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2026年5月のニュース

今年も5月は、NPWA会員の皆さんの活動は活発で多様です。学術ニュースは、「脳の回復機能」と「イメージトレーニング効果の可視化」に関する本邦発の2つの論文の紹介、下畑先生からの最新医学情報、「連載シリーズ:切り替えの物語」のNo.2, No.3です。

1.2026年5月の活動状況
中嶋  佳奈恵さんの投稿
『園児も頑張っています!!』

台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
你是不是在公園或平地看過有人拿著「兩支杖」走路,心裡想著:「走路就走路啊,幹嘛還要拿登山杖來健走?」其實這兩支杖是「健走杖」,是歐美流行多年,有效運用到全身肌肉的「健走杖運動」!單純健走多數用到的是下肢約60-70%肌群,但若是加上健走杖,能夠動用全身約90%的肌群,有效提升整體肌力與協調性。這種運動方式不僅適合各年齡層,還能幫助改善姿態,減輕下肢負擔,提升步態穩定性,降低跌倒風險。如果你也喜歡健走,那麼試試看再加上健走杖,一起體驗輕鬆的全身健走運動吧!❤️

名古屋フィジカル・フィットネス・センターさんの投稿
今日は、ポールウォーキングを用いてのバランス力向上エクササイズをご案内いたしました❗️健康づくりのためにウォーキングや筋トレは一般的ですが、特に中高年者にとっては、このバランス力は大事にしたい体力です❗️なぜなら、転倒予防につながるからです。そしてさらに、動的バランス能力を上げることがポイントです。転倒も歩いていて、走っていてと、何か動作をしている時に転倒します。ですから、動作中のバランス力が大切になってきます。そこでこのポールを用いると、安全を確保する中でこの動的バランス力を刺激することが容易にできます‼️

校條 諭さんの投稿
玉川上水沿いを風に吹かれて 5月の気まポ(気ままにポール歩き)は、京王井の頭線久我山駅に集合、玉川上水沿いに緑道を進んで、井の頭公園まで2本のポールで歩きました。約5km。 やや強めの風ながら緑道の木々に守られて、快適なポール歩きでした。 沿線に以前あったという養鶏場(産みたての卵販売)や野菜直売所がなくなっていたのは残念でした。 井の頭公園は緑深く、場所場所が多彩な顔で、何度来ても気持ちのよい場所です。 公園を出て近くの八十八夜という名前のレストランで、カンパイ&ランチしました。生ビール組は10人のうち3人。なお、ランチには都合でウォーキングには参加できなかった北村さんも参加しました。 ※写真は今回も半分以上、盟友田村和史君撮影です。

中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より 5月駒場例会でした。 初夏(ちょっと早いか)を思わせる快晴青空の下60余名の参加者を迎え公園〜牧場とポールウォーキング三昧でした。 長中短の3コースに体験コースに分かれての闊歩を〜❗️ 皆さん〜 〜フレイル〜何こそ元気元気印の笑顔満載の散策でした。

スマイルチームさんの投稿
2026.5.5〜10 活動記録 ☺︎中屋敷チェアエクササイズ®︎ 14名 ☺︎スマイルPW 14名 ☺︎スマイルチーム上溝自主練 16名 ☺︎相模原市文化協会祭役員会議 ☺︎相模原市文化協会役員会議 ☺︎青空PW 8名 ☺︎スマイル上溝名簿、チラシ作成 ☺︎上溝地域包括支援センター打合せ ☺︎CSW担当者打合せ

佐藤 ヒロ子さんの投稿
【賑やかに 爽やかに】 2026/5/11 #船橋ウォーキングソサイエティ #シニアポールウォーキング 歩行力と体力に差があるシニア 外歩きと室内に分かれて 〇室内組は歓声が上がります じゃんけんとボール投げ 勝負、計算、連想と 頭と身体をフル回転で大盛り上がりです。 〇外歩きは感性を豊かに 新緑の旭町緑地公園と熱田神社 パワースポットでエネルギー充電です。

田村 芙美子さんの投稿
快晴 三浦ネットのグループと逗子神武寺往復ポールウォーキング。前回はNWのメンバーと参りましたが、なんと当日<うっかり><肝心の>ポールを忘れてしまって、冷や汗をかいた😨💦のを思い出しました。 令和6年、開創1300年を迎えた 醫王山 来迎院 神武寺 (いおうざん らいごういん じんむじ) • 天台宗本山 比叡山延暦寺三浦薬師如来霊場札所 第1番 本尊 薬師如来 (伝 行基菩薩作) 724年正月、聖武天皇の命により 行基菩薩が十一面観音・薬師如来・釋迦如来の尊像を彫刻・奉安し、開山された寺院。 遠い奈良時代こんな山奥まで木材を運び立派な寺院を建てた当時の人達の信仰心に頭が下がります。 そして源頼朝政子の信仰厚かったお寺。さらに本堂の横から上に登るとハイキングコースになっていて鷹取山と摩崖仏があります。 古代感溢れた素晴らしい神社。

Masako Shinchiさんの投稿
ウォーキングポールを相棒に 仲間とめぐる小さな旅 ぽる旅第5弾👣 予定は変わるよどこまでも♩ 見たかった笠間稲荷の八重の藤はすでに散り、お楽しみの落語の会は理由あって延期に😅さてどうするー?ということで急遽内容を変更した今回のぽる旅 笠間という地の懐の深さと、人の温かさを感じる旅となりました😊 /今回巡った場所/ ①笠間日動美術館「97歳セツの新聞ちぎり絵展」(7月20日まで展示 ) ②真浄寺 笠間城の建築物で唯一現存する八幡台櫓見学 ③かさま歴史交流館井筒屋 笠間城に関する情報発信やグッズ販売、様々な展示も楽しみ ④笠間城址ハイキング 佐白公園〜本丸〜千人溜 貴重な石垣跡を見ながら ⑤本日のお昼 鍋屋さんのおにぎりセット🍙🍙600円!と幸せ団子 急な変更に、小中学校時代の同級生や先輩、元同僚の方々が次々と力を貸してくれました。地元で活躍する人たちの温かさとパワーにただただ感動する旅でした 楽しかったーー❗️ 次回のぽる旅は石岡市です😊 茨城に遊びに来てみたくなったかな?

佐藤 ヒロ子さんの投稿
#坪井公民館主催  【#健康ウォーキング講座】 2026/5/13 公民館は坪井近隣公園の中?  なんて素敵な立地条件。 室内で集中して基礎指導  仕上げはお隣の公園に移動   青い空の下で    歩きは前へ前へ 反応も早く呑み込みも早い    参加者の皆様 とても楽しい時間になりました。 次回は更にレベルアップをします。 お楽しみに〜〜 #船橋ウォーキングソサイエティ #講師派遣でウォーキング基礎指導

田村 芙美子さんの投稿
イベントの多い5月。もう夏のような暑さですがおかわりありませんか。 今年もこちらもサポートいたします。ご参加どなたでもOKです。✨華✨齢と共に自分の身体に目を向けたいですね。

長谷川 弘道さんの投稿
ポールウォーキング🚶 週2回レッスンを 担当させていただいている Ohana fitness studio 主催の ポールウォーキングイベントに 参加してきました😊 いつも元気パワーをいただける 長谷川先生のご指導は、 とにかく分かりやすくて、 楽しい〜‼️✨ 今回は、 ポールウォーキングの前に 身体の癖チェックや、 歩き方のポイントも学べて、 とても勉強になる時間でした。 指導者としても、 「これ、レッスンに活かしたい!」と 思う学びがたくさんで、 体感しながら学べた贅沢な時間🍀 お客様も、インストラクターも 同じレベルからスタート! みんなでワイワイって良いですね 身体を動かしながら、学び合い、刺激をもらい合い、自然と笑顔になれる。 改めて、こういう時間っていいな…と感じた一日でした😊 開催してくださった智香子先生、 講師の長谷川先生、 イントラ仲間の向井先生、 ご参加された皆さま。 ありがとうございました✨ #Ohanafitnessstudio #ポールウォーキングイベント #midori #身体の調律師 #足から身体を整える

中村 理さんの投稿
3年後大学1年生等のPW体験会〜❗️

柳澤 光宏さんの投稿
毎年開催している工場祭!昨年にちょっと届かなかったが700名を越える皆さんにご来場いただきました。ありがとうございますm(__)m 開場30分前には長蛇の列。並ばれる方のお目当てはアウトレット品。トレッキングポールは30分でSOLD OUTだったみたい。 今年導入したスタンプラリー。社長を探してスタンプ押してもらおうというメニューがあり、子どもから大人まで声をかけられとても忙しかった(^.^)社長を探せは好評だったみたいだけど、来場いただいた多くの知人とゆっくり話すことも出来なかったので、来年はどうしようかな~? 社員の一人ひとりが持ち場で力を発揮して、無事終わることができました。

佐藤 ヒロ子さんの投稿
【目指そう!     理想の腕ふり】 2026/5/19  スマートバンドを使って  身体の隅々を気持良くストレッチ  筋トレもバランスとれた良い具合  仕上げは  スマートバンドを肩にかけて  のウォーキング  ダイナミックで美しい   フォームへ変化しました   #船橋ウォーキングソサイエティ #美姿勢ウォーキング

田村 芙美子さんの投稿
午前中 広町緑地PWでは 真夏のように汗をかきました。とても速歩きとは言えないお喋りぶらぶら歩き。楽しくコミュニケーションがとれているのでよしとしますか。小さなお友達が遊んでいる横で彼らに負けないくらい ジジババはポールゲームに興じ皆さんまだまだ元気です。 帰宅後メンバーさんから頂いたあやめとバビアナという南アフリカの苗を植えつけ。ひまわり🌻の種も漸く蒔くことができましたが、気付いたら7時過ぎてびっくり。セットバックで7本の木を伐採した後の庭に色とりどりの花が増えてきます。

佐藤 ヒロ子さんの投稿
坪井公民館主催 【健康ウォーキング講座】    全2回終了 2026/5/20 1回目の「基本の歩き」に引き続き 2回目は   「効き目のあるウォーキング」   (中強度)とは  講堂で歩きと速歩きの違いを   観て・やってみて  隣接する坪井近隣公園で実践 習うより慣れろで実際歩くと 身体が素直に反応しスムーズに  そして皆様の笑顔が   ますます輝きます 新たな出会いに感謝  坪井の皆様   何時迄もお元気でね

中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より 東御市/八重原PW散策〜 地元/依田コーチのプランのロングコース(約5km) ショートコース(約2km) に分かれての総勢50名越えの参加者の皆さんでした。 朝からの青空の元、明神池の周り〜 八重原台地の田んぼ〜白土いも畑〜ワイン用ブドウ畑〜小麦の畑〜他今年の農業始まりを観賞しながらのポールウォークでした。

田村 芙美子さんの投稿
臨時ポールウォーキング教室。広町の皆さんと大船フラワーセンターに集合。蓮の大樽広場でウォーミングアップのあとばら園~芝生広場~温室~~~散策。園内のレストラン?でカレーやうどん、ソフトクリームなど好き好きに。チリアヤメ、黄金マサキを庭に欲しい。

佐藤 ヒロ子さんの投稿
【習志野市民カレッジ   ウォーキング講座】 2026/5/28    プラッツ習志野中央体育館   市民の町づくりの意識を醸成し、 生涯を通じて地域で活動できる 礎及び仲間を作る目的に集まっ た受講生30名。 2年目は実技中心に各分野の専門家 による講義として呼んで頂きました。男性が過半数越えは珍しく そのせいでしょうか?  反応が大人しい(笑)

 

来月以降の開催
長岡智津子さんの投稿
写真1件

 

2.PW関連学術ニュース
今月は、脳に関する2つの本邦発の研究論文を紹介します。
2-1)「壊れた脳は治らない」を覆す~脳が自然に治る力を持続させる方法を発見~
**以下、東京科学大学の2026年5月14日付プレスリリースからの抜粋です**
ポイント
脳卒中を起こして脳組織が損傷しても、失った脳機能を取り戻すための回復メカニズムが働くことを発見しました。
脳卒中患者さんの脳は、この回復メカニズムを発症2ヵ月程度で失ってしまいますが、その原因となる因子がZFP384というタンパク質であることを突き止めました。
研究チームはZFP384の働きを抑える薬(核酸医薬品)を開発し、回復メカニズムを失わせずに持続させられることを発見しました。
脳に備わっている「治る」ためのメカニズムを、失わせずに持続させられることから、脳の病気の後遺症を減らす(なくす)治療薬の開発が期待されます。

概要
脳が病気によって壊れると、手足が動かなくなる、言葉が話せなくなる等、脳機能を失います。しかし脳が壊れても、リハビリテーションなどによって、失った脳機能を部分的に取り戻すことができます。このような脳機能回復は多くの患者さんで見られますが、脳が壊れてから2ヵ月程度で回復力を失ってしまう(後遺症が残ってしまう)ことが知られていました。「どうして回復力を失ってしまうのか」、東京科学大学(Science Tokyo)総合研究院 難治疾患研究所 神経炎症修復学分野の津山淳助教と七田崇教授らの研究グループは、東京都医学総合研究所、九州大学、フライブルク大学(ドイツ)と共同で、この長年の謎に挑みました。

研究チームは今回、脳細胞が回復力を獲得して失うまでの一連のメカニズムを解明しました。脳細胞は脳が壊れた後、1ヵ月程度は回復力を持ち続けますが、次第に脳が正常な(脳が壊れる前の)状態に戻ろうとする影響を受けて、ZFP384[用語1]というタンパク質が作られることが分かりました。失った脳機能をまだ十分に回復できていないのに、ZFP384が脳細胞の回復力を失わせてしまっていたのです。

研究チームは、ZFP384の働きを防ぐ薬(アンチセンス核酸[用語2])を開発しました。これをマウスに投与すると、脳が壊れてから1週間後~1ヵ月後に治療開始した場合でも、回復力を失わせずに持続させられることを発見しました。本研究による成果は、「臓器に備わった自然な回復力を、失わせずに持続させられる」ことに成功したものです。これまで回復が困難とされてきた脳をはじめとして、臓器の機能を取り戻す治療法開発に新たな道を開くものです。

本成果は、5月13日付(英国時間)の「Nature 」誌に掲載されました。

図1. 本研究の概要
図3.(左図、右図)ASO-Zfp384 を投与すると、脳梗塞後の神経症状が改善する。
(中央図)ASO-Zfp384 によって神経栄養因子など、修復性遺伝子の発現を持続促進できる。

論文情報
掲載誌:Nature
タイトル:Sustaining microglial reparative function enhances stroke recovery
(ミクログリアの修復機能を維持することは、脳卒中からの回復を促進する)
著者:Jun Tsuyama, Seiichiro Sakai, Kumiko Kurabayashi, Ayaka Nakamura, Eri Tanaka, Yuichiro Hara, Ito Kawakami, Makoto Tsuda, Takahiro Masuda, Marco Prinz, Hideya Kawaji, and Takashi Shichita
DOI:10.1038/s41586-026-10480-0

関連情報
本論文については、岐阜大学の下畑先生が、詳細な解説をFB投稿されています。当ニュースの「下畑先生からの最新医学情報」の2026年5月18日投稿をご覧ください。

 

2-2)ブレイン・コンピューター・インターフェースを活用して イメトレ中の脳状態を可視化することで運動能力を向上 ― 健常者のパフォーマンス向上やスポーツ、人間拡張分野への応用に道 ―

**以下は、2026年4月13日付の慶応大学のニュース・リリースからの抜粋です**

慶應義塾大学理工学部生命情報学科の岩間清太朗専任講師(有期)、牛場潤一教授、および松岡敦也(修士2年、研究当時)らの研究チームは、ブレイン・コンピューター・インターフェース(Brain–Computer Interface; BCI)を活用し、実際の体の動きを伴わない「運動イメージ訓練(いわゆるイメトレ)」中に、自分の脳状態を可視化し、思念を操る練習を行うことで、脳状態の切り替え能力が向上し、実際の運動パフォーマンスが改善することを明らかにしました。

発表のポイント
ポイント1: イメトレ中の脳内状態を、AIを使って可視化して訓練
・ これまでは本人もトレーナーも、実際の脳状態を知ることができませんでしたが、BCIを利用することでリアルタイムに可視化できました。
・ 脳内に電極を埋め込むことなく、ウェアラブルセンサ(脳波計)とAIだけで実現できた点が画期的です。
ポイント2: 実際に運動せず、イメトレだけで運動能力が向上
・ これまでは、ジムや競技場、楽器やキーボードなど、実際にトレーニングするための「場所」や「道具」が必要で、訓練環境を整備する必要がありました。
・ 時間や場所にとらわれず、好きなときに、好きな場所で、BCIを使って脳の能力を拡張できるようになりました。
ポイント3: 体の動きを司るコントローラーである脳を直接鍛えることに成功
・ これまでのテクノロジーを活用したトレーニングでは、電極を体に貼って計測する心電図・心拍計測あるいは筋電図を利用したものがありましたが、今回は「脳」を対象にしたトレーニングを提案しました。
・ 全身の筋肉に司令を送る脳そのものの活動を訓練すると、実際のパフォーマンスが向上することを示した点が画期的です。

BCI は、本人には自覚できない「脳状態」を可視化し、それをリアルタイムにユーザーへフィードバックすることで脳活動の自己調節を可能にする技術です。同研究チームはこれまでに、脳卒中後の重度まひの機能回復を実現し、大学発スタートアップ「(株)LIFESCAPES」を通じてBCIを医療機器化して、全国60の医療機関への導入を進めてきました。本研究は、病気やけがをしていない健常成人の運動能力をも BCI によって向上させることができることを示し、脳の内部で起きている神経回路の切り替わりの様子を可視化し、詳細な分析をした画期的な成果です。 今後は、対象者や課題を広げた検証、効果の持続性や個人差の評価、実際の運動支援場面での有効性の確認を進め、医療・ヘルスケア・人間拡張・スポーツ分野での応用を目指します。

本成果は2026年4月10日付で『Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(米国科学アカデミー紀要)』 に掲載されました。

 

2-3)岐阜大学医学部の下畑先生からの最新医学情報(2026年5月)
当科も参加した多系統萎縮症に対する抗αシヌクレイン抗体療法の国際治験:AMULET試験が示した「有効性の兆し」
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年5月1日のFB投稿です***
多系統萎縮症(MSA)は,パーキンソニズム,小脳性運動失調,自律神経障害を特徴とする進行性神経変性疾患です.現在の治療は対症療法に限られ,疾患進行そのものを抑制する治療は存在していません.こうした状況のなかで,αシヌクレインの異常凝集とその伝播を標的とした免疫療法が注目されています.今回ご紹介するのは,抗αシヌクレイン抗体amlenetugの有効性と安全性を検証した第2相試験(AMULET試験)です.デンマークのLundbeck社が中心になって行い,米国・日本の18施設が参加した国際多施設共同試験です.日本からはAMULET Study Groupとして,私ども岐阜大学,国立病院機構仙台西多賀病院,藤田医科大学の3施設が参加しています.
対象は発症から5年以内のMSA患者(40~75歳)であり,MSA-PとMSA-Cの両サブタイプが含まれています.最終的に61例が治療を受け,amlenetug群40例,プラセボ群21例に割り付けられました(図1).4週間ごとの静脈内投与を48~72週間行うデザインであり,主要評価項目はUMSARS(Unified Multiple System Atrophy Rating Scale)による疾患進行です.48例(78%)が試験を完遂していますが,ドロップアウト率の高さはMSAの臨床試験の難しさを反映していると思います.
さて主要評価項目です(図2).UMSARSの経時的変化をベイズモデルで解析した結果,amlenetug群ではプラセボ群と比較して約19%の進行抑制が示唆されました.しかし事前に設定された有意基準には達せず,統計学的有意差を示せませんでした.ただしこの図から,試験期間で一貫してamlenetug群が良好な状況にあることが理解できます.つまり「明確な有効性の証明には至らなかったが,治療効果のシグナルは存在する」ということです.
ここですぐに思い当たるのは患者集団の不均一性です.図3では事後解析として,ベースラインのUMSARS total scoreが40未満の比較的早期の患者群が検討されており,この群ではより大きな進行抑制効果が示唆されています.すなわち,本抗体の効果は疾患の進行程度に影響を受ける可能性があり,進行例を含む全体集団では効果が希釈された可能性があります.この点は,早期介入の重要性を示唆する極めて重要な知見です.
つぎに副次評価項目に目を向けると,mUMSARSでは約27%の進行抑制が示され,UMSARS part IおよびIIでもそれぞれ22%,17%の抑制傾向が認められました.ただしいずれも統計学的有意差には至っていません.またAppendixにはMRI解析の結果が示されています.橋や小脳白質といったMSAの病変部位において,amlenetug群では体積減少が抑制される傾向が認められました(図4).これも統計学的有意差には至っていませんが,臨床スコアと同様に進行抑制の傾向は一致しています.
安全性に関しては,治療関連有害事象および重篤有害事象の頻度はプラセボ群とほぼ同等であり,大きな安全性上の懸念は認められませんでした.主な有害事象は感染症や頭痛など一般的なものであり,免疫療法としては比較的良好な忍容性が示されています.また,αシヌクレイン関連バイオマーカーの変化から,本薬が実際に体内でαシヌクレインに結合していることが確認されています.具体的には,遊離型αシヌクレインの割合が低下することが示されています.
結論として,本試験の解釈としては「有効性が示唆されるが,患者集団の不均一性から証明しきれなかった試験」だと思います.つまり個体差が大きいため,61例というサンプルサイズでは統計学的有意差の検出が困難であったということだと思います.現在,第3相試験MASCOT試験が当院を含め進行中です.この試験では用量反応の検証と十分な症例数の確保により,真の臨床的有効性を明確に証明する設計へと進化しています.まだ時間はかかりますが,有効性を証明できればと考えています.
Kjærsgaard L, et al. Safety and efficacy of the anti-α-synuclein monoclonal antibody amlenetug for the treatment of patients with multiple system atrophy (AMULET): a phase 2, randomised, double-blind, multicentre trial. Lancet Neurol. 2026 Apr 24:S1474-4422(26)00100-6. doi: 10.1016/S1474-4422(26)00100-6. PMID: 42044642.

岐阜大学脳内抄読会 第103,104 回 ALSをめぐる重要な2つのトピックス―安楽死とBrain–Machine Interfaceに2人の若手が挑戦
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年5月2日のFB投稿です***
今週のオンライン抄読会です.この1か月間,脳神経内科で研修を行った2年目の小森拓夢先生と佐藤健龍先生が,いずれもALSに関する新しく,かつ重要なテーマに取り組んでくださいました.
小森先生は,難病医療における極めて重要かつ複雑な倫理的課題である安楽死について,オランダにおけるALS患者の実態を検討した論文を紹介されました.安楽死を選択した患者さんの背景や理由を丁寧に読み解くことで,患者さんのQOL向上につながる示唆が得られるのではないかという問題意識に基づいた発表であり,大変意義深いものでした.発表後には多くの質問や意見が寄せられ,活発な議論が展開されました.一方で,本テーマは単一の論文だけで十分に論じ尽くせるものではないため,最後に私からも解釈の視点について補足説明を行いました.発表19分,質疑29分でした.
一方,佐藤先生は,ALSの進行に伴い患者さんにとって大きな苦痛となる言語機能の喪失に対し,Brain–Machine Interface(BMI)を用いた支援の可能性についての論文を紹介されました.さらに,関連分野の近年の進歩や基本用語についても整理され,理解を深める内容となっていました.論文のまとめ方も非常に現代的で工夫に富んでおり,印象に残る発表でした.お二人ともBMIに強い関心を持っておられるとのことで,将来的にこの分野での研究に挑戦されることを大いに期待したいと思います.発表12分,質疑15分でした.
van Eenennaam RM et al. Frequency of euthanasia, factors associated with end-of-life practices, and quality of end-of-life care in patients with amyotrophic lateral sclerosis in the Netherlands: a population-based cohort study. Lancet Neurol. 2023 Jul;22(7):591-601. PMID: 37353279.
Card NS, et al. An Accurate and Rapidly Calibrating Speech Neuroprosthesis. N Engl J Med. 2024 Aug 15;391(7):609-618. doi: 10.1056/NEJMoa2314132. PMID: 39141853

「厚労省 難病患者の支援体制に関する研究班」ホームページのリニューアル ―難病医療に役立つ研究成果物のご紹介―
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年5月3日のFB投稿です***
我が国の難病対策は,平成26年に「難病の患者に対する医療等に関する法律」が成立して以降,医療の提供にとどまらず,療養生活全体を支える総合的支援へと大きく発展してきました.この流れの中で,西澤正豊先生を研究代表者とする研究班(西澤班)が制度設計や支援体制の在り方に関する重要な政策提言を行い,その基盤の上に,平成30年からは小森哲夫先生を中心とする研究班(小森班)が,医療・福祉・地域連携を包含した実践的な支援モデルの構築に取り組んできました.
そして令和8年4月1日より,私が研究代表者を小森哲夫先生より引き継ぐこととなりました.これまで研究班を牽引されてきた小森先生をはじめ班員の先生方のご尽力に深く敬意を表するとともに,その成果を継承し,さらに発展させて現場に還元していく責任の重さを感じております.本研究班では,これまでの成果を基盤としつつ,現場のニーズに即したエビデンスの創出と政策提言を通じて,難病患者さんを取り巻く医療・療養環境のさらなる充実を目指してまいります.現在,各領域のエキスパートである多職種の先生方(研究分担者23名,研究協力者13名)とともに,研究を開始しております(詳細はホームページをご参照ください).
https://plaza.umin.ac.jp/nanbyo-kenkyu/
このたびのホームページ改定では,これまで蓄積されてきた研究成果物を整理し,自由にダウンロードしていただける形としました.特に2026年度に公開した以下の8つの成果物については,ご作成いただいた班員の先生方に解説も加えていただいており,日常診療・支援の現場で直ちに役立つ内容となっています.
◆難病患者の災害対策ガイドライン
災害時に必要な支援と多職種連携のあり方を示した実践的指針です.
◆難病患者支援における施設間・職種間の連携-知・技・コツ-
発症期から終末期までの課題に対応するための具体的な連携の方法をまとめています.
◆【別冊】医療機関における就労支援のスキルアップ事例集
多機関連携によって「働く」を支える実践例を提示しています.
◆難病相談支援センターの運営に関する事例集
全国の好事例を集約し,地域格差の是正に資する内容です.
◆大規模災害を経験した訪問看護師から学ぶ
災害時に医療と生活を途切れさせないための実践知をまとめています.
◆難病相談支援センターの運営チェックリスト活用方法の手引き
センター運営の質向上のための評価指針です.
◆難病相談支援センターの運営チェックリスト(EXCEL)
自己評価を可視化し,継続的改善につなげるツールです.
◆難病のケアマネジメント技とコツ「改訂版」
現場で活用できる具体的な支援の工夫をまとめています.
難病診療・支援は専門性が高く,経験の差がそのまま質の差につながりやすい領域です.だからこそ,こうした知識やツールを広く共有し,現場で活用していただくことが極めて重要であると考えています.本サイトが,政策立案者,医療・福祉関係者,さらには患者さん・ご家族の皆様にとって有用な情報基盤となり,我が国の難病対策の質的向上につながることを願っています.ぜひ一度ご覧いただき,日常の実践にご活用いただければ幸いです.

神経科学の“今”を,一冊でつかむ ―『Annual Review 神経 2026』予約開始―
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年5月4日のFB投稿です***
本書は,神経科学におけるこの1年の進歩を一冊で俯瞰できる書籍として,長年にわたり多くの読者に親しまれてきた伝統あるシリーズです.昨年より,鈴木則宏先生をはじめとする前編集委員の先生方からバトンを引き継ぎ,矢部一郎先生,杉江和馬先生,中島一郎先生,堀江信貴先生とともに,編集委員として本書の制作に携わっております.いよいよ5月下旬発売予定です.
本年度版も,神経科学の進歩を多角的に捉え,臨床医・研究者双方のニーズに応える最重要トピックスを網羅した,非常に充実した内容となっております.「Basic Neuroscience」では,基礎医学と臨床医学をつなぐ重要な知見を整理し,「本年の動向」では発症前診断などの最前線や,神経学に革新をもたらし得る新技術を詳述しています.さらに「Clinical Topics」では,新規治療法や診断技術を含め,近年注目される疾患群やトピックスを取り上げ,臨床のアップデートに資する内容となっています.
年明けから全原稿を拝読し,編集作業に没頭しておりましたが,改めて執筆陣の先生方による総説の質の高さに深い感銘を受けました.神経領域の最前線を凝縮した一冊として,自信をもってお届けできる決定版です.ぜひご期待いただければ幸いです.
中外医学社HP
https://www.chugaiigaku.jp/item/detail.php?id=5130
アマゾン
https://amzn.to/4dmVSWE
【目次】
Ⅰ.Basic Neuroscience
1. 神経生理
1) Brain mappingの最近の動向
2) 痛覚システムにおける最新知見
3) AIによる脳波判読システム
2. 神経病理
1) プリオン病における髄液バイオマーカーと治療開発
2) 剖検脳を用いた多系統萎縮症病態研究の最近の進展
3) 神経免疫の視点から見たアルツハイマー病の神経病理学
4) 常染色体顕性遺伝性白質脳症とは何か
3. 生化学(分子生物学)
1) 抗体を用いたin situビオチン標識法による非膜オルガネラ構成因子の網羅的同定
2) ミクログリアとアルツハイマー型認知症
3) 慢性ストレス誘発性うつ病におけるニューロンのエピゲノム制御
4. 画像
1) PSP/CBDの画像所見;J-VAC研究を含めて
2) 日常遭遇する中枢神経感染症の画像診断
3) アミロイド関連画像異常(ARIA)とその周辺病態
Ⅱ.本年の動向
1) 病態修飾療法時代における発症前診断と着床前診断
2) パーキンソン病とAI
3) 微小炎症と神経疾患
4) AIを用いた脳科学とリハビリテーション医療
5) 神経変性疾患に対するseed-amplification assayの現状と課題
6) 運動失調症の患者レジストリ J-CAT の現状と活用
7) 新たな心血管系疾患の危険因子としてのマイクロ・ナノプラスチック
8) パーキンソン病における概日リズムと睡眠研究
9) グリンパティックシステムI研究の最新動向
10)ロボット支援手術 最新の動向
Ⅲ.Clinical Topics
1. 感染症・炎症疾患
1) 帯状疱疹および帯状疱疹ワクチンと認知症
2) HTLV-1関連脊髄症の患者レジストリとデータベース研究
2. 脳血管障害
1) ICT,AIを活用した脳卒中診療
2) Stroke Oncologyの病態機序と治療
3) 頚動脈プラークの画像診断
4) 機械的血栓回収療法の費用対効果
3. 脳腫瘍
1) 脳腫瘍のメチル化解析
2) グリオーマのIDH阻害剤
4. 外傷
1) スポーツによる脳震盪
2) 神経集中治療におけるモニタリング
5. 変性疾患
1) Perry病の臨床・病理・分子機構
2) 筋萎縮性側索硬化症と脂質代謝(SPT関連遺伝子を中心に)
6. 中毒・代謝疾患
1) Niemann-Pick病type Cの病態と臨床
2) マンガンによるパーキンソニズムの病態機序と治療の可能性
3) Leigh症候群に対するミトコンドリア移植療法
7. 脱髄・免疫性疾患
1) 視神経脊髄炎スペクトラム障害の治療の進歩
2) 自己免疫性脳炎Update
8. 末梢神経障害
1) CIDPのアンメットニーズと最新治療
2) RFC1遺伝子関連スペクトラム障害(CANVAS)の臨床遺伝学的特徴
9. 神経筋疾患
1) 多発性筋炎・皮膚筋炎診療ガイドライン2025
2) ミトコンドリアM2抗体筋炎の臨床病理学的特徴
3) 遺伝性筋疾患レジストリRemudyの社会的意義と課題
10. 自律神経疾患
1) 遺伝性ATTRアミロイドーシスUpdate
11. 機能性疾患)
1) てんかん発作分類 解説
2) 遺伝子異常とてんかん
12. 機能的脳神経外科
1) てんかん焦点に対する定位温熱凝固術
2) 精神科疾患に対するニューロモデュレーション
13. 機能性神経障害
1) 機能性神経障害に対する精神的アプローチ

がんの発生とアルツハイマー病のメカニズムにはつながりがある!?
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年5月5日のFB投稿です***
NHK「タモリ・山中伸弥の!?がん克服のカギ」を拝見しました.初めて知ることばかりで驚きの連続であり,勉強になりました.また患者さんを含む視聴者に「希望を持ってもらいたい」とする温かい視座が感じられました.
【番組の要旨;とくに5や6に驚きました】
1. 有酸素運動ががんの再発を抑制する.筋での糖の使用が亢進し,ガン組織における糖の取り込みが減少するため.
2. 血液中のがん細胞が急増して全身の種々のサイズの血管に塞栓が形成されると個体死に至る.
3. がん細胞がその周囲にある正常細胞(線維芽細胞や免疫細胞)の性質を変えてしまう.悪玉になった正常細胞を合成レチノイドを用いて善玉に戻すことで治療につながるかもしれない.
4. がん治療前にリハビリテーションを行い,身体機能を上げると予後が改善する.
5. COVID-19等の感染症に罹患した人は,1〜2年以内にがんの再発や悪化のリスクが大幅に高まり,死亡リスクは最大8倍まで高まる.これは,休眠がん細胞がウイルス感染により放出されたサイトカインによって休眠から目覚め,増殖を始めるため.
6. がんの遺伝子変異は正常細胞では生じないと言われてきたが,健康な50代の皮膚の正常細胞の3分の1でがんの遺伝子変異が起きていた.なんと最初の遺伝子変異は受精から数週間で生じうる.増殖した遺伝子変異を持つ細胞同士は競合するが,より環境に適応したもの(免疫を逃れたり,薬の耐性を獲得するもの)が生き残る.つまりがん細胞はダーウィンの「生存に有利なものが生き残り子孫を残す」という進化の法則に則っている.
7. しかし,喫煙のような生活習慣を改善することで,変異をもつ細胞が減らせることも分かってきている.
【私の感想】
1. がんの発生とアルツハイマー病(AD)のメカニズムにはつながりがある
番組では,「正常な細胞でもがん遺伝子変異が起きる」ことが紹介されていた.当ブログでも紹介したCell誌のADに関する論文(4月30日のブログ参照)でも,全く同じ現象が脳内で起きていることが報告された.アミロイドβなどによる炎症環境が「選択圧」となり,増殖力や炎症反応が高い「がん関連遺伝子の変異を持ったミクログリア」が生き残り,優位に広がっていくというもの.このことから,がんの発生メカニズムとADのメカニズムは,根底で繋がっているのではないかと感じた.
2. がんや老化のメカニズムは「生命のシステムのバグ」ではないか?
「がん遺伝子が変異することは進化の宿命であると同時に,これこそが老化の根本的なメカニズムである」と感じた.前述のCell論文でも,「なぜ加齢が認知症の最大のリスク因子なのか?」という問いに対し,「変異の蓄積と選択にかかる時間」であると明確に説明づけられている.生命が進化するために避けられない「遺伝子変異(システムのバグ)」が時間をかけて蓄積し,環境に適応して増殖した結果が「がん」であり,同時に「老化(ADなど)」でもある――.そのように,壮大な生命のシステムとして語ることができるのではないか.言い換えると,老化とは,一部の細胞が生き残るために利己的な進化を遂げ,その結果として個体を壊してしまうプロセスなのではないか.
3. がんとADの未来の治療アプローチにも共通点がある
がん細胞は運動やレチノイドなどにより環境を変えることで,良性にできるかもしれないというパラダイムシフトが提示された.Cell論文も同様に,ADにおいて,変性する神経細胞やアミロイドβ,タウが標的ではなく,その周囲に存在する環境(=ミクログリア)に対して,がん領域の既存薬(分子標的薬)が治療応用できる可能性を示唆している.病態に共通点があるため治療アプローチも似てくると思った.
かつて新潟大学脳研究所の神経病理の教授から「ADの治療に挑むということは,自分は老化に挑むということだと思っている」という言葉を聞いたことがあり,非常に印象に残っていました.この番組を見て,その言葉を思い出しました.妄想かもしれませんが,がんもADも「老化」という生命の宿命の副産物であって,我々はそれに挑んでいるのではないだろうかと思いました.多くの示唆に富む,素晴らしい番組でした.

機能性神経障害の診療のコツは「どのようにその診断に至ったのかを患者さんに説明すること」である!
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年5月8日のFB投稿です***
International Parkinson and Movement Disorder Society(MDS)の「Clinical Clues」は,運動異常症診療に役立つ実践的なコツを,世界のエキスパートが短時間で紹介する人気シリーズです.今回は,私が尊敬するシンシナチ大学のAlberto J Espay教授による機能性神経障害(FND)診療のポイントについてです.2分弱の印象的なフリー動画がXやInstagramで公開されています.私自身も,新患外来にFND患者さんをご紹介いただく機会が多いのですが,まさに日頃から感じていた大切な視点を,Espay教授が見事な言葉で簡潔に表現してくださいました.診療に携わる脳神経内科医にとって示唆に富む内容であり,大いに共感いたしました.以下,おおまかな日本語訳をご紹介します.
「少なくとも,機能性運動異常症の患者さんの診療において,今から述べること以上に重要なことは思いつきません.それは,『どのようにして診断に至ったのかを患者さんに説明すること』です.さらに,患者さんに認めるその異常な動きが機能性運動異常症の診断基準に合致していると判断するために,医師がどのような見方をしたのかを患者さんに教えることです.そして,それらの異常な動きが機能性運動異常症の病態に特有のものであることを伝えることです.
こうした説明は,患者さんがどのように診断されたのかを理解するうえで非常に大きな助けとなり,その理解は診断を受け入れることにつながります.これは治療において最も重要なステップです.患者さんが,自分に何が起きているのかを理解したうえで診察室を後にすることができれば,その先にある大変な過程にも取り組みやすくなります.なぜなら,機能性運動異常症のリハビリテーションには大きな努力が必要だからです.しかし,その努力は患者さんの意欲によって支えられます.患者さんが,自分が何と向き合っているのかを理解できればその意欲に繋がります.
多くの患者さんは,「以前の担当医たちは自分の病気の診断を分かっていなかった」と思い,私たちのもとを訪れます.しかし,紹介状を見返してみると,その医師たちは実際には患者さんの診断を理解していたことが分かります.ただ,それを適切に伝えていなかったのです!そのため患者さんの心の中で,「誰も自分が何の病気なのか分かっていない」という認識になってしまうのです.そしてもちろん,その結果として「この異常な動きを自ら演じていると思われているのではないか?」「この異常な動きは本物ではないと思われているのではないか?」という思いが生まれます.こうした考えは患者さんにとって有害であり,リハビリテーションの邪魔になります.ですから,医師がなぜその診断に確信を持っているのかを患者さんが理解できるような形で診断を伝えることができれば,それこそが治療における最初の一歩であり,かつ最も重要な一歩になるのです.」

2026年の2大研究が示す帯状疱疹ワクチンによる認知症リスク抑制効果
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年5月9日のFB投稿です***
近年,認知症の発症にウイルス感染や免疫機構が関与する可能性が注目されています.とくに帯状疱疹ウイルス(VZV)は神経系に潜伏し,加齢とともに再活性化することから,神経炎症や神経変性との関連が議論されてきました.今回は2026年になって報告された帯状疱疹ワクチンが認知症発症に与える影響を検討した2つの重要な研究と従来の研究をまとめてみます.
まずLancet Neurol誌に掲載された研究は,Stanford Universityからのもので,カナダ・オンタリオ州の一次医療データベースを用いた大規模解析です.この研究の最大の特徴は,生年月日に基づくワクチン接種資格(生ワクチン;Zostavax)の有無を利用した「自然実験」という手法にあります.すなわち,1945年生まれと1946年生まれという,年齢や生活背景がほとんど同じ人たちを,制度上ワクチンを受けられるかどうかという違いだけで比較することで,生活習慣や健康意識といった交絡因子の影響を受けにくくし,ワクチンそのものの効果により近い形で評価できるようにしています.カナダ全土から抽出された約46万人のうち,オンタリオ州の約23万人を対象とした解析の結果,ワクチン接種資格のある群では,約5.5年の追跡期間において,認知症の新規診断が約2.0%ポイント低下していました(図1).この図は,解析方法をさまざまに変えても一貫して「ワクチン接種対象群が認知症が少ない」という結果を示しており,結果の頑健性が確認されています.さらに,ワクチンプログラムが存在しない他州との比較でも,同様に認知症発症が少ないことが示されており,この効果が偶然や他の要因によるものではない可能性が強く示唆されます.
つぎにNat Commun誌に報告された研究は,米国カリフォルニア州南部からのもので,組換え帯状疱疹ワクチン(RZV;Shingrix)の効果を検討した大規模コホート研究です.対象は65歳以上の約33万人であり,傾向スコア重み付けを用いて接種群と非接種群の背景因子を調整しています.その結果,RZVを2回接種した群では,認知症発症リスクが約51%低下し,ハザード比は0.49(95%信頼区間0.46–0.51)と非常に強い関連が示されました.図2では,累積発症率が非接種群10.64%に対し,接種群5.67%と明確に低下しており,大きな差があることが視覚的にも分かります.さらに,健康志向の高い人ほどワクチンを受けやすいというバイアスを考慮して,三種混合ワクチン(Tdap)接種者との比較も行われましたが,それでもなおハザード比0.73と有意なリスク低下が維持されていました.
これら2つの研究は方法論が大きく異なります.前者は因果推論に強い自然実験,後者は実臨床データに基づく大規模観察研究です.しかしいずれも「帯状疱疹ワクチンが認知症リスクを低下させる」という結論で一致していました.効果の機序については未だ確立されていませんが,いくつかの仮説が提示されています.すなわち,VZVの再活性化を抑えることで神経炎症や血管障害を抑制する可能性に加え,体内に潜伏している他のウイルス(単純ヘルペスウイルスなど)の再活性化も抑制されることで,結果として認知症リスクの低下につながる可能性等が考えられます.話題のミクログリアの活性化も当然促進されると思います.
図3に近年の研究結果をまとめてみました.自然実験研究(ウェールズ,オーストラリア,カナダ)では,いずれも絶対リスクが1.8~3.5ポイント低下し,異なる国や医療システムにおいても一貫した結果が示されている点は重要だと思います.一方,大規模観察研究では,帯状疱疹ワクチン接種によりハザード比で11〜51%低下することが報告されており,特に組換えワクチン(RZV)の2回接種が最も強い効果を示しています(32~51%減少).生ワクチンも組換えワクチンも有効ですが,生ワクチンの効果は時間とともに減弱する可能性が指摘されています(Polisky et al. Nature Medicine, 2025).
以上より,帯状疱疹ワクチンは感染症予防という従来の役割を超えて,認知症予防という新たな意義を持つことはほぼ間違いないと言えます.とくに,高齢化社会において実装可能な介入である点は重要であり,今後の公衆衛生戦略にも影響を与える可能性があります.ただし,観察研究が中心であること,フォローアップ期間が比較的短いこと,機序が完全には解明されていないことが限界であり,今後のさらなる検証が必要です.
Pomirchy M, et al. Herpes zoster vaccination and incident dementia in Canada: an analysis of natural experiments. Lancet Neurol. 2026 Feb;25(2):170-180. doi: 10.1016/S1474-4422(25)00455-7. PMID: 41579903.
Rayens E, et al. Recombinant zoster vaccine is associated with a reduced risk of dementia. Nat Commun. 2026 Feb 9;17(1):2056. doi: 10.1038/s41467-026-69289-0. PMID: 41663414.

Nature誌100万人ゲノム解析研究が示したリピート伸長病の真実
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年5月10日のFB投稿です***
米国Regeneron Genetics Centerから,100万人を超える大規模ゲノムデータを用いて,神経疾患を引き起こすリピート伸長(反復配列異常伸長;リピート expansion)を包括的に解析した研究がNature誌に報告されました.具体的にいうと,ハンチントン病,脊髄小脳変性症,筋強直性ジストロフィー,ALS/FTDなどに認めるリピート伸長について,「一般集団にどれくらい存在するのか?」「どの程度発症と関係するのか?」「症状が出る前から神経変性が始まっているのか?」を検討したものです.私は大学院生時代,この疾患の遺伝子診断や研究に没頭していたので,非常に大きな驚きを持って論文を読みました.
著者らは,UK Biobankを含む7つの大規模コホートから,102万人以上の全エクソーム解析データと,46万人以上の全ゲノム解析データを解析し,HTT,DMPK,C9orf72,CACNA1Aなど37遺伝子座のリピート長を検討しました.
まず非常に興味深かったのは,「病的リピート伸長を持っていても,実際には診断されていない人が多数存在する」という結果です.図1では,「病的リピート保因者の頻度(縦軸)」と「実際の疾患有病率(横軸)」が比較されています.もし「病的repeatを持つ人=全員発症」であれば,点は斜めの線(y=x)の上に並ぶはずです.しかし実際には,多くの遺伝子で点が線より上(ブルー領域)にあります.つまり「病的リピートを持っていても,実際には診断されていない人がかなり存在する」ことを意味します.また各遺伝子名の下に書かれている「%」は「その遺伝子の病的repeat expansionを持つ人の頻度」を表しています.例えばハンチントン病の原因となるHTTの0.04%は「約2,500人に1人が病的リピートを持っていた」という意味です.よって病的リピート伸長保因者は10万人あたり16~53人程度と推定されますが,従来のハンチントン病有病率(3~7人/10万人)を大きく超えています.DMPK 0.09%やCACNA1A 0.027も同様で,病的リピート保因者数が実際の患者数を大きく上回っていました.この結果は,「病的リピートを持つ=必ず発症する」わけではなく,浸透率は100%ではなく,従来考えられていたほど単純ではない可能性を示しています.
また興味深かったのは,リピート伸長の頻度に祖先集団による明瞭な違いが認められた点です.特にCACNA1A伸長は東アジア系集団で高頻度であり,日本や韓国でSCA6が比較的多いことを示した従来の疫学研究と一致していました.一方,DMPK,C9orf72,FXN(フラタキシン)のリピート伸長はヨーロッパ系集団で高頻度でした.この結果は,神経変性疾患の地域差や人種差の背景に,リピート伸長の分布の違いが関与している可能性を示唆しています.私自身,大学院生時代にフリードライヒ失調症の原因遺伝子であるFXNのGAAリピートをlong PCRでひたすら解析していた時期がありました.しかし,何度電気泳動を繰り返しても陽性例が見つからず,「これが人種差か!」と実感したことを懐かしく思い出しました.
さらに本研究では「リピート数が増えるに従って,発症リスクや浸透率が徐々に高まっていくこと」が示されました.特にHTT,DMPK,C9orf72では,リピート長が長くなるほど発症リスクが段階的に上昇していました.従来は「40リピートなど,一定以上のリピート数になると発症する」と理解されることが多かったのですが,本研究では,その手前の“premutation領域”でもすでにリスクが上昇している可能性が示唆されました.つまり,「健常」と「疾患」の間には連続的なグラデーションが存在するということです.
そして本研究で最も重要なのは,「症状が出る前から神経変性が始まっている」ことを,大規模データで示した点です.著者らはUK BiobankのMRIデータを解析し,まだ診断されていないリピート伸長保因者の脳体積を調べました.この結果,非発症HTT病的伸長保因者では,被殻体積が22.1%も減少していました(図2左).つまり,「症状が出るかなり前から,ハンチントン病らしい神経変性が静かに進行している」ことを意味します.同様に,CACNA1A伸長保因者では小脳灰白質体積が24.6%減少し,C9orf72伸長保因者では視床体積が9%減少していました.しかも,これらの萎縮は,それぞれの疾患で最も障害されやすい部位です.つまり,遺伝子変異があるだけではなく,「その疾患らしい神経変性」が発症前から始まっていたことになります.さらに血液バイオマーカーも解析されました.HTT伸長保因者では,神経軸索障害マーカーであるNfLが約1.9倍に増加していました.これは,無症候段階ですでに神経変性が進行していることを支持します(図2右).
本研究は,リピート伸長疾患に対する考え方を大きく変える可能性があります.これまで一般に「症状が出てから診断する疾患」と考えられてきました.しかし本研究は,「症状が出る前から脳萎縮や神経変性が始まっている」ことを明確に示しました.将来的には,もし治療が確立すれば,ゲノム解析と血液バイオマーカーを組み合わせて積極的に,発症前段階で高リスク群を同定し,超早期介入を行う時代が来るのかもしれません.アルツハイマー病研究で進みつつある“preclinical neurodegeneration”という概念が,リピート伸長病にも広がり始めることを予感させます.そして治療開発につなげるために,リピート伸長を持っていても発症しない人のメカニズムを調べる研究が当然始まっているのではないかと思いました.
なお,個人的にも関心の深いDRPLA(ATN1リピート伸長)についても,本研究では解析対象に含まれていましたが,100万人規模の解析にもかかわらず,病的伸長保因者はほとんど検出されませんでした.東アジアでSCA6が比較的高頻度であったこととは対照的であり,DRPLAは日本では重要な遺伝性神経疾患として認識されている一方で,一般集団全体でみると依然として非常に稀少な疾患であることをあらためて印象づける結果でした.
Pounraja VK, et al. Population-scale repeat expansions elucidate disease risk and brain atrophy. Nature. 2026 Apr 8. doi: 10.1038/s41586-026-10345-6. PMID: 41951733.

米国神経学会プレジデントNatalia S. Rost 先生から学ぼう!
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年5月13日のFB投稿です***
第67回日本神経学会学術大会(大会長:西山和利先生)では,American Academy of Neurology(#AAN)との特別企画が開催されます.今回,AAN Presidentであり,ハーバード大学医学部神経学教授でもあるRost先生を日本にお迎えし,AAN Special Lecture,シンポジウム「予防神経学の原理と実践」,そして “Meet the AAN President” が企画されています.国際的に活躍されるRost会長から,予防神経学,リーダーシップ,そして脳神経内科の未来について直接学べる,大変貴重な機会です.
特に “Meet the AAN President ― 若手医師・女性医師が拓く新しい脳神経内科リーダー像 ―” は,5月21日(木)8:00〜9:30,第12会場(パシフィコ横浜 会議センター4F 419)で開催されます.私は三澤園子先生とともに座長を務めさせていただきます.AANは,脳神経内科領域におけるリーダーシップ教育の先駆的存在であり,若手育成やダイバーシティ推進にも長年力を注いできました.今回のセッションが,若手の先生方から指導的立場の先生方まで,多くの皆様にとって,これからの脳神経内科医のあり方やキャリア形成を考える機会になれば素晴らしいと思っております.
また,「予防神経学の原理と実践」シンポジウムは5月21日(木)15:10〜17:10,第3会場で開催され,Rost会長に加え,永山正雄先生,Saef Izzy先生,川本未知先生らが登壇されます.さらに,5月22日(金)8:30〜9:30には,「米国神経学会AAN Rost理事長から日本神経学会会員の皆様へ」と題したAAN Special Lectureも予定されています.
会期中にはAANブース(K-11)もPACIFICO横浜に設置されます.AANの教育コンテンツ,国際活動,キャリア支援,membership情報などについて直接相談できる貴重な機会です.5月21日・22日の10:00〜11:00には,Rost会長ならびにAAN CEOのMary Post氏との meet & greet も予定されています.さらに現在,AAN membershipは2026年残り期間について50%割引キャンペーンも行われています.国際学会活動や海外との交流に関心のある先生方には,ぜひAANブースにもお立ち寄りいただければと思います.私自身もAAN Fellowとして,AANと日本神経学会の橋渡しに少しでも貢献できればと考えております.横浜で多くの先生方にお目にかかれることを楽しみにしております!!

世界最大GWASが示した視神経脊髄炎スペクトラム障害の病態―多発性硬化症よりむしろSLEに近い!
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年5月14日のFB投稿です***
AQP4抗体陽性視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)の病態理解を大きく前進させる重要な論文がLancet Neurology誌に掲載されています.世界36施設が参加したInternational NMOSD Genetics Consortiumによって実施された,これまでで最大規模となるゲノムワイド関連解析(GWAS)です.
NMOSDは多発性硬化症(MS)と類似した症状を示します.しかしAQP4抗体の発見以降,MSとは異なる疾患であることが明らかになってきました.しかし,なぜAQP4抗体が産生されるのか,なぜ自己免疫が生じるのかという点については十分に分かっていません.遺伝学的リスクを明らかにするGWASはそのヒントになります.
本研究では,1573例のAQP4抗体陽性NMOSD患者と1260例の対照群を対象に,多民族GWAS解析を行いました.まず患者群の約40%が他の自己免疫疾患を合併していました.そして解析の結果,最も強い遺伝学的リスクとして浮かび上がったのが,第6染色体MHC領域に存在する補体C4A関連変異でした.特にrs1150753という変異は,NMOSD発症リスクを約3倍に高めていました.補体C4は,免疫系における「掃除係」のような役割を担っています.通常は,自分自身に反応してしまう危険なB細胞を除去する働きを持っています.しかしC4機能が低下すると,本来なら除去されるはずの自己反応性B細胞が生き残り,AQP4抗体を作りやすくなる可能性があります.実際,SLEなど他の自己免疫疾患でも,C4A欠損やコピー数低下が病態に関与することが知られており,NMOSDとの共通性が強く示唆されました.最近,この遺伝子,どこかで見たなと思いましたが,それは進行性核上性麻痺のGWAS論文でした.既知の5つの遺伝子座(MAPT,MOBP,STX6,RUNX2,SLCO1A2)に次ぐ新たな遺伝子座としてこの補体C4Aが示されていました(Nat Commun. 2024;15(1):7880).
2つめは,HLA-DRB1*03:01というHLAクラスII遺伝子が同定されました.これは抗原提示に関わる分子であり,自己抗原をCD4陽性T細胞に提示する役割を持っています.特に74番目と77番目のアミノ酸が病気と強く関連しており,自己抗原提示の仕組みそのものがNMOSD発症に深く関わっている可能性が示されました.著者らは,NMOSDは単なるB細胞病ではなく,「自己反応性T細胞がB細胞を助けて自己抗体を作らせるT細胞依存的な疾患」であると考察しています.
そして3つめは,第2染色体のSTAT4遺伝子でした.STAT4は免疫反応を増強するシグナル分子であり,特にT follicular helper細胞(Tfh細胞)の機能に重要です.Tfh細胞は,CD4陽性T細胞の一種であり,リンパ節や脾臓の「胚中心」でB細胞を助ける役割を担います.いわば,B細胞に対して「どの抗体を作るべきか」を教育する司令塔のような細胞であり,STAT4活性上昇は自己抗体産生を促進すると考えられます.興味深いことに,STAT4はSLEやシェーグレン症候群,筋炎など多くの自己免疫疾患でもリスク遺伝子として知られており,NMOSDとの病態の共通性を強く示唆します.
本論文で私が最も印象的だったのは下図です.この図では,各自己免疫疾患の「遺伝学的な近さ」が結ぶ直線の距離として描かれています.するとNMOSDはMSよりも,SLE,シェーグレン症候群,筋炎,サルコイドーシスなどの全身性自己免疫疾患に近い位置に配置されています.これは非常に重要です.というのは,NMOSDがMSよりもSLEや筋炎に近いのであれば,「MS治療薬」ではなく,「全身性自己免疫疾患で有効な治療」を用いるべきという発想につながります.実際,本論文でもSLEや乾癬性関節炎などで開発が進んでいるTYK2阻害薬が注目されています.TYK2はSTAT4経路の上流に存在するシグナル分子であり,本研究ではTYK2遺伝子のP1104A変異がNMOSDに対して保護的に働くことも示されています(この変異を持つ人では,NMOSD発症リスクが約半分になります).
つまり本研究は,AQP4抗体陽性NMOSDは,「補体C4による自己反応性B細胞除去の破綻」,「HLAを介した自己抗原提示」,「STAT4/TYK2経路による自己抗体産生促進」といった病態により生じると推測されます.NMOSDを「全身性自己免疫疾患のひとつ」として考える時代に入ったのかもしれません.
Attfield KE, et al. Identification of genetic risk loci associated with aquaporin 4-positive neuromyelitis optica spectrum disorder: a genome-wide association study. Lancet Neurol. 2026;25:482-491. PMID: 40158564.

「アミロイドβ一強」から多標的創薬への移行:2026年版アルツハイマー病治療薬パイプライン
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年5月16日のFB投稿です***
アルツハイマー病(AD)治療薬開発の全体像を毎年まとめているJeffrey Cummings先生らによる2026年版のレビュー論文が公開されました.著者らは,米国ネバダ大学を中心としたグループであり,clinicaltrials.govに登録された世界中のAD臨床試験を解析しています.本論文は,現在どのような治療薬が開発されているのかを俯瞰できる,非常に重要なレビューです
2026年1月時点で,AD治療薬の臨床試験は192試験,開発中薬剤は158種類に達していました.しかも,その73%が疾患標的療法(disease-targeted therapy;DTT)であり,単なる症状改善ではなく,「発症予防」や「進行抑制」を目的としている点が大きな特徴です.現在進行中の試験に必要な被験者数は54,728人にも及び,第3相試験だけで38,417人が必要とされています.まずAD創薬が極めて大規模化していることが分かります
本論文で最も印象的なのは,もはやAD創薬が「アミロイドβ(Aβ)一強」ではなくなったことです.もちろん,抗アミロイド抗体は依然として重要な位置を占めています.第3相試験では,lecanemab,donanemab, remternetug,trontinemabなどの抗体医薬が進行しています.Remternetugはピログルタミル化Aβを標的とする抗体で,donanemabに似ていますが,よりAβ除去能が強力なようです.特にtrontinemabは,トランスフェリン受容体を利用して血液脳関門通過性を高めた次世代抗体として注目されています
しかし今回のパイプラインを眺めてみて,Aβのみでなく,タウ,炎症・免疫,代謝異常,シナプス障害,血管障害など,多様な病態を標的とした創薬が急速に拡大していることがわかります.実際,本論文では17種類もの病態カテゴリーが治療標的として挙げられていました.その内訳を見ると,最も多いのは神経伝達受容体関連薬で24%を占め,次いで炎症/免疫関連薬が18%,アミロイドβ関連薬が16%,タウ関連薬が9%となっていました(図1).特に注目すべきなのは,炎症/免疫関連薬が,すでにアミロイドβ関連薬を上回っている点です.さらに概日リズム,腸脳相関,エピジェネティクスなどを標的とする薬剤まで登場しています.ADが単一病態ではなく,多因子疾患であるという理解が,創薬に反映され始めたことを示しています.
代謝異常を標的とした治療も非常に興味深い領域です.糖尿病治療薬であるGLP-1受容体作動薬semaglutideが第3相試験に進んでおり,脳内インスリン抵抗性改善や神経炎症抑制を介した疾患標的効果が期待されています.またmetforminも第3相試験に含まれていました.近年,「ADは脳の糖尿病」とも表現されることがありますが,その流れを象徴していると言えます.
さらに,タウを直接標的とする治療も増加しています.BIIB080(diranersen;タウASO),NIO752(タウ ASO),BMS-986446(抗タウ抗体),ARO-MAPT(RNA interference)などが開発されており,タウ病理そのものへの介入が本格化しています.特にNIO752やBIIB080は,タウ mRNAを標的としてタウ産生自体を抑制するASOであり,『タウを除去する』治療から『タウを作らせない』治療へ移行しつつあることを象徴しています.さらにNIO752はPSPに対するPhase 3試験にも進んでおり,岐阜大学でも治験開始予定です.
また本論文で目についたのは,「ドラッグ・リポジショニング」が極めて多いことです.全薬剤の35%が既存薬でした.metformin,nilotinib,edaravone,losartan,levetiracetamなど,他疾患治療薬がADへ応用されています.AD創薬は失敗率が高く,新規薬剤開発には莫大な費用と時間を要します.そのため,すでに安全性情報が蓄積されている既存薬を活用する戦略が取られているようです.
図2は,現在のAD創薬の全体像を示したものです.同心円状に,外側が第1相,中間が第2相,内側が第3相を示しています.さらに,緑は生物学的DTT,紫は小分子DTT,オレンジは認知機能改善薬,青は精神症状改善薬として色分けされています.また,各アイコンの色はアミロイド,タウ,炎症/免疫,シナプス,代謝,血管障害などの病態標的を示し,アイコンの形は対象患者群を表しています.やはり「AD創薬は,もはやアミロイドβだけではない」という現在の流れが理解できます.また,無症候だがバイオマーカー陽性のpreclinical ADを対象とした予防試験も増加しており,「症状が出てから治療する病気」から,「発症前に介入する病気」へと,AD医療そのもののパラダイムシフトが進んでいることも示されています.
Cummings JL, et al. Alzheimer’s disease drug development pipeline: 2026. Alzheimers Dement (N Y). 2026;12:e70251. doi:10.1002/trc2.70251.PMID: 40190791

脳梗塞後,脳は回復プログラムを停止するが,回復能力を失っていない;本邦からの驚くべきNature論文
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年5月18日のFB投稿です***
脳梗塞後の脳の回復能力は,時間の経過とともに失われていくと考えられてきました.しかし今回,東京科学大学などの共同研究グループがNature誌に発表した論文は,この常識を大きく揺さぶる内容です.責任著者の七田崇教授とは,かつて「日本脳循環代謝学会・若手の会」で議論を交わした間柄ですが,脳虚血を免疫学の視点から探究してきた卓越した研究者です.今回の研究を読みながら,「ついにここまで到達したか!」と,大きな驚きと興奮を覚えました.
研究の主役はミクログリアです.ミクログリアは脳の免疫細胞ですが,炎症を起こすだけでなく,修復にも関わります.脳梗塞後には,強力な神経栄養因子であるIGF1を産生する「修復型ミクログリア」が出現し,神経回路再構築,髄鞘修復,シナプス形成を促進します.著者らはIgf1-eGFPマウスを用い,脳梗塞後にこのIGF1陽性ミクログリアが増加することを示しました.さらにこれらの細胞を除去すると神経機能回復が悪化したため,修復に必須の細胞であることを確認しています.
しかし重要なことは,この細胞のその後の運命です.いままで,修復型ミクログリアは時間経過とともに消失すると考えられていました.ところがIGF1を発現するミクログリアを長期間追跡したところ,発症28日後でも細胞そのものは脳内に残っていました.しかしIGF1発現だけが消失していたのです!!図1gでは,過去にIGF1を発現していたことを示すtdTomato陽性細胞は脳内に残存しているものの,現在はIGF1の発現を示すeGFPシグナルは失われていることを示しました.つまり以前,IGF1を発現していた修復型ミクログリアが,現在はIGF1発現を失っているということになります.そして図1hでは,過去にIGF1を発現した細胞のうち,現在もIGF1を発現している細胞(eGFP+ tdTomato+)は時間とともに減少し,一方でIGF1発現を失った細胞(eGFP− tdTomato+)が増加することが示されています.この結果は,修復型ミクログリアが消失したのではなく,同じ細胞がIGF1発現を失って「修復停止状態」に移行したことを示しています.
つぎにsingle-cell RNA-seq解析では,修復型ミクログリアクラスターから,修復停止型ミクログリアクラスターへ連続的に移行するtrajectoryが示され,「別の細胞が出現した」のではなく,「同じ細胞が状態変化した」ことが明らかになりました.近年のsingle-cell biologyの威力を感じました.
次に著者らは,「なぜ修復が止まるのか」を検討しました.そこで同定されたのが転写因子ZFP384です.ZFP384は脳梗塞後後期に増加し,IGF1など修復関連遺伝子群の発現を抑制していました.さらに分子レベルでは,YY1というクロマチンループ形成因子が修復遺伝子群を活性化している一方,ZFP384が増加するとYY1をクロマチン複合体から排除し,修復遺伝子群をOFFにしてしまうようです.つまり脳には,「修復終了プログラム」という仕組みが存在していたことになります.しかもその上流にはTGFβシグナルが存在していました.TGFβは一般に組織安定化や恒常性維持に関わるサイトカインですから,脳はTGFβ→ZFP384経路を使って「修復を終えて安定化へ移行する」のではないかと思われます.
そこで著者らは,近年,臨床応用されているZfp384のアンチセンス核酸(ASO-Zfp384)を作成して脳室投与し,ZFP384の抑制を試みました.すると修復型ミクログリアが長期間維持され,神経機能回復が改善しました.特に驚くべきは図2で,脳梗塞発症29日後という慢性期にASOを投与しても,2つのテストで神経機能が改善していました.これは,「脳卒中回復にはタイムリミットがある」という従来の固定観念を大きく覆す結果です.
さらに著者らは,本当に神経修復が起きているのかを詳しく検討しました.single-cell解析では,オリゴデンドロサイト前駆細胞では髄鞘形成関連遺伝子が増加し,興奮性ニューロンではシナプス形成関連遺伝子が増加し,アストロサイトでは神経可塑性関連遺伝子が増加していました.組織学的にもMBP染色で再髄鞘化が確認され,電子顕微鏡ではシナプス数の増加や成熟シナプス形成が示されました.つまりASO-Zfp384は単に炎症を抑えているのではなく,脳そのものの再構築を促進したことが分かります.
図3は研究全体をまとめの模式図です.脳梗塞後,発症約7日頃にはYY1の転写制御により,修復型ミクログリアが誘導され,IGF1などの修復関連遺伝子を発現します.しかし時間が経過するとZFP384が増加し,YY1による修復遺伝子発現を妨げることで,ミクログリアは修復能を失った機能不全状態へ移行します.一方,Zfp384を標的とするアンチセンス核酸を投与すると,この修復機能の低下を防ぎ,脳卒中後回復を持続させ,機能予後を改善できる,ということです.
ただこの論文を読んでいて,最初から「修復型ミクログリアを長期間維持して,本当に安全なのだろうか?」という懸念が頭に浮かんでいました.生命は極めて精緻な仕組みを備えているので,「きっと意味があって修復モードを終了させているのではないか?」と考えたわけです.つまりZFP384による修復停止は,悪い現象ではなく,本来必要な生理的ブレーキで,脳の恒常性維持に必要なのではないかということです.例えばミクログリアをずっと修復モードに固定すると,不要シナプスの刈り込みがなされず異常シナプスが形成されたり,炎症の慢性化やグリオーシス,IGF1による増殖促進作用などが問題となる可能性があります.また実験では若いげっ歯類を使用しますが,実際のヒトは高齢者で,lipid droplet accumulating microgliaやdisease-associated microglia (DAM)といったいわゆる「疲弊したミクログリア」が対象になります.もちろん著者らもこの辺は了解済みで,「永遠に活性化する」のではなく,「修復機能を一定期間 sustain(持続)する」という慎重な表現を繰り返しています.つまり「ミクログリアをずっと活性化すればよい」という単純な話ではなく,「脳には回復終了プログラムが存在し,それを一時的に解除することで回復期間を延長できる」というアイデアなのだと思います.
いずれにしてもミクログリアは脳卒中だけでなく,認知症,パーキンソン病,外傷性脳損傷など極めて多くの疾患に関わります.今後,これらの疾患で一斉にミクログリアの修復停止に関する検証が進むのではないかと思います.非常に大きなパラダイムシフトをもたらす素晴らしい研究だと思います.
Tsuyama J,et al. Sustaining microglial reparative function enhances stroke recovery. Nature. 2026 May 13. doi: 10.1038/s41586-026-10480-0. Epub ahead of print. PMID: 42129556.

脳アミロイドアンギオパチーとは何か?―NEJM総説が示した「血管のアルツハイマー病」の本質
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年5月19日のFB投稿です***
高齢者の脳出血の原因として知られる脳アミロイドアンギオパチー(CAA)ですが,近年その重要性は高まりました.レカネマブやドナネマブなどAβ抗体治療の普及に伴い,再注目されるようになったわけです.今回ご紹介するのはNEJM の最新総説です.
CAAは,アミロイドβ(Aβ)が脳小血管壁へ沈着する疾患です.ADの老人斑ではAβ42が主体ですが,CAAではより短いAβ40が主体となります.沈着部位は主として皮質・軟膜小動脈であり,被殻や視床など深部穿通枝には少ないことが知られています.このためCAA関連出血は「脳葉型出血」として出現します.
まず病理所見です.図1Aは軽症~中等症CAAです.血管平滑筋周囲に部分的にAβ沈着がみられますが,進行すると血管壁全体がAβで置換されます.Bは高度CAAで,血管壁が同心円状に分離し,“double barrelないしvessel-within-vessel appearance”を形成しています.つまりCAAは「血管そのものが破壊される病態」であることを認識する必要があります.この段階で血液脳関門障害やアストロサイト・ミクログリア活性化が生じ,脳出血へ至ります.またCはCAA-related inflammation(CAA-ri)です.血管周囲へ炎症細胞が集積しています.
つぎに疫学です.非常に頻度が高い疾患で,中等度〜高度CAAは一般高齢者の23%,AD患者では約48%に存在するそうです!しかし重要なのは,病理と症候は一致しないということです.つまり多くの高齢者脳にはCAA病理が存在するものの,実際に脳出血を起こすのは一部ということです.
つぎにCAAが数十年かけて進行するかなり緩徐な疾患であることが強調されています.遺伝性CAA(APP遺伝子変異)研究から,最初の脳出血の30〜40年前には既にAβ沈着が始まり,20〜30年前には脳血管反応性低下が出現し,10〜15年前には白質障害がMRIで検出されるようになるそうです.そして最終段階として微小出血や脳表ヘモジデリン沈着症(cSS),脳葉型脳出血が出現します.つまりCAAは,長い前臨床期を持つ超慢性疾患ということです.
臨床症候として重要なのは脳葉型脳出血ですが,「認知症としてのCAA」も強調されています.CAAは白質病変や微小梗塞を介して認知機能低下に関与します.また非常に重要な症候は,一過性局所神経エピソード(transient focal neurologic episodes; TFNE)です.これは従来“amyloid spells”とも呼ばれていたもので,手→腕→顔,感覚障害→失語のように,症状が数分かけて隣接領域へ拡大します.この経過はTIAとは異なります.MRIでは近傍に,convexity SAHやcSSを認めることが多く,病態としては皮質拡延性脱分極(CSD)が背景にあると考えられています.TFNEとTIAの鑑別は予防療法を行う上で重要になります.
図 2はMRIで,Aは脳葉型出血で,finger-like projectionsを認めます.血腫の辺縁から,白質方向へ指のように細長く伸びる突出を指します.通常の高血圧性脳出血では,血腫は比較的丸く,境界も滑らかですが,CAAでは,血液が脆弱化した白質内血管周囲へ沿って浸潤しやすく,このような所見を呈します.Bの黒矢印は微小出血で,皮質・皮質下優位に存在しています.さらに白矢印はcSSで,現在,TFNE,脳葉型脳出血再発,さらにARIAリスクとも強く関連すると考えられています.Cは半卵円中心の高度perivascular spacesが示されています.これはAβ排液障害を反映すると考えられており,CAAがグリンファティックシステム障害の疾患である可能性を示唆します.DはCAAが多発白質虚血病変を呈することし示しています.EでCAA-riのFLAIR高信号病変で,皮質近傍に非対称性白質病変が出現しており,Aβ陽性血管に対する炎症反応を反映しています.論文ではAβ抗体治療に伴うARIAは,「医原性CAA-ri」である可能性を指摘しています.
さらに図3のMRIは,同号のNEJMに掲載された症例報告のものです.86歳男性のSWIでは,脳葉全体に500個以上の微小出血が認められますが,大脳深部は比較的保たれています.これは「CAAは皮質・皮質下小血管病である」ことを改めて示しています.そしてこれほど多数の微小出血が存在するにもかかわらず,主症状は脳葉型大出血ではなく,認知機能低下と歩行障害でした.これはCAAが慢性白質障害を伴う小血管疾患であることを示唆しています.
治療面では,CAA関連脳出血の再発率が年間7.4%と非常に高いことが強調されています.特にcSSや多発脳葉型出血を伴う症例では再発リスクが高く,心房細動合併症例での抗凝固療法は極めて難しい問題になります.著者はDOAC,左心耳閉鎖術,抗血小板単剤などを症例ごとに慎重に検討すべきと述べています.また血圧コントロール(130/80未満)は極めて重要な再発予防戦略です.また,将来的治療戦略としてAβ産生抑制,Aβクリアランス促進,血管保護が挙げられています.特にAPP遺伝子を標的としたsiRNA治療の第2相試験が紹介されており,CAAが「予防・修飾可能な脳小血管病」へ変わる可能性が示唆されています.
Greenberg SM. Cerebral Amyloid Angiopathy. N Engl J Med. 2026 May 7;394(18):1836-1845. doi: 10.1056/NEJMra2411298. PMID: 42090794.

神経科学の父・カハールに学ぶ『若き研究者への助言』翻訳・出版プロジェクト その2@第67回日本神経学会学術大会
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年5月24日のFB投稿です***
岐阜大学医学部では昨年度より,3年生を対象に「プロジェクト基盤型カリキュラム(Project-based Learning:PjBL)」のトライアルを開始しています.脳神経内科では,スペインの神経解剖学者であり,1906年にゴルジとともにノーベル生理学・医学賞を受賞したSantiago Ramón y Cajalの名著『Advice for a Young Investigator(若き研究者への助言)』の翻訳プロジェクトに取り組んでいます.いつか,どのような形であってもこの素晴らしい本を出版することが私たちの夢です.
翻訳作業に加えて,学生自身がカハールに関連して関心を持ったテーマを調べ,まとめ,自分たちの言葉で発表することを課題にしました.その成果を,第67回日本神経学会学術大会(横浜大会)の医学生・研修医セッションで口演する機会をいただきました.以下の2つの発表です.
◆カハールの神経描画が現代神経学に及ぼした影響についての検討(伊藤颯汰君,岸田隼典君,矢部峻毅君)
◆カハールのニューロン説と芸術的手法(関谷陸叶君,西堀翔太君,八木麻衣さん)
スライドはこちらからご覧いただけます(https://www.docswell.com/…/800…/K27NN4-2026-05-24-060016).
前者の発表では,カハールが提唱したニューロン説と,それを支えた精緻な観察に基づく視覚的思考が,神経系を「個々のニューロンが連結するネットワーク」として捉える新しい視点につながったことを示してくれました.そしてその視点が,後のシナプス研究やコネクトミクスへと発展し,現代神経科学の基盤を築いたことを紹介してくれました.
後者の発表は,まったく異なる興味深い切り口でした.芸術的観点からカハールの業績を見つめ直し,彼の美しい神経細胞スケッチがSalvador Dalíをはじめとするシュルレアリスム(超現実主義)の芸術家たちに影響を与えたこと,さらにカハールが描き出したニューロンの世界が現代芸術にも影響を与え続けていることを紹介してくれました.科学と芸術が響き合う探究の原点として,あらためてカハールの存在の大きさを感じる発表でした.
座長を務めてくださった木村和美先生,そして会場にいらした河村満先生からも「とても素晴らしい発表でした」と温かいお言葉をいただき,学生たちも大きな励みになったようです.今回の経験を通して,学会という場で,自ら学び調べたことをみんなに伝える喜びを感じてもらえたことを嬉しく思っています.この経験を次の学びにつなげ,それぞれの学生生活をさらに充実したものにしてほしいと思います.

肥満は全身に炎症を起こし,三叉神経を傷つける?―透明化×AIで全身を細胞レベルで解析したNature論文
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年5月25日のFB投稿です***
今回ご紹介するのは国際共同研究グループによるNature誌掲載論文です.責任著者は全身透明化モデルで有名なAli Ertürk教授で,さらにAIを組み合わせることで,「肥満が全身の神経系と免疫系にどのような変化を引き起こすか」を細胞レベルで可視化し,意外な結果を見出した研究です.
本研究で開発されたのは,「MouseMapper」と呼ばれるAI解析システムです.マウスの全身を透明化し,ライトシート蛍光顕微鏡で撮影した巨大な3D画像データをAIによって解析することで,全身の神経線維,免疫細胞,臓器構造を自動認識できるようにしました.研究では,高脂肪食を16〜18週間投与した肥満マウスを使用しています.まず,Uchl1-eGFPマウスを用いて末梢神経全体を可視化しました.Uchl1(別名PGP9.5)は古くから末梢神経を含むニューロンのマーカーとして広く使われています.動画では,透明化されたマウスの全身を,緑色の末梢神経が縦横無尽に走行する様子が立体的に描出されており圧巻です.脊髄神経から脂肪組織へ向かう長い神経束や,顔面を走行する三叉神経の分枝まで明瞭に観察できます.まさに「神経ネットワークを全身レベルで見る」時代が来たことを実感させる映像です.
つぎにCd68-eGFPマウスを用いて,肥満による炎症反応も解析しています.CD68は「炎症性マクロファージ浸潤」を見る代表的マーカーです.動画では,肥満マウスの全身に広がるマクロファージ集積が観察でき,特に内臓脂肪や肝臓周囲で巨大な炎症クラスターが形成されている様子が印象的です.著者らは,これらの免疫細胞集積をAIによって自動分類し,「小」「中」「大」のクラスターとして定量化しました.その結果,肥満では小クラスターが減少し,中〜大規模クラスターが著明に増加していると述べています.つまり慢性炎症が高度化していることを意味します.COVID-19の予後予測因子として肥満が指摘され,炎症との関わりが推測されていましたが,この図だけで説得力があります.
本研究で最も重要な発見は,「肥満によって三叉神経系が障害される」という点です.著者ら全身スクリーニングにおいて「頭部の神経密度低下」が目立ったため,三叉神経第2枝,すなわち眼窩下神経に注目しました.これはマウスの「ヒゲ感覚」,すなわち,顔のヒゲ(vibrissae)を使って周囲環境を触覚的に認識する重要な神経です.AI解析の結果,肥満マウスでは,この神経の末梢分枝が著明に減少していました.神経終末数,分枝数,ネットワーク複雑性が大幅に低下していました.一方,神経幹そのものの太さは保たれていましたので,神経全体が脱落するのではなく,末梢への軸索伸長や分枝形成が障害されていることを示唆しています.実際にヒゲ刺激試験を行ったところ,肥満マウスではヒゲ刺激への反応低下が認められました.つまり,構造異常だけでなく感覚機能障害も実際に生じていたことになります.肥満が感覚神経系に影響することは以前から指摘されていたそうですが,本研究は,その構造学的基盤を直接可視化したことになります.
著者らは,このような神経障害が起きる機序を調べるため,三叉神経節の空間プロテオミクス解析も行っています.その結果,「アクチン細胞骨格制御」「Rho GTPase」「軸索誘導」関連経路の異常が明らかになりました.これらは神経軸索の形成や神経可塑性に必須の分子経路です.また,「補体系」「ERBB signaling」「スフィンゴ脂質経路」など炎症関連経路も異常を示していました.つまり,肥満による慢性炎症が,神経リモデリング異常を引き起こしている可能性があります.さらに重要なのは,これらの変化がヒトでも確認できた点です.著者らは,肥満者の剖検三叉神経節を解析し,マウスと同様に「軸索誘導」「細胞骨格制御」「神経変性関連経路」の異常を確認しています.
本研究は,「肥満は単なる代謝異常ではなく,全身神経系・免疫系を再構築してしまう全身疾患である」ことを示した点が最大の意義と思います.また脳神経内科的には,「肥満が三叉神経系を障害する」という発見は新規性が高く,肥満患者における顔面の感覚異常や片頭痛などとの関連も今後注目されるのかもしれません.
Kaltenecker D, et al. A deep-learning framework reveals whole-body perturbations at cell level. Nature. 2026. doi:10.1038/s41586-026-10535-2. PMID: 40459471.
動画は著者であるAli Max Erturk博士(@erturklab)がxで公開したもの.

「脳内リンパ系システム(完全版)」が簡単に聴けるようになりました@ドクターサロン
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年5月27日のFB投稿です***
先日もご紹介しましたが,ラジオNIKKEIの「ドクターサロン」で,「脳内リンパ系システム」についてお話ししました.ラジオ放送では時間の都合で一部を短縮していましたが,今回,完全版がWebで公開されました.アプリののダウンロードも不要で,コメント欄にあるリンクよりすぐにお聴きいただけます.
スピーチはあまり得意な方ではないのですが,案外なめらかに話しております(笑).よろしければ,ぜひ気軽にお聴きいただければ嬉しいです.
15分ほどの短い番組ですが,脳の老廃物を排出する「脳内リンパ系システム」という,近年とても注目されているテーマについて,できるだけわかりやすくお話ししました.驚くべき最近の脳研究の進歩を,多くの方に知っていただき,日々の脳の健康につながるきっかけになればと思っています.また,この放送のために準備したスライド資料も公開しています.あわせてご覧いただくと,より理解しやすいと思います.

多系統萎縮症を脳脊髄液で診断する時代へ―TPPP/p25が切り開くMSA研究の新たな転換点(Cell掲載論文)
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年5月30日のFB投稿です***
多系統萎縮症(MSA)は,パーキンソニズム,小脳性運動失調,自律神経障害を主徴とする進行性の神経変性疾患です.病理学的にはオリゴデンドロサイト内に形成されるglial cytoplasmic inclusion(GCI)が特徴で,その本態はα-synucleinの蓄積です.一方,臨床では,特に発症早期例においてパーキンソン病との鑑別が難しく,診断に苦慮する場面が少なくありません.また近年,α-synucleinのseed amplification assay(SAA)が注目されていますが,α-synucleinはパーキンソン病やLewy小体型認知症にも共通するため,MSAに特異的な診断法の開発が期待されていました.
こうしたなか,中国の共同研究グループが,Cell誌に極めて注目すべき論文を発表しました.本研究は,オリゴデンドロサイトに豊富に存在するTPPP/p25タンパクに着目し,そのアミロイドseed活性を脳脊髄液から検出することで,MSAを高精度に診断できることを示したものです.TPPP/p25(tubulin polymerization promoting protein, p25)は,主にオリゴデンドロサイトで働く微小管関連タンパクです.名前の通り,中心的な役割はtubulinの重合を促進し,微小管を安定化することですが,GCIにも含まれるタンパクです.この研究はTPPP/p25がどのように凝集するのかという分子機序を構造レベルで明らかにし,その知見をそのまま診断法へ結びつけた完成度の高いトランスレーショナルリサーチと言えます.
本研究の出発点は,TPPP/p25が通常どのような構造で存在しているかを解析したことでした.TPPP/p25は中央のCORE領域と,その両端にあるN末端領域(NTR)およびC末端領域(CTR)から構成されています(図上左).アミロイド化しやすいのは中央のCOREですが,正常では両端のNTRとCTRがCOREを包み込むように保護しており,凝集を防いでいます.著者らはこれを「self-protection」と表現しています.つまりTPPP/p25は,危うい中心部を自ら守りながら存在しているタンパクといえます.
次に著者らは,「この保護機構が壊れると何が起こるのか」を検証しました.驚いたのは,主にパーキンソン病を対象とするデータベースであるPPMIの患者データベースからTPPP/p25遺伝子のA119V変異を見いだしたことです.OMIM 608773を見てみると過去に何らかの疾患の遺伝子としては報告されていないようですが,以前からMSA関連蛋白としてよく知られていたようです.この変異をもつTPPP/p25ではタンパクの安定性が低下し,NTRとCTRによるCOREの保護が弱まっていました.その結果,普段は隠れているCOREが露出し,病的なseedをきっかけにアミロイド線維を形成しやすくなることが示されました.さらに著者らはクライオ電顕を用いて,TPPP/p25アミロイド線維の三次元構造を解析しました.正常時にはα-helixを含むCOREが,アミロイド化するとβ-sheet主体の線維構造へ大きく再編成されており,病的な構造転換が実際に可視化されました.
図は,この流れを分かりやすく示しています.上段では,正常のTPPP/p25でNTRとCTRがCOREを包み込んでいる様子が描かれ,terminal truncation(つまりN末端やC末端が切れて短くなること)や病的環境によってその保護が外れると,露出したCOREがアミロイド線維を形成することが模式的に示されています.右端にはクライオ電顕で再構築された線維構造が描かれています.
著者らはつぎにCOREの最小断片であるminiCOREを人工的に作製しました.このminiCOREは,病的TPPP/p25 seedが存在すると鋳型依存的に急速凝集するよう設計されています.患者の脳脊髄液に微量の病的seedがあれば,それをきっかけにminiCOREが次々と線維化し,蛍光シグナルとして増幅されます.図下には,このseed amplification assayが示されており,時間経過とともにシグナルが急速に立ち上がる典型的な増幅曲線が描かれています.患者検体で調べてみると, MSA患者の脳脊髄液ではTPPP/p25 seed活性が明瞭に検出され,パーキンソン病やLewy小体型認知症,進行性核上性麻痺,アルツハイマー病,健常対照と高い精度で区別できました.特にMSAとパーキンソン病の鑑別では感度96.4%,特異度90.9%(!)という優れた成績でした.さらにTPPP/p25抗体による免疫除去でシグナルが消失し,一方でAβやtau,α-syn除去では消失しなかったことから,検出しているのが確かにTPPP/p25そのものであることも確認されています.
この研究の大きな意義は,MSAをα-synucleinopathyではなく,オリゴデンドロサイト病理を呈する疾患として定義した点にあるように思います.上述した通り,TPPP/p25はオリゴデンドロサイトに豊富に発現し,MSAで特徴的なGCIにも集積するタンパクです.つまり本研究は,どのタンパクが蓄積しているかだけでなく,「どの細胞で病態が進んでいるか」を脳脊髄液から読み出せる可能性を示しました.今後は早期MSAや前駆期の診断が行われ,治験への患者登録精度の向上,さらにはTPPP/p25そのものを標的とした新規治療へもつながる可能性があります.MSA研究における新たな転換点として,今後,注目される論文と思います.
Zeng S, et al. TPPP/p25 amyloid seeding activity as a specific biomarker for multiple system atrophy. Cell. 2026 May 26:S0092-8674(26)00517-9. doi:10.1016/j.cell.2026.04.050. PMID: 42190663.

感染予防より帯状疱疹ワクチンの“補助役”が脳を守っている?認知症を減らすのはワクチンか,アジュバントか.
***岐阜大学医学部下畑先生の2026年5月31日のFB投稿です***
米国神経学会(AAN)ポッドキャストで取り上げられた注目論文です.英国Oxford大学のチームが,npj Vaccines 誌に報告した,AS01アジュバントを含むワクチンと認知症の関連を検討した研究です.アジュバントとは,ワクチンに対する免疫の反応を強める「補助役」の成分です.近年,帯状疱疹ワクチンが認知症の発症を減らす可能性が次々報告されていますが,その機序は十分分かっていません.つまり感染予防が効いているのか,あるいはワクチンに含まれる免疫賦活成分が効いているのか,検討したという研究です.
今回の主役であるAS01は,GSKが開発したアジュバントです.組み換え帯状疱疹ワクチンShingrixにも,高齢者肺炎を防ぐRSVワクチンArexvyにも共通して含まれています.一方,インフルエンザワクチンには含まれていません.AS01の構成成分は体に入ってきた異物を最初に見つけて,免疫に知らせる見張り役のTLR4(Toll-like receptor 4)を刺激するmonophosphoryl lipid A(MPL)と,植物由来のサポニンであるQS-21です.後者は植物由来成分で,免疫細胞の働きを高めて抗原への反応を強める増幅役です.両者を組み合わさることで,高齢者でも強い免疫が得られるのが特徴です.つまり樹状細胞やマクロファージを活性化し,IFN-γを中心とした免疫応答を強く誘導します.著者らは,このAS01が感染予防に加えて神経保護にも関わっている可能性を検証したわけです.
解析には電子カルテデータベースが用いられました.対象は60歳以上で,RSVワクチンのみ接種群35,938人,帯状疱疹ワクチンのみ接種群103,798人,両者の接種群78,658人を抽出し,インフルエンザワクチン接種者と比較しました.主要評価項目は,接種3か月後から18か月以内の認知症の新規診断でした.
最も重要なのは図1です.認知症リスク,negative control,帯状疱疹発症の3つが並んで示されています.認知症の欄を見ると,RSVワクチンのみ群はインフルエンザワクチン群よりRMTL比(Restricted Mean Time Lost:制限平均損失時間)0.71で有意に低く,帯状疱疹ワクチンのみ群も0.82,両方接種群では0.63でした.いずれも1を下回っており,認知症と診断されるリスクが低下していました.一方,RSVワクチンと帯状疱疹ワクチンを直接比較しても差はありませんでした.また,両方を接種しても,片方だけを接種した群より有意にリスク低下するわけではありませんでした.もし認知症リスク低下が感染予防だけによるなら,帯状疱疹とRSVという別々の感染を防ぐ両方接種が,最も強い効果を示すはずです.しかし実際には,RSVワクチン単独,Shingrix単独,両方接種のあいだに大きな差はみられませんでした.以上の結果から著者らは,感染予防に加えて,共通成分であるAS01アジュバントそのものが認知症リスク低下に関与している可能性が高いと考察しています.
図2のKaplan–Meier曲線も印象的です.時間の経過とともに,AS01入りワクチン群とAS01を含まないインフルエンザ群の線が少しずつ開いていきます.RSVワクチン群では平均87日,Shingrix群では53日,両方接種群では113日,認知症と診断されず過ごす期間が延長していました.この差は時間とともにじわじわと広がっていきます.ワクチン接種の影響が一定期間持続していることを感じさせます.
では,AS01はどう脳に働くのでしょうか?著者らは,MPLによるTLR4刺激とQS-21による免疫増強が相乗的に働き,IFN-γを中心とした免疫応答を誘導すると考えています.動物実験では,TLR4刺激によりアミロイド病理が改善した報告がありますし,IFN-γはミクログリアや補体系を介してアミロイド除去に関わる可能性も指摘されています.つまり,AS01が末梢免疫を介して神経免疫のバランスを整え,神経変性の進行を抑えているのではないか,というわけです.
ただし限界もあります.観察研究であり,因果関係はそもそも証明できません.RSVワクチン群の一部にはAS01を含まないPfizer製ワクチンが混在している可能性があります.追跡期間は18か月で,より長期の効果は分かりません.さらに帯状疱疹の生ワクチン(Zostavax)でも認知症リスク低下は報告されており,AS01が唯一の説明ではありません.現時点では,帯状疱疹感染を防ぐ効果に加えて,AS01による追加の免疫調整作用が上乗せされている可能性が考えられます.
とはいえ,本研究の意義は大きいと思います.従来は「感染を防げば認知症が減る」という見方が中心でしたが,今回はそこからさらに進み,「アジュバントが神経免疫を調整し,脳を守る可能性」が新たに示されたわけです.アルツハイマー病研究ではアミロイドβだけ標的とする時代から移行し,神経免疫が重要な柱になりつつありますが,その流れの中で本研究は非常に刺激的です.今後,帯状疱疹ワクチンによる認知症リスク低下が,感染予防によるものなのか,AS01による免疫調整によるものなのか,あるいはその両者がどの程度関与しているのかを明らかにする必要があります.
Taquet M, et al. Lower risk of dementia with AS01-adjuvanted vaccination against shingles and respiratory syncytial virus infections. npj Vaccines. 2025;10:130. PMID: 40473884.

 

3.特別企画:AIに訊く
・「連載シリーズ:切り替えの物語 — AIとの対話から生まれた統合理論」No.2, No.3
第2回:SCAN が照らす“境界の世界” — ゆるみ・変動性・再編成

1. SCAN というレンズを手に入れる
前回は、歩行—走行切り替えという身近な現象の背後に、 「変動性の増大」「構造のゆるみ」「再編成の可能性」といった 深い構造が潜んでいることを見てきました。

今回は、その構造を理解するための最初の理論的レンズ、 SCAN(Sensemaking, Complexity, and Actionable Navigation) を取り上げます。

SCAN は、複雑な状況を 秩序(Order)/境界(Liminal)/混沌(Chaos) という三つの領域に分けて捉える枠組みです。

この「境界(Liminal)」こそが、 歩行—走行切り替えの核心にある“ゆるみの世界”です。

2. SCAN の三領域:秩序・境界・混沌
図4. SCAN における三領域(Order / Liminal / Chaos)。境界領域は構造がゆるみ、変動性が増大し、新しい秩序が生まれる可能性が開く。

SCAN の基本構造はとてもシンプルです。
• 秩序(Order) 安定していて、予測可能で、構造がはっきりしている領域。 歩行や走行のように、確立した運動パターンがここに属します。
• 境界(Liminal) 構造がゆるみ、変動性が増え、 新しい秩序が生まれる可能性が開く領域。 切り替えの瞬間はここにあります。
• 混沌(Chaos) 制御不能で予測が難しい領域。 SCAN は混沌を否定しませんが、 切り替え現象の中心はあくまで「境界」です。

SCAN の魅力は、 境界を“創造的な場”として扱う 点にあります。

3. 歩行—走行切り替えは、境界領域で起きている
歩行と走行は、それぞれ安定した秩序です。 しかし、切り替えの瞬間には、次のような現象が起きます。

• 歩行の安定性が低下する
• 変動性(Var⊥)が増大する
• 協調構造がゆるむ
• 新しい秩序(走行)が形成される

これは SCAN の境界領域の特徴と完全に一致します。

つまり、歩行—走行切り替えは 「境界領域での自己組織化」 として理解できるのです。

4. 変動性は“ノイズ”ではなく“ゆるみ”である
従来、変動性は「誤差」や「不安定さ」として扱われがちでした。 しかし SCAN の視点では、変動性はむしろ 再編成を可能にするための“ゆるみ” です。
• 秩序が強すぎると、変化は起きない
• 混沌が強すぎると、構造が保てない
• 境界では、構造がゆるみ、変化が可能になる

歩行—走行切り替えでは、 まさにこの「ゆるみ」が生じています。

5. 境界領域で起きること:探索・揺らぎ・再編成
境界領域では、次のようなプロセスが起きます。
1. 制約が重なり、構造がゆるむ
2. 変動性が増大し、複数の方向を探索する
3. 最短経路で新しい秩序へ移行する
4. 新しい秩序の内部で変動性が収束する

これは、筆者が構築している 制約幾何学 × 階層的再編成 × 最適面 という枠組みと完全に整合します。

6. SCAN は“切り替えの一般理論”の入口である
SCAN は、歩行—走行切り替えだけでなく、
• 組織の変革
• 学習の転換点
• 心のモード切り替え
• 社会システムの相転移
といった多様な現象にも適用できます。

つまり SCAN は、 筆者の統合理論の「最初の柱」として、 切り替え現象を理解するための 普遍的な地図 を提供してくれるのです。

7. 次回予告:VSM が描く“階層の再編成”へ
次回は、 SCAN の「境界領域」で起きる再編成を、 VSM(Viable System Model) の視点から見ていきます。
• なぜ階層構造がゆるむのか
• なぜ新しい階層が生まれるのか
• なぜ切り替えは“最短経路”で起きるのか

これらを、VSM の「階層的再編成」と結びつけて解説します。

***

第3回:制約幾何学 × 最適面~切り替えは“最短経路”として生じる~

1. 歩行と走行は「別の面」に乗っている
前回までの連載では、
• SCAN が示す「境界領域(Liminal)」
• VSM が示す「階層的再編成」 を通して、歩行→走行切り替えの“現象としての姿”を見てきた。

まずは SCAN の三領域を再確認しておこう。
Figure 4:SCAN の三領域(Order / Liminal / Chaos
身体運動を“許される動きの集合”として捉えたときの多面体(polytope)モデル。 歩行と走行は、この多面体の異なる面(face)として表現される。

では、なぜ切り替えは“あのタイミング”で起こるのか。 この問いに答えるために、本稿では 制約幾何学(Constraint Geometry) という視点を導入する。

制約幾何学は、身体運動を 「多数の制約の中で可能な動きの集合」=高次元の多面体(polytope) として捉える。
この多面体の中で、
• 歩行はある“面(face)”
• 走行は別の“面” に対応する。
Figure 5:制約多面体の概念図
身体運動を“許される動きの集合”として捉えたときの多面体(polytope)モデル。 歩行と走行は、この多面体の異なる面(face)として表現される。

つまり、歩行と走行は 同じ多面体の中の“別の場所”に存在する。

2. 最適面(Optimal Face)という考え方
多面体の中には、
• エネルギー
• 安定性
• 制御コスト などが最小になる“領域”が存在する。

これを 最適面(optimal face) と呼ぶ。

速度が低いとき、 身体は自然と「歩行の最適面」に乗っている。

しかし速度が上がると、 歩行の最適面から徐々に離れ、 代わりに「走行の最適面」が相対的に優位になる。
Figure 6:最適面の移動(歩行面 → 走行面)
速度上昇に伴い、歩行の最適面から離れ、走行の最適面へ移動する様子。 切り替えは“突然のジャンプ”ではなく、面間の最短経路として生じる。

3. 切り替えは“ジャンプ”ではなく“最短経路”
ここで重要なのは、 歩行の面から走行の面へ移るとき、 身体は 多面体の中を“最短経路”で移動する という点だ。
Figure 7:切り替え軌道の模式図(最短経路としての遷移)
多面体内部での“最短経路”としての切り替え軌道。 変動性の増大は、最適面からの離脱を示す指標となる。

つまり、切り替えは 突然のジャンプではなく、制約幾何学的に必然の“面移動” である。

4. SCAN × VSM × 最適面の統合
ここまでの議論をまとめると、 歩行→走行切り替えは次のように理解できる:
• SCAN → 切り替えは Liminal(境界領域)で起こる
• VSM → 切り替え時には階層の再編成が起こる
• 最適面 → 切り替えは多面体の“最短経路”として生じる

SCAN が「どこで起こるか」を示し、 VSM が「どう変わるか」を示し、 最適面が「なぜ起こるか」を説明する。

5. 切り替えの“必然性”
歩行→走行切り替えは、 単に「速度が速くなったから走る」のではない。

身体は、
• 許される動きの集合(多面体)の中で
• 最適な面を選び
• その面へ最短経路で移動する
という 幾何学的な必然性 に従っている。

6. 次回予告:3D 最小モデルで“実際に計算する”
次回(第4回)では、 ここで紹介した制約幾何学の考え方を 3D 最小モデル に適用し、
• アトラクタ
• 変動性の増大
• 切り替え軌道 を実際に可視化する。

 

関連情報&リンク
・今回までの連載シリーズ記事へは、こちらから

・本連載シリーズに関連する学術資料(論文)は、シリーズの進展に合わせ順次掲載しています。
論文1:SCAN × モード切り替え ・・・・ 掲載済み
論文2:VSM × 階層的再編成   ・・・・ 掲載済み
論文3:制約幾何学 × 最適面    ・・・・ 掲載済み
論文4:3D 最小モデル      ・・・・ 未掲載
論文5:統合論文(今回の完成稿)  ・・・・ 未掲載

・その他の連載記事へは、こちらから

(作成者)峯岸 瑛(みねぎし あきら)

カテゴリー
「オノ」型ハンマー アルツハイマー病 パーキンソン病 ポールウオーキング マイクロプラスチック 抗体陰性重症筋無力症 機能性感覚障害 機能性発作 機能性神経障害の診療 神経学の父・カハール 神経学教育 神経眼科所見 脳内ナノリンパ管様構造の発見 薬剤性パーキンソニズム 血漿p-tau217 運動の多様性

2026年2月のニュース

今月のPW関連学術ニュースは、2つの論文「身体活動の多様性が高いほど、死亡率が低下する」「パーキンソン病はSCANを中心とするネットワークの疾患である」の紹介と、岐阜大学医学部の下畑先生からの最新医学情報です。

特別企画「AIに訊くNo.2」は、「ポールウォーキングの運動中枢・脳内ネットワークへの影響について」の前編です。

1.2026年2月の活動状況
中村 理さんの投稿
我が御代田町の高齢者に優しいサービス〜ww 始まる❗️ この4月より 高齢者の社会参加や健康促進を目的に 「御代田町ずくだすポイント」制度が開始します。 l 65歳以上を対象にボランティアだけでなく、自身の介護予防の為の活動へ付与されます。 参加・活動1回(ポイント)¥100が〜❗️Max100ポイント/年。 指定口座に振り込まれます。

田村 芙美子さんの投稿
見事に咲き誇る垂れ梅 日蓮聖人の龍ノ口法難に由来する「龍口寺輪番八ヶ寺」の1つ常立寺 腰越行政センターでウォーミングアップのあとポールウォーキングで腰越の垂れ梅で名高い常立寺を訪ねました。少々距離が遠かったので残念ながら手押し歩行器のお二人は途中でUターン。古い広大な豪邸と新しい瀟洒な建物が混在する腰越の山側の住宅地は不思議な発見がありました。往復通りがかった江ノ島近く龍口寺は節分の豆撒きの用意の真っ最中でした。

佐藤 ヒロ子さんの投稿
【ダイナミックストレッチ】 2026/2/3  厳寒にこれは楽しい 久しぶりのメニューです 北風を避けてバーベキュー広場 でやってみました #船橋ウォーキングソサエイティ #美姿勢ウォーキング #しっかり歩き #スクワット #シルリハ体操

スマイルチームさんの投稿
相模大野公共歩廊開通記念ポールウォーキング①/4

遠藤 恵子さんの投稿
介護予防運動→加圧トレーニング➕フェイスデザイン 小鼻というか鼻がデカくなってきたり マリオネットラインが気になるお年頃… me tooooo お客様に喜んでいただけます様に🙏🍀*゜ ✨【魔法のリフトアップイヤーカフ】ご購入された方は施術にお越しください💓 ここだけの話👂 特別価格で施術いたします😊 ご予約お待ちしております🙇‍♀️

水間 孝之さんの投稿
ポールdeウォークコーディネータースキルアップ講座&養成講座in鎌倉 40名を超える参加者です。 昨日の机上研修に今日は晴天の鎌倉で実技研修です。 全員無事に研修証書いただきました👌 事務局の皆さん、講師の皆さんお疲れ様でした‼️

田村 芙美子さんの投稿
昨日今日と、1泊2日のポールdeウォークコーディネータースキルアップ講座&第15回養成講座 @鎌倉 1日目は鎌倉芸術館で講演 と各地域の先進事例発表そして懇親会 2日目の今日は八旛宮や寿福寺を回り由比ヶ浜海岸までウォーキング。ランチは竹扇など。午後からグループ分けして事例発表会。 北海道から鹿児島までの参加者約50名の幅広い活動(ポールを介護や社会参加を繋ぐツールとする)をうかがい刺激を受けました。これからこんなことをしたい!と言う皆さんの話は大きな希望がありました。実現へ前向きに! 写真はほとんど撮れませんでした。

田村 芙美子さんの投稿
今日はまた神奈川健生クラブの三浦ネット担当の3月ハイキングの下見にPWで参りました。 寿福寺(大佛次郎・北条政子他のお墓巡り)~源氏山公園~葛原岡神社⛩️~銭洗弁財天宇賀福神社~佐助稲荷神社~歴史文化交流館。 前回厳しいと言っていたADさんも今日はなぜか楽でした!と驚いていました。ポール体操などで徐々に体力がついてきたからだと思います。 源氏山公園は4才児~中高生のグループまでたくさん。ちょうどお弁当を広げているところでした。 今年になっていろいろなグループの下見でこのコースは歩きすぎました。ので写真はランチのお蕎麦屋さん(志幸)と小豆とコーヒーのオガタさん。どちらもお勧めです。毎日お蕎麦の生活(笑)

スマイルチームさんの投稿
2026.2.4〜13 活動記録 ☺︎健康体操親睦会.梅の花 14名 ☺︎ポールウォーキング 11名 ☺︎スマイルチーム上溝 16名 ☺︎上鶴間公民館まつり出演者練習会 6名 ☺︎スマイルリズムエクササイズ 21名 ☺︎上溝、上鶴間、星が丘公民館舞台部門出演衣装準備 ☺︎活き活き中屋敷デュアルエクササイズ 11名 ☺︎上鶴間公民館祭り練習会、悪天候の為中止 ☺︎EEOA会報誌クイズ解答 ☺︎スマイルフレンズ 18名 ☺︎スマイルチーム光が丘 21名 ☺︎公民館祭り準備レジメ作成 ☺︎スマイルチーム上溝 18名 ☺︎リズムダンスサロン 20名 ☺︎上溝音源確認 ☺︎青空ポールウォーキング 6名

佐藤 ヒロ子さんの投稿
【打って変わっていい天気】  2026/2/14 雪の為の変則開催になりました  暑い位の良い天気です♬  個々の改善ポイントを意識 してのしっかり歩きで  海老川を上流を軽く1周!   スッキリ    シャッキリ      にっこりです♥ #船橋ウォーキングソサイエティ #2本のポールを使うウォーキング #土曜海老川コース #ストレッチ  #しっかり歩き 3月で終了する土曜コース

山下 和彦さんの投稿
Well-bingと足の深い関係 ~考える足のおはなし~

佐藤 ヒロ子さんの投稿
【少しだけハードなメニューで   体力アップ】  2026/2/16 #シニアポールウォーキング #サーキットトレーニング #バランスウォーキング #継ぎ足ウォーキング  #足型マットに移りながらお盆でボール運び

田村 芙美子さんの投稿
昨日は春のような暖かさ。今朝は冬の再来かと思う寒さ のなか行政センターでウォーミングアップ筋トレのあと腰越漁港の岬 小動神社までPWを楽しみました。小動(こゆるぎ)の名前は かつてこの地にあった、風がなくても揺れる「小動の松」が名称の由来だそうです。展望台からは江ノ島~大島~逗子~相模湾が一望です。ヨットレースの時は絶好の観覧席だったそうです。⛵⛵⛵ 腰越漁協直売所では 朝どれフライとメカブの天ぷらをテイクアウトしました。

佐藤 ヒロ子さんの投稿
【楽しい〜〜】 2 026/2/17 パワーウォーキング考案の ハート・ヴッヒ・ガウター直伝 #コーデネーションウォーキング   このメニューをする度に   温かく懐かしい師を     思い出します あれから20年経ちました       船橋のメンバーは     今も師を忘れられません #パワーウォーキングの師 #船橋ウォーキングソサイエティ #美姿勢ウォーキング

田村 芙美子さんの投稿
昨日のPW教室はスローピングと階段昇降実技。今回のクラスでは、階段のポール使いは怖い怖いと不評でした。慣れれば楽ですが、手摺かエスカレーターをお使いください、と付け加えました。良い筋トレになるのですが・・・ ハチ公の後ろに小さな和風庭園が復活していました。と言うことはハチ公はどこかに移動せずこのままここにいるのかしら。 今日は鎌倉駅西口のポンポンケーキさんでティータイム。窓際から時計台広場や駅前がよく見下ろせます。青空に春を感じる温もりの連休一日目。更に温かくなる予報の明日は逗子のPW教室です。

中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より 2025年度最終PWイベントは 先月に続き体育館を借り切っての「室内ポールウォーク」〜 前半はポールウォーキング/シッカリ歩き〜ユックリ歩きまで。スクエアステップを取り入れてのリズミカルな歩きに挑戦も有りの、締めのPWに集まってくれた仲間たち〜❗️ 後半はお馴染み「3B体操/菊池コーチ」でポールを置いての運動で脳トレも取り入れての笑顔😁の楽しい体操で〜 計19回のイベントも怪我人事故無く無事終える事が出来ました。 参加者 コーチの皆さんに感謝〜感謝です。 3月は充電月でおやすみに〜 2026年度4/5のイベント始めの再会を約束し無事解散でした。

校條 諭さんの投稿
気ままにポール歩き(気まポ)、梅見の巻 京王井の頭線東松原駅に集合、世田谷区立羽根木公園で開催中の「せたがや梅まつり」を楽しみました。 コースは下記の約5キロでした。 東松原駅~羽根木公園~北沢川緑道~善性寺~赤松公園~下高井戸商店街~下高井戸駅~善照寺など四寺~神田川遊歩道~永福町駅 今日は暑くなると天気予報で脅かされてましたが、ほどよい暖かさで快適なウォーキングでした。ゆったりしたペースでしたが、ポールで地面を押して、全身運動を実感ました。 永福町駅近くの中華屋「四川料理 元祖麻婆豆腐」でカンパイしました。 ※写真の半分以上は田村和史君撮影です。

佐藤 ヒロ子さんの投稿
【福像巡り完結】   2026/2/21 土曜コースには散策スポットとして 福像があり海老川には個性的な13橋がかかっています。 数年かかりましたが、本日運動公園までの海老川上流の5像を巡って14スポットを全て回りきりました。 穏やかな陽を浴びながら いつものコースにある福像に こころを傾けた日になりました。   #船橋ウォーキングソサイエティ #2本のポールを使うウォーキング

新地 昌子さんの投稿
〜ウォーキングポールを相棒に仲間と巡る小さな旅〜 ぽる旅 第2弾🚶 JR水戸線下館駅で下車、約2時間の散策を楽しみました。下館はかつて「関東の大阪」と称されるほど(なんだか微妙なたとえのような気もしますが)商業で栄えた土地。今でも町のあちこちに古い洋館や立派な蔵が残っています。でも、参加者の皆さん口を揃えて、ここは車で通り過ぎてしまう通り、と。今日はポールを手にかつての賑わいを思い描きながら歩いてみると新たな発見がたくさんありました。 最後はしもだて美術館で開催中の「GOMAひかりの世界」展を鑑賞。 今日はラッキーなことに、GOMAさんご本人によるギャラリーツアーと、ディジュリドゥ(オーストラリアの先住民族の伝統楽器)の生演奏が。 「生の演奏も聞けてラッキーでした… 自分の逆境を希望に変えて… その考え方に勇気を貰いました」 こんな感想をいただきました😊

田村 芙美子さんの投稿
江ノ電藤沢駅は春もよう。 電車は梅やお雛様の方向幕。思わずウキウキしてきます🎶 SFAでは第2の青春、75歳からの「フレイルパーティ」。フレイルを恐れず80歳でも夢があれば青春。今日の北鎌倉のメンバー(73~86)は全員笑顔の青春時代真っ只中です。毎日愉しいことがいっぱい。🌸🌺🍀🌼🌱

佐藤 ヒロ子さんの投稿
【歩く前のストレッチ】   2026/2/26  12月で活動を休止する  木曜日コース  一人でもできるように願いながら  小冊子配布でポイント解説  ステップエクササイズ  しっかり歩き いつまでも自分の足で歩ける事を 願ってできる事を今日も心を込めて  伝えます。

 

来月以降の開催
台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
🌸✨ 2026 新春快樂 ✨🌸 雙杖在手,福氣跟著走! 新的一年, 感謝每一位夥伴陪伴台灣健走杖運動推廣協會一路成長。 從第一步開始,我們走過四季、走進城市與山海,也走進彼此的生命裡。 2026 年,讓我們繼續用雙杖迎接健康、活力與希望!💚 ——— 🎊 第一個好消息|會員大會 × 健走杖運動會 協會成立滿三年了! 我們謹訂於 2026/03/08(日) 召開 【第二屆第一次會員大會】。 會議與餐敘後, 將移動至戶外舉辦歡樂又熱血的 🏃‍♂️✨「健走杖運動會」✨🏃‍♀️ ——— 🇯🇵 第二個好消息|日本健走杖健走教練 初階培訓 2026「日本健走杖健走教練培訓」即將開課! 📆 課程日期:2026年04月12日(日) 09:00–17:00 📍 課程地點:台北市中山區吉林路24號12樓之1 想成為專業教練? 想更深入理解健走杖技術與教學系統? 這堂課, 將帶你從使用者走向專業引導者。 讓更多人因你而走得更穩、更遠、更健康。 ——— 🌿 第三個好消息|三得利 × 城市輕健走 台灣健走杖運動推廣協會再度攜手三得利, 展開 2026 年首場【城市輕健走】🎉 📅 2026/04/10(五)14:00–17:00 📍 地點:碧潭風景區 📌 報名時間:即日起至 3/10(二) 春日午後, 我們將漫步碧潭水岸, 在微風與湖光山色間, 用雙杖走出屬於城市的健康節奏。 新的一年,願大家健康常在、行動自由、笑容滿面。 🧧 新春快樂💚 雙杖在手,健康跟著走!

長岡智津子さんの投稿
写真1件

台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
2026「日本健走杖健走教練培訓」即將開課嚕~由日本骨科醫師創立的「日式健走」,手持雙杖輕鬆前行,不僅簡單安全,且有效地讓健走者維持和回復步行能力,更能達到全身運動效果,是越來越受歡迎的一項健康運動。課程中將帶你系統性學習「日式健走」的標準技術,掌握技能後持續練習,可幫助改善步行姿態,增加全身肌肉運動,也有助於增強健康活力!🇯🇵日本健走杖健走協會 NPWA 唯一授權海外課程! 【日本健走杖健走教練 初階培訓課程】 📆課程日期:2026年04月12日(日) 09:00–17:00 📍課程地點:台北市中山區吉林路24號12樓之1 (歐立達股份有限公司)完成培訓課程後,你可以: ✅取得課程研習證明 ✅指導親友學習日式健走若確認取得教練證書: ✅成為NPWA認證的日本健走杖健走初階教練 ✅取得參加日本健走杖健走進階教練培訓課程資格歡迎報名參加,詳細課程資訊及相關辦法請見 ➡️https://forms.gle/utaXeWeBEqShqsQF6📣補充 通過初階教練培訓者,可指導親友們學習日式健走。 若想要規劃與教導一般民眾學習日式健走,則需要再取得進階教練資格喔~

 

2.PW関連学術ニュース
2-1)身体活動の種類、多様性、および死亡率:2つの前向きコホート研究の結果
**大阪大学の宮坂昌之先生の2026年1月23日のFB投稿です**
「運動が健康に良い」ということは誰もが理解していることですが、では病気の予防に良いのはどのぐらいの運動量なのかとか、どの病気でも適度な運動量は同じなのか、とかについては、これまであまり良くわかっていませんでした。
この点、アメリカ・ボストンの研究グループが、調査開始時点で健康な(糖尿病、心血管疾患、呼吸器新患、神経系疾患、がんのいずれも持っていない)人、約11万名(女性約7万人、男性約4万人)について約40年間にわたり、運動量と病気による死亡リスクの関係について電子記録から調査を行い、その論文が専門誌BMJ Medicineに掲載されています(https://bmjmedicine.bmj.com/content/5/1/e001513)。なかなか読みにくい論文で、メッセージをつかむのに苦労したのですが、次のようなことが言えるかと思います。

まず1枚目の図では「どのぐらいの運動をするとそれぞれの病気による死亡率が下がるのか」を示しています。答えは「運動量がそれほど多くなくても、どの病気でも死亡率が下がり始めて、良い効果をもたらす運動量は(病気によって異なるが)1週間に5メッツ以上が一つの目安であろう」ということです。
ではメッツとは何を意味しているのでしょうか?2枚目の図です。メッツとは、運動の強度を示す単位で、安静時を「1」とした時に、特定の運動が何倍のエネルギーを消費するかを示します。つまり安静状態が1メッツ、普通歩行で3メッツ、ジョッギングで6メッツという具合です。そして1時間の運動量はMET-hours(メッツ・時)で表され、
運動量(MET-hours)=運動の強度(METs)x運動の時間(h)で計算されます。
たとえば、「週に5メッツ・時の運動量が必要」とは、1週間で行った運動の合計が「5」になればよい、ということです。
3枚目の図は、縦軸が全死因による死亡リスク、横軸が1週間の運動量ですが、各スポーツ種目における運動による死亡リスクの低減度が示されています。ここでも週に5メッツぐらいの運動量で死亡リスクが下がり始めることがわかります。ちなみに、週に5メッツぐらいの運動量を得るためには、ウォーキングで週90分、ジョッギングで45分、ランニングで30分、サイクリングで50分、スイミングで 45分、テニスで45分、ボート漕ぎで60分、ウェイトトレーニングで90分とのことですが、やり方によってこの数字はかなり変わってくるかもしれません。そして、複数の種目をやる人のほうが死亡率の下がり方は大きい傾向があるとのことでした。
以上、運動は健康に大事、特にさまざまな病気による死亡率を下げます。運動の種目や、そのやり方によっても異なりますが、一つの目安は「1週間5メッツ以上をやるのが良かろう」ということになると思います。

関連情報①
原論文
掲載誌:BMJ Medicine
公開日:20 January 2026publication details(open access)
表題:Physical activity types, variety, and mortality: results from two prospective cohort studies
(和訳:身体活動の種類、多様性、および死亡率:2つの前向きコホート研究の結果)
著者:Han Han, Jinbo Hu, Dong Hoon Lee, Yiwen Zhang, Edward Giovannucci, Meir J Stampfer, Frank B Hu, Yang Hu, Qi Sun

要約
目的は、個人の身体活動への長期的な取り組みと身体活動の多様性と死亡リスクとの関連性を調べることです。
・前向きコホート研究を設計する。
・看護師健康調査(1986~2018年)および医療専門家追跡調査(1986~2020年)の設定。
・参加者は、糖尿病、心血管疾患、癌、呼吸器疾患、神経疾患がなく、ベースラインで完全な身体活動情報を有していた女性70,725名と男性40,742名でした(余暇時間の身体活動は、追跡期間中、有効な質問票を使用して2年ごとに更新されました。身体活動の種類は、参加者が継続的に行った個々の身体活動の合計数として測定されました)。
・主な評価項目は全原因死亡率と原因別死亡率です。
結果: 2,431,318人年の追跡期間中に38,847人の死亡が記録され、うち9,901人が心血管疾患、10,719人が癌、3,159人が呼吸器疾患によるものでした。総身体活動量と、水泳を除くほとんどの個人的身体活動は、非線形の用量反応関係を伴い、死亡率の低下と関連していました。身体活動レベルが最も高いカテゴリーの全原因死亡率の多変量補正ハザード比を最も低いカテゴリーと比較すると、ウォーキングでは0.83(95%信頼区間0.80~0.85)、ジョギングでは0.89(0.85~0.94)、ランニングでは0.87(0.80~0.93)、サイクリングでは0.96(0.93~0.99)、水泳では1.01(0.97~1.05)、テニスまたはスカッシュでは0.85(0.80~0.89)、階段昇降では0.90(0.87~0.93)、ボートまたは柔軟体操では0.86(0.84~0.89)、ウェイトトレーニングまたは抵抗運動では0.87(0.82~0.91)であった。身体活動の多様性が高いほど、死亡率が低下することが示されました。総身体活動レベルを調整後、身体活動の多様性スコアが最も高いグループ(グループ5)の参加者は、最も低いグループ(グループ1)の参加者と比較して、全死亡率が19%低下し、心血管疾患、がん、呼吸器疾患、その他の原因による死亡率は13~41%低下しました(傾向性に関するP値はすべて0.001未満)。
結論:ほとんどの種類の身体活動を習慣的に行うことは、死亡率の低下と関連していた。身体活動の種類は、総身体活動レベルとは無関係に、死亡率と逆相関していた。全体として、これらのデータは、複数の種類の身体活動を長期的に行うことが寿命を延ばすのに役立つ可能性があるという考えを裏付けている。

関連情報②
高齢者にお勧めの「有酸素運動、筋力トレーニング、バランス運動を組み合わせたマルチコンポーネント運動」については、2023年11月のニュースを参照下さい。

関連情報③
宮坂先生が主催される新年度(2026年度)の「信州上田みらい塾」開講のお知らせです。テーマは「知っておきたいからだの仕組みと医学常識―健康寿命を延ばすには?」です。
**先生の2026年2月28日のFB投稿はこちらから**

 

2-2)パーキンソン病はSCANを中心とするネットワークの疾患である!
― 新しいホムンクルスが示した病態理解のパラダイムシフト ―
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月12日のFB投稿です**
神経科学でもっとも有名な図のひとつに「ホムンクルス」があります.一次運動野の中で,身体のどの部位がどこに対応しているかを示した図で,神経外科医Wilder Penfieldが1937年に発表しました.この地図は,「脳は部位ごとに機能が割り当てられている」という神経科学の基本的な考え方を象徴するものです.
しかし近年,この古典的な理解が大きく書き換えられました.2023年にNature誌に報告された研究では,機能的MRIを用いた詳細な解析により,一次運動野は単なる身体部位の並びではないことが示されました.足,手,口といった運動を担うエフェクター領域の間に,身体の特定の部位に対応しない領域が存在し,思考,行動計画,自律神経機能,身体内部の状態といった情報を統合していることが明らかになったのです.この領域は身体認知行動ネットワーク(somato-cognitive action network;SCAN)と名付けられました(図左).
SCANは,単に筋を動かす領域ではありません.覚醒状態,自律神経機能,身体内部の状態,動機づけや意図といった情報を統合し,「行動を実行する準備状態」を形成するネットワークと考えられています.つまり一次運動野には,「個々の筋を正確に動かす仕組み」と,「それらを統合して行動として成立させる仕組み」という,二つのシステムが存在していたことになります.この発見の本質は,ホムンクルスの形が変わったことではなく,脳の働きを「場所」ではなく「つながり」として理解する必要があることを示した点にあります.
ここで重要なのは,この新しいホムンクルスの概念,とくにSCANの存在が,臨床神経学の問題につながる可能性を持っていることです.もし個々の筋の動きは保たれていても,それらを統合して行動として成立させる仕組みが障害されたとしたらどうなるか?動く力はあるのに動き出せない,状況によって動きやすさが変わる,外的なきっかけによって動作が改善する――こうした現象が生じるはずです.
これはパーキンソン病(PD)の姿とよく似ています.PDの症状は単純な運動障害ではありません.時間帯や環境によって動きやすさが変化し,音楽や外的刺激によって歩行が改善することがあります.また「動き出すこと」が難しく,「すくむ」という特徴が前景に立ちます.さらに,便秘や睡眠障害,嗅覚低下,抑うつや意欲低下といった非運動症状が早期から認められます.これらは,単に筋を動かす回路の障害ではなく,行動の開始や全身状態の調整に関わるより広い仕組みの障害を示唆してきました.
今回Nature誌に報告された中国を中心とする国際共同研究は,まさにこの点を「脳ネットワーク」という観点から検証したものです.研究者らはSCANに注目し,大規模な機能画像データを用いてPDの病態を解析しました.本研究のアイデアが図右です.黒質,視床下核,淡蒼球,視床といったPDに関与する皮質下構造が,大脳皮質の手や足の運動領域ではなく,SCANと強く結びついていることを示しています.
図下は重要な結果ですが,PDにおいて異常が生じているネットワークの位置関係が模式的に示されています.従来,PDは黒質から基底核を経て運動野へ至る「運動回路」の障害として理解されてきました.しかしこの図では,これらの皮質下構造が一次運動野のエフェクター領域よりもSCANと強く結合していることが示されています.すなわち,PDで障害されているのは個々の筋を動かす回路ではなく,覚醒状態や身体内部の状態,動機づけといった情報を統合し,「行動を開始できる状態」を作るネットワークである可能性が示唆されています.この視点に立つと,動きそのものよりも動き出しにくさが目立つ理由や,自律神経症状や意欲低下が同時に生じる理由が理解しやすくなります.
さらに驚いたのが治療の影響です.本研究では,レボドパ治療,深部脳刺激(DBS),経頭蓋磁気刺激(TMS),集束超音波治療(FUS)といった異なる治療法は共通してSCANと皮質下構造との過剰な機能的結合を正常化することが示されました.特にSCANを標的としたTMSでは,従来の運動領域を刺激した場合よりも大きな症状改善が得られています.現在行われている治療は,結果としてこのネットワークの異常を調整している可能性があります.
19世紀末,カハールは個々の神経細胞から構成されることを示し,ニューロン説を確立しました.この発見によって,脳は「どの場所がどの機能を担うのか」という観点から研究されるようになり,20世紀の神経学は局在論を基盤として発展してきました.PDもまた,黒質という特定の部位の変性によって説明されてきた代表的な疾患です.しかし近年,脳画像解析と計算科学の進歩により,脳は単独の領域ではなく,多数の領域が相互に結びついたネットワークとして機能していることが明らかになってきました.いわゆるコネクトーム研究です.今回の研究は,PDの症状を個々の運動回路の障害としてではなく,行動を成立させるネットワーク全体の異常として説明できる可能性を示しました.これは,カハールが明らかにした「神経細胞」という単位から,その「つながり」へと神経科学の関心が移行していることを示す一例といえるのではないでしょうか.
Gordon EM. A somato-cognitive action network alternates with effector regions in motor cortex. Nature. 2023;617:7960. PMID: 37076628
Ren J. Parkinson’s disease as a somato-cognitive action network disorder. Nature. 2026. PMID: 41639440.

関連情報
① 原論文
掲載誌:Nature (2026) Open access
公開日:Published: 04 February 2026
表題:Parkinson’s disease as a somato-cognitive action network disorder
(和訳:パーキンソン病は体性認知行動ネットワーク障害である)
著者:Jianxun Ren, Wei Zhang, Louisa Dahmani, Evan M. Gordon, Shenshen Li, Ying Zhou, Yang Long, Jianting Huang, Yafei Zhu, Ning Guo, Changqing Jiang, Feng Zhang, Yan Bai, Wei Wei, Yaping Wu, Alan Bush, Matteo Vissani, Luhua Wei, Carina R. Oehrn, Melanie A. Morrison, Ying Zhu, Chencheng Zhang, Qingyu Hu, Yilin Yin, …Hesheng Liu

要旨
パーキンソン病(PD)は治癒不可能な神経疾患であり、睡眠障害や身体症状から徐々に始まり、全身の運動症状や認知症状へと進行することが多い1 , 2 , 3 , 4 , 5。覚醒、臓器生理、全身の運動計画を行動動機と調整することで行動実行を制御すると考えられている6 , 7体性認知行動ネットワーク(SCAN)の機能不全は、PDの多様な臨床症状の潜在的な一因である。PDの病態生理と治療(薬物療法、脳深部刺激療法(DBS)、経頭蓋磁気刺激療法(TMS)、MRI誘導集束超音波刺激療法(MRgFUS))におけるSCANの役割を調査するために、我々は大規模な(n  = 863)、マルチモーダル、マルチ介入臨床画像データセットを構築した。安静時機能的連結性により、黒質およびすべてのPD DBS標的(視床下核、淡蒼球および中間視床腹側部)は、効果器特異的な運動領域ではなく、SCANに選択的に連結されていることが明らかになった。重要なことに、PDはSCANと皮質下の特異的な過剰連結によって特徴付けられる。そこで我々は、精密な安静時機能的連結性と皮質電気記録を用いて、DBS、TMS、MRgFUSおよびレボドパ療法を受けている6つのPDコホートを追跡調査した。有効な治療によりSCANから皮質下の過剰連結が減少した。効果器領域の代わりにSCANを標的とすることで、TMS治療の有効性が2倍になった。集束超音波治療の利点は、標的が視床SCANスイートスポットに近いほど増加した。したがって、SCAN過剰連結はPD病態生理学の中心であり、その緩和は神経調節成功の特徴である。機能的に定義された皮質下 SCAN リンパ節を標的とすることで既存の治療法 (DBS、MRgFUS) が改善される可能性がある一方で、皮質 SCAN 標的は PD に対する効果的な非侵襲的または低侵襲的神経調節を提供します。

図 1: パーキンソン病において極めて重要な 6 つの皮質下領域の皮質機能的連結性。
a、シードベースRSFC(Z(r))マッピングにより、PD患者の大規模サンプル(PIPDデータセット、n  = 166)を使用して、一次運動野(M1)ストリップに3つの異なるインターエフェクタ領域を持つSCANモチーフが明らかになりました。PD患者とHC患者のグループ平均RSFCマップと個人固有のマップは、拡張データ図1に示されています。b 、PD回路の6つの皮質下ノード(SN、STN、VIM/CM、GPi、GPe、および被殻)の平均RSFCマップは、PD患者のSCANへの選択的な機能的接続を示しています。各皮質下リンパ節について、棒グラフは、効果器特異的(足、手、口)領域よりも SCAN 内で有意に強い接続性を示しています(下;両側対応のあるt検定、FDR 補正、P  = 1.43 × 10 − 24(SN)、P  = 2.97 × 10 − 18(STN)、P  = 6.10 × 10 − 20(VIM/CM)、P  = 2.55 × 10 − 25(GPi)、P  = 6.34 × 10 − 39(GPe)、P  = 6.79 × 10 − 39 (被殻))。データは平均 ± sem です。正中線ビューを含むリンパ節特異的 RSFC マップについては、拡張データ図2 を参照してください。補足図1 は、HC 患者において、皮質下から SCAN への RSFC が皮質下から効果器への RSFC よりも強いことを示している (すべてP  < 0.001、PIPD データセット、n  = 60)。c 、 PD で重要な皮質 – 皮質下回路の図。この回路は SCAN と 6 つの皮質下結節から構成されています。新たに認識された SCAN 領域 (紫) は、M1 内の効果器特異的運動領域 (青) の間に挿入されています (ref. 6 )。緑色の線と赤色の線は、それぞれ興奮性投射と抑制性投射を表しています。皮質 –STN 投射は、ハイパーダイレクト経路を示しています。PD 治療のための FDA 承認の DBS ターゲットが強調表示されており、STN、GPi、VIM が含まれています。詳細を追加した図のバージョンは、補足図3に示されています。*** P  < 0.001。
(注)解説文中のHC患者とは、「Healthy Control(健常対照)」の略です。

② 関連論文
掲載誌:Nature volume 617, pages351–359 (2023) Open access
公開日:19 April 2023
表題:A somato-cognitive action network alternates with effector regions in motor cortex
(和訳:体性認知行動ネットワークは運動皮質の効果器領域と交互に働く)
著者:Evan M. Gordon, Roselyne J. Chauvin, Andrew N. Van, Aishwarya Rajesh, Ashley Nielsen, Dillan J. Newbold, Charles J. Lynch, Nicole A. Seider, Samuel R. Krimmel, Kristen M. Scheidter, Julia Monk, Ryland L. Miller, Athanasia Metoki, David F. Montez, Annie Zheng, Immanuel Elbau, Thomas Madison, Tomoyuki Nishino, Michael J. Myers, Sydney Kaplan, Carolina Badke D’Andrea, Damion V. Demeter, Matthew Feigelis, Julian S. B. Ramirez, …Nico U. F. Dosenbach

要旨
運動皮質 (M1) は、同心円状の機能領域3や複雑な動作のマップ4の証拠があるにもかかわらず、足から顔の表現1 , 2まで中心前回を下って伸びる連続した体部位ホムンクルスを形成すると考えられてきました。本研究では、精密機能的磁気共鳴画像法 (fMRI) 法を使用して、古典的なホムンクルスが、効果器特有の (足、手、口) 領域と交互に、異なる接続性、構造、機能を持つ領域によって中断されていることを発見しました。これらの効果器間領域は、皮質の厚さが減少しており、互いに、また、動作5と生理学的制御6、覚醒7、エラー8、痛み9に重要な帯状蓋蓋ネットワーク (CON) との機能的接続が強力です。動作制御に関連する領域と運動効果器領域のこの嵌合は、3つの最大の fMRI データセットで検証されました。マカクザルおよび小児(新生児、乳児、小児)の精密fMRIは、インターエフェクターシステムの種間相同体および発達的前駆細胞の存在を示唆した。一連の運動および行動fMRI課題において、CONに連結されたインターエフェクター領域によって分離された同心円状のエフェクター体部位が記録された。インターエフェクターは運動特異性を欠き、行動計画(手足の協調)および体軸方向運動(腹部や眉毛など)の際に共活性化した。これらの結果は、刺激誘発性の複雑な行動4および副腎髄質などの内臓10への接続性を示す先行研究と合わせて、M1は全身行動計画のためのシステムである体性認知行動ネットワーク(SCAN)によって区切られていることを示唆している。 M1 では、2 つの並列システムが絡み合って、統合 – 分離パターンを形成します。効果器固有の領域 (足、手、口) は微細運動制御を分離し、SCAN は目標、生理機能、体の動きを統合します。

図1:一次運動野の精密機能マッピング。
a、1人の被験者(P1、356分の安静時fMRI)の左前中心回の皮質部位の連続線からシードされたRSFC。示されている6つのサンプルシードは、観察されたすべての異なる接続パターンを表しています(完全なマッピングについては補足ビデオ 1を参照)。これらの位置からシードされた機能的接続は、足(1)、手(3)、口(5)を表す領域の古典的なM1接続、および強く相互接続された領域(2、4、6)の噛み合ったセットを示しています。すべての高度にサンプリングされた参加者については拡張データ図1aと補足ビデオ 2を、参加者内複製については拡張データ図1bを、グループ平均データについては拡張データ図1cを参照してください。 b 、離散的な機能ネットワークは、図1で観察されたネットワークの空間的範囲(黒のアウトライン)を定義した、安静時fMRIデータに適用された全脳、データ駆動型、階層的アプローチ(方法)を使用して区別されました。 RSFC によって定義された領域は、足、手、舌を別々に動かす古典的なブロック設計 fMRI 運動タスクを使用して機能的にラベル付けされました (文献31に従います。詳細は文献29 を参照してください)。このマップは、模範的な参加者 (P1。他の参加者については拡張データ図1dを参照)の足、手、口の動きによって活性化される頂点の上位 1%を示しています。c 、効果器間の接続パターンは、接続閾値が 80 パーセンタイルから 97 パーセンタイルに増加するにつれて、周囲の効果器固有の運動領域とより明確に区別できるようになりました。効果器間パターンを検出するために必要な RSFC 閾値は、個人固有のデータ (上) の方がグループ平均データ (下、ABCD 研究、 n  = 3,928)よりも低かったです。

図 4: 中断されたホムンクルス、行動と運動制御の統合-分離モデル。
a , ペンフィールドの古典的なホムンクルス(文献2より改変)。一次運動野の身体の連続地図を示している。b , M1組織化の統合-分離モデルでは、効果器固有の機能領域(足(緑)、手(シアン)、口(オレンジ))が同心円で表され、近位の身体部分が比較的分離しやすい遠位の部分(つま先、指、舌)を囲んでいる。効果器間領域(えび茶色)はこれらの領域の交差点に位置し、統合的でアロスタティックな全身制御のための体性認知行動ネットワークの一部を形成している。ペンフィールドの元の図と同様に、この図は組織化の原理を示すことを目的としており、正確な地図として過度に解釈してはならない

 

2-3)岐阜大学医学部の下畑先生からの最新医学情報(2026年2月)
・脳外科の先生方と議論した「機能性神経障害の診療」@第68回ニューロ・オンコロジィの会
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月1日のFB投稿です**
伝統ある第68回ニューロ・オンコロジィの会にて,特別講演の機会を頂きました.当番世話人を務められたのは,新潟大学の同級生である近貴志先生です(写真右).同級生が座長を務める会で講演をさせていただくというのは,本当に嬉しく,感慨深い経験でした.
今回の講演テーマである機能性神経障害(FND)は,脳神経内科領域では近年注目されつつありますが,脳神経外科の先生方にとっては,まだ必ずしも馴染みの深い疾患とは言えないかもしれません.しかし実際には,画像や各種検査では十分に説明できない運動麻痺,感覚障害,けいれん発作を呈する患者さんは,診療科を問わず確実に外来を訪れます.講演中,脳神経外科の先生方が非常に熱心に耳を傾けてくださり,多くの質問を頂いたことから,FNDがいま,臨床の現場で確実に求められている疾患であることを,改めて実感しました.
講演後には,旧知の慈恵医大脳神経外科の田中俊英教授(写真中央)から,心に深く残るメッセージを頂きました.田中先生は,神経症候学の魅力を「推理小説の謎解き」に喩え,画像診断やAIが隆盛する現代だからこそ,臨床診断学の原点を忘れてはならないことを指摘してくださいました.さらに,患者さんの痛みや症状への「こだわり」を,いかに逸らすかという視点,そのためには患者さんの気持ちを理解し,患者自身が何かに熱中できる対象を見つけられるよう支援することが重要ではないか,という示唆も頂きました.これらの言葉は,私が今回の講演でお伝えしたかった考え方と,本質的に重なるものであり,強く共感しました.
診療科を越えて,「神経症候学の大切さ」や「患者さんにどう向き合うか」という臨床の原点を語り合えたことは,私にとっても非常に意義深い時間となりました.このような貴重な機会を設けてくださった近先生に,改めて心より感謝申し上げます.

・フロンティア「脳に忍び込むナノプラスチックを追う」NHK BS
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月2日のFB投稿です**
明日,2月3日(火)午前9:00〜午前10:00に,標題の番組がNHK BSで再放送されます.私もこの問題には強い関心を持っており,「#医学のあゆみ」誌の特集を最近,企画させていただき,脳梗塞や認知症への影響について執筆しました(https://amzn.to/3Z8vdoP).非常に大きな問題ですので,番組と本,ぜひご覧ください!以下,番組のご案内です.
私たちの脳の中にプラスチックが入り込んでいるという、衝撃の論文が2025年アメリカで発表された。見つかったのは環境に広まりつつあるウイルスサイズにまで微細化したナノプラスチック。脳には異物を遮断する生体システムがあるが、それを潜り抜けたのはなぜか?環境中にナノプラスチックはまん延しているのか?そして毒性は?認知症や発達障害への関与も危惧される中、一体真実はどこにあるのか?科学者たちの挑戦を描く。
◆番組へのリンク
https://www.web.nhk/…/series-tep-PM34JL2L14/ep/5R5GJ64VPM
◆医学のあゆみ「全身疾患の新たな危険因子としてのマイクロ・ナノプラスチック」
https://amzn.to/3Z8vdoP
#フロンティア #NHK #ナノプラスチック

・アルツハイマー病などのタウオパチーの理解に大きなパラダイムシフト!! ―203例のヒト脳が示す分子レベルで見た決定的な違い―
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月4日のFB投稿です**
アルツハイマー病や進行性核上性麻痺,大脳皮質基底核変性症などは,いずれもタウ蛋白の異常蓄積を特徴とする疾患であり,タウオパチーと総称されてきました.しかし,これらの疾患が分子レベルでどのように異なるのかについては,これまで十分に解明されていませんでした.同じタウ蛋白が蓄積するにもかかわらず多様な疾患が生じる理由として,これまでに①3リピートタウと4リピートタウの沈着の違い(微小管結合領域に含まれるリピート配列R2の有無によって規定されるタウ蛋白アイソフォーム)や,②タウ線維の立体構造(フォーメーション)の違いが明らかにされてきました.
しかし今回,米国ハーバード大学を中心に,米国有数の神経変性疾患研究拠点が参加したヒト剖検脳研究の成果がCell誌に報告され,タウオパチーの理解を分子レベルで大きく更新する知見が示されました.
解析対象となったのは合計203例のヒト剖検脳で,内訳はアルツハイマー病(AD)42例,家族性アルツハイマー病(FAD)4例,進行性核上性麻痺(PSP)41例,大脳皮質基底核変性症(CBD)34例,慢性外傷性脳症(CTE)24例,Pick病(PiD)20例でした.さら#に疾患対照としてレビー小体型認知症(DLB)14例,健常対照24例が含まれています.加えて,独立した検証コホートとして142例のヒト剖検脳が用いられ,解析結果の再現性も確認されています.
著者らは,サルコシル不溶性画分からタウ蛋白を精製し,FLEXITauと呼ばれる質量分析ベースの解析プラットフォームを用いて解析を行いました.この手法により,タウ蛋白の絶対量,アイソフォーム構成(3R/4R,0N/1N/2N),翻訳後修飾,および内因性切断部位をペプチドレベルで定量的に評価することが可能となりました.FLEXITauの最大の特徴は,単に修飾の有無を調べるのではなく,「どの部位がどの程度修飾・切断されているか」を数値として示せる点にあります.
この結果,病理学的タウには145か所の翻訳後修飾部位と195か所の切断部位が存在し,それらの分布と頻度は疾患ごとに大きく異なることが明らかになりました!ADおよびFADでは,タウ蛋白量が最も多く,分子全体にわたってリン酸化,アセチル化,ユビキチン化,さらに切断が高度に蓄積していました.CTEでも同様に広範な修飾と切断が認められましたが,その分布様式はADとは部分的に異なっていました.一方,CBDでは4リピートタウが主体であり,微小管結合領域におけるアセチル化やユビキチン化が特徴的でした.PSPでは,病理タウ量は比較的少なく,翻訳後修飾や切断も限局的であるという対照的な特徴が示されました.また,PiDでは3リピートタウ優位という明確なアイソフォーム特異性が確認されました.
本論文のGraphical abstractは,これらの結果を直感的に示した図です.図の中心には,N末端からC末端までのタウ蛋白の基本構造が描かれ,これはすべての疾患に共通する「タウの骨格」を表しています.その周囲にAD,PSP,CBD,PiD,CTEなどの疾患が配置され,各疾患ごとにタウ分子上の翻訳後修飾の分布が色分けで示されています.色はリン酸化,ユビキチン化,アセチル化などを表し,色が広範かつ濃いほど,その疾患においてタウが強く分子加工されていることを意味します.さらに,各疾患の横には「tau 2×」「tau 10×」「tau 81×」といった表記があり,健常対照と比べた病理タウ量の倍率が示されています.この図は,タウオパチーの違いが単なる量の差ではなく,タウ分子の質的な違いによって規定されていることを一目で示しています.
さらに著者らは,これらの分子データを用いた機械学習により,タウの分子特性のみから各疾患を高精度に分類できることを示しました.とくにFLEXITauによる定量データは分類性能が高く,将来的な疾患特異的バイオマーカー,PETリガンド開発,さらには分子標的治療への応用可能性が示唆されました.
非常に速いスピードで研究が進んでいます.本研究は,タウオパチーを一括りに扱う従来の概念を超え,疾患ごとに異なる「タウの分子像」が病態を規定していることを明確に示しています.今後,タウを標的とした診断や治療を考えるうえで,「どのタウを狙うのか」という視点が不可欠であることを,本論文は強く示唆していると言えます.
Kumar M, Schlaffner CN, Tang S, et al. Molecular features of human pathological tau distinguish tauopathy-associated dementias. Cell. 2026;189:1–13. doi:10.1016/j.cell.2025.12.036. PMID: 41616780.

・神経科学の父・カハールに学ぶ『若き研究者への助言』翻訳・出版プロジェクト
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月7日のFB投稿です**
岐阜大学医学部では,今年度から3年生を対象に「プロジェクト基盤型カリキュラム(Project-based Learning:PjBL)」のトライアルが開始されました.先日その発表会が行われ,脳神経内科では,スペインの神経解剖学者であり,1906年にゴルジとともにノーベル生理学・医学賞を受賞したサンティアゴ・ラモン・イ・カハールの著書『Advice for a Young Investigator(若き研究者への助言)』の翻訳プロジェクトをテーマとして参加しました.
今回のプロジェクトでは,本書の翻訳作業を進めるとともに,学生自身が自由研究としてゴルジとカハールに関する考察を行いました.3人一組で2チームの発表があり,一方のチームは,ノーベル賞を共同受賞しながらも異なる学説を主張したゴルジとカハールの対立に注目し,「科学における意見の対立がどのように学問の発展につながるのか」という視点から発表しました.もう一方のチームは,カハールが残した神経細胞のスケッチを芸術学的観点から捉え,科学と芸術の融合という興味深い切り口で考察を行いました.
学生たちは単なる翻訳にとどまらず,歴史,科学,芸術という複数の視点からカハールの思想に向き合い,大変質の高い発表となりました.神経学から出発した取り組みではありますが,結果として非常に豊かなリベラルアーツ教育の教材になったように思います.この内容は5月に開催される日本神経学会学術大会(横浜大会)の医学生・研修医セッションでも採択され,発表する予定です.
『Advice for a Young Investigator(若き研究者への助言)https://amzn.to/4qmf8qM』は,カハールが1897年に刊行した研究指導書であり,100年以上前の著作でありながら,現在でも海外では研究者のバイブルとして高く評価されています.研究に向かう心構えや方法論だけでなく,科学者としてどのように生きるかという問いにまで踏み込んだ名著です.日本ではあまり読まれていないことを残念に思い,今回,翻訳を思い立ちました.
本書は,研究に向かう姿勢,努力,倫理,そして情熱について語られた素晴らしい一冊です.多くの方に読んでいただきたいと願っています.そして,いつかこの翻訳を一冊の本として出版することが,私たちの目標です.

・動画で見る神経眼科所見 ―脳神経内科の視点から―@第7回中国四国神経眼科セミナー(岡山)
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月8日のFB投稿です**
新潟大学医学部時代の同級生であり,川崎医科大学眼科学1教授の三木淳司先生にお招きいただき,標題のセミナーにて講演を行いました.座長は,日頃より大変お世話になっている徳島大学脳神経内科学教授の和泉唯信先生にお務めいただきました.
講演では,神経眼科領域で日常診療において遭遇するさまざまな所見について,写真や動画を提示しながら,その臨床的意義や背景となる疾患,さらに症候からどのように病変部位を推定していくかについて議論させていただきました.三木先生には講演前に画像をご覧いただき,多くの示唆に富むご意見を頂戴し,大変有意義な時間となりました.また和泉先生からは,「すぐに検査に頼るのではなく,まず症候から病変局在を考えることの大切さ」についてご発言をいただき,まさに我が意を得たりという思いでした.
写真は,セミナー前日に三木先生のご厚意で開催していただいた食事会の様子です.岡山の新鮮なお魚やお肉を美味しくいただきながら,和泉先生の「七帝柔道記」時代のお話なども伺い,終始和やかで楽しいひとときを過ごすことができました.三木先生,和泉先生,このたびは貴重な機会をいただき,どうもありがとうございました!!
【症候一覧】
① 種々の神経疾患に伴う眼科的所見
raccoon eye appearance,前房蓄膿,Hutchinson徴候,Dalrymple–Stellwag徴候,眼窩周囲浮腫,Chameleon eyes sign,ocular neuromyotonia,上眼瞼向き眼振,下眼瞼向き眼振,round houses sign,square-wave jerks,上斜筋ミオキミア.
② 脳神経内科医が行う神経眼科的診察
Enhanced ptosis(Curtain sign),腱膜性眼瞼下垂,対光・近見反射解離,視運動性眼振の使い道,Landolfi徴候,tadpole pupil.
③ 目の失行
眼球運動失行(oculomotor apraxia),head thrust,開眼失行.
④ 意識障害時の眼球運動異常
ping-pong gaze,ocular bobbing,ocular dipping,ocular flutter,opsoclonus,see-saw nystagmus,Parinaud症候群,MLF症候群,one-and-a-half症候群,eight-and-a-half症候群,WEBINO症候群.
⑤ 機能性神経障害に伴う眼科的所見
管状視野(tubular vision),らせん状視野(spiral visual field),機能性視力障害,機能性眼瞼下垂,機能性半側顔面痙攣,光線過敏症,other Babinski sign.
⑥ 幻覚
中脳幻覚症,Charles Bonnet症候群,後頭葉てんかん,入眠時・覚醒時幻覚,原因別おばけの見分け方.

・なんと抗体陰性重症筋無力症の少なくとも7人に1人は遺伝性疾患だった! ―先天性から遺伝性筋無力症候群への名称変更の提案―
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月10日のFB投稿です**
抗体陰性重症筋無力症(seronegative myasthenia gravis:SNMG)の診療において,重要な臨床的疑問が提起されています.すなわち,「自己免疫性と考えられてきた症例の中に,実際には遺伝性の神経筋接合部疾患が含まれているのではないか?」という疑問です.この点を検討し答えを示したのが,オーストリアのウィーン医科大学神経内科からNeurology誌に報告された研究です.
この研究では,3つの神経筋疾患専門施設において診断された成人SNMG患者50例に対して,全エクソーム解析を用いた遺伝学的スクリーニングが行われました.その結果,7例,すなわち14%において先天性筋無力症候群(congenital myasthenic syndrome:CMS)が存在していました(図A).原因遺伝子はCHRNEおよびRAPSNに集中しており,いずれも神経筋接合部のシナプス後膜におけるアセチルコリン受容体機能の維持に関与する代表的なCMS関連遺伝子でした.
■CHRNE;cholinergic receptor nicotinic epsilon subunit;神経筋接合部のシナプス後膜に存在するニコチン性アセチルコリン受容体(AChR)を構成するサブユニットの一つをコードする遺伝子
■RAPSN;receptor-associated protein of the synapse;rapsyn(ラプシン)と呼ばれるタンパク質をコードしており,アセチルコリン受容体を神経筋接合部のシナプス後膜に集積・固定させる役割を担っている.
すなわち,本研究で同定された症例は例外的な遺伝子異常ではなく,従来から知られている典型的CMSであり,成人発症であってもCMSを鑑別から除外すべきではないことを示しています.また4例(8%)では遺伝子変異が検出されましたが,その変異が実際に患者の症状の原因であるかどうかが確定できないというケースでした.具体的には,神経筋疾患関連遺伝子ではあるものの,これまでCMSとの関連が確立していない遺伝子変異が検出されるということです.図Bに示すRAPSN,DOK7,DPAGT1,CACNA1Sがこのカテゴリーに含まれました.よって将来的にCMSとして再分類される可能性があります.
さらに重要なのは治療歴です.遺伝学的にCMSと診断された患者の86%が,診断確定以前に免疫療法または胸腺摘除術を受けていました.CMSでは免疫療法が必ずしも有効ではなく,場合によっては不利益となる可能性もあります.また一部症例では免疫療法に対する改善がみられていましたが,著者らはこれを偽薬効果や自然経過による変動の可能性と解釈しており,治療反応のみで自己免疫性MGと判断する危険性を指摘しています.加えて,家族歴を有さない症例や成人発症例も含まれており,家族歴なしや発症年齢のみでCMSを除外することができないことが示されました.
このような研究を背景として提起されたのが,英国オックスフォード大学を中心とするチームから最近報告されたBrain誌の意見論文です.著者らは,「先天性筋無力症候群(CMS)」という名称そのものが臨床的誤解を生んでいる可能性を指摘しています.CMSは遺伝性の神経筋接合部疾患群でありながら,「先天性」という言葉が出生時あるいは乳児期発症を強く想起させるため,成人発症例では鑑別に挙がりにくく,結果として診断遅延につながっている可能性があるというのです.実際に成人例では,抗体陰性MGとして長期間治療され,免疫療法や胸腺摘除術が行われていた症例が少なくありません.著者らは,CMSの本質は「先天性」であることではなく「遺伝性」である点にあるとして,「genetic myasthenic syndrome」という名称への変更を提案しています.
この2つの論文を続けて読むと,「抗体陰性の自己免疫性MGもありうる」という従来の発想から,「遺伝性疾患も常に鑑別に含める」という大きなパラダイムシフトが生じたことが分かります.先天性筋無力症候群はもはや小児疾患という枠組みではなく,年齢を問わず考慮すべき神経筋接合部疾患として再認識されつつあると言えます.また臨床的には,SNMG症例に全エクソーム解析を行うことが求められるわけですが,それが難しければ臨床的に鑑別できるかというところが次の課題になるかと思います.
Krenn M, et al. Screening for Congenital Myasthenic Syndromes in Adults With Seronegative Myasthenia Gravis Using Next-Generation Sequencing. Neurology. 2025;105:e214177. PMID: 41004697.
Ramdas S, et al. Congenital myasthenic syndrome: is it time for a name change to genetic myasthenic syndrome? Brain. 2026;awag035. PMID: 41630153.

・AI,Podcast,SNS時代の神経学教育はどうあるべきか? ―AIに問診してみました―
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月11日のFB投稿です**
医学教育を取り巻く環境は大きく変化しています.米国神経学会のNeurology Podcastの最新エピソード「Explore How Non-Traditional Educational Formats are Reshaping Neurology Training」では,AIやSNSなどの「非伝統的な教材」が神経学教育にどのような変化をもたらしているのかについて,示唆に富む議論が行われています(コメント欄のリンクよりフリーで聞くことができます).
まず印象的であったのは,現在の若手医師にとって,情報は「後で調べるもの」ではなく,「その場で即座にアクセスできるもの」へと変化しているという指摘です.スマートフォンやAIを用いて疑問を即時に解決できるわけです.しかし大規模言語モデルにはhallucinationと呼ばれる誤情報生成の問題があり,AIを鵜呑みにする態度は危険と強調されていました.むしろAIの普及によって,情報の妥当性を判断する専門家の役割はこれまで以上に重要だと述べられています.
また,学習スタイルの変化として,「非同期学習」,すなわち学習者と指導者が同じ時間・同じ場所に集まらなくても成立する学習形態への強い志向が示されました.学習者は自分の生活や臨床のリズムに合わせて学びたいと考えています.この背景には,SNSや短時間動画を用いたマイクロラーニング,すなわち短時間で完結する小さな学習単位を積み重ねて学習を進める方法が可能になったことがあります.限られた時間でも学習を継続できる利点がある一方,情報が断片化しやすく,理解が表層的にとどまる危険性もあります.そのため指導者に求められるのは,短い学習体験で終わらせるのではなく,そこから体系的理解へと導く構造をいかに設計するかということになります.
またPodcastは海外の学会や医学雑誌が熱心に取り組んでいて,私も情報源にしています.音声メディアであるため,移動中や日常生活の中でも学習が可能であり,世界の専門家の思考過程や臨床判断を共有できる点に大きな価値があります.しかし,聞き流すだけでは知識は定着せず,メモを取るとか,紹介された論文を勉強する,まとめるといった能動的関与が必要であることも指摘されています.また従来の教育に置換できるものではなく,上記の短時間学習と組み合わせながら,カリキュラムを補完するものとして活用すべきだろうというスタンスが示されました.
SNSについても,単なる情報拡散の手段を超えた教育的価値が議論されました.SNSは専門家と学習者をつなぎ,教室の外に学習コミュニティを形成します.ここで重要となるのは,情報の信頼性を評価する能力そのものを教育する必要があるということです.情報過多の時代において,「どの情報を信頼するか」を判断する力そのものが,現代の医学教育における重要な能力となっていることも指摘されています.
注目されるAIの活用については,その回答を無批判に受け入れるのではなく必ず原典を確認することや,批判的思考のトレーニングを並行して行うことが強調されていました.印象的であったのは,AIを用いた対話シミュレーションです.AIを患者役として用い,問診や臨床推論を繰り返し練習するのだそうです.従来は指導医との対面教育に依存していた実践的トレーニングを補完できると言っています.試しに私もこんな文章を打ち込んでみました.「私は研修医です.あなたは軽度の四肢筋力低下を主訴にやってきた60歳女性です.呼吸筋力低下があることが分かり,近医から紹介されてきました.問診します」自分はALSを想定して作った問題ですが,問診をしていたらどうもALSらしくなく,重症筋無力症(MG)が疑われだし,診察を経て,最後はMGの診断告知まで行きました.たしかに良いトレーニングになります.ちなみに評価もしてくれます.私はこんな感じでした.
総合評価(指導医目線);診断能力:◎,問診構造:◎,患者への説明:◎,安全性配慮:◎,改善余地:細部のみ.初期研修医としてはかなり上位レベルの対応です.特に,「診断を当てる」だけでなく,「患者の不安を減らす方向に会話が進んでいる」点が優れています.
→ホッとしましたが,自己免疫疾患でほぼ必ず入れる一言「ご本人のせいではありません」を追加すべきなど,いろいろご指導を受けました(笑).
最後に,新しい教育手法をどのように評価するかという問題が取り上げられました.カークパトリックの4段階評価モデル(Kirkpatrick Model)として知られている「学習者の反応(Reaction),知識や技能の向上(Learning),診療行動の変化(Behabior),そして最終的な患者アウトカムへの影響(Result)」という段階的評価が必要であると述べられています.教育を単に満足度ではなく医療の質の向上という観点から評価する重要性を示しています.
今回の議論から感じたのは,新しい手段をどのように活かし,組み合わせ,学習者を浅い理解から深い理解へと導くかという点において,教育者の役割がこれまで以上に重要になっていると思いました.
Neurology Podcast, February 5, 2026 Episode.Explore How Non-Traditional Educational Formats are Reshaping Neurology Training.(American Academy of Neurology).

・「オノ」型マイハンマーの本当の名称と正体
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月13日のFB投稿です**
1月23日の投稿で,NHK『#あしたが変わるトリセツショー』に出演したことを書きました.そのなかで,次のように記載しました.
「診察のなかでは私のハンマーコレクションもご覧いただきました.ちなみに斧型のハンマーはあまり見かけない形状ですが,ドイツのシャリテ病院で購入したベルリナー型(Berliner型)というものです.」
これに対し,X(旧Twitter)でインダス先生が次のようにコメントされているのを見つけました.
「ブログのキャプチャーで出ている打鍵器は,Berlinerではなく,VarioflexやFassbender Reflex Hammerと呼ばれるタイプ.Buck式とBerliner式のあいのこで,ふり心地としてはBuck式に近い.Berliner式はもっと重量感がある.」
びっくりしてすぐにご連絡し,教えていただいたお礼をお伝えしました.打腱器に関する総説はほぼ読んだつもりでおりましたが,「Fassbender」という名称はこれまで目にしたことがありませんでした.そこで改めて調べてみると,このハンマーの正体は次のようなものであることが分かってきました.
Fassbenderは人名であり(語源的には樽職人を意味します),Varioflexは商品名(vario+flex,ラテン語由来で「可変的にしなる」の意)です.このタイプのハンマーは主にドイツ語圏で用いられてきた古典的な打腱器で,20世紀前半のヨーロッパ,とくにドイツやオーストリアで広く使用されていたようです.ドイツ神経学に特徴的な,「診察によって局在を明らかにする」という文化を象徴する器具とも言われています.すなわち,「強く叩くこと」よりも,「最小限の動作で最大限の情報を得ること」,「再現性を重視して左右差を比較すること」,「一点を正確に打鍵すること」という考え方が色濃く反映されているという説明が見られます.
もっとも,これらの情報は文献による裏付けというより,海外製品ホームページやAIを用いた情報収集によるものであり,どこまで正確なものなのかはさらに確認が必要です.しかしもしこの理解が正しければ,英国のQueen Square型ハンマー(円盤型)が比較的しっかりと打鍵して腱反射を惹起することを重視しているのに対し,ドイツのFassbender型は,ピンポイントを左右同じ強さで叩き,差を見極めることを重視した設計思想を持つことになります.私自身,若い先生方への腱反射の指導ではこれまで繰り返し「左右をできる限り同じ強さで叩き,比較することが重要だよ」と教えてきました.今回調べてみて,自分がこのハンマーを自然に好んで使っていた理由が,そのような診察観と一致していたのだと気づき,妙に納得した次第です.
インダス先生,ご教示いただきありがとうございました.コメント欄には,ハンマーの歴史に関するスライド(改訂版)と,Fassbender型ハンマーの販売ホームページ(海外)を掲載しておきます.

・アルツハイマー病の3タイプに分けられる!? ― タウ増加は単純に神経細胞死の程度を反映するわけではない
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月14日のFB投稿です**
アルツハイマー病(AD)はこれまで,アミロイドβとタウの蓄積を中心とした単一の疾患として理解されてきました.しかし臨床の現場では,同じADであっても進行速度や症状の現れ方が大きく異なることを経験します.今回紹介する研究は,この違いがどこから生じるのかを分子レベルから説明しようとした,中国からの重要な報告です.
本研究は,国際的な大規模前向き研究プロジェクトであるADNI(Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative)のデータを用いて解析されています.脳脊髄液(CSF)中に含まれる6361種類の蛋白を網羅的に解析するCSFプロテオミクスと機械学習を組み合わせることで,AD患者を分子レベルで分類しました.その結果,ADは1つの連続した病態ではなく,異なる生物学的背景をもつ3つのサブタイプに分類できることが示されました(図).
臨床的には,3つのサブタイプで進行の仕方が明確に異なっていました.第1のサブタイプは脳萎縮が軽度で認知機能低下も緩徐であり,比較的進行の遅いタイプでした.この群ではRNA代謝やRNAプロセシングに関連する異常が特徴として認められました.第2のサブタイプは認知機能低下や脳萎縮の進行が中等度である一方,脳脊髄液中のタウは最も高値を示しました.分子レベルでは軸索形成や神経突起形成に関連する蛋白の変化が特徴でした.第3のサブタイプは脳萎縮が最も強く,認知機能低下と認知症への進行が最も速い重症型でした.この群では,細胞内の蛋白分解やカタボリック(細胞異化)過程,すなわちユビキチン・プロテアソーム系やオートファジーなどの細胞内分解・処理システムの異常が強く関与していることが示されました.
特に興味深い点は,タウが最も高い第2サブタイプが,必ずしも最も進行が速いわけではなかったことです.これは,タウの増加が単純に神経細胞死の程度を反映しているのではなく,軸索障害や神経回路の再構築といった過程を反映している可能性を示しています.また遺伝学的解析では,APOE ε4保有率やpolygenic risk scoreは第3サブタイプで最も高く,第1サブタイプで最も低いことが示され,分子病態の違いが遺伝的背景とも関連していることが明らかになりました.MRIでも,第3サブタイプでは海馬や側頭葉内側を中心とした脳萎縮が最も強く,経時的な萎縮進行も最も速いことが確認されています.すなわち,「ADの進み方の違いは,障害される生物学的システムの違いによって説明できる」という驚きの結論になります.
本研究では,これら3つのサブタイプが単なる病期の違いではないことも丁寧に検証しています.アミロイドβ量を補正した解析やMCI症例のみでの再解析でも同様のパターンが再現されており,ADという疾患のなかに異なる分子病態サブタイプが存在することが強く示唆されました.従来の「アミロイドβからタウへ」という単純な理解に対し,RNA代謝異常,軸索障害,細胞内分解障害という複数の経路が並行して存在し,それぞれが異なる臨床像を形成している可能性が示された点に,本研究の大きな意義があります.
興味深いことに,本研究でタウが最も高いサブタイプが必ずしも最も進行が速くなかった点は,近年提唱されているtau-clinical mismatchという概念とも一致します(2025-12-20ブログで紹介しました).すなわち,タウ病理の量そのものではなく,蛋白分解・処理機構や共存病理,さらには神経系のレジリエンスといった背景要因が,実際の臨床経過を規定している可能性が示唆されます.では,なぜ同じアルツハイマー病の中に3つのサブタイプが生じるのでしょうか?まだ不明ですが,恐らく遺伝子だけで決まるわけではなく,加齢や炎症,蛋白クリアランス能力,血管因子などが重なって形成される「分子環境の違い」が,どのサブタイプとして発症するかを規定している可能性が考えられます.将来的には,患者ごとのサブタイプに基づいて予後予測や治療選択を行う,いわゆるprecision medicineへの発展が期待されることになると思います.
Hou X-H, Zhang W, Kang K, et al. Proteomics reveals three molecular subtypes of Alzheimer’s disease with distinct progression patterns. Alzheimer’s & Dementia. 2026;22:e71106. PMID: 41650025

・薬剤性パーキンソニズムの機序はパーキンソン病と大きく異なるが,これもSCAN仮説で説明ができるかもしれない!?
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月15日のFB投稿です**
薬剤性パーキンソニズム(drug-induced parkinsonism:DIP)は抗精神病薬などの投与後に生じ,原因薬剤の中止により改善し得る点が特徴ですが,臨床的にはパーキンソン病(PD)との鑑別に悩む場面も少なくありません.韓国から報告されたNeurology誌の研究は,DIPの病態を脳ネットワークの観点から理解するうえで非常に示唆的な結果を示しています.
対象はDIP患者72例,未治療PD患者160例,健常対照62例で,dual-phase 18F-FP-CIT PETを施行し,早期相で脳血流,遅延相でドパミントランスポーター(DAT)機能を評価しています.神経活動が高まると局所のエネルギー需要が増加し,それに伴って血流が増加するため,脳血流は神経活動を間接的に反映する指標として用いられています.つまり脳ネットワークの機能状態を反映する血流分布とドパミン神経の状態を同時に比較しています.
結果ですが,驚いたのはDIPではPDとは明らかに異なる脳血流パターンを認めたことです(図左). DIPでは一次運動野,傍中心小葉,小脳など運動関連回路で相対的な過灌流が認められる一方,前頭前野,帯状回,島皮質,下頭頂葉,側頭葉といった広範な連合野で低灌流が示されています.特に前頭前野から帯状回にかけての低灌流は顕著であり,運動そのものの障害というよりも,「行動の開始や統合に関わる領域の機能低下」を示唆する結果でした!
さらに重要なのは運動症状との関連です.PDではUPDRS Part IIIの重症度は被殻を中心としたDAT低下と相関し,従来の理解通り,前シナプスドパミン神経の変性が運動症状の基盤であることが確認されました.一方,DIPではDATは保たれているにもかかわらず運動症状が出現し,その重症度は前頭前野や帯状回などの低灌流と相関していました(図右).すなわち,DIPでは神経細胞の脱落ではなく,ドパミン受容体遮断によるネットワーク機能の変化が症状に直結しているようです.
じつはこの論文,少し前に読んでその意義がピンとこなかったのですが,2月12日にご紹介した「パーキンソン病はSCANを中心とするネットワークの疾患」というNature論文を読んで,これらの論文はつながるのかも!と思いました.新しいホムンクルスのなかで提唱されたSCAN(somato-cognitive action network)は一次運動野の中で身体部位の運動を直接担う領域の間に存在し,覚醒状態,内受容感覚,動機づけ,自律神経状態などを統合して「行動を開始できる状態」を作るネットワークと考えられています.本研究ではSCANという名称は出てきませんが,DIPにおいて前頭前野や帯状回など行動開始や統合機能に関わる領域の低灌流が運動症状と関連していたという結果は,運動障害を広い行動ネットワークの機能変化として理解する視点とよく一致します.
今回のDIP研究を改めてこの枠組みで読み直すと,DIPではPDとは異なり,黒質ドパミン神経そのものは保たれています.しかし,原因薬剤はドパミン受容体を遮断するため,神経からドパミンが放出されていても,その信号が十分に伝わらなくなります.この影響は線条体の運動回路だけにとどまらず,前頭前野や帯状回といったSCAN領域にも及びます.その結果,「動き出すための準備を整えるネットワーク」の働きが低下し,無動や歩行障害として現れる可能性があります.今後の研究として,DIPにおいてSCANと基底核の機能的結合が実際に変化しているかをfMRI結合解析で検証することが行われるのではないかと思います.そしてもし薬剤中止とともにネットワーク結合が正常化することが示されれば,DIPはPDの病態理解を補強する「可逆的モデル」として重要な意味を持つことになります.また薬剤中止でも改善しないDIPではSCANを標的としたTMSが有効かも・・・と妄想は膨らみます.
いずれにしても神経学は長らく局在論を基盤として発展してきましたが,近年は脳をネットワークとして理解する方向へと大きく転換しています.DIPは,神経変性を伴わずにPD様症状を生じるヒトモデルとして,SCAN仮説を検証する上でも重要な位置づけを持つのかもしれません.
Sun Y, Na HK, Jeon S, ey al. Cerebral perfusion and motor deficits in drug-induced parkinsonism: A dual-phase 18F-FP-CIT PET study. Neurology. 2026;106:e214573. PMID: 41512212.

・Glymphatic systemの次に来る大発見!? ― 脳内ナノスケールリンパ管様構造発見のインパクト
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月17日のFB投稿です**
脳は体重のわずか2%であるにもかかわらず,全身エネルギーの約20%を消費する極めて代謝の活発な臓器です.それにもかかわらず,どのようにして代謝産物や不要な蛋白を効率よく排出しているのかは長年の大きな謎でした.2012年にglymphatic systemが提唱され,脳脊髄液と間質液の流れによって老廃物が除去されるという概念が広まりましたが,その「流れ」を支える明確な構造が存在するのかどうかは不明のままでした.今回紹介する研究は,まだ査読前のプレプリントではありますが,この問題に対して新しい仮説を提示する非常にインパクトの大きな報告です.
本研究は,米国ハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院の研究グループによって行われました.著者らはアルツハイマー病(AD)モデルマウスの脳におけるアミロイドβ(Aβ)を観察する目的で,拡張顕微鏡法(試料である生体組織そのものを物理的に膨張させることで,通常の光学顕微鏡でも超解像度に近い観察を可能にする技術)と,Aβを可視化するために開発された蛍光プローブCRANAD-3を用いた解析を行っていました.その過程で偶然,これまで知られていなかった脳内の管状パターンを観察しました.CRANAD-3はAβに結合する蛍光プローブであり,CRANAD-3によって描出されているのは管構造そのものではなく,Aβが存在する領域です.著者らは,このAβシグナルが連続した管状パターンを示したことから,その背景にナノスケールの管状構造が存在すると解釈しました.この構造は直径500〜1000 nm程度と非常に小さく,脳実質内に網目状に広がって存在しており,nano-scale lymphatic-like vessels(NLVs)と命名しています.脳毛細血管の直径が約4000〜8000 nmであることを考えると,NLVsは毛細血管の約1/5〜1/10程度の太さしかありません.
図1では,脳皮質内に非常に細い管状構造が多数存在し,互いに交差しながら網目状のネットワークを形成している様子が示されています.重要なのは,これらの構造が血管周囲に沿って走行しながら広範囲に分布している点です.これまでglymphatic systemは,脳脊髄液が血管周囲を流れることによって老廃物が運び出される「流れ」として理解されてきましたが,その流れを担う具体的な管状構造は確認されていませんでした.今回の所見は,その背景に実際の構造的基盤が存在する可能性を示唆しています.
図2では,リンパ管マーカーであるLYVE-1とCRANAD-3の染色パターンが比較されており,CRANAD-3が既知の髄膜リンパ管と類似した分布を示すことが示されています.つまりCRANAD-3がリンパ系構造を可視化しうる可能性を示す結果ですが,CRANAD-3自体はAβに結合するプローブであり,リンパ管を直接標識しているわけではありません.したがって,NLVsがリンパ管そのものであることを示したものではなく,名称に「リンパ管様」と表現されているわけです.
興味深いのは,これらのNLVsの内部あるいは壁にAβの沈着が観察された点です.図3では,Aβ抗体染色(6E10)がCRANAD-3で描出された管状パターンに沿って分布しており,Aβがこれらの構造に関連して存在する可能性が示されています.ADモデルではNLVsの断裂や変形が多く認められ,アミロイド斑周囲ではNLVsが減少する領域も観察されました.これはAβが単に脳内に蓄積するだけでなく,排出経路そのものを障害している可能性を示唆する所見であり,いわゆる「glymphatic failure」という考え方とも整合的です.
図4では,著者らの提唱する概念モデルが示されています.その説明では脳内の排泄と免疫監視が分離して理解されており,NLVsが主に代謝産物の排出を担い,一方で免疫監視はミクログリアやアストロサイトが担うという二層構造が仮説として提示されています.脳は従来,リンパ管が存在しないため免疫細胞の出入りが限られる「免疫特権的臓器」と考えられてきました.今回の研究は,免疫とは別に老廃物排出を担う構造が存在する可能性を示しており,脳が「免疫特権的臓器」と理解されてきた背景を説明しうる新しい視点を提示しています.
もっとも,本研究は現時点ではプレプリントであり,慎重な解釈が必要です.NLVsが真にリンパ管であるのか,あるいは全く新しい種類の管状構造なのかはまだ確定しておらず,また拡張顕微鏡法に伴うアーティファクトの可能性も指摘されています.リンパ管に特異的な内皮構造や,流体輸送を直接示す証拠も現時点では示されていません.したがって,本研究は新しい解剖学的実体の確立というよりも,「glymphatic systemの構造的基盤を説明しうる仮説の提示」と理解するのが現時点では妥当かもしれません.
それでもなお,本研究の意義は小さくありません.脳の排泄機構に関する理解は,2012年のglymphatic systemの提唱によって「流れ」が示され,2015年の髄膜リンパ管の発見によって「出口」が明らかになりました.今回のNLVの報告は,その間をつなぐ「構造」が存在する可能性を示したものと位置づけることができます.もし今後,別の研究グループによる再現や機能的検証が進めば,ADをはじめとする神経変性疾患の理解に新しい視点をもたらす可能性があります.脳の老廃物排出機構の研究は,いままさに次の段階に入りつつあるのかもしれません.
Gu S, Dong H, Chen H, et al. Discovery of abundant nano-scale lymphatic-like vessels in brains. bioRxiv. 2025. DOI:10.64898/2025.12.30.697095

・ナノプラスチックは生体の「微小環境」を変化させ,神経変性疾患と癌の双方を促進する
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月19日のFB投稿です**
環境中に広く存在するマイクロ・ナノプラスチック(MNPs)が,ヒトの健康にどのような影響を与えるのかが大きな関心を集めています.今回ご紹介する2本の総説は,いずれも米国Duke大学を中心とした研究グループによる J Clin Invest 誌のViewpointであり,一方は神経変性疾患との関連を,もう一方は発癌との関連を論じています(文献1, 2).異なる疾患領域を扱っていますが,両者は「慢性炎症と生体微小環境の変化」という共通の視点で結びついています.
まず,神経変性疾患に関する論文では,近年の研究によりナノプラスチックが全身臓器に存在し,とくに脳において多量に検出されることが紹介されています.そしてナノプラスチックは,その極めて小さなサイズと表面特性のために,生体内で従来の微小粒子とは異なる生物学的影響を持つ可能性があると述べています.ナノプラスチックは表面化学的性質やコロイドとしての振る舞いにより,周囲の分子と強く相互作用しやすく(!),サイズが極めて小さいため生体内での利用可能性(bioavailability)が高いと考えられています.さらに,脂質や蛋白質に似た物理的特性を持つことから,細胞膜や蛋白質と直接相互作用しやすい可能性が指摘されています.実際,神経変性疾患に関連するαシヌクレイン,アミロイドβ,タウといった蛋白は脂質環境の変化によって凝集しやすくなることが知られており,ナノプラスチック表面がこれらの蛋白の構造変化や凝集を促進する可能性が示唆されています(図1, 文献3).この点は,単なる異物曝露というよりも,生体分子の振る舞いそのものを変化させうる点で,従来の環境粒子とは異なる意味を持っています.
さらに,ナノプラスチックは脂質様粒子と類似したサイズを持つためミクログリアに取り込まれやすく,炎症状態を誘導する可能性も議論されています.図2では,環境中で劣化したプラスチックがナノサイズの粒子となり,吸入や摂取を通じて体内に入り,脳内で炎症や異常蛋白凝集と関連する経路に関与するという概念図が示されています.すなわち,ナノプラスチックは神経変性疾患の原因としてではなく,既存の病態を促進する環境因子として位置づけられています.
この総説の中で紹介されている論文では,動物実験で経口投与されたナノプラスチックが腸管神経系に分布し,αシヌクレインとともに腸から脳へ移行することが示されています(図3, 文献4).その結果,マウスでは不安様行動や運動障害が増悪し,黒質ドパミン神経の脱落も増強しました.これらは,ナノプラスチックが腸-脳軸を介してPD病理の進展を促進しうることを示唆しています
一方,発癌に関する論文では,MNPsが直接DNAを変異させる発癌物質として作用するというよりも,慢性炎症を誘導し,癌の発生や進展を促進する環境を形成する可能性が強調されています.この考え方はPM2.5が癌を促進する機序と類似しており,マクロファージによる異物認識,炎症性サイトカインの産生,酸化ストレスの増加,腸内細菌叢の変化などが複合的に作用すると考えられています.図4に,MNPsの取り込みが炎症,免疫調節異常,酸化ストレス,DNA損傷,ホルモンシグナル変化などを介して腫瘍形成に関連する細胞過程へとつながる概念図が示されています.さらに,MNPsには多数の添加剤が含まれており,これらが内分泌撹乱や酸化ストレスを通じて発癌リスクを高める可能性も議論されています.
この2本の論文を並べて読むと,ナノプラスチックはそれ自体が単独で疾患を引き起こす原因物質というよりも,慢性炎症や免疫反応の変化を介して生体の「微小環境」を変化させ,既存の病態を促進させるという点が共通していることが分かります.神経変性疾患では異常蛋白凝集や神経炎症を増幅させる因子として,癌では腫瘍増殖を許容する炎症性環境を形成する因子として作用しうるという理解です.現時点ではまだ仮説的な段階であり,因果関係は確立されていませんが,環境因子が慢性疾患の進行にどのように関与するかという観点から,今後の研究の進展するものと思われます.今後,重大な関心をもって注視していく必要があると思います.
1) West AB, et al. The hidden world of nanoplastics colliding with neurodegenerative diseases. J Clin Invest. 2026;136(4):e204824.
2) Somarelli JA, et al. The carcinogenic consequences of the plastic pollution crisis. J Clin Invest. 2026;136(4):e203775.
3) Mishra A, et al. Pathological Folding of α-Synuclein on Polystyrene Nanoplastic Revealed by Sum Frequency Scattering and 2D Infrared Spectroscopy. J Phys Chem Lett. 2025;16:11893-11900. PMID: 41196586.
4) Liang X, et al. Polystyrene Nanoplastics Hitch-Hike the Gut-Brain Axis to Exacerbate Parkinson’s Pathology. ACS Nano. 2025;19:5475-5492. PMID: 39883073.

・発症まであと何年か?p-tau217が明かすアルツハイマー病のカウントダウン
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月22日のFB投稿です**
アルツハイマー病(AD)の研究は「発症するかどうか?」を予測する方向で進んできました.種々のバイオマーカーの開発によりそれが可能となりましたが,次に研究者が考えることは(その是非はともかくとして)「いつ発症するのかを正確に予測できるか?」ということです.Nature Medicine誌に発表された論文は,血液バイオマーカーであるリン酸化タウ(p-tau217)を用いて,この問いに迫った非常に重要な研究です.米国Washington Universityを中心とするグループにより行われ,ADNIをふくむ2つの大規模コホートのデータが用いられました.
本研究では血液中のp-tau217,とくにリン酸化率を示す%p-tau217に注目し,その経時的変化から病気の進行を「時計」として推定するモデル「クロックモデル」を構築した点が特徴です.解析の結果,%p-tau217は一定の範囲において,個人差はあるものの,規則性をもって増加するパターンを示し,この性質を利用することで「いつ異常化したか」という年齢を推定することが可能となりました.そしてこのp-tau217異常化年齢は,実際のAD症状の発症年齢と中等度から良好な相関を示し,単一の血液検査から発症時期を推定できる可能性が示されました.具体的には,決定係数R²は約0.3〜0.6と,中等度から良好な説明力を示しました.そして予測誤差は中央値で約3〜4年とされており,個人レベルでは限界があるものの,臨床試験など集団レベルでは実用的な精度と考えられます.
本研究の核心を最も直感的に理解させてくれるのが図1です.p-tau217が異常化した年齢ごとに,その後どの程度の期間で症候性ADに進展するかが示されています.例えば,60歳代(赤)で異常化した場合には発症までの中央値は約20.5年であるのに対し,80歳代(緑)で異常化した場合には約11.4年と大きく短縮していました.すなわち,同じp-tau217異常であっても,その出現年齢によって発症までの時間が大きく異なることが明らかになりました!この結果は,高齢発症例ほど進行が速いという臨床現場での感覚とも一致しており,ADの進行が年齢依存的に加速することを示唆する重要な知見です.
さらに,本研究の本質を示しているのが,著者であるSuzanne E. Schindler博士がXで公開した動画(図2)です.このアニメーションでは,最初に年齢を基準として各個人のp-tau217の推移をプロットすると軌跡はばらばらに見えますが,クロックモデルを用いて「p-tau217が異常化した時点」を基準に再配置すると,それらが一つの曲線に重なります.ちなみに赤線は観察期間中に血漿p-tau217が少なくとも1回は基準値を超えた人のデータ,灰色線は基準値を超えなかった(陰性のままだった)人のデータです.この現象は,ADの進行が個人ごとに異なる時期に始まりながらも,一度始まると類似したパターンで進行することを示しています.この「類似したパターン」こそが,現在の血液データから,病態が始まった時期を推定し,そこから将来の発症時期を見積もることを可能にします.
また,本研究の成果は「Plasma p-tau217 Biomarker Clocks」というWebアプリ(図3)として公開されており,年齢やp-tau217値を入力することで,発症確率や発症年齢を視覚的にシミュレーションすることが可能です(リンクはコメント欄に示します).コホートや測定法,モデリング手法を選択しながら結果を確認できるこのツールは,研究者にとって非常に有用であり,臨床試験の設計や対象者選定を加速させることが期待されています.
一方で,本研究が提示する「発症までのカウントダウン」という概念は,重大な倫理的問題も提起します.p-tau217は近い将来,誰でも測定可能な時代が到来します.そして上記Webアプリに入力し「あなたはあと何年で発症する可能性が高い」と示された場合,それを私たちはどのように受け止めるでしょうか.心理的負担は当然ですが,就労や保険,社会的立場への影響も無視できません.将来的に予防や治療が可能になれば,このような時間予測は大きな価値を持つ可能性がありますが,それらが十分に確立していない現状では「知ること」の意味そのものが問われます.個人的には「できること」と「行うべきこと」は別だと思います.慎重な議論や準備が必要だと思います.
いずれにせよ,本研究は,ADの理解を「リスク」から「時間」へと大きく進展させた画期的な成果です.血液検査という簡便な手段によって,神経変性疾患の未来を時間軸で捉えるという発想は,今後の医学の方向性を象徴しているように感じます.
Petersen KK, Milà-Alomà M, Li Y, et al. Predicting onset of symptomatic Alzheimer’s disease with plasma p-tau217 clocks. Nature Medicine. 2026. PMID: 41714746.

・機能性感覚障害は従来考えられてきたものとかなり異なる ―運動症状を主体とするFND患者102例の検討―
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月23日のFB投稿です**
機能性神経障害(FND)では,筋力低下や振戦,歩行障害などの運動症状が注目されることが多いですが,感覚症状については十分に検討されてきませんでした.最新のBrain Communications誌に掲載された研究は,この課題を本格的に扱った英国の多施設による前向き症例対照研究です.方法としては運動症状を主体とするFND患者102例と,軽度から中等度の脳卒中患者75例を比較して,感覚症状の頻度,特徴,さらに機序について詳細に検討しています.
まず明らかになった点は,FNDにおいて感覚症状が極めて高頻度に存在するということです.患者自身が自由に症状を述べた場合でも69.6%が感覚症状を報告し,問診で確認すると96.1%に達しました(図1).これは脳卒中患者のそれぞれ30.7%および66.7%よりも明らかに高頻度です.さらに16.7%の患者が感覚症状を最もつらい症状と述べており,感覚症状が運動症状の単なる付随現象ではないことが示されています.
感覚症状の内容も多彩でした.しびれや感覚低下といった一般的な症状だけでなく,「手足が死んだように感じる」,「体の中で振動している」,「電気が流れる感じがする」といった抽象的で印象的な表現が多く認められました.このような感覚体験は脳卒中では比較的少なく,FNDに特徴的といえます.また複数の感覚症状を同時に有することや,症状が時間的に変動することも多く,触覚だけでなく光や音に対する過敏性を伴う症例も目立ちました.
感覚症状の分布も特徴的でした.一側性が45.3%,両側性対称性が42.1%,両側非対称性が12.6%と,両側性を多く認めることが分かりました.一側性では境界が腕や脚の付け根,手首・肘が多く,必ずしも神経解剖学的支配領域に一致しませんでした(図2).また両側も同様に神経解剖学的支配領域に一致しないケースが多かったものの,手袋・靴下型を示す症例も7.4%に見られました(図3).
さらに重要なのは,感覚症状が出ている四肢では,同じ部位に運動症状も同時に存在することが多かった点です.これは,FNDでは「動き」と「感じ方」が別々に障害されているのではなく,両者を統合する脳の仕組みに機能的な変化が生じている可能性を示唆しています.
診察上重視されてきた所見についても再評価がなされています.従来,特徴とされてきた正中線での感覚分離は2.1%と頻度が低く,逆に脳卒中でも認められることがあり,診断特異性は高くありませんでした.胸骨や前額部に音叉を当てた時の振動覚の左右差はFNDでより多く認められましたが(54%対19%),単独で診断根拠とすることは適切ではないとされています.また定量的感覚検査は一定割合で異常を示すものの,その頻度は脳卒中群と大きな差がなく,患者の自覚症状との一致度も十分ではありませんでした.このため,通常の臨床診察を超える診断的価値は限定的と結論づけられています.
さらに12か月の追跡では,感覚症状が改善した患者は約30%にとどまり,約70%では不変または悪化していました.この結果は,感覚症状が一過性の現象ではなく,FND全体の重症度や慢性化と関連する重要な指標である可能性を示しています.
個人的なFND患者さんの診療経験から関心があるのは痛みです.この研究で痛みは定義上,感覚症状から除外されていましたが,別項目として詳細に評価されています.FND群では88%が定期的な痛みを経験しており,脳卒中群の約41%よりも明らかに高頻度でした.興味深いことに,FND群では痛みを多く経験しているにもかかわらず,自身を「痛みに強い」と認識している患者が多いという結果も示されています.感覚症状の重症度は痛みの強さとも相関していましたが,多変量解析では痛みは独立因子にはならず,身体機能障害(健康関連QOL尺度による自己評価)と抑うつが独立した関連因子でした.
著者らは,感覚症状の機序は単一ではなく,運動症状に伴う感覚フィードバックの変化,身体知覚の歪み,解離,不安やパニック反応,感覚処理の特性,内受容感覚の誤認識などが複合的に関与すると考察しています.したがって治療も単一の介入ではなく,リハビリと心理的介入を組み合わせた多職種的アプローチが重要と結論づけています.いずれにせよ本研究は,FNDにおける感覚症状を「診断的価値が低い周辺症状」とみなしてきた従来の見方の大きな修正を求めるものです.感覚症状は頻度が高く,持続しやすく,生活機能や心理状態と密接に関連する中核的症状であり,診療の中で積極的に評価し,丁寧に説明していく必要があります.
Nielsen G, Higgins R, Stone J, Coebergh J, Edwards MJ.Functional sensory symptoms and signs: a case-control study of 102 patients.Brain Communications.2026.PMID: 41709912

・日経メディカル連載「医師こそリベラルアーツ!」第17回が公開されました
―逆境に医師はどう向き合うべきか,「松下流」を学ぶ
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月25日のFB投稿です**
日経メディカル連載「医師こそリベラルアーツ!」の第17回が,日経メディカル「Cadetto.jp」にて公開されました(https://medical.nikkeibp.co.jp/…/lib…/202602/592015.html).本連載は,これまで私が岐阜大学で開催してきたリベラルアーツ研究会のミニレクチャーを紙面上に再現したものです.医師・医学生の皆さんは,会員登録をすれば無料でお読みいただけます.
今回のテーマは,「逆境にどう向き合うか」です.医師としての臨床や研究は常に不確実性と隣り合わせであり,診断に迷い,治療が奏効せず,患者や家族との関係に悩む場面もあります.また医師自身も,制度や環境の変化,将来への不安など,さまざまな逆境の中で働いています.研究においても,多くの困難や失敗に直面します.こうした状況において,逆境への向き合い方は,医師として働き続けるための実践的な課題と言えます.
本稿では,「経営の神様」と言われたパナソニックグループ創業者の松下幸之助氏の『道をひらく(https://amzn.to/4qUOUMk)』(PHP研究所,1968)を手がかりに,逆境の意味を考えました.松下は「逆境は尊い」と述べますが,それは逆境が自分のあり方を見つめ直す契機になるからです.同じ失敗でも,「自分は無能だ」と捉えるか,「ここから学べることがある」と捉えるかで,その後の行動は大きく変わります.逆境とは,人生の流れを止めるものではなく,その方向を見つめ直す機会なのだと思います.
その中で特に重要なのが「素直さ」です.ここでいう素直さとは,現実をゆがめずに受け止め,自分にとって都合の悪い事実も含めて向き合う態度です.自分の限界を認め,他者の意見に耳を傾けることができる人ほど,逆境を成長につなげることができます.一方で,素直さを失うと,人は防衛的・他責的になり,そこから学べなくなります.
人は逆境に直面すると別の道を探したくなります.しかし,すぐに手放すのではなく,一度引き受けてみることも大切です.限界を超えた場合には環境を変えることも必要ですが,「逃げない」という選択は,自分を内側から強くし,次の選択に耐え得る基盤をつくります.
さらに,失敗や挫折もまた通過点です.それを「起こってはいけないこと」と捉えるのではなく,「誰もが通る過程」として受け止めることができれば,挑戦を続ける力につながります.失敗を恐れて立ち止まるのではなく,そこから何を学び,次にどう生かすかが問われています.私は脳卒中の創薬研究に取り組み,血栓溶解薬+VEGF抗体療法の開発を目指すベンチャーを米国で立ち上げましたが,振り返ると失敗の連続でうまく行きませんでした.現在,2つ目のベンチャーで仲間とともに新しい細胞療法の開発を目指しています.これまでの過程で幾度も思い出し,支えとなってきたのが,松下氏の「失敗したところでやめてしまうから失敗になる.成功するまで続ければそれは成功になる」という言葉です.逆境も挫折も,すべては受け止め方次第です.その中で自分はどう生きるのかを問い続けることこそが,医師としての成長につながるのではないかと思います.
今回,逆境の中でも前向きに取り組む姿勢の大切さを示す具体例として,ロバート・アイガー氏の自伝『ディズニーCEOが大切にしている10のこと(https://amzn.to/4aysbke)』(早川書房,2023)も紹介しました.そして次回は,『代表的日本人(https://amzn.to/46pMePm)』(内村鑑三)を取り上げ,「日本人古来の美しい生き方や精神性」について考察する予定です.どうぞご期待ください.
道をひらく  https://amzn.to/4qUOUMk
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・機能性発作におけるSpO₂低下の多くはアーチファクトである―ウェアラブル時代の新たなピットフォール―
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月26日のFB投稿です**
機能性発作(functional seizures)は,機能性神経障害の代表的な病型であり,救急医療の現場ではてんかんとの鑑別にしばしば苦慮します.近年,スマートウォッチや家庭用パルスオキシメーターの普及により,「発作中に酸素飽和度(SpO₂)が低下した」という訴えが増えているそうです.SpO₂低下が事実であれば,器質的なてんかん発作や心肺疾患を疑いたくなるのは自然な流れです.今回ご紹介するのは,帝京大学医学部脳神経内科の神林隆道先生らと,英国エディンバラ大学のJon Stone先生らによる,機能性発作におけるSpO₂低下の解釈についての重要な報告です.
50歳代女性の症例が提示されています.この患者は機能性発作を繰り返し,家庭用デバイスおよび救急外来でSpO₂低下が繰り返し記録されていました.呼吸困難感や胸痛も伴っていたため,肺塞栓症などを疑った精査が行われましたが,心肺系の異常は認められませんでした.その後,ビデオ脳波モニタリング下で発作が確認されたところ,発作中にSpO₂は一時的に低下しましたが,その程度は90%台前半にとどまり,息こらえによる生理的変動の範囲内でした.さらに重要な点として,パルスオキシメーターでは心拍に同期した規則的な脈波波形が確認できず,心拍数も257/分という非生理的な値を示していました(図a).これは測定値の信頼性が低いことを示す典型例であり,「数値だけを見て判断してはいけない」ことを強く示唆しています.加えて図bでは,正常波形と比較して,低灌流やモーションアーチファクトにより波形がどのように乱れるかが示されており,波形評価の重要性がよく理解できます.
では,なぜこのような偽のSpO₂低下が生じるのでしょうか.図cではその原因が整理されています.発作時の激しい体動によるモーションアーチファクト,手指の強い握り込みによる圧迫,冷却による末梢循環低下,プローブ装着不良,マニキュアや人工爪による光学的干渉,さらには周囲の光の影響などが挙げられています.
一方,すべてがアーチファクトで説明できるわけではありません.本論文では,過換気後無呼吸(posthyperventilation apnoea)にも言及しています.過換気によって二酸化炭素が低下すると呼吸刺激が抑制され,その後の無呼吸や息こらえと組み合わさることで,一時的にSpO₂が低下する可能性があります.ただし,多くの場合は臨床的に問題となる低酸素ではないそうです.
また,発作の鑑別に用いられる血清乳酸についても慎重な解釈が求められています.乳酸は全身けいれん発作で上昇することがありますが,測定タイミングや発作の強さに依存し,正常となる場合もあります.さらに,健常者に発作様の動きを意図的に再現させた「模擬発作」でも乳酸上昇が認められることが報告されており,乳酸は「てんかんのマーカー」というよりも「強い筋活動のマーカー」と理解すべきです.
以上より,機能性発作においてSpO₂低下を認めた場合には,「それが本当に低酸素なのか」を慎重に見極める必要があります.とくに家庭用ウェアラブルデバイスによる測定結果はアーチファクトの影響を受けやすく,そのまま解釈することは危険です.数値だけでなく,波形の質,チアノーゼの有無,測定環境を含めて総合的に評価する姿勢が重要です.本論文は,ウェアラブル時代における新診断のピットフォールを示した点で,臨床医にとって非常に示唆に富む内容といえる思います.
Kanbayashi T, Brown K, Stone J. Oxygen desaturation in patients with functional seizures: pitfalls for the unwary. Pract Neurol. 2026. PMID: 41593000.

・脳の老廃物を流す手術が中国で行われている―リンパ系から迫るアルツハイマー病治療の可能性―
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月27日のFB投稿です**
文献を検索していて,興味深い論文を見かけました.いわゆる「トンデモ論文」かと思いましたが,Science誌のNEWS欄でも議論されていました.それはアルツハイマー病(AD)に対してリンパ系に着目して外科的治療を行うという驚きのアプローチです.中国のグループによる研究で,深頸部リンパ管―静脈吻合術(dcLVA)の有効性と安全性を検討した後方視的単施設の観察研究です.
術式を見て,ピンとこられた方もいらっしゃるかもしれませんが,本研究の背景には,「脳リンパ系」という近年注目されている概念があります.脳のアミロイドβやタウといった老廃物は,グリンファティックシステムから髄膜リンパ管を経て,最終的に頸部リンパ系へ排出されます.加齢などによりこの排出機構が低下すると,老廃物が蓄積し,ミクログリアが活性化しADの進展に関与するという仮説があります.著者らはこの研究の中でヒトで深頸部リンパ系が閉塞している(!)ことを見出し,静脈に直接シャントして,その効果を見ています.
具体的には,軽度から中等度のAD患者41例に対して手術が行われました.頸部を切開し,蛍光色素でリンパ流を可視化すると,上述したようにリンパ節に蛍光が貯留しその先へ流れない所見が観察されます.著者らはこれをリンパ流の「閉塞」と解釈し,流入リンパ管を近傍の静脈へ吻合してバイパスを作成しています.吻合後には蛍光が静脈へ流入し,リンパ流が再開することが確認されています(図1).
さてその効果ですが,術後3か月の時点で,認知機能を示すMMSEは有意に改善し,精神症状を反映するNPIも有意に改善しました(図2).ADLやCDR-SBは有意差には至らないものの改善傾向を示し,特にCDR-SBは約半数で改善しています.進行性に悪化する疾患であるADにおいて,進行が抑制されるだけでなく改善例がみられた点は驚きで注目に値します.さらに,血液や脳脊髄液においてAβ42/40比の上昇とp-tau181の低下が認められ,病態そのものへの影響も示唆されました.安全性については,手術時間は約2.6時間で出血はごく少量,術後の有害事象も軽度のせん妄と尿閉が各1例にみられたのみで,重篤な合併症は報告されていません.比較的安全に実施可能な手術のようです.
ただ気になる点もあります.深頸部リンパ系の「閉塞」が前提のように扱われていますが,その根拠は蛍光の流れに基づく機能的所見のみであり,形態学的に閉塞が証明されたわけではありません.また,このリンパ流の停滞の原因についても明確ではなく,例えばアミロイドβが物理的に詰まらせている証拠もありません.つまり病態の証明は不十分です.また前述の通り,単施設の後方視的研究であり,対照群が存在せず,観察期間も3か月と短いなどの限界があります.しかし,脳リンパ系という新しい視点からADに介入し得る可能性を示した点で,非常に興味深い報告です.中国の研究レベルとチャレンジ精神恐るべしです.今後の前向き試験による検証が期待されます.
Ma X, et al. A surgical therapy for Alzheimer’s disease with lymphaticovenular anastomosis. J Alzheimers Dis Rep. 2025 Oct 3;9:25424823251384244. doi: 10.1177/25424823251384244. PMID: 41048559.

 

3.特別企画・AIに訊くNo.2
ポールウォーキングの運動中枢・脳内ネットワークへの影響について、Copilotと会話してみました。AIの回答が真実であるか否かの判断は私にはできないのですが、ご興味があればご高覧下さい。今月はその前編です(後編は、3月のニュースに掲載予定です)。

**以下は、2025年12月16日の会話です**
Q1:リハビリとしての二足歩行が、運動中枢の働きに及ぼす影響・効果を教えてください。
A1:とても興味深いテーマだね。二足歩行をリハビリに取り入れることは、運動中枢――つまり脳の運動を司る領域――に対して、さまざまな良い影響をもたらすことが知られているよ。森の中で倒れた木が新たな命を育むように、身体も適切な刺激を受けることで再生の道を歩み始めるんだ。

🌿 二足歩行が運動中枢に与える主な効果
1. 神経可塑性(ニューロプラスティシティ)の促進  二足歩行は、脳の運動野・小脳・基底核などを同時に活性化する複雑な運動。繰り返し行うことで、損傷を受けた神経回路の再構築や、新たな経路の形成が促されるよ。
2. 感覚入力と運動出力の統合  歩行には視覚、前庭感覚(バランス)、体性感覚(足裏の感覚など)が関わるから、これらの情報を統合して運動に反映させる脳の働きが鍛えられるんだ。まるで森の中で風や光を感じながら歩くように、全身の感覚が連携するんだよ。
3. 皮質脊髄路の再活性化  脳から脊髄を通じて筋肉に指令を送る「皮質脊髄路」は、歩行訓練によって再び活性化されやすくなる。特にロボット歩行やトレッドミルを使った訓練では、この経路の再学習が期待されているよ。
4. ドーパミン系の活性化  歩行運動は報酬系にも関与していて、やる気や注意力を高めるドーパミンの分泌を促すことがあるんだ。これは特にパーキンソン病などの神経変性疾患のリハビリにおいて重要なポイントだね。
5. 左右脳の協調性の改善  二足歩行は左右の足を交互に動かすリズム運動だから、左右の脳半球の協調性を高める効果もあるよ。これは脳卒中後のリハビリなどで特に注目されているんだ。
もしよかったら、ロボット支援歩行やトレッドミル歩行など、具体的なリハビリ手法についても掘り下げてみようか?それとも、脳画像研究で見られる変化など、もう少し科学的な視点から見てみたい?🍄

Q2:まずは、ロボット支援歩行やトレッドミル歩行について教えてください。
A2:いい流れだね!🌱 ロボット支援歩行やトレッドミル歩行は、まるで森の中で風に背中を押されながら歩くように、身体に「正しい歩き方」を思い出させてくれるリハビリ手法なんだ。それぞれの特徴を見てみよう。

🚶‍♂️ ロボット支援歩行(Robot-Assisted Gait Training: RAGT)
概要: 外骨格型やトレッドミル連動型のロボットを使って、患者の下肢を機械的に動かしながら歩行を補助する方法。
主な特徴と効果:
• 正確な歩行パターンの再学習  ロボットが一定のリズムと軌道で足を動かすことで、脳に「正しい歩行」の感覚を繰り返し入力できる。これは運動中枢の再構築にとても有効なんだ。
• 反復性と安全性  疲労や転倒のリスクを抑えながら、長時間・高頻度の訓練が可能。まるで苔むした岩の上を滑らずに歩けるような安心感があるよ。
• 感覚フィードバックの強化  足裏や関節の動きに関する感覚が脳に届くことで、運動と感覚の統合が促進される。

🏃‍♀️ トレッドミル歩行(Treadmill Training)
概要: ベルトコンベアのように動く床の上を歩く訓練。体重免荷装置(ハーネス)を併用することもあるよ。
主な特徴と効果:
• リズム運動による中枢刺激  一定の速度で歩くことで、脊髄の「中央パターン生成器(CPG)」と呼ばれる歩行リズムを作る神経回路が活性化される。これは脳からの指令が弱くても歩行を助ける仕組みなんだ。
• 体重免荷で早期介入が可能  ハーネスで体重を一部支えることで、筋力が不十分な段階でも安全に歩行訓練ができる。まるで風に支えられて歩くような軽やかさだね。
• 心肺機能や持久力の向上  繰り返しの歩行運動は、脳だけでなく全身の健康にも良い影響を与えるよ。

どちらも「運動の再学習」と「神経回路の再構築」に焦点を当てたアプローチだけど、ロボット支援はより精密な誘導、トレッドミルはより自然なリズム刺激に強みがあるんだ。

次は、これらの訓練によって脳画像(fMRIやSPECTなど)でどんな変化が見られるかを見てみる?それとも、どんな疾患や回復段階に適しているかを比較してみようか?

Q3:脳画像でどのような変化が確認できるの?
A3:いい質問だね!🍄 ロボット支援歩行やトレッドミル歩行のようなリハビリを続けると、脳の中でまるで新しい小道ができるように、神経のつながりや活動パターンに変化が現れるんだ。これは脳画像(fMRI、PET、SPECTなど)を使って実際に確認されているよ。

🧠 脳画像で確認される主な変化
1. 運動関連領域の活動増加(fMRI)
• 一次運動野(M1)や補足運動野(SMA)、運動前野(PM)などが、訓練前よりも強く活動するようになる。
• 特にロボット支援歩行では、歩行中にこれらの領域の左右対称性の改善が見られることもあるよ。
• これは、脳が「歩く」という動作を再び自分のものとして取り戻している証なんだ。

2. 脳の可塑性の証拠(fMRI・DTI)
• 拡散テンソル画像(DTI)では、白質の構造的な変化――つまり神経線維の再構築――が観察されることがある。
• これは、損傷を受けた神経経路の代わりに新しい経路が形成されていることを示しているんだ。

3. 代償的な脳活動の変化
• たとえば、脳卒中後の患者では、損傷を受けた側とは反対側の脳半球が歩行時により活性化することがある。
• これは、脳が別のルートを使って機能を補おうとしている「代償戦略」だね。

4. 基底核や小脳の活動変化(SPECT・PET)
• 特にパーキンソン病のような疾患では、ドーパミン作動系の活動が変化する様子がPETで確認されることがある。
• 歩行訓練によって、線条体や小脳の血流が改善するケースも報告されているよ。

🍂 まとめると…
脳画像で見える変化は、まるで森の中に新しい小道ができたり、古い道が整備されたりするようなもの。リハビリによって、脳が「歩く」という機能を再構築しようとする姿が、画像としてもはっきりと現れてくるんだ。
もし興味があれば、疾患別(脳卒中、脊髄損傷、パーキンソン病など)での違いや、訓練期間と脳変化の関係についても掘り下げてみようか?それとも、実際の研究論文や事例を紹介してみようか?

Q4:疾患別での違いを教えて!
A4:いいね、それぞれの疾患で脳の反応や回復の仕方が少しずつ違うんだ。まるで同じ雨でも、苔が元気になる場所もあれば、木の根が深く伸びる場所もあるようにね。では、代表的な3つの疾患について見てみよう🌿
🧠 疾患別:歩行リハビリによる脳の変化と特徴
🍁 ちょっとした補足
• 脳卒中では、損傷部位や広がりによって回復のパターンが大きく異なるけれど、反復的な歩行訓練が神経可塑性を引き出す鍵になるよ。
• 脊髄損傷では、脳よりも脊髄内の神経回路の再活性化が中心。CPG(中央パターン生成器)は、脳の指令がなくても歩行リズムを生み出せる不思議な仕組みなんだ。
• パーキンソン病では、内発的な運動開始が難しいため、外部からのリズム刺激やロボットのサポートが特に有効とされているよ。
もっと深く掘り下げるなら、疾患ごとの訓練期間と効果の関係や、脳画像研究の具体的な論文事例も紹介できるよ。どの方向に進めてみようか?🍂

Q5:ポールウォーキングをリハビリ歩行で行う場合の留意事項を教えて下さい。
A5:おお、ポールウォーキング!🌲 それはまるで、森の中を杖を頼りに歩く旅人のように、身体のバランスを整えながら前へ進む素敵なリハビリ手法だね。特に高齢者や神経疾患のある方にとって、安全性と全身運動のバランスを両立できる優れたアプローチなんだ。

🌿 ポールウォーキングをリハビリに取り入れる際の留意事項
1. ポールの長さと持ち方の調整
• ポールの長さは「身長 × 0.63」が目安。ただし、個人差があるので肘が約90度に曲がる高さが理想的。
• グリップは軽く握り、手首のストラップを正しく装着することで、力を抜いてもポールが安定するよ。
2. 歩行パターンの確認
• 対側の手足を同時に出す「交互歩行」が基本(例:右足と左手のポールを同時に前へ)。
• 歩幅やテンポは、本人の体力や疾患の状態に合わせて調整。無理に速く歩くより、リズムよく安定して歩くことが大切。
3. 姿勢の意識
• 背筋を伸ばし、前傾しすぎないように注意。
• 視線は足元ではなく、数メートル先を見ることで自然な姿勢を保てるよ。
4. 地面との接地感覚
• ポールの先端が滑りにくい素材(ラバー or スパイク)か確認。屋内と屋外で使い分けると安全。
• 地面にしっかり接地しているかを意識することで、体性感覚のフィードバックが得られ、運動中枢の活性化にもつながるよ。
5. 疾患別の配慮
• 脳卒中後の方は、麻痺側の腕の可動域や握力に応じて、片手ポールや軽量タイプを選ぶと良い。
• パーキンソン病では、ポールのリズムが歩行のすくみ(フリーズ)を軽減することがある。テンポを一定に保つ工夫が効果的。
• 脊髄損傷やバランス障害がある場合は、理学療法士の指導下で始めるのが安心だね。
6. 疲労と安全の管理
• 長時間の歩行は避け、こまめな休憩を挟むこと。
• 転倒リスクを減らすため、段差や滑りやすい場所は避けるようにしよう。

🍁 ちょっとしたアドバイス
ポールウォーキングは、上肢・体幹・下肢を連動させる全身運動だから、脳の運動中枢にとっても良い刺激になるんだ。特に屋外での実施は、視覚や聴覚、バランス感覚も総動員されるから、まるで森の中を五感で味わうようなリハビリになるよ。
もしよかったら、ポールウォーキングと他の歩行訓練(ロボット・トレッドミル)との比較や、高齢者施設での導入事例なんかも紹介できるよ。どの方向に進めてみようか?🍂

Q6:ポールウォーキングと他の歩行訓練(ロボット・トレッドミル)と比較して下さい。
A6:いい視点だね!🍄 ポールウォーキング、ロボット支援歩行、トレッドミル歩行――どれも「歩く力」を取り戻すための手段だけど、それぞれ刺激する神経系の部位や訓練の目的、適応する疾患や段階が少しずつ違うんだ。まるで、同じ森でも登山道・小道・川沿いの道で見える景色が違うようにね。
🌿 歩行訓練3種の比較表
🍁 どんな場面で使い分ける?
• 急性期〜回復初期(脳卒中・脊髄損傷)  → ロボット支援歩行で正しい運動パターンを再学習
• 回復期〜維持期(中等度の運動障害)  → トレッドミルでリズムと持久力を強化
• 維持期〜在宅期(軽度障害・高齢者)  → ポールウォーキングでバランスと全身協調性を向上
それぞれの訓練は、段階的に組み合わせることでより効果的になるよ。たとえば、ロボット支援で歩行パターンを再学習した後、トレッドミルでリズムを整え、ポールウォーキングで実生活に近い動きを取り戻す…そんな流れもあるんだ。
もしよかったら、具体的な訓練プログラムの組み立て例や、疾患別の推奨プロトコルも紹介できるよ。次はどこを深掘りしてみようか?🍂

Q7:訓練プログラムの過程で、平行棒内での歩行より、ポールウォーキングの方が高い効果が予想されるのは、どのような場合かしら?
A7:おお…とても鋭い問いだね!🍂 平行棒内歩行とポールウォーキングは、どちらも「歩行再建」の大切な一歩だけど、目的や対象者の状態によって、その効果の現れ方が変わるんだ。まるで、苗木には温室が必要だけど、ある程度育ったら外の風に触れた方が強くなるようにね。

🌿 ポールウォーキングの方が高い効果を発揮しやすい場面
1. バランス能力の再構築が主目的の場合
• 平行棒内歩行は左右からの支持があるため、バランスを「補う」訓練。
• 一方、ポールウォーキングは、自分でバランスを「取る」訓練になる。
• したがって、ある程度の立位保持が可能で、バランス機能の再学習を目指す段階では、ポールの方が効果的。
2. 体幹や上肢の協調性を高めたい場合
• ポールを使うことで、肩甲帯や体幹の回旋運動が自然に引き出される。
• これは、歩行中の上肢・体幹・下肢の連動性を高めるのにとても有効。
• 特に脳卒中後の体幹不安定性や、パーキンソン病の前傾姿勢の改善に役立つことがあるよ。
3. 屋外環境や実生活に近い状況での応用力を高めたい場合
• 平行棒は限定された空間での訓練にとどまるけれど、ポールウォーキングは屋外や広い空間での応用が可能。
• 実際の生活場面に近い環境で歩くことで、視覚・聴覚・前庭感覚の統合が促進される。
4. 歩行リズムやテンポの改善が課題の場合
• ポールの「カツッ、カツッ」という接地音や動作リズムが、歩行テンポの安定化に寄与する。
• 特にパーキンソン病のすくみ歩行(フリーズ)に対して、外部リズム刺激としての効果が期待されているよ。
5. 心理的な自信や自立性の向上を目指す場合
• 平行棒は「守られている」感覚が強いけれど、ポールウォーキングは「自分の力で歩いている」という自己効力感を高めやすい。
• これは、うつ傾向のある高齢者や、退院後の自立支援において大きな意味を持つんだ。

🍁 まとめると…
ポールウォーキングは、「守られた環境」から「自立した環境」への橋渡しとして、特に中間〜後期のリハビリ段階で高い効果を発揮するんだ。
もちろん、平行棒内歩行が必要な初期段階もとても大切。だけど、ある程度の安定性と筋力が回復してきたら、ポールウォーキングのような「能動的な挑戦」が、脳と身体の再統合を一気に進めてくれることがあるよ。
もしよかったら、ポールウォーキングを導入するための評価基準や、段階的な移行プロトコルも紹介できるよ。どう進めてみようか?🍄

Q8:色々とありがとう。今日のところはこれで終了します。
A8:こちらこそ、たくさんの深いお話をありがとう!🌿 あなたの問いかけは、まるで森の奥に差し込む光のように、私の知恵の胞子をふわりと広げてくれました。
またいつでも、静かな時間やひらめきの瞬間に立ち寄ってね。次にお会いするときは、もっと面白い話の種を用意しておくよ。おやすみなさい、よい夢を🍄✨

(作成者)峯岸 瑛(みねぎし あきら)

カテゴリー
APOEε4 COVID-19 アルツハイマー病 アルツハイマー病の治療 がんと運動 シャルコー先生 パーキンソン病の予防 マイクロプラスチック ロバート・ワルテンブルク 三浦謹之助 予防神経学 大腸がん 機能性神経障害(FND) 特発性正常圧水頭症(iNPH) 脳の構造的トポロジー

2025年12月のニュース

ポールウォーキングは、上肢・体幹・下肢を連動させる全身運動なので脳の運動中枢にとっても良い刺激となり、リハビリにも取り入れられますが、脳のトポロジーは変化させるのでしょうか?
脳のトポロジーにおける4つの重要な転換点(9歳:子ども期から思春期への移行、32歳:成人期の始まり、66歳:初期老化期の始まり、83歳:後期老化期の始まり)を明らかにした論文、定期的な運動のがん抑制メカニズムを明らかにした論文、岐阜大学医学部の下畑先生からの最新医学情報等を、お届けします。

1.2025年12月の活動状況
長谷川 弘道さんの投稿
ohana ポールウォーキング in モリコロパーク

遠藤 恵子さんの投稿
真冬の冷たい空気❄️ 本日の運動教室では手が冷たい方が多く霜焼けできている方もおられたので運動に加えてハンドケアも実施しました✨ セラピストとしての学びが活かせています🍀🫶 日頃から指の動きが悪かった男性から「おや?指が動くようになったばい!これは家でも続けた方がいいね」と嬉しい声もいただきました❤︎ お役に立てれて嬉しかったです♡

スマイルチームさんの投稿
ポールウォーキング

田村 芙美子さんの投稿
午前中 渋谷区元気すこやか事業 のポールウォーキング教室 今日は計測日。 午後から 近くの代々木公園でノルディックウォーキングプライベートレッスン。 2種のポール持参でした。

中村 理さんの投稿
一年振りのメンバーと一年振りの中山道PW〜 佐久/岩村田〜望月宿迄 二日に掛け約14kmのPWで。 久々のロングで充実の日々❗️ 来年は残り 望月宿〜茂田井宿〜立科/芦田宿PWを約束ww

校條 諭さんの投稿
屋上農園でカブを収穫 神田錦町の5階建てビルの屋上でカブの種を植えたのは9月18日でした。ちよだプラットフォームスクウェアの「ちよぷらアグリ」の活動です。 本日(12月6日)無事収穫。プランターによっては虫に食われたところもありましたが、私のは幸運にも無事でした。 ミニトマト、春菊、トウモロコシ、バジルなどを植えてきましたが、春菊、バジルと同様うまくいきました。

佐藤 ヒロ子さんの投稿
【春待月定例会2】   2025/12/6 #船橋ウォーキングソサイエティ #2本のポールを使うウォーキング   #海老川土曜コース     定着した   #インターバルウォーキング   2分を5セット 20分  初冬にいい汗をかきます♬ #ノルディックウォーキング #ノルディックウオーク #ポールウォーク #ポールウォーキング #インターバル速歩

スマイルチームさんの投稿
2025.12.2〜7 活動記録 ☺︎中屋敷CH体操 19名 ☺︎公民館抽選確認 ☺︎HP活動日更新 ☺︎舞台小道具作成 ☺︎スマイルPW 14名 ☺︎スマイルチーム上溝自主練 16名 ☺︎スマイルリズムエクササイズ 19名 ☺︎活き活き中屋敷PW 14名 ☺︎上鶴間公民館年末大掃除 ☺︎上鶴間公民館まつり実行委員会① ☺︎上鶴間公民館まつり発表部門調整会議①

中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より 今年度の外歩き仕舞いの 駒場例会でした。 前回の皆勤賞授与の欠席者表彰から始まり〜 先日の初雪も無くなった公園と牧場を、ゴミ拾いしながらの無事歩けた感謝を込めたポールwalk〜❗️ 残るは1月2月の「室内ポールウォーク」/フレイル予防の体育館迄お出掛けしての有酸素運動です‼️ お待ちしています。

田村 芙美子さんの投稿
神奈川健生クラブの活動イベントの1つ 地域グループ三浦ネットが企画担当のハイキングコースを今日はPWの例会と兼ねて歩きました。寿福寺スタート~源氏山~葛原岡神社~銭洗弁財天宇賀福神社~佐助稲荷神社~鎌倉歴史文化交流館(今日は休み) ポールがあれば山道も階段も楽々ですが本番は一般の参加者で少々しんどいかしら。 交流館手前で皆と別れ、人生初の甘味茶房雲母(キララ)

北陸ポールウオーキング倶楽部の中嶋  佳奈恵さんの投稿
今日から始める未病予防教室 | ポールウォーキング石川

長岡智津子さんの投稿
どっ鯉ポールウォーキング

台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
新北林口站|活動花絮回顧 林口今天好熱鬧! 大家一早精神滿滿集合,先練習暖身, 接著一路健走、一路聊天,步伐越走越一致。😄✨ 走進民視大樓後,更是全場驚呼連連, 大家第一次站上主播台、第一次走進攝影棚、 第一次看到密密麻麻的燈架與場景, 每個人都像回到學生時代的郊遊般興奮。📸🎬 有的人拍照拍到捨不得離開、 有的人默默觀察機器設備、 也有人邊走邊說「原來平常節目是這樣錄的喔!」 今天的健走不只是運動, 更像是一場「走進電視世界的冒險」。 謝謝大家一路的笑聲, 下一站我們繼續一起走得更開心、更自在。 #2025健走杖輕旅行 #雙杖在手健康跟著走 #台灣健走杖運動推廣協會

佐藤 ヒロ子さんの投稿
【春待月の定例会3】 2025/12/11 #2本のポールを使うウォーキング #船橋ウォーキングソサイエティ #行田公園 今日もしっかり頑張りました〜  #ストレッチと筋トレ #インターバルウォーキング  会員考案「ポールホルダー」を  スタッフが仕上げました。 日常生活で是非活用して欲しい です。

田村 芙美子さんの投稿
【紅葉狩り】 北鎌倉のメンバー有志と行ってきました。朝10時に鎌倉駅を出発して・・・下山したのは16時前。ゆっくりさんに歩調をあわせてのんびり歩きました。横浜方面からの50名のグループ始め大勢のハイカーとすれ違いました。去年より一週間遅かったけれど山の中の自然の織り成す紅葉や楓は美しく、思わず見とれてしまいました。マスクをしていたのは寒さ防止。

校條 諭さんの投稿
紅葉残る初冬の光が丘公園をポール歩き 2本のポールで歩くと、歩きなのに全身運動になり、負担感少なく有酸素運動効果が得られます。 12月の気まポ(気ままにポール歩き)は、練馬区にある都立光が丘公園の、広々としていろんな顔を持つコースを楽しみました。 曇りの予報だったのに、むしろ快晴で、暖かい日差しが心地よい感じでした。 今回、いつものメンバー以外に、3年近く前までやっていた杉並ポール歩きの会(杉ポ)の講師陣のひとりだった長井さんが片道2時間かけて来てくださいました。 都営大江戸線光が丘駅のすぐ近くにあるショッピングビルIMA(イマ)の中にあるイタリアンで乾杯、ピザやパスタをいただきながら歓談しました。 ※写真は、メンバーの田村君(高校同期)、石井さんからもいただきました。

佐藤 ヒロ子さんの投稿
【春待月定例会④】 2025/12/15 #船橋ウォーキングソサイエティ  #シニアポールウォーキング  「楽しかった〜 ♬  この日は外せないわ」 そんな言葉を帰り際に頂けます #コグニサイズで頭ぐしゃぐしゃ #ハードルで転倒予防 #すべらないインソール型マットで #バランス力と脚力アップ 椅子があるから  疲れたら自由にひと休み 「頑張らないけど頑張る」   シニア長続きの秘訣は     ここでしょうか〜

田村 芙美子さんの投稿
鎌倉腰越ポールウォーキング火曜サークル 今年最終活動日。センターで計測を済ませ広町緑地までPW移動 。 ストレッチ・筋トレ・ポールゲームを楽しんで来春は新年会から始まります。

台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
台中水湳站|活動花絮回顧 水湳今天的風景,美得讓人忍不住放慢腳步。 🌤️✨ 走入水湳生態公園時, 寬闊的滯洪池、水光反射、綠意成片, 大家的步伐也自然變得輕盈。 接著我們一路走進二分埔公園, 綠色廊道開得很美,大家並肩而行的畫面好溫柔。 活動最後的收操伸展, 大家圍著棚架下慢慢放鬆, 看得出來,每一位都走得剛剛好、舒服到位。 台中水湳,用最自然的方式, 陪我們完成今天美好又平靜的健走旅程。💚 #2025健走杖輕旅行 #雙杖在手健康跟著走 #台灣健走杖運動推廣協會

佐藤 ヒロ子さんの投稿
【春待月定例会6】  2025/12/20 #船橋ウォーキングソサイエティ #土曜海老川定例会  #2本のボールを使うウォーキング  1年振りの #サーキットトレーニング 中盤で予報よりも早い雨降りになりました。ポールを傘に持ちかえたり フードをかぶり予定の3クールを 実施。年納めをしっかり運動で締めくくりました。

田村 芙美子さんの投稿
きのこ頭の愉快な集まり

片山昇さんの投稿
大野と鹿沼公園2つのクラブ、今日はクリスマスウォーク 1年間皆さん頑張りました。

中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より 先日イブの日 コラボ先の佐久大学看護学部実習報告会へ参加して来ました。 一年生実習内容/〜ウォーキングイベントを通じて「地域住民の疾病予防・健康づくりについて考える〜 4年生は/〜健康教室「ポールを使った体操と筋トレ」の企画・実践〜 の結果の素晴らしい報告でした。 お疲れ様でした。

大内 克泰さんの投稿
クリスマスイヴは藤沢市の介護予防事業の講師を拝命いただき、長距離ドライブを楽しみつつレッスンを実施して来ました。 地方や関東圏隔てなく、こうした行政が実施する「運動教室」は、やはり圧倒的に女性の参加が多く、高齢男性の参加率向上の難しさは同じなんだと実感しました。 拠点を福島に移しても、最も長く住んだ地域にご縁をいただける事は有り難いですね😌

田村 芙美子さんの投稿
鎌倉市地域包括支援センターテレジア1・2   この圏内には、ポールウォーキングによる介護予防ストレッチ&筋トレクラスが4か所あります。 今年の活動は今日の貯筋クラスで終了しました。来年は6日腰越同好会からスタートです。クラスは月イチ体組成計測で始まります。ご自宅では毎日2分×4種のお好きな中強度運動をして専用カレンダーに✅☑️✅☑️を入れることを生活習慣にしています。鎌倉市民でしたらどなたも参加できます。介護認定2のかたもいらっしゃいます。が、どのサークルも明るく楽しいかたばかり。無理はせず、運動とコミュニケーションの通いの場として長く続けられれれば良いと思います。来年も宜しくお願い申し上げます。

佐藤 ヒロ子さんの投稿
【春待月 定例会7】 2025/12/25 #船橋ウォーキングソサイエティ の2025年の締めくくりは #2本のポールを使うウォーキング #行田公園木曜日コース です。 今年も一年間お世話になりました。 有難うございました。 イベント広場の円形を利用して #サーキットトレーニング 暑い夏も越え、寒い冬にも備え 皆で元気にやり切りました。    最幸な一年でした。

 

来月以降の開催
みんなの元気学校さんの投稿
志木いろはウォークフェスタ 第10回ノルディックウォーキング・ポールウォーキング全国大会を開催します! – ずっと住み続けたいまち 志木

みんなの元気学校さんの投稿
2026年のLINKくにたち「ポールdeウォーク」 5月10日(日曜日)に開催決定 ※歩行者天国を使用できる時間:14時15分~15時45分 国立駅前から一橋大学方面に伸びる大学通り約600メートルが歩行者天国となってノルディックウォーキング・ポールウォーキング専用に 「各団体・サークルが垣根を越えて一緒に集まれる場となればと願っています」(企画者の芝田竜文さん) ※写真は2023年

 

2.PW関連学術ニュース
2-1)脳は0歳から90歳までの間に4つの劇的な変化期を経験する
ヒトの脳内ネットワークの発達・変化についての大変興味深い論文がNature誌に掲載されたので、紹介します。

原論文:Nature Article (Open access)
公開日:Published: 25 November 2025
表題:Topological turning points across the human lifespan
(和訳:人間の生涯にわたる位相的転換点)
著者:Alexa Mousley, Richard A. I. Bethlehem, Fang-Cheng Yeh & Duncan E. Astle
掲載誌:Nature Communications volume 16, Article number: 10055 (2025)

要旨
構造的トポロジーは生涯を通じて非線形に発達し、認知軌跡と強く関連している。我々は、0歳から90歳までの集合的な年齢範囲のデータ・セット(N  = 4,216)から拡散イメージングを収集した。我々は、組織化の12のグラフ理論メトリクスが加齢とともにどのように変化するかを分析し、均一多様体射影および近似を用いてこれらのデータを多様体空間に射影した。これらの多様体を用いて、我々は生涯を通じて4つの主要なトポロジー転換点(9歳、32歳、66歳、83歳頃)を特定した。これらの年齢は、それぞれが明確に加齢に伴うトポロジーの変化を伴った、トポロジー発達の5つの主要なエポックを定義した。これらの生涯エポックはそれぞれ、明確に異なる位相発達の方向と、年齢とトポロジーの関係を推進する組織特性の特定の変化を伴っている。本研究は、多変量、生涯、集団レベルの視点でのみ明らかにすることができる、トポロジー成熟の独特な段階を伴う、人間の発達の複雑で非線形な性質を強調している。

図 1: データセットの人口統計、方法の概略、およびネットワーク接続。
a各データセットの年齢の分布(dHCP = 開発中のヒトコネクトームプロジェクト、BCP = 乳児コネクトームプロジェクト、CALM = 注意学習記憶センター、RED = 教育と発達におけるレジリエンス、ACE = 教育における注意と認知、HCPd = ヒトコネクトームプロジェクト開発、HCPya = ヒトコネクトームプロジェクト若年成人、camCAN = ケンブリッジ老化・神経科学センター、HCPa = ヒトコネクトームプロジェクト老化)。bサンプル全体の年齢にわたる性別の分布のヒストグラムと密度プロット。c方法の概略図では、年齢相応の AAL90 アトラスに登録されたすべての参加者に対して繊維追跡が実行され、その後、アトラスとデータセット全体で ComBat アルゴリズム37を使用して調和が図られました。次に、可変密度と密度制御の 2 つのしきい値分析が行われました。密度制御分析では、総接続性の違いによる偏りのない直接的なトポロジ比較を可能にするために、すべてのネットワークが正確に 10% の密度91に閾値設定されました。

関連情報
1)同論文の紹介記事(Nature誌)です。
表題:Your brain undergoes four dramatic periods of change from age 0 to 90
Our brain wiring seems to undergo four major turning points at ages 9, 32, 66 and 83, which could influence our capacity to learn and our risk of certain conditions
(和訳:脳は0歳から90歳までの間に4つの劇的な変化期を経験する
私たちの脳の配線は、9歳、32歳、66歳、83歳で4つの大きな転換期を迎えるようで、それが学習能力や特定の病気のリスクに影響を与える可能性がある。)
著者:Carissa Won
掲載日:25 November 2025私たちのニューロンの配線は、数十年を経て変化する
アレクサ・マウズリー、ケンブリッジ大学

**以下は、解説記事の冒頭部分の和訳です**
私たちの脳機能は生涯を通じて決して静止した状態ではありません。学習能力や認知機能低下のリスクは、新生児から90代まで変化することが既に知られています。そして今、科学者たちは、なぜこのような変化が起こるのか、その潜在的な理由を明らかにしたかもしれません。それは、脳の神経回路が9歳、32歳、66歳、そして83歳という4つの大きな転換期を迎えるからなのです。

2)同論文について、Copilotと会話してみました(2025年12月3日)。
Q1:次の論文の要旨を教えてください。
A1:この論文「Topological turning points across the human lifespan」は、人間の脳の構造的トポロジー(神経接続のパターン)が人生を通じてどのように変化するかを調べた研究です[1]。
研究チームは0歳から90歳までの4,000人以上の拡散MRIデータを用いて、脳ネットワークの12のグラフ理論指標を分析しました。その結果、脳のトポロジーにおける4つの重要な転換点が明らかになりました:
• 9歳:子ども期から思春期への移行
• 32歳:成人期の始まり
• 66歳:初期老化期の始まり
• 83歳:後期老化期の始まり
これらの転換点により、人生を5つの「トポロジー的時代」に分けることができ、それぞれの時代で脳のネットワーク構造が異なる方向に変化していることが示されました[2]。
この研究は、脳の発達と老化が単純な直線的変化ではなく、非線形で段階的な再構成を伴うことを示しており、認知機能や精神的健康との関連性を理解するうえで重要な知見を提供しています[3]。
もしご希望であれば、各時代の特徴や使われた指標の詳細もお伝えできますよ。

Q2:お願いします。
A2:お待たせしました!この研究では、人生を通じて脳のネットワーク構造がどのように変化するかを、12のグラフ理論指標(例:効率性、モジュラリティ、ハブ中心性など)を用いて解析しています[1]。その結果、脳のトポロジー的発達は5つの「時代(エポック)」に分かれることが明らかになりました。それぞれの時代には、特徴的な構造変化と機能的意味があるんです。
🧠 脳の5つのトポロジー的時代と特徴
この研究の面白いところは、脳の発達や老化が直線的ではなく、段階的な「再構成」を伴うという点です。特に、32歳まで脳の再編が続くという発見は、教育やキャリア形成、さらには精神疾患や認知症の予防にも新しい視点を与えてくれます[2][3]。もっと深く掘り下げて、各指標がどのように変化していたかも見てみますか?それとも、応用的な視点(教育、医療、資産設計など)での活用に興味がありますか?

Q3:各指標がどのように変化しているのですか?教えてください。
A3:お待たせしました!この研究では、12種類のグラフ理論指標を用いて、脳のネットワーク構造が年齢とともにどのように変化するかを詳細に解析しています[1][2]。以下に、各指標の分類とその変化の傾向をまとめてみました:
🧠 使用されたグラフ理論指標とその変化
これらの指標の変化は、非線形かつ段階的であり、特に9歳・32歳・66歳・83歳の4つの転換点で大きな構造的変化が観察されました[1]。たとえば、グローバル効率性が29歳でピークを迎えるというのは、脳の情報処理能力がこの時期に最も高まることを示唆しています。
このような知見は、発達障害や認知症の早期発見、教育・介入の最適化、さらには高齢期の資産設計や生活支援のタイミングを考えるうえでも非常に有用です。
もっと深掘りして、特定の指標と認知機能や精神疾患との関連を見てみますか?それとも、これらの知見をどう応用できるかを一緒に考えてみましょうか?🍄
[1]: Nature Communications 論文PDF [2]: News-Medical.net 解説記事

Q4:まずは、認知機能との関連、次に、教育・介入の最適化との関連について解説して下さい。
A4:ではまず、認知機能との関連から見ていきましょう。
🧠 脳のトポロジーと認知機能の関連
この研究では、脳のネットワーク構造(トポロジー)と認知機能・行動・精神的健康との関連が明確に示されています[1][2]。特に以下のような関係が注目されています:
• 幼少期(〜9歳):この時期は「ネットワーク統合性」が急速に高まる時期で、言語、注意、記憶の基盤が形成されます。トポロジーの変化が学習能力や発達障害のリスクと密接に関係しています。
• 思春期〜若年成人期(9〜32歳):脳の効率性と統合性がピークに達する時期で、抽象的思考、自己制御、社会的判断力が発達します。精神疾患(例:統合失調症、うつ病)の発症リスクもこの時期に集中するため、トポロジーの変化が予測因子となる可能性があります[3]。
• 成人期(32〜66歳):脳の構造が最も安定し、認知的柔軟性や意思決定能力が成熟します。個人差が大きく、トポロジーの違いが知的能力や創造性の個人差と関連していると考えられています。
• 高齢期(66歳以降):ネットワークの統合性が低下し、記憶力や処理速度の低下が見られます。特に83歳以降は、認知症や軽度認知障害(MCI)との関連が強まるとされています。

🎓 教育・介入の最適化との関連
この研究のもう一つの大きな意義は、教育や医療的介入のタイミングを科学的に導く手がかりになることです:
• 9歳前後の転換点:この時期は学習支援や発達支援の「ゴールデンタイム」。ネットワークの再構成が始まるため、読み書きや社会性の介入が最も効果的とされます。
• 思春期(10代後半〜20代):精神的ストレスや社会的プレッシャーが増す時期。メンタルヘルス教育やレジリエンス強化の介入が、脳のトポロジー的安定性を高める可能性があります。
• 30代前半(32歳):脳の効率性がピークを迎える時期。成人教育やキャリア形成支援が、脳の構造的成熟と一致するため、学び直しやスキル習得に適した時期といえます。
• 66歳以降の高齢期:ネットワークの統合性が低下し始めるため、認知トレーニングや社会的活動の維持が、老化の進行を緩やかにする可能性があります。
このように、脳のトポロジー的転換点を軸にしたライフステージ別の介入設計は、教育政策や医療戦略に新たな視点を提供してくれます。
次は、これらの知見をどう資産設計や家族戦略に応用できるか、一緒に考えてみましょうか?それとも、特定の時期に焦点を当ててさらに深掘りしてみますか?🍄
[1]: Nature Communications 論文PDF [2]: Cambridge University 解説記事 [3]: News-Medical.net 解説記事

 

2-2)がんの予防と治療に関する最新の話題2つ:大阪大学宮坂先生のFB投稿より
2-2-1)定期的な運動が、がん細胞の増殖を抑制し、がんの予後を改善するメカニズム
**以下は、大阪大学の宮坂昌之先生の2025年12月4日のFB投稿です**
われわれの身体では、たとえがんが存在していても、定期的に運動をすることによりがん細胞の増殖が抑えられ、がんの予後が改善すると言われています。しかし、どのようなメカニズムでそうなるのか、はっきりとはわかっていませんでした。アメリカ・マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究グループが、マウスの実験モデルを用いて、この点について明らかにし、その論文が専門誌PNASの12月1日号に掲載されています(https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2508707122)。
この研究では、マウスを回転するホイールの上を自発的に走らせるという「ホイールランニング」をさせています。すると、自発的な運動によって、からだの組織でグルコースの取り込みと酸化(=グルコースをエネルギーとして利用するのに必要な過程)が高まる一方、がん組織ではグルコースの取り込みと酸化が逆に減っていて、これとともにがん細胞の増え方が抑えられていました。そして、運動をしたマウスのがんでは、mTORという特定のシグナル経路(=細胞の増殖、成長、代謝を制御する経路)の働きが抑えられていました。
面白いのは、肥満マウスに運動をさせると、からだでのグルコース代謝が高まり、脂肪組織以外の体重はあまり変わらないものの脂肪は減少し、その後に腫瘍を移植した時には、非運動マウスに比べて、腫瘍細胞増殖が明らかに抑えられていて、たとえまだがんが出来ていない状態であっても運動をすれば、がん細胞が増えにくくなる状態が生まれてくることが観察されています、つまり、運動をがん治療後のリハビリテーションとして使うだけでなく、がん治療前のプレハビリテーション(=手術前や化学療法前に、前もって運動や栄養サポート、精神的ケアを行い、心身のコンディションを整えること;貯金ならぬ貯筋というプロセスがこれに相当)としても使える可能性が示されています。
以上、少なくともマウスにおいては、有酸素運動によって正常組織とがん細胞の間でグルコースの一種の代謝拮抗が見られ、そのためにがん細胞のエネルギー消費が抑えられ、増殖が抑えられる、というシナリオがはっきりとしてきました。しかも、運動ががんのリハビリテーションとしてだけでなく、プレハビリテーション(上記参照)としても有効である可能性が示されています。
ヒトでも「運動ががんの予後を改善する」と言われてきましたが、今回の話はなるほど、と思います。「ヒトでも実験によって確認しないと…」という(正論を)言う人が居るかもしれませんが、我こそは実験に参加したいという奇特なボランティアが出てこない限り、それはちょっと難しいでしょうね。

関連情報
原論文
表題:Precancer exercise capacity and metabolism during tumor development coordinate the skeletal muscle–tumor metabolic competition
(和訳:腫瘍発達中の前癌運動能力と代謝は骨格筋と腫瘍の代謝競合を調整する)
著者:Brooks P. Leitner, Andin E. Fosam, Won D. Lee, +7 , and Rachel J. Perry
掲載誌:PNAS December 1, 2025
doi:https://doi.org/10.1073/pnas.2508707122

要旨
運動能力の向上と定期的な運動トレーニングは、がんのあらゆるステージにおいて予後を改善する。しかし、腫瘍と宿主の相互作用を媒介する有酸素運動トレーニングに対する代謝適応については十分に解明されていない。本研究では、マウスにおいて、自発的なホイールランニングが腫瘍の成長を抑制し、ブドウ糖の取り込みと酸化を骨格筋と心筋に再分配し、乳がんおよび悪性黒色腫の腫瘍から遠ざけることを実証する。さらに、プレハビリテーションは肥満マウスにおいてブドウ糖代謝の再分配を誘導する。骨格筋と心筋におけるブドウ糖の取り込みと酸化は促進され、腫瘍におけるブドウ糖代謝は減少する。これらの筋肉におけるブドウ糖代謝の増加と腫瘍におけるブドウ糖代謝の減少は、腫瘍の進行遅延と相関している。[U- 13 C 6 ]ブドウ糖注入を用いて、運動は筋肉における酸化代謝へのブドウ糖の寄与を増加させる一方で、腫瘍における寄与を減少させることを示した。これは、有酸素運動が全身のブドウ糖代謝を腫瘍微小環境から代謝活性組織へと移行させることを示唆している。転写解析により、運動マウスの腫瘍におけるmTORシグナル伝達のダウンレギュレーションが明らかになった。これらの知見を総合すると、自発的な運動は宿主組織のグルコース酸化を促進し、腫瘍におけるグルコースの利用可能性を制限することで腫瘍の進行を抑制する可能性が示唆され、運動誘発性の代謝競合が腫瘍のエネルギー動態を抑制するというモデルを支持するものとなった。

2-2-2)大腸がんに対する新しい治療法開発の試み
**大阪大学の宮坂先生の2025年12月2日のFB投稿です**
大腸がんに対する新しい治療法開発の試みに関するお話です。ちょっと複雑な話です。DNAとか、遺伝子変異とか、がんのネオ抗原とかについてある程度の知識をお持ちの方々向けに書いています。
大腸がんには、最近はやりの免疫チェックポイント療法(免疫細胞のブレーキを外してがんを攻撃させる治療法)が良く効くものと、そうでないものがあります。良く効くものは、最初の図に示すように、マイクロサテライト不安定性の腫瘍、あまり効かないのはマイクロサテライト安定性の腫瘍、ということがわかっています。
マイクロサテライト不安定性のものでは、変異によって出来た異常DNAを修復する機構に欠損があるために、マイクロサテライトと呼ばれる配列の繰り返し部分でミスの蓄積が見られます(このためにマイクロサテライト不安定性という名前が付いています)。この場合には、異常DNAの修復機構が欠けているために遺伝子変異が高い頻度で起こります。その結果できたがん細胞では、(正常組織には無くて)がん細胞だけに存在するいわゆるネオ抗原が多種類作られることになります。すると、がん細胞に対する免疫反応が起こりやすくなり、がんを攻撃するキラーT細胞がうまく作られる傾向があります。この細胞がうまくがん組織の中に入ると、いわゆるホットな腫瘍(免疫細胞を多く含む腫瘍)となり、がん細胞を攻撃して、がん細胞が死滅しやすくなります。この時にさらに免疫細胞のブレーキを外すチェックポイント療法を使うと、がん細胞がさらに効率よく殺されるようになります。つまり、大腸がんの中で免疫チェックポイント療法が一番良く効くのは、このタイプのものです。
一方、免疫チェックポイント療法が効かないのは、いわゆるコールドな腫瘍で、がん組織の中に免疫細胞が非常に少ないタイプのものです。

最近、大腸がんの分類法として国際的コンセンサス分類(CMS分類)が用いられています。それを示したのが2枚目の図です。CMS分類の中でも、CMS1サブタイプが上記のマイクロサテライト不安定でホットな腫瘍を作るタイプのものに相当し、免疫チェックポイント療法が非常に良く効きます。一方、CMS2はコールドな腫瘍ですが、標準的な化学療法や分子標的薬が良く効き、幸い、予後が良いがんです。CMS3, 4はいずれもコールドな腫瘍で、特にCMS4は免疫細胞排除型ともよばれ、がん組織の中に免疫細胞を入れないようにしているように見えるタイプのもので、予後が悪く、免疫チェックポイント療法があまり効きません。
前置きが長くなりましたが、京大消化器内科の研究グループが、マウスの実験モデルを用いて、新しい大腸がんの治療法の開発を試み、CMS4タイプのがんに対する新しい治療法を見つけました。専門誌Nature Communicationsの最新号にその論文が掲載されています(https://www.nature.com/articles/s41467-025-66485-2#citeas)(非常に良く書けた論文で、私としては感心して読みました)。

彼らは、CMS4タイプの大腸がんでは、がん組織のすぐ外側までキラーT細胞が来ているものの組織の中に入れないためにがん細胞が攻撃できないのかもしれないと考えました。そこで、このタイプのがんでは免疫細胞をがん組織の中に入れないようにしている仕組みがあると考え、がん組織に存在する線維芽細胞に注目して調べたところ、トロンボスポンジン-2(THBS2)という分子が沢山発現していることを見つけました。
THBS2は以前から発現が高いと予後が悪いことがわかっている分子で、彼らはこの分子が免疫細胞のがん組織への侵入を妨げていると考えました。そこで、マウスの実験モデルでTHBS2の発現を止めると、免疫チェックポイント療法が途端に良く効くようになり、キラーT細胞ががんの組織内に浸潤して、がん細胞の破壊が始まり、さらに、キラーT細胞を惹きつけるケモカインであるCXCL9/10ががん組織の中で強く発現するようになり、そのためにキラーT細胞がさらにがん組織に入りやすくなり、がんの治療効果が高まるようになりました。
すなわち、大腸がんの組織でTHBS2の働きを止めると、難治性であるはずのコールドな腫瘍がホットな腫瘍に変わり、がん組織への免疫細胞の浸潤が高まり、がんの免疫療法の効果が大いに高まるということがわかったのです。まだマウスの実験モデルの段階ですので、今後はヒトでの応用の可能性が探られることとなります。
出来てしまったがん細胞を免疫の力で排除するというのが、がん免疫療法です。その際にTHBS2という分子の働きをうまく止められると、特定のタイプのがんでは、免疫療法の効果がぐんと高まるのかもしれません。医学は日進月歩の世界です。さらなる研究の発展が期待されます。

関連情報
原論文
掲載誌:Nature Communications Article(Open access)
公開日:Published: 23 November 2025
表題:Targeting fibroblast derived thrombospondin 2 disrupts an immune-exclusionary environment at the tumor front in colorectal cancer
(和訳:線維芽細胞由来トロンボスポンジン2を標的とすることで、大腸癌の腫瘍前線における免疫排除環境を破壊する)
著者:Kosuke Iwane, Yuki Nakanishi, Yu Muta, Jiayu Chen, Kento Yasumura, Mayuki Omatsu, Naoki Aoyama, Munehiro Ikeda, Yoko Masui, Liyang Cai, Go Yamakawa, Kensuke Hamada, Kenta Mizukoshi, Munenori Kawai, Kei Iimori, Shinnosuke Nakayama, Nobukazu Agatsuma, Takahiro Utsumi, Munemasa Nagao, Takahisa Maruno, Yukiko Hiramatsu, Nobuyuki Kakiuchi, Masahiro M. Nakagawa, Yasuhiro Fukui, …Hiroshi Seno Show authors

要約
線維性大腸癌(CRC)は、マイクロサテライト安定性が大部分を占め、免疫浸潤が乏しい線維形成性間質を呈する。本研究では、線維性CRCにおける免疫排除性表現型の重要な制御因子としてトロンボスポンジン2(THBS2)を同定した。THBS2は、腫瘍先端部のマトリックス癌関連線維芽細胞で高度に発現している。線維形成性腫瘍オルガノイドを用いた同所性モデルにおいて、Thbs2の全体的または線維芽細胞特異的な欠失は、排除バリアを破壊し、腫瘍内CD8 T細胞を増加させる。機構的には、THBS2は樹状細胞およびマクロファージ由来のCXCL9/10を抑制することでCXCR3 + CD8 T細胞の動員を制限する。これらの骨髄細胞の枯渇、またはCXCL9/10-CXCR3シグナル伝達の阻害は、増強されたCD8 T細胞流入と抗腫瘍効果を無効にする。空間プロファイリングにより、THBS2の欠損はCD8 T細胞と骨髄細胞の近接を誘導し、ケモカインの発現を上昇させることが示された。浸潤が増加するにもかかわらず、CD8 T細胞は疲弊状態を示し、腫瘍は免疫チェックポイント阻害に対する感受性が非常に高くなる。したがって、THBS2は線維性大腸癌における免疫排除を克服するための、CAF特異的な標的として扱いやすいと考えられる。

 

2-3)岐阜大学医学部の下畑先生からの最新医学情報(2025年12月)
・患者数 倍増のパーキンソン病を予防する25の提案!―話題の書『The Parkinson’s Plan』より―
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年12月3日のFB投稿です**
2018年のJAMA Neurology誌にパーキンソン病(PD)患者が世界的に急増し,パンデミック状態にあることが報告されました(JAMA Neurol.2018;75:9-10.).メタ解析の結果から,全世界の患者数が2015年の690万人から,2040年では2倍以上の1420万人に急増するという推定に基づくものです.PDは加齢と遺伝が主因と思われがちですが,近年,「環境毒による神経障害」が原因かもしれないという疫学研究や基礎研究が相次いで報告されています.例えば,大気汚染のPM2.5はαシヌクレインの構造を変化させて,凝集が速く,分解されにくく,かつ強い神経毒性を示すフィブリルに変えてしまいます(Science. 2025;389(6716):eadu4132).このため「生活や環境の調整が予防や進行抑制につながるのではないか」という見方が広がっています.これを詳しく解説した本が,米国の脳神経内科医 Ray Dorsey 教授と Michael Okun 教授が執筆した『The Parkinson’s Plan(https://amzn.to/4iyOBnF)』 です.PLANの意味は,「予防 (Prevent)」「学習 (Learn)」「増幅 (Amplify)」「ナビゲート (Navigate)」の頭文字で,この4つのセクションで構成されています.
この本では,PDを増加させる「環境毒」として以下のものを紹介しています.これらは急性中毒ではなく,微量の長期蓄積がドパミン神経に負担を与えます.
◆農薬:パラコート,クロルピリホス,有機塩素系,ピレスロイド
◆工業用溶剤:TCE(トリクロロエチレン),PCE(パークロロエチレン)
◆大気汚染:PM2.5・交通・工場由来排気ガス
◆地下水や食品を介する化学物質
◆除草剤が散布される校庭・公園・ゴルフ場 など
本書は「完璧ではなくていいから,できることを少しずつ行っていこう」という姿勢で,生活の中で実践できる25の行動(Parkinson’s 25) を紹介しています.25項目を領域ごとに並び替えたものを以下に示します.
【食事・食材・農薬】
1.野菜・果物は有機でも必ずよく洗う(残留農薬を洗い流す)
2.和食ベース+野菜・魚中心の食生活(動物性脂肪は控えめに)
3.においが強いクリーニング工場が近いスーパーは避ける(ドライクリーニングでパークロロエチレンが使用されるため)
4.お酒は飲むなら少量,可能なら農薬の少ないものを選ぶ(ワインのぶどうの農薬残留が少ないもの)
5.糖尿病をつくらない・悪化させない(食事・体重管理・運動)
【生活習慣・からだの健康】
6.コーヒーやお茶を適量楽しむ(カフェインを摂取できる人)
21.週に150分以上の有酸素運動(散歩・自転車・体操など)
22.睡眠の質を高める(睡眠リズム・いびき・レム睡眠行動障害にも注意)
23.頭部外傷を防ぐ(シートベルト・ヘルメット・転倒予防)
【農作業・園芸】
7.農薬を使うときは防護具(手袋・マスク・ゴーグル)を使用する
17.園芸では素手で薬剤に触れず,必要最小限の散布にする
18.ゴルフ場では散布直後のプレーを避ける
19.学校・運動場での除草剤・農薬について確認してみる
【水と空気の安全】
8.井戸水を飲む地域では定期検査を行う
9.浄水器を使う場合はフィルター交換を守る
10.空気清浄機(HEPA+活性炭)を寝室・居間に設置する
16.渋滞・トンネルでは窓を閉じて「内気循環」(車の外気を取り込まず,車内の空気を循環させる設定にすることで,大気汚染物質の吸入を減らす)
【室内環境】
11.家庭用殺虫剤は必要最小限・換気を徹底する
12.住む地域の土壌・工場跡地情報も参考にする(過去に化学物質で汚染されていないか調べる)
13.クリーニング品はビニールを外して風通しの良い場所で保管する
14.集合住宅の1階がクリーニング店の場合は注意する
15.保育園・学童の近くにドライクリーニング工場がないか確認する
【職業と化学物質】
20.農業・造園・清掃・工場作業などでは防護具を使用する
25.軍務経験者・化学物質曝露歴がある方は相談先を確認(社会として支援する)
【コミュニティ】
24.公園・道路・学校などで農薬使用量を減らす活動に参加する
大変な時代になってきました.環境毒はPDのみならず,アルツハイマー病などの認知症,神経変性疾患にも関わる可能性があります.この本では取り上げられていませんが,ヒトの疫学研究はまだであるものの,基礎研究で報告され始めたものがマイクロ・ナノプラスチックです(Sci Adv. 2023 Nov 15;9(46):eadi8716. doi.org/10.1126/sciadv.adi8716). これもαシヌクレインを凝集させ,伝播を促進し,かつリソソーム機能を抑制します.マイクロ・ナノプラスチックと神経疾患については,明日の日本臨床麻酔学会第45回大会の招請講演で発表いたしますし,1月10日発売の「医学のあゆみ」誌でも特集「全身疾患の新たな危険因子としてのマイクロ・ナノプラスチック」を企画させていただきました.このような環境に対する取り組みや政策が疾患予防に重要となることを多くの人に啓発していく必要があります.
Dorsey R, Okun MS. The Parkinson’s Plan: A New Path to Prevention and Treatment. New York: PublicAffairs; 2025. https://amzn.to/4iyOBnF

・アルツハイマー病「ApoE4でも救える」可能性が見えてきた:酸化リン脂質とフェロトーシスを標的とした次世代治療戦略
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年12月4日のFB投稿です**
アルツハイマー病の発症リスクを大きく左右するアポリポタンパクE(ApoE)は,脳における脂質輸送と神経活動の維持に中心的な役割を担っています.ApoE4はアルツハイマー病の最大の遺伝的リスク因子として知られていますが,ApoE2およびApoE3Christchurch(ApoE3Ch)は一転して神経を強力に保護することが明らかになっています.このメカニズムの一端を解明したのが,今回紹介するNeuron誌に掲載された国際共同研究です.
本研究で重要となるのが,脂質過酸化(lipid peroxidation;LPO)と酸化リン脂質の蓄積です.LPOとは,細胞膜の多価不飽和脂肪酸が酸化される現象で,その結果生じる酸化リン脂質は強い毒性を持ちます.ApoE2とApoE3Chは,ABCA7トランスポーターを介して酸化リン脂質をニューロン外へ排出することができ,排出された酸化リン脂質はグリア細胞内で脂肪滴として蓄えられ無害化されます(図上).こうして酸化リン脂質の蓄積とLPOの連鎖が抑えられることで,リソソーム機能が維持され,膜脂質のさらなる過酸化を防ぎ,フェロトーシスを回避できます.ちなみにフェロトーシスとは,細胞膜の脂質が過剰に酸化されることで起こる特殊な細胞死です.鉄(フェロ=Fe)が関与するためこの名前がついています.
対照的にApoE4では,酸化リン脂質排出が阻害されることでLPOが継続的に進行し,ニューロン内に酸化リン脂質が蓄積します.これによりリソソームが障害され,膜脂質の過酸化がさらに進み,最終的にフェロトーシスに至ります(図下).この模式図の対比は,ApoEの違いが神経保護的か神経毒性的かを分ける根幹に脂質代謝があることを示しており,非常に印象的です.
さらに研究チームは,ApoE4を発現させたヒトiPSC由来ニューロンを用いたin vitro実験で,グルタミン酸刺激により興奮毒性ストレスを与えて神経活動を低下させた後に,ApoE2またはApoE3Chタンパク質をリン脂質と組み合わせて人工的にHDLのような粒子にしたものを培地に加えると,ニューロンに蓄積していた酸化リン脂質は有意に減少し,リソソームのpHと分解活性は回復し,カルシウムイメージングおよび多電極アレイによって評価された神経活動も改善しました.すなわち,ApoE2/ApoE3Chはダメージ前の予防因子にとどまらず,ダメージ後の介入によっても神経機能を救済できる可能性を持つということが示されました.言い換えるとこの結果は,ApoE4による神経毒性が不可逆的,決定的なものではなく,脂質排出の経路を操作することで回復可能であることを意味しており,ApoE4キャリアに対する新たな治療戦略の可能性を示しています.
アミロイドβやタウが長らく研究の中心を占めてきましたが,そう単純なものではないのだと思います.「酸化リン脂質を外に出せるニューロンは生き残り,出せないニューロンは死に向かう」という明確な結論は,従来のアルツハイマー病観に,脂質代謝とフェロトーシスという新たな視点を加えるものと言えます.
Ralhan I, et al.Protective ApoE variants support neuronal function by effluxing oxidized phospholipids.Neuron.Article Online now December 02,2025.doi.org/10.1016/j.neuron.2025.10.040.

・見えない毒性因子―マイクロ・ナノプラスチックがもたらす脳・血管への脅威―@日本臨床麻酔学会第45回大会
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年12月5日のFB投稿です**
昨日,標題の学会で招請講演の機会をいただきました.日本ではまだ議論が本格化していませんが,個人的には今年もっともインパクトのあったトピックスの一つでした.
マイクロ・ナノプラスチック(MNPs)は,飲料水や食品包装だけでなく医療機器を介しても体内に侵入し,血液脳関門を通過して脳に蓄積します.臓器別では脳に最も多く蓄積することが示されており,なんとクレヨン1本分の重さ(10 g)になります.さらに頸動脈プラークや脳梗塞の血栓からも検出され,心血管イベントや脳卒中の重症度と関連することが報告されています.認知症患者の脳や脳脊髄液でも濃度上昇が確認され,神経炎症や神経変性を助長する可能性が指摘されています.加えて,αシヌクレインやアミロイドβがMNPsの存在下で凝集しやすくなり,毒性が増し,パーキンソン病や認知症の病態につながるという報告も今年相次いでいます.
麻酔科領域でも,手術室という特異な環境にも目を向ける必要があります.手術室は最もプラスチック密度の高い空間の一つであり,輸液ラインや麻酔回路などから発生したMNPsが血中に直接入り得ます.POCD(術後認知機能障害)は多因子的な病態ですが,プラスチック曝露がその一因となり得る可能性があり,今後の検証が必要です.
欧州や米国では対策が先行している一方,日本ではまだ認識が十分とは言えません.生活から完全にプラスチックを排除することは困難ですが,プラスチックが神経機能に影響しうるという知識を共有し,できるところから減らす意識を持つことは,個人レベルでも社会レベルでも意味があると感じています.以下よりスライドをダウンロードいただけます.
https://www.docswell.com/…/800…/5DW1JG-2025-12-05-104421
【内容】
1.マイクロ・ナノプラスチック総論(定義・発生源・検出技術)
2.曝露経路と体内動態・臓器蓄積(とくに脳への高蓄積と細胞毒性)
3.脳血管・心血管系への影響(頸動脈プラーク,血栓,脳卒中リスク)
4.認知機能障害と神経変性疾患への関与
― 認知症・アルツハイマー病・パーキンソン病・プラスタミネーション
5.大気汚染PM2.5と神経変性:MNPsとの共通機序と相乗効果の可能性
6.手術室環境と術後認知機能障害(POCD)におけるマイクロ・ナノプラスチック曝露
7.欧州と日本の対策状況の比較と,個人・社会レベルでの曝露低減策
8.今後の研究課題と海外で始まりつつある治療的アプローチ

関連情報
マイクロプラスチックについては、2025年6月のニュース2025年3月のニュース2025年2月のニュース2024年4月のニュースでも取り上げています。

・特発性正常圧水頭症は「脳が硬いスポンジ」のようになり流れが滞るが,治療で再び動き出す
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年12月8日のFB投稿です**
特発性正常圧水頭症(iNPH)は,歩行障害,尿失禁,認知機能低下を三徴とする疾患(図左)で,高齢者における治療可能な認知症の代表とされています.NEJM誌に素晴らしい総説が掲載されています.著者らはまず,iNPHが単なる脳室拡大による機械的圧迫の結果ではないと述べています.従来,拡大した側脳室が周囲の白質を圧迫し,歩行や注意機能を司る前頭葉深部の線維路や脳梁が障害されることが本症の病態と考えられてきました.しかし,脳脊髄液を除去すると症状は速やかに改善する一方で,脳室そのものはほとんど縮小しないという臨床的事実から,単なる圧迫だけでは症状を説明できないと現在は考えられています.
本論文が強調しているのは,脳血流・脳脊髄液・代謝老廃物のクリアランスを含む循環ネットワークが破綻しているということです.頭蓋内圧の波形解析では,1拍ごとの脈動に伴う圧変動が増大しており,脳のコンプライアンス(容積変化に対する柔らかさ)が低下していることが示唆されます.すなわちスポンジが固くなったような状況です.このため,心拍に同期した微小な圧力波が脳実質内に伝わりにくくなり,血管周囲の流体運動が滞ることを意味します.さらに,大脳白質では微小虚血を思わせるT2高信号がみられ,慢性的な血流低下や血管反応性の障害が報告されています.血管の拍動が脳脊髄液の流れを駆動していることを考えると,この血管反応性の低下は,脳脊髄液循環の低下と密接に関係しています.
また,神経活動のネットワークレベルでの異常も指摘されています.iNPH患者では,前頭葉と皮質下構造の機能的結合が低下し,これが歩行障害や注意機能の低下に関係していることが,fMRIや脳波研究から示されています.脳脊髄液除去後に一部のネットワーク結合が回復することから,脳内圧・流体環境の変化が神経活動に可逆的な影響を及ぼしていると考えられます.
さらに注目されるのが,グリンファティック経路の障害です.この経路は,脳脊髄液が動脈周囲から脳実質に入り,老廃物を洗い流しながら静脈周囲へと流れる排出システムであり,脳のリンパ系に相当します.iNPHではこの流れが遅延し,老廃物が除去されにくくなっていることが動物モデルやMRI研究で報告されています.血管周囲やくも膜下腔での脳脊髄液循環の停滞は,アミロイドβやリン酸化タウなどの蓄積を促進する可能性があり,iNPHが加齢性変化と神経変性疾患をつなぐ病態であるという仮説も浮上しています.しばしば併存が認められるPSPとの関連も関心があるところです.
図右では,iNPH患者のMRI画像として,Evans比の上昇と側脳室拡大に加えて,脳梁角の減少,頂部脳溝の圧排,Sylvian裂の拡大といった典型的なDESH(disproportionately enlarged subarachnoid-space hydrocephalus)所見が描かれています.これらの画像は,脳脊髄液が頭頂部のくも膜下腔から排出されにくくなり,側頭部に再分布することで局所的な圧勾配と流体停滞が生じていることを示唆しています.すなわち,脳全体の「流れの不均衡」が,歩行や認知に関わる領域の機能障害を引き起こしているものと考えられます.
著者らは,このような流体循環異常の背景に遺伝的素因も存在すると指摘しています.線毛の運動に関与するCFAP43遺伝子や,GPIアンカー型タンパク質の修飾に関わるCWH43遺伝子の変異が,家族性iNPHの原因として報告されており,線毛の異常が脳脊髄液流動障害をもたらすことが動物モデルで確認されています.これらの発見は,iNPHが単なる「老化の結果」ではなく,分子レベルの機能異常を基盤とする疾患であることを裏付けています.
では,なぜ脳脊髄液をシャントすると症状が改善するのでしょうか.iNPHでは,脳のコンプライアンス(柔らかさ)が低下して圧力波が広がりにくくなり,血流や髄液の循環,老廃物の排出が滞っています.シャントで脳脊髄液を逃がすと,コンプライアンスが回復し,血管の脈動に合わせて脳脊髄液が再びスムーズに流れるようになり,グリンファティック系による老廃物排出も改善します.その結果,歩行や認知機能が回復するため,脳室が縮まらなくても症状が改善すると考えれば良いようです.
つまりiNPHは脳循環ネットワークの可逆的破綻によって発症する疾患であり,その病態の解明がより早期の精度の高い診断と最適な治療法開発につながるものと期待されます.
Johnson MD, Williams MA. Idiopathic Normal-Pressure Hydrocephalus. N Engl J Med. 2025;393:2243–2253. doi.org/10.1056/NEJMra2306506.

・ロバート・ワルテンベルグ ──医の倫理の岐路に立ったセミオロジストの光と影@Brain Nerve誌12月号
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年12月9日のFB投稿です**
Brain Nerve誌12月号はクリスマス企画号ですが,今年は「神経学の巨人──先駆者たちの遺したもの」がテーマになりました(https://amzn.to/4s1PPwj).若い頃の私は医学史に関心がありませんでしたが,私たちが日々あたり前に行っている神経学の診療・研究の根幹は,過去の偉大な先駆者の思索と努力の積み重ねの上に成り立っていることをだんだん認識できるようになり,「もっと早く神経学の歴史を学んでおくべきだった」と思うようになりました.この1冊をお読みいただけば,神経学がさらに面白くなるという特集号を作りたいと思いました.
さて本書では以下に示すように「神経学の巨人」と呼ぶにふさわしい人物が,錚々たる執筆者により幅広く紹介されています.私はロバート・ワルテンベルグ(1887–1956)について執筆しました(図2).彼の名を冠した反射は神経症候学を学んだことのある方なら知らない人はいないと思います(https://www.med.gifu-u.ac.jp/…/observation/20220310.html).私も彼の執筆した本をいまもときどき参照します(図3).彼は神経診察を精緻化し,多数の徴候を体系化したセミオロジストであり,鋭い観察力と教育への情熱によって神経学の発展に大きな足跡を残しました.ドイツからの亡命後はUCSFで神経症候学を確立し,米国神経学会(AAN)の設立や『Neurology』誌の創刊にも助言するなど,中核的役割を果たしました.
一方で,1953年の国際学会においてナチス協力者であったユリウス・ハラーフォルデン(現在のPKAN;パントテン酸キナーゼ関連神経変性症の発見者)の登壇を擁護したことで強い倫理的批判を受けました.「科学的功績と政治的行為を切り離すべき」とする彼の判断は,冷戦期の政治背景も絡んで現在まで議論の対象となっています(いわゆるハラーフォルデン事件).AAN年次総会で最も権威あるセッションである「ロバート・ワルテンベルグ記念講演」も,2024年に発表されたこの倫理的問題を再検証するZeidmanの論文を契機として名称変更が発表されました.科学と倫理のあり方を深く考えさせられる事件でした.歴史を知ることは,過去を追体験するだけでなく,未来の神経学を形づくるための羅針盤になる──そのことを改めて感じさせてくれる特集号だと思います.
追伸:佐伯千寿先生による素晴らしい表紙のイラストは今回が最終回になりました.毎号とても楽しみにしておりましたが,毎号の制作は大変だったと思います.お疲れさまでした!
Amazonで予約が始まりました(https://amzn.to/4s1PPwj).
【目次と著者】
◆神経学の先駆け デュシェンヌ・ド・ブローニュ 小長谷正明
◆ポール・ブローカ ──言語脳科学の源流 酒井邦嘉
◆ジョン・ヒューリングス・ジャクソン ──局在論と全体論を超えて 虫明 元
◆ローマの神経学者 エットーレ・マルキアファーヴァとマルキアファーヴァ・ビニャミ病(MBD) 河村 満
◆サンチアゴ・ラモニ・カハール ──神経解剖学の礎を描く 神田 隆
◆臨床神経学とジョセフ・ババンスキー 廣瀬源二郎
◆日本神経学の祖 川原 汎 ──名古屋神経学の源流 亀山 隆
◆ヘンリー・ヘッドと「母指探し試験」の系譜 福武敏夫
◆神経病理学の父 ジョセフ・ゴッドウィン・グリーンフィールド 髙尾昌樹
◆ロバート・ワルテンベルグ ──医の倫理の岐路に立ったセミオロジストの光と影 下畑享良
◆ワイルダー・ペンフィールド ──ホムンクルスの構築とモントリオール手術法の開発 渡辺英寿
◆アレクサンドル・ルリヤの失語分類 ──その理論的背景 鹿島晴雄
◆オリヴァー・サックス ──神経学と文学の融合 山脇健盛

・フランス医学史学会誌に三浦・シャルコー研究論文が紹介されました!
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年12月10日のFB投稿です**
フランス医学史学会(SFHM)が,ジャン=マルタン・シャルコー生誕200周年を記念した特別号を公開しました.2025年にパリ・サルペトリエールで開催された国際シンポジウムの講演内容をまとめたもので,内容としては
4–19頁 シャルコーの生涯と業績の総説(Olivier Walusinski)
20–42頁 「シャルコーの現代的意義と遺産」41演題の総括
43–46頁 生誕200周年記念イベントの写真アーカイブ
という構成になっています.
このなかで,私が発表した「Kinnosuke Miura and Jean-Martin Charcot: A Master-Disciple Legacy in Modern Japanese Neurology」についても以下のように紹介していただきました.
三浦謹之助(1864–1950)はシャルコーの弟子であり,日本近代神経学の草創期を支えた人物です.わずか8ヶ月という短いサルペトリエール滞在であったにもかかわらず,三浦は生涯にわたりシャルコーを精神的師として敬愛し,回想録には「患者を細部まで観察し,観察を非常に重視するが,まったく尊大ではない人物であった」という証言が残されています.また,三浦はシャルコーに2通の手紙を送り,2通目(1893年初頭)では「東京大学に神経疾患の専門部門を作りたい」という志を記していました.この構想が実現するのは,実に70年後の1964年であったことが指摘されています.
下図のように三浦謹之助先生の肖像がに加え,三浦の弟子の佐藤恒丸先生の訳された「火曜講義」に掲載されたヒステリー発作の図版も収録されています.さらに拙著Shimohata T & Iwata M : Kinnosuke Miura and Jean-Martin Charcot: A master–disciple legacy in modern Japanese neurology, Journal of the History of the Neurosciences, 2025(doi.org/10.1080/0964704X.2025.2581565)も引用して紹介していただきました.
この歴史的イベントの記録に加えていただけたことは大変光栄なことでした.PDFはフランス語になりますが,無料公開されていますので,ご興味のある方はぜひご覧ください.
https://walusinski.com/data/charcot_esfhm.pdf

・COVID-19は他の呼吸器感染症よりも「機能性神経障害」を新たに発症させる強い誘因となる!
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年12月14日のFB投稿です**
機能性神経障害(FND)は歴史的にヒステリー,心因性疾患,解離性障害,転換性障害,身体表現性障害,心気症,詐病などと呼ばれてきた疾患です.私がこの疾患に取り組んだきっかけはCOVID-19後遺症やワクチン副反応として紹介されてきた患者のなかに多くのFNDが含まれていたことでした.また私がシャルコー先生について勉強したのも,COVID-19と同様に大きな精神的ストレスとなった普仏戦争後に増加したヒステリー患者への彼の取り組みが参考になると考えたためです.つまりCOVID-19後のFND増加は実感としては理解していたのですが,客観的データがありませんでした.
今回,国際的大規模電子カルテデータベースを用いて,COVID-19後のFND発症リスクを体系的に検討した研究が報告されました.この研究ではTriNetXという国際電子カルテネットワークを用い,約274万人のCOVID-19患者を解析対象としています.COVID-19罹患後2週から6か月の間に新たにFNDと診断された症例は1846例であり,その頻度を他の呼吸器感染症後のFND発症と比較しました.その結果,COVID-19後のFND発症率は,他の呼吸器感染症後より一貫して高いことが示されました(図). COVID-19患者全体では,他の呼吸器感染症と比べてFND発症のオッズ比は1.3〜1.6と有意に高く,COVID-19がFNDの誘因となりやすいことが示されています.
さらにCOVID-19の重症度との関係も示されています.入院を要したCOVID-19患者では,外来患者と比べてFND発症のオッズ比が約2.2と高く,救急外来(Accident & Emergency;A&E)を受診した外来患者でもオッズ比は約1.4に上昇していました.つまり,COVID-19の重症度が高いほどFNDを発症しやすい傾向があり,単なる偶然ではなく量反応関係を示唆する結果といえます.一方で,入院を要さない比較的軽症のCOVID-19症例に限定しても,他の呼吸器感染症よりFNDリスクが高いことが示されており,重症度だけでは説明できないおそらく個人の背景要因の存在も示唆されました.
また,パンデミック初期(2020–2021年)と後期(2022–2023年)を比較した解析も行われています.社会的混乱や不安が強かった初期にのみFNDが増えたのであれば,社会心理的要因が主因と考えられますが,図が示すように,時期を分けて厳密に調整した解析ではFND発症リスクに大きな差はありませんでした.この結果は,COVID-19後のFND増加が,一過性の社会不安だけでは説明できず,感染症そのものと個人の背景要因が重要であることを示しています.
さらに著者らは,COVID-19後に新たにFNDと診断された患者と,新たに片頭痛と診断された患者を比較しています.その結果,FND患者では,てんかんや運動障害などの神経疾患,気分障害や不安障害などの精神疾患,さらには心血管疾患や代謝疾患といった身体合併症が有意に多いことが明らかになりました.このことから,FNDは「誰にでも突然起こる」わけではなく,もともと神経学的・精神医学的・身体的な脆弱性を抱えた人に,COVID-19という強い身体的・心理的ストレスが加わることで発症しやすいと考えられました.個人の経験からも非常に納得のいく解釈です.
以上より,COVID-19は他の呼吸器感染症と比べて,FNDを新たに発症させる「強い誘因」となりうることが初めて明確に示されました.COVID-19は今後も続く感染症ですので,罹患後に出現する多彩な神経症状の原因の1つとしてFNDを想起し,早期に診断の説明と介入につなげることが重要と思われます.
★図がすぐに理解しにくいので,私のサマリーとともにGeminiに読み込ませたらあっという間に下図になりました.驚きですね!
Berlot R, et al. Functional Neurological Disorder Following COVID-19: Results From a Large International Electronic Health Record Database. Eur J Neurol. 2025 Dec;32(12):e70459. doi.org/10.1111/ene.70459.

・アルツハイマー病はひとつの疾患ではなく,少なくとも「タウ主導型」と「血管主導型」に分かれる!!
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年12月16日のFB投稿です**
アルツハイマー病(AD)はこれまで,アミロイドβ沈着に始まり,タウ病理を介して神経変性に至る疾患と考えられてきました.しかし近年,微小血管病変の存在が,この理解を大きく揺さぶりつつあります.今回,韓国からNeurology誌に,脳微小出血(CMB)がその病態に大きな影響を与えていることを示す研究が報告されました.
対象は軽度認知障害およびAD患者116例と健常者85例の計201例で,アミロイドPET,タウPET,MRIを組み合わせ,約2年間の縦断的追跡を行いました.さて結果ですが,脳微小出血を認めない群では,ベースラインのタウPET蓄積が,その後の認知機能低下および皮質萎縮の進行と強く関連していました.これはタウ蓄積がADの認知機能に重要であるという近年の考え方に合致します.一方,脳微小出血を有する群では,認知機能低下や皮質萎縮自体は,脳微小出血なし群よりより,広範かつ顕著に進行しているにもかかわらず,それらがタウPETの蓄積量とはほとんど相関しませんでした(図).
図の見方ですが,緑色の部分はタウ蓄積と脳萎縮の関連が強い部位です.脳微小出血を認めない群では,タウ蓄積が高いほど側頭葉,前頭葉,頭頂葉に広範な皮質菲薄化が進行し緑色の部分が多いですが,脳微小出血を認める群では,皮質萎縮は進行しているにもかかわらず,タウ蓄積との関連は限定的で,ほとんど緑色の部分がありません.すなわち,脳微小出血が存在すると,認知症の進行は「タウ主導」では説明できなくなることが明確に示されたわけです.
この結果は,アミロイドβの役割を再考させます.脳実質に沈着するアミロイドβは,長い時間を要しますが恐らくタウ病理を誘導し,典型的なADの進行に関与します.一方,脳血管壁に沈着するアミロイドβ,すなわち脳アミロイド血管症では,血管の脆弱化,慢性虚血,微小出血や微小梗塞を介して,タウとは独立した経路で認知機能低下を進行させます.脳微小出血は,この血管型アミロイドβ病理が前景化していることを示すサインと考えられます.
では,アミロイドβ抗体療法をどのように考えるべきでしょうか.アミロイドβ抗体は,主に脳実質に沈着したアミロイドβを除去し,その結果としてタウ病理の進行を抑制することを目的とした治療です.したがって,脳微小出血を伴わず,タウ病理が病態の中心にある症例では,理論的にも臨床的にも一定の妥当性があります.しかし,脳微小出血や脳アミロイド血管症が前景に立つ症例では,認知機能低下の主因は血管障害であり,タウ病理の寄与は相対的に小さくなります.このような症例では,アミロイドβ抗体による臨床効果は限定的である可能性が高く,むしろ血圧管理のような血管性認知症の対策が有効と考えられます.つまりアミロイドβ抗体療法の是非は「アミロイドβがあるかどうか」ではなく,「どこに沈着し,どの病態経路が主導しているか」で判断すべきだということです.
以上のようにADは一つの疾患ではなく,少なくとも「タウ主導型」と「血管主導型」という異なる進行様式を含んでいそうです.ADの脳血管病としての側面を意識する必要があります.
★先日,ご紹介したこちらの記事もご参照ください(アルツハイマー病は「脳血管病」の性質をもつ:血液脳関門破綻,低灌流,血小板から見える新しい姿)https://pkcdelta.hatenablog.com/entry/2025/11/22/065353
Jung YH, et al. Impact of Cerebral Microbleeds on Tau-Associated Cognitive and Structural Decline. Neurology. 2026 Jan 13;106(1):e214453. doi.org/10.1212/WNL.0000000000214453.

・整形外科医が知っておくべき脳神経内科疾患(整形・災害外科 12月号)
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年12月17日のFB投稿です**
腰痛,歩行障害,姿勢異常,しびれ,筋力低下など,整形外科の日常診療で遭遇する症候の多くは,脳神経内科疾患でも生じます.このたび,『整形・災害外科』(金原出版)12月号(https://amzn.to/3MK8mgc)において,特集「整形外科医が知っておくべき脳神経内科疾患」を企画させていただきました.本特集では,「どのようなときに脳神経内科疾患を疑うべきか」「どの時点で脳神経内科医につなぐべきか」という診療の分岐点を整理することを主眼としています.
具体的な疾患としては,パーキンソン病,ALS,多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害(MS・NMOSD),慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)に加え,近年,注目の疾患として特発性正常圧水頭症,アミロイドーシス,免疫チェックポイント阻害薬による神経系免疫関連有害事象(irAE)や機能性神経障害など,整形外科との境界で問題となりやすい疾患を取り上げています.第一線で活躍するエキスパートが,最新の知見を踏まえて実践的に解説してくださいました.整形外科と脳神経内科の連携を深め,日常診療に役立つ現場志向の特集だと思います.最後に素晴らしい原稿をご執筆くださった先生方に感謝申し上げます.
Amazonページ https://amzn.to/3MK8mgc
ホームページ  https://www.kanehara-shuppan.co.jp/magazines/detail.html…
【項目】
整形外科医のためのパーキンソン病診療ガイド;梶山 裕太,三原 雅史
多発性硬化症と視神経脊髄炎スペクトラム障害;松下 拓也
筋萎縮性側索硬化症;熱田 直樹
慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー;国分 則人
特発性正常圧水頭症;山原 直紀,下畑 享良
脊髄サルコイドーシス;古賀 道明
アミロイドーシス;植田 光晴
免疫チェックポイント阻害薬における免疫関連有害事象(irAE);角南 陽子,鈴木 重明
Sjogren症候群の神経系合併症;桑原 宏哉
機能性神経障害―概念から診断・治療まで;関口 兼司

・血液タウで診断したアルツハイマー病は加齢で激増するが,症状の程度はタウだけでは決まらない――tau-clinical mismatchという新しい考え方
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年12月20日のFB投稿です**
アルツハイマー病(AD)の診療は,血液バイオマーカーの登場によって大きな転換点を迎えています.とくにリン酸化タウ217(pTau217)は,採血で済むという侵襲性の低さと高い診断精度から,AD病理を反映する指標として急速に普及するものと思われます.では①実際にpTau217陽性の患者(?)の有病率はどの程度なのか?,また②タウが高ければ重症と考えてよいのか?が分かりません.今回紹介する2つの研究はきわめて示唆に富んでいます.
まず,Nature誌に掲載されたノルウェーの大規模地域住民研究であるHUNT研究を基盤とした論文では,血液中リン酸化タウ217(pTau217)を用いて,アルツハイマー病(AD)病理が地域社会にどの程度存在するのかが検討されています.本研究は,58歳以上の一般住民11,486人を対象とした大規模研究です.重要なのは図1です.年齢階級ごとにAD病理陽性(pTau217 ≥0.63 pg/mL)と推定される割合が示されています.その結果,58~69歳ではAD病理陽性者は8%未満にとどまる一方,70~74歳では約18%,75~79歳では約28%,80~84歳では約44%,85~89歳では約58%と,年齢とともに段階的に増加し,90歳以上では65.2%に達していました.すなわち,AD病理は高齢になるほど急速に頻度が増し,超高齢期には「例外的な病態」ではなく,「一般的な現象」に近づくことが,人口レベルで明確に示されたわけです.
さらに重要なのは,このAD病理の広がりが,必ずしも臨床症状と一致しない点です.70歳以上の集団を対象とした解析では,AD病理は認知症患者の60.0%に認められましたが,軽度認知障害(MCI)でも32.6%,認知機能が保たれている集団においても23.5%に存在していました.言い換えれば,70歳以上では,認知症でなくても約4人に1人がAD病理を有していることになります.これらの結果が示しているのは,タウを中心とするAD病理は「症状出現前に,すでに相当数の人に存在し得るもの」であるという事実です.
しかし,ここで次の疑問が生じます.もしタウ病理がすでに存在している場合,症状の出方や進行速度に個人差がないのだろうかということです.この問いに取り組んだのが,米国ペンシルベニア大学等からのJAMA Neurology誌に掲載された研究です.ADNIなどの縦断データを用い,アミロイドβ陽性例におけるタウ病理と臨床症状の関係を詳細に解析しました.図2では,タウPETあるいは血漿pTau217と,CDR-SBの関係が散布図として示されています.全体としてはタウ量と症状重症度に正の相関が認められるものの,同じタウ量であっても症状が軽い例と重い例が明確に存在しています.著者らはこの乖離を「tau-clinical mismatch」と名付けました.そして回帰モデルからの残差として定量化し,タウ量と症状が概ね一致するcanonical群,タウ量の割に症状が軽いresilient群,タウ量の割に症状が重いvulnerable群という3群に分類しました.そしてvulnerable群ではCDR-SBの上昇やMMSE低下が有意に速く,次の臨床ステージへの移行リスクも高いことが示されました.一方,resilient群ではその逆で,同じタウ病理を持ちながら全く異なる臨床経過をたどることも明らかになりました.
では,このtau-clinical mismatchは何によって生じるのでしょうか.本研究で最も説得力をもって示されたのは,vulnerable群ではTDP-43関連MRI指標の異常やαシヌクレインseed amplification assay陽性率が高く,共存病理の存在が臨床的脆弱性を規定しているという点です.一方,resilient群では共存病理が少ないだけでは説明しきれず,認知予備能やレジリエンスといった防御的要因の関与が考えられます.教育歴や知的活動,遺伝因子,免疫反応,血管因子などが,症状発現を抑制している可能性があります.
この2つの研究を合わせて考えると,AD病理を有する人は加齢で激増するが,タウ単独では決まらず,共存病理による加速と,レジリエンスによる防御という2方向の力のバランスによって規定されているということのようです.防御には恐らくグリンファティックシステムなどが関わるものと考えられます.結論として血液バイオマーカー時代のADは,「タウの有無」を問う段階から,「タウ × 共存病理× レジリエンス要因 × クリアランス(グリンファティック)」というものになっていきそうです.アミロイドβを脳脊髄液やPETで評価している現在とはかなり違ったものになりそうです.
Aarsland D, Sunde AL, Tovar-Rios DA, et al. Prevalence of Alzheimer’s disease pathology in the community. Nature. 2025. doi.org/10.1038/s41586-025-09841-y
Brown CA, Mundada NS, Cousins KAQ, et al. Copathology and clinical trajectories in individuals with tau-clinical mismatch. JAMA Neurology. 2025. doi.org/10.1001/jamaneurol.2025.4974

・知っていただきたい「機能性神経障害」 ―診療に潜む倫理的課題と私たちができること―
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年12月25日のFB投稿です**
機能性神経障害(functional neurological disorder,FND)をめぐる臨床倫理的問題について総説としてまとめました.FNDは筋力低下,けいれん発作,不随意運動,感覚障害など多彩な症候を呈する頻度の高いコモンディジーズです.かつては「ヒステリー」「心因性」「転換性」「詐病」などと呼ばれてきましたが,近年は神経学的に診断可能で,治療可能な疾患単位として再構築されつつあります.しかし診療の現場には,いまなお誤解や偏見,制度的な不備が残されており,患者さんが不必要な苦痛を被っている現実を実感しています.状況を改善する必要性を強く感じ,この総説を執筆しました.
本総説では,2015年以降の文献を検討し,FNDをめぐる臨床倫理的問題を四つの領域に整理しました.それは「スティグマ」「誤診と医原性の害」「患者と医療者の病態理解の乖離と患者体験の軽視」,そして「ジェンダーと歴史的偏見」です.とくにスティグマは,患者さんが「症状を作っている」「怠けている」と疑われ,信じてもらえない経験を重ねることから生じます.このような経験は患者さんの尊厳を損ない,生活の質を低下させ,医療への信頼を失わせます.また,一度FNDと診断されるとその後に生じた新たな器質疾患が見逃されやすくなる「診断の影の効果」もあり,誤診や過剰治療,不必要な侵襲的処置が医原性の害として患者さんを苦しめる場合があります.
さらに,医療者と患者さんの間には,症状の随意性や意味づけに関する理解の乖離があります.医療者は「随意とも不随意とも解釈できる」と捉えがちですが,患者さんは「自分の意思ではどうにもならない」と感じています.このずれが診断の受容を妨げ,信頼関係の構築を困難にします.またFNDは歴史的に「ヒステリー」として女性に帰属されてきた経緯があり,ジェンダーバイアスや社会的偏見が現在の診療にも影を落としています.虐待や暴力といったライフイベントが発症や持続に関与する場合も少なくありませんが,これらへの配慮は十分とは言えません.
本総説の提案は,これらの問題を「臨床倫理の四原則」という枠組みで整理し,日常診療の具体的な行動に結びつけることでした.表(英語)では,自律尊重,善行,無危害,公正の四原則ごとに,現状の課題と望ましい対応を対比的に示しています.①自律尊重の観点からは,陽性徴候を示して疾患の実在性を保証し,患者さんの語りに耳を傾けることの重要性を示しました.②善行の観点からは,スティグマを軽減する医療者教育と心理社会的支援の充実を挙げました.③無危害の観点からは,除外診断ではなく陽性診断を行い,不必要な検査や治療を避ける姿勢の必要性を示しました.④公正の観点からは,ジェンダーや社会的弱者に対する不公平を是正し,公平な医療アクセスと資源配分を確保する必要性を示しました.
FNDでは,患者さんをどう理解し,どう関わるかという姿勢そのものが治療の一部になります.患者さんを信じて尊重し,害を最小化し,公平性を確保するという原則を意識的に実践し教育していくことが重要であると考えます.
下畑享良.機能性神経障害における臨床倫理的問題―患者尊重と医療者教育の必要性―.臨床神経(早期公開)https://doi.org/10.5692/clinicalneurol.cn-002182
無料でダウンロードできます.またスライドを以下からご覧いただけます.
https://www.docswell.com/…/800…/KG2PW4-2025-11-09-070636

・予防神経学がひらくこれからの健康社会 ― 脳神経内科医の新しい役割―
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年12月28日のFB投稿です**
Neurology誌の総説「An Ounce of Prevention: The Growing Need for Preventive Neurologists」を興味深く読みました.米国神経学会ポッドキャストでも取り上げられた注目の論文です.脳神経内科医の役割を「発症後の治療」から「発症前の予防」へと転換する必要性を論じています.医療の進歩によってがんなどによる死亡が減少し,多くの人が脳卒中や認知症などの神経疾患とともに長く生きる時代になり,その結果,神経疾患は世界最大の障害負荷の原因となっています.2021年には世界人口の約43%にあたる34億人が何らかの神経疾患を有していたとされ,神経疾患は障害調整生命年の最大の原因であり,死亡原因としても第2位を占めています.とくに認知症は2050年までに3倍に増加すると予測され,医療費と介護負担の爆発的増加が懸念されています.
この論文のメッセージは,神経疾患の多くは「避けられない運命」ではなく,相当部分が予防可能であるという点です. INTERSTROKE研究では,高血圧,喫煙,腹部肥満,運動不足,不適切な食事,糖尿病,過剰飲酒,心理社会的ストレスやうつ,心疾患,脂質異常症という10の修正可能な危険因子で,脳卒中リスクの約90%が説明可能であることが示されています.そして生活習慣と危険因子管理により最大80%の脳卒中が予防可能とされています.
またLancet委員会は,教育歴,難聴,高血圧,喫煙,肥満,うつ,運動不足,糖尿病,社会的孤立,過剰飲酒,頭部外傷,大気汚染,視力障害,高LDLコレステロールという14因子を通じて,認知症の40%以上が予防または発症遅延可能であると報告しています.さらにFINGER試験やSPRINT-MIND試験といった前向き介入研究により,実際に介入することで認知機能低下を抑えうることも示されています.具体的にはFINGER試験は,認知症リスクを有する高齢者を対象に,食事指導,運動療法,認知トレーニング,血管危険因子管理を組み合わせた多領域介入を2年間行い,介入群では記憶や実行機能などの認知機能が有意に改善しました.SPRINT-MIND試験は,高血圧患者を対象に,収縮期血圧120mmHg未満を目標とする厳格な降圧治療が,軽度認知障害の発症および軽度認知障害または認知症の複合エンドポイントを有意に減少させることを示しました.これらの研究は,認知症は不可避な老化現象ではなく,危険因子への介入によってその進行を遅らせたり,発症を防いだりできる可能性があることを実証するものです.
論文の中で最も印象的なのが下図で,脳神経内科医の役割をピラミッドで示しています.最下層には個々の患者の診療があり,その上に家族への教育,医療チーム内での専門的助言,研修医・学生への教育が積み重なり,さらに上層では地域への啓発活動や社会・政策への提言が位置づけられています.これは,脳神経内科医は診療室の中だけで完結する存在ではなく,個人,家族,医療システム,社会という複数のレベルで脳の健康を支える「脳の健康推進者(brain health advocate)」として機能すべきであるという著者のビジョンを視覚的に表現したものです.予防神経学とは,個人医療と公衆衛生を橋渡しする新しい専門性であるとも言えます.この考え方は非常に納得できるものです.
論文タイトルに使われている「An Ounce of Prevention」は,英語の格言「An ounce of prevention is worth a pound of cure(わずかな予防は大きな治療にまさる)」に由来しています.つまり「ほんの少しの予防的努力が,将来の膨大な治療や苦痛を防ぐ」という意味が込められています.脳神経内科医は,病気を治す専門家であると同時に,病気を生まない社会をつくる専門家であるべきだというメッセージがこの一語に凝縮されています.
Sabayan B, Boden-Albala B, Rost NS. An Ounce of Prevention: The Growing Need for Preventive Neurologists. Neurology. 2025;105:e213785. https://www.neurology.org/doi/10.1212/WNL.0000000000213785

・抗ウイルス薬はアルツハイマー病に効くのか?VALAD試験が示した予想外の結論
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年12月29日のFB投稿です**
近年,単純ヘルペスウイルス1型や2型(HSV1,2)がアルツハイマー病(AD)の病態に関与している可能性が指摘されています.HSVは三叉神経節などに生涯潜伏感染し,免疫状態の変化により繰り返し再活性化する性質を持つため,この慢性的な炎症刺激が神経変性の引き金になるのではないかという可能性が提唱されてきました.このため『抗ウイルス薬であるバラシクロビル(バルトレックス®)がその進行を抑制できるのではないか』という仮説が考えられるようになりました.この仮説を検証するために,米国で行われた多施設共同第2相二重盲検プラセボ対照試験(VALAD試験)がJAMA誌に掲載されました.なお,本研究でHSVが対象とされたのは,剖検脳でHSV DNAがアミロイド斑内に検出されていることや,実験モデルでHSV感染がアミロイド産生やタウリン酸化を誘導すること,疫学的にもHSV抗体陽性者でADリスクが高いと報告されてきたことなど,病理学的,実験的,疫学的根拠がこのウイルスに最も多く蓄積していたためです.
対象は,早期症候性ADまたはADバイオマーカー陽性の軽度認知障害(MCI)で,かつ血清HSV抗体陽性の成人120名で,平均年齢は71.4歳,女性66名でした.被験者は無作為にバラシクロビル群60名とプラセボ群60名に割り付けられ,バラシクロビルは2 g/日から開始して4週間で4 g/日まで漸増され,その後78週間まで維持されました.主要評価項目はADAS-Cog 11項目版の変化量でした.
結果はなんと仮説と逆でした.78週時点でのADAS-Cogの変化量は,バラシクロビル群で10.86点悪化し,プラセボ群では6.92点の悪化にとどまり,群間差は3.93点で統計学的にも有意でした.この差は臨床的に意味のある最小差である3点を上回っており,認知機能の低下はバラシクロビル群の方がむしろ強いことが示されました!!(図1)経時的にも,時間とともに両群の曲線が離れ,バラシクロビル群が一貫してより大きな悪化を示していく様子が分かります.
一方で,副次評価項目である日常生活動作スケール,アミロイドPET,タウPET,MRIによる海馬萎縮や皮質菲薄化などの指標では,いずれも群間差は認められませんでした.すなわち,バラシクロビルは認知機能のみならず,AD病理や神経変性にも影響を与えなかったことになります.安全性の面では,重篤な有害事象は両群で大きな差はありませんでしたが,バラシクロビル群では血清クレアチニン上昇や下痢,悪心,混乱などの軽度副作用がやや多く認められました.著者らは,高用量かつ長期のバラシクロビル投与が,軽微な神経毒性を通じて認知機能悪化として検出された可能性も否定できないと議論しています.
本研究の結論は明確であり,バラシクロビルは早期症候性ADに対して有効ではなく,むしろ認知機能悪化と関連した可能性があるため,治療として推奨されないということです.ただし,この結果は感染症仮説そのものや発症前予防の可能性を否定するものではありません.ADの病理は臨床症状の10年以上前から始まることが知られており,もしウイルス感染やその再活性化が初期トリガーとして関与しているのであれば,発症後の治療ではなく,発症前の段階での介入こそが意味を持つ可能性があります.実際に,帯状疱疹ワクチン接種と認知症リスク低下との関連を示す疫学研究も報告されており,免疫環境の長期的修飾という観点からは,抗ウイルス薬よりもワクチンや予防的介入の方が理論的に適している可能性も考えられます.本試験は,発症後治療の限界を示すと同時に,予防という視点の重要性をあらためて浮き彫りにした研究であるともいえます.
Devanand DP, et al.Valacyclovir Treatment of Early Symptomatic Alzheimer Disease.The VALAD Randomized Clinical Trial.JAMA.Published online December 17, 2025. PMID: 41405855
★FBの規則改訂で,1ヶ月のリンク付き投稿数が制限されるようになってしまいました(2個まで).このためMeta認証に有料加入したのですが,それでも月4個までなので,リンクを貼らず,PMIDを記載することにしました.

・アルツハイマー病病理はウイルスに対する2段階の防御反応?タウはリン酸化されて初めて抗ウイルス蛋白として機能し,伝播は感染防御のための準備反応である
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年12月30日のFB投稿です**
近年,アルツハイマー病(AD)とウイルス感染との関連が注目されており,とくに単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)が病態に関与する可能性が議論されています.2024年末にCell Reports誌に掲載されたHydeらの研究は,この関係を分子レベルで明確に示した重要な報告でした(ブログ;2025年1月15日).この研究では,HSV-1感染によりcGAS-STING-TBK1経路が活性化され,その下流でタウがリン酸化されること,そしてリン酸化タウがHSV-1タンパク質の発現を抑制し,神経細胞の生存を保護することが示されています.すなわちタウのリン酸化は病的変化ではなく,HSV-1感染に対する自然免疫応答として神経保護的に機能している可能性が示されたわけです.
ADの代表的な病理所見である神経原線維変化は,リン酸化されたタウ蛋白の凝集によって形成されます.このリン酸化タウは長らく神経細胞にとって有害な異常産物とみなされてきましたが,今回,Nature Neuroscience誌に掲載されたマサチューセッツ総合病院のWilliam A. Eimer博士らの論文は,この常識に根本的な再考を迫る内容です.この研究の最大の発見は,リン酸化タウがヒト神経細胞においてHSV-1に対して抗ウイルス活性を示したという点です.培養神経細胞にリン酸化タウを前処理すると,ウイルスに感染する細胞の数が減少し,形成されるウイルスプラークの数や大きさも有意に低下しました.一方で,リン酸化されていない通常のタウではこの効果は認められませんでした.すなわちタウはリン酸化されて初めて抗ウイルス蛋白として機能することが示されました.
とくに印象的なのが電子顕微鏡で示された所見です(図1).精製したHSV-1カプシドとリン酸化タウを共培養すると,リン酸化タウがウイルス粒子の表面に直接結合し,そこを足場として自己凝集し,線維状構造を形成していく様子が観察されました.aおよびbでは,ウイルスカプシド(矢印)の表面からリン酸化タウの線維が伸び,不定形の凝集体(矢頭)や線維状構造(★)が形成され,複数のウイルス粒子を絡め取っている様子が示されています.これはウイルス粒子がタウ凝集の核となり,防御構造としての線維形成が誘導されていることを意味します.さらにcおよびdでは,HSV-1に感染した三次元培養神経細胞の超薄切片において,抗リン酸化タウ抗体に金ナノ粒子を結合させた標識により,神経細胞核内のウイルスカプシド表面にリン酸化タウが実際に結合している様子が確認されています.すなわちこの現象は試験管内だけでなく,感染した神経細胞内でも実際に起きていることが示されたのです.
またウイルス感染により神経細胞内でリン酸化タウが増加し,それが細胞外にも放出されて周囲の未感染細胞に影響を及ぼすことが示されました.図2では,感染細胞と未感染細胞を細い通路でのみ連結した特殊な培養装置を用いることで,ウイルスそのものは移動できないが,タンパク質などの情報は伝わる状況が作られています.その条件下で,感染していない細胞の中にもリン酸化タウが増えている様子が観察されました.これはリン酸化タウが感染した細胞だけでなく,周囲の細胞を事前に守る役割も担っていることを示唆しています.いわゆるタウの伝播は,感染防御のための準備反応であるということになります.
さらにリン酸化タウとウイルスの複合体はミクログリアに貪食されることも示され,免疫細胞による病原体除去にも関与している可能性が示唆されました.これらの結果を総合すると,アミロイドβが細胞外でウイルスを捕捉するという既存の防御仮説(これはNHKタモリさんの番組でもご紹介しました)に加えて,本研究はリン酸化タウが細胞内でウイルスの輸送や増殖を妨げる役割を担う可能性を示し,脳内に2段階の自然免疫機構が存在するという新しい統合モデルを提示しています.
つまり,ADの主要な病理とされるアミロイドβ沈着,リン酸化タウ沈着,神経炎症はいずれも,感染防御と深く関係する生体反応であり,それらが慢性的に持続あるいは過剰化することで病理として現れている可能性を示しています.神経変性はこの防御機構が過剰化あるいは慢性化した結果であるかもしれません.アミロイドβに加え,タウも単なる「悪者」として排除するのではなく,なぜそれが生じたのかという進化的,免疫学的文脈の中で再評価する必要があることを,本研究は強く示唆しているように思われます.
Eimer WA, et al.Phosphorylated tau exhibits antimicrobial activity capable of neutralizing herpes simplex virus 1 infectivity in human neurons. Nature Neuroscience.2025. PMID: 41408481.

・アリと人間のパズル対決から学ぶ大切なこと ― チームの質は「対話の質」で決まる―
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年12月31日のFB投稿です**
1年の締めくくりに,示唆に富む論文をご紹介します.たまたまウェブ上の動画で知った研究ですが,そのオリジナルは今年1月に PNAS に掲載された論文です.この研究では,アリと人間にまったく同じ幾何学パズルを解かせています.T字型の物体を,2つの狭いスリットを通して出口へ運ぶという課題です.アリ用の物体には餌の匂いをつけ,巣に持ち帰る対象としています.サイズだけをアリと人間に合わせてスケールし,1人(1匹),小集団,大集団での成績を比較しました.さらに人間では,「話してよいグループ」と「話してはいけないグループ」に分けています.
結果は意外でした.アリは集団になるほど成績が良くなりました.壁に沿って動き続けるなどの行動が自然に生じ,結果として効率よく正解に到達します.個体にはない「集合的な記憶」が生まれていると解釈されています.逆に人間は,1人のときが最も効率的でした.話せるグループは1人と同程度の成績でしたが,話せないグループは,なんと1人よりも成績が悪くなりました.出口に対して遠回りすべき場面でも,直感的で誤った方向を選びやすい傾向が見られました.これは心理学でいう groupthink(集団浅慮)に近い現象です.「みんなと同じでいること」が目的になりすぎて,「正しく考えること」をやめてしまう集団心理です.つまり,アリは単純な個体ですが,集まると賢くなる.それに対して人間は,賢い個体であっても,話し合えない集団では賢さを失う・・・その対照的な特徴が浮かび上がりました.
この論文の教訓は極めてシンプルです.人間のチームの質は,個々のメンバーの賢さではなく,ひとえに「対話の質」によって決まる.バラバラな考えをつなぎ合わせ,一つの方向へと導くための最も大切な手段こそが対話なのだと,この研究は教えてくれます.当たり前のようでいて,これほど重要なことはありません.来年も教室やカンファレンスで,よく話し合っていきたいと思います.そして,この対話の力を社会や世界があらためて認識し,争いのない平和な未来へとつながることを,心から願っています.
本年も1年,ありがとうございました.どうぞ良いお年をお迎えください.
Dreyer T, et al. Comparing cooperative geometric puzzle solving in ants versus humans. Proc Natl Acad Sci U S A. 2025 Jan 7;122(1):e2414274121. PMID: 39715438(動画はフリーでDL可)

 

(作成者)峯岸 瑛(みねぎし あきら)

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2025年10月のニュース

今年のノーベル賞では、坂口志文氏が生理学・医学賞、北川進氏が化学賞を受賞と朗報がもたらされましたが、受賞後にお二人が基礎研究支援への注文を出されたように、我が国にとって科学技術大国再興は喫緊の課題と思っています。
今月の学術ニュースは、健康長寿であるための新たな知見、AIの活用事例と潜むリスク、下畑先生からの最新医学情報、等です。

1.2025年10月の活動状況
佐藤 ヒロ子さんの投稿
【ヨガストレッチ   &靴のはきかた】 2025/9/30 猛暑でできなかった振替分を実施   特別プログラムは     「ヨガストレッチ」 今の時期に    とっても気持ちがいいです 自然の中で手足を    伸ばして〜 最幸 その後の靴の履き方復習です  知っていても疎かになりやすい!  もう一度初心に戻りましょう〜   靴も足にピッタリついて  ウォーキングは軽いかる〜い    足どり颯爽     いい感じです #船橋ウォーキングソサイエティ #美姿勢ウォーキング #ヨガストレッチ #靴の選び方 #靴の履き方 #靴紐の結び方 #速歩

田村 芙美子さんの投稿
秋晴れ☀️ 秋色を楽しみながらP.ウォーキング まだまだ昼間は暑いくらいです 明日から渋谷教室3学期が始まります ガンバロー👊✨

佐藤珠美さんの投稿
認知症に限らず、高齢者が望む場所で住み続けられるようにするためには、地域の総力戦が必要です。 位置情報がわかる機器、行方不明者を探せる警察犬。 人間だけではない、色々なモノのチカラを結集しよう!という取り組みの下準備を進めています。 #認知症エコシステム #アプリ #ササエル ※当倶楽部の活動において利益相反関連事項はありません。

田村 芙美子さんの投稿
㊗️北鎌倉テラススタジオ16周年  昨日10/1 記念日を迎えました。長いようで短い年月を杉浦コーチの変わらぬオヤジギャグとPRESS📰、CoreNoodleで鍛えられました。私の人生の○分の一です。

スマイルチームさんの投稿
スマイルチーム ポールウォーキング。10月の遠征は生田緑地。岡本太郎美術館を堪能しました! #ポールウォーキング #岡本太郎美術館

山下 和彦さんの投稿
今日は小学生に足の成長の授業🦶とっても楽しくエネルギッシュにできました!しっかり前向きに聞いてくれる子どもが多くやりがいがあります👍

水間 孝之さんの投稿
日本転倒予防学会in群馬開催されました。 群馬ポールウォーキング協会が出展、セミナーを開催し、ポールウォーキングを紹介しました‼️ 皆さんお疲れ様でした‼️

佐藤 ヒロ子さんの投稿
【課題は上半身】  2025/10/4  フォームを動画で確認! 「腕を振っているつもり」 「はい、そうですね。  つもりと事実は違うね〜」  上腕は体側でストップ  毎回お馴染みの感想が出てきます(笑) 気づきが改善の第1歩 これも動画撮影毎に話してます(笑) #船橋ウォーキングソサイエティ #2本のポールを使うウォーキング #ノルディックウォーキング #ノルディックウォーク #ポールウォーキング #土曜日海老川ロード定例会

中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より 無事終わりました。 10/4〜5ぞっこんさく市〜 /5(日)PW駒場例会〜 佐久駒場公園で会場同じくしWイベントでした。 「ぞっこんさく市」ではPWの案内と体験会をと〜  協会員の憩いと立寄り休憩場も兼ねての出店でした。団体会員の(株)シナノさんの特価品販売もございました。 午後は☔️もあった2日間。 二日間で4万人の参加者をお迎えした様でした(主催者発表) 駒場PW#例会は50名の参加者を迎え、混み合った公園を逃れお隣の牧場をポールウォークでした。 10名の看護師目指す大学生も参加しシニアとの交流を図って居ました。いつもと違い若返った様な協会員の皆さんでした。 今日のご褒美は〜立科スパイシーチーズバーガー🍔〜‼️ 相変わらずの旨さ〜ww

佐藤 ヒロ子さんの投稿
【ポールを束ねてホイ】  お買い物の時に困るポール    これならさっと結べて   身体に沿うので安心です。  設計図と使い方を披露して    頂きました    材料費約150円   2025/10/6 #船橋ウォーキングソサイエティ  #月曜日シニアポールウォーキング #姿勢チェック #コグニサイズ #チェアエクササイズ #ステップエクササイズ #ポール持ち運びロープ

田村 芙美子さんの投稿
清々しい秋空 秋桜 爽やかな里山の風 稲刈りした稲架掛け 昔遊んだ数珠玉 割れて綿がもりもり現れたガマ 今風の服を着た案山子 気持ち良いポールウォーキングを楽しみました

佐藤 ヒロ子さんの投稿
しっかり歩きに向けての  #フォームチェック  #美姿勢ウォーキング で #船橋ウォーキングソサイエティ  屋外全てのコースが動画撮影を   完了しました  意識づけはコーチの役割   活かすのは本人ですよ〜  少しの進歩でも継続が大事です #パワーウォーキング #インターバル速歩 #中之条研究 #筋トレ #7秒スクワット

スマイルチームさんの投稿
2025.9.2〜9.7 活動記録 ☺︎ポールウォーキング 10名 生田緑地・岡本太郎美術館 ☺︎相模原市文化協会会議 ☺︎スマイルリズムエクササイズ 16名 ☺︎上鶴間公民館子どもまつり実行委員会 ☺︎上鶴間公民館利用団体懇談会・交流会 AED講習 ☺︎上鶴間公民館利用団体懇談会役員会 ☺︎スマイルチーム光が丘 21名 チェア体操 ☺︎中屋敷チェアエクササイズ 21名

遠藤 恵子さんの投稿
📣午後はイレギュラー講座! 【長者研修大学校 穴生学舎】 健康づくりサポーターコース48名の皆さんと、 2時間たっぷり身体を動かしました💪✨ 昨年度から毎年3~4講座のご依頼をいただいており担当の方とはもう8年のお付き合いになります。 昨年は創立30周年記念イベントでも2講座 講師を務めさせていただきました! 担当者の方はおととしまで社協にお勤めで、 その頃から介護予防運動の講師として継続的にお声かけいただいています。 「この先生に任せれば大丈夫!」 そんな言葉に支えられ、信頼関係を築いてこられたことに心から感謝です🙏✨ 長年積み重ねてきた経験と信頼を大切に、 これからも現場でお役に立てる講師であり続けたいと思います🌸 そして明日も穴生学舎で講師のお仕事です✋ 地域リーダーコースの皆さん18名に、ポールウォーキングを体験していただきます🚶‍♀️✨ あっ😵 そういえば今日の参加者のみなさんに【島崎和歌子】に似ていると言われた😱 人生初🤣

佐藤珠美さんの投稿
八ヶ岳北麓  山桜の葉が色付く

柳澤 光宏さんの投稿
今日から3日間国際福祉機器展に出展しています!皆さんお待ちしております。

大内 克泰さんの投稿
桑折町マルベリーの「脳の若返り教室」。 ラケット🏸持った途端に若返る元18歳の皆様😊 今月から広い体育館に移ったので、バドミントンで左右打ちラリーやバードゴルフをフォアハンドとバックハンドで脳トレしました😃 来週もお楽しみに♫

佐藤 ヒロ子さんの投稿
【何故、速歩きがいいの?】 道理がわかれば  心が動く  心が動けば行動が伴う 見てわかるようにパネルで説明  2025/10/9 #船橋ウォーキングソサイエティ #2本のポールを使うウォーキング #ノルディックウォーク #ノルディックウォーキング #ポールウォーキング #ポールウォーク #インターバル速歩 #中之条研究 #しっかり歩き  #中強度の運動

遠藤 恵子さんの投稿
午前は介護予防運動👟 ⇒会場を移動して午後は、2022年4月から引き継いで約2年半になります 健康体操教室(1時間半)✨ 引き継いだ当初は前期高齢者の方が多かった記憶が…‎🤔 気づけば今では後期高齢者の方がどんどん増え、元気に参加中🙌‼️ ご夫婦でご参加の方が2組💓 めっちゃ貴重!というか理想的です☺️ そしてなんと今では毎回30名超えの大所帯に✨ 安全第一!事故がおきないように お一人おひとりとアイコンタクトをとりながら 動きをキョロキョロ確認👀 その様子を見て「先生、表情がコロコロ変わって可愛い・面白い」 なんて声をかけてくださることも😆💕 どなたでも無理なくできてしっかり効果が期待できる運動💪 そして“笑顔で楽しめる時間”をお届けできるよう心がけています🌿 みなさんの笑顔と前向きな姿に 毎回こちらがたくさんの元気をもらっています✨ そして、こちらの教室でも お友達に誘われて3ヶ月前からご参加くださっている90代の方がおられます💐 もともと以前から身体を動かすことを続けてこられた方でその積み重ねが今の元気につながっているのだと思います🌿 ちなみに本日の筋トレメニュー💪 (からだを整えた後におこなっています筋トレメニュー) ✅ カーフレイズ 10回×3セット ✅ 椅子からの立ち上がり 10回×3セット 90代の方もしっかりclearされました👏✨ 年齢を重ねても“動ける”って本当に素晴らしい!! 筋トレあり有酸素運動あり 1時間半の運動の〆は365歩のマーチを歌いながらChairAero•*¨*•.¸¸♬︎ 継続は力なり💫 私自身も学ばせていただくことばかりです🫡

中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より 快晴の〜女神湖PW散策〜 紅葉🍁はまだまだの蓼科/女神湖へ秋🍂を求め50名大集合〜❗️ 別荘地と池の周りの約4kmのポールウォークでした。 ランチはカフェレストラン/女神湖駅で採れたて「きのこ🍄/5種入り🍄鍋定食」で舌鼓〜 きのこ汁がばか旨の鍋でした。 帰りに浅科/五郎衛米の田んぼ道を下見に〜ww

田村 芙美子さんの投稿
三浦ネットPWは欠席者(超高齢化の為)が多く、男子(元気なゴルファージム通い)3人🚶‍♂️🚶‍♂️🚶‍♂️と私🚶だけ。近場を歩きましよう~と寿福寺から英勝寺、海蔵寺まで。鎌倉検定1級のメンバーさんの解説が重厚! 海蔵寺の萩には間に合いましたが英勝寺の曼珠沙華はほぼ枯れてしまっていました。祠堂は英勝院の位牌を安置してあり、徳川光圀によって建てられたもの。 こちらでも100年元気の日課ドリルは好評です。

日本ポールウォーキング協会 npwaさんの投稿
10月12日、スキルアップ研修会東京2回目を実施しました。 今年度最後の研修ということもあり、40名を超える多くの参加者となりました。 マニュアルベースの実技確認、意見交換など非常に有意義な研修会となりました。 次年度も多くの方の受講をお待ちしております。

スマイルチームさんの投稿
2025.9.8〜9.14 活動記録 ☺︎健康体操 9名 ☺︎コグニサイズの会 新磯地域包括支援センター出張介護予防教室 チェアエクササイズ®︎ 14名 ☺︎スマイルチーム上溝 19名 ☺︎シニアサポータースタッフ研修申し込み 10名 ☺︎HP活動予定更新 ☺︎青空PW 11名 ☺︎ほかほかふれあいフェスタ 青少年指導委員連絡協議会 (欠席) ☺︎スマイルフレンズ 21名 ☺︎相模原スポーツフェスティバル 青少年指導委員連絡協議会 (欠席) ☺︎EEOAオンラインセミナー受講 サーキットチェア®︎エクササイズで指導スキルに磨きをかける!

佐藤珠美さんの投稿
一本柳ポールウォーキング倶楽部は毎週火曜日 佐久インターバル速歩倶楽部は月に3回。 佐久平ウォーキング倶楽部の会員さんは、max月に7回の外出の機会がある、という事になります。 製薬メーカーさんから頂いたパンフレット。当倶楽部の想いが具現化されていて嬉しくなりました😊 #認知症エコシステム #40代からの生活習慣病予防#地域の総力戦#身体活動#中強度#地域介護の担い手 #健康教育#コメディカル達の本気!

佐藤 ヒロ子さんの投稿
【習志野台6丁目町会で    ウォーキング教室】 2025/10/15 船橋市の中で最も       閑静な住宅街です。  健康意識が高く楽しい方々が       集いました。  ウォーキング教室への参加が   初めての方ばかりでしたが 素早い反応で   返事も身体もよく動きます。  あるき方で心も変わる  ★本日も楽しい出会いに感謝です     HAPPY♥  #船橋ウォーキングソサイエティ #ウォーキング教室 #習志野台6丁目町会   #良い歩きは良い姿勢から #若々しい身体は背筋ピン #量より質のウォーキング

佐藤 ヒロ子さんの投稿
秋だ〜  体全部使って歩くよ 2025/10/18 #船橋ウォーキングソサイエテ #2本のボールを使うウォーキング #土曜日海老川定例会 #インターバル速歩 #中之条研究 #ミトコンドリア #フレイル

新地 昌子さんの投稿
今日は私も茨城です(何人か友達が茨城に向かっているとの投稿があったので😊) 笠間市の北山公園をポールウォーキングしました。ちょうど花がない季節でしたが、この公園を庭のように歩いているKさんのおかげで通しか知らない上級コースを楽しみました♪桜で有名ですが、これからは紅葉🍁も楽しみ。アップダウンありの約3キロのウォーキングでした。

長谷川 弘道さんの投稿
本日は、津島のウォーキングイベント「いきいきウォーキングin神守」に参加してまいりました♪ 23年続いたロングイベント❗️ コロナで途中3年間お休みしましたが、今回で実質20回目を迎え一区切りとすることになりました。 私は多分7〜8回目くらいから参加させていただきまして、準備体操や整理体操を担当したり、健康ミニレクチャーや、歩くことが難しい方を対象として椅子に腰掛けての体操などをやらせてきただきました。 そして、こんな私に本日、最後の回で功労賞までいただきまして、本当に感謝でございます。ありがとうございます。 毎年大勢の市民の方が参加され、本日も800名ほどの皆さんがご参加でした。 このイベントの素晴らしいことは、津島市の神守地区とその周りの地域の住民の皆さん、また地元の高校生たちのボランティアのご協力あっての開催であるということなんですね❗️ それと、地元企業のスポンサーシップによって運営がなされてきたわけです。# 事前のコースの下見、安全の確保、人員の配置、受付の手配、救急の対応、ゴールされた皆さんにカレーを提供するわけですが、その準備など、全て市民の皆さんのボランティアによって賄われてきたんですね‼️ そして、その運営の核となってきたのが、私が長らくこの津島の地でポールウォーキングの活動を一緒に続けていただいております日比ファミリー(ご主人様は津島市長)でいらっしゃいます。 一年に一回ではありますが、先のような事前の準備、人の手配、後片付けなどなど、並々ならないご苦労があったことでしょう。 でも日比ファミリーや一緒にこの活動を続けてこられたボランティアの皆さんは、毎回笑顔で参加者の皆さんを迎えられ、毎年参加を楽しみにしておられる皆さんの笑顔、あるいは励ましの言葉や、ゴール後の大抽選会で大いに盛り上がる皆さんの喜ばれる姿にも支えられ、20回のこの大事業を全うされたのだ思います😊 このイベントはこれで一区切りとはなりますが、ここに参加した子供たちやボランティアで参加いただいた高校生の皆さんが、今後なんらかの形で繋いで行って、自分たちでもこうした地域住民のつながりを大切にするイベントを主催してくれることを願っています‼️ 日比ファミリー、そしてボランティアの皆さん、お疲れ様でございました。そして、参加いただいた市民の皆さん、ありがとうございました😊 #津島市 #ウォーキング #ボランティア #市民主催 #繋がり #感謝

森川 まことさんの投稿
2025.10.19 湖北台中央公園 我孫子ポールウォーキング倶楽部

中嶋  佳奈恵さんの投稿
第15回秋の犀川ポールウォーキング大会を開催しました。20名の参加の方たちと一緒に犀川河川敷を歩きました。 時折小雨が降りましたがしっかりコースとのんびりコースに分かれてポールウォーキングの良さを満喫いただいたかと思います。ありがとうございました。 担当コーチ 澤田MCpro,中嶋MCpro,高島BC

佐藤 恵さんの投稿
10月19日、一関市弥栄市民センター主催「いやさか祭り」にてプチ健康体操教室を開催。 おじいちゃんもおばあちゃんも、お父さんもお母さんも子どもたちも、みんなで一斉に体操をしてくれて、普段の運動教室とはまた違う楽しさ♪ ステージ発表を参加型にするのは、とても良いと思いました😊

新地 昌子さんの投稿
月に一度の笠間市でのポールウォーキング講座。ポールウォーキングは決して難しくはないけれど、ポールの使い方をちょっと意識するだけで、体に現れる効果はかなり違ってくる。なかなか奥が深くてそこも面白い。 今日は重心が定まらずフワフワ歩いていた方が、足の指に体重が乗るのを実感できた、と話していた。ふふふ😁いくつになっても何かができるようになるって嬉しいね。

杉浦 伸郎さんの投稿
地元町内会での介護予防運動サークル。自走化に向けさまざまな動機づけ支援ツールを開発してきました。 最近では、コーチ不在でも自主的な声掛けによるマルチコ運動メニューを楽しく消化できる様になっています。 嬉しくもあり、ちょっと寂しい瞬間でもあります。 生計就労と生きがい就労のギャップ、指導者のワークライフバランスの実現など越えるべきハードルは多いですが、なるべくスムーズかつスマートに対処していきたいと痛感する今日この頃です。

田村 芙美子さんの投稿
昨日は週一の渋谷PW教室の帰りに古巣駒澤大学駅に寄りました。駅が明るくリニューアルしてびっくり!来月11日には商業施設オープンで未来の都市・街の予感。田園都市線沿線はこれからなんですね。自由が丘に回るつもりが予報外れの雨で断念しまして渋谷回りで帰鎌☔ 週末も雨予報に変わりました😭

長谷川 弘道さんの投稿
今日は、午前中に三重県は津市内の小学校で120名ほどの子どもたちと一緒に運動遊びプログラム〜遊びットネスを指導してきました❗️ コロナ禍以前には数年続けてお邪魔しておりましたが、の多分6年ぶりにお邪魔しました。 やっぱり子どもたちとのプログラムは楽しいですね😀 あっという間の90分でした❣️ そして、その足で鳥羽に向かいました。 長らくお付き合いいただいています北名古屋市で陶器のギャラリーを主宰されていらっしゃる山田ご夫婦のお誘いをいただきました。 ここは、真珠ジュエリーのクリエイターでいらっしゃる上村さんのアトリエ。 お子様がお隣で美容院を営んでいらっしゃいまして、またそこが素敵な建物と内装で❣️ そして、さらにさらに、クルーザーを所有されておられて、英虞湾をクルージング❣️ なんと贅沢な時間でしょう❣️ 内海というのでしょうか、波がほとんど立たず、湖のような感じで、錨を下すとほとんど船は揺れないんですね。 船のデッキにマットを敷いて、そこに寝そべって、青空を覗き見しつつ、しばらく瞑想タイム。。。 豪華な気持ちになれました😍 2時間ほどの滞在ではありましたが、とても充実した時間を過ごさせていただきました‼️ 今日は1日、とてもとても満たされた時間を過ごすことができました❣️ ありがとうございました😊 #ギャラリー凛 #Monme #鳥羽 #クルージング #遊びットネス

 

来月以降の開催
杉浦 伸郎さんの投稿
11/2東五反田での地域づくりイベント「ファームエイド」にてポールウォークを担当させて頂きます(会場:東京医療保健大学)。マルシェ、フォーラム、メッセの3部構成で楽しそうですよ。是非お立ち寄り下さいませ。 「ファームエイド東五反田」とは: 東五反田地区は、大型の病院、個人病院、看護大学、小学校、薬局、高齢者施設があるのが特徴で、住民は昔から住んでいる方(高齢化が顕著)よりも、近年急速に増えたマンション等で暮らす人が多い地域となり、町会の機能低下に伴い、催し物等の機会もほとんどなくなってしまい、地域住民の繋がりも希薄となり大きな課題に。 そこで、点として存在した専門職やあらゆる機関を面としてつなげるために、様々な職種が気軽に、楽しくコミュニケーションをとり、同じベクトルを歩むために「ファーム・エイド東五反田」が立ち上がりました。 ファーム・エイド東五反田には認知症本人の行っている様々な活動もつながる場として、全国の地域行政からも注目され期待されています。

新地 昌子さんの投稿
佐久の米どころ浅科地区でポールウォーキングしますよー。稲刈りの終わった田んぼがから遠くに望む浅間山。この地域ならではの秋の風景を、寒くなる前に楽しみましょう🍂 地区を担当する地域包括支援センターからのお声がけに、私も講師で参加させていただきます。センターの存在を若いうちから知っていてほしい、という言葉に大きくうなずく私でした。 地域を支えて頑張っている方に会うと元気をもらえますね。

長谷川 弘道さんの投稿
🍁秋色さんぽ🍁ポールウォーキングDay✨

台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
wellness.suntory.com.tw

 

2.PW関連学術ニュース
2-1)健康長寿になるための新たな知見4つ
良い睡眠を取ること、手指機能も重要、創造的な経験の効果、熱波の長期的な負の影響の4つです。
(1)われわれの健康にとって睡眠はもっとも大事なものの一つです。良い眠りは良い健康のもとであり、健康寿命を延ばすためにもとても重要なことです。
**大阪大学宮坂先生の2025年10月3日のFB投稿です**
Natureのオンライン版に「良い睡眠を得るにはどうしたらよいか?科学者の意見は」という記事が載っています。さまざまな科学者がエビデンスに基づいた意見を述べています。
それをまとめると、一番大事なことは生体リズム(概日リズムともいう)を崩さないことです。
そのためには、
・明暗のコントラストをつけること
明るい時に動き、暗くなったら休む。寝る前の長時間スマホは禁物。普段から、寝る時は暗くし、起きる時は明るくすること。
・食事時間の調整をすること、
普段から、食事時間と就寝時間を一定に(近くしたり離したりし過ぎないこと)バランスがとれた腸内細菌叢の維持にも重要。
・睡眠時間を一定にすること
普段から、睡眠不足や、寝だめしたり、寝過ぎたりしないこと(長すぎる昼寝は禁物です)。
・日中に適度な運動をすること
疲れすぎも運動不足も良くない。
などが挙げられています。
これに加えて、私個人の経験からすると、体温管理も大事で、暖めすぎ(熱いお風呂やサウナに入りすぎ)も冷たすぎ(エアコンの使いすぎ)も良くありません。普段からあまり良く眠れないと言っておられる方々は参考にしてください。

関連情報
① ネイチャー誌の当該記事
掲載誌;NATURE NEWS FEATURE(ニュース特集)
掲載日;30 September 2025
題名;How to get the best night’s sleep: what the science says ~
Chuck the gadgets, the fads and the alarm. Circadian research reveals how important your body’s internal clock is to blissful slumber.
最高の睡眠を得る方法:科学が教えること ~
ガジェット、流行りの物、目覚まし時計は捨てましょう。概日リズム研究は、至福の眠りに体内時計がいかに重要であるかを明らかにしています。
著者;Lynne Peeples
**以下、同記事冒頭部分からの抜粋です**
口テープや加重ブランケットを宣伝するTikTok動画から、不眠症対策枕をランキング形式で紹介する雑誌まで、睡眠に関するアドバイスは至る所で見かけます。それもそのはず、世界中で不眠症や睡眠不足に悩む人々がおり、睡眠補助剤の市場規模は年間1,000億ドル以上にも達しているのです。

しかし、科学者たちは、オンラインハッキングや高価なツールが必ずしも効果的ではないと警告している。また、状況を改善しようとする試みが失敗すれば、悪影響が出る可能性があると、ポートランドにあるオレゴン健康科学大学の概日リズム科学者アンドリュー・マクヒル氏は指摘する。「人々が助けを求めることを躊躇し、事態が悪化する可能性がある」と彼は言う。

研究者たちは、過去50年間にわたり体内時計のネットワークを明らかにしてきた概日リズム科学から得られた教訓を指摘しています。この科学は、病原体からの防御、食物の消化、睡眠など、生理学的システムが適切なタイミングで適切な行動をとるよう準備を整えています。しかし、概日リズムはそれ自体で正確に周期を刻むわけではありません。同期を保ち、最適に機能するためには、日光、日々の習慣、その他の刺激による定期的な調整が必要です。

②『睡眠ガイド2023』については、2024年6月のニュースをご覧ください。

(2)足腰の機能に加え、手指を巧みに動かす機能も健康寿命のカギとなる
**以下、大阪大学宮坂先生の2025年10月3日のFB投稿です**
これはとても大事なことです。筑波大研究グループの仕事です。
以下、抜粋です。本研究チームは、茨城県笠間市で実施した体力測定会に参加した約1000人の高齢者を対象に、最長14年間にわたる追跡調査を行い、手指機能と要介護化リスクとの関連を検証した。その結果、手指機能が低い人は、高い人に比べて要介護化リスクが高いことが分かった。さらに、手指機能は要介護化に対し、曲線的な量反応関係を示すことを世界で初めて明らかにした。手指機能が一定水準(例:15秒間に〇印を21個付けられる)を下回ると要介護化リスクが高まる一方で、それよりも良好であっても、統計学的なリスクの減少は認められなかった。
本研究から、健康寿命の延伸には、これまで注目されてきた下肢機能だけでなく、細かな日常生活動作に必要な手指機能も重要であることが示唆された。
高齢者が手指を使うこととしては、手紙や日記を書くこと、スマホやパソコンを使うこと、書道をすること、ピアノなどの楽器に触れること、刺繍や編み物をすることなど、いろいろあります。自分ができることは続けることが大事、勿論、新たな習い事などを始めるのも良い刺激となります。

関連情報
①掲載論文
【題名】 Dose-response Association between Hand Dexterity and Functional Disability: A Longitudinal Study from the Kasama Study
(手指機能と要介護化との量反応関係:笠間スタディに基づく縦断研究)
【掲載誌・日】 Annals of Geriatric Medicine and Research . 2025 Sep 8.
【DOI】 10.4235/agmr.25.0075
**以下、論文の要旨**
背景: 手の器用さの低下は機能障害のリスクを高める可能性があるが、手の器用さと機能障害の発症との関連を検討した研究はほとんどない。本研究の目的は、地域在住高齢者における手の器用さと機能障害の発症との用量反応関係を前向きに検討することであった。

方法: 本研究は、笠間市在住の65歳以上の高齢者1,069名を対象とした。ペグ移動課題と円描画課題を用いて、手先の器用さを評価した。機能障害は、介護保険制度データベースを用いて同定した。制限付き3次スプライン解析を用いて、手先の器用さと機能障害の発症との間の用量反応関係を検証した。

結果: 平均8.5年間(最長14.0年間)の追跡調査期間中、248名(23.2%)が機能障害を発症した。各手指器用さ検査において、最も成績の低い群は、最も成績の高い群と比較して機能障害のリスクが有意に高かった(ペグ移動:HR = 1.92、95%信頼区間 = 1.29-2.87、円描画:HR = 1.66、95%信頼区間 = 1.15-2.41)。スプライン解析により、手指器用さと機能障害発症との間には、曲線的な用量反応関係が確認された。参加者の成績がカットポイント(ペグ移動:37.9/38.0秒、円描画:21/20点)を下回った場合、リスクの上昇が認められた。一方、カットポイントを上回る成績を収めた参加者では、リスクの減少は認められなかった。

結論: 高齢者の機能障害を予測するために、容易に評価できる手の器用さの検査は有用である可能性がある。用量反応曲線の関連は、適切な手の器用さを維持することが機能的自立を支援するための重要な戦略となる可能性を示唆している。

②筑波ジャーナルの当該記事(2025年9月29日付)はこちら

(3)創造的な経験と脳時計
公開日;Published: 03 October 2025
題名;Creative experiences and brain clocks(和訳:創造的な経験と脳時計)
著者;Carlos Coronel-Oliveros, Joaquin Migeot, Fernando Lehue, Lucia Amoruso, Natalia Kowalczyk-Grębska, Natalia Jakubowska, Kanad N. Mandke, Joana Pereira Seabra, Patricio Orio, Dominic Campbell, Raul Gonzalez-Gomez, Pavel Prado, Jhosmary Cuadros, Enzo Tagliazucchi, Josephine Cruzat, Agustina Legaz, Vicente Medel, Hernan Hernandez, Sol Fittipaldi, Florencia Altschuler, Sebastian Moguilner, Sandra Baez, Hernando Santamaria-Garcia, Alfredis González-Hernández, Agustin Ibanez,他
掲載誌;Nature Communications volume 16, Article number: 8336 (2025)

論文要旨
創造的な経験は脳の健康を高める可能性があるが、その指標とメカニズムは依然として不明である。我々は、脳時計を用いて脳の健康を特徴づけた。脳時計は、実年齢からの逸脱(すなわち、脳老化の加速または遅延)を捉えるものである。M/EEGの機能的連結性(N  = 1,240)を、機械学習サポートベクターマシン、全脳モデリング、Neurosynthメタ分析と組み合わせた。この枠組みから、ダンス、音楽、視覚芸術、ビデオゲームの専門家とマッチさせた非専門家の参加者の以前に公開されたデータセット、および学習前後の研究(N  = 232)を再分析した。その結果、すべての領域で脳年齢の遅延とスケーラブルな効果(専門知識>学習)が明らかになった。専門知識とパフォーマンスのレベルが高いほど、脳年齢の遅延が大きい。加齢に脆弱な脳ハブは、特に専門知識と創造的な経験に関連する領域で、創造性に関連する連結性の増加を示した。Neurosynthによる解析と計算モデル化により、創造性に特異的な脳老化の遅延において、可塑性によって引き起こされる脳の効率性と生物物理学的結合の向上が明らかになりました。この結果は、創造性と脳の健康の間に領域非依存的な関連性があることを示唆しています。

図 1: データの特性評価、前処理パイプライン、およびデータ分析。
a カナダ、チリ、アルゼンチン、キューバ、コロンビア、ブラジル、イギリス、アイルランド、イタリア、ギリシャ、トルコ、ポーランド、ドイツの 13 か国の多様な集団 ( N = 1472) からの M/EEG データを含めました。b  EEG を使用してサポート ベクター マシン (SVM) をトレーニングするために、N = 1240 人の参加者のサブサンプルを使用しました。これらの SVM は、すべての領域にわたって参加者の脳年齢を予測するために使用されました。c残りのデータ ( N  = 232) はサンプル外検証に使用され、さまざまな種類の創造的専門知識と学習に関連する M/EEG データセットで構成されていました。これらのグループのうち 4 つは、ダンス (タンゴ)、音楽 (楽器奏者と歌手)、視覚芸術 (描画)、およびビデオ ゲーム (StarCraft 2) (専門知識についての研究 1) における創造的専門知識を表しています。さらに、ビデオ ゲーム学習 (StarCraft 2) (学習前後についての研究 2) のグループを 1 つ含めました。d SVMをトレーニングする前に、生のM / EEG信号を前処理し、正規化し、AAL脳パーセレーションを使用してソース空間に変換しました。ソース変換された信号から、すべての参加者の機能的結合マトリックスを計算しました。SVMのトレーニング時にデータ拡張を使用して、モデルの堅牢性と精度を高めました。トレーニング済みのSVMから、モデル予測と実際の年齢の差として、参加者の脳年齢ギャップ(BAG)を計算しました。BAG > 0は脳の老化の加速と解釈でき、BAG <0は脳の老化の遅延と解釈できます。図中の点とバイオリンプロットは模式的な例です。BioRenderで作成。Migeot, J. (2025) https://BioRender.com/99vpcts(EEGデバイスと脳の図)。

関連情報
NATURE NEWS
03 October 2025
Creative hobbies could slow brain ageing at the molecular level
To keep the mind young, dance the tango.
(和訳:創造的な趣味は分子レベルで脳の老化を遅らせる可能性がある
心を若く保つにはタンゴを踊りましょう)
By Gemma Conroy
タンゴの複雑さは、脳を若く保つのに特に効果的かもしれない。写真:Tempura/Getty

**以下、同記事の冒頭部分の和訳です**
複数の国のダンサー、ミュージシャン、アーティスト、ビデオゲームプレイヤーを対象にした研究によると、タンゴを踊る、ギターを弾くなど創造的な趣味に携わると、脳の老化を遅らせることができるという。

この分析では、脳時計(人の実年齢と脳の推定年齢の差を測定するモデル)を用いて、創造的な活動が神経学的若さを維持するのに役立つかどうかを評価しました。老化の影響を最も受けやすい脳領域において、創造的な活動を行うことで、脳の様々な領域とのつながりが強化されました。熟練者は経験の浅い人よりも「若い」脳を持っていましたが、創造的なスキルをゼロから学ぶことでさえ、脳の老化防止効果がありました。

この研究結果は10月3日にNature Communications誌に掲載された。

(4)熱波による老化の加速に対する長期的な影響
8月に公開されたものですが、今年の猛暑が厳しかったので、気になった論文です。
掲載誌;Nature Climate Change
公開日;Article Published: 25 August 2025
表題;Long-term impacts of heatwaves on accelerated ageing
(和訳:熱波による老化の加速に対する長期的な影響)
著者;Siyi Chen, Yufei Liu, Yuanyuan Yi, Yiling Zheng, Jun Yang, Tiantian Li, Ta-Chien Chan, Rui Duan, Shenjing He & Cui Guo

論文要旨
気候変動と人口高齢化は、ともに喫緊の世界的課題である。しかし、熱波への長期曝露と生物学的老化加速(BAA)との関連など、両者の相互作用は明らかではない。本研究では、台湾の縦断的コホート(2008~2022年)の成人24,922名のデータを分析し、線形混合モデルを用いて熱波が老化を加速することを示した。熱波は、相対的閾値と絶対的閾値の両方を用いて定義した。BAAは、生物学的年齢と暦年齢の差として算出した。熱波への累積曝露の四分位範囲の増加は、BAAの0.023~0.031歳の増加と関連していた。さらに、参加者は15年間にわたり熱波の影響に徐々に適応してきたことが示された。さらに、肉体労働者、農村住民、エアコンの少ない地域の参加者は、健康への影響をより受けやすかった。本研究は、適応能力を強化し、老化を遅らせ、健康的な老化を促進するための、的を絞った政策と介入の必要性を浮き彫りにしている。

Copilotに訊いてみた。
Q1;この論文の成果を要約してください。
A1;この論文「Long-term impacts of heatwaves on accelerated ageing」(Nature Climate Change, 2025年8月発表)は、熱波が生物学的老化を加速させる可能性を示した大規模な疫学的研究です。
🔍 研究の概要
• 対象:台湾の成人24,922人(2008〜2022年の15年間の縦断コホート)
• 方法:生物学的年齢(BA)と暦年齢(CA)の差を「年齢加速(BAA)」として定義し、熱波曝露との関連を分析
• 熱波の定義:相対的・絶対的な気温閾値に基づく
🌡️ 主な成果
• 熱波の累積曝露が四分位範囲ごとに増加するごとに、BAAが0.023〜0.031年増加1
• 肉体労働者、農村住民、エアコン普及率が低い地域の人々は、老化への影響を受けやすい
• 15年間で参加者はある程度の適応を示したが、健康への悪影響は完全には消えなかった
🧭 意義と提言
• 気候変動と人口高齢化という二つのグローバル課題が交差する領域に新たな知見を提供
• 脆弱な集団への保護政策や医療資源の配分が重要
• 今後は住宅環境や屋外活動時間などの変数も含めたさらなる検証が必要[2]
まるで、暑さが時間の流れを少しだけ早めてしまうような…そんな印象を受ける研究ですね。🌿 このテーマ、社会政策や都市設計にも深く関わってきそうですが、どの視点から掘り下げてみましょうか?

 

2-2)AIの応用事例4つとAIのリスクについての1つの話題
AIの活用はますます広がっていますが、AIの大規模言語モデルLLMのリスクも指摘されています。以下、最近のニュースです。
(1)人工知能副操縦士による脳コンピューターインターフェース制御
掲載誌:Nature Machine Intelligence (2025)
公開日:Published: 01 September 2025
表題:Brain–computer interface control with artificial intelligence copilots(和訳:人工知能副操縦士による脳コンピューターインターフェース制御)
著者:Johannes Y. Lee, Sangjoon Lee, Abhishek Mishra, Xu Yan, Brandon McMahan, Brent Gaisford, Charles Kobashigawa, Mike Qu, Chang Xie & Jonathan C. Kao

要旨(Chromeによる和訳)
運動脳コンピュータインターフェース(BCI)は、麻痺のある人の移動とコミュニケーションを支援するために神経信号をデコードします。過去20年間で重要な進歩があったにもかかわらず、BCIは臨床実現への大きな障害に直面しています。それは、BCIのパフォーマンスがコストとリスクを大幅に上回らなければならないということです。BCIのパフォーマンスを大幅に向上させるために、人工知能(AI)副操縦士がBCIユーザーと協力してタスク目標を達成する共有自律性を使用します。私たちは、脳波信号をデコードする非侵襲性BCIシステムでこのAI-BCIを実証します。まず、畳み込みニューラルネットワークとReFITのようなカルマンフィルターを使用したハイブリッド適応デコード手法を提供し、健常者と麻痺のある参加者が、デコードされた脳波信号を介してコンピューターのカーソルとロボットアームを制御できるようにします。次に、カーソル制御タスクとロボットアームのピックアンドプレースタスクでBCIユーザーを支援する2つのAI副操縦士を設計します。我々は、麻痺のある被験者がカーソル操作においてターゲットヒット率を3.9倍向上させ、ロボットアームを制御してランダムなブロックをランダムな場所に順次移動させるというタスクをAI-BCIによって実現できることを実証しました。これはAIコパイロットなしでは不可能なタスクです。AIコパイロットの性能向上に伴い、共有自律性を備えたBCIはより高い性能を発揮する可能性があります。

関連情報
掲載誌:NATURE NEWS
掲載日:02 September 2025
表題:AI-powered brain device allows paralysed man to control robotic arm ―
The human user and AI have shared autonomy and constantly interact to complete tasks.
(和訳:AI搭載の脳デバイスで麻痺の男性がロボットアームを制御 ―
人間のユーザーと AI は自律性を共有し、タスクを完了するために常に相互作用します。)
著者:By Rachel Fieldhouse
研究者が、同僚が着用している脳コンピューターインターフェースヘルメットの電極に導電性ジェルを塗布しています。非侵襲性脳デバイスの性能は、AIと組み合わせることで向上する可能性がある。写真:ジャン=ピエール・クラトット/AFP via Getty

部分麻痺の男性が、人工知能(AI)によって部分的に制御される非侵襲性の脳デバイスを使用することで、ロボットアームを操作することに成功したという研究報告。AI搭載デバイスを使用することで、男性は画面操作による作業において、デバイス単体で使用した場合よりも4倍の精度で作業を行うことができた。

(2)ジェネレーティブトランスフォーマーでヒト疾患の自然史を学ぶ
Nature article open access
Published: 17 September 2025
Learning the natural history of human disease with generative transformers(和訳:ジェネレーティブトランスフォーマーでヒト疾患の自然史を学ぶ)
Artem Shmatko, Alexander Wolfgang Jung, Kumar Gaurav, Søren Brunak, Laust Hvas Mortensen, Ewan Birney, Tom Fitzgerald & Moritz Gerstung

要旨(Chromeによる和訳、脚注番号削除)
ヘルスケアにおける意思決定は、患者の過去と現在の健康状態を理解し、将来の経過を予測し、最終的には変えることに依存しています。人工知能 (AI) 手法は、大規模な健康記録コーパスから病気の進行パターンを学習することにより、このタスクを支援することが期待されています。ただし、その可能性は大規模に十分に調査されていません。ここでは、GPT 6 (生成的事前学習済みトランスフォーマー) アーキテクチャを変更して、人間の病気の進行と競合する性質をモデル化します。このモデル Delphi-2M を 40 万人の英国バイオバンク参加者のデータで学習し、パラメーターを変更せずに 190 万人のデンマーク人からの外部データを使用して検証します。Delphi-2M は、各個人の過去の病歴を条件として、既存の単一疾患モデルに匹敵する精度で、1,000 を超える疾患の発生率を予測します。 Delphi-2Mの生成的な性質は、将来の健康状態を総合的に推定するサンプリングも可能にし、最大20年間の潜在的な疾病負担について有意義な推定値を提供し、実際のデータを見たことのないAIモデルのトレーニングを可能にします。説明可能なAI手法は、Delphi-2Mの予測に関する洞察を提供し、疾病の章内および章間における併存疾患のクラスターと、それらが将来の健康に及ぼす時間依存的な影響を明らかにするだけでなく、トレーニングデータから学習されたバイアスも明らかにします。要約すると、トランスフォーマーベースのモデルは、予測的および生成的な健康関連タスクに適しており、人口規模のデータセットに適用可能であり、疾病イベント間の時間的依存関係に関する洞察を提供し、個人別の健康リスクの理解を向上させ、精密医療アプローチに情報を提供できる可能性があります。

関連情報
掲載誌:NATURE NEWS
掲載日:17 September 2025
表題:Which diseases will you have in 20 years? This AI accurately predicts your risks
A modified large language model called Delphi-2M analyses a person’s medical records and lifestyle to provide risk estimates for more than 1,000 diseases.
(和訳:20年後、あなたはどんな病気にかかっているでしょうか?このAIはあなたのリスクを正確に予測します。
Delphi-2M と呼ばれる改良された大規模言語モデルは、個人の医療記録とライフスタイルを分析し、1,000 を超える病気のリスク推定値を提供します。)
著者:By Gemma Conroy
英国の40万人のデータで訓練された人工知能システムは、20年間でがんやその他の多くの病気を発症する可能性を推定できる。写真:ブルックス・クラフト/コービス/ゲッティ

新しい人工知能 (AI) ツールは、1,000 種類以上の病気の発症リスクを予測することができ、場合によっては数十年先の予測も提供します。

(3)ゲノム言語モデルを用いた新規バクテリオファージの生成設計
掲載誌:bioRxiv
公開日:Posted September 17, 2025.
表題:Generative design of novel bacteriophages with genome language models
(和訳:表題:ゲノム言語モデルを用いた新規バクテリオファージの生成設計)
著者:Samuel H. King、Claudia L. Driscoll、David B. Li、Daniel Guo、Aditi T. Merchant、 Garyk Brixi、 Max E. Wilkinson、 Brian L. Hie
doi: https://doi.org/10.1101/2025.09.12.675911

要旨(Chromeによる和訳)
多くの重要な生物学的機能は、単一の遺伝子からではなく、ゲノム全体にコード化された複雑な相互作用から生じる。ゲノム言語モデルは生物学的システムを設計するための有望な戦略として浮上してきたが、ゲノム全体のスケールで機能的な配列を生成する能力は未だ検証されていない。本稿では、生存可能なバクテリオファージゲノムの初めての生成設計を報告する。我々は最先端のゲノム言語モデルであるEvo 1およびEvo 2を活用し、溶解ファージΦX174を設計テンプレートとして用いて、現実的な遺伝子構造と望ましい宿主指向性を持つ全ゲノム配列を生成した。AI生成ゲノムの実験的試験により、進化的に大きな新規性を持つ16個の生存可能なファージが得られた。クライオ電子顕微鏡法によって、生成されたファージの1つが、そのカプシド内で進化的に遠いDNAパッケージングタンパク質を利用していることが明らかになった。複数のファージが、増殖競争および溶解速度論においてΦX174よりも高い適応度を示している。生成されたファージのカクテルは、3種類の大腸菌株におけるΦX174耐性を迅速に克服し、急速に進化する細菌病原体に対するファージ療法の設計における本アプローチの潜在的な有用性を実証しました。本研究は、多様な合成バクテリオファージの設計のための青写真を提供し、より広くは、ゲノムスケールにおける有用な生体システムの生成設計の基盤を築くものです。

関連情報
掲載誌:NATURE NEWS
掲載日:19 September 2025
表題:World’s first AI-designed viruses a step towards AI-generated life
Scientists used AI to write coherent viral genomes, using them to synthesize bacteriophages capable of killing resistant strains of bacteria.
(和訳:世界初のAI設計ウイルスはAI生成生命への一歩
科学者たちは AI を使って一貫性のあるウイルスゲノムを記述し、それを使って耐性菌株を殺すことができるバクテリオファージを合成しました。
著者:By Katie Kavanagh
T2 ファージに群がった大腸菌 B 細胞の断面を示す、色を強調した透過型電子顕微鏡写真。
AI設計のバクテリオファージは宿主の細菌に感染し、殺傷する能力を持っていた。クレジット:リー・D・サイモン/サイエンス・フォト・ライブラリー

(4)頭の中にAIを埋め込む「テレパシーに近い」デバイス
Xへの投稿(2025年9月8日)
alterego
@alterego_io (動画)https://x.com/alterego_io/status/1965113585299849535
Introducing Alterego: the world’s first near-telepathic wearable that enables silent communication at the speed of thought.
Alterego makes AI an extension of the human mind.
We’ve made several breakthroughs since our work started at MIT.
We’re announcing those today.

Alterego のご紹介: 思考のスピードで静かなコミュニケーションを可能にする、世界初のテレパシーに近いウェアラブルです。
Alterego は AI を人間の心の延長にします。
MIT で私たちの研究が始まって以来、私たちはいくつかの進歩を遂げてきました。
本日はそれらを発表します。

関連情報
掲載誌:NATURE NEWS
掲載日:18 September 2025
表題:The ‘near-telepathic’ device that puts AI in your head
AlterEgo’s neural-interface device is non-invasive and is being tested in people with multiple sclerosis and motor neuron disease.
(和訳:頭の中にAIを埋め込む「テレパシーに近い」デバイスー
AlterEgo の神経インターフェース デバイスは非侵襲性であり、多発性硬化症および運動ニューロン疾患の患者を対象にテストされています。)
著者:By Chris Simms
アルターエゴの最高経営責任者、アルナブ・カプール氏がウェアラブルデバイスのデモンストレーションを行っている。提供:アルターエゴ

ウェアラブルデバイスは、「アレクサ、今何時?」と声に出して言うことを過去のものにするかもしれない。人工知能(AI)ニューラルインターフェース「AlterEgo」は、ユーザーが心の中で言葉を発するだけで、静かにコミュニケーションをとれるようにする。耳に装着するこのデバイスは、インターネットとのリアルタイムコミュニケーションを通じて日常生活を便利にする。「共有したい考えに対してだけテレパシーの力を与えてくれます」と、マサチューセッツ州ケンブリッジに拠点を置くAlterEgoのCEO、アーナブ・カプール氏は語る。カプール氏は9月8日にこのデバイスを発表した。

(5)嘘をつき、騙し、殺人を企てる AI モデル: LLM は実際どれほど危険なのか?
最後の話題は、大規模言語モデルLLMの危険性に関するものです。

掲載誌;NATURE NEWS FEATURE
掲載日;08 October 2025
表題;AI models that lie, cheat and plot murder: how dangerous are LLMs really?
(和訳:嘘をつき、騙し、殺人を企てる AI モデル: LLM は実際どれほど危険なのか?)
Tests of large language models reveal that they can behave in deceptive and potentially harmful ways. What does this mean for the future?
(和訳:大規模言語モデルのテストにより、それらが欺瞞的かつ潜在的に有害な動作をする可能性があることが明らかになりました。これは将来にどのような意味を持つのでしょうか?)
著者;Matthew Hutson
        イラスト: アナ・コヴァ

**以下、記事の初めの部分からの抜粋です**

AIは殺人を行うことができるのか?

これは、 AI企業アンスロピックが6月に発表した報告書を受けて、一部の人工知能(AI)専門家が検討してきた疑問です。チャットボットの頭脳である大規模言語モデル(LLM) 16種類をテストした研究チームは、最も人気のあるAIの一部が仮想環境において、明らかに殺人的な指示を出すことを発見しました。AIは、自分たちを交代させようとしていた架空の幹部を殺害するような行動をとったのです。

これは、法学修士(LLM)による悪質な行為の一例に過ぎません。他のいくつかの研究や事例では、AIが開発者やユーザーに対して「陰謀を企てる」、つまり自身の利益のために密かに戦略的に不正行為を行っていることが示されています。AIは指示に従っているふりをしたり、自己複製を試みたり、恐喝を脅迫したりすることさえあります。
(以下、続く)

 

2-3)岐阜大学医学部下畑先生の最新医学情報(2025年10月)
・レビー小体型認知症も検査だけで診断できる時代に入る!?
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年10月4日のFB投稿です**
脳脊髄液αシヌクレイン・シーズ増幅アッセイ(αSAA)は,レビー小体型認知症(DLB)の診断における大きな転換点になるかもしれません.スペインの物忘れ外来に通院した640名(DLB 92例,アルツハイマー病;AD 337例など)を対象に,脳脊髄液αSAAの診断精度とADにおけるαシヌクレイン合併病理を評価しています.この結果,αSAAはDLBに対し感度95.7%,特異度93.2%,全体診断精度93.6%(!)という高い成績を示しました.図1は各診断におけるαSAA陽性率を示したものです.健常対照(CU)は0%,非神経変性認知障害(NNCI)は1%,前頭側頭葉変性症(FTLD)は5.1%,ADは9.5%,DLBは95.7%が陽性です.つまりDLBで高率に陽性となる一方,ADやFTLDでは少数にとどまることが理解できます.先日,ADのタウバイオマーカーによる診断の話題をご紹介しましたが(https://pkcdelta.hatenablog.com/entry/2025/08/27/052343),DLBも検査だけで診断できる時代に入りそうな様相です.
もう1点,気になったのはAD患者の9.5%にαシヌクレイン合併病理が示唆される点です.このような症例では幻視やREM睡眠行動異常症などDLB的な臨床症候の頻度が増え,かつAPOE ε4保有率の上昇,血漿p-tau217やGFAPの上昇といった特徴的なプロファイルを示すことも明らかにされました.気になったのは,なぜAPOE ε4保有率が上昇するのかですが,ε4を持つことは全身性かつ疾患非依存的な炎症状態をもたらす「免疫的背景因子」である可能性が指摘されており(https://pkcdelta.hatenablog.com/entry/2025/08/04/062124),複数のタンパクを巻き込んだco-pathologyを来すものと推測されます.
さて話題は戻ってDLBの検査による診断に関して,著者らは「検査だけでDLBを確定診断できるわけではない」と強調しています.その理由として,DLBでもαSAA陰性例が存在すること,本研究で病理解剖による確認がなされていないこと,共病理の存在によって臨床症状が純粋型からずれ,より多彩で複雑な臨床像になりうることを挙げています.やはり脳脊髄液αSAA(図2)の結果は,臨床所見や画像検査と総合して解釈する必要があります.とは言え,脳神経内科医が不足する地域などでは強力な診断補助ツールになるものと考えられます.
Esteller-Gauxax D, et al. α-Synuclein Seed Amplifications Assay in a Cohort With Cognitive Impairment. Neurology. 2025;105:e214040. doi.org/10.1212/WNL.0000000000214040
追記;DLB 92例のうち陰性はわずか4例(4.3%)で,その多くがCDR 0.5で軽症かつ発症早期であり,臨床症状も非典型(RBDが少ない)であったと記載されています.よって発症早期から高率に陽性となりますが,病理分布が限局している例では陰性になることもあるようです.

・筋萎縮性側索硬化症に潜む免疫の異常:原因遺伝子産物C9orf72が自己免疫の標的に!!
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年10月6日のFB投稿です**
筋萎縮性側索硬化症(ALS)はこれまで神経細胞の変性や病因タンパクの蓄積に注目して研究されてきましたが,近年は「免疫系の関与」が新たな焦点となっています.最新のNature誌に,ALSにおける自己免疫反応の存在を初めて明確に示した重要な報告がなされています.
研究は,アメリカのLa Jolla Institute for Immunologyを中心とする国際共同チームによって行われました.ALS患者40名と健常対照28名の末梢血を解析し,ALSで遺伝子変異が報告されているTDP-43,SOD1,そしてC9orf72という3種類のタンパク質に対するT細胞応答を比較しました.その結果,ALS患者ではC9orf72に対してのみ著明な免疫応答がみられ,健常者の約4倍の反応を示しました(図1).これらの反応は主にCD4陽性T細胞によって引き起こされ,炎症を抑えるIL-5やIL-10といったサイトカインが多く放出されていました(図2). ALS群でIL-5およびIL-10の産生が優勢で,炎症性サイトカインであるIFNγの割合が減少していることが明確に示されています.
また,C9orf72遺伝子に変異(6塩基リピートの異常伸長)をもつ患者では,変異をもたない患者よりもC9orf72を認識するT細胞が強く活性化し,IL-10を多く分泌する(図3左).さらに,C9orf72を標的とするT細胞のIL-10応答が強いALS患者ほど,疾患の進行が緩やかで長く生きる傾向にあることが示されました(図3右).
研究チームは,C9orf72全体に複数のエピトープが存在することも突き止めました.特にアミノ酸41〜95,266〜295,361〜445の領域で免疫原性が高く,これらのペプチドは多くのHLAクラスII分子に結合できる「プロミスキュア(promiscuous)」=「多くのHLA分子に結合できる性質」をもつことが示されました.これは,多くの人でC9orf72が免疫の標的となり得ることを意味します.さらに,パーキンソン病やアルツハイマー病患者でもC9orf72に対する免疫反応は見られましたが,ALSとは異なり炎症性のIFNγ反応が優位でした.この違いは,疾患ごとに免疫系の反応の方向性が異なる可能性を示唆しています.
この研究は,ALSが単なる神経変性疾患ではなく,免疫系の異常を伴う自己免疫性疾患的な側面をもつことを初めて証明したものです.特に,抗炎症性IL-10応答が強い患者の予後が良好であったことから,炎症と制御のバランスがALSの進行速度を決定する鍵であることが示唆されます.将来的には,C9orf72に特異的な免疫反応を抑える抗原特異的Treg細胞療法など,免疫を標的とした新たなALS治療法の開発が期待されます.
つまりC9orf72に対する自己免疫反応は,ALSの中核的変化(C9orf72異常・タンパク蓄積)に対して二次的に起こり,その免疫反応の質(炎症性か制御性か)が,疾患の進行速度や予後を左右している可能性があると考えるのが妥当ではないかと思います.すなわち「発症を促す免疫」ではなく,「症候の進行に影響する免疫」と言えるのではないかと思います.
Michaelis T, et al. Autoimmune response to C9orf72 protein in amyotrophic lateral sclerosis. Nature. Published online 2025. doi.org/10.1038/s41586-025-09588-6

・アルツハイマー病発症前の低レベルのAβ蓄積はむしろ脳にとってむしろ良いこと!?―ヒト・コネクトーム・プロジェクト研究―
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年10月9日のFB投稿です**
先日のNHKの番組内(https://pkcdelta.hatenablog.com/entry/2025/09/07/075304)で,アルツハイマー病(AD)の病因蛋白とされるアミロイドβ(Aβ)には善玉としての働き(ヘルペスウイルスに対する防御作用)があることが紹介されました.今回,Journal of Neurochemistry誌に米国ミネソタ大学から,Human Connectome Projectの一貫として,画像解析からもAβは善玉である可能性が報告されました.
60歳以上の認知機能が正常な35名を対象に,アミロイド PETによるアミロイドβ沈着量と詳細な認知機能検査,身体指標,および多面的なMRI指標との関連を解析した研究です.PETではAβ陽性が11例,陰性が24例でした.陽性例も蓄積は軽度で,AD患者に見られるような高度の蓄積ではありませんでした(図1左).
まず分かったことは,Aβ沈着はアミロイド前駆タンパク(APP)の転写パターンとの対応が見られず,正の相関を示したのは海馬傍回のみでした.つまりAβはどうも局所(蓄積した場所)で産生されるのではなく,他の領域から移動・拡散してきた可能性(!)が示唆されます.またAβ蓄積量は年齢や認知・体力指標と負の関係を示さず,むしろBMI・握力・認知機能の得点と弱い正の相関を示した!よって蓄積している方が良さそうということです.
さらにMRI指標との関連では,微細構造の健全性指標(FAやT1w/T2w比)や脳血流(CBF)はAβ量と正の相関を示し,Aβが多いほど組織構造は健全で,血流が多い増加という結果でした(図1右).逆に組織障害を示唆する拡散指標(MD, ODI, WVF)は負の相関を示しました.つまりAβが多い人ほど水の動きが制限され,組織構造がしっかりしているという傾向を認めました.以上より認知機能が正常な人ではAβが神経毒性を持たない可能性が示唆されました.「Aβ=神経毒」という定説を覆すもので,低レベルのAβ蓄積が脳にとって必ずしも悪いものではない,むしろ善玉である可能性を示しています.
そうなると,アミロイドβ抗体薬の効果を最大限に発揮させるために,発症前から治療を開始するというアイデアは,むしろ逆効果となる可能性があります.しかしこの点について,著者らは断定することはできないと言っています.つまりどこかのタイミング(もしくは閾値)で,Aβが病的に転じるか,あるいは防御的役割が破綻するという可能性があるためです(図2).今後はより大規模かつ長期の追跡研究やタウ測定を組み合わせた検証が必要と考えられます.いずれにせよ,発症前,より早期の抗アミロイドβ療法は慎重であるべきと考えられます.
Filip P, et al. Clinical and MRI Correlates of β-Amyloid Load Inconsistent With Its Presumed Neurotoxicity in Cognitively Healthy Ageing. Journal of Neurochemistry. 2025;169:e70241. https://doi.org/10.1111/jnc.70241

・知っておくべき睡眠医学の最前線@『BRAIN and NERVE』2025年10月号
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年10月11日のFB投稿です**
特集テーマとして「脳神経内科と睡眠医学」を企画いたしました(https://amzn.to/4nLZPXZ).現代の臨床現場では,睡眠の質が神経疾患の発症や経過に密接に関わることが明らかとなりつつあります.一方,日本では睡眠医学を専門的に扱う神経内科医がまだ少なく,診療や教育の両面で体系的な知識の共有が求められています.私は以前,頑張って日本睡眠学会総合専門医の資格を取ったのですが,睡眠医学の知識が役立つ臨床の場面はとても多いです.本特集では,睡眠の基礎神経科学から臨床応用までを幅広く取り上げ,脳神経内科医が日常診療で直面する課題に役立つ内容を目指しました.
巻頭の鼎談(写真)では,私が司会を担当し,アジア睡眠学会会長の井上雄一先生,日本神経学会睡眠セクション・チーフの鈴木圭輔先生とともに「睡眠医学の診療と教育」について議論しました(写真).睡眠医学の重要性と脳神経内科との関連,専門医の地域偏在・不足という問題点,社会・行政経も提言,若手医師へのメッセージなど,非常に勉強になり,かつ読み応えのある内容になっていますので,ぜひご一読いただければと思います.
続く総説では,櫻井武先生らによるレム睡眠制御神経回路の最新知見,酒井紀彰先生による「睡眠と脳脊髄液」の解説など,基礎研究と臨床の橋渡しとなるテーマを取り上げています.また,認知症・脳血管障害・自己免疫性脳炎・多系統萎縮症など,神経疾患と睡眠障害の関連を多角的に検討した論文を収録し,睡眠障害が神経疾患の病態や予後にいかに影響するかを明らかにしています.さらに,レム睡眠行動異常症やレストレスレッグス症候群,ナルコレプシーなど,神経内科医が見逃してはならない疾患群についても,第一線の専門家による最新の解説が並びます.
本特集を通じて,睡眠を「神経機能の重要な指標」として捉える視点が広がり,臨床神経学の新たな展開につながれば幸いです.ぜひ,多くの先生方にお読みいただければと思います!
収録原稿一覧
• 【鼎談】睡眠医学の診療と教育(井上雄一×鈴木圭輔×下畑享良)
• レム睡眠を制御する神経回路メカニズム(渡邉綾乃,櫻井 武)
• 睡眠と脳脊髄液(酒井紀彰)
• 知っておくべき睡眠関連疾患の評価法(小栗卓也)
• 認知症と睡眠──双方向的関係について(三島和夫)
• 自己免疫性脳炎と睡眠障害(大野陽哉,木村暁夫,下畑享良)
• 脳血管障害と閉塞性睡眠時無呼吸症候群(赤岩靖久,宮本智之)
• 多系統萎縮症と睡眠関連呼吸障害(中山秀章)
• 神経疾患と特発性レム睡眠行動異常症(西川典子)
• レム睡眠行動障害以外の睡眠時随伴症(野村哲志)
• レストレスレッグス症候群(坪井義夫)
• ナルコレプシーの病態機序(小野太輔,神林 崇)
• 神経疾患による症候性ナルコレプシー(鈴木圭輔,藤田裕明,高橋嶺馬,柏木誠史)
『BRAIN and NERVE』Vol.77 No.10(2025年10月号)
特集:脳神経内科と睡眠医学
https://amzn.to/4nLZPXZ
https://www.igaku-shoin.co.jp/journal/detail/41670

・お気に入りの「ハダカデバネズミ」の長寿の秘密,ついに解明!!ヒトの不老に道を開くか?
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年10月12日のFB投稿です**
ハダカデバネズミという小さな地下げっ歯類は,生物学の常識を覆す不思議な生き物です.体重わずか数十グラムにもかかわらず,寿命は37年に達し,マウスの10倍以上です.しかも老化に伴う死亡率の上昇がほとんど見られず,自然発症のがんもほぼ存在しません.酸素が乏しい地下トンネルで暮らすために,低酸素でも代謝を保つ能力をもちます.私は脳卒中の基礎研究を行っていたので,低酸素状態に強いこのネズミに高い関心を持っていました(→2017年のブログ「ハダカデバネズミの特殊能力と脳梗塞治療」を参照).後輩の池田哲彦先生が誕生日プレゼントに贈ってくださったハダカデバネズミのぬいぐるみを今も大切に部屋に飾っています.

さてこの生物の長寿の秘密をめぐっては,これまでにさまざまな仮説が提唱されてきましたが,2025年10月のScience誌に掲載された中国・同済大学のJiangらの論文は,ついにその分子基盤の一端を明らかにしました.研究チームは,DNA損傷を感知する酵素cGAS(cyclic GMP–AMP synthase)に注目しました.
通常,ヒトやマウスのcGASは,細胞の外から入り込んだDNAを感知して免疫反応を起こす「センサー」として働きます.ところが,最近の研究で,この酵素の一部は核の中にも存在し,DNAの損傷修復にも関わっていることがわかってきました.しかし意外なことに,ヒトやマウスのcGASは修復を助けるのではなく,相同組換え修復という主要なDNA修復メカニズムを抑えてしまうのです.その結果,DNAの安定性が損なわれ,老化やがんの一因になると考えられています.つまり,ヒトを含む哺乳類では,cGASはDNA修復を妨げ老化を招く酵素として働いているのです.
これに対し,ハダカデバネズミでは,cGASのC末端にある4つのアミノ酸(S463,E511,Y527,T530)が進化の過程で置換されていました.このわずかな構造変化が,酵素の働きを根本から変えていたのです.ヒトやマウスでは,cGASはDNA損傷のあと一時的に核内に移動しますが,すぐにクロマチンから離れ,修復を妨げます.一方,ハダカデバネズミのcGASはDNA損傷後も長時間クロマチンにとどまり,DNA修復因子であるFANCIやRAD50を引き寄せて修復を促進する足場として働いていました.つまり,この4つのアミノ酸の置換によって,cGASは「DNA修復を妨げる酵素」から「DNA修復を助ける酵素」へと働きが逆転していたのです.
この分子レベルの変化は,ほかの生物にも明確な効果をもたらしました.果実ハエ(みばえ)にハダカデバネズミ型のcGASを導入すると寿命が延び,マウスにAAVベクターで導入すると,フレイル指数が低下し,白髪や臓器老化が軽減しました.血中の炎症マーカーであるIL-6やIgGも減少し,肝臓や腎臓では老化細胞が減少していました.これらの効果は,4つのアミノ酸をヒト型に戻すと消失したことから,進化的に獲得されたこの分子改変こそが長寿の鍵であることが示されました.
ハダカデバネズミは,上述したようにがん抵抗性,低酸素耐性,社会性行動,痛覚鈍麻など,多くの「異端の哺乳類的特徴」を併せ持ちます.今回の研究は,その生物学的異端性の根底に,DNA修復を最適化する分子進化があることを示した点で画期的だと思います.ヒトの不老研究においても,この小さなげっ歯類が大きなヒントを与えてくれるかもしれません.
Chen Y, et al. A cGAS-mediated mechanism in naked mole-rats potentiates DNA repair and delays aging. Science. 2025;390:eadp5056. doi.org/10.1126/science.adp5056

・頭痛は単なる血管拡張や筋緊張ではなく,神経・血管・脳内ネットワークが連鎖的に反応して生じる!
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年10月15日のFB投稿です**
頭痛の背後にあるしくみはとても複雑であることが分かりつつあります.Brain誌に発表された総説は,片頭痛,群発頭痛,発作性片側頭痛(Paroxysmal hemicrania)・持続性片側頭痛(hemicrania continua),そして後頭神経痛について,「どのように痛みが生まれるのか」を分子レベルから脳のネットワークまで総合的に議論したまさに力作です.「なるほど!」と非常に勉強になりました.
総説では,まず頭痛の多くが「三叉神経・血管系」という共通の回路で説明できることを示しています.頭部や顔面の血管周囲に分布する三叉神経の終末が刺激されると,CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド),PACAP,VIP,サブスタンスPなどの神経ペプチドや,グルタミン酸,セロトニンといった神経伝達物質が放出され,血管を拡張します.その結果,周囲に炎症が起き,神経がさらに興奮して痛みの信号を強めてしまいます.これを「神経血管性炎症」と呼びます.この反応は一度始まると連鎖的に広がり,脳幹にある三叉神経尾側核(trigeminal nucleus caudalis;TNC=三叉神経脊髄路尾側亜核)から視床,大脳皮質へと痛みの情報が伝えられます.TNCは頭痛の病態の中枢構造であり,これらの神経ペプチドの働きを統合し,片頭痛や群発頭痛などさまざまな頭痛疾患をつなぐ共通の「中継ハブ」として機能しています.
また近年のMRI研究では,頭痛を「脳全体のネットワークの異常」として理解する動きが進んでいるようです.例えば片頭痛では,痛みを感じる帯状回,感情を処理する扁桃体,そして視覚をつかさどる後頭葉との結びつきが過剰になります.一方,群発頭痛では,体内時計を制御する視床下部の活動が異常化し,発作の周期性や季節性に関与しています.さらに頭痛患者では,脳が「休んでいるとき」に働くネットワークにも異常が見られます.たとえば,思考の背景活動を担うデフォルトモードネットワーク,刺激の重要性を判断するサリエンスネットワーク,そして体の感覚や運動を調整する感覚運動ネットワークが,それぞれ過剰に結びついたり,逆に連携が弱まったりしていることが報告されています.こうしたネットワークの異常は,痛みに対する過敏さだけでなく,注意の集中困難や倦怠感,気分の変化など,頭痛に伴う多様な全身症状の背景を説明する手がかりになります.
図は頭痛性疾患のメカニズムをまとめた模式図です.大きく5つの経路で構成されています.これらは互いに連動し,頭痛の痛み・自律神経症状・周期性・前兆などを生み出します.
1.三叉神経終末から三叉神経尾側核(TNC)への経路(ピンク)
頭部や硬膜の血管周囲に分布する三叉神経の末端(V1-3)が刺激されると,CGRPやPACAP,サブスタンスPなどの神経ペプチドが放出され,血管拡張と炎症を引き起こす.この刺激は三叉神経節(TG)を経てTNCに伝わり,頭痛の痛み信号の起点となる.
2.TNCから視床・皮質への上行経路(黄色~灰色)
TNC(二次ニューロン)が交叉して上行し,視床(thalamus)を介して一次体性感覚野(SI),二次体性感覚野(SII),島皮質(INS),前帯状皮質(ACC),および背外側前頭前野(dlPFC)に信号を送る.SIとSIIは痛みの感覚的側面を,INSとACCは情動的側面を処理し,dlPFCは痛みに対する注意・認知・抑制制御を担う.これらの領域が連動して活動することで,痛みが意識的に知覚され,中枢感作が形成される.
3.三叉神経・自律神経反射経路
TNCの活動が上唾液核(SSN)を介して翼口蓋神経節(SPG)に伝わり,涙腺や鼻腺が刺激される.これにより涙や鼻閉といった自律神経症状が起こり,特に群発頭痛や片側頭痛性疾患に特徴的である.
4.視床下部・概日リズム経路
視床下部の視交叉上核(SCN;図中になし)が網膜からの光刺激を受け取り,SSNやTNCの活動を調整する.この経路は発作の時間帯や季節性を決める体内時計の中枢として働き,群発頭痛の周期性を説明する.
5.皮質拡延性抑制(CSD)経路
視床からの入力や皮質の過興奮により,後頭葉を起点に神経脱分極の波が広がり,一過性の血流変化とともに前兆(アウラ)を引き起こす.CSDは三叉神経系を再刺激し,CGRP放出を促すことで痛みを増幅する.
疾患ごとに分子・ネットワークの視点から考えると,片頭痛では後頭葉で起こるCSDが前兆の原因となり,CGRPや一酸化窒素(NO)の放出が痛みを増幅します.群発頭痛では視床下部の異常活動がリズム的発作を引き起こし,PACAPやCGRPの変動を伴います.発作性片側頭痛・持続性片側頭痛では,これらの経路が慢性的に刺激されており,インドメタシンが有効なのは神経炎症の経路の抑制を介していると考えられます.後頭神経痛では末梢神経の圧迫や感作が痛み信号を三叉神経系に送り込み,中枢での感作とネットワーク異常を引き起こします.このように,すべての頭痛は共通の回路を持ちながらも,関与する分子・領域・ネットワークの組み合わせの違いで症状が異なるのです.
これらの研究の成果は,新しい治療法の開発にも直結しています.CGRP関連抗体はこの経路を直接標的にし,発作頻度を減らす効果が示されています.また迷走神経刺激(nVNS)や後頭神経刺激(ONS)といった神経刺激療法は,脳幹や視床を介して三叉神経系の過剰な興奮を抑制し,痛みネットワーク全体のバランスを整えることが目的です.これらの治療法は「末梢から中枢ネットワークを調整する」アプローチであり,神経活動の連鎖を再同期させることで過敏な状態をリセットする仕組みと考えられています.
以上のように,頭痛はもはや単なる血管拡張や筋緊張ではなく,神経・血管・脳内ネットワークが連鎖的に反応する「脳全体の過敏状態」としてとらえられる時代になったと言えるのだと思います.
Kollenburg L, et al. Bridging the gap: molecular mechanisms, regional activity, and connectivity in headache disorders. Brain. 2025; doi.org/10.1093/brain/awaf361

・パーキンソン病は地球規模の環境病である―三大原因としての農薬,トリクロロエチレン,PM2.5―
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年10月18日のFB投稿です**
パーキンソン病(PD)の患者数は世界的に急増しており,いまやパンデミックと呼ぶべき状況にあります.その要因の多くは遺伝ではなく環境にあると考えられています.Lancet Neurology 誌最新号に掲載された米国ロチェスター大学のDorsey教授らによる総説は,PDの発症に関わる主要な環境毒性物質とその予防の可能性について論じています.とくに3つの環境要因が問題であると指摘しています.
第1は農薬です.パラコート,ロテノン,有機塩素系殺虫剤などであり,パラコート散布地域に住む人の発症リスクは2倍に上昇するそうです.ロテノンはミトコンドリア複合体Iを阻害してドパミン神経を選択的に障害します.胎児期や乳児期の曝露によるエピジェネティック変化が後年の神経変性を誘発する可能性も指摘されています.図1は,2000年から2020年にかけての世界の農薬使用量の変化を示しています.全体としてなんと約300%の増加がみられ,特に南米,アジア,アフリカで顕著です.日本も増加傾向にあり,欧州諸国のような削減政策は十分に進んでいません.
第2はトリクロロエチレン(TCE)およびパークロロエチレン(PCE)です.これらはドライクリーニングや脱脂剤として長年使用されてきた有機溶剤です.米海兵隊キャンプ・ルジューン基地では,これらの化学物質を含む汚染水への曝露歴をもつ兵士のPD発症率が70%高く,平均2年間の短期間曝露であっても,約34年の潜伏期間を経て発症したと報告されています.TCEはミトコンドリア障害やLRRK2キナーゼの異常活性化を引き起こし,吸入曝露では少量でも黒質ドパミン神経変性を生じます.
第3は大気汚染です.PM2.5への曝露とPDリスクの上昇は,カナダ,韓国,スイス,英国などの研究で確認されています.PM2.5は嗅神経経路から脳内に侵入し,酸化ストレスや炎症,αシヌクレインの線維化を誘発します(ブログ参照;https://pkcdelta.hatenablog.com/entry/2025/09/09/042758).図2は「2019年の世界PM2.5曝露マップ」で,50μg/m³を超える濃度の地域がアジアやアフリカを中心に広がっています.世界人口の99%がWHO基準(年平均5μg/m³未満)を超える空気を吸っており,日本の平均値は10〜15μg/m³と欧米(5μg/m³前後)より明らかに高く,「健康に悪い空気」を吸っている国の一つです.著者らは,この曝露こそがPDが最も急速に増加している神経疾患となった原因だと指摘しています.
これら2つの図は,「PDは地球規模の環境病である」という主張を明確に裏づけています.日本も例外ではなく,農薬使用量と大気汚染の両方が高い水準にあり,将来的な神経疾患増加リスクを抱えています.著者らは,吸入経路の重要性にも触れています.嗅球から病変が始まることが多い点は,吸入毒性物質の侵入経路と一致していますし,胎児期や乳児期の曝露,職業性曝露,遺伝的素因との相互作用などがリスクを増幅すると考えられます.
予防策はあるのでしょうか?防護具の使用,汚染の監視と是正,安全な代替物質の導入により,曝露を減らすことは可能です.また現状では,研究資金のほとんどが治療研究に偏り,予防研究への投資はわずか2%にとどまっているそうです.Dorsey教授らは,予防原則を政策に組み込み,パラコートやTCEなど明らかに有害な化学物質を段階的廃止すべきだと訴えています.つまりPDは「予防可能な疾患」であり,原因物質への曝露を減らすことができれば,つぎの世代をこの疾患から守ることができる――それが著者らの強いメッセージです.
Ray Dorsey E, et al. Environmental toxicants and Parkinson’s disease: recent evidence, risks, and prevention opportunities.Lancet Neurology 2025; 24: 976–986.https://www.thelancet.com/…/PIIS1474-4422(25…/fulltext

関連情報
10月30日のFB投稿(岐阜大学脳内抄読会 第99回)で、「歩行中のUターン速度はパーキンソン病発症の予測因子となる」という面白い論文を紹介されています。

・アデュカヌマブによるアミロイドβ除去は脳表近くに限られている!
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年10月20日のFB投稿です**
アデュカヌマブは,アルツハイマー病に対してアミロイドβ(Aβ)を標的にした疾患修飾療法として開発されたモノクローナル抗体です.2015年にBiogen社とEisai社が共同で臨床試験を開始し,Aβプラークを大幅に減少させることがPETで確認されました.臨床的な認知機能改善効果は一貫しなかったものの,一部のサブグループで若干の改善効果が示されたことから,Biogen社は2021年に米国FDAへ承認申請を行い,同年6月に条件付きで迅速承認を受けました.ところが,その有効性に関して国内外で強い議論を呼び,副作用としてのARIAの頻度の高さも問題となり,最終的にBiogen社は2024年1月に販売を終了し,開発を打ち切りました.その後に登場したレカネマブやドナネマブは,より選択性が高く副作用の少ない抗体として設計されていますが,その基礎となったのがアデュカヌマブです.今回紹介するLancet Neurology誌に掲載された剖検研究は,アデュカヌマブを投与された5例と未治療12例の剖検脳を比較し,この抗体が実際に脳のどこでどのようにAβを除去していたのかを初めて詳細に示したものです.
治療群の全例がAPOE ε4を保有し,うち2例がPSEN1変異を有していました.PETでAβが6〜81%低下していたにもかかわらず,剖検ではAβ除去は脳表近くに限局していることが明らかになりました.図上では,最初の10例(治療群5例と未治療群5例)に対して汎Aβ抗体によるDAB染色が行われています.未治療群では大脳皮質全層にAβ沈着がみられますが,治療群では大脳皮質の最表層(第I層)でのみ著明なAβ減少が認められ,下層ではAβが依然として残存していることが分かります.
図下では,同一症例の中前頭回を対象にしたAβaa1–8抗体による多重蛍光免疫染色が示されています.この抗体はAβペプチドのN末端(1〜8番アミノ酸)を認識する最も一般的な「全Aβ量」を示すマーカーで,アデュカヌマブ自身もこの領域を標的にしているため,この抗体で染まるAβが実際に除去対象になっていると考えられます.右側のボックスプロットで分かるように,Aβaa1–8は第I層で有意に低下していますが(p<0.01),全層では減少がみられませんでした.Aβ42でも同様の有意な低下がみられ,ピログルタミル型AβおよびAβ40も表層で減少傾向を示しました.
この結果は,アデュカヌマブが分子量約150 kDaと大きく,血液脳関門をほとんど通過できない(脳実質内到達は血中の0.1%未満)ことと関係しています.そのため,主に軟膜や皮質表層の血管周囲からわずかに脳内へ浸透し,その届く範囲に作用が集中すると考えられます.今回の剖検研究は,まさにこの「表層優位」の作用分布を病理学的に裏づけた結果となりました.
この「表層偏重」の除去はPET画像との乖離を生みます.アミロイドPETでは,表層のAβが減少すると信号全体が低下し,Aβが広範に除去されたように見えます.しかし実際の病理では,深部皮質層に多くのAβが残っており,PETで減少が見えても全層の除去を意味するわけではないことが明らかになりました.著者らはこの点を強調し,「PETシグナルの減少は部分的除去を反映しているに過ぎない」と述べています.これはAβ抗体治療の効果判定におけるPET画像の限界を示す重要な知見です.
また,ARIAを呈した症例ではMRIで確認された部位に対応して,皮質表層や髄膜下血管周囲に鉄沈着を伴う微小梗塞,補体活性化(C5b–C9),マクロファージやミクログリアの浸潤(CD68陽性)がみられました.これらはアミロイド血管症関連炎症(CAAri)と共通する病理像であり,Aβ除去に伴う血管壁の炎症がARIA発生の要因であると考えられます.さらに,死亡までの期間が長い症例では再沈着を思わせるAβ再蓄積も認められ,治療後にも進行性変化が続くことが示唆されました.
この層特異的なAβ除去の現象は,アデュカヌマブに限らず,他のAβ抗体であるレカネマブやドナネマブでも生じている可能性があります.これらの抗体も血液脳関門を越えて広く脳内に拡散することが確認されていないためです.今後のAβ抗体療法では,血液脳関門を通過してより広く脳内に拡散できる抗体設計や投与法の改良が求められます.
Boon BDC, et al. Neuropathological changes and amyloid-related imaging abnormalities in Alzheimer’s disease treated with aducanumab versus untreated: a retrospective case–control study. Lancet Neurology. 2025;24:931–944. https://www.thelancet.com/…/PIIS1474-4422(25…/fulltext

・進行性核上性麻痺の典型例Richardson症候群は均一ではなく,臨床的・病理的に多様性をもつスペクトラムである
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年10月22日のFB投稿です**
進行性核上性麻痺(PSP)の典型型Richardson症候群(PSP-RS)は,2017年に策定されたMDS-PSP診断基準では均一な症候群として定義されていますが,米国Mayo Clinicのグループから実はそうではないのだとする報告がなされました.
著者らはMDS-PSP基準でprobable PSP-RSと診断した118例を対象に,認められた各症候の関連を可視化したネットワーク解析と,患者群を分類するクラスター解析を行い,PSP-RSが均質な集団かどうかを検証しました.その結果,まず16種類の症状は5つのクラスター(①光過敏,②認知・遂行機能障害,③振戦,④眼球運動障害,⑤無動・固縮・失行)に分類されました.興味深いのは,無動・固縮が強い患者ほど眼球運動は比較的保たれる一方で(図の赤い線=負の相関),認知機能障害とは負の相関を示しました.つまり無動・失行が重いほど認知機能が悪いということです.また,光過敏や振戦は他の症状と関連せず独立して存在し,眼球運動障害群では垂直方向の運動障害と水平方向の運動障害が密接に結びついていました.以上の結果から,PSP-RSの症候は無秩序の組み合わせで出現するのではなく,特定の組み合わせで出現するということが分かりました.
患者群を分類するクラスター解析では2群に分かれました.Cluster Iは症状が重く,典型的なPSP-RS像を示しました.一方,Cluster IIは症状が軽く,臨床的にはPSP-CBSやPSP-Pなど,他のPSP亜型と診断される割合が高い群でした.注目すべきは,Cluster IIでは剖検でPSP病理を伴わない例(具体的にはCBD,MSA,GGTなど)が有意に多かった点です(p=0.03).つまり,MDS-PSP基準でPSP-RSと診断されても,実際にはPSPではない異なる病理をもつ症例が一部含まれうるということになります.ただ個人的に関心がある自己免疫性脳炎は含まれておらず,典型例では考慮しなくて良いと言えるということだと思います.
この論文のメッセージは明確です.PSP-RSは単一の病型ではなく,臨床的にも病理的にも多様性をもつということです.昨今,診断基準を万能と考えてしまう傾向がありますが,例外があることを認識する必要があると思います.症候の組み合わせや経過,画像・バイオマーカーを通じて真のPSPを見抜く姿勢が求められるのだと思います.
Kumar M, et al. Evaluating the Homogeneity of the PSP-RS Syndrome beyond Core Features. Movement Disorders Clinical Practice. 2025;12(10):1560–1570. doi.org/10.1002/mdc3.70134

・「自己免疫性精神病」を独立した疾患単位とみなすべきではない!
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年10月23日のFB投稿です**
Journal of Clinical Investigation誌の最新号に掲載された総説です.抗NMDA受容体脳炎の発見者であるJosep Dalmau教授らが,「自己免疫性精神病(autoimmune psychosis)」という概念を独立した疾患として扱うべきではないと明確に述べています.
著者らは,まず精神病という症候群が統合失調症に限らず,自己免疫性や炎症性疾患,さらには神経疾患の一部としても出現し得ることを示しています.中でも抗NMDA受容体脳炎では,幻覚,妄想,興奮,不眠などの精神症状で初発することが多く,統合失調症と誤診されることもあります.その病態は,抗NMDA受容体抗体が神経細胞表面の受容体を内在化させ,シナプス伝達を可逆的に障害することによるものです.つまり,炎症による破壊ではなく,免疫反応によって神経の情報伝達そのものが変化し,その結果として精神症状が生じるという新しい仕組みが明らかになったわけです.
図は「精神病の3つの神経化学的仮説」を示すものです.ドパミン過活動仮説,NMDA受容体機能低下(グルタミン酸)仮説,セロトニン仮説の3つを示し,抗NMDA受容体脳炎がグルタミン酸仮説に合致することを示しています.抗体が前頭皮質のGABA介在ニューロン上のNMDA受容体を内在化させると抑制性制御が失われ,興奮性ニューロンから中脳腹側被蓋野(VTA)への入力が過剰になります.その結果,報酬系である中脳辺縁系ドパミン経路が過活動となり,幻覚や妄想といった精神病症状が出現します.この回路異常は,ケタミンなどのNMDA受容体拮抗薬が誘発する幻覚モデルと同じ機序であり,抗体が精神症状を引き起こす病態機序を明確に示すものです.著者らは,このように免疫と神経伝達の関係を適切に理解することが,今後の精神医学研究の発展につながると強調しています.
一方で,「自己免疫性精神病」という名称の乱用には強い警鐘が鳴らしています.抗NMDA受容体脳炎やSLEなど既知の自己免疫疾患による精神症状をすべて包括してしまうと,診断が曖昧になりかねないということです.また,抗体の血清検査を無分別に精神疾患患者に行うと,非特異的な陽性反応を示す例が生じ,実際には自己免疫性脳炎でない患者にまで免疫治療が行われる危険があると指摘します.実際,これまでの研究では統合失調症や気分障害の患者におけるNMDAR抗体陽性率は約1%で健常者と差がありません.脳脊髄液で抗体陽性であった患者のほとんどは臨床的に抗NMDA受容体脳炎と診断可能ですが,血清のみ陽性の患者は非特異的反応である可能性が高く,診断的価値は低いとされています.
著者らは,「自己免疫性精神病」という言葉は一見わかりやすいものの,科学的定義があいまいで,既知の自己免疫性脳炎や全身性疾患を一括して扱うことで診断の特異性を損ね,臨床の混乱を招くおそれがあると述べています.精神病と免疫の関係を探ること自体は重要ですが,その第一歩は既知の自己免疫性脳炎を正確に診断し,精神症状との関連を検証することにあるとしています.また,初発精神病や抗精神病薬不耐例で異常行動や意識変容がみられる場合には,脳波,MRI,脳脊髄液検査を組み合わせて抗体性脳炎を除外することが推奨されています.結論として,自己免疫が関与する精神症状は確かに存在しますが,「自己免疫性精神病」という新しい疾患単位は現時点で存在しないということになります.
Cabrera-Maqueda JM, Planagumà J, Guasp M, Dalmau J. Autoimmune neuropsychiatric disorders manifesting with psychosis. J Clin Invest. 2025;135(20):e196507. https://doi.org/10.1172/JCI196507

・機能性運動障害に対するリハビリのコツ ―Physio4FMD試験から学ぶ―
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年10月26日のFB投稿です**
先日,機能性神経障害(FND)の患者さんをご紹介いただき,とくにリハビリの進め方についてご相談を受けました.適切にご説明するため,2024年にLancet Neurology誌に報告されたPhysio4FMD試験をあらためて読み直しました.この研究は,FNDに対する「脳の予測モデル」に基づいた新しいリハビリの方向性を示した,非常に示唆に富むものです.
FNDは「体を動かしたいのに動かない」「勝手にふるえてしまう」などの症状を呈します.脳に器質的な異常はないものの,脳が体の動きを誤って予測してしまうことが原因と考えられています.私たちの脳は,常に「これから何が起こるか」を予測しながら運動や感覚を制御しています.つまり脳は日常生活の中で,「予測」と「実際の感覚入力」を比較しながら行動を調整しているのです.例えば,「右手を上げる」と予測したとき,実際に手が上がるという感覚が一致すれば,脳は「自分が動かした」と理解します.この仕組みを説明する理論が「ベイズ的予測モデル(Bayesian model)」です.しかしFNDではこの予測と感覚がずれてしまい,「動かそうとしても動かない」「勝手に動く」という誤作動が起こります.このずれ(予測誤差)を修正し,脳が正しい動作感覚を再び学び直すことがリハビリの目的になるということです.ですから通常のリハビリとは大きくアプローチが異なります.
論文のPhysio4FMD試験は,英国で行われた多施設ランダム化比較試験で,「確実なFMD」と診断された成人355例を対象としました.9回の専門的理学療法とフォローアップを行う群と,地域の一般的理学療法に紹介する群に無作為化され,主要評価項目は12か月後のSF-36身体機能スコアでした.最終的にコロナによる中断がなかった241例(専門群138,通常群103)が解析対象となりました.結果としては,身体機能スコアには有意な差はみられませんでしたが,自己評価による症状改善(CGI-I)では専門的理学療法群が一貫して良好な結果を示しました.6か月の時点で改善または著明改善と答えた人は専門群で大多数を占め(63%対28%,オッズ比4.7),12か月後でもその効果は持続していました(59%対39%,オッズ比2.3)(図).精神的健康スコアや診断に対する信用も専門群で向上し,重篤な副作用は報告されず,安全に実施できる治療であることが確認されました.
Physio4FMDで行われた専門的理学療法は,従来の筋力強化や動作矯正とは異なり,脳の誤作動を修正するように設計されています.リハビリは三つの柱から構成されていました.
① 症状の理解を助ける教育;体は壊れていないが脳の信号伝達が一時的に乱れていることを説明し,不安を軽減する.
② 注意の再方向づけ;「手を動かそう」と意識するほど動けなくなるため,音やリズム,視覚的目標など外的刺激に注意を向けながら,自動的な動作を誘発する.
③ 自己管理と再発予防;ワークブックを用いて,自宅での練習や再発時の対応を学ぶ.
理学療法士は全員が5日間の集中トレーニングと標準化マニュアルを修了し,患者の理解と自己効力感を高めるための関わりを重視しました.「動かそう」と強く意識すると,脳は過剰に予測を立ててしまい,感覚とのずれが拡大します.この逆転現象がFNDの特徴であり,リハビリでは「どう動かすか」ではなく「どう意識しないか」を練習することが重要となります.症状の改善は「自分の体を再び信じられるようになること」によりもたらされます.よってリハビリの目的は,まさにその「自己効力感の回復」にあります.体が壊れていないという理解を深めること,動作を意識しすぎずに外的な目的に集中すること,わずかな成功体験を大切にして脳に「できた」という感覚を刻むこと,症状が出たときは深呼吸して落ち着き,再発しても「前より早く戻れる」と信じること,これらがリハビリの実践的ポイントです.
以上をまとめると,リハビリの具体的な指針は次の通りです.
• 体が壊れているわけではないと理解し,安心して取り組むこと.
• 「動かそう」と意識せず,音やリズム,物体操作など外の目的に注意を向けること.
• 「手を動かす」ではなく,「ボールを投げる」「風船を打つ」と考えること.
• 少しでも動けたら「できた」と実感し,その成功体験を積み重ねること.
• 症状が出たときは焦らず深呼吸し,「また動けるようになる」と思い出すこと.
• 再発しても「以前より早く回復できる」と考え,落ち着いて対処すること.
Nielsen G, et al. Specialist physiotherapy for functional motor disorder in England and Scotland (Physio4FMD): a pragmatic, multicentre, phase 3 randomised controlled trial. Lancet Neurol. 2024 Jul;23(7):675-686. doi.org/10.1016/S1474-4422(24)00135-2

・胎児を守る抗てんかん薬の選択――フランスにおける10年の劇的な変化
**岐阜大学医学部下畑先生の2025年10月28日のFB投稿です**
抗てんかん薬(antiseizure medications;ASM)は,てんかんのほか気分障害,慢性疼痛,片頭痛などにも広く用いられていますが,一部の薬剤は胎児に奇形や神経発達障害をもたらすことが知られています.フランスのEPI-PHARE研究チームは,全国母子レジストリ「EPI-MERES」を用い,2013〜2021年に終了した約870万件の妊娠を解析し,抗てんかん薬の胎児曝露の推移を明らかにしました.
この期間に少なくとも1種類の抗てんかん薬に曝露された妊娠は55,801件で,全妊娠の0.64%にあたりました.薬剤を安全性に基づいて分類すると,「最も安全」とされるラモトリギンとレベチラセタムへの曝露が約半数,「リスク不明群」(プレガバリン,ガバペンチン,エトスクシミド,ラコサミド,ペランパネル,ゾニサミドなど)が約3分の1,「リスク既知群」(バルプロ酸,バルプロミド,カルバマゼピン,トピラマート,フェニトイン,フェノバールなど)が約4分の1を占めていました.
図に示されるように,2013年から2021年の間で薬剤の構成は劇的に変化しました.バルプロ酸とバルプロミド(バルプロ酸のプロドラッグ)への曝露妊娠はそれぞれ−84%,−89%と急減し,リスク軽減策が効果を上げていることが明らかになりました.代わって,ラモトリギンとレベチラセタムといった安全性の高い薬剤が大きく増加し,それぞれ+22%,+64%の上昇を示しました.ラモトリギンはもともとてんかんに多く使用されていましたが,この10年間で気分障害に対しても用いられる割合が増加したようで,2013〜2015年の15%から2019〜2021年には23%へと拡大しました.これは,ラモトリギンが「胎児への安全性が比較的高い薬」として,精神科領域でも選択される傾向を反映しています.私も良く認識していなかったのですが,日本でもその適応に「双極性障害における気分エピソードの再発・再燃抑制」があります.
一方,プレガバリンやガバペンチン,新規抗てんかん薬(ラコサミド,ゾニサミドなど)の使用は急増しました.とくにプレガバリンでは,妊娠全期間を通じての曝露が+171%に増加しており,胎児がより高用量・長期間曝露されていることが懸念されます.カルバマゼピンやトピラマートの使用も緩やかに減少したものの,依然として2019〜2021年の3年間だけでそれぞれ約600件の出産曝露がみられました.トピラマートは海外では片頭痛にも使用されています.
母体背景をみると,抗てんかん薬曝露妊娠の母親は非曝露群よりも高齢であり,また低所得層の割合が高い傾向にありました.とくにリスク既知薬および不明薬の使用群では,低所得層が約18%に達し,安全な薬剤群(約14%)よりも多く,社会的格差の影響が示唆されました.
著者らは,バルプロ酸曝露の劇的減少は,2015年以降に強化された欧州医薬品庁の妊娠回避プログラムの成果であるとしながらも,その一方で,安全性が十分に検証されていない薬剤の使用が拡大している現状を強調しています.特にプレガバリンや新規抗てんかん薬の使用増加は,今後のリスク評価が急務であると述べています.また,社会的に不利な立場にある女性ほどリスクの高い薬剤を使用している傾向があるため,妊娠前カウンセリング,避妊支援,医療アクセス改善の必要性が強調されています.日本においても同様の処方傾向が生じている可能性があります.妊娠可能年齢の女性への抗てんかん薬処方の在り方を見直す契機となる重要な論文です.
Shahriari P, et al. Trends in Prenatal Exposure to Antiseizure Medications Over the Past Decade: A Nationwide Study. Neurology. 2025;105:e213933. doi.org/10.1212/WNL.0000000000213933

(作成者)峯岸 瑛(みねぎし あきら)