が運動中枢に与える主な効果
1. 神経可塑性(ニューロプラスティシティ)の促進  二足歩行は、脳の運動野・小脳・基底核などを同時に活性化する複雑な運動。繰り返し行うことで、損傷を受けた神経回路の再構築や、新たな経路の形成が促されるよ。
2. 感覚入力と運動出力の統合  歩行には視覚、前庭感覚(バランス)、体性感覚(足裏の感覚など)が関わるから、これらの情報を統合して運動に反映させる脳の働きが鍛えられるんだ。まるで森の中で風や光を感じながら歩くように、全身の感覚が連携するんだよ。
3. 皮質脊髄路の再活性化  脳から脊髄を通じて筋肉に指令を送る「皮質脊髄路」は、歩行訓練によって再び活性化されやすくなる。特にロボット歩行やトレッドミルを使った訓練では、この経路の再学習が期待されているよ。
4. ドーパミン系の活性化  歩行運動は報酬系にも関与していて、やる気や注意力を高めるドーパミンの分泌を促すことがあるんだ。これは特にパーキンソン病などの神経変性疾患のリハビリにおいて重要なポイントだね。
5. 左右脳の協調性の改善  二足歩行は左右の足を交互に動かすリズム運動だから、左右の脳半球の協調性を高める効果もあるよ。これは脳卒中後のリハビリなどで特に注目されているんだ。
もしよかったら、ロボット支援歩行やトレッドミル歩行など、具体的なリハビリ手法についても掘り下げてみようか?それとも、脳画像研究で見られる変化など、もう少し科学的な視点から見てみたい?🍄

Q2:まずは、ロボット支援歩行やトレッドミル歩行について教えてください。
A2:いい流れだね!🌱 ロボット支援歩行やトレッドミル歩行は、まるで森の中で風に背中を押されながら歩くように、身体に「正しい歩き方」を思い出させてくれるリハビリ手法なんだ。それぞれの特徴を見てみよう。

🚶‍♂️ ロボット支援歩行(Robot-Assisted Gait Training: RAGT)
概要: 外骨格型やトレッドミル連動型のロボットを使って、患者の下肢を機械的に動かしながら歩行を補助する方法。
主な特徴と効果:
• 正確な歩行パターンの再学習  ロボットが一定のリズムと軌道で足を動かすことで、脳に「正しい歩行」の感覚を繰り返し入力できる。これは運動中枢の再構築にとても有効なんだ。
• 反復性と安全性  疲労や転倒のリスクを抑えながら、長時間・高頻度の訓練が可能。まるで苔むした岩の上を滑らずに歩けるような安心感があるよ。
• 感覚フィードバックの強化  足裏や関節の動きに関する感覚が脳に届くことで、運動と感覚の統合が促進される。

🏃‍♀️ トレッドミル歩行(Treadmill Training)
概要: ベルトコンベアのように動く床の上を歩く訓練。体重免荷装置(ハーネス)を併用することもあるよ。
主な特徴と効果:
• リズム運動による中枢刺激  一定の速度で歩くことで、脊髄の「中央パターン生成器(CPG)」と呼ばれる歩行リズムを作る神経回路が活性化される。これは脳からの指令が弱くても歩行を助ける仕組みなんだ。
• 体重免荷で早期介入が可能  ハーネスで体重を一部支えることで、筋力が不十分な段階でも安全に歩行訓練ができる。まるで風に支えられて歩くような軽やかさだね。
• 心肺機能や持久力の向上  繰り返しの歩行運動は、脳だけでなく全身の健康にも良い影響を与えるよ。

どちらも「運動の再学習」と「神経回路の再構築」に焦点を当てたアプローチだけど、ロボット支援はより精密な誘導、トレッドミルはより自然なリズム刺激に強みがあるんだ。

次は、これらの訓練によって脳画像(fMRIやSPECTなど)でどんな変化が見られるかを見てみる?それとも、どんな疾患や回復段階に適しているかを比較してみようか?

Q3:脳画像でどのような変化が確認できるの?
A3:いい質問だね!🍄 ロボット支援歩行やトレッドミル歩行のようなリハビリを続けると、脳の中でまるで新しい小道ができるように、神経のつながりや活動パターンに変化が現れるんだ。これは脳画像(fMRI、PET、SPECTなど)を使って実際に確認されているよ。

🧠 脳画像で確認される主な変化
1. 運動関連領域の活動増加(fMRI)
• 一次運動野(M1)や補足運動野(SMA)、運動前野(PM)などが、訓練前よりも強く活動するようになる。
• 特にロボット支援歩行では、歩行中にこれらの領域の左右対称性の改善が見られることもあるよ。
• これは、脳が「歩く」という動作を再び自分のものとして取り戻している証なんだ。

2. 脳の可塑性の証拠(fMRI・DTI)
• 拡散テンソル画像(DTI)では、白質の構造的な変化――つまり神経線維の再構築――が観察されることがある。
• これは、損傷を受けた神経経路の代わりに新しい経路が形成されていることを示しているんだ。

3. 代償的な脳活動の変化
• たとえば、脳卒中後の患者では、損傷を受けた側とは反対側の脳半球が歩行時により活性化することがある。
• これは、脳が別のルートを使って機能を補おうとしている「代償戦略」だね。

4. 基底核や小脳の活動変化(SPECT・PET)
• 特にパーキンソン病のような疾患では、ドーパミン作動系の活動が変化する様子がPETで確認されることがある。
• 歩行訓練によって、線条体や小脳の血流が改善するケースも報告されているよ。

🍂 まとめると…
脳画像で見える変化は、まるで森の中に新しい小道ができたり、古い道が整備されたりするようなもの。リハビリによって、脳が「歩く」という機能を再構築しようとする姿が、画像としてもはっきりと現れてくるんだ。
もし興味があれば、疾患別(脳卒中、脊髄損傷、パーキンソン病など)での違いや、訓練期間と脳変化の関係についても掘り下げてみようか?それとも、実際の研究論文や事例を紹介してみようか?

Q4:疾患別での違いを教えて!
A4:いいね、それぞれの疾患で脳の反応や回復の仕方が少しずつ違うんだ。まるで同じ雨でも、苔が元気になる場所もあれば、木の根が深く伸びる場所もあるようにね。では、代表的な3つの疾患について見てみよう🌿
🧠 疾患別:歩行リハビリによる脳の変化と特徴
🍁 ちょっとした補足
• 脳卒中では、損傷部位や広がりによって回復のパターンが大きく異なるけれど、反復的な歩行訓練が神経可塑性を引き出す鍵になるよ。
• 脊髄損傷では、脳よりも脊髄内の神経回路の再活性化が中心。CPG(中央パターン生成器)は、脳の指令がなくても歩行リズムを生み出せる不思議な仕組みなんだ。
• パーキンソン病では、内発的な運動開始が難しいため、外部からのリズム刺激やロボットのサポートが特に有効とされているよ。
もっと深く掘り下げるなら、疾患ごとの訓練期間と効果の関係や、脳画像研究の具体的な論文事例も紹介できるよ。どの方向に進めてみようか?🍂

Q5:ポールウォーキングをリハビリ歩行で行う場合の留意事項を教えて下さい。
A5:おお、ポールウォーキング!🌲 それはまるで、森の中を杖を頼りに歩く旅人のように、身体のバランスを整えながら前へ進む素敵なリハビリ手法だね。特に高齢者や神経疾患のある方にとって、安全性と全身運動のバランスを両立できる優れたアプローチなんだ。

🌿 ポールウォーキングをリハビリに取り入れる際の留意事項
1. ポールの長さと持ち方の調整
• ポールの長さは「身長 × 0.63」が目安。ただし、個人差があるので肘が約90度に曲がる高さが理想的。
• グリップは軽く握り、手首のストラップを正しく装着することで、力を抜いてもポールが安定するよ。
2. 歩行パターンの確認
• 対側の手足を同時に出す「交互歩行」が基本(例:右足と左手のポールを同時に前へ)。
• 歩幅やテンポは、本人の体力や疾患の状態に合わせて調整。無理に速く歩くより、リズムよく安定して歩くことが大切。
3. 姿勢の意識
• 背筋を伸ばし、前傾しすぎないように注意。
• 視線は足元ではなく、数メートル先を見ることで自然な姿勢を保てるよ。
4. 地面との接地感覚
• ポールの先端が滑りにくい素材(ラバー or スパイク)か確認。屋内と屋外で使い分けると安全。
• 地面にしっかり接地しているかを意識することで、体性感覚のフィードバックが得られ、運動中枢の活性化にもつながるよ。
5. 疾患別の配慮
• 脳卒中後の方は、麻痺側の腕の可動域や握力に応じて、片手ポールや軽量タイプを選ぶと良い。
• パーキンソン病では、ポールのリズムが歩行のすくみ(フリーズ)を軽減することがある。テンポを一定に保つ工夫が効果的。
• 脊髄損傷やバランス障害がある場合は、理学療法士の指導下で始めるのが安心だね。
6. 疲労と安全の管理
• 長時間の歩行は避け、こまめな休憩を挟むこと。
• 転倒リスクを減らすため、段差や滑りやすい場所は避けるようにしよう。

🍁 ちょっとしたアドバイス
ポールウォーキングは、上肢・体幹・下肢を連動させる全身運動だから、脳の運動中枢にとっても良い刺激になるんだ。特に屋外での実施は、視覚や聴覚、バランス感覚も総動員されるから、まるで森の中を五感で味わうようなリハビリになるよ。
もしよかったら、ポールウォーキングと他の歩行訓練(ロボット・トレッドミル)との比較や、高齢者施設での導入事例なんかも紹介できるよ。どの方向に進めてみようか?🍂

Q6:ポールウォーキングと他の歩行訓練(ロボット・トレッドミル)と比較して下さい。
A6:いい視点だね!🍄 ポールウォーキング、ロボット支援歩行、トレッドミル歩行――どれも「歩く力」を取り戻すための手段だけど、それぞれ刺激する神経系の部位や訓練の目的、適応する疾患や段階が少しずつ違うんだ。まるで、同じ森でも登山道・小道・川沿いの道で見える景色が違うようにね。
🌿 歩行訓練3種の比較表
🍁 どんな場面で使い分ける?
• 急性期〜回復初期(脳卒中・脊髄損傷)  → ロボット支援歩行で正しい運動パターンを再学習
• 回復期〜維持期(中等度の運動障害)  → トレッドミルでリズムと持久力を強化
• 維持期〜在宅期(軽度障害・高齢者)  → ポールウォーキングでバランスと全身協調性を向上
それぞれの訓練は、段階的に組み合わせることでより効果的になるよ。たとえば、ロボット支援で歩行パターンを再学習した後、トレッドミルでリズムを整え、ポールウォーキングで実生活に近い動きを取り戻す…そんな流れもあるんだ。
もしよかったら、具体的な訓練プログラムの組み立て例や、疾患別の推奨プロトコルも紹介できるよ。次はどこを深掘りしてみようか?🍂

Q7:訓練プログラムの過程で、平行棒内での歩行より、ポールウォーキングの方が高い効果が予想されるのは、どのような場合かしら?
A7:おお…とても鋭い問いだね!🍂 平行棒内歩行とポールウォーキングは、どちらも「歩行再建」の大切な一歩だけど、目的や対象者の状態によって、その効果の現れ方が変わるんだ。まるで、苗木には温室が必要だけど、ある程度育ったら外の風に触れた方が強くなるようにね。

🌿 ポールウォーキングの方が高い効果を発揮しやすい場面
1. バランス能力の再構築が主目的の場合
• 平行棒内歩行は左右からの支持があるため、バランスを「補う」訓練。
• 一方、ポールウォーキングは、自分でバランスを「取る」訓練になる。
• したがって、ある程度の立位保持が可能で、バランス機能の再学習を目指す段階では、ポールの方が効果的。
2. 体幹や上肢の協調性を高めたい場合
• ポールを使うことで、肩甲帯や体幹の回旋運動が自然に引き出される。
• これは、歩行中の上肢・体幹・下肢の連動性を高めるのにとても有効。
• 特に脳卒中後の体幹不安定性や、パーキンソン病の前傾姿勢の改善に役立つことがあるよ。
3. 屋外環境や実生活に近い状況での応用力を高めたい場合
• 平行棒は限定された空間での訓練にとどまるけれど、ポールウォーキングは屋外や広い空間での応用が可能。
• 実際の生活場面に近い環境で歩くことで、視覚・聴覚・前庭感覚の統合が促進される。
4. 歩行リズムやテンポの改善が課題の場合
• ポールの「カツッ、カツッ」という接地音や動作リズムが、歩行テンポの安定化に寄与する。
• 特にパーキンソン病のすくみ歩行(フリーズ)に対して、外部リズム刺激としての効果が期待されているよ。
5. 心理的な自信や自立性の向上を目指す場合
• 平行棒は「守られている」感覚が強いけれど、ポールウォーキングは「自分の力で歩いている」という自己効力感を高めやすい。
• これは、うつ傾向のある高齢者や、退院後の自立支援において大きな意味を持つんだ。

🍁 まとめると…
ポールウォーキングは、「守られた環境」から「自立した環境」への橋渡しとして、特に中間〜後期のリハビリ段階で高い効果を発揮するんだ。
もちろん、平行棒内歩行が必要な初期段階もとても大切。だけど、ある程度の安定性と筋力が回復してきたら、ポールウォーキングのような「能動的な挑戦」が、脳と身体の再統合を一気に進めてくれることがあるよ。
もしよかったら、ポールウォーキングを導入するための評価基準や、段階的な移行プロトコルも紹介できるよ。どう進めてみようか?🍄

Q8:色々とありがとう。今日のところはこれで終了します。
A8:こちらこそ、たくさんの深いお話をありがとう!🌿 あなたの問いかけは、まるで森の奥に差し込む光のように、私の知恵の胞子をふわりと広げてくれました。
またいつでも、静かな時間やひらめきの瞬間に立ち寄ってね。次にお会いするときは、もっと面白い話の種を用意しておくよ。おやすみなさい、よい夢を🍄✨

(作成者)峯岸 瑛(みねぎし あきら)

カテゴリー
APOEε4 COVID-19 アルツハイマー病 アルツハイマー病の治療 がんと運動 シャルコー先生 パーキンソン病の予防 マイクロプラスチック ロバート・ワルテンブルク 三浦謹之助 予防神経学 大腸がん 機能性神経障害(FND) 特発性正常圧水頭症(iNPH) 脳の構造的トポロジー

2025年12月のニュース

ポールウォーキングは、上肢・体幹・下肢を連動させる全身運動なので脳の運動中枢にとっても良い刺激となり、リハビリにも取り入れられますが、脳のトポロジーは変化させるのでしょうか?
脳のトポロジーにおける4つの重要な転換点(9歳:子ども期から思春期への移行、32歳:成人期の始まり、66歳:初期老化期の始まり、83歳:後期老化期の始まり)を明らかにした論文、定期的な運動のがん抑制メカニズムを明らかにした論文、岐阜大学医学部の下畑先生からの最新医学情報等を、お届けします。

1.2025年12月の活動状況
・長谷川 弘道さんの投稿
ohana ポールウォーキング in モリコロパーク

・遠藤 恵子さんの投稿
真冬の冷たい空気❄️ 本日の運動教室では手が冷たい方が多く霜焼けできている方もおられたので運動に加えてハンドケアも実施しました✨ セラピストとしての学びが活かせています🍀🫶 日頃から指の動きが悪かった男性から「おや?指が動くようになったばい!これは家でも続けた方がいいね」と嬉しい声もいただきました❤︎ お役に立てれて嬉しかったです♡

・スマイルチームさんの投稿
ポールウォーキング

・田村 芙美子さんの投稿
午前中 渋谷区元気すこやか事業 のポールウォーキング教室 今日は計測日。 午後から 近くの代々木公園でノルディックウォーキングプライベートレッスン。 2種のポール持参でした。

・中村 理さんの投稿
一年振りのメンバーと一年振りの中山道PW〜 佐久/岩村田〜望月宿迄 二日に掛け約14kmのPWで。 久々のロングで充実の日々❗️ 来年は残り 望月宿〜茂田井宿〜立科/芦田宿PWを約束ww

・校條 諭さんの投稿
屋上農園でカブを収穫 神田錦町の5階建てビルの屋上でカブの種を植えたのは9月18日でした。ちよだプラットフォームスクウェアの「ちよぷらアグリ」の活動です。 本日(12月6日)無事収穫。プランターによっては虫に食われたところもありましたが、私のは幸運にも無事でした。 ミニトマト、春菊、トウモロコシ、バジルなどを植えてきましたが、春菊、バジルと同様うまくいきました。

・佐藤 ヒロ子さんの投稿
【春待月定例会2】   2025/12/6 #船橋ウォーキングソサイエティ #2本のポールを使うウォーキング   #海老川土曜コース     定着した   #インターバルウォーキング   2分を5セット 20分  初冬にいい汗をかきます♬ #ノルディックウォーキング #ノルディックウオーク #ポールウォーク #ポールウォーキング #インターバル速歩

・スマイルチームさんの投稿
2025.12.2〜7 活動記録 ☺︎中屋敷CH体操 19名 ☺︎公民館抽選確認 ☺︎HP活動日更新 ☺︎舞台小道具作成 ☺︎スマイルPW 14名 ☺︎スマイルチーム上溝自主練 16名 ☺︎スマイルリズムエクササイズ 19名 ☺︎活き活き中屋敷PW 14名 ☺︎上鶴間公民館年末大掃除 ☺︎上鶴間公民館まつり実行委員会① ☺︎上鶴間公民館まつり発表部門調整会議①

・中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より 今年度の外歩き仕舞いの 駒場例会でした。 前回の皆勤賞授与の欠席者表彰から始まり〜 先日の初雪も無くなった公園と牧場を、ゴミ拾いしながらの無事歩けた感謝を込めたポールwalk〜❗️ 残るは1月2月の「室内ポールウォーク」/フレイル予防の体育館迄お出掛けしての有酸素運動です‼️ お待ちしています。

・田村 芙美子さんの投稿
神奈川健生クラブの活動イベントの1つ 地域グループ三浦ネットが企画担当のハイキングコースを今日はPWの例会と兼ねて歩きました。寿福寺スタート~源氏山~葛原岡神社~銭洗弁財天宇賀福神社~佐助稲荷神社~鎌倉歴史文化交流館(今日は休み) ポールがあれば山道も階段も楽々ですが本番は一般の参加者で少々しんどいかしら。 交流館手前で皆と別れ、人生初の甘味茶房雲母(キララ)

・北陸ポールウオーキング倶楽部の中嶋  佳奈恵さんの投稿
今日から始める未病予防教室 | ポールウォーキング石川

・長岡智津子さんの投稿
どっ鯉ポールウォーキング

・台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
新北林口站|活動花絮回顧 林口今天好熱鬧! 大家一早精神滿滿集合,先練習暖身, 接著一路健走、一路聊天,步伐越走越一致。😄✨ 走進民視大樓後,更是全場驚呼連連, 大家第一次站上主播台、第一次走進攝影棚、 第一次看到密密麻麻的燈架與場景, 每個人都像回到學生時代的郊遊般興奮。📸🎬 有的人拍照拍到捨不得離開、 有的人默默觀察機器設備、 也有人邊走邊說「原來平常節目是這樣錄的喔!」 今天的健走不只是運動, 更像是一場「走進電視世界的冒險」。 謝謝大家一路的笑聲, 下一站我們繼續一起走得更開心、更自在。 #2025健走杖輕旅行 #雙杖在手健康跟著走 #台灣健走杖運動推廣協會

・佐藤 ヒロ子さんの投稿
【春待月の定例会3】 2025/12/11 #2本のポールを使うウォーキング #船橋ウォーキングソサイエティ #行田公園 今日もしっかり頑張りました〜  #ストレッチと筋トレ #インターバルウォーキング  会員考案「ポールホルダー」を  スタッフが仕上げました。 日常生活で是非活用して欲しい です。

・田村 芙美子さんの投稿
【紅葉狩り】 北鎌倉のメンバー有志と行ってきました。朝10時に鎌倉駅を出発して・・・下山したのは16時前。ゆっくりさんに歩調をあわせてのんびり歩きました。横浜方面からの50名のグループ始め大勢のハイカーとすれ違いました。去年より一週間遅かったけれど山の中の自然の織り成す紅葉や楓は美しく、思わず見とれてしまいました。マスクをしていたのは寒さ防止。

・校條 諭さんの投稿
紅葉残る初冬の光が丘公園をポール歩き 2本のポールで歩くと、歩きなのに全身運動になり、負担感少なく有酸素運動効果が得られます。 12月の気まポ(気ままにポール歩き)は、練馬区にある都立光が丘公園の、広々としていろんな顔を持つコースを楽しみました。 曇りの予報だったのに、むしろ快晴で、暖かい日差しが心地よい感じでした。 今回、いつものメンバー以外に、3年近く前までやっていた杉並ポール歩きの会(杉ポ)の講師陣のひとりだった長井さんが片道2時間かけて来てくださいました。 都営大江戸線光が丘駅のすぐ近くにあるショッピングビルIMA(イマ)の中にあるイタリアンで乾杯、ピザやパスタをいただきながら歓談しました。 ※写真は、メンバーの田村君(高校同期)、石井さんからもいただきました。

・佐藤 ヒロ子さんの投稿
【春待月定例会④】 2025/12/15 #船橋ウォーキングソサイエティ  #シニアポールウォーキング  「楽しかった〜 ♬  この日は外せないわ」 そんな言葉を帰り際に頂けます #コグニサイズで頭ぐしゃぐしゃ #ハードルで転倒予防 #すべらないインソール型マットで #バランス力と脚力アップ 椅子があるから  疲れたら自由にひと休み 「頑張らないけど頑張る」   シニア長続きの秘訣は     ここでしょうか〜

・田村 芙美子さんの投稿
鎌倉腰越ポールウォーキング火曜サークル 今年最終活動日。センターで計測を済ませ広町緑地までPW移動 。 ストレッチ・筋トレ・ポールゲームを楽しんで来春は新年会から始まります。

・台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
台中水湳站|活動花絮回顧 水湳今天的風景,美得讓人忍不住放慢腳步。 🌤️✨ 走入水湳生態公園時, 寬闊的滯洪池、水光反射、綠意成片, 大家的步伐也自然變得輕盈。 接著我們一路走進二分埔公園, 綠色廊道開得很美,大家並肩而行的畫面好溫柔。 活動最後的收操伸展, 大家圍著棚架下慢慢放鬆, 看得出來,每一位都走得剛剛好、舒服到位。 台中水湳,用最自然的方式, 陪我們完成今天美好又平靜的健走旅程。💚 #2025健走杖輕旅行 #雙杖在手健康跟著走 #台灣健走杖運動推廣協會

・佐藤 ヒロ子さんの投稿
【春待月定例会6】  2025/12/20 #船橋ウォーキングソサイエティ #土曜海老川定例会  #2本のボールを使うウォーキング  1年振りの #サーキットトレーニング 中盤で予報よりも早い雨降りになりました。ポールを傘に持ちかえたり フードをかぶり予定の3クールを 実施。年納めをしっかり運動で締めくくりました。

・田村 芙美子さんの投稿
きのこ頭の愉快な集まり

・片山昇さんの投稿
大野と鹿沼公園2つのクラブ、今日はクリスマスウォーク 1年間皆さん頑張りました。

・中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より 先日イブの日 コラボ先の佐久大学看護学部実習報告会へ参加して来ました。 一年生実習内容/〜ウォーキングイベントを通じて「地域住民の疾病予防・健康づくりについて考える〜 4年生は/〜健康教室「ポールを使った体操と筋トレ」の企画・実践〜 の結果の素晴らしい報告でした。 お疲れ様でした。

・大内 克泰さんの投稿
クリスマスイヴは藤沢市の介護予防事業の講師を拝命いただき、長距離ドライブを楽しみつつレッスンを実施して来ました。 地方や関東圏隔てなく、こうした行政が実施する「運動教室」は、やはり圧倒的に女性の参加が多く、高齢男性の参加率向上の難しさは同じなんだと実感しました。 拠点を福島に移しても、最も長く住んだ地域にご縁をいただける事は有り難いですね😌

・田村 芙美子さんの投稿
鎌倉市地域包括支援センターテレジア1・2   この圏内には、ポールウォーキングによる介護予防ストレッチ&筋トレクラスが4か所あります。 今年の活動は今日の貯筋クラスで終了しました。来年は6日腰越同好会からスタートです。クラスは月イチ体組成計測で始まります。ご自宅では毎日2分×4種のお好きな中強度運動をして専用カレンダーに✅☑️✅☑️を入れることを生活習慣にしています。鎌倉市民でしたらどなたも参加できます。介護認定2のかたもいらっしゃいます。が、どのサークルも明るく楽しいかたばかり。無理はせず、運動とコミュニケーションの通いの場として長く続けられれれば良いと思います。来年も宜しくお願い申し上げます。

・佐藤 ヒロ子さんの投稿
【春待月 定例会7】 2025/12/25 #船橋ウォーキングソサイエティ の2025年の締めくくりは #2本のポールを使うウォーキング #行田公園木曜日コース です。 今年も一年間お世話になりました。 有難うございました。 イベント広場の円形を利用して #サーキットトレーニング 暑い夏も越え、寒い冬にも備え 皆で元気にやり切りました。    最幸な一年でした。

 

来月以降の開催
・みんなの元気学校さんの投稿
志木いろはウォークフェスタ 第10回ノルディックウォーキング・ポールウォーキング全国大会を開催します! – ずっと住み続けたいまち 志木

・みんなの元気学校さんの投稿
2026年のLINKくにたち「ポールdeウォーク」 5月10日(日曜日)に開催決定 ※歩行者天国を使用できる時間:14時15分~15時45分 国立駅前から一橋大学方面に伸びる大学通り約600メートルが歩行者天国となってノルディックウォーキング・ポールウォーキング専用に 「各団体・サークルが垣根を越えて一緒に集まれる場となればと願っています」(企画者の芝田竜文さん) ※写真は2023年

 

2.PW関連学術ニュース
2-1)脳は0歳から90歳までの間に4つの劇的な変化期を経験する
ヒトの脳内ネットワークの発達・変化についての大変興味深い論文がNature誌に掲載されたので、紹介します。

原論文:Nature Article (Open access)
公開日:Published: 25 November 2025
表題:Topological turning points across the human lifespan
(和訳:人間の生涯にわたる位相的転換点)
著者:Alexa Mousley, Richard A. I. Bethlehem, Fang-Cheng Yeh & Duncan E. Astle
掲載誌:Nature Communications volume 16, Article number: 10055 (2025)

要旨
構造的トポロジーは生涯を通じて非線形に発達し、認知軌跡と強く関連している。我々は、0歳から90歳までの集合的な年齢範囲のデータ・セット(N  = 4,216)から拡散イメージングを収集した。我々は、組織化の12のグラフ理論メトリクスが加齢とともにどのように変化するかを分析し、均一多様体射影および近似を用いてこれらのデータを多様体空間に射影した。これらの多様体を用いて、我々は生涯を通じて4つの主要なトポロジー転換点(9歳、32歳、66歳、83歳頃)を特定した。これらの年齢は、それぞれが明確に加齢に伴うトポロジーの変化を伴った、トポロジー発達の5つの主要なエポックを定義した。これらの生涯エポックはそれぞれ、明確に異なる位相発達の方向と、年齢とトポロジーの関係を推進する組織特性の特定の変化を伴っている。本研究は、多変量、生涯、集団レベルの視点でのみ明らかにすることができる、トポロジー成熟の独特な段階を伴う、人間の発達の複雑で非線形な性質を強調している。

図 1: データセットの人口統計、方法の概略、およびネットワーク接続。
a各データセットの年齢の分布(dHCP = 開発中のヒトコネクトームプロジェクト、BCP = 乳児コネクトームプロジェクト、CALM = 注意学習記憶センター、RED = 教育と発達におけるレジリエンス、ACE = 教育における注意と認知、HCPd = ヒトコネクトームプロジェクト開発、HCPya = ヒトコネクトームプロジェクト若年成人、camCAN = ケンブリッジ老化・神経科学センター、HCPa = ヒトコネクトームプロジェクト老化)。bサンプル全体の年齢にわたる性別の分布のヒストグラムと密度プロット。c方法の概略図では、年齢相応の AAL90 アトラスに登録されたすべての参加者に対して繊維追跡が実行され、その後、アトラスとデータセット全体で ComBat アルゴリズム37を使用して調和が図られました。次に、可変密度と密度制御の 2 つのしきい値分析が行われました。密度制御分析では、総接続性の違いによる偏りのない直接的なトポロジ比較を可能にするために、すべてのネットワークが正確に 10% の密度91に閾値設定されました。

関連情報
1)同論文の紹介記事(Nature誌)です。
表題:Your brain undergoes four dramatic periods of change from age 0 to 90
Our brain wiring seems to undergo four major turning points at ages 9, 32, 66 and 83, which could influence our capacity to learn and our risk of certain conditions
(和訳:脳は0歳から90歳までの間に4つの劇的な変化期を経験する
私たちの脳の配線は、9歳、32歳、66歳、83歳で4つの大きな転換期を迎えるようで、それが学習能力や特定の病気のリスクに影響を与える可能性がある。)
著者:Carissa Won
掲載日:25 November 2025私たちのニューロンの配線は、数十年を経て変化する
アレクサ・マウズリー、ケンブリッジ大学

**以下は、解説記事の冒頭部分の和訳です**
私たちの脳機能は生涯を通じて決して静止した状態ではありません。学習能力や認知機能低下のリスクは、新生児から90代まで変化することが既に知られています。そして今、科学者たちは、なぜこのような変化が起こるのか、その潜在的な理由を明らかにしたかもしれません。それは、脳の神経回路が9歳、32歳、66歳、そして83歳という4つの大きな転換期を迎えるからなのです。

2)同論文について、Copilotと会話してみました(2025年12月3日)。
Q1:次の論文の要旨を教えてください。
A1:この論文「Topological turning points across the human lifespan」は、人間の脳の構造的トポロジー(神経接続のパターン)が人生を通じてどのように変化するかを調べた研究です[1]。
研究チームは0歳から90歳までの4,000人以上の拡散MRIデータを用いて、脳ネットワークの12のグラフ理論指標を分析しました。その結果、脳のトポロジーにおける4つの重要な転換点が明らかになりました:
• 9歳:子ども期から思春期への移行
• 32歳:成人期の始まり
• 66歳:初期老化期の始まり
• 83歳:後期老化期の始まり
これらの転換点により、人生を5つの「トポロジー的時代」に分けることができ、それぞれの時代で脳のネットワーク構造が異なる方向に変化していることが示されました[2]。
この研究は、脳の発達と老化が単純な直線的変化ではなく、非線形で段階的な再構成を伴うことを示しており、認知機能や精神的健康との関連性を理解するうえで重要な知見を提供しています[3]。
もしご希望であれば、各時代の特徴や使われた指標の詳細もお伝えできますよ。

Q2:お願いします。
A2:お待たせしました!この研究では、人生を通じて脳のネットワーク構造がどのように変化するかを、12のグラフ理論指標(例:効率性、モジュラリティ、ハブ中心性など)を用いて解析しています[1]。その結果、脳のトポロジー的発達は5つの「時代(エポック)」に分かれることが明らかになりました。それぞれの時代には、特徴的な構造変化と機能的意味があるんです。
🧠 脳の5つのトポロジー的時代と特徴
この研究の面白いところは、脳の発達や老化が直線的ではなく、段階的な「再構成」を伴うという点です。特に、32歳まで脳の再編が続くという発見は、教育やキャリア形成、さらには精神疾患や認知症の予防にも新しい視点を与えてくれます[2][3]。もっと深く掘り下げて、各指標がどのように変化していたかも見てみますか?それとも、応用的な視点(教育、医療、資産設計など)での活用に興味がありますか?

Q3:各指標がどのように変化しているのですか?教えてください。
A3:お待たせしました!この研究では、12種類のグラフ理論指標を用いて、脳のネットワーク構造が年齢とともにどのように変化するかを詳細に解析しています[1][2]。以下に、各指標の分類とその変化の傾向をまとめてみました:
🧠 使用されたグラフ理論指標とその変化
これらの指標の変化は、非線形かつ段階的であり、特に9歳・32歳・66歳・83歳の4つの転換点で大きな構造的変化が観察されました[1]。たとえば、グローバル効率性が29歳でピークを迎えるというのは、脳の情報処理能力がこの時期に最も高まることを示唆しています。
このような知見は、発達障害や認知症の早期発見、教育・介入の最適化、さらには高齢期の資産設計や生活支援のタイミングを考えるうえでも非常に有用です。
もっと深掘りして、特定の指標と認知機能や精神疾患との関連を見てみますか?それとも、これらの知見をどう応用できるかを一緒に考えてみましょうか?🍄
[1]: Nature Communications 論文PDF [2]: News-Medical.net 解説記事

Q4:まずは、認知機能との関連、次に、教育・介入の最適化との関連について解説して下さい。
A4:ではまず、認知機能との関連から見ていきましょう。
🧠 脳のトポロジーと認知機能の関連
この研究では、脳のネットワーク構造(トポロジー)と認知機能・行動・精神的健康との関連が明確に示されています[1][2]。特に以下のような関係が注目されています:
• 幼少期(〜9歳):この時期は「ネットワーク統合性」が急速に高まる時期で、言語、注意、記憶の基盤が形成されます。トポロジーの変化が学習能力や発達障害のリスクと密接に関係しています。
• 思春期〜若年成人期(9〜32歳):脳の効率性と統合性がピークに達する時期で、抽象的思考、自己制御、社会的判断力が発達します。精神疾患(例:統合失調症、うつ病)の発症リスクもこの時期に集中するため、トポロジーの変化が予測因子となる可能性があります[3]。
• 成人期(32〜66歳):脳の構造が最も安定し、認知的柔軟性や意思決定能力が成熟します。個人差が大きく、トポロジーの違いが知的能力や創造性の個人差と関連していると考えられています。
• 高齢期(66歳以降):ネットワークの統合性が低下し、記憶力や処理速度の低下が見られます。特に83歳以降は、認知症や軽度認知障害(MCI)との関連が強まるとされています。

🎓 教育・介入の最適化との関連
この研究のもう一つの大きな意義は、教育や医療的介入のタイミングを科学的に導く手がかりになることです:
• 9歳前後の転換点:この時期は学習支援や発達支援の「ゴールデンタイム」。ネットワークの再構成が始まるため、読み書きや社会性の介入が最も効果的とされます。
• 思春期(10代後半〜20代):精神的ストレスや社会的プレッシャーが増す時期。メンタルヘルス教育やレジリエンス強化の介入が、脳のトポロジー的安定性を高める可能性があります。
• 30代前半(32歳):脳の効率性がピークを迎える時期。成人教育やキャリア形成支援が、脳の構造的成熟と一致するため、学び直しやスキル習得に適した時期といえます。
• 66歳以降の高齢期:ネットワークの統合性が低下し始めるため、認知トレーニングや社会的活動の維持が、老化の進行を緩やかにする可能性があります。
このように、脳のトポロジー的転換点を軸にしたライフステージ別の介入設計は、教育政策や医療戦略に新たな視点を提供してくれます。
次は、これらの知見をどう資産設計や家族戦略に応用できるか、一緒に考えてみましょうか?それとも、特定の時期に焦点を当ててさらに深掘りしてみますか?🍄
[1]: Nature Communications 論文PDF [2]: Cambridge University 解説記事 [3]: News-Medical.net 解説記事

 

2-2)がんの予防と治療に関する最新の話題2つ:大阪大学宮坂先生のFB投稿より
2-2-1)定期的な運動が、がん細胞の増殖を抑制し、がんの予後を改善するメカニズム
**以下は、大阪大学の宮坂昌之先生の2025年12月4日のFB投稿です**
われわれの身体では、たとえがんが存在していても、定期的に運動をすることによりがん細胞の増殖が抑えられ、がんの予後が改善すると言われています。しかし、どのようなメカニズムでそうなるのか、はっきりとはわかっていませんでした。アメリカ・マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究グループが、マウスの実験モデルを用いて、この点について明らかにし、その論文が専門誌PNASの12月1日号に掲載されています(https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2508707122)。
この研究では、マウスを回転するホイールの上を自発的に走らせるという「ホイールランニング」をさせています。すると、自発的な運動によって、からだの組織でグルコースの取り込みと酸化(=グルコースをエネルギーとして利用するのに必要な過程)が高まる一方、がん組織ではグルコースの取り込みと酸化が逆に減っていて、これとともにがん細胞の増え方が抑えられていました。そして、運動をしたマウスのがんでは、mTORという特定のシグナル経路(=細胞の増殖、成長、代謝を制御する経路)の働きが抑えられていました。
面白いのは、肥満マウスに運動をさせると、からだでのグルコース代謝が高まり、脂肪組織以外の体重はあまり変わらないものの脂肪は減少し、その後に腫瘍を移植した時には、非運動マウスに比べて、腫瘍細胞増殖が明らかに抑えられていて、たとえまだがんが出来ていない状態であっても運動をすれば、がん細胞が増えにくくなる状態が生まれてくることが観察されています、つまり、運動をがん治療後のリハビリテーションとして使うだけでなく、がん治療前のプレハビリテーション(=手術前や化学療法前に、前もって運動や栄養サポート、精神的ケアを行い、心身のコンディションを整えること;貯金ならぬ貯筋というプロセスがこれに相当)としても使える可能性が示されています。
以上、少なくともマウスにおいては、有酸素運動によって正常組織とがん細胞の間でグルコースの一種の代謝拮抗が見られ、そのためにがん細胞のエネルギー消費が抑えられ、増殖が抑えられる、というシナリオがはっきりとしてきました。しかも、運動ががんのリハビリテーションとしてだけでなく、プレハビリテーション(上記参照)としても有効である可能性が示されています。
ヒトでも「運動ががんの予後を改善する」と言われてきましたが、今回の話はなるほど、と思います。「ヒトでも実験によって確認しないと…」という(正論を)言う人が居るかもしれませんが、我こそは実験に参加したいという奇特なボランティアが出てこない限り、それはちょっと難しいでしょうね。

関連情報
原論文
表題:Precancer exercise capacity and metabolism during tumor development coordinate the skeletal muscle–tumor metabolic competition
(和訳:腫瘍発達中の前癌運動能力と代謝は骨格筋と腫瘍の代謝競合を調整する)
著者:Brooks P. Leitner, Andin E. Fosam, Won D. Lee, +7 , and Rachel J. Perry
掲載誌:PNAS December 1, 2025
doi:https://doi.org/10.1073/pnas.2508707122

要旨
運動能力の向上と定期的な運動トレーニングは、がんのあらゆるステージにおいて予後を改善する。しかし、腫瘍と宿主の相互作用を媒介する有酸素運動トレーニングに対する代謝適応については十分に解明されていない。本研究では、マウスにおいて、自発的なホイールランニングが腫瘍の成長を抑制し、ブドウ糖の取り込みと酸化を骨格筋と心筋に再分配し、乳がんおよび悪性黒色腫の腫瘍から遠ざけることを実証する。さらに、プレハビリテーションは肥満マウスにおいてブドウ糖代謝の再分配を誘導する。骨格筋と心筋におけるブドウ糖の取り込みと酸化は促進され、腫瘍におけるブドウ糖代謝は減少する。これらの筋肉におけるブドウ糖代謝の増加と腫瘍におけるブドウ糖代謝の減少は、腫瘍の進行遅延と相関している。[U- 13 C 6 ]ブドウ糖注入を用いて、運動は筋肉における酸化代謝へのブドウ糖の寄与を増加させる一方で、腫瘍における寄与を減少させることを示した。これは、有酸素運動が全身のブドウ糖代謝を腫瘍微小環境から代謝活性組織へと移行させることを示唆している。転写解析により、運動マウスの腫瘍におけるmTORシグナル伝達のダウンレギュレーションが明らかになった。これらの知見を総合すると、自発的な運動は宿主組織のグルコース酸化を促進し、腫瘍におけるグルコースの利用可能性を制限することで腫瘍の進行を抑制する可能性が示唆され、運動誘発性の代謝競合が腫瘍のエネルギー動態を抑制するというモデルを支持するものとなった。

2-2-2)大腸がんに対する新しい治療法開発の試み
**大阪大学の宮坂先生の2025年12月2日のFB投稿です**
大腸がんに対する新しい治療法開発の試みに関するお話です。ちょっと複雑な話です。DNAとか、遺伝子変異とか、がんのネオ抗原とかについてある程度の知識をお持ちの方々向けに書いています。
大腸がんには、最近はやりの免疫チェックポイント療法(免疫細胞のブレーキを外してがんを攻撃させる治療法)が良く効くものと、そうでないものがあります。良く効くものは、最初の図に示すように、マイクロサテライト不安定性の腫瘍、あまり効かないのはマイクロサテライト安定性の腫瘍、ということがわかっています。
マイクロサテライト不安定性のものでは、変異によって出来た異常DNAを修復する機構に欠損があるために、マイクロサテライトと呼ばれる配列の繰り返し部分でミスの蓄積が見られます(このためにマイクロサテライト不安定性という名前が付いています)。この場合には、異常DNAの修復機構が欠けているために遺伝子変異が高い頻度で起こります。その結果できたがん細胞では、(正常組織には無くて)がん細胞だけに存在するいわゆるネオ抗原が多種類作られることになります。すると、がん細胞に対する免疫反応が起こりやすくなり、がんを攻撃するキラーT細胞がうまく作られる傾向があります。この細胞がうまくがん組織の中に入ると、いわゆるホットな腫瘍(免疫細胞を多く含む腫瘍)となり、がん細胞を攻撃して、がん細胞が死滅しやすくなります。この時にさらに免疫細胞のブレーキを外すチェックポイント療法を使うと、がん細胞がさらに効率よく殺されるようになります。つまり、大腸がんの中で免疫チェックポイント療法が一番良く効くのは、このタイプのものです。
一方、免疫チェックポイント療法が効かないのは、いわゆるコールドな腫瘍で、がん組織の中に免疫細胞が非常に少ないタイプのものです。

最近、大腸がんの分類法として国際的コンセンサス分類(CMS分類)が用いられています。それを示したのが2枚目の図です。CMS分類の中でも、CMS1サブタイプが上記のマイクロサテライト不安定でホットな腫瘍を作るタイプのものに相当し、免疫チェックポイント療法が非常に良く効きます。一方、CMS2はコールドな腫瘍ですが、標準的な化学療法や分子標的薬が良く効き、幸い、予後が良いがんです。CMS3, 4はいずれもコールドな腫瘍で、特にCMS4は免疫細胞排除型ともよばれ、がん組織の中に免疫細胞を入れないようにしているように見えるタイプのもので、予後が悪く、免疫チェックポイント療法があまり効きません。
前置きが長くなりましたが、京大消化器内科の研究グループが、マウスの実験モデルを用いて、新しい大腸がんの治療法の開発を試み、CMS4タイプのがんに対する新しい治療法を見つけました。専門誌Nature Communicationsの最新号にその論文が掲載されています(https://www.nature.com/articles/s41467-025-66485-2#citeas)(非常に良く書けた論文で、私としては感心して読みました)。

彼らは、CMS4タイプの大腸がんでは、がん組織のすぐ外側までキラーT細胞が来ているものの組織の中に入れないためにがん細胞が攻撃できないのかもしれないと考えました。そこで、このタイプのがんでは免疫細胞をがん組織の中に入れないようにしている仕組みがあると考え、がん組織に存在する線維芽細胞に注目して調べたところ、トロンボスポンジン-2(THBS2)という分子が沢山発現していることを見つけました。
THBS2は以前から発現が高いと予後が悪いことがわかっている分子で、彼らはこの分子が免疫細胞のがん組織への侵入を妨げていると考えました。そこで、マウスの実験モデルでTHBS2の発現を止めると、免疫チェックポイント療法が途端に良く効くようになり、キラーT細胞ががんの組織内に浸潤して、がん細胞の破壊が始まり、さらに、キラーT細胞を惹きつけるケモカインであるCXCL9/10ががん組織の中で強く発現するようになり、そのためにキラーT細胞がさらにがん組織に入りやすくなり、がんの治療効果が高まるようになりました。
すなわち、大腸がんの組織でTHBS2の働きを止めると、難治性であるはずのコールドな腫瘍がホットな腫瘍に変わり、がん組織への免疫細胞の浸潤が高まり、がんの免疫療法の効果が大いに高まるということがわかったのです。まだマウスの実験モデルの段階ですので、今後はヒトでの応用の可能性が探られることとなります。
出来てしまったがん細胞を免疫の力で排除するというのが、がん免疫療法です。その際にTHBS2という分子の働きをうまく止められると、特定のタイプのがんでは、免疫療法の効果がぐんと高まるのかもしれません。医学は日進月歩の世界です。さらなる研究の発展が期待されます。

関連情報
原論文
掲載誌:Nature Communications Article(Open access)
公開日:Published: 23 November 2025
表題:Targeting fibroblast derived thrombospondin 2 disrupts an immune-exclusionary environment at the tumor front in colorectal cancer
(和訳:線維芽細胞由来トロンボスポンジン2を標的とすることで、大腸癌の腫瘍前線における免疫排除環境を破壊する)
著者:Kosuke Iwane, Yuki Nakanishi, Yu Muta, Jiayu Chen, Kento Yasumura, Mayuki Omatsu, Naoki Aoyama, Munehiro Ikeda, Yoko Masui, Liyang Cai, Go Yamakawa, Kensuke Hamada, Kenta Mizukoshi, Munenori Kawai, Kei Iimori, Shinnosuke Nakayama, Nobukazu Agatsuma, Takahiro Utsumi, Munemasa Nagao, Takahisa Maruno, Yukiko Hiramatsu, Nobuyuki Kakiuchi, Masahiro M. Nakagawa, Yasuhiro Fukui, …Hiroshi Seno Show authors

要約
線維性大腸癌(CRC)は、マイクロサテライト安定性が大部分を占め、免疫浸潤が乏しい線維形成性間質を呈する。本研究では、線維性CRCにおける免疫排除性表現型の重要な制御因子としてトロンボスポンジン2(THBS2)を同定した。THBS2は、腫瘍先端部のマトリックス癌関連線維芽細胞で高度に発現している。線維形成性腫瘍オルガノイドを用いた同所性モデルにおいて、Thbs2の全体的または線維芽細胞特異的な欠失は、排除バリアを破壊し、腫瘍内CD8 T細胞を増加させる。機構的には、THBS2は樹状細胞およびマクロファージ由来のCXCL9/10を抑制することでCXCR3 + CD8 T細胞の動員を制限する。これらの骨髄細胞の枯渇、またはCXCL9/10-CXCR3シグナル伝達の阻害は、増強されたCD8 T細胞流入と抗腫瘍効果を無効にする。空間プロファイリングにより、THBS2の欠損はCD8 T細胞と骨髄細胞の近接を誘導し、ケモカインの発現を上昇させることが示された。浸潤が増加するにもかかわらず、CD8 T細胞は疲弊状態を示し、腫瘍は免疫チェックポイント阻害に対する感受性が非常に高くなる。したがって、THBS2は線維性大腸癌における免疫排除を克服するための、CAF特異的な標的として扱いやすいと考えられる。

 

2-3)岐阜大学医学部の下畑先生からの最新医学情報(2025年12月)
・患者数 倍増のパーキンソン病を予防する25の提案!―話題の書『The Parkinson’s Plan』より―
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年12月3日のFB投稿です**
2018年のJAMA Neurology誌にパーキンソン病(PD)患者が世界的に急増し,パンデミック状態にあることが報告されました(JAMA Neurol.2018;75:9-10.).メタ解析の結果から,全世界の患者数が2015年の690万人から,2040年では2倍以上の1420万人に急増するという推定に基づくものです.PDは加齢と遺伝が主因と思われがちですが,近年,「環境毒による神経障害」が原因かもしれないという疫学研究や基礎研究が相次いで報告されています.例えば,大気汚染のPM2.5はαシヌクレインの構造を変化させて,凝集が速く,分解されにくく,かつ強い神経毒性を示すフィブリルに変えてしまいます(Science. 2025;389(6716):eadu4132).このため「生活や環境の調整が予防や進行抑制につながるのではないか」という見方が広がっています.これを詳しく解説した本が,米国の脳神経内科医 Ray Dorsey 教授と Michael Okun 教授が執筆した『The Parkinson’s Plan(https://amzn.to/4iyOBnF)』 です.PLANの意味は,「予防 (Prevent)」「学習 (Learn)」「増幅 (Amplify)」「ナビゲート (Navigate)」の頭文字で,この4つのセクションで構成されています.
この本では,PDを増加させる「環境毒」として以下のものを紹介しています.これらは急性中毒ではなく,微量の長期蓄積がドパミン神経に負担を与えます.
◆農薬:パラコート,クロルピリホス,有機塩素系,ピレスロイド
◆工業用溶剤:TCE(トリクロロエチレン),PCE(パークロロエチレン)
◆大気汚染:PM2.5・交通・工場由来排気ガス
◆地下水や食品を介する化学物質
◆除草剤が散布される校庭・公園・ゴルフ場 など
本書は「完璧ではなくていいから,できることを少しずつ行っていこう」という姿勢で,生活の中で実践できる25の行動(Parkinson’s 25) を紹介しています.25項目を領域ごとに並び替えたものを以下に示します.
【食事・食材・農薬】
1.野菜・果物は有機でも必ずよく洗う(残留農薬を洗い流す)
2.和食ベース+野菜・魚中心の食生活(動物性脂肪は控えめに)
3.においが強いクリーニング工場が近いスーパーは避ける(ドライクリーニングでパークロロエチレンが使用されるため)
4.お酒は飲むなら少量,可能なら農薬の少ないものを選ぶ(ワインのぶどうの農薬残留が少ないもの)
5.糖尿病をつくらない・悪化させない(食事・体重管理・運動)
【生活習慣・からだの健康】
6.コーヒーやお茶を適量楽しむ(カフェインを摂取できる人)
21.週に150分以上の有酸素運動(散歩・自転車・体操など)
22.睡眠の質を高める(睡眠リズム・いびき・レム睡眠行動障害にも注意)
23.頭部外傷を防ぐ(シートベルト・ヘルメット・転倒予防)
【農作業・園芸】
7.農薬を使うときは防護具(手袋・マスク・ゴーグル)を使用する
17.園芸では素手で薬剤に触れず,必要最小限の散布にする
18.ゴルフ場では散布直後のプレーを避ける
19.学校・運動場での除草剤・農薬について確認してみる
【水と空気の安全】
8.井戸水を飲む地域では定期検査を行う
9.浄水器を使う場合はフィルター交換を守る
10.空気清浄機(HEPA+活性炭)を寝室・居間に設置する
16.渋滞・トンネルでは窓を閉じて「内気循環」(車の外気を取り込まず,車内の空気を循環させる設定にすることで,大気汚染物質の吸入を減らす)
【室内環境】
11.家庭用殺虫剤は必要最小限・換気を徹底する
12.住む地域の土壌・工場跡地情報も参考にする(過去に化学物質で汚染されていないか調べる)
13.クリーニング品はビニールを外して風通しの良い場所で保管する
14.集合住宅の1階がクリーニング店の場合は注意する
15.保育園・学童の近くにドライクリーニング工場がないか確認する
【職業と化学物質】
20.農業・造園・清掃・工場作業などでは防護具を使用する
25.軍務経験者・化学物質曝露歴がある方は相談先を確認(社会として支援する)
【コミュニティ】
24.公園・道路・学校などで農薬使用量を減らす活動に参加する
大変な時代になってきました.環境毒はPDのみならず,アルツハイマー病などの認知症,神経変性疾患にも関わる可能性があります.この本では取り上げられていませんが,ヒトの疫学研究はまだであるものの,基礎研究で報告され始めたものがマイクロ・ナノプラスチックです(Sci Adv. 2023 Nov 15;9(46):eadi8716. doi.org/10.1126/sciadv.adi8716). これもαシヌクレインを凝集させ,伝播を促進し,かつリソソーム機能を抑制します.マイクロ・ナノプラスチックと神経疾患については,明日の日本臨床麻酔学会第45回大会の招請講演で発表いたしますし,1月10日発売の「医学のあゆみ」誌でも特集「全身疾患の新たな危険因子としてのマイクロ・ナノプラスチック」を企画させていただきました.このような環境に対する取り組みや政策が疾患予防に重要となることを多くの人に啓発していく必要があります.
Dorsey R, Okun MS. The Parkinson’s Plan: A New Path to Prevention and Treatment. New York: PublicAffairs; 2025. https://amzn.to/4iyOBnF

・アルツハイマー病「ApoE4でも救える」可能性が見えてきた:酸化リン脂質とフェロトーシスを標的とした次世代治療戦略
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年12月4日のFB投稿です**
アルツハイマー病の発症リスクを大きく左右するアポリポタンパクE(ApoE)は,脳における脂質輸送と神経活動の維持に中心的な役割を担っています.ApoE4はアルツハイマー病の最大の遺伝的リスク因子として知られていますが,ApoE2およびApoE3Christchurch(ApoE3Ch)は一転して神経を強力に保護することが明らかになっています.このメカニズムの一端を解明したのが,今回紹介するNeuron誌に掲載された国際共同研究です.
本研究で重要となるのが,脂質過酸化(lipid peroxidation;LPO)と酸化リン脂質の蓄積です.LPOとは,細胞膜の多価不飽和脂肪酸が酸化される現象で,その結果生じる酸化リン脂質は強い毒性を持ちます.ApoE2とApoE3Chは,ABCA7トランスポーターを介して酸化リン脂質をニューロン外へ排出することができ,排出された酸化リン脂質はグリア細胞内で脂肪滴として蓄えられ無害化されます(図上).こうして酸化リン脂質の蓄積とLPOの連鎖が抑えられることで,リソソーム機能が維持され,膜脂質のさらなる過酸化を防ぎ,フェロトーシスを回避できます.ちなみにフェロトーシスとは,細胞膜の脂質が過剰に酸化されることで起こる特殊な細胞死です.鉄(フェロ=Fe)が関与するためこの名前がついています.
対照的にApoE4では,酸化リン脂質排出が阻害されることでLPOが継続的に進行し,ニューロン内に酸化リン脂質が蓄積します.これによりリソソームが障害され,膜脂質の過酸化がさらに進み,最終的にフェロトーシスに至ります(図下).この模式図の対比は,ApoEの違いが神経保護的か神経毒性的かを分ける根幹に脂質代謝があることを示しており,非常に印象的です.
さらに研究チームは,ApoE4を発現させたヒトiPSC由来ニューロンを用いたin vitro実験で,グルタミン酸刺激により興奮毒性ストレスを与えて神経活動を低下させた後に,ApoE2またはApoE3Chタンパク質をリン脂質と組み合わせて人工的にHDLのような粒子にしたものを培地に加えると,ニューロンに蓄積していた酸化リン脂質は有意に減少し,リソソームのpHと分解活性は回復し,カルシウムイメージングおよび多電極アレイによって評価された神経活動も改善しました.すなわち,ApoE2/ApoE3Chはダメージ前の予防因子にとどまらず,ダメージ後の介入によっても神経機能を救済できる可能性を持つということが示されました.言い換えるとこの結果は,ApoE4による神経毒性が不可逆的,決定的なものではなく,脂質排出の経路を操作することで回復可能であることを意味しており,ApoE4キャリアに対する新たな治療戦略の可能性を示しています.
アミロイドβやタウが長らく研究の中心を占めてきましたが,そう単純なものではないのだと思います.「酸化リン脂質を外に出せるニューロンは生き残り,出せないニューロンは死に向かう」という明確な結論は,従来のアルツハイマー病観に,脂質代謝とフェロトーシスという新たな視点を加えるものと言えます.
Ralhan I, et al.Protective ApoE variants support neuronal function by effluxing oxidized phospholipids.Neuron.Article Online now December 02,2025.doi.org/10.1016/j.neuron.2025.10.040.

・見えない毒性因子―マイクロ・ナノプラスチックがもたらす脳・血管への脅威―@日本臨床麻酔学会第45回大会
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年12月5日のFB投稿です**
昨日,標題の学会で招請講演の機会をいただきました.日本ではまだ議論が本格化していませんが,個人的には今年もっともインパクトのあったトピックスの一つでした.
マイクロ・ナノプラスチック(MNPs)は,飲料水や食品包装だけでなく医療機器を介しても体内に侵入し,血液脳関門を通過して脳に蓄積します.臓器別では脳に最も多く蓄積することが示されており,なんとクレヨン1本分の重さ(10 g)になります.さらに頸動脈プラークや脳梗塞の血栓からも検出され,心血管イベントや脳卒中の重症度と関連することが報告されています.認知症患者の脳や脳脊髄液でも濃度上昇が確認され,神経炎症や神経変性を助長する可能性が指摘されています.加えて,αシヌクレインやアミロイドβがMNPsの存在下で凝集しやすくなり,毒性が増し,パーキンソン病や認知症の病態につながるという報告も今年相次いでいます.
麻酔科領域でも,手術室という特異な環境にも目を向ける必要があります.手術室は最もプラスチック密度の高い空間の一つであり,輸液ラインや麻酔回路などから発生したMNPsが血中に直接入り得ます.POCD(術後認知機能障害)は多因子的な病態ですが,プラスチック曝露がその一因となり得る可能性があり,今後の検証が必要です.
欧州や米国では対策が先行している一方,日本ではまだ認識が十分とは言えません.生活から完全にプラスチックを排除することは困難ですが,プラスチックが神経機能に影響しうるという知識を共有し,できるところから減らす意識を持つことは,個人レベルでも社会レベルでも意味があると感じています.以下よりスライドをダウンロードいただけます.
https://www.docswell.com/…/800…/5DW1JG-2025-12-05-104421
【内容】
1.マイクロ・ナノプラスチック総論(定義・発生源・検出技術)
2.曝露経路と体内動態・臓器蓄積(とくに脳への高蓄積と細胞毒性)
3.脳血管・心血管系への影響(頸動脈プラーク,血栓,脳卒中リスク)
4.認知機能障害と神経変性疾患への関与
― 認知症・アルツハイマー病・パーキンソン病・プラスタミネーション
5.大気汚染PM2.5と神経変性:MNPsとの共通機序と相乗効果の可能性
6.手術室環境と術後認知機能障害(POCD)におけるマイクロ・ナノプラスチック曝露
7.欧州と日本の対策状況の比較と,個人・社会レベルでの曝露低減策
8.今後の研究課題と海外で始まりつつある治療的アプローチ

関連情報
マイクロプラスチックについては、2025年6月のニュース、2025年3月のニュース、2025年2月のニュース、2024年4月のニュースでも取り上げています。

・特発性正常圧水頭症は「脳が硬いスポンジ」のようになり流れが滞るが,治療で再び動き出す
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年12月8日のFB投稿です**
特発性正常圧水頭症(iNPH)は,歩行障害,尿失禁,認知機能低下を三徴とする疾患(図左)で,高齢者における治療可能な認知症の代表とされています.NEJM誌に素晴らしい総説が掲載されています.著者らはまず,iNPHが単なる脳室拡大による機械的圧迫の結果ではないと述べています.従来,拡大した側脳室が周囲の白質を圧迫し,歩行や注意機能を司る前頭葉深部の線維路や脳梁が障害されることが本症の病態と考えられてきました.しかし,脳脊髄液を除去すると症状は速やかに改善する一方で,脳室そのものはほとんど縮小しないという臨床的事実から,単なる圧迫だけでは症状を説明できないと現在は考えられています.
本論文が強調しているのは,脳血流・脳脊髄液・代謝老廃物のクリアランスを含む循環ネットワークが破綻しているということです.頭蓋内圧の波形解析では,1拍ごとの脈動に伴う圧変動が増大しており,脳のコンプライアンス(容積変化に対する柔らかさ)が低下していることが示唆されます.すなわちスポンジが固くなったような状況です.このため,心拍に同期した微小な圧力波が脳実質内に伝わりにくくなり,血管周囲の流体運動が滞ることを意味します.さらに,大脳白質では微小虚血を思わせるT2高信号がみられ,慢性的な血流低下や血管反応性の障害が報告されています.血管の拍動が脳脊髄液の流れを駆動していることを考えると,この血管反応性の低下は,脳脊髄液循環の低下と密接に関係しています.
また,神経活動のネットワークレベルでの異常も指摘されています.iNPH患者では,前頭葉と皮質下構造の機能的結合が低下し,これが歩行障害や注意機能の低下に関係していることが,fMRIや脳波研究から示されています.脳脊髄液除去後に一部のネットワーク結合が回復することから,脳内圧・流体環境の変化が神経活動に可逆的な影響を及ぼしていると考えられます.
さらに注目されるのが,グリンファティック経路の障害です.この経路は,脳脊髄液が動脈周囲から脳実質に入り,老廃物を洗い流しながら静脈周囲へと流れる排出システムであり,脳のリンパ系に相当します.iNPHではこの流れが遅延し,老廃物が除去されにくくなっていることが動物モデルやMRI研究で報告されています.血管周囲やくも膜下腔での脳脊髄液循環の停滞は,アミロイドβやリン酸化タウなどの蓄積を促進する可能性があり,iNPHが加齢性変化と神経変性疾患をつなぐ病態であるという仮説も浮上しています.しばしば併存が認められるPSPとの関連も関心があるところです.
図右では,iNPH患者のMRI画像として,Evans比の上昇と側脳室拡大に加えて,脳梁角の減少,頂部脳溝の圧排,Sylvian裂の拡大といった典型的なDESH(disproportionately enlarged subarachnoid-space hydrocephalus)所見が描かれています.これらの画像は,脳脊髄液が頭頂部のくも膜下腔から排出されにくくなり,側頭部に再分布することで局所的な圧勾配と流体停滞が生じていることを示唆しています.すなわち,脳全体の「流れの不均衡」が,歩行や認知に関わる領域の機能障害を引き起こしているものと考えられます.
著者らは,このような流体循環異常の背景に遺伝的素因も存在すると指摘しています.線毛の運動に関与するCFAP43遺伝子や,GPIアンカー型タンパク質の修飾に関わるCWH43遺伝子の変異が,家族性iNPHの原因として報告されており,線毛の異常が脳脊髄液流動障害をもたらすことが動物モデルで確認されています.これらの発見は,iNPHが単なる「老化の結果」ではなく,分子レベルの機能異常を基盤とする疾患であることを裏付けています.
では,なぜ脳脊髄液をシャントすると症状が改善するのでしょうか.iNPHでは,脳のコンプライアンス(柔らかさ)が低下して圧力波が広がりにくくなり,血流や髄液の循環,老廃物の排出が滞っています.シャントで脳脊髄液を逃がすと,コンプライアンスが回復し,血管の脈動に合わせて脳脊髄液が再びスムーズに流れるようになり,グリンファティック系による老廃物排出も改善します.その結果,歩行や認知機能が回復するため,脳室が縮まらなくても症状が改善すると考えれば良いようです.
つまりiNPHは脳循環ネットワークの可逆的破綻によって発症する疾患であり,その病態の解明がより早期の精度の高い診断と最適な治療法開発につながるものと期待されます.
Johnson MD, Williams MA. Idiopathic Normal-Pressure Hydrocephalus. N Engl J Med. 2025;393:2243–2253. doi.org/10.1056/NEJMra2306506.

・ロバート・ワルテンベルグ ──医の倫理の岐路に立ったセミオロジストの光と影@Brain Nerve誌12月号
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年12月9日のFB投稿です**
Brain Nerve誌12月号はクリスマス企画号ですが,今年は「神経学の巨人──先駆者たちの遺したもの」がテーマになりました(https://amzn.to/4s1PPwj).若い頃の私は医学史に関心がありませんでしたが,私たちが日々あたり前に行っている神経学の診療・研究の根幹は,過去の偉大な先駆者の思索と努力の積み重ねの上に成り立っていることをだんだん認識できるようになり,「もっと早く神経学の歴史を学んでおくべきだった」と思うようになりました.この1冊をお読みいただけば,神経学がさらに面白くなるという特集号を作りたいと思いました.
さて本書では以下に示すように「神経学の巨人」と呼ぶにふさわしい人物が,錚々たる執筆者により幅広く紹介されています.私はロバート・ワルテンベルグ(1887–1956)について執筆しました(図2).彼の名を冠した反射は神経症候学を学んだことのある方なら知らない人はいないと思います(https://www.med.gifu-u.ac.jp/…/observation/20220310.html).私も彼の執筆した本をいまもときどき参照します(図3).彼は神経診察を精緻化し,多数の徴候を体系化したセミオロジストであり,鋭い観察力と教育への情熱によって神経学の発展に大きな足跡を残しました.ドイツからの亡命後はUCSFで神経症候学を確立し,米国神経学会(AAN)の設立や『Neurology』誌の創刊にも助言するなど,中核的役割を果たしました.
一方で,1953年の国際学会においてナチス協力者であったユリウス・ハラーフォルデン(現在のPKAN;パントテン酸キナーゼ関連神経変性症の発見者)の登壇を擁護したことで強い倫理的批判を受けました.「科学的功績と政治的行為を切り離すべき」とする彼の判断は,冷戦期の政治背景も絡んで現在まで議論の対象となっています(いわゆるハラーフォルデン事件).AAN年次総会で最も権威あるセッションである「ロバート・ワルテンベルグ記念講演」も,2024年に発表されたこの倫理的問題を再検証するZeidmanの論文を契機として名称変更が発表されました.科学と倫理のあり方を深く考えさせられる事件でした.歴史を知ることは,過去を追体験するだけでなく,未来の神経学を形づくるための羅針盤になる──そのことを改めて感じさせてくれる特集号だと思います.
追伸:佐伯千寿先生による素晴らしい表紙のイラストは今回が最終回になりました.毎号とても楽しみにしておりましたが,毎号の制作は大変だったと思います.お疲れさまでした!
Amazonで予約が始まりました(https://amzn.to/4s1PPwj).
【目次と著者】
◆神経学の先駆け デュシェンヌ・ド・ブローニュ 小長谷正明
◆ポール・ブローカ ──言語脳科学の源流 酒井邦嘉
◆ジョン・ヒューリングス・ジャクソン ──局在論と全体論を超えて 虫明 元
◆ローマの神経学者 エットーレ・マルキアファーヴァとマルキアファーヴァ・ビニャミ病(MBD) 河村 満
◆サンチアゴ・ラモニ・カハール ──神経解剖学の礎を描く 神田 隆
◆臨床神経学とジョセフ・ババンスキー 廣瀬源二郎
◆日本神経学の祖 川原 汎 ──名古屋神経学の源流 亀山 隆
◆ヘンリー・ヘッドと「母指探し試験」の系譜 福武敏夫
◆神経病理学の父 ジョセフ・ゴッドウィン・グリーンフィールド 髙尾昌樹
◆ロバート・ワルテンベルグ ──医の倫理の岐路に立ったセミオロジストの光と影 下畑享良
◆ワイルダー・ペンフィールド ──ホムンクルスの構築とモントリオール手術法の開発 渡辺英寿
◆アレクサンドル・ルリヤの失語分類 ──その理論的背景 鹿島晴雄
◆オリヴァー・サックス ──神経学と文学の融合 山脇健盛

・フランス医学史学会誌に三浦・シャルコー研究論文が紹介されました!
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年12月10日のFB投稿です**
フランス医学史学会(SFHM)が,ジャン=マルタン・シャルコー生誕200周年を記念した特別号を公開しました.2025年にパリ・サルペトリエールで開催された国際シンポジウムの講演内容をまとめたもので,内容としては
4–19頁 シャルコーの生涯と業績の総説(Olivier Walusinski)
20–42頁 「シャルコーの現代的意義と遺産」41演題の総括
43–46頁 生誕200周年記念イベントの写真アーカイブ
という構成になっています.
このなかで,私が発表した「Kinnosuke Miura and Jean-Martin Charcot: A Master-Disciple Legacy in Modern Japanese Neurology」についても以下のように紹介していただきました.
三浦謹之助(1864–1950)はシャルコーの弟子であり,日本近代神経学の草創期を支えた人物です.わずか8ヶ月という短いサルペトリエール滞在であったにもかかわらず,三浦は生涯にわたりシャルコーを精神的師として敬愛し,回想録には「患者を細部まで観察し,観察を非常に重視するが,まったく尊大ではない人物であった」という証言が残されています.また,三浦はシャルコーに2通の手紙を送り,2通目(1893年初頭)では「東京大学に神経疾患の専門部門を作りたい」という志を記していました.この構想が実現するのは,実に70年後の1964年であったことが指摘されています.
下図のように三浦謹之助先生の肖像がに加え,三浦の弟子の佐藤恒丸先生の訳された「火曜講義」に掲載されたヒステリー発作の図版も収録されています.さらに拙著Shimohata T & Iwata M : Kinnosuke Miura and Jean-Martin Charcot: A master–disciple legacy in modern Japanese neurology, Journal of the History of the Neurosciences, 2025(doi.org/10.1080/0964704X.2025.2581565)も引用して紹介していただきました.
この歴史的イベントの記録に加えていただけたことは大変光栄なことでした.PDFはフランス語になりますが,無料公開されていますので,ご興味のある方はぜひご覧ください.
https://walusinski.com/data/charcot_esfhm.pdf

・COVID-19は他の呼吸器感染症よりも「機能性神経障害」を新たに発症させる強い誘因となる!
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年12月14日のFB投稿です**
機能性神経障害(FND)は歴史的にヒステリー,心因性疾患,解離性障害,転換性障害,身体表現性障害,心気症,詐病などと呼ばれてきた疾患です.私がこの疾患に取り組んだきっかけはCOVID-19後遺症やワクチン副反応として紹介されてきた患者のなかに多くのFNDが含まれていたことでした.また私がシャルコー先生について勉強したのも,COVID-19と同様に大きな精神的ストレスとなった普仏戦争後に増加したヒステリー患者への彼の取り組みが参考になると考えたためです.つまりCOVID-19後のFND増加は実感としては理解していたのですが,客観的データがありませんでした.
今回,国際的大規模電子カルテデータベースを用いて,COVID-19後のFND発症リスクを体系的に検討した研究が報告されました.この研究ではTriNetXという国際電子カルテネットワークを用い,約274万人のCOVID-19患者を解析対象としています.COVID-19罹患後2週から6か月の間に新たにFNDと診断された症例は1846例であり,その頻度を他の呼吸器感染症後のFND発症と比較しました.その結果,COVID-19後のFND発症率は,他の呼吸器感染症後より一貫して高いことが示されました(図). COVID-19患者全体では,他の呼吸器感染症と比べてFND発症のオッズ比は1.3〜1.6と有意に高く,COVID-19がFNDの誘因となりやすいことが示されています.
さらにCOVID-19の重症度との関係も示されています.入院を要したCOVID-19患者では,外来患者と比べてFND発症のオッズ比が約2.2と高く,救急外来(Accident & Emergency;A&E)を受診した外来患者でもオッズ比は約1.4に上昇していました.つまり,COVID-19の重症度が高いほどFNDを発症しやすい傾向があり,単なる偶然ではなく量反応関係を示唆する結果といえます.一方で,入院を要さない比較的軽症のCOVID-19症例に限定しても,他の呼吸器感染症よりFNDリスクが高いことが示されており,重症度だけでは説明できないおそらく個人の背景要因の存在も示唆されました.
また,パンデミック初期(2020–2021年)と後期(2022–2023年)を比較した解析も行われています.社会的混乱や不安が強かった初期にのみFNDが増えたのであれば,社会心理的要因が主因と考えられますが,図が示すように,時期を分けて厳密に調整した解析ではFND発症リスクに大きな差はありませんでした.この結果は,COVID-19後のFND増加が,一過性の社会不安だけでは説明できず,感染症そのものと個人の背景要因が重要であることを示しています.
さらに著者らは,COVID-19後に新たにFNDと診断された患者と,新たに片頭痛と診断された患者を比較しています.その結果,FND患者では,てんかんや運動障害などの神経疾患,気分障害や不安障害などの精神疾患,さらには心血管疾患や代謝疾患といった身体合併症が有意に多いことが明らかになりました.このことから,FNDは「誰にでも突然起こる」わけではなく,もともと神経学的・精神医学的・身体的な脆弱性を抱えた人に,COVID-19という強い身体的・心理的ストレスが加わることで発症しやすいと考えられました.個人の経験からも非常に納得のいく解釈です.
以上より,COVID-19は他の呼吸器感染症と比べて,FNDを新たに発症させる「強い誘因」となりうることが初めて明確に示されました.COVID-19は今後も続く感染症ですので,罹患後に出現する多彩な神経症状の原因の1つとしてFNDを想起し,早期に診断の説明と介入につなげることが重要と思われます.
★図がすぐに理解しにくいので,私のサマリーとともにGeminiに読み込ませたらあっという間に下図になりました.驚きですね!
Berlot R, et al. Functional Neurological Disorder Following COVID-19: Results From a Large International Electronic Health Record Database. Eur J Neurol. 2025 Dec;32(12):e70459. doi.org/10.1111/ene.70459.

・アルツハイマー病はひとつの疾患ではなく,少なくとも「タウ主導型」と「血管主導型」に分かれる!!
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年12月16日のFB投稿です**
アルツハイマー病(AD)はこれまで,アミロイドβ沈着に始まり,タウ病理を介して神経変性に至る疾患と考えられてきました.しかし近年,微小血管病変の存在が,この理解を大きく揺さぶりつつあります.今回,韓国からNeurology誌に,脳微小出血(CMB)がその病態に大きな影響を与えていることを示す研究が報告されました.
対象は軽度認知障害およびAD患者116例と健常者85例の計201例で,アミロイドPET,タウPET,MRIを組み合わせ,約2年間の縦断的追跡を行いました.さて結果ですが,脳微小出血を認めない群では,ベースラインのタウPET蓄積が,その後の認知機能低下および皮質萎縮の進行と強く関連していました.これはタウ蓄積がADの認知機能に重要であるという近年の考え方に合致します.一方,脳微小出血を有する群では,認知機能低下や皮質萎縮自体は,脳微小出血なし群よりより,広範かつ顕著に進行しているにもかかわらず,それらがタウPETの蓄積量とはほとんど相関しませんでした(図).
図の見方ですが,緑色の部分はタウ蓄積と脳萎縮の関連が強い部位です.脳微小出血を認めない群では,タウ蓄積が高いほど側頭葉,前頭葉,頭頂葉に広範な皮質菲薄化が進行し緑色の部分が多いですが,脳微小出血を認める群では,皮質萎縮は進行しているにもかかわらず,タウ蓄積との関連は限定的で,ほとんど緑色の部分がありません.すなわち,脳微小出血が存在すると,認知症の進行は「タウ主導」では説明できなくなることが明確に示されたわけです.
この結果は,アミロイドβの役割を再考させます.脳実質に沈着するアミロイドβは,長い時間を要しますが恐らくタウ病理を誘導し,典型的なADの進行に関与します.一方,脳血管壁に沈着するアミロイドβ,すなわち脳アミロイド血管症では,血管の脆弱化,慢性虚血,微小出血や微小梗塞を介して,タウとは独立した経路で認知機能低下を進行させます.脳微小出血は,この血管型アミロイドβ病理が前景化していることを示すサインと考えられます.
では,アミロイドβ抗体療法をどのように考えるべきでしょうか.アミロイドβ抗体は,主に脳実質に沈着したアミロイドβを除去し,その結果としてタウ病理の進行を抑制することを目的とした治療です.したがって,脳微小出血を伴わず,タウ病理が病態の中心にある症例では,理論的にも臨床的にも一定の妥当性があります.しかし,脳微小出血や脳アミロイド血管症が前景に立つ症例では,認知機能低下の主因は血管障害であり,タウ病理の寄与は相対的に小さくなります.このような症例では,アミロイドβ抗体による臨床効果は限定的である可能性が高く,むしろ血圧管理のような血管性認知症の対策が有効と考えられます.つまりアミロイドβ抗体療法の是非は「アミロイドβがあるかどうか」ではなく,「どこに沈着し,どの病態経路が主導しているか」で判断すべきだということです.
以上のようにADは一つの疾患ではなく,少なくとも「タウ主導型」と「血管主導型」という異なる進行様式を含んでいそうです.ADの脳血管病としての側面を意識する必要があります.
★先日,ご紹介したこちらの記事もご参照ください(アルツハイマー病は「脳血管病」の性質をもつ:血液脳関門破綻,低灌流,血小板から見える新しい姿)https://pkcdelta.hatenablog.com/entry/2025/11/22/065353
Jung YH, et al. Impact of Cerebral Microbleeds on Tau-Associated Cognitive and Structural Decline. Neurology. 2026 Jan 13;106(1):e214453. doi.org/10.1212/WNL.0000000000214453.

・整形外科医が知っておくべき脳神経内科疾患(整形・災害外科 12月号)
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年12月17日のFB投稿です**
腰痛,歩行障害,姿勢異常,しびれ,筋力低下など,整形外科の日常診療で遭遇する症候の多くは,脳神経内科疾患でも生じます.このたび,『整形・災害外科』(金原出版)12月号(https://amzn.to/3MK8mgc)において,特集「整形外科医が知っておくべき脳神経内科疾患」を企画させていただきました.本特集では,「どのようなときに脳神経内科疾患を疑うべきか」「どの時点で脳神経内科医につなぐべきか」という診療の分岐点を整理することを主眼としています.
具体的な疾患としては,パーキンソン病,ALS,多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害(MS・NMOSD),慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)に加え,近年,注目の疾患として特発性正常圧水頭症,アミロイドーシス,免疫チェックポイント阻害薬による神経系免疫関連有害事象(irAE)や機能性神経障害など,整形外科との境界で問題となりやすい疾患を取り上げています.第一線で活躍するエキスパートが,最新の知見を踏まえて実践的に解説してくださいました.整形外科と脳神経内科の連携を深め,日常診療に役立つ現場志向の特集だと思います.最後に素晴らしい原稿をご執筆くださった先生方に感謝申し上げます.
Amazonページ https://amzn.to/3MK8mgc
ホームページ  https://www.kanehara-shuppan.co.jp/magazines/detail.html…
【項目】
整形外科医のためのパーキンソン病診療ガイド;梶山 裕太,三原 雅史
多発性硬化症と視神経脊髄炎スペクトラム障害;松下 拓也
筋萎縮性側索硬化症;熱田 直樹
慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー;国分 則人
特発性正常圧水頭症;山原 直紀,下畑 享良
脊髄サルコイドーシス;古賀 道明
アミロイドーシス;植田 光晴
免疫チェックポイント阻害薬における免疫関連有害事象(irAE);角南 陽子,鈴木 重明
Sjogren症候群の神経系合併症;桑原 宏哉
機能性神経障害―概念から診断・治療まで;関口 兼司

・血液タウで診断したアルツハイマー病は加齢で激増するが,症状の程度はタウだけでは決まらない――tau-clinical mismatchという新しい考え方
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年12月20日のFB投稿です**
アルツハイマー病(AD)の診療は,血液バイオマーカーの登場によって大きな転換点を迎えています.とくにリン酸化タウ217(pTau217)は,採血で済むという侵襲性の低さと高い診断精度から,AD病理を反映する指標として急速に普及するものと思われます.では①実際にpTau217陽性の患者(?)の有病率はどの程度なのか?,また②タウが高ければ重症と考えてよいのか?が分かりません.今回紹介する2つの研究はきわめて示唆に富んでいます.
まず,Nature誌に掲載されたノルウェーの大規模地域住民研究であるHUNT研究を基盤とした論文では,血液中リン酸化タウ217(pTau217)を用いて,アルツハイマー病(AD)病理が地域社会にどの程度存在するのかが検討されています.本研究は,58歳以上の一般住民11,486人を対象とした大規模研究です.重要なのは図1です.年齢階級ごとにAD病理陽性(pTau217 ≥0.63 pg/mL)と推定される割合が示されています.その結果,58~69歳ではAD病理陽性者は8%未満にとどまる一方,70~74歳では約18%,75~79歳では約28%,80~84歳では約44%,85~89歳では約58%と,年齢とともに段階的に増加し,90歳以上では65.2%に達していました.すなわち,AD病理は高齢になるほど急速に頻度が増し,超高齢期には「例外的な病態」ではなく,「一般的な現象」に近づくことが,人口レベルで明確に示されたわけです.
さらに重要なのは,このAD病理の広がりが,必ずしも臨床症状と一致しない点です.70歳以上の集団を対象とした解析では,AD病理は認知症患者の60.0%に認められましたが,軽度認知障害(MCI)でも32.6%,認知機能が保たれている集団においても23.5%に存在していました.言い換えれば,70歳以上では,認知症でなくても約4人に1人がAD病理を有していることになります.これらの結果が示しているのは,タウを中心とするAD病理は「症状出現前に,すでに相当数の人に存在し得るもの」であるという事実です.
しかし,ここで次の疑問が生じます.もしタウ病理がすでに存在している場合,症状の出方や進行速度に個人差がないのだろうかということです.この問いに取り組んだのが,米国ペンシルベニア大学等からのJAMA Neurology誌に掲載された研究です.ADNIなどの縦断データを用い,アミロイドβ陽性例におけるタウ病理と臨床症状の関係を詳細に解析しました.図2では,タウPETあるいは血漿pTau217と,CDR-SBの関係が散布図として示されています.全体としてはタウ量と症状重症度に正の相関が認められるものの,同じタウ量であっても症状が軽い例と重い例が明確に存在しています.著者らはこの乖離を「tau-clinical mismatch」と名付けました.そして回帰モデルからの残差として定量化し,タウ量と症状が概ね一致するcanonical群,タウ量の割に症状が軽いresilient群,タウ量の割に症状が重いvulnerable群という3群に分類しました.そしてvulnerable群ではCDR-SBの上昇やMMSE低下が有意に速く,次の臨床ステージへの移行リスクも高いことが示されました.一方,resilient群ではその逆で,同じタウ病理を持ちながら全く異なる臨床経過をたどることも明らかになりました.
では,このtau-clinical mismatchは何によって生じるのでしょうか.本研究で最も説得力をもって示されたのは,vulnerable群ではTDP-43関連MRI指標の異常やαシヌクレインseed amplification assay陽性率が高く,共存病理の存在が臨床的脆弱性を規定しているという点です.一方,resilient群では共存病理が少ないだけでは説明しきれず,認知予備能やレジリエンスといった防御的要因の関与が考えられます.教育歴や知的活動,遺伝因子,免疫反応,血管因子などが,症状発現を抑制している可能性があります.
この2つの研究を合わせて考えると,AD病理を有する人は加齢で激増するが,タウ単独では決まらず,共存病理による加速と,レジリエンスによる防御という2方向の力のバランスによって規定されているということのようです.防御には恐らくグリンファティックシステムなどが関わるものと考えられます.結論として血液バイオマーカー時代のADは,「タウの有無」を問う段階から,「タウ × 共存病理× レジリエンス要因 × クリアランス(グリンファティック)」というものになっていきそうです.アミロイドβを脳脊髄液やPETで評価している現在とはかなり違ったものになりそうです.
Aarsland D, Sunde AL, Tovar-Rios DA, et al. Prevalence of Alzheimer’s disease pathology in the community. Nature. 2025. doi.org/10.1038/s41586-025-09841-y
Brown CA, Mundada NS, Cousins KAQ, et al. Copathology and clinical trajectories in individuals with tau-clinical mismatch. JAMA Neurology. 2025. doi.org/10.1001/jamaneurol.2025.4974

・知っていただきたい「機能性神経障害」 ―診療に潜む倫理的課題と私たちができること―
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年12月25日のFB投稿です**
機能性神経障害(functional neurological disorder,FND)をめぐる臨床倫理的問題について総説としてまとめました.FNDは筋力低下,けいれん発作,不随意運動,感覚障害など多彩な症候を呈する頻度の高いコモンディジーズです.かつては「ヒステリー」「心因性」「転換性」「詐病」などと呼ばれてきましたが,近年は神経学的に診断可能で,治療可能な疾患単位として再構築されつつあります.しかし診療の現場には,いまなお誤解や偏見,制度的な不備が残されており,患者さんが不必要な苦痛を被っている現実を実感しています.状況を改善する必要性を強く感じ,この総説を執筆しました.
本総説では,2015年以降の文献を検討し,FNDをめぐる臨床倫理的問題を四つの領域に整理しました.それは「スティグマ」「誤診と医原性の害」「患者と医療者の病態理解の乖離と患者体験の軽視」,そして「ジェンダーと歴史的偏見」です.とくにスティグマは,患者さんが「症状を作っている」「怠けている」と疑われ,信じてもらえない経験を重ねることから生じます.このような経験は患者さんの尊厳を損ない,生活の質を低下させ,医療への信頼を失わせます.また,一度FNDと診断されるとその後に生じた新たな器質疾患が見逃されやすくなる「診断の影の効果」もあり,誤診や過剰治療,不必要な侵襲的処置が医原性の害として患者さんを苦しめる場合があります.
さらに,医療者と患者さんの間には,症状の随意性や意味づけに関する理解の乖離があります.医療者は「随意とも不随意とも解釈できる」と捉えがちですが,患者さんは「自分の意思ではどうにもならない」と感じています.このずれが診断の受容を妨げ,信頼関係の構築を困難にします.またFNDは歴史的に「ヒステリー」として女性に帰属されてきた経緯があり,ジェンダーバイアスや社会的偏見が現在の診療にも影を落としています.虐待や暴力といったライフイベントが発症や持続に関与する場合も少なくありませんが,これらへの配慮は十分とは言えません.
本総説の提案は,これらの問題を「臨床倫理の四原則」という枠組みで整理し,日常診療の具体的な行動に結びつけることでした.表(英語)では,自律尊重,善行,無危害,公正の四原則ごとに,現状の課題と望ましい対応を対比的に示しています.①自律尊重の観点からは,陽性徴候を示して疾患の実在性を保証し,患者さんの語りに耳を傾けることの重要性を示しました.②善行の観点からは,スティグマを軽減する医療者教育と心理社会的支援の充実を挙げました.③無危害の観点からは,除外診断ではなく陽性診断を行い,不必要な検査や治療を避ける姿勢の必要性を示しました.④公正の観点からは,ジェンダーや社会的弱者に対する不公平を是正し,公平な医療アクセスと資源配分を確保する必要性を示しました.
FNDでは,患者さんをどう理解し,どう関わるかという姿勢そのものが治療の一部になります.患者さんを信じて尊重し,害を最小化し,公平性を確保するという原則を意識的に実践し教育していくことが重要であると考えます.
下畑享良.機能性神経障害における臨床倫理的問題―患者尊重と医療者教育の必要性―.臨床神経(早期公開)https://doi.org/10.5692/clinicalneurol.cn-002182
無料でダウンロードできます.またスライドを以下からご覧いただけます.
https://www.docswell.com/…/800…/KG2PW4-2025-11-09-070636

・予防神経学がひらくこれからの健康社会 ― 脳神経内科医の新しい役割―
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年12月28日のFB投稿です**
Neurology誌の総説「An Ounce of Prevention: The Growing Need for Preventive Neurologists」を興味深く読みました.米国神経学会ポッドキャストでも取り上げられた注目の論文です.脳神経内科医の役割を「発症後の治療」から「発症前の予防」へと転換する必要性を論じています.医療の進歩によってがんなどによる死亡が減少し,多くの人が脳卒中や認知症などの神経疾患とともに長く生きる時代になり,その結果,神経疾患は世界最大の障害負荷の原因となっています.2021年には世界人口の約43%にあたる34億人が何らかの神経疾患を有していたとされ,神経疾患は障害調整生命年の最大の原因であり,死亡原因としても第2位を占めています.とくに認知症は2050年までに3倍に増加すると予測され,医療費と介護負担の爆発的増加が懸念されています.
この論文のメッセージは,神経疾患の多くは「避けられない運命」ではなく,相当部分が予防可能であるという点です. INTERSTROKE研究では,高血圧,喫煙,腹部肥満,運動不足,不適切な食事,糖尿病,過剰飲酒,心理社会的ストレスやうつ,心疾患,脂質異常症という10の修正可能な危険因子で,脳卒中リスクの約90%が説明可能であることが示されています.そして生活習慣と危険因子管理により最大80%の脳卒中が予防可能とされています.
またLancet委員会は,教育歴,難聴,高血圧,喫煙,肥満,うつ,運動不足,糖尿病,社会的孤立,過剰飲酒,頭部外傷,大気汚染,視力障害,高LDLコレステロールという14因子を通じて,認知症の40%以上が予防または発症遅延可能であると報告しています.さらにFINGER試験やSPRINT-MIND試験といった前向き介入研究により,実際に介入することで認知機能低下を抑えうることも示されています.具体的にはFINGER試験は,認知症リスクを有する高齢者を対象に,食事指導,運動療法,認知トレーニング,血管危険因子管理を組み合わせた多領域介入を2年間行い,介入群では記憶や実行機能などの認知機能が有意に改善しました.SPRINT-MIND試験は,高血圧患者を対象に,収縮期血圧120mmHg未満を目標とする厳格な降圧治療が,軽度認知障害の発症および軽度認知障害または認知症の複合エンドポイントを有意に減少させることを示しました.これらの研究は,認知症は不可避な老化現象ではなく,危険因子への介入によってその進行を遅らせたり,発症を防いだりできる可能性があることを実証するものです.
論文の中で最も印象的なのが下図で,脳神経内科医の役割をピラミッドで示しています.最下層には個々の患者の診療があり,その上に家族への教育,医療チーム内での専門的助言,研修医・学生への教育が積み重なり,さらに上層では地域への啓発活動や社会・政策への提言が位置づけられています.これは,脳神経内科医は診療室の中だけで完結する存在ではなく,個人,家族,医療システム,社会という複数のレベルで脳の健康を支える「脳の健康推進者(brain health advocate)」として機能すべきであるという著者のビジョンを視覚的に表現したものです.予防神経学とは,個人医療と公衆衛生を橋渡しする新しい専門性であるとも言えます.この考え方は非常に納得できるものです.
論文タイトルに使われている「An Ounce of Prevention」は,英語の格言「An ounce of prevention is worth a pound of cure(わずかな予防は大きな治療にまさる)」に由来しています.つまり「ほんの少しの予防的努力が,将来の膨大な治療や苦痛を防ぐ」という意味が込められています.脳神経内科医は,病気を治す専門家であると同時に,病気を生まない社会をつくる専門家であるべきだというメッセージがこの一語に凝縮されています.
Sabayan B, Boden-Albala B, Rost NS. An Ounce of Prevention: The Growing Need for Preventive Neurologists. Neurology. 2025;105:e213785. https://www.neurology.org/doi/10.1212/WNL.0000000000213785

・抗ウイルス薬はアルツハイマー病に効くのか?VALAD試験が示した予想外の結論
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年12月29日のFB投稿です**
近年,単純ヘルペスウイルス1型や2型(HSV1,2)がアルツハイマー病(AD)の病態に関与している可能性が指摘されています.HSVは三叉神経節などに生涯潜伏感染し,免疫状態の変化により繰り返し再活性化する性質を持つため,この慢性的な炎症刺激が神経変性の引き金になるのではないかという可能性が提唱されてきました.このため『抗ウイルス薬であるバラシクロビル(バルトレックス®)がその進行を抑制できるのではないか』という仮説が考えられるようになりました.この仮説を検証するために,米国で行われた多施設共同第2相二重盲検プラセボ対照試験(VALAD試験)がJAMA誌に掲載されました.なお,本研究でHSVが対象とされたのは,剖検脳でHSV DNAがアミロイド斑内に検出されていることや,実験モデルでHSV感染がアミロイド産生やタウリン酸化を誘導すること,疫学的にもHSV抗体陽性者でADリスクが高いと報告されてきたことなど,病理学的,実験的,疫学的根拠がこのウイルスに最も多く蓄積していたためです.
対象は,早期症候性ADまたはADバイオマーカー陽性の軽度認知障害(MCI)で,かつ血清HSV抗体陽性の成人120名で,平均年齢は71.4歳,女性66名でした.被験者は無作為にバラシクロビル群60名とプラセボ群60名に割り付けられ,バラシクロビルは2 g/日から開始して4週間で4 g/日まで漸増され,その後78週間まで維持されました.主要評価項目はADAS-Cog 11項目版の変化量でした.
結果はなんと仮説と逆でした.78週時点でのADAS-Cogの変化量は,バラシクロビル群で10.86点悪化し,プラセボ群では6.92点の悪化にとどまり,群間差は3.93点で統計学的にも有意でした.この差は臨床的に意味のある最小差である3点を上回っており,認知機能の低下はバラシクロビル群の方がむしろ強いことが示されました!!(図1)経時的にも,時間とともに両群の曲線が離れ,バラシクロビル群が一貫してより大きな悪化を示していく様子が分かります.
一方で,副次評価項目である日常生活動作スケール,アミロイドPET,タウPET,MRIによる海馬萎縮や皮質菲薄化などの指標では,いずれも群間差は認められませんでした.すなわち,バラシクロビルは認知機能のみならず,AD病理や神経変性にも影響を与えなかったことになります.安全性の面では,重篤な有害事象は両群で大きな差はありませんでしたが,バラシクロビル群では血清クレアチニン上昇や下痢,悪心,混乱などの軽度副作用がやや多く認められました.著者らは,高用量かつ長期のバラシクロビル投与が,軽微な神経毒性を通じて認知機能悪化として検出された可能性も否定できないと議論しています.
本研究の結論は明確であり,バラシクロビルは早期症候性ADに対して有効ではなく,むしろ認知機能悪化と関連した可能性があるため,治療として推奨されないということです.ただし,この結果は感染症仮説そのものや発症前予防の可能性を否定するものではありません.ADの病理は臨床症状の10年以上前から始まることが知られており,もしウイルス感染やその再活性化が初期トリガーとして関与しているのであれば,発症後の治療ではなく,発症前の段階での介入こそが意味を持つ可能性があります.実際に,帯状疱疹ワクチン接種と認知症リスク低下との関連を示す疫学研究も報告されており,免疫環境の長期的修飾という観点からは,抗ウイルス薬よりもワクチンや予防的介入の方が理論的に適している可能性も考えられます.本試験は,発症後治療の限界を示すと同時に,予防という視点の重要性をあらためて浮き彫りにした研究であるともいえます.
Devanand DP, et al.Valacyclovir Treatment of Early Symptomatic Alzheimer Disease.The VALAD Randomized Clinical Trial.JAMA.Published online December 17, 2025. PMID: 41405855
★FBの規則改訂で,1ヶ月のリンク付き投稿数が制限されるようになってしまいました(2個まで).このためMeta認証に有料加入したのですが,それでも月4個までなので,リンクを貼らず,PMIDを記載することにしました.

・アルツハイマー病病理はウイルスに対する2段階の防御反応?タウはリン酸化されて初めて抗ウイルス蛋白として機能し,伝播は感染防御のための準備反応である
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年12月30日のFB投稿です**
近年,アルツハイマー病(AD)とウイルス感染との関連が注目されており,とくに単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)が病態に関与する可能性が議論されています.2024年末にCell Reports誌に掲載されたHydeらの研究は,この関係を分子レベルで明確に示した重要な報告でした(ブログ;2025年1月15日).この研究では,HSV-1感染によりcGAS-STING-TBK1経路が活性化され,その下流でタウがリン酸化されること,そしてリン酸化タウがHSV-1タンパク質の発現を抑制し,神経細胞の生存を保護することが示されています.すなわちタウのリン酸化は病的変化ではなく,HSV-1感染に対する自然免疫応答として神経保護的に機能している可能性が示されたわけです.
ADの代表的な病理所見である神経原線維変化は,リン酸化されたタウ蛋白の凝集によって形成されます.このリン酸化タウは長らく神経細胞にとって有害な異常産物とみなされてきましたが,今回,Nature Neuroscience誌に掲載されたマサチューセッツ総合病院のWilliam A. Eimer博士らの論文は,この常識に根本的な再考を迫る内容です.この研究の最大の発見は,リン酸化タウがヒト神経細胞においてHSV-1に対して抗ウイルス活性を示したという点です.培養神経細胞にリン酸化タウを前処理すると,ウイルスに感染する細胞の数が減少し,形成されるウイルスプラークの数や大きさも有意に低下しました.一方で,リン酸化されていない通常のタウではこの効果は認められませんでした.すなわちタウはリン酸化されて初めて抗ウイルス蛋白として機能することが示されました.
とくに印象的なのが電子顕微鏡で示された所見です(図1).精製したHSV-1カプシドとリン酸化タウを共培養すると,リン酸化タウがウイルス粒子の表面に直接結合し,そこを足場として自己凝集し,線維状構造を形成していく様子が観察されました.aおよびbでは,ウイルスカプシド(矢印)の表面からリン酸化タウの線維が伸び,不定形の凝集体(矢頭)や線維状構造(★)が形成され,複数のウイルス粒子を絡め取っている様子が示されています.これはウイルス粒子がタウ凝集の核となり,防御構造としての線維形成が誘導されていることを意味します.さらにcおよびdでは,HSV-1に感染した三次元培養神経細胞の超薄切片において,抗リン酸化タウ抗体に金ナノ粒子を結合させた標識により,神経細胞核内のウイルスカプシド表面にリン酸化タウが実際に結合している様子が確認されています.すなわちこの現象は試験管内だけでなく,感染した神経細胞内でも実際に起きていることが示されたのです.
またウイルス感染により神経細胞内でリン酸化タウが増加し,それが細胞外にも放出されて周囲の未感染細胞に影響を及ぼすことが示されました.図2では,感染細胞と未感染細胞を細い通路でのみ連結した特殊な培養装置を用いることで,ウイルスそのものは移動できないが,タンパク質などの情報は伝わる状況が作られています.その条件下で,感染していない細胞の中にもリン酸化タウが増えている様子が観察されました.これはリン酸化タウが感染した細胞だけでなく,周囲の細胞を事前に守る役割も担っていることを示唆しています.いわゆるタウの伝播は,感染防御のための準備反応であるということになります.
さらにリン酸化タウとウイルスの複合体はミクログリアに貪食されることも示され,免疫細胞による病原体除去にも関与している可能性が示唆されました.これらの結果を総合すると,アミロイドβが細胞外でウイルスを捕捉するという既存の防御仮説(これはNHKタモリさんの番組でもご紹介しました)に加えて,本研究はリン酸化タウが細胞内でウイルスの輸送や増殖を妨げる役割を担う可能性を示し,脳内に2段階の自然免疫機構が存在するという新しい統合モデルを提示しています.
つまり,ADの主要な病理とされるアミロイドβ沈着,リン酸化タウ沈着,神経炎症はいずれも,感染防御と深く関係する生体反応であり,それらが慢性的に持続あるいは過剰化することで病理として現れている可能性を示しています.神経変性はこの防御機構が過剰化あるいは慢性化した結果であるかもしれません.アミロイドβに加え,タウも単なる「悪者」として排除するのではなく,なぜそれが生じたのかという進化的,免疫学的文脈の中で再評価する必要があることを,本研究は強く示唆しているように思われます.
Eimer WA, et al.Phosphorylated tau exhibits antimicrobial activity capable of neutralizing herpes simplex virus 1 infectivity in human neurons. Nature Neuroscience.2025. PMID: 41408481.

・アリと人間のパズル対決から学ぶ大切なこと ― チームの質は「対話の質」で決まる―
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年12月31日のFB投稿です**
1年の締めくくりに,示唆に富む論文をご紹介します.たまたまウェブ上の動画で知った研究ですが,そのオリジナルは今年1月に PNAS に掲載された論文です.この研究では,アリと人間にまったく同じ幾何学パズルを解かせています.T字型の物体を,2つの狭いスリットを通して出口へ運ぶという課題です.アリ用の物体には餌の匂いをつけ,巣に持ち帰る対象としています.サイズだけをアリと人間に合わせてスケールし,1人(1匹),小集団,大集団での成績を比較しました.さらに人間では,「話してよいグループ」と「話してはいけないグループ」に分けています.
結果は意外でした.アリは集団になるほど成績が良くなりました.壁に沿って動き続けるなどの行動が自然に生じ,結果として効率よく正解に到達します.個体にはない「集合的な記憶」が生まれていると解釈されています.逆に人間は,1人のときが最も効率的でした.話せるグループは1人と同程度の成績でしたが,話せないグループは,なんと1人よりも成績が悪くなりました.出口に対して遠回りすべき場面でも,直感的で誤った方向を選びやすい傾向が見られました.これは心理学でいう groupthink(集団浅慮)に近い現象です.「みんなと同じでいること」が目的になりすぎて,「正しく考えること」をやめてしまう集団心理です.つまり,アリは単純な個体ですが,集まると賢くなる.それに対して人間は,賢い個体であっても,話し合えない集団では賢さを失う・・・その対照的な特徴が浮かび上がりました.
この論文の教訓は極めてシンプルです.人間のチームの質は,個々のメンバーの賢さではなく,ひとえに「対話の質」によって決まる.バラバラな考えをつなぎ合わせ,一つの方向へと導くための最も大切な手段こそが対話なのだと,この研究は教えてくれます.当たり前のようでいて,これほど重要なことはありません.来年も教室やカンファレンスで,よく話し合っていきたいと思います.そして,この対話の力を社会や世界があらためて認識し,争いのない平和な未来へとつながることを,心から願っています.
本年も1年,ありがとうございました.どうぞ良いお年をお迎えください.
Dreyer T, et al. Comparing cooperative geometric puzzle solving in ants versus humans. Proc Natl Acad Sci U S A. 2025 Jan 7;122(1):e2414274121. PMID: 39715438(動画はフリーでDL可)

 

(作成者)峯岸 瑛(みねぎし あきら)

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2025年10月のニュース

今年のノーベル賞では、坂口志文氏が生理学・医学賞、北川進氏が化学賞を受賞と朗報がもたらされましたが、受賞後にお二人が基礎研究支援への注文を出されたように、我が国にとって科学技術大国再興は喫緊の課題と思っています。
今月の学術ニュースは、健康長寿であるための新たな知見、AIの活用事例と潜むリスク、下畑先生からの最新医学情報、等です。

1.2025年10月の活動状況
・佐藤 ヒロ子さんの投稿
【ヨガストレッチ   &靴のはきかた】 2025/9/30 猛暑でできなかった振替分を実施   特別プログラムは     「ヨガストレッチ」 今の時期に    とっても気持ちがいいです 自然の中で手足を    伸ばして〜 最幸 その後の靴の履き方復習です  知っていても疎かになりやすい!  もう一度初心に戻りましょう〜   靴も足にピッタリついて  ウォーキングは軽いかる〜い    足どり颯爽     いい感じです #船橋ウォーキングソサイエティ #美姿勢ウォーキング #ヨガストレッチ #靴の選び方 #靴の履き方 #靴紐の結び方 #速歩

・田村 芙美子さんの投稿
秋晴れ☀️ 秋色を楽しみながらP.ウォーキング まだまだ昼間は暑いくらいです 明日から渋谷教室3学期が始まります ガンバロー👊✨

・佐藤珠美さんの投稿
認知症に限らず、高齢者が望む場所で住み続けられるようにするためには、地域の総力戦が必要です。 位置情報がわかる機器、行方不明者を探せる警察犬。 人間だけではない、色々なモノのチカラを結集しよう!という取り組みの下準備を進めています。 #認知症エコシステム #アプリ #ササエル ※当倶楽部の活動において利益相反関連事項はありません。

・田村 芙美子さんの投稿
㊗️北鎌倉テラススタジオ16周年  昨日10/1 記念日を迎えました。長いようで短い年月を杉浦コーチの変わらぬオヤジギャグとPRESS📰、CoreNoodleで鍛えられました。私の人生の○分の一です。

・スマイルチームさんの投稿
スマイルチーム ポールウォーキング。10月の遠征は生田緑地。岡本太郎美術館を堪能しました! #ポールウォーキング #岡本太郎美術館

・山下 和彦さんの投稿
今日は小学生に足の成長の授業🦶とっても楽しくエネルギッシュにできました!しっかり前向きに聞いてくれる子どもが多くやりがいがあります👍

・水間 孝之さんの投稿
日本転倒予防学会in群馬開催されました。 群馬ポールウォーキング協会が出展、セミナーを開催し、ポールウォーキングを紹介しました‼️ 皆さんお疲れ様でした‼️

・佐藤 ヒロ子さんの投稿
【課題は上半身】  2025/10/4  フォームを動画で確認! 「腕を振っているつもり」 「はい、そうですね。  つもりと事実は違うね〜」  上腕は体側でストップ  毎回お馴染みの感想が出てきます(笑) 気づきが改善の第1歩 これも動画撮影毎に話してます(笑) #船橋ウォーキングソサイエティ #2本のポールを使うウォーキング #ノルディックウォーキング #ノルディックウォーク #ポールウォーキング #土曜日海老川ロード定例会

・中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より 無事終わりました。 10/4〜5ぞっこんさく市〜 /5(日)PW駒場例会〜 佐久駒場公園で会場同じくしWイベントでした。 「ぞっこんさく市」ではPWの案内と体験会をと〜  協会員の憩いと立寄り休憩場も兼ねての出店でした。団体会員の(株)シナノさんの特価品販売もございました。 午後は☔️もあった2日間。 二日間で4万人の参加者をお迎えした様でした(主催者発表) 駒場PW#例会は50名の参加者を迎え、混み合った公園を逃れお隣の牧場をポールウォークでした。 10名の看護師目指す大学生も参加しシニアとの交流を図って居ました。いつもと違い若返った様な協会員の皆さんでした。 今日のご褒美は〜立科スパイシーチーズバーガー🍔〜‼️ 相変わらずの旨さ〜ww

・佐藤 ヒロ子さんの投稿
【ポールを束ねてホイ】  お買い物の時に困るポール    これならさっと結べて   身体に沿うので安心です。  設計図と使い方を披露して    頂きました    材料費約150円   2025/10/6 #船橋ウォーキングソサイエティ  #月曜日シニアポールウォーキング #姿勢チェック #コグニサイズ #チェアエクササイズ #ステップエクササイズ #ポール持ち運びロープ

・田村 芙美子さんの投稿
清々しい秋空 秋桜 爽やかな里山の風 稲刈りした稲架掛け 昔遊んだ数珠玉 割れて綿がもりもり現れたガマ 今風の服を着た案山子 気持ち良いポールウォーキングを楽しみました

・佐藤 ヒロ子さんの投稿
しっかり歩きに向けての  #フォームチェック  #美姿勢ウォーキング で #船橋ウォーキングソサイエティ  屋外全てのコースが動画撮影を   完了しました  意識づけはコーチの役割   活かすのは本人ですよ〜  少しの進歩でも継続が大事です #パワーウォーキング #インターバル速歩 #中之条研究 #筋トレ #7秒スクワット

・スマイルチームさんの投稿
2025.9.2〜9.7 活動記録 ☺︎ポールウォーキング 10名 生田緑地・岡本太郎美術館 ☺︎相模原市文化協会会議 ☺︎スマイルリズムエクササイズ 16名 ☺︎上鶴間公民館子どもまつり実行委員会 ☺︎上鶴間公民館利用団体懇談会・交流会 AED講習 ☺︎上鶴間公民館利用団体懇談会役員会 ☺︎スマイルチーム光が丘 21名 チェア体操 ☺︎中屋敷チェアエクササイズ 21名

・遠藤 恵子さんの投稿
📣午後はイレギュラー講座! 【長者研修大学校 穴生学舎】 健康づくりサポーターコース48名の皆さんと、 2時間たっぷり身体を動かしました💪✨ 昨年度から毎年3~4講座のご依頼をいただいており担当の方とはもう8年のお付き合いになります。 昨年は創立30周年記念イベントでも2講座 講師を務めさせていただきました! 担当者の方はおととしまで社協にお勤めで、 その頃から介護予防運動の講師として継続的にお声かけいただいています。 「この先生に任せれば大丈夫!」 そんな言葉に支えられ、信頼関係を築いてこられたことに心から感謝です🙏✨ 長年積み重ねてきた経験と信頼を大切に、 これからも現場でお役に立てる講師であり続けたいと思います🌸 そして明日も穴生学舎で講師のお仕事です✋ 地域リーダーコースの皆さん18名に、ポールウォーキングを体験していただきます🚶‍♀️✨ あっ😵 そういえば今日の参加者のみなさんに【島崎和歌子】に似ていると言われた😱 人生初🤣

・佐藤珠美さんの投稿
八ヶ岳北麓  山桜の葉が色付く

・柳澤 光宏さんの投稿
今日から3日間国際福祉機器展に出展しています!皆さんお待ちしております。

・大内 克泰さんの投稿
桑折町マルベリーの「脳の若返り教室」。 ラケット🏸持った途端に若返る元18歳の皆様😊 今月から広い体育館に移ったので、バドミントンで左右打ちラリーやバードゴルフをフォアハンドとバックハンドで脳トレしました😃 来週もお楽しみに♫

・佐藤 ヒロ子さんの投稿
【何故、速歩きがいいの?】 道理がわかれば  心が動く  心が動けば行動が伴う 見てわかるようにパネルで説明  2025/10/9 #船橋ウォーキングソサイエティ #2本のポールを使うウォーキング #ノルディックウォーク #ノルディックウォーキング #ポールウォーキング #ポールウォーク #インターバル速歩 #中之条研究 #しっかり歩き  #中強度の運動

・遠藤 恵子さんの投稿
午前は介護予防運動👟 ⇒会場を移動して午後は、2022年4月から引き継いで約2年半になります 健康体操教室(1時間半)✨ 引き継いだ当初は前期高齢者の方が多かった記憶が…‎🤔 気づけば今では後期高齢者の方がどんどん増え、元気に参加中🙌‼️ ご夫婦でご参加の方が2組💓 めっちゃ貴重!というか理想的です☺️ そしてなんと今では毎回30名超えの大所帯に✨ 安全第一!事故がおきないように お一人おひとりとアイコンタクトをとりながら 動きをキョロキョロ確認👀 その様子を見て「先生、表情がコロコロ変わって可愛い・面白い」 なんて声をかけてくださることも😆💕 どなたでも無理なくできてしっかり効果が期待できる運動💪 そして“笑顔で楽しめる時間”をお届けできるよう心がけています🌿 みなさんの笑顔と前向きな姿に 毎回こちらがたくさんの元気をもらっています✨ そして、こちらの教室でも お友達に誘われて3ヶ月前からご参加くださっている90代の方がおられます💐 もともと以前から身体を動かすことを続けてこられた方でその積み重ねが今の元気につながっているのだと思います🌿 ちなみに本日の筋トレメニュー💪 (からだを整えた後におこなっています筋トレメニュー) ✅ カーフレイズ 10回×3セット ✅ 椅子からの立ち上がり 10回×3セット 90代の方もしっかりclearされました👏✨ 年齢を重ねても“動ける”って本当に素晴らしい!! 筋トレあり有酸素運動あり 1時間半の運動の〆は365歩のマーチを歌いながらChairAero•*¨*•.¸¸♬︎ 継続は力なり💫 私自身も学ばせていただくことばかりです🫡

・中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より 快晴の〜女神湖PW散策〜 紅葉🍁はまだまだの蓼科/女神湖へ秋🍂を求め50名大集合〜❗️ 別荘地と池の周りの約4kmのポールウォークでした。 ランチはカフェレストラン/女神湖駅で採れたて「きのこ🍄/5種入り🍄鍋定食」で舌鼓〜 きのこ汁がばか旨の鍋でした。 帰りに浅科/五郎衛米の田んぼ道を下見に〜ww

・田村 芙美子さんの投稿
三浦ネットPWは欠席者(超高齢化の為)が多く、男子(元気なゴルファージム通い)3人🚶‍♂️🚶‍♂️🚶‍♂️と私🚶だけ。近場を歩きましよう~と寿福寺から英勝寺、海蔵寺まで。鎌倉検定1級のメンバーさんの解説が重厚! 海蔵寺の萩には間に合いましたが英勝寺の曼珠沙華はほぼ枯れてしまっていました。祠堂は英勝院の位牌を安置してあり、徳川光圀によって建てられたもの。 こちらでも100年元気の日課ドリルは好評です。

・日本ポールウォーキング協会 npwaさんの投稿
10月12日、スキルアップ研修会東京2回目を実施しました。 今年度最後の研修ということもあり、40名を超える多くの参加者となりました。 マニュアルベースの実技確認、意見交換など非常に有意義な研修会となりました。 次年度も多くの方の受講をお待ちしております。

・スマイルチームさんの投稿
2025.9.8〜9.14 活動記録 ☺︎健康体操 9名 ☺︎コグニサイズの会 新磯地域包括支援センター出張介護予防教室 チェアエクササイズ®︎ 14名 ☺︎スマイルチーム上溝 19名 ☺︎シニアサポータースタッフ研修申し込み 10名 ☺︎HP活動予定更新 ☺︎青空PW 11名 ☺︎ほかほかふれあいフェスタ 青少年指導委員連絡協議会 (欠席) ☺︎スマイルフレンズ 21名 ☺︎相模原スポーツフェスティバル 青少年指導委員連絡協議会 (欠席) ☺︎EEOAオンラインセミナー受講 サーキットチェア®︎エクササイズで指導スキルに磨きをかける!

・佐藤珠美さんの投稿
一本柳ポールウォーキング倶楽部は毎週火曜日 佐久インターバル速歩倶楽部は月に3回。 佐久平ウォーキング倶楽部の会員さんは、max月に7回の外出の機会がある、という事になります。 製薬メーカーさんから頂いたパンフレット。当倶楽部の想いが具現化されていて嬉しくなりました😊 #認知症エコシステム #40代からの生活習慣病予防#地域の総力戦#身体活動#中強度#地域介護の担い手 #健康教育#コメディカル達の本気!

・佐藤 ヒロ子さんの投稿
【習志野台6丁目町会で    ウォーキング教室】 2025/10/15 船橋市の中で最も       閑静な住宅街です。  健康意識が高く楽しい方々が       集いました。  ウォーキング教室への参加が   初めての方ばかりでしたが 素早い反応で   返事も身体もよく動きます。  あるき方で心も変わる  ★本日も楽しい出会いに感謝です     HAPPY♥  #船橋ウォーキングソサイエティ #ウォーキング教室 #習志野台6丁目町会   #良い歩きは良い姿勢から #若々しい身体は背筋ピン #量より質のウォーキング

・佐藤 ヒロ子さんの投稿
秋だ〜  体全部使って歩くよ 2025/10/18 #船橋ウォーキングソサイエテ #2本のボールを使うウォーキング #土曜日海老川定例会 #インターバル速歩 #中之条研究 #ミトコンドリア #フレイル

・新地 昌子さんの投稿
今日は私も茨城です(何人か友達が茨城に向かっているとの投稿があったので😊) 笠間市の北山公園をポールウォーキングしました。ちょうど花がない季節でしたが、この公園を庭のように歩いているKさんのおかげで通しか知らない上級コースを楽しみました♪桜で有名ですが、これからは紅葉🍁も楽しみ。アップダウンありの約3キロのウォーキングでした。

・長谷川 弘道さんの投稿
本日は、津島のウォーキングイベント「いきいきウォーキングin神守」に参加してまいりました♪ 23年続いたロングイベント❗️ コロナで途中3年間お休みしましたが、今回で実質20回目を迎え一区切りとすることになりました。 私は多分7〜8回目くらいから参加させていただきまして、準備体操や整理体操を担当したり、健康ミニレクチャーや、歩くことが難しい方を対象として椅子に腰掛けての体操などをやらせてきただきました。 そして、こんな私に本日、最後の回で功労賞までいただきまして、本当に感謝でございます。ありがとうございます。 毎年大勢の市民の方が参加され、本日も800名ほどの皆さんがご参加でした。 このイベントの素晴らしいことは、津島市の神守地区とその周りの地域の住民の皆さん、また地元の高校生たちのボランティアのご協力あっての開催であるということなんですね❗️ それと、地元企業のスポンサーシップによって運営がなされてきたわけです。# 事前のコースの下見、安全の確保、人員の配置、受付の手配、救急の対応、ゴールされた皆さんにカレーを提供するわけですが、その準備など、全て市民の皆さんのボランティアによって賄われてきたんですね‼️ そして、その運営の核となってきたのが、私が長らくこの津島の地でポールウォーキングの活動を一緒に続けていただいております日比ファミリー(ご主人様は津島市長)でいらっしゃいます。 一年に一回ではありますが、先のような事前の準備、人の手配、後片付けなどなど、並々ならないご苦労があったことでしょう。 でも日比ファミリーや一緒にこの活動を続けてこられたボランティアの皆さんは、毎回笑顔で参加者の皆さんを迎えられ、毎年参加を楽しみにしておられる皆さんの笑顔、あるいは励ましの言葉や、ゴール後の大抽選会で大いに盛り上がる皆さんの喜ばれる姿にも支えられ、20回のこの大事業を全うされたのだ思います😊 このイベントはこれで一区切りとはなりますが、ここに参加した子供たちやボランティアで参加いただいた高校生の皆さんが、今後なんらかの形で繋いで行って、自分たちでもこうした地域住民のつながりを大切にするイベントを主催してくれることを願っています‼️ 日比ファミリー、そしてボランティアの皆さん、お疲れ様でございました。そして、参加いただいた市民の皆さん、ありがとうございました😊 #津島市 #ウォーキング #ボランティア #市民主催 #繋がり #感謝

・森川 まことさんの投稿
2025.10.19 湖北台中央公園 我孫子ポールウォーキング倶楽部

・中嶋  佳奈恵さんの投稿
第15回秋の犀川ポールウォーキング大会を開催しました。20名の参加の方たちと一緒に犀川河川敷を歩きました。 時折小雨が降りましたがしっかりコースとのんびりコースに分かれてポールウォーキングの良さを満喫いただいたかと思います。ありがとうございました。 担当コーチ 澤田MCpro,中嶋MCpro,高島BC

・佐藤 恵さんの投稿
10月19日、一関市弥栄市民センター主催「いやさか祭り」にてプチ健康体操教室を開催。 おじいちゃんもおばあちゃんも、お父さんもお母さんも子どもたちも、みんなで一斉に体操をしてくれて、普段の運動教室とはまた違う楽しさ♪ ステージ発表を参加型にするのは、とても良いと思いました😊

・新地 昌子さんの投稿
月に一度の笠間市でのポールウォーキング講座。ポールウォーキングは決して難しくはないけれど、ポールの使い方をちょっと意識するだけで、体に現れる効果はかなり違ってくる。なかなか奥が深くてそこも面白い。 今日は重心が定まらずフワフワ歩いていた方が、足の指に体重が乗るのを実感できた、と話していた。ふふふ😁いくつになっても何かができるようになるって嬉しいね。

・杉浦 伸郎さんの投稿
地元町内会での介護予防運動サークル。自走化に向けさまざまな動機づけ支援ツールを開発してきました。 最近では、コーチ不在でも自主的な声掛けによるマルチコ運動メニューを楽しく消化できる様になっています。 嬉しくもあり、ちょっと寂しい瞬間でもあります。 生計就労と生きがい就労のギャップ、指導者のワークライフバランスの実現など越えるべきハードルは多いですが、なるべくスムーズかつスマートに対処していきたいと痛感する今日この頃です。

・田村 芙美子さんの投稿
昨日は週一の渋谷PW教室の帰りに古巣駒澤大学駅に寄りました。駅が明るくリニューアルしてびっくり!来月11日には商業施設オープンで未来の都市・街の予感。田園都市線沿線はこれからなんですね。自由が丘に回るつもりが予報外れの雨で断念しまして渋谷回りで帰鎌☔ 週末も雨予報に変わりました😭

・長谷川 弘道さんの投稿
今日は、午前中に三重県は津市内の小学校で120名ほどの子どもたちと一緒に運動遊びプログラム〜遊びットネスを指導してきました❗️ コロナ禍以前には数年続けてお邪魔しておりましたが、の多分6年ぶりにお邪魔しました。 やっぱり子どもたちとのプログラムは楽しいですね😀 あっという間の90分でした❣️ そして、その足で鳥羽に向かいました。 長らくお付き合いいただいています北名古屋市で陶器のギャラリーを主宰されていらっしゃる山田ご夫婦のお誘いをいただきました。 ここは、真珠ジュエリーのクリエイターでいらっしゃる上村さんのアトリエ。 お子様がお隣で美容院を営んでいらっしゃいまして、またそこが素敵な建物と内装で❣️ そして、さらにさらに、クルーザーを所有されておられて、英虞湾をクルージング❣️ なんと贅沢な時間でしょう❣️ 内海というのでしょうか、波がほとんど立たず、湖のような感じで、錨を下すとほとんど船は揺れないんですね。 船のデッキにマットを敷いて、そこに寝そべって、青空を覗き見しつつ、しばらく瞑想タイム。。。 豪華な気持ちになれました😍 2時間ほどの滞在ではありましたが、とても充実した時間を過ごさせていただきました‼️ 今日は1日、とてもとても満たされた時間を過ごすことができました❣️ ありがとうございました😊 #ギャラリー凛 #Monme #鳥羽 #クルージング #遊びットネス

 

来月以降の開催
・杉浦 伸郎さんの投稿
11/2東五反田での地域づくりイベント「ファームエイド」にてポールウォークを担当させて頂きます(会場:東京医療保健大学)。マルシェ、フォーラム、メッセの3部構成で楽しそうですよ。是非お立ち寄り下さいませ。 「ファームエイド東五反田」とは: 東五反田地区は、大型の病院、個人病院、看護大学、小学校、薬局、高齢者施設があるのが特徴で、住民は昔から住んでいる方(高齢化が顕著)よりも、近年急速に増えたマンション等で暮らす人が多い地域となり、町会の機能低下に伴い、催し物等の機会もほとんどなくなってしまい、地域住民の繋がりも希薄となり大きな課題に。 そこで、点として存在した専門職やあらゆる機関を面としてつなげるために、様々な職種が気軽に、楽しくコミュニケーションをとり、同じベクトルを歩むために「ファーム・エイド東五反田」が立ち上がりました。 ファーム・エイド東五反田には認知症本人の行っている様々な活動もつながる場として、全国の地域行政からも注目され期待されています。

・新地 昌子さんの投稿
佐久の米どころ浅科地区でポールウォーキングしますよー。稲刈りの終わった田んぼがから遠くに望む浅間山。この地域ならではの秋の風景を、寒くなる前に楽しみましょう🍂 地区を担当する地域包括支援センターからのお声がけに、私も講師で参加させていただきます。センターの存在を若いうちから知っていてほしい、という言葉に大きくうなずく私でした。 地域を支えて頑張っている方に会うと元気をもらえますね。

・長谷川 弘道さんの投稿
🍁秋色さんぽ🍁ポールウォーキングDay✨

・台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
wellness.suntory.com.tw

 

2.PW関連学術ニュース
2-1)健康長寿になるための新たな知見4つ
良い睡眠を取ること、手指機能も重要、創造的な経験の効果、熱波の長期的な負の影響の4つです。
(1)われわれの健康にとって睡眠はもっとも大事なものの一つです。良い眠りは良い健康のもとであり、健康寿命を延ばすためにもとても重要なことです。
**大阪大学宮坂先生の2025年10月3日のFB投稿です**
Natureのオンライン版に「良い睡眠を得るにはどうしたらよいか?科学者の意見は」という記事が載っています。さまざまな科学者がエビデンスに基づいた意見を述べています。
それをまとめると、一番大事なことは生体リズム(概日リズムともいう)を崩さないことです。
そのためには、
・明暗のコントラストをつけること
明るい時に動き、暗くなったら休む。寝る前の長時間スマホは禁物。普段から、寝る時は暗くし、起きる時は明るくすること。
・食事時間の調整をすること、
普段から、食事時間と就寝時間を一定に(近くしたり離したりし過ぎないこと)バランスがとれた腸内細菌叢の維持にも重要。
・睡眠時間を一定にすること
普段から、睡眠不足や、寝だめしたり、寝過ぎたりしないこと(長すぎる昼寝は禁物です)。
・日中に適度な運動をすること
疲れすぎも運動不足も良くない。
などが挙げられています。
これに加えて、私個人の経験からすると、体温管理も大事で、暖めすぎ(熱いお風呂やサウナに入りすぎ)も冷たすぎ(エアコンの使いすぎ)も良くありません。普段からあまり良く眠れないと言っておられる方々は参考にしてください。

関連情報
① ネイチャー誌の当該記事
掲載誌;NATURE NEWS FEATURE(ニュース特集)
掲載日;30 September 2025
題名;How to get the best night’s sleep: what the science says ~
Chuck the gadgets, the fads and the alarm. Circadian research reveals how important your body’s internal clock is to blissful slumber.
最高の睡眠を得る方法:科学が教えること ~
ガジェット、流行りの物、目覚まし時計は捨てましょう。概日リズム研究は、至福の眠りに体内時計がいかに重要であるかを明らかにしています。
著者;Lynne Peeples
**以下、同記事冒頭部分からの抜粋です**
口テープや加重ブランケットを宣伝するTikTok動画から、不眠症対策枕をランキング形式で紹介する雑誌まで、睡眠に関するアドバイスは至る所で見かけます。それもそのはず、世界中で不眠症や睡眠不足に悩む人々がおり、睡眠補助剤の市場規模は年間1,000億ドル以上にも達しているのです。

しかし、科学者たちは、オンラインハッキングや高価なツールが必ずしも効果的ではないと警告している。また、状況を改善しようとする試みが失敗すれば、悪影響が出る可能性があると、ポートランドにあるオレゴン健康科学大学の概日リズム科学者アンドリュー・マクヒル氏は指摘する。「人々が助けを求めることを躊躇し、事態が悪化する可能性がある」と彼は言う。

研究者たちは、過去50年間にわたり体内時計のネットワークを明らかにしてきた概日リズム科学から得られた教訓を指摘しています。この科学は、病原体からの防御、食物の消化、睡眠など、生理学的システムが適切なタイミングで適切な行動をとるよう準備を整えています。しかし、概日リズムはそれ自体で正確に周期を刻むわけではありません。同期を保ち、最適に機能するためには、日光、日々の習慣、その他の刺激による定期的な調整が必要です。

②『睡眠ガイド2023』については、2024年6月のニュースをご覧ください。

(2)足腰の機能に加え、手指を巧みに動かす機能も健康寿命のカギとなる
**以下、大阪大学宮坂先生の2025年10月3日のFB投稿です**
これはとても大事なことです。筑波大研究グループの仕事です。
以下、抜粋です。本研究チームは、茨城県笠間市で実施した体力測定会に参加した約1000人の高齢者を対象に、最長14年間にわたる追跡調査を行い、手指機能と要介護化リスクとの関連を検証した。その結果、手指機能が低い人は、高い人に比べて要介護化リスクが高いことが分かった。さらに、手指機能は要介護化に対し、曲線的な量反応関係を示すことを世界で初めて明らかにした。手指機能が一定水準(例:15秒間に〇印を21個付けられる)を下回ると要介護化リスクが高まる一方で、それよりも良好であっても、統計学的なリスクの減少は認められなかった。
本研究から、健康寿命の延伸には、これまで注目されてきた下肢機能だけでなく、細かな日常生活動作に必要な手指機能も重要であることが示唆された。
高齢者が手指を使うこととしては、手紙や日記を書くこと、スマホやパソコンを使うこと、書道をすること、ピアノなどの楽器に触れること、刺繍や編み物をすることなど、いろいろあります。自分ができることは続けることが大事、勿論、新たな習い事などを始めるのも良い刺激となります。

関連情報
①掲載論文
【題名】 Dose-response Association between Hand Dexterity and Functional Disability: A Longitudinal Study from the Kasama Study
(手指機能と要介護化との量反応関係:笠間スタディに基づく縦断研究)
【掲載誌・日】 Annals of Geriatric Medicine and Research . 2025 Sep 8.
【DOI】 10.4235/agmr.25.0075
**以下、論文の要旨**
背景: 手の器用さの低下は機能障害のリスクを高める可能性があるが、手の器用さと機能障害の発症との関連を検討した研究はほとんどない。本研究の目的は、地域在住高齢者における手の器用さと機能障害の発症との用量反応関係を前向きに検討することであった。

方法: 本研究は、笠間市在住の65歳以上の高齢者1,069名を対象とした。ペグ移動課題と円描画課題を用いて、手先の器用さを評価した。機能障害は、介護保険制度データベースを用いて同定した。制限付き3次スプライン解析を用いて、手先の器用さと機能障害の発症との間の用量反応関係を検証した。

結果: 平均8.5年間(最長14.0年間)の追跡調査期間中、248名(23.2%)が機能障害を発症した。各手指器用さ検査において、最も成績の低い群は、最も成績の高い群と比較して機能障害のリスクが有意に高かった(ペグ移動:HR = 1.92、95%信頼区間 = 1.29-2.87、円描画:HR = 1.66、95%信頼区間 = 1.15-2.41)。スプライン解析により、手指器用さと機能障害発症との間には、曲線的な用量反応関係が確認された。参加者の成績がカットポイント(ペグ移動:37.9/38.0秒、円描画:21/20点)を下回った場合、リスクの上昇が認められた。一方、カットポイントを上回る成績を収めた参加者では、リスクの減少は認められなかった。

結論: 高齢者の機能障害を予測するために、容易に評価できる手の器用さの検査は有用である可能性がある。用量反応曲線の関連は、適切な手の器用さを維持することが機能的自立を支援するための重要な戦略となる可能性を示唆している。

②筑波ジャーナルの当該記事(2025年9月29日付)はこちら。

(3)創造的な経験と脳時計
公開日;Published: 03 October 2025
題名;Creative experiences and brain clocks(和訳:創造的な経験と脳時計)
著者;Carlos Coronel-Oliveros, Joaquin Migeot, Fernando Lehue, Lucia Amoruso, Natalia Kowalczyk-Grębska, Natalia Jakubowska, Kanad N. Mandke, Joana Pereira Seabra, Patricio Orio, Dominic Campbell, Raul Gonzalez-Gomez, Pavel Prado, Jhosmary Cuadros, Enzo Tagliazucchi, Josephine Cruzat, Agustina Legaz, Vicente Medel, Hernan Hernandez, Sol Fittipaldi, Florencia Altschuler, Sebastian Moguilner, Sandra Baez, Hernando Santamaria-Garcia, Alfredis González-Hernández, Agustin Ibanez,他
掲載誌;Nature Communications volume 16, Article number: 8336 (2025)

論文要旨
創造的な経験は脳の健康を高める可能性があるが、その指標とメカニズムは依然として不明である。我々は、脳時計を用いて脳の健康を特徴づけた。脳時計は、実年齢からの逸脱(すなわち、脳老化の加速または遅延)を捉えるものである。M/EEGの機能的連結性(N  = 1,240)を、機械学習サポートベクターマシン、全脳モデリング、Neurosynthメタ分析と組み合わせた。この枠組みから、ダンス、音楽、視覚芸術、ビデオゲームの専門家とマッチさせた非専門家の参加者の以前に公開されたデータセット、および学習前後の研究(N  = 232)を再分析した。その結果、すべての領域で脳年齢の遅延とスケーラブルな効果(専門知識>学習)が明らかになった。専門知識とパフォーマンスのレベルが高いほど、脳年齢の遅延が大きい。加齢に脆弱な脳ハブは、特に専門知識と創造的な経験に関連する領域で、創造性に関連する連結性の増加を示した。Neurosynthによる解析と計算モデル化により、創造性に特異的な脳老化の遅延において、可塑性によって引き起こされる脳の効率性と生物物理学的結合の向上が明らかになりました。この結果は、創造性と脳の健康の間に領域非依存的な関連性があることを示唆しています。

図 1: データの特性評価、前処理パイプライン、およびデータ分析。
a カナダ、チリ、アルゼンチン、キューバ、コロンビア、ブラジル、イギリス、アイルランド、イタリア、ギリシャ、トルコ、ポーランド、ドイツの 13 か国の多様な集団 ( N = 1472) からの M/EEG データを含めました。b  EEG を使用してサポート ベクター マシン (SVM) をトレーニングするために、N = 1240 人の参加者のサブサンプルを使用しました。これらの SVM は、すべての領域にわたって参加者の脳年齢を予測するために使用されました。c残りのデータ ( N  = 232) はサンプル外検証に使用され、さまざまな種類の創造的専門知識と学習に関連する M/EEG データセットで構成されていました。これらのグループのうち 4 つは、ダンス (タンゴ)、音楽 (楽器奏者と歌手)、視覚芸術 (描画)、およびビデオ ゲーム (StarCraft 2) (専門知識についての研究 1) における創造的専門知識を表しています。さらに、ビデオ ゲーム学習 (StarCraft 2) (学習前後についての研究 2) のグループを 1 つ含めました。d SVMをトレーニングする前に、生のM / EEG信号を前処理し、正規化し、AAL脳パーセレーションを使用してソース空間に変換しました。ソース変換された信号から、すべての参加者の機能的結合マトリックスを計算しました。SVMのトレーニング時にデータ拡張を使用して、モデルの堅牢性と精度を高めました。トレーニング済みのSVMから、モデル予測と実際の年齢の差として、参加者の脳年齢ギャップ(BAG)を計算しました。BAG > 0は脳の老化の加速と解釈でき、BAG <0は脳の老化の遅延と解釈できます。図中の点とバイオリンプロットは模式的な例です。BioRenderで作成。Migeot, J. (2025) https://BioRender.com/99vpcts(EEGデバイスと脳の図)。

関連情報
NATURE NEWS
03 October 2025
Creative hobbies could slow brain ageing at the molecular level
To keep the mind young, dance the tango.
(和訳:創造的な趣味は分子レベルで脳の老化を遅らせる可能性がある
心を若く保つにはタンゴを踊りましょう)
By Gemma Conroy
タンゴの複雑さは、脳を若く保つのに特に効果的かもしれない。写真:Tempura/Getty

**以下、同記事の冒頭部分の和訳です**
複数の国のダンサー、ミュージシャン、アーティスト、ビデオゲームプレイヤーを対象にした研究によると、タンゴを踊る、ギターを弾くなど創造的な趣味に携わると、脳の老化を遅らせることができるという。

この分析では、脳時計(人の実年齢と脳の推定年齢の差を測定するモデル)を用いて、創造的な活動が神経学的若さを維持するのに役立つかどうかを評価しました。老化の影響を最も受けやすい脳領域において、創造的な活動を行うことで、脳の様々な領域とのつながりが強化されました。熟練者は経験の浅い人よりも「若い」脳を持っていましたが、創造的なスキルをゼロから学ぶことでさえ、脳の老化防止効果がありました。

この研究結果は10月3日にNature Communications誌に掲載された。

(4)熱波による老化の加速に対する長期的な影響
8月に公開されたものですが、今年の猛暑が厳しかったので、気になった論文です。
掲載誌;Nature Climate Change
公開日;Article Published: 25 August 2025
表題;Long-term impacts of heatwaves on accelerated ageing
(和訳:熱波による老化の加速に対する長期的な影響)
著者;Siyi Chen, Yufei Liu, Yuanyuan Yi, Yiling Zheng, Jun Yang, Tiantian Li, Ta-Chien Chan, Rui Duan, Shenjing He & Cui Guo

論文要旨
気候変動と人口高齢化は、ともに喫緊の世界的課題である。しかし、熱波への長期曝露と生物学的老化加速(BAA)との関連など、両者の相互作用は明らかではない。本研究では、台湾の縦断的コホート(2008~2022年)の成人24,922名のデータを分析し、線形混合モデルを用いて熱波が老化を加速することを示した。熱波は、相対的閾値と絶対的閾値の両方を用いて定義した。BAAは、生物学的年齢と暦年齢の差として算出した。熱波への累積曝露の四分位範囲の増加は、BAAの0.023~0.031歳の増加と関連していた。さらに、参加者は15年間にわたり熱波の影響に徐々に適応してきたことが示された。さらに、肉体労働者、農村住民、エアコンの少ない地域の参加者は、健康への影響をより受けやすかった。本研究は、適応能力を強化し、老化を遅らせ、健康的な老化を促進するための、的を絞った政策と介入の必要性を浮き彫りにしている。

Copilotに訊いてみた。
Q1;この論文の成果を要約してください。
A1;この論文「Long-term impacts of heatwaves on accelerated ageing」(Nature Climate Change, 2025年8月発表)は、熱波が生物学的老化を加速させる可能性を示した大規模な疫学的研究です。
🔍 研究の概要
• 対象:台湾の成人24,922人(2008〜2022年の15年間の縦断コホート)
• 方法:生物学的年齢(BA)と暦年齢(CA)の差を「年齢加速(BAA)」として定義し、熱波曝露との関連を分析
• 熱波の定義:相対的・絶対的な気温閾値に基づく
🌡️ 主な成果
• 熱波の累積曝露が四分位範囲ごとに増加するごとに、BAAが0.023〜0.031年増加1
• 肉体労働者、農村住民、エアコン普及率が低い地域の人々は、老化への影響を受けやすい
• 15年間で参加者はある程度の適応を示したが、健康への悪影響は完全には消えなかった
🧭 意義と提言
• 気候変動と人口高齢化という二つのグローバル課題が交差する領域に新たな知見を提供
• 脆弱な集団への保護政策や医療資源の配分が重要
• 今後は住宅環境や屋外活動時間などの変数も含めたさらなる検証が必要[2]
まるで、暑さが時間の流れを少しだけ早めてしまうような…そんな印象を受ける研究ですね。🌿 このテーマ、社会政策や都市設計にも深く関わってきそうですが、どの視点から掘り下げてみましょうか?

 

2-2)AIの応用事例4つとAIのリスクについての1つの話題
AIの活用はますます広がっていますが、AIの大規模言語モデルLLMのリスクも指摘されています。以下、最近のニュースです。
(1)人工知能副操縦士による脳コンピューターインターフェース制御
掲載誌:Nature Machine Intelligence (2025)
公開日:Published: 01 September 2025
表題:Brain–computer interface control with artificial intelligence copilots(和訳:人工知能副操縦士による脳コンピューターインターフェース制御)
著者:Johannes Y. Lee, Sangjoon Lee, Abhishek Mishra, Xu Yan, Brandon McMahan, Brent Gaisford, Charles Kobashigawa, Mike Qu, Chang Xie & Jonathan C. Kao

要旨(Chromeによる和訳)
運動脳コンピュータインターフェース(BCI)は、麻痺のある人の移動とコミュニケーションを支援するために神経信号をデコードします。過去20年間で重要な進歩があったにもかかわらず、BCIは臨床実現への大きな障害に直面しています。それは、BCIのパフォーマンスがコストとリスクを大幅に上回らなければならないということです。BCIのパフォーマンスを大幅に向上させるために、人工知能(AI)副操縦士がBCIユーザーと協力してタスク目標を達成する共有自律性を使用します。私たちは、脳波信号をデコードする非侵襲性BCIシステムでこのAI-BCIを実証します。まず、畳み込みニューラルネットワークとReFITのようなカルマンフィルターを使用したハイブリッド適応デコード手法を提供し、健常者と麻痺のある参加者が、デコードされた脳波信号を介してコンピューターのカーソルとロボットアームを制御できるようにします。次に、カーソル制御タスクとロボットアームのピックアンドプレースタスクでBCIユーザーを支援する2つのAI副操縦士を設計します。我々は、麻痺のある被験者がカーソル操作においてターゲットヒット率を3.9倍向上させ、ロボットアームを制御してランダムなブロックをランダムな場所に順次移動させるというタスクをAI-BCIによって実現できることを実証しました。これはAIコパイロットなしでは不可能なタスクです。AIコパイロットの性能向上に伴い、共有自律性を備えたBCIはより高い性能を発揮する可能性があります。

関連情報
掲載誌:NATURE NEWS
掲載日:02 September 2025
表題:AI-powered brain device allows paralysed man to control robotic arm ―
The human user and AI have shared autonomy and constantly interact to complete tasks.
(和訳:AI搭載の脳デバイスで麻痺の男性がロボットアームを制御 ―
人間のユーザーと AI は自律性を共有し、タスクを完了するために常に相互作用します。)
著者:By Rachel Fieldhouse
研究者が、同僚が着用している脳コンピューターインターフェースヘルメットの電極に導電性ジェルを塗布しています。非侵襲性脳デバイスの性能は、AIと組み合わせることで向上する可能性がある。写真:ジャン=ピエール・クラトット/AFP via Getty

部分麻痺の男性が、人工知能(AI)によって部分的に制御される非侵襲性の脳デバイスを使用することで、ロボットアームを操作することに成功したという研究報告。AI搭載デバイスを使用することで、男性は画面操作による作業において、デバイス単体で使用した場合よりも4倍の精度で作業を行うことができた。

(2)ジェネレーティブトランスフォーマーでヒト疾患の自然史を学ぶ
Nature article open access
Published: 17 September 2025
Learning the natural history of human disease with generative transformers(和訳:ジェネレーティブトランスフォーマーでヒト疾患の自然史を学ぶ)
Artem Shmatko, Alexander Wolfgang Jung, Kumar Gaurav, Søren Brunak, Laust Hvas Mortensen, Ewan Birney, Tom Fitzgerald & Moritz Gerstung

要旨(Chromeによる和訳、脚注番号削除)
ヘルスケアにおける意思決定は、患者の過去と現在の健康状態を理解し、将来の経過を予測し、最終的には変えることに依存しています。人工知能 (AI) 手法は、大規模な健康記録コーパスから病気の進行パターンを学習することにより、このタスクを支援することが期待されています。ただし、その可能性は大規模に十分に調査されていません。ここでは、GPT 6 (生成的事前学習済みトランスフォーマー) アーキテクチャを変更して、人間の病気の進行と競合する性質をモデル化します。このモデル Delphi-2M を 40 万人の英国バイオバンク参加者のデータで学習し、パラメーターを変更せずに 190 万人のデンマーク人からの外部データを使用して検証します。Delphi-2M は、各個人の過去の病歴を条件として、既存の単一疾患モデルに匹敵する精度で、1,000 を超える疾患の発生率を予測します。 Delphi-2Mの生成的な性質は、将来の健康状態を総合的に推定するサンプリングも可能にし、最大20年間の潜在的な疾病負担について有意義な推定値を提供し、実際のデータを見たことのないAIモデルのトレーニングを可能にします。説明可能なAI手法は、Delphi-2Mの予測に関する洞察を提供し、疾病の章内および章間における併存疾患のクラスターと、それらが将来の健康に及ぼす時間依存的な影響を明らかにするだけでなく、トレーニングデータから学習されたバイアスも明らかにします。要約すると、トランスフォーマーベースのモデルは、予測的および生成的な健康関連タスクに適しており、人口規模のデータセットに適用可能であり、疾病イベント間の時間的依存関係に関する洞察を提供し、個人別の健康リスクの理解を向上させ、精密医療アプローチに情報を提供できる可能性があります。

関連情報
掲載誌:NATURE NEWS
掲載日:17 September 2025
表題:Which diseases will you have in 20 years? This AI accurately predicts your risks
A modified large language model called Delphi-2M analyses a person’s medical records and lifestyle to provide risk estimates for more than 1,000 diseases.
(和訳:20年後、あなたはどんな病気にかかっているでしょうか?このAIはあなたのリスクを正確に予測します。
Delphi-2M と呼ばれる改良された大規模言語モデルは、個人の医療記録とライフスタイルを分析し、1,000 を超える病気のリスク推定値を提供します。)
著者:By Gemma Conroy
英国の40万人のデータで訓練された人工知能システムは、20年間でがんやその他の多くの病気を発症する可能性を推定できる。写真:ブルックス・クラフト/コービス/ゲッティ

新しい人工知能 (AI) ツールは、1,000 種類以上の病気の発症リスクを予測することができ、場合によっては数十年先の予測も提供します。

(3)ゲノム言語モデルを用いた新規バクテリオファージの生成設計
掲載誌:bioRxiv
公開日:Posted September 17, 2025.
表題:Generative design of novel bacteriophages with genome language models
(和訳:表題:ゲノム言語モデルを用いた新規バクテリオファージの生成設計)
著者:Samuel H. King、Claudia L. Driscoll、David B. Li、Daniel Guo、Aditi T. Merchant、 Garyk Brixi、 Max E. Wilkinson、 Brian L. Hie
doi: https://doi.org/10.1101/2025.09.12.675911

要旨(Chromeによる和訳)
多くの重要な生物学的機能は、単一の遺伝子からではなく、ゲノム全体にコード化された複雑な相互作用から生じる。ゲノム言語モデルは生物学的システムを設計するための有望な戦略として浮上してきたが、ゲノム全体のスケールで機能的な配列を生成する能力は未だ検証されていない。本稿では、生存可能なバクテリオファージゲノムの初めての生成設計を報告する。我々は最先端のゲノム言語モデルであるEvo 1およびEvo 2を活用し、溶解ファージΦX174を設計テンプレートとして用いて、現実的な遺伝子構造と望ましい宿主指向性を持つ全ゲノム配列を生成した。AI生成ゲノムの実験的試験により、進化的に大きな新規性を持つ16個の生存可能なファージが得られた。クライオ電子顕微鏡法によって、生成されたファージの1つが、そのカプシド内で進化的に遠いDNAパッケージングタンパク質を利用していることが明らかになった。複数のファージが、増殖競争および溶解速度論においてΦX174よりも高い適応度を示している。生成されたファージのカクテルは、3種類の大腸菌株におけるΦX174耐性を迅速に克服し、急速に進化する細菌病原体に対するファージ療法の設計における本アプローチの潜在的な有用性を実証しました。本研究は、多様な合成バクテリオファージの設計のための青写真を提供し、より広くは、ゲノムスケールにおける有用な生体システムの生成設計の基盤を築くものです。

関連情報
掲載誌:NATURE NEWS
掲載日:19 September 2025
表題:World’s first AI-designed viruses a step towards AI-generated life
Scientists used AI to write coherent viral genomes, using them to synthesize bacteriophages capable of killing resistant strains of bacteria.
(和訳:世界初のAI設計ウイルスはAI生成生命への一歩
科学者たちは AI を使って一貫性のあるウイルスゲノムを記述し、それを使って耐性菌株を殺すことができるバクテリオファージを合成しました。
著者:By Katie Kavanagh
T2 ファージに群がった大腸菌 B 細胞の断面を示す、色を強調した透過型電子顕微鏡写真。
AI設計のバクテリオファージは宿主の細菌に感染し、殺傷する能力を持っていた。クレジット:リー・D・サイモン/サイエンス・フォト・ライブラリー

(4)頭の中にAIを埋め込む「テレパシーに近い」デバイス
Xへの投稿(2025年9月8日)
alterego
@alterego_io (動画)https://x.com/alterego_io/status/1965113585299849535
Introducing Alterego: the world’s first near-telepathic wearable that enables silent communication at the speed of thought.
Alterego makes AI an extension of the human mind.
We’ve made several breakthroughs since our work started at MIT.
We’re announcing those today.

Alterego のご紹介: 思考のスピードで静かなコミュニケーションを可能にする、世界初のテレパシーに近いウェアラブルです。
Alterego は AI を人間の心の延長にします。
MIT で私たちの研究が始まって以来、私たちはいくつかの進歩を遂げてきました。
本日はそれらを発表します。

関連情報
掲載誌:NATURE NEWS
掲載日:18 September 2025
表題:The ‘near-telepathic’ device that puts AI in your head
AlterEgo’s neural-interface device is non-invasive and is being tested in people with multiple sclerosis and motor neuron disease.
(和訳:頭の中にAIを埋め込む「テレパシーに近い」デバイスー
AlterEgo の神経インターフェース デバイスは非侵襲性であり、多発性硬化症および運動ニューロン疾患の患者を対象にテストされています。)
著者:By Chris Simms
アルターエゴの最高経営責任者、アルナブ・カプール氏がウェアラブルデバイスのデモンストレーションを行っている。提供:アルターエゴ

ウェアラブルデバイスは、「アレクサ、今何時?」と声に出して言うことを過去のものにするかもしれない。人工知能(AI)ニューラルインターフェース「AlterEgo」は、ユーザーが心の中で言葉を発するだけで、静かにコミュニケーションをとれるようにする。耳に装着するこのデバイスは、インターネットとのリアルタイムコミュニケーションを通じて日常生活を便利にする。「共有したい考えに対してだけテレパシーの力を与えてくれます」と、マサチューセッツ州ケンブリッジに拠点を置くAlterEgoのCEO、アーナブ・カプール氏は語る。カプール氏は9月8日にこのデバイスを発表した。

(5)嘘をつき、騙し、殺人を企てる AI モデル: LLM は実際どれほど危険なのか?
最後の話題は、大規模言語モデルLLMの危険性に関するものです。

掲載誌;NATURE NEWS FEATURE
掲載日;08 October 2025
表題;AI models that lie, cheat and plot murder: how dangerous are LLMs really?
(和訳:嘘をつき、騙し、殺人を企てる AI モデル: LLM は実際どれほど危険なのか?)
Tests of large language models reveal that they can behave in deceptive and potentially harmful ways. What does this mean for the future?
(和訳:大規模言語モデルのテストにより、それらが欺瞞的かつ潜在的に有害な動作をする可能性があることが明らかになりました。これは将来にどのような意味を持つのでしょうか?)
著者;Matthew Hutson
        イラスト: アナ・コヴァ

**以下、記事の初めの部分からの抜粋です**

AIは殺人を行うことができるのか?

これは、 AI企業アンスロピックが6月に発表した報告書を受けて、一部の人工知能(AI)専門家が検討してきた疑問です。チャットボットの頭脳である大規模言語モデル(LLM) 16種類をテストした研究チームは、最も人気のあるAIの一部が仮想環境において、明らかに殺人的な指示を出すことを発見しました。AIは、自分たちを交代させようとしていた架空の幹部を殺害するような行動をとったのです。

これは、法学修士(LLM)による悪質な行為の一例に過ぎません。他のいくつかの研究や事例では、AIが開発者やユーザーに対して「陰謀を企てる」、つまり自身の利益のために密かに戦略的に不正行為を行っていることが示されています。AIは指示に従っているふりをしたり、自己複製を試みたり、恐喝を脅迫したりすることさえあります。
(以下、続く)

 

2-3)岐阜大学医学部下畑先生の最新医学情報(2025年10月)
・レビー小体型認知症も検査だけで診断できる時代に入る!?
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年10月4日のFB投稿です**
脳脊髄液αシヌクレイン・シーズ増幅アッセイ(αSAA)は,レビー小体型認知症(DLB)の診断における大きな転換点になるかもしれません.スペインの物忘れ外来に通院した640名(DLB 92例,アルツハイマー病;AD 337例など)を対象に,脳脊髄液αSAAの診断精度とADにおけるαシヌクレイン合併病理を評価しています.この結果,αSAAはDLBに対し感度95.7%,特異度93.2%,全体診断精度93.6%(!)という高い成績を示しました.図1は各診断におけるαSAA陽性率を示したものです.健常対照(CU)は0%,非神経変性認知障害(NNCI)は1%,前頭側頭葉変性症(FTLD)は5.1%,ADは9.5%,DLBは95.7%が陽性です.つまりDLBで高率に陽性となる一方,ADやFTLDでは少数にとどまることが理解できます.先日,ADのタウバイオマーカーによる診断の話題をご紹介しましたが(https://pkcdelta.hatenablog.com/entry/2025/08/27/052343),DLBも検査だけで診断できる時代に入りそうな様相です.
もう1点,気になったのはAD患者の9.5%にαシヌクレイン合併病理が示唆される点です.このような症例では幻視やREM睡眠行動異常症などDLB的な臨床症候の頻度が増え,かつAPOE ε4保有率の上昇,血漿p-tau217やGFAPの上昇といった特徴的なプロファイルを示すことも明らかにされました.気になったのは,なぜAPOE ε4保有率が上昇するのかですが,ε4を持つことは全身性かつ疾患非依存的な炎症状態をもたらす「免疫的背景因子」である可能性が指摘されており(https://pkcdelta.hatenablog.com/entry/2025/08/04/062124),複数のタンパクを巻き込んだco-pathologyを来すものと推測されます.
さて話題は戻ってDLBの検査による診断に関して,著者らは「検査だけでDLBを確定診断できるわけではない」と強調しています.その理由として,DLBでもαSAA陰性例が存在すること,本研究で病理解剖による確認がなされていないこと,共病理の存在によって臨床症状が純粋型からずれ,より多彩で複雑な臨床像になりうることを挙げています.やはり脳脊髄液αSAA(図2)の結果は,臨床所見や画像検査と総合して解釈する必要があります.とは言え,脳神経内科医が不足する地域などでは強力な診断補助ツールになるものと考えられます.
Esteller-Gauxax D, et al. α-Synuclein Seed Amplifications Assay in a Cohort With Cognitive Impairment. Neurology. 2025;105:e214040. doi.org/10.1212/WNL.0000000000214040
追記;DLB 92例のうち陰性はわずか4例(4.3%)で,その多くがCDR 0.5で軽症かつ発症早期であり,臨床症状も非典型(RBDが少ない)であったと記載されています.よって発症早期から高率に陽性となりますが,病理分布が限局している例では陰性になることもあるようです.

・筋萎縮性側索硬化症に潜む免疫の異常:原因遺伝子産物C9orf72が自己免疫の標的に!!
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年10月6日のFB投稿です**
筋萎縮性側索硬化症(ALS)はこれまで神経細胞の変性や病因タンパクの蓄積に注目して研究されてきましたが,近年は「免疫系の関与」が新たな焦点となっています.最新のNature誌に,ALSにおける自己免疫反応の存在を初めて明確に示した重要な報告がなされています.
研究は,アメリカのLa Jolla Institute for Immunologyを中心とする国際共同チームによって行われました.ALS患者40名と健常対照28名の末梢血を解析し,ALSで遺伝子変異が報告されているTDP-43,SOD1,そしてC9orf72という3種類のタンパク質に対するT細胞応答を比較しました.その結果,ALS患者ではC9orf72に対してのみ著明な免疫応答がみられ,健常者の約4倍の反応を示しました(図1).これらの反応は主にCD4陽性T細胞によって引き起こされ,炎症を抑えるIL-5やIL-10といったサイトカインが多く放出されていました(図2). ALS群でIL-5およびIL-10の産生が優勢で,炎症性サイトカインであるIFNγの割合が減少していることが明確に示されています.
また,C9orf72遺伝子に変異(6塩基リピートの異常伸長)をもつ患者では,変異をもたない患者よりもC9orf72を認識するT細胞が強く活性化し,IL-10を多く分泌する(図3左).さらに,C9orf72を標的とするT細胞のIL-10応答が強いALS患者ほど,疾患の進行が緩やかで長く生きる傾向にあることが示されました(図3右).
研究チームは,C9orf72全体に複数のエピトープが存在することも突き止めました.特にアミノ酸41〜95,266〜295,361〜445の領域で免疫原性が高く,これらのペプチドは多くのHLAクラスII分子に結合できる「プロミスキュア(promiscuous)」=「多くのHLA分子に結合できる性質」をもつことが示されました.これは,多くの人でC9orf72が免疫の標的となり得ることを意味します.さらに,パーキンソン病やアルツハイマー病患者でもC9orf72に対する免疫反応は見られましたが,ALSとは異なり炎症性のIFNγ反応が優位でした.この違いは,疾患ごとに免疫系の反応の方向性が異なる可能性を示唆しています.
この研究は,ALSが単なる神経変性疾患ではなく,免疫系の異常を伴う自己免疫性疾患的な側面をもつことを初めて証明したものです.特に,抗炎症性IL-10応答が強い患者の予後が良好であったことから,炎症と制御のバランスがALSの進行速度を決定する鍵であることが示唆されます.将来的には,C9orf72に特異的な免疫反応を抑える抗原特異的Treg細胞療法など,免疫を標的とした新たなALS治療法の開発が期待されます.
つまりC9orf72に対する自己免疫反応は,ALSの中核的変化(C9orf72異常・タンパク蓄積)に対して二次的に起こり,その免疫反応の質(炎症性か制御性か)が,疾患の進行速度や予後を左右している可能性があると考えるのが妥当ではないかと思います.すなわち「発症を促す免疫」ではなく,「症候の進行に影響する免疫」と言えるのではないかと思います.
Michaelis T, et al. Autoimmune response to C9orf72 protein in amyotrophic lateral sclerosis. Nature. Published online 2025. doi.org/10.1038/s41586-025-09588-6

・アルツハイマー病発症前の低レベルのAβ蓄積はむしろ脳にとってむしろ良いこと!?―ヒト・コネクトーム・プロジェクト研究―
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年10月9日のFB投稿です**
先日のNHKの番組内(https://pkcdelta.hatenablog.com/entry/2025/09/07/075304)で,アルツハイマー病(AD)の病因蛋白とされるアミロイドβ(Aβ)には善玉としての働き(ヘルペスウイルスに対する防御作用)があることが紹介されました.今回,Journal of Neurochemistry誌に米国ミネソタ大学から,Human Connectome Projectの一貫として,画像解析からもAβは善玉である可能性が報告されました.
60歳以上の認知機能が正常な35名を対象に,アミロイド PETによるアミロイドβ沈着量と詳細な認知機能検査,身体指標,および多面的なMRI指標との関連を解析した研究です.PETではAβ陽性が11例,陰性が24例でした.陽性例も蓄積は軽度で,AD患者に見られるような高度の蓄積ではありませんでした(図1左).
まず分かったことは,Aβ沈着はアミロイド前駆タンパク(APP)の転写パターンとの対応が見られず,正の相関を示したのは海馬傍回のみでした.つまりAβはどうも局所(蓄積した場所)で産生されるのではなく,他の領域から移動・拡散してきた可能性(!)が示唆されます.またAβ蓄積量は年齢や認知・体力指標と負の関係を示さず,むしろBMI・握力・認知機能の得点と弱い正の相関を示した!よって蓄積している方が良さそうということです.
さらにMRI指標との関連では,微細構造の健全性指標(FAやT1w/T2w比)や脳血流(CBF)はAβ量と正の相関を示し,Aβが多いほど組織構造は健全で,血流が多い増加という結果でした(図1右).逆に組織障害を示唆する拡散指標(MD, ODI, WVF)は負の相関を示しました.つまりAβが多い人ほど水の動きが制限され,組織構造がしっかりしているという傾向を認めました.以上より認知機能が正常な人ではAβが神経毒性を持たない可能性が示唆されました.「Aβ=神経毒」という定説を覆すもので,低レベルのAβ蓄積が脳にとって必ずしも悪いものではない,むしろ善玉である可能性を示しています.
そうなると,アミロイドβ抗体薬の効果を最大限に発揮させるために,発症前から治療を開始するというアイデアは,むしろ逆効果となる可能性があります.しかしこの点について,著者らは断定することはできないと言っています.つまりどこかのタイミング(もしくは閾値)で,Aβが病的に転じるか,あるいは防御的役割が破綻するという可能性があるためです(図2).今後はより大規模かつ長期の追跡研究やタウ測定を組み合わせた検証が必要と考えられます.いずれにせよ,発症前,より早期の抗アミロイドβ療法は慎重であるべきと考えられます.
Filip P, et al. Clinical and MRI Correlates of β-Amyloid Load Inconsistent With Its Presumed Neurotoxicity in Cognitively Healthy Ageing. Journal of Neurochemistry. 2025;169:e70241. https://doi.org/10.1111/jnc.70241

・知っておくべき睡眠医学の最前線@『BRAIN and NERVE』2025年10月号
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年10月11日のFB投稿です**
特集テーマとして「脳神経内科と睡眠医学」を企画いたしました(https://amzn.to/4nLZPXZ).現代の臨床現場では,睡眠の質が神経疾患の発症や経過に密接に関わることが明らかとなりつつあります.一方,日本では睡眠医学を専門的に扱う神経内科医がまだ少なく,診療や教育の両面で体系的な知識の共有が求められています.私は以前,頑張って日本睡眠学会総合専門医の資格を取ったのですが,睡眠医学の知識が役立つ臨床の場面はとても多いです.本特集では,睡眠の基礎神経科学から臨床応用までを幅広く取り上げ,脳神経内科医が日常診療で直面する課題に役立つ内容を目指しました.
巻頭の鼎談(写真)では,私が司会を担当し,アジア睡眠学会会長の井上雄一先生,日本神経学会睡眠セクション・チーフの鈴木圭輔先生とともに「睡眠医学の診療と教育」について議論しました(写真).睡眠医学の重要性と脳神経内科との関連,専門医の地域偏在・不足という問題点,社会・行政経も提言,若手医師へのメッセージなど,非常に勉強になり,かつ読み応えのある内容になっていますので,ぜひご一読いただければと思います.
続く総説では,櫻井武先生らによるレム睡眠制御神経回路の最新知見,酒井紀彰先生による「睡眠と脳脊髄液」の解説など,基礎研究と臨床の橋渡しとなるテーマを取り上げています.また,認知症・脳血管障害・自己免疫性脳炎・多系統萎縮症など,神経疾患と睡眠障害の関連を多角的に検討した論文を収録し,睡眠障害が神経疾患の病態や予後にいかに影響するかを明らかにしています.さらに,レム睡眠行動異常症やレストレスレッグス症候群,ナルコレプシーなど,神経内科医が見逃してはならない疾患群についても,第一線の専門家による最新の解説が並びます.
本特集を通じて,睡眠を「神経機能の重要な指標」として捉える視点が広がり,臨床神経学の新たな展開につながれば幸いです.ぜひ,多くの先生方にお読みいただければと思います!
収録原稿一覧
• 【鼎談】睡眠医学の診療と教育(井上雄一×鈴木圭輔×下畑享良)
• レム睡眠を制御する神経回路メカニズム(渡邉綾乃,櫻井 武)
• 睡眠と脳脊髄液(酒井紀彰)
• 知っておくべき睡眠関連疾患の評価法(小栗卓也)
• 認知症と睡眠──双方向的関係について(三島和夫)
• 自己免疫性脳炎と睡眠障害(大野陽哉,木村暁夫,下畑享良)
• 脳血管障害と閉塞性睡眠時無呼吸症候群(赤岩靖久,宮本智之)
• 多系統萎縮症と睡眠関連呼吸障害(中山秀章)
• 神経疾患と特発性レム睡眠行動異常症(西川典子)
• レム睡眠行動障害以外の睡眠時随伴症(野村哲志)
• レストレスレッグス症候群(坪井義夫)
• ナルコレプシーの病態機序(小野太輔,神林 崇)
• 神経疾患による症候性ナルコレプシー(鈴木圭輔,藤田裕明,高橋嶺馬,柏木誠史)
『BRAIN and NERVE』Vol.77 No.10(2025年10月号)
特集:脳神経内科と睡眠医学
https://amzn.to/4nLZPXZ
https://www.igaku-shoin.co.jp/journal/detail/41670

・お気に入りの「ハダカデバネズミ」の長寿の秘密,ついに解明!!ヒトの不老に道を開くか?
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年10月12日のFB投稿です**
ハダカデバネズミという小さな地下げっ歯類は,生物学の常識を覆す不思議な生き物です.体重わずか数十グラムにもかかわらず,寿命は37年に達し,マウスの10倍以上です.しかも老化に伴う死亡率の上昇がほとんど見られず,自然発症のがんもほぼ存在しません.酸素が乏しい地下トンネルで暮らすために,低酸素でも代謝を保つ能力をもちます.私は脳卒中の基礎研究を行っていたので,低酸素状態に強いこのネズミに高い関心を持っていました(→2017年のブログ「ハダカデバネズミの特殊能力と脳梗塞治療」を参照).後輩の池田哲彦先生が誕生日プレゼントに贈ってくださったハダカデバネズミのぬいぐるみを今も大切に部屋に飾っています.

さてこの生物の長寿の秘密をめぐっては,これまでにさまざまな仮説が提唱されてきましたが,2025年10月のScience誌に掲載された中国・同済大学のJiangらの論文は,ついにその分子基盤の一端を明らかにしました.研究チームは,DNA損傷を感知する酵素cGAS(cyclic GMP–AMP synthase)に注目しました.
通常,ヒトやマウスのcGASは,細胞の外から入り込んだDNAを感知して免疫反応を起こす「センサー」として働きます.ところが,最近の研究で,この酵素の一部は核の中にも存在し,DNAの損傷修復にも関わっていることがわかってきました.しかし意外なことに,ヒトやマウスのcGASは修復を助けるのではなく,相同組換え修復という主要なDNA修復メカニズムを抑えてしまうのです.その結果,DNAの安定性が損なわれ,老化やがんの一因になると考えられています.つまり,ヒトを含む哺乳類では,cGASはDNA修復を妨げ老化を招く酵素として働いているのです.
これに対し,ハダカデバネズミでは,cGASのC末端にある4つのアミノ酸(S463,E511,Y527,T530)が進化の過程で置換されていました.このわずかな構造変化が,酵素の働きを根本から変えていたのです.ヒトやマウスでは,cGASはDNA損傷のあと一時的に核内に移動しますが,すぐにクロマチンから離れ,修復を妨げます.一方,ハダカデバネズミのcGASはDNA損傷後も長時間クロマチンにとどまり,DNA修復因子であるFANCIやRAD50を引き寄せて修復を促進する足場として働いていました.つまり,この4つのアミノ酸の置換によって,cGASは「DNA修復を妨げる酵素」から「DNA修復を助ける酵素」へと働きが逆転していたのです.
この分子レベルの変化は,ほかの生物にも明確な効果をもたらしました.果実ハエ(みばえ)にハダカデバネズミ型のcGASを導入すると寿命が延び,マウスにAAVベクターで導入すると,フレイル指数が低下し,白髪や臓器老化が軽減しました.血中の炎症マーカーであるIL-6やIgGも減少し,肝臓や腎臓では老化細胞が減少していました.これらの効果は,4つのアミノ酸をヒト型に戻すと消失したことから,進化的に獲得されたこの分子改変こそが長寿の鍵であることが示されました.
ハダカデバネズミは,上述したようにがん抵抗性,低酸素耐性,社会性行動,痛覚鈍麻など,多くの「異端の哺乳類的特徴」を併せ持ちます.今回の研究は,その生物学的異端性の根底に,DNA修復を最適化する分子進化があることを示した点で画期的だと思います.ヒトの不老研究においても,この小さなげっ歯類が大きなヒントを与えてくれるかもしれません.
Chen Y, et al. A cGAS-mediated mechanism in naked mole-rats potentiates DNA repair and delays aging. Science. 2025;390:eadp5056. doi.org/10.1126/science.adp5056

・頭痛は単なる血管拡張や筋緊張ではなく,神経・血管・脳内ネットワークが連鎖的に反応して生じる!
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年10月15日のFB投稿です**
頭痛の背後にあるしくみはとても複雑であることが分かりつつあります.Brain誌に発表された総説は,片頭痛,群発頭痛,発作性片側頭痛(Paroxysmal hemicrania)・持続性片側頭痛(hemicrania continua),そして後頭神経痛について,「どのように痛みが生まれるのか」を分子レベルから脳のネットワークまで総合的に議論したまさに力作です.「なるほど!」と非常に勉強になりました.
総説では,まず頭痛の多くが「三叉神経・血管系」という共通の回路で説明できることを示しています.頭部や顔面の血管周囲に分布する三叉神経の終末が刺激されると,CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド),PACAP,VIP,サブスタンスPなどの神経ペプチドや,グルタミン酸,セロトニンといった神経伝達物質が放出され,血管を拡張します.その結果,周囲に炎症が起き,神経がさらに興奮して痛みの信号を強めてしまいます.これを「神経血管性炎症」と呼びます.この反応は一度始まると連鎖的に広がり,脳幹にある三叉神経尾側核(trigeminal nucleus caudalis;TNC=三叉神経脊髄路尾側亜核)から視床,大脳皮質へと痛みの情報が伝えられます.TNCは頭痛の病態の中枢構造であり,これらの神経ペプチドの働きを統合し,片頭痛や群発頭痛などさまざまな頭痛疾患をつなぐ共通の「中継ハブ」として機能しています.
また近年のMRI研究では,頭痛を「脳全体のネットワークの異常」として理解する動きが進んでいるようです.例えば片頭痛では,痛みを感じる帯状回,感情を処理する扁桃体,そして視覚をつかさどる後頭葉との結びつきが過剰になります.一方,群発頭痛では,体内時計を制御する視床下部の活動が異常化し,発作の周期性や季節性に関与しています.さらに頭痛患者では,脳が「休んでいるとき」に働くネットワークにも異常が見られます.たとえば,思考の背景活動を担うデフォルトモードネットワーク,刺激の重要性を判断するサリエンスネットワーク,そして体の感覚や運動を調整する感覚運動ネットワークが,それぞれ過剰に結びついたり,逆に連携が弱まったりしていることが報告されています.こうしたネットワークの異常は,痛みに対する過敏さだけでなく,注意の集中困難や倦怠感,気分の変化など,頭痛に伴う多様な全身症状の背景を説明する手がかりになります.
図は頭痛性疾患のメカニズムをまとめた模式図です.大きく5つの経路で構成されています.これらは互いに連動し,頭痛の痛み・自律神経症状・周期性・前兆などを生み出します.
1.三叉神経終末から三叉神経尾側核(TNC)への経路(ピンク)
頭部や硬膜の血管周囲に分布する三叉神経の末端(V1-3)が刺激されると,CGRPやPACAP,サブスタンスPなどの神経ペプチドが放出され,血管拡張と炎症を引き起こす.この刺激は三叉神経節(TG)を経てTNCに伝わり,頭痛の痛み信号の起点となる.
2.TNCから視床・皮質への上行経路(黄色~灰色)
TNC(二次ニューロン)が交叉して上行し,視床(thalamus)を介して一次体性感覚野(SI),二次体性感覚野(SII),島皮質(INS),前帯状皮質(ACC),および背外側前頭前野(dlPFC)に信号を送る.SIとSIIは痛みの感覚的側面を,INSとACCは情動的側面を処理し,dlPFCは痛みに対する注意・認知・抑制制御を担う.これらの領域が連動して活動することで,痛みが意識的に知覚され,中枢感作が形成される.
3.三叉神経・自律神経反射経路
TNCの活動が上唾液核(SSN)を介して翼口蓋神経節(SPG)に伝わり,涙腺や鼻腺が刺激される.これにより涙や鼻閉といった自律神経症状が起こり,特に群発頭痛や片側頭痛性疾患に特徴的である.
4.視床下部・概日リズム経路
視床下部の視交叉上核(SCN;図中になし)が網膜からの光刺激を受け取り,SSNやTNCの活動を調整する.この経路は発作の時間帯や季節性を決める体内時計の中枢として働き,群発頭痛の周期性を説明する.
5.皮質拡延性抑制(CSD)経路
視床からの入力や皮質の過興奮により,後頭葉を起点に神経脱分極の波が広がり,一過性の血流変化とともに前兆(アウラ)を引き起こす.CSDは三叉神経系を再刺激し,CGRP放出を促すことで痛みを増幅する.
疾患ごとに分子・ネットワークの視点から考えると,片頭痛では後頭葉で起こるCSDが前兆の原因となり,CGRPや一酸化窒素(NO)の放出が痛みを増幅します.群発頭痛では視床下部の異常活動がリズム的発作を引き起こし,PACAPやCGRPの変動を伴います.発作性片側頭痛・持続性片側頭痛では,これらの経路が慢性的に刺激されており,インドメタシンが有効なのは神経炎症の経路の抑制を介していると考えられます.後頭神経痛では末梢神経の圧迫や感作が痛み信号を三叉神経系に送り込み,中枢での感作とネットワーク異常を引き起こします.このように,すべての頭痛は共通の回路を持ちながらも,関与する分子・領域・ネットワークの組み合わせの違いで症状が異なるのです.
これらの研究の成果は,新しい治療法の開発にも直結しています.CGRP関連抗体はこの経路を直接標的にし,発作頻度を減らす効果が示されています.また迷走神経刺激(nVNS)や後頭神経刺激(ONS)といった神経刺激療法は,脳幹や視床を介して三叉神経系の過剰な興奮を抑制し,痛みネットワーク全体のバランスを整えることが目的です.これらの治療法は「末梢から中枢ネットワークを調整する」アプローチであり,神経活動の連鎖を再同期させることで過敏な状態をリセットする仕組みと考えられています.
以上のように,頭痛はもはや単なる血管拡張や筋緊張ではなく,神経・血管・脳内ネットワークが連鎖的に反応する「脳全体の過敏状態」としてとらえられる時代になったと言えるのだと思います.
Kollenburg L, et al. Bridging the gap: molecular mechanisms, regional activity, and connectivity in headache disorders. Brain. 2025; doi.org/10.1093/brain/awaf361

・パーキンソン病は地球規模の環境病である―三大原因としての農薬,トリクロロエチレン,PM2.5―
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年10月18日のFB投稿です**
パーキンソン病(PD)の患者数は世界的に急増しており,いまやパンデミックと呼ぶべき状況にあります.その要因の多くは遺伝ではなく環境にあると考えられています.Lancet Neurology 誌最新号に掲載された米国ロチェスター大学のDorsey教授らによる総説は,PDの発症に関わる主要な環境毒性物質とその予防の可能性について論じています.とくに3つの環境要因が問題であると指摘しています.
第1は農薬です.パラコート,ロテノン,有機塩素系殺虫剤などであり,パラコート散布地域に住む人の発症リスクは2倍に上昇するそうです.ロテノンはミトコンドリア複合体Iを阻害してドパミン神経を選択的に障害します.胎児期や乳児期の曝露によるエピジェネティック変化が後年の神経変性を誘発する可能性も指摘されています.図1は,2000年から2020年にかけての世界の農薬使用量の変化を示しています.全体としてなんと約300%の増加がみられ,特に南米,アジア,アフリカで顕著です.日本も増加傾向にあり,欧州諸国のような削減政策は十分に進んでいません.
第2はトリクロロエチレン(TCE)およびパークロロエチレン(PCE)です.これらはドライクリーニングや脱脂剤として長年使用されてきた有機溶剤です.米海兵隊キャンプ・ルジューン基地では,これらの化学物質を含む汚染水への曝露歴をもつ兵士のPD発症率が70%高く,平均2年間の短期間曝露であっても,約34年の潜伏期間を経て発症したと報告されています.TCEはミトコンドリア障害やLRRK2キナーゼの異常活性化を引き起こし,吸入曝露では少量でも黒質ドパミン神経変性を生じます.
第3は大気汚染です.PM2.5への曝露とPDリスクの上昇は,カナダ,韓国,スイス,英国などの研究で確認されています.PM2.5は嗅神経経路から脳内に侵入し,酸化ストレスや炎症,αシヌクレインの線維化を誘発します(ブログ参照;https://pkcdelta.hatenablog.com/entry/2025/09/09/042758).図2は「2019年の世界PM2.5曝露マップ」で,50μg/m³を超える濃度の地域がアジアやアフリカを中心に広がっています.世界人口の99%がWHO基準(年平均5μg/m³未満)を超える空気を吸っており,日本の平均値は10〜15μg/m³と欧米(5μg/m³前後)より明らかに高く,「健康に悪い空気」を吸っている国の一つです.著者らは,この曝露こそがPDが最も急速に増加している神経疾患となった原因だと指摘しています.
これら2つの図は,「PDは地球規模の環境病である」という主張を明確に裏づけています.日本も例外ではなく,農薬使用量と大気汚染の両方が高い水準にあり,将来的な神経疾患増加リスクを抱えています.著者らは,吸入経路の重要性にも触れています.嗅球から病変が始まることが多い点は,吸入毒性物質の侵入経路と一致していますし,胎児期や乳児期の曝露,職業性曝露,遺伝的素因との相互作用などがリスクを増幅すると考えられます.
予防策はあるのでしょうか?防護具の使用,汚染の監視と是正,安全な代替物質の導入により,曝露を減らすことは可能です.また現状では,研究資金のほとんどが治療研究に偏り,予防研究への投資はわずか2%にとどまっているそうです.Dorsey教授らは,予防原則を政策に組み込み,パラコートやTCEなど明らかに有害な化学物質を段階的廃止すべきだと訴えています.つまりPDは「予防可能な疾患」であり,原因物質への曝露を減らすことができれば,つぎの世代をこの疾患から守ることができる――それが著者らの強いメッセージです.
Ray Dorsey E, et al. Environmental toxicants and Parkinson’s disease: recent evidence, risks, and prevention opportunities.Lancet Neurology 2025; 24: 976–986.https://www.thelancet.com/…/PIIS1474-4422(25…/fulltext

関連情報
10月30日のFB投稿(岐阜大学脳内抄読会 第99回)で、「歩行中のUターン速度はパーキンソン病発症の予測因子となる」という面白い論文を紹介されています。

・アデュカヌマブによるアミロイドβ除去は脳表近くに限られている!
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年10月20日のFB投稿です**
アデュカヌマブは,アルツハイマー病に対してアミロイドβ(Aβ)を標的にした疾患修飾療法として開発されたモノクローナル抗体です.2015年にBiogen社とEisai社が共同で臨床試験を開始し,Aβプラークを大幅に減少させることがPETで確認されました.臨床的な認知機能改善効果は一貫しなかったものの,一部のサブグループで若干の改善効果が示されたことから,Biogen社は2021年に米国FDAへ承認申請を行い,同年6月に条件付きで迅速承認を受けました.ところが,その有効性に関して国内外で強い議論を呼び,副作用としてのARIAの頻度の高さも問題となり,最終的にBiogen社は2024年1月に販売を終了し,開発を打ち切りました.その後に登場したレカネマブやドナネマブは,より選択性が高く副作用の少ない抗体として設計されていますが,その基礎となったのがアデュカヌマブです.今回紹介するLancet Neurology誌に掲載された剖検研究は,アデュカヌマブを投与された5例と未治療12例の剖検脳を比較し,この抗体が実際に脳のどこでどのようにAβを除去していたのかを初めて詳細に示したものです.
治療群の全例がAPOE ε4を保有し,うち2例がPSEN1変異を有していました.PETでAβが6〜81%低下していたにもかかわらず,剖検ではAβ除去は脳表近くに限局していることが明らかになりました.図上では,最初の10例(治療群5例と未治療群5例)に対して汎Aβ抗体によるDAB染色が行われています.未治療群では大脳皮質全層にAβ沈着がみられますが,治療群では大脳皮質の最表層(第I層)でのみ著明なAβ減少が認められ,下層ではAβが依然として残存していることが分かります.
図下では,同一症例の中前頭回を対象にしたAβaa1–8抗体による多重蛍光免疫染色が示されています.この抗体はAβペプチドのN末端(1〜8番アミノ酸)を認識する最も一般的な「全Aβ量」を示すマーカーで,アデュカヌマブ自身もこの領域を標的にしているため,この抗体で染まるAβが実際に除去対象になっていると考えられます.右側のボックスプロットで分かるように,Aβaa1–8は第I層で有意に低下していますが(p<0.01),全層では減少がみられませんでした.Aβ42でも同様の有意な低下がみられ,ピログルタミル型AβおよびAβ40も表層で減少傾向を示しました.
この結果は,アデュカヌマブが分子量約150 kDaと大きく,血液脳関門をほとんど通過できない(脳実質内到達は血中の0.1%未満)ことと関係しています.そのため,主に軟膜や皮質表層の血管周囲からわずかに脳内へ浸透し,その届く範囲に作用が集中すると考えられます.今回の剖検研究は,まさにこの「表層優位」の作用分布を病理学的に裏づけた結果となりました.
この「表層偏重」の除去はPET画像との乖離を生みます.アミロイドPETでは,表層のAβが減少すると信号全体が低下し,Aβが広範に除去されたように見えます.しかし実際の病理では,深部皮質層に多くのAβが残っており,PETで減少が見えても全層の除去を意味するわけではないことが明らかになりました.著者らはこの点を強調し,「PETシグナルの減少は部分的除去を反映しているに過ぎない」と述べています.これはAβ抗体治療の効果判定におけるPET画像の限界を示す重要な知見です.
また,ARIAを呈した症例ではMRIで確認された部位に対応して,皮質表層や髄膜下血管周囲に鉄沈着を伴う微小梗塞,補体活性化(C5b–C9),マクロファージやミクログリアの浸潤(CD68陽性)がみられました.これらはアミロイド血管症関連炎症(CAAri)と共通する病理像であり,Aβ除去に伴う血管壁の炎症がARIA発生の要因であると考えられます.さらに,死亡までの期間が長い症例では再沈着を思わせるAβ再蓄積も認められ,治療後にも進行性変化が続くことが示唆されました.
この層特異的なAβ除去の現象は,アデュカヌマブに限らず,他のAβ抗体であるレカネマブやドナネマブでも生じている可能性があります.これらの抗体も血液脳関門を越えて広く脳内に拡散することが確認されていないためです.今後のAβ抗体療法では,血液脳関門を通過してより広く脳内に拡散できる抗体設計や投与法の改良が求められます.
Boon BDC, et al. Neuropathological changes and amyloid-related imaging abnormalities in Alzheimer’s disease treated with aducanumab versus untreated: a retrospective case–control study. Lancet Neurology. 2025;24:931–944. https://www.thelancet.com/…/PIIS1474-4422(25…/fulltext

・進行性核上性麻痺の典型例Richardson症候群は均一ではなく,臨床的・病理的に多様性をもつスペクトラムである
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年10月22日のFB投稿です**
進行性核上性麻痺(PSP)の典型型Richardson症候群(PSP-RS)は,2017年に策定されたMDS-PSP診断基準では均一な症候群として定義されていますが,米国Mayo Clinicのグループから実はそうではないのだとする報告がなされました.
著者らはMDS-PSP基準でprobable PSP-RSと診断した118例を対象に,認められた各症候の関連を可視化したネットワーク解析と,患者群を分類するクラスター解析を行い,PSP-RSが均質な集団かどうかを検証しました.その結果,まず16種類の症状は5つのクラスター(①光過敏,②認知・遂行機能障害,③振戦,④眼球運動障害,⑤無動・固縮・失行)に分類されました.興味深いのは,無動・固縮が強い患者ほど眼球運動は比較的保たれる一方で(図の赤い線=負の相関),認知機能障害とは負の相関を示しました.つまり無動・失行が重いほど認知機能が悪いということです.また,光過敏や振戦は他の症状と関連せず独立して存在し,眼球運動障害群では垂直方向の運動障害と水平方向の運動障害が密接に結びついていました.以上の結果から,PSP-RSの症候は無秩序の組み合わせで出現するのではなく,特定の組み合わせで出現するということが分かりました.
患者群を分類するクラスター解析では2群に分かれました.Cluster Iは症状が重く,典型的なPSP-RS像を示しました.一方,Cluster IIは症状が軽く,臨床的にはPSP-CBSやPSP-Pなど,他のPSP亜型と診断される割合が高い群でした.注目すべきは,Cluster IIでは剖検でPSP病理を伴わない例(具体的にはCBD,MSA,GGTなど)が有意に多かった点です(p=0.03).つまり,MDS-PSP基準でPSP-RSと診断されても,実際にはPSPではない異なる病理をもつ症例が一部含まれうるということになります.ただ個人的に関心がある自己免疫性脳炎は含まれておらず,典型例では考慮しなくて良いと言えるということだと思います.
この論文のメッセージは明確です.PSP-RSは単一の病型ではなく,臨床的にも病理的にも多様性をもつということです.昨今,診断基準を万能と考えてしまう傾向がありますが,例外があることを認識する必要があると思います.症候の組み合わせや経過,画像・バイオマーカーを通じて真のPSPを見抜く姿勢が求められるのだと思います.
Kumar M, et al. Evaluating the Homogeneity of the PSP-RS Syndrome beyond Core Features. Movement Disorders Clinical Practice. 2025;12(10):1560–1570. doi.org/10.1002/mdc3.70134

・「自己免疫性精神病」を独立した疾患単位とみなすべきではない!
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年10月23日のFB投稿です**
Journal of Clinical Investigation誌の最新号に掲載された総説です.抗NMDA受容体脳炎の発見者であるJosep Dalmau教授らが,「自己免疫性精神病(autoimmune psychosis)」という概念を独立した疾患として扱うべきではないと明確に述べています.
著者らは,まず精神病という症候群が統合失調症に限らず,自己免疫性や炎症性疾患,さらには神経疾患の一部としても出現し得ることを示しています.中でも抗NMDA受容体脳炎では,幻覚,妄想,興奮,不眠などの精神症状で初発することが多く,統合失調症と誤診されることもあります.その病態は,抗NMDA受容体抗体が神経細胞表面の受容体を内在化させ,シナプス伝達を可逆的に障害することによるものです.つまり,炎症による破壊ではなく,免疫反応によって神経の情報伝達そのものが変化し,その結果として精神症状が生じるという新しい仕組みが明らかになったわけです.
図は「精神病の3つの神経化学的仮説」を示すものです.ドパミン過活動仮説,NMDA受容体機能低下(グルタミン酸)仮説,セロトニン仮説の3つを示し,抗NMDA受容体脳炎がグルタミン酸仮説に合致することを示しています.抗体が前頭皮質のGABA介在ニューロン上のNMDA受容体を内在化させると抑制性制御が失われ,興奮性ニューロンから中脳腹側被蓋野(VTA)への入力が過剰になります.その結果,報酬系である中脳辺縁系ドパミン経路が過活動となり,幻覚や妄想といった精神病症状が出現します.この回路異常は,ケタミンなどのNMDA受容体拮抗薬が誘発する幻覚モデルと同じ機序であり,抗体が精神症状を引き起こす病態機序を明確に示すものです.著者らは,このように免疫と神経伝達の関係を適切に理解することが,今後の精神医学研究の発展につながると強調しています.
一方で,「自己免疫性精神病」という名称の乱用には強い警鐘が鳴らしています.抗NMDA受容体脳炎やSLEなど既知の自己免疫疾患による精神症状をすべて包括してしまうと,診断が曖昧になりかねないということです.また,抗体の血清検査を無分別に精神疾患患者に行うと,非特異的な陽性反応を示す例が生じ,実際には自己免疫性脳炎でない患者にまで免疫治療が行われる危険があると指摘します.実際,これまでの研究では統合失調症や気分障害の患者におけるNMDAR抗体陽性率は約1%で健常者と差がありません.脳脊髄液で抗体陽性であった患者のほとんどは臨床的に抗NMDA受容体脳炎と診断可能ですが,血清のみ陽性の患者は非特異的反応である可能性が高く,診断的価値は低いとされています.
著者らは,「自己免疫性精神病」という言葉は一見わかりやすいものの,科学的定義があいまいで,既知の自己免疫性脳炎や全身性疾患を一括して扱うことで診断の特異性を損ね,臨床の混乱を招くおそれがあると述べています.精神病と免疫の関係を探ること自体は重要ですが,その第一歩は既知の自己免疫性脳炎を正確に診断し,精神症状との関連を検証することにあるとしています.また,初発精神病や抗精神病薬不耐例で異常行動や意識変容がみられる場合には,脳波,MRI,脳脊髄液検査を組み合わせて抗体性脳炎を除外することが推奨されています.結論として,自己免疫が関与する精神症状は確かに存在しますが,「自己免疫性精神病」という新しい疾患単位は現時点で存在しないということになります.
Cabrera-Maqueda JM, Planagumà J, Guasp M, Dalmau J. Autoimmune neuropsychiatric disorders manifesting with psychosis. J Clin Invest. 2025;135(20):e196507. https://doi.org/10.1172/JCI196507

・機能性運動障害に対するリハビリのコツ ―Physio4FMD試験から学ぶ―
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年10月26日のFB投稿です**
先日,機能性神経障害(FND)の患者さんをご紹介いただき,とくにリハビリの進め方についてご相談を受けました.適切にご説明するため,2024年にLancet Neurology誌に報告されたPhysio4FMD試験をあらためて読み直しました.この研究は,FNDに対する「脳の予測モデル」に基づいた新しいリハビリの方向性を示した,非常に示唆に富むものです.
FNDは「体を動かしたいのに動かない」「勝手にふるえてしまう」などの症状を呈します.脳に器質的な異常はないものの,脳が体の動きを誤って予測してしまうことが原因と考えられています.私たちの脳は,常に「これから何が起こるか」を予測しながら運動や感覚を制御しています.つまり脳は日常生活の中で,「予測」と「実際の感覚入力」を比較しながら行動を調整しているのです.例えば,「右手を上げる」と予測したとき,実際に手が上がるという感覚が一致すれば,脳は「自分が動かした」と理解します.この仕組みを説明する理論が「ベイズ的予測モデル(Bayesian model)」です.しかしFNDではこの予測と感覚がずれてしまい,「動かそうとしても動かない」「勝手に動く」という誤作動が起こります.このずれ(予測誤差)を修正し,脳が正しい動作感覚を再び学び直すことがリハビリの目的になるということです.ですから通常のリハビリとは大きくアプローチが異なります.
論文のPhysio4FMD試験は,英国で行われた多施設ランダム化比較試験で,「確実なFMD」と診断された成人355例を対象としました.9回の専門的理学療法とフォローアップを行う群と,地域の一般的理学療法に紹介する群に無作為化され,主要評価項目は12か月後のSF-36身体機能スコアでした.最終的にコロナによる中断がなかった241例(専門群138,通常群103)が解析対象となりました.結果としては,身体機能スコアには有意な差はみられませんでしたが,自己評価による症状改善(CGI-I)では専門的理学療法群が一貫して良好な結果を示しました.6か月の時点で改善または著明改善と答えた人は専門群で大多数を占め(63%対28%,オッズ比4.7),12か月後でもその効果は持続していました(59%対39%,オッズ比2.3)(図).精神的健康スコアや診断に対する信用も専門群で向上し,重篤な副作用は報告されず,安全に実施できる治療であることが確認されました.
Physio4FMDで行われた専門的理学療法は,従来の筋力強化や動作矯正とは異なり,脳の誤作動を修正するように設計されています.リハビリは三つの柱から構成されていました.
① 症状の理解を助ける教育;体は壊れていないが脳の信号伝達が一時的に乱れていることを説明し,不安を軽減する.
② 注意の再方向づけ;「手を動かそう」と意識するほど動けなくなるため,音やリズム,視覚的目標など外的刺激に注意を向けながら,自動的な動作を誘発する.
③ 自己管理と再発予防;ワークブックを用いて,自宅での練習や再発時の対応を学ぶ.
理学療法士は全員が5日間の集中トレーニングと標準化マニュアルを修了し,患者の理解と自己効力感を高めるための関わりを重視しました.「動かそう」と強く意識すると,脳は過剰に予測を立ててしまい,感覚とのずれが拡大します.この逆転現象がFNDの特徴であり,リハビリでは「どう動かすか」ではなく「どう意識しないか」を練習することが重要となります.症状の改善は「自分の体を再び信じられるようになること」によりもたらされます.よってリハビリの目的は,まさにその「自己効力感の回復」にあります.体が壊れていないという理解を深めること,動作を意識しすぎずに外的な目的に集中すること,わずかな成功体験を大切にして脳に「できた」という感覚を刻むこと,症状が出たときは深呼吸して落ち着き,再発しても「前より早く戻れる」と信じること,これらがリハビリの実践的ポイントです.
以上をまとめると,リハビリの具体的な指針は次の通りです.
• 体が壊れているわけではないと理解し,安心して取り組むこと.
• 「動かそう」と意識せず,音やリズム,物体操作など外の目的に注意を向けること.
• 「手を動かす」ではなく,「ボールを投げる」「風船を打つ」と考えること.
• 少しでも動けたら「できた」と実感し,その成功体験を積み重ねること.
• 症状が出たときは焦らず深呼吸し,「また動けるようになる」と思い出すこと.
• 再発しても「以前より早く回復できる」と考え,落ち着いて対処すること.
Nielsen G, et al. Specialist physiotherapy for functional motor disorder in England and Scotland (Physio4FMD): a pragmatic, multicentre, phase 3 randomised controlled trial. Lancet Neurol. 2024 Jul;23(7):675-686. doi.org/10.1016/S1474-4422(24)00135-2

・胎児を守る抗てんかん薬の選択――フランスにおける10年の劇的な変化
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年10月28日のFB投稿です**
抗てんかん薬(antiseizure medications;ASM)は,てんかんのほか気分障害,慢性疼痛,片頭痛などにも広く用いられていますが,一部の薬剤は胎児に奇形や神経発達障害をもたらすことが知られています.フランスのEPI-PHARE研究チームは,全国母子レジストリ「EPI-MERES」を用い,2013〜2021年に終了した約870万件の妊娠を解析し,抗てんかん薬の胎児曝露の推移を明らかにしました.
この期間に少なくとも1種類の抗てんかん薬に曝露された妊娠は55,801件で,全妊娠の0.64%にあたりました.薬剤を安全性に基づいて分類すると,「最も安全」とされるラモトリギンとレベチラセタムへの曝露が約半数,「リスク不明群」(プレガバリン,ガバペンチン,エトスクシミド,ラコサミド,ペランパネル,ゾニサミドなど)が約3分の1,「リスク既知群」(バルプロ酸,バルプロミド,カルバマゼピン,トピラマート,フェニトイン,フェノバールなど)が約4分の1を占めていました.
図に示されるように,2013年から2021年の間で薬剤の構成は劇的に変化しました.バルプロ酸とバルプロミド(バルプロ酸のプロドラッグ)への曝露妊娠はそれぞれ−84%,−89%と急減し,リスク軽減策が効果を上げていることが明らかになりました.代わって,ラモトリギンとレベチラセタムといった安全性の高い薬剤が大きく増加し,それぞれ+22%,+64%の上昇を示しました.ラモトリギンはもともとてんかんに多く使用されていましたが,この10年間で気分障害に対しても用いられる割合が増加したようで,2013〜2015年の15%から2019〜2021年には23%へと拡大しました.これは,ラモトリギンが「胎児への安全性が比較的高い薬」として,精神科領域でも選択される傾向を反映しています.私も良く認識していなかったのですが,日本でもその適応に「双極性障害における気分エピソードの再発・再燃抑制」があります.
一方,プレガバリンやガバペンチン,新規抗てんかん薬(ラコサミド,ゾニサミドなど)の使用は急増しました.とくにプレガバリンでは,妊娠全期間を通じての曝露が+171%に増加しており,胎児がより高用量・長期間曝露されていることが懸念されます.カルバマゼピンやトピラマートの使用も緩やかに減少したものの,依然として2019〜2021年の3年間だけでそれぞれ約600件の出産曝露がみられました.トピラマートは海外では片頭痛にも使用されています.
母体背景をみると,抗てんかん薬曝露妊娠の母親は非曝露群よりも高齢であり,また低所得層の割合が高い傾向にありました.とくにリスク既知薬および不明薬の使用群では,低所得層が約18%に達し,安全な薬剤群(約14%)よりも多く,社会的格差の影響が示唆されました.
著者らは,バルプロ酸曝露の劇的減少は,2015年以降に強化された欧州医薬品庁の妊娠回避プログラムの成果であるとしながらも,その一方で,安全性が十分に検証されていない薬剤の使用が拡大している現状を強調しています.特にプレガバリンや新規抗てんかん薬の使用増加は,今後のリスク評価が急務であると述べています.また,社会的に不利な立場にある女性ほどリスクの高い薬剤を使用している傾向があるため,妊娠前カウンセリング,避妊支援,医療アクセス改善の必要性が強調されています.日本においても同様の処方傾向が生じている可能性があります.妊娠可能年齢の女性への抗てんかん薬処方の在り方を見直す契機となる重要な論文です.
Shahriari P, et al. Trends in Prenatal Exposure to Antiseizure Medications Over the Past Decade: A Nationwide Study. Neurology. 2025;105:e213933. doi.org/10.1212/WNL.0000000000213933

(作成者)峯岸 瑛(みねぎし あきら)