カテゴリー
アルツハイマー病で血液脳関門が破綻するメカニズム パーキンソン病・多系統萎縮症の自律神経障害をベッドサイドでどう診るか? マイクロプラスチック ロボットオリンピック 中田瑞穂先生 医療AIの本当のインパクト 打腱器Percuflex 機能性神経障害(FND) 片頭痛予防療法 睡眠中の「ピンクノイズ(音刺激)」 脊柱管狭窄 自己免疫性神経疾患に対するin vivo CAR-T療法 自己免疫性神経疾患の発症から再発までをつなぐ7段階のカスケード 頭蓋骨骨髄は「脳のすぐ隣の免疫器官」である 骨粗鬆症

2026年9月のニュース

今月紹介する2つの論文は、「脊柱管狭窄症」と「骨粗しょう症」の新たな治療法につながる可能性のある研究です。岐阜大学医学部の下畑先生からの最新医学情報に見られるように医学の進歩は日進月歩ですが、北京で開かれたロボットオリンピックを見る限り、現実世界で人間の代わりとして汎用的に機能するには、知的処理能力や手先の器用さの面でまだ距離があるようです。
特別企画:AIに訊くは、「切り替えの統合理論」を踏まえて、Geminiに混迷を深める世界情勢について訊いてみました。

1.2026年9月の活動状況
・柳澤 光宏さんの投稿
ARIKAMO 大学生の夏休み中を利用した2泊3日の企業インターン&研修にシナノも参加しました。 ポールウォーキングを体験してもらい、普及活動についてチームで考えてもらいました。この中からシナノに来てくれる人がいたらラッキーですが、それよりも参加した学生の成長に繋がり、社会人として何かの役に立つことを祈っています(^.^) それにしても、しっかり自分の意見を言えるし、発表もちゃんとしているしスゴイな!!

・スマイルチームさんの投稿
20260903 午前中は毎月第一木曜日定例 スマイルチームポールウォーキング。 天気予報が微妙だったので、予め室内活動に変更。 今日は モルックを使った独自のゲーム【スマイルモルック】を楽しみました😊 脳トレも、、、楽しみました😂 #スマイルチーム #ポールウォーキング #モルック #脳トレ #相模原市南区東林公民館

・台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
【健走杖運動團練】外木山情人湖濱海大道 藍天白雲、山海相伴 健走杖運動教練們齊聚基隆外木山 一同完成 5.5公里團練!💪🥾 走出健康與活力,也走出滿滿的默契與歡樂~ 流汗後再一起享用美食🍽️,為這趟山海健走畫下幸福句點。😋 期待下一次再相約❤️ #健走杖運動 #教練團練 #雙杖在手健康跟著走

・とちぎポールウォーキング会さんの投稿
平均台に乗ってのポールウォーキングピラティスプログラムはじめています。

・中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より 9月PW駒場例会でした。 朝から雨予報が出ている例会日でしたが、いつもの様に参加者集合〜 晩秋を思わせる寒さの中(17℃)での 公園〜牧場のポールウォーキング闊歩でした。羽織物も暖を取る支度となりました〜ww まだまだPWイベントは続きます。 次回は 9/13(日)鈴与マタイスポーツパーク(旧佐久総合運動公園)PW散策です。 9/19(土)は〜佐久ぴんころウォーク〜‼️

・田村 芙美子さんの投稿
秋の長雨? 毎日よく降ります。 昨日までPW教室は蒸し暑くクーラーを入れていましたが 今日は暖房が欲しくなる涼しさです。大雨の被害のあった地域は復興が大変だろうとお見舞い申し上げます。 今日は教室は期末休暇なのに寒くて表に出る気になれません。裏のお宅から頂いた紫アザミとルエリア (写真↓和名=ヤナギバルイラソウ)が蕾を開きました。その横で大きな向日葵も今頃咲き始めて震えています🌻🌻🌻

・校條 諭さんの投稿
気まポ 夕暮れウォーク(9月12日) いつもは午前に歩くのですが、9月の気まポ(気ままにポール歩き)は、夕方5時集合という設定にしました。昨年までの例だとまだ猛暑に近い天候だったのでそうしたのですが、今年は長雨の影響で涼しいですね。 JR西荻窪駅から出発して、桃井原っぱ公園、杉並会館を経て、荻窪八幡神社のお祭りに立ち寄りました。 杉並会館は、アニメミュージアムの入っている施設で、宴会場や会議室などがあります。これまで何度も入ったことがありますが、毎日新聞の「レトロの美」という連載記事で最近取り上げられたのをきっかけに、今回改めて建物に注目しました。 職員の方に、見学をお願いして、ロビーで、寄せ木細工の床、陶板の壁、らせん階段などのアートをじっくり見ることができました。わざわざ照明を明るく切り替えてくださって助かりました。 ゴールは、西荻の洋食みかさでカンパイ。ステーキやハンバーグなど、各自好きなメニューを選んで楽しみました。 今回、風邪引きやイベントなどのため常連男子が欠席で、男子は私ひとりでした(^^)。

・中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より PW散策日〜 本日は〜鈴与マタイスポーツパーク/ 旧名佐久総合運動公園〜外周路PW散策〜プラス希望者にてのマレットゴルフ大会〜でした❗️ 1週間振りの太陽の下の散策で、参加者の笑顔もひとしおに〜‼️ @ ランチ(地元お弁当屋さん🍱)を挟み 公園内のマレットゴルフ場(一面芝生の)で18ホールを希望者(20 名程)で体験プレイでした。 世話人さんの指導で良い体験が出来皆さん大喜びでハマりそうなご夫婦も出現でした。 皆さんお疲れ様でした〜^_^ PS:さいたま市へ帰る〜遠藤コーチ〜より 内山/コスモス街道のコスモスも最盛期に〜の連絡でした。

・水間 孝之さんの投稿
第14回びんころウォーク800名を超える皆さんに参加いただきました。 台湾ポールウォーキング協会、群馬県ポールウォーキング協会、チームみなとみらいの皆さん遠くからご参加ありがとうございました。 来年もお待ちしております♪♪

・校條 諭さんの投稿
人が倒れているのを見つけたら ①「わかりますか?」と呼びかけ ②「誰か来てください!人が倒れています」と叫ぶ ③来た人に頼む   「あなたはAEDを持ってきてください」(誰か・・ではなく)  「あなたは119番通報してください」 ④呼吸の確認 ⑤胸骨圧迫 ⑥AED到着 音声の指示とおり開始(胸部圧迫、可能なら継続) 懸案の救命講習を受けてきました。ノルディックウォーキングの指導者講習のときの資格認定条件だったのですが、「受講見込み」ということで取得できたのが何年か前でした。 自宅から最も近いAED設置場所は190m離れたところにある介護施設です。両親が訪問介護やショートステイでお世話になったところで、24時間あいています。 なお、AEDの電極パッドは胸と脇腹の素肌に装着します。ですから、街中で倒れている女性にAEDを使うのをためらってしまいそうだと思っていたのですが、装着後タオルなどをかけて隠してもよくなったそうです。 参加は16人、女性の方が多く若年~中年層中心。私はたぶん最年長だったでしょう。 救命講習は最寄りの消防署などで受講できます。とても有意義です。参加をお勧めします(検索ですぐ出てきます)。

 

来月以降の開催
・長岡智津子さんの投稿
写真1件

 

2.PW関連学術ニュース
2-1)ヒューマノイドロボットの現状~第2回世界ヒューマノイドロボット競技大会~

ヒューマノイドロボットの進化の現状を伝える「ロボットオリンピック」のニュースがNature誌に掲載されています。

NATURE NEWS、27 August 2026
表題:‘Robot Olympics’ reveal humanoids’ rapid progress — and flaws
Humanoid robots broke records at sporting events such as sprints, but struggled at practical tasks such as hammering nails.
(和訳:ロボットオリンピック」が明らかにしたヒューマノイドの急速な進歩と、その欠点~人型ロボットは短距離走などのスポーツ競技で記録を塗り替えたが、釘を打つといった実用的な作業では苦戦した。)
著者:Kaia Glickman
北京で開催された第2回世界ヒューマノイドロボット競技大会の戦闘イベントで、ロボットたちが競い合っている。写真提供:Lintao Zhang/Getty Images

***以下は、このニュース記事についてのGeminiとの会話記録(2026年8月31日)です***

Q1:こんにちわ!次のニュース記事の要点をまとめて下さい。ニュース記事のタイトルです。「NEWS 27 August 2026
‘Robot Olympics’ reveal humanoids’ rapid progress — and flaws
Humanoid robots broke records at sporting events such as sprints, but struggled at practical tasks such as hammering nails.
By Kaia Glickman」

A1:2026年8月27日付のNature誌(Kaia Glickman記者)に掲載された記事「‘Robot Olympics’ reveal humanoids’ rapid progress — and flaws」の要約です。

ニュース記事の要点 (Life Science Network)

1. 運動能力における驚異的な飛躍
北京で開催された第2回「世界ヒューマノイドロボット競技大会(いわゆるロボット・オリンピック)」において、ヒューマノイドロボットは著しい身体的能力の向上を示しました。 (医薬政策企画 P-Cubed)
•記録更新: X-Humanoid社のロボットが100メートル走で8.64秒(または競技中の走破で人類最速記録を上回るタイム)を記録したほか、垂直跳び(高跳び)でも3.4メートルに達するなど、人間のアスリートを凌駕する運動能力を実証しました。 (医薬政策企画 P-Cubed)
•技術的要因: あらかじめ指定された軌道や出力を正確に再現する走行やジャンプ、モーターの液冷化によるトルク向上などが、この劇的なパフォーマンス向上を支えています。(Mirage News他 1 件)

2. 実用的な作業や認知面での課題・欠陥
一方で、日常的・産業的な実用タスクでは依然として大きな課題が露呈しました。
•不器用さと精度の不足: 釘を打つといった微細な力加減や高精度が求められる作業、状況に応じた柔軟な対応では苦戦が目立ちました。
•自律性と環境認識の壁: あらかじめプログラミングされた直線的・単純な運動とは異なり、ミリ単位の調整が必要な「最後の数ミリメートル」の制御や、状況変化に対応する「AIの脳(世界モデル・認知能力)」の開発が追いついていないことが課題となっています。

3. 結論 (Mirage News)
中国勢を中心とするハードウェアの進化(運動性能)は非常にスピーディで目覚ましいものの、工場や日常生活などの現実世界で人間の代わりとして汎用的に機能するには、知的処理能力や手先の器用さの面でまだ距離があることが浮き彫りとなりました。

Q2:この記事で指摘されている2の課題・欠陥について、現状での最新の研究動向とその成果について、分かり易く紹介して下さい。

A2:ロボット・オリンピックのニュース記事で指摘された「手先の器用さ・精密な力加減の不足」と「環境認識・自律性(世界モデル)の遅れ」という2つの課題について、最新(2025〜2026年)の研究動向と主な成果を分かりやすく紹介します。

課題1:手先の器用さと力加減の不足(精密操作の壁)
釘を打つ、紙を破かずに折る、工具を滑らせずに握るといった作業には、見た目(カメラ)の情報だけでは不十分で、触覚(タッチ・力加減)のフィードバックが不可欠です。

最新の研究動向(okt.to)
「触覚皮膚」と多感触ハンドの標準化: 単に物を握るだけでなく、ロボットの手の表面70%以上に高密度な触覚センサーを敷き詰めた「触覚ハンド(F-TAC Handなど)」が登場しています。2026年現在、指先だけでなく手のひら全体で「圧力・摩擦・すべり」をミリ秒単位で検知する技術が主流になりつつあります(Queen Mary University of London)

触覚と視覚の統合(Multimodal Fusion): カメラ画像と触覚センサーのデータをAIが同時にリアルタイム処理する技術が進んでいます。これにより、「釘とハンマーの位置(見た目)」を捉えつつ、「打撃時の反動や指のズレ(触覚)」を即座に補正できるようになってきています。
okt.to

達成された成果(Patsnap)
工場や研究室において、壊れやすい豆腐や卵を潰さずに掴むだけでなく、柔らかい布を正確に畳んだり、滑りやすい工具を握り直して作業を継続したりする精度の高い操作が可能になり始めています。

課題2:世界モデルとAIの脳(自律性・空間認知の壁)
100m走のように「決まった直線パターンを愚直に走る」ことには成功しても、周囲の物理法則(重力、摩擦、固さ、予期せぬ障害物)を理解して「次にどうなるか」を脳内でシミュレーションする能力が不足していました。

最新の研究動向(okt.to)
VLAモデルから「世界モデル(World Model)」への進化: 従来の「見えた画像から直接行動を起こすAI(VLA: Vision-Language-Action)」から、「自分の行動によって世界がどう変化するかを脳内で一度予測・シミュレーションしてから動くAI(世界モデル)」への移行が急速に進んでいます(Humanoid.guide、他 1 件)

空間知能(Spatial Intelligence)の強化: フェイフェイ・リ(Fei-Fei Li)氏のWorld Labsやヤン・ルカン(Yann LeCun)氏のJEPA(Joint-Embedding Predictive Architecture)研究などに代表されるように、ロボットに3D空間の奥行きや物理的な因果関係を自然に理解させる基盤モデルの開発が加熱しています(KraneShares、他 1 件)

達成された成果:
未知の環境への適応(ゼロショット学習): 見たことがない部屋や一度も扱ったことがない家電(エアフライヤーや未知の工具など)であっても、Web上の知識と物理予測を組み合わせて「こう動かせばこう動くはずだ」と推論し、事前プログラミングなしで正しく操作できる汎用AI(Physical Intelligence社のpi-0.7など)が登場しています(okt.to)

まとめ(Patsnap)
現在(2026年)のロボティクス界では、「走る・跳ぶ」といった筋肉(アクチュエータ・ハードウェア)の進化に対し、「触覚(皮膚)」と「世界モデル(脳)」を追いつかせる研究が最前線で行われています。これらが完全に統合されることで、実験場だけでなく実際の家庭や工事現場で柔軟に役立つヒューマノイドロボットが実現に向かいます(digitimes)

2-2)脊柱管狭窄でしばしば見られる黄色靭帯の肥厚が、腱や靭帯を作る幹細胞の分化異常によるためであるかもしれない
***以下は、大阪大学の宮坂昌之先生の2026年9月9日のFB投稿です***
長年、背中に負担がかかると、骨が変形したり、椎間板が飛び出したり、黄色靭帯(=神経の束である脊髄の後方にある靭帯)が分厚くなったりして、背骨の中にある神経の通り道(=脊柱管)が狭くなり、その結果、中を通る神経や脊髄が圧迫されることになります。これが脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)と呼ばれる病気です。

腰部に狭窄が起きると、典型的な症状として間欠性跛行(かんけつせい・はこう)(歩いていると足に痛みやしびれが出て歩けなくなるが、少し休むと、また歩けるようになる)が見られますが、前かがみになって休むと神経の圧迫が和らぐために楽になる、という傾向があります。また、このほかに、腰や足の痛み、しびれが起き、重症化すると、排尿・排便障害が見られます。一方、頸部に狭窄が起きると、手足が動かしにくかったり、細かい作業がしにくくなったりします。

脊柱管狭窄症は、高齢者では多く、腰部の狭窄の場合、日本全体で数百万人の有症状患者が居るといわれています。治療としては、初期のうちは血流改善薬としてPGE1製剤(プロスタグランジンE1の働きを止めて血管の平滑筋を緩めて血流を増やす)や、痛み止め、硬膜外ブロックや、前かがみを意識したリハビリなどが行われますが、加齢のために脊柱の周囲の筋肉や靭帯の機能が落ちていると、なかなか良い効果が出ません。また、歩行困難や排尿・排便障害が出た時には、脊柱管のスペースを広げる手術が行われ、症状は一時的に改善しますが、やはり、脊柱の周囲の筋肉や靭帯の機能が落ちていると、狭窄症が再発することがあります。

専門誌Cellの最新号に「脊柱管狭窄でしばしば見られる黄色靭帯の肥厚が、腱や靭帯を作る幹細胞の分化異常によるためであるかもしれない」ということを示す論文が出ています(https://www.cell.com/cell/abstract/S0092-8674(26)00945-1)。つまり、脊柱管狭窄発生には新しいメカニズムが存在するかもしれないということです。アメリカの研究グループによる仕事です。

彼らは、マウスとヒトの検体を用いて調べた結果、
① 腱・靱帯には幹細胞(TLCS)が存在し、この細胞は自己複製能、分化能を持っていて、腱や靱帯を作る前駆細胞(TLPC)を作り出し、ここから腱のもととなる腱鞘細胞や腱細胞ができる、
② 正常状態では、これらの幹細胞や前駆細胞は、黄色靱帯が骨に付着する部位に少数存在する、
③ 脊柱管狭窄部位ではこれらの幹細胞、前駆細胞が異常に増殖していて、黄色靱帯の肥厚が見られる。
④ 脊柱管狭窄症の実験モデルでは、カルシウム拮抗剤(ex. アムロジピン)やカルシウム依存性酵素阻害剤(ex. カルシニューリンやタクロリムス)で黄色靭帯の肥厚が改善する、
などのことがわかりました。

もしこれが事実であれば、脊柱管狭窄においては幹細胞に異常が起きて、それが黄色靭帯の肥厚などをもたらして症状を悪化させているのかもしれない、ということになります。また、幹細胞の分化にはカルシウムイオンを介したシグナルが必要なことから、カルシウム阻害剤やカルシウム依存性酵素の阻害剤が脊柱管狭窄の治療に有効である可能性があります。

脊柱管狭窄症は、長寿社会では大きな健康問題となっていますが、いまだにこれという予防法や治療法がありません。一方で、腱や靭帯には幹細胞があり、その機能を制御できると狭窄症の治療につながるかもしれない、というのは期待が持てる明るいニュースです。
関連情報
① 原論文についてのGeminiによる解説です(2026年9月10日)。
Q1:次の論文の分かり易い解説をお願いします。論文情報です。「https://www.cell.com/cell/abstract/S0092-8674(26)00945-1」

A1:ご提示いただいた論文(2026年9月に国際的学術誌『Cell』へ掲載)は、「マウスおよびヒトにおいて、アキレス腱や靭帯(じんたい)を作り出す源となる『幹細胞』を世界で初めて特定した」という大変画期的な研究成果です。
要点を分かりやすく解説します。
1. この研究の背景(何が問題だったのか?)
アキレス腱の断裂や、腰痛・足のしびれを引き起こす「腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)」など、腱や靭帯の病気に悩む人は世界中に数多く存在します。
しかしこれまで、腱や靭帯を構成する細胞の「根本となる親細胞(幹細胞)」が一体どの細胞なのかが特定されておらず、「根本原因を叩く根本的な飲み薬や治療薬が存在しない」という大きな課題がありました。

2. 論文の主な発見・成果
• 幹細胞(TLSC)の特定に成功 研究チームは、マウスおよびヒトのあらゆる腱や靭帯の中に存在する「腱・靭帯幹細胞(TLSC: Tendon/Ligament Stem Cell)」を特定しました。特定の表面マーカー(CD73+ かつ CD140α- など)を持つ細胞が、自己複製しながらすべての腱細胞を生み出す「頂点の細胞」であることを突き止めました。
• 病気(脊柱管狭窄症)のメカニズムを解明 腰の靭帯(黄色靭帯)が分厚くなって神経を圧迫する「腰部脊柱管狭窄症」の発症プロセスを調査。病気の環境下では、この幹細胞内部のカルシウムシグナル伝達に異常が起き、幹細胞が過剰に腱・靭帯細胞を作り出すよう「再プログラミング」されてしまうことが分かりました。

3. この発見がもたらす医療の未来
1. 薬による治療(切らない治療)の可能性 異常を起こした幹細胞のカルシウムシグナル伝達(NFAT経路など)をターゲットにすることで、靭帯の肥大化を抑える「薬物治療(飲み薬や注射薬)」の開発に道が拓けました。
2. 再生医療・切れた腱の治癒促進 今回特定された幹細胞を活用することで、スポーツなどで断裂したアキレス腱や靭帯の修復を大幅に早める再生医療への応用が期待されます。

一言でまとめると
これまでブラックボックスだった「腱と靭帯を生み出す根本の細胞」が見つかったことで、治療法が手術に限られていた腰部脊柱管狭窄症の新しい薬や、アキレス腱断裂などの再生医療の開発が一気に前進するニュースです。

② 論文「黄色靭帯肥大の異なるメカニズム~腰椎変性パターンの比較MRI分析~」
掲載誌:Clinical Spine Surgery誌
公開日:2026年6月22日オンライン先行公開
論文名:Differential Mechanisms of Ligamentum Flavum Hypertrophy: A Comparative MRI Analysis of Lumbar Spine Degeneration Patterns
著者:酒井 義人、松井 裕樹、武市 洋介、長田 直明、渡辺 剛、安達 ゆい、渡辺 謙
DOI: 10.1097/BSD.0000000000002106
本件についての国立研究開発法人 国立長寿医療研究センターのプレスリリースです(extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.ncgg.go.jp/hospital/news/documents/20260629.pdf)。

Q2:続けて先の論文とこの論文との関連を分かり易く解説して下さい。次の論文の情報です。「以下、略す」

A2:2つの論文は、どちらも高齢者に多い「腰部脊柱管狭窄症(腰椎の神経が圧迫されて痛みやしびれが出る病気)」の最大の原因である「黄色靭帯(おうしょくじんたい)の肥大化」をテーマに扱っています。
しかし、研究のアプローチが「ミクロな分子・細胞レベル(細胞の世界)」と「マクロな臨床・画像分析(患者さんの腰全体の構造)」という真反対(かつ相補的)な視点から行われており、2つを組み合わせることで病気の全体像が見えてきます。分かりやすく関連性を解説します。

1.各論文の立ち位置(視点の違い)
2. 2つの論文はどう繋がっているのか?(関連性)
この2つの研究は、「原因(マクロの物理的ストレス)から結果(ミクロの細胞の暴走)に至るストーリー」として完璧に繋がります。
① 『Clinical Spine Surgery論文』が示すこと:【きっかけ(物理的ストレス)】
酒井医師らの研究(臨床MRI分析)は、腰の骨の変形の仕方や骨のズレ(すべり症など)のタイプによって、黄色靭帯にかかる負担や肥大化のパターン(メカニズム)が異なることを示しています。 つまり、「腰の骨組みがどう崩れるかによって、特定の靭帯部分に異なるメカニカルストレス(機械的な引っ張りや圧力)がかかる」という患者レベルの事実を示しています。
② 『Cell論文』が示すこと:【反応(細胞レベルでの肥大化)】
Cell論文(幹細胞の発見)は、まさにその「機械的ストレスや炎症刺激を受けたとき、靭帯の内部で何が起きているのか?」という答えを与えてくれます。 外部からストレスを受けた黄色靭帯の中では、特定された幹細胞(TLSC)のカルシウムシグナルが異常を起こし、幹細胞が過剰に靭帯細胞を作り出すことで「厚く分厚い靭帯(肥大化)」へと変化してしまうのです。

3. まとめ:2つの研究がもたらす未来の治療法
これまでは「なぜ腰の靭帯が分厚くなるのか」が断片的にしか分かっていませんでしたが、この2つの研究によりジグソーパズルのピースが組み合わさりました。
• マクロの視点(臨床MRI研究): 「どのタイプの変形・ストレスを持つ患者が、どの部位の靭帯を肥大させやすいか」を画像から正確に診断・分類する。
• ミクロの視点(幹細胞研究): ストレスを受けて肥大化を始めた幹細胞の暴走を止め、靭帯が分厚くなるのを薬で防ぐ。
将来的には、「MRI画像で靭帯肥大のリスクやパターンを早期に診断し(酒井氏らの研究成果)、肥大化を止める飲み薬や注射で治療する(Cellの研究成果)」という、手術に頼らない新しい腰椎疾患治療システムにつながる大きな関連性を持っています。

 

2-3)進行性骨粗鬆症に対するグリコカリックス編集型間葉系幹細胞/間質細胞療法
掲載誌:Cell Article Online
公開日:September 11, 2026
論文名:Glycocalyx-edited mesenchymal stem/stromal cell therapy in advanced osteoporosis(和訳:進行性骨粗鬆症に対するグリコカリックス編集型間葉系幹細胞/間質細胞療法)
著者:Jose M,et al.

ハイライト
•エキソフコシル化ヒト間葉系幹細胞(Fuc-autoBM-MSCs)の静脈内投与は安全である
•Fuc-autoBM-MSCの単回静脈内投与は骨粗鬆症における脆弱性骨折の発生率を低下させる
•Fuc-autoBM-MSCの静脈内投与後、体積骨密度が増加する。
•骨代謝バイオマーカーの変化は、骨再生効果と一致している。

まとめ
間葉系幹細胞(MSC)は骨再生能を有するが、骨へのホーミング能(「骨指向性」)が低いため、骨疾患に対する治療効果は制限される。前臨床モデルでは、MSCの糖鎖修飾によってシアル化Lewis X(sLeX)の発現を誘導し、骨指向性をプログラムすることで、この欠陥を是正できることが示されている。我々は、進行期骨粗鬆症の女性10名を対象に、糖鎖修飾を施した自家骨髄由来MSCを単回静脈内投与するヒト初回臨床試験(ClinicalTrials.gov:NCT02566655)を実施した。プロトコルで規定された評価は2年間にわたり、臨床評価、X線検査、骨代謝マーカー(BTM)、骨組織面積(BTA)、骨密度(BMD)の測定が行われた。その後、各患者について骨折および安全性のモニタリングがさらに3年以上継続されました。重篤な有害事象は発生しませんでした。骨形成促進性BTMレベル、BTA、および体積骨密度の増加に伴い、脆弱性骨折は著しくかつ持続的に減少しました。これらの結果は、グリコカリックス編集がMSCベースの骨粗鬆症治療に効果的であることを示しており、高齢者や病変組織由来のMSCは生物学的に不利であるという考えを否定するものです。

Graphical abstract

関連情報
① ネイチャー・ニュース
11 September 2026
Osteoporosis affects millions: could modified cells rebuild their bones?
Small trial hints at regenerative potential of bone-seeking marrow cells.
(和訳:骨粗鬆症は数百万人に影響を与えている。改変した細胞で骨を再生できるだろうか?小規模な臨床試験により、骨髄細胞が再生能力を持つ可能性が示唆された。)
By Elie Dolgin
骨粗鬆症は骨を薄く、多孔質にし、骨折しやすくするが、有望な細胞療法が骨を強化する方法を提供する可能性がある。写真提供:トニー・ブレイン博士/SPL

***以下、同ニュースからの抜粋です***
10人の高齢女性は、合わせて数十回も骨折しており、その多くはちょっとしたつまずきで起こっていた。しかし、骨組織への浸透性を高めるために実験室で処理された自身の骨髄細胞を一度輸血された後、彼女たちの骨折はほぼ止まった。

本日Cell誌に掲載された小規模臨床試験¹で報告されたところによると、治療を受ける前、女性たちは平均して1~2年に1回、脊椎、股関節、腕、その他の骨の骨折を経験していた。試験後、女性たちが軽微な外傷による骨折を経験する頻度は、10年に1回程度にまで減少した。

今回の結果は、骨粗鬆症患者の脆くなった骨を、一度の細胞療法で再生できる可能性を示唆するものであり、骨粗鬆症は世界中で約2億人の女性、特に閉経後の女性に影響を与える加齢に伴う疾患である。

② Geminiによる解説
Q:次の論文の研究成果について、分かり易く且つ簡潔に解説ひて下さい。論文情報です。(以下、略す)
A:2026年9月11日付の『Cell』誌に掲載された研究成果について、ポイントをまとめて解説します。

研究の要点
従来の治療法では改善が困難な重度の進行性骨粗鬆症に対し、細胞表面の糖鎖構造(グリコカリックス)を酵素処理で加工・編集した「間葉系幹細胞(MSC)」を移植する新しい再生医療アプローチの有用性・有効性を実証した研究です。

何が新しいのか?(技術のポイント)
・細胞表面の「標的誘導力」を強化
通常、静脈注射などで投与した間葉系幹細胞(MSC)は、肺やレバーなどにトラップされやすく、病変部位である「骨髄」へ効率よく届きにくいという課題がありました。

・糖鎖(グリコカリックス)の編集
細胞の最表面を覆う糖鎖構造を酵素処理などで最適化(編集)することにより、細胞が血流に乗って骨髄組織へしっかりと結合・集積(ホーミング)できるように機能を向上させました。

主な成果と期待される効果
・効率的な骨髄伝達
糖鎖編集を行ったMSCは、従来のMSCと比べて目的の骨髄へ届く割合が高まり、治療効果を最大限に引き出すことに成功しました。
・骨新生の促進と骨密度の回復
骨髄に到達した幹細胞が骨を作る細胞(骨芽細胞)の働きを助け、重度の骨粗鬆症で著しく低下していた骨密度や骨強度の改善に寄与しました。
・難治性疾患への新たな治療選択肢
既存の薬物療法(骨吸収抑制薬や骨形成促進薬など)で十分な効果が得られない重症患者や、骨折リスクが極めて高い患者に対する革新的な細胞療法としての応用が期待されます。

一言で言うと:
「目的地の骨へダイレクトに届くようナノレベルでコーティング(糖鎖編集)を施した幹細胞」を用いることで、従来の幹細胞移植では難しかった重症骨粗鬆症の劇的な治療・再生を目指す画期的な研究成果です。

 

2-4)岐阜大学医学部の下畑先生からの最新医学情報(2026年9月)
・片頭痛予防療法は「月4日以上」が目安―AAN/AHSが14年ぶりにガイドラインを改訂
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月1日のFB投稿です***
米国神経学会(AAN)と米国頭痛学会(AHS)は,成人の片頭痛の薬物予防療法に関するガイドラインを14年ぶりに改訂しました.発表に合わせて記者会見が行われ,YouTube(コメント欄にリンク)で見ることができます.ガイドライン作成委員のRebecca Burch先生が,改訂の狙いを説明しています(1).
記者会見で最も強調されたことは,2012年の前回ガイドライン以降,片頭痛予防療法の選択肢が大きく増えたことです.とくにCGRP(calcitonin gene-related peptide)を標的とする新しい片頭痛特異的治療薬の登場が大きな変化です.Burch先生は,「今回の最大の変更点は何か?」という質問に対し,新しいCGRP標的薬を含め,従来薬と新薬のエビデンスを一つのガイドラインの中で整理したことを挙げています.
もう一つの重要なメッセージは,予防療法をもっと積極的に考えるべきであるという点です.今回,「月4日以上の片頭痛日,または月4日以上の中等度~重度の頭痛日」があれば予防療法を提案し,頻度がそれ以下でも仕事や日常生活への障害が大きければ対象とすることが明確に示されました.
記者から「片頭痛予防薬は十分に使われているのか」と質問された際,Burch先生は,実際には予防療法の適応となる患者の多くが治療を受けていないと回答しています.Systematic Reviewでも,予防療法を考慮すべき患者のうち実際に使用しているのは約3分の1にすぎないとされています(2). 今回のガイドラインは,新薬を追加しただけではなく,予防療法のunderuseを是正することも重要な目的と考えられます.
さらにBurch先生は,薬剤を選ぶ際には有効性だけでなく,副作用,長期間使用されてきた安全性の実績,費用など,患者が何を重視するかを考える必要があると述べています.つまり,「最も強い薬を選ぶ」のではなく,協働意思決定(SDM)によってその患者に適した薬を選択することが今回の基本姿勢です.
以下,同時に発表されたSystematic Review(2)とPractice Guideline Recommendations(3)から,実臨床上とくに重要と思われる点を箇条書きでまとめます.
① 新旧の予防薬が同じエビデンスの物差しで評価された.
217研究を解析し,各薬剤の有効性についてHigh/Moderate/Low confidenceが示された(図).High confidenceは,反復性片頭痛ではerenumab,galcanezumab,慢性片頭痛ではfremanezumab,galcanezumab,onabotulinumtoxinAである.Moderate confidenceにはatogepant,eptinezumabなどのCGRP関連薬に加え,propranolol,topiramate,valproateなどの従来薬も含まれる.なお,これは薬剤の順位ではなく,あくまでエビデンスへの確信度である.
② 薬剤は有効性だけで選ぶものではない.
有効性,忍容性,長期安全性,費用,患者の希望を考慮する.忍容性を重視する場合にはatogepantやCGRPモノクローナル抗体,長期使用実績を重視する場合にはpropranololやtopiramateなどが重要な選択肢となる.
③ 薬剤の使用過多による頭痛(MOH)があっても予防療法を開始する.
薬剤の使用過多やMOHがあっても予防薬を提案すべきである.CGRPモノクローナル抗体,atogepant,onabotulinumtoxinA,topiramateには,このような患者でも有効性を示すデータがある.
④ 効果判定を急ぎすぎてはならない.
多くの予防薬では,十分な忍容量で8~12週間治療してから効果を判定する.onabotulinumtoxinAでは24週間が目安であり,1か月程度で無効と判断するのは早すぎる場合がある.
⑤ 有効な予防薬も,中止後に再悪化することがある.
6か月程度で減量・中止について相談するが,中止により頭痛が再増悪する可能性がある.galcanezumabでは,6か月時点で反応していた患者の半数以上が,中止5か月後にはその反応を失っていた.
⑥ 妊娠中の治療は一律に「薬を使わない」ではない.
まず非薬物療法を最大限活用し,valproateやtopiramateは可能な限り避ける.一方,治療が必要な場合には,片頭痛による負担と薬剤のリスクを比較し,患者と相談して治療を選択する.記者会見でも,この点は議論になり得る重要な変更点として紹介された.
今回の改訂を一言でまとめると,「月4日を目安に予防療法をより積極的に考え,増えた新旧の選択肢から,患者が何を重視するかに応じて薬を選ぶ」ということだと思います.CGRP標的薬の登場はもちろん大きな変化ですが,それ以上に,片頭痛予防療法をより早く,より患者中心に行う方向への転換が重要ということです.
日本への影響を考えてみると,「頭痛の診療ガイドライン2021」ですでに比較的早期からの予防療法が推奨され,さらに2025年には日本頭痛学会がCGRP関連抗体薬を既存薬と同等の第一選択薬に位置づけています.加えて,リメゲパント,アトゲパントという経口CGRP受容体拮抗薬も使用可能となりました.したがって今回のAAN/AHSガイドラインは,日本の診療を大きく方向転換させるというより,すでに始まっている「予防療法の早期導入」と「CGRP関連薬を含めた患者中心の薬剤選択」を強く後押しするものと考えられます.一方,日本ではCGRP関連抗体薬を最初から自由に開始できるわけではなく,保険診療上は従来の予防薬を先に試すことが求められています.この点は,今後見直しが議論される可能性があるように思います.
1.American Academy of Neurology. 2026 Press Conference: Pharmacologic Treatment for Migraine Prevention in Adults. YouTube. 2026.
2.Pringsheim T, Smith DB, Tanveer S, et al. Systematic Review of Pharmacologic Treatment for Migraine Prevention in Adults. Headache. 2026. doi:10.1111/head.70200.
3.Potrebic S, Tanveer S, Becker WJ, et al. Pharmacologic Treatment for Migraine Prevention in Adults Practice Guideline Recommendations. Headache. 2026. doi:10.1111/head.70199.

・CAR-T細胞を「体内で作る」時代へ―中国で自己免疫性神経疾患に対するin vivo CAR-T療法第1相試験!!
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月4日のFB投稿です***
CAR-T細胞療法は,もともと難治性の血液腫瘍に対して開発された治療ですが,近年,自己免疫疾患への応用が急速に進んでいます.CD19などを標的として自己反応性B細胞を徹底的に除去し,その後に新しいB細胞集団を再構築することで,単なる免疫抑制ではなく「免疫系のリセット」を目指す治療です.しかし,従来のCAR-T療法では,患者さんからT細胞を採取し,体外で遺伝子導入,培養,品質管理を行ってから患者さんに戻す必要があります.さらに投与前にはリンパ球除去化学療法も必要であり,時間,費用,安全性の面で大きなハードルがありました.
最新号のNEJM誌のcorrespondenceに,中国の研究グループから短いながら驚くべき論文が報告されていました.上述の問題を一気に解決する可能性のある新しい方法で,患者さんのT細胞を体外に取り出すのではなく,レンチウイルスベクターを静脈内投与して,患者さんの体内で直接CD19 CAR-T細胞を作る「in vivo CAR-T療法」の報告です.
研究は医師主導の単群第1相試験で,対象は難治性自己免疫性神経疾患16例です.内訳は,進行型多発性硬化症(MS)7例(おそらくPPMSとSPMSをあわせたもの),MOG抗体関連疾患(MOGAD)3例,全身型重症筋無力症(gMG)3例,特発性炎症性筋疾患3例です.使用されたJY231は,CD19を標的とするCAR遺伝子をT細胞へ直接導入する既製のレンチウイルスベクターで,2.0×10^9 transducing units(遺伝子導入活性を示す単位)を1回静注しました.特に重要なのは,従来のCAR-T療法で必要だったリンパ球除去化学療法を行っていないことです!つまり,レンチウイルスベクターを点滴するだけで,患者さん自身の体をCAR-T細胞の「製造工場」にするという発想です.
まず安全性ですが,懸念されるimmune effector cell–associated neurotoxicity syndrome(ICANS)や,自己免疫疾患でCAR-T療法後に,もともと病変のあった臓器に一過性の炎症が起こるLICATS(local immune effector cell-associated toxicity syndrome)は認めませんでした.サイトカイン放出症候群(CRS)は16例中11例,69%に出現しましたが,すべてGrade 1で,一過性に経過し2週間以内に消失しました.3例ではGrade 3または4の好中球減少を認めましたが,いずれも完全に回復し,長期間持続する骨髄抑制は認めませんでした.少数例かつ短期観察ではありますが,少なくとも初期の安全性は比較的良好でした.
そして本研究で最も重要なのは,JY231を静注するだけで,全例の体内に本当にCAR-T細胞が作られたことです.CARベクターコピー数は投与後増加し,11日目に中央値53,962.5 copies/μg DNAのピークに達しました.一方,ベクター由来のp24蛋白は急速に消失し,4日目には血中で検出不能となりました.さらに単一細胞RNAシークエンスとフローサイトメトリーにより,CAR陽性細胞の99%以上がT細胞であることが確認されました.つまり,ベクターが無差別にさまざまな細胞へ入るのではなく,高い選択性でT細胞をCAR-T細胞へ変換していたことになります.
脳神経内科医として特に興味があるのは,中枢神経系への到達の有無です.進行型MSやMOGADでは,CARベクターコピー数が末梢血や骨髄だけでなく脳脊髄液でも検出され,むしろ脳脊髄液で高値となる例がありました.自己免疫性神経疾患では,中枢神経内に残存するB細胞や局所の免疫反応が治療抵抗性の原因となる可能性がありますが,今回の治療は末梢血のB細胞だけを除去する従来の治療と異なり,CAR-T細胞が中枢神経系まで到達できることが大きな利点になる可能性があります.
CAR-T細胞が増殖すると,末梢血B細胞は急速かつほぼ完全に消失しました.そして2か月後,B細胞が再び出現しましたが,回復したのは主としてnaive B細胞でした.さらにB細胞受容体のクローン解析では,治療前に存在していたB細胞クローンが治療後にはほぼ完全に置き換わっていました.単にB細胞を一時的に減らしただけではなく,病的な記憶を保持している可能性のある既存のB細胞集団をいったん除去し,新しいB細胞集団を作り直したわけです.著者らはこれを「systemic immunologic reset(全身性の免疫学的リセット)」と記載しています!!
臨床的にも興味深い変化が認められました.中央値6か月の追跡で,進行型MSではEDSSが低下し,運動機能,認知機能,疲労も改善しました.さらに脳脊髄液NfLとκ free light chain indexが低下し,神経軸索の障害と髄腔内免疫活動の双方が抑制された可能性があります.7例全例で,3または6か月後に新規造影病変や新規T2病変を認めませんでした.また18F-DPA-714 PET–MRIではミクログリア活性化も低下しました.CAR-T細胞が直接標的とするのはB細胞ですが,B細胞をリセットすることで,中枢神経系の炎症環境そのものが改善した可能性があります.
MOGADでは血清MOG抗体価が低下する傾向を示しました.gMGではQMGスコアとMG-ADLスコアが改善し,抗AChR抗体価も低下しました.特発性炎症性筋疾患でもMMT-8による筋力評価が改善し,CK値,画像上の筋炎所見,病原性自己抗体も改善しました.疾患ごとの症例数はわずか3~7例ですので有効性を証明したとはいえませんが,臨床症状,自己抗体,バイオマーカー,画像所見が概ね同じ方向に変化している点は注目されます.
図1を簡潔に説明すると,図Aでは,1回のJY231投与後に体内でCAR-T細胞が増殖し,末梢血に加えて骨髄や脳脊髄液にもCAR陽性細胞が認められることが示されています.図BではB細胞が急速に枯渇した後に再増殖する経過が,図Cでは再増殖したB細胞がnaive B細胞を主体とすることが示されています.図Dでは,代表例(症例1)において治療前のB細胞受容体クローンが治療後に置き換わる様子が示され,「免疫リセット」を分子レベルで捉えています.図EではMS,MOGAD,炎症性筋疾患,gMGの臨床指標が改善方向に変化し,図FではMSの代表例(症例 1)において,治療3か月後に18F-DPA-714 PET–MRIでミクログリア活性化の低下が示されています.
さらにSupplementary Videoには,進行型MS患者の治療前後の歩行が収録されています.治療前,1か月後,3か月後を比較すると,歩行が改善しているように見えますが,1例の動画ですので何とも言えない気もします.そもそも本研究は16例のみの単群第1相試験であり,疾患ごとの症例数はさらに少なく,中央値の追跡期間も6か月にすぎません.対照群もありませんので,「進行型MSを改善する治療が確立した」と解釈する段階ではありません.著者らも,より大規模かつ長期間の検討,可能であればランダム化比較試験が必要であると強調しています.
一方,長期的な安全性は今後の課題です.今回用いたレンチウイルスベクターは,CAR遺伝子をT細胞の染色体に組み込むため,CAR-T細胞の効果が長く続くことが期待されます.その反面,遺伝子が好ましくない場所に組み込まれ,細胞の異常な増殖を引き起こす可能性が理論上あります.今回の解析では,そのような異常なクローン増殖を示す所見は認められませんでした.ただし観察期間はまだ短く,長期的な安全性については今後慎重に追跡する必要があります.
しかしながら,本研究のインパクトはきわめて大きいと思います.従来のCAR-T療法は,「患者さんから細胞を取り出し,特別な施設でCAR-T細胞を製造してから戻す」という高度な細胞治療でした.今回の方法は,既製のレンチウイルスベクターを1回静注し,患者さんの体内でCAR-T細胞を作るという全く異なる発想です.なんと言ってもリンパ球除去化学療法が不要です.もし長期的な安全性と有効性が確認されれば,CAR-T療法は特殊な「細胞製剤」から,より広く使用できる「1回投与の遺伝子治療」へ変わる可能性があります.未来の脳神経内科医は,自己免疫性神経疾患をこのように治療しているのかもしれない——そんな未来を想像させる,proof-of-conceptとして非常に興味深い報告です.
Cheng YH, et al. Lentiviral In Vivo CD19 CAR T-Cell Therapy in Neurologic Autoimmune Disorders. N Engl J Med. 2026 Sep 3;395(9):926-929. doi: 10.1056/NEJMc2603114. PMID: 42685326.

・第38回 リベラルアーツ研究会『人魚の眠る家』のご案内
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月5日のFB投稿です***
日時:2026年9月8日(火)19時~21時
今回は,先日逝去された作家・東野圭吾氏の作品を取り上げます.課題図書は以前から決めていましたので,訃報を知ったときには「まさか」と驚きました.東野氏の作品は,皆さんと同様,私も大好きでした.最近では「マスカレイド」シリーズ,とりわけ新田浩介という主人公が好きで,今後の活躍をもう読むことができないと思うと,本当に残念です.
今回は,数ある名作のなかから,私にとって忘れられない一冊,2015年に発表され,映画化もされた『人魚の眠る家』を取り上げます(Amazonへのリンクはコメント欄).私は刊行後まもなく本作を読み,大きな衝撃を受けました.ブログでも紹介していますが,当時は,どこか近未来的なフィクションとして受け止めていました.しかし10年を経て読み返してみると,むしろ現代医療が直面しつつある問題を見事なまでに先取りして描いた作品であったことに気づかされます.
本作は,ミステリーという枠組みを超えて,「脳死を人の死と考えることができるのか」という,生と死をめぐる根源的な問いを真正面から投げかけます.読み進めるほどに,読者自身が「自分ならどうするだろうか?」と問い続けることになります.脳神経内科医の立場から読んでも,脳死,臓器移植,生命維持技術,そしてニューロテクノロジーの進歩に伴う臨床倫理上の問題を考えるうえで,きわめて示唆に富む作品です.
副読本として,『BRAIN and NERVE』2025年4月号の特集「脳死について知る」をお薦めします.あわせて読むと,東野氏が脳死や臓器移植をめぐる医学的・倫理的問題をいかに深く学び,丁寧な取材を重ねたうえで本作を執筆したことが,よりよく分かります.ちなみに『BRAIN and NERVE』2026年12月号(クリスマス号)には,『人魚の眠る家』を題材として,脳死と臓器移植について考察した私の小論文を掲載していただく予定です.こちらも楽しみにしていただければと思います.
医学の進歩によって,「生」と「死」の境界が揺さぶられるとき,私たち医療者は何をもって人の死と考え,何を選び,患者さんや家族とどのように向き合うべきなのでしょうか.東野圭吾氏が遺した『人魚の眠る家』を通して,皆さんと一緒に考えてみたいと思います.
課題図書:東野圭吾『人魚の眠る家』
※参加希望の学生はご連絡ください.
次回課題図書
仲野徹『生命科学者たちのむこうみずな日常と華麗なる研究』
歴史に名を残した18人の科学者たちの型破りな生き様と偉大な業績を,軽妙な語り口で解き明かした一冊です.とても面白く,科学への知的好奇心を大いに刺激してくれる名著です.

・シャルコーから予測符号化へ―神経理学療法の歴史と新時代@第24回日本神経理学療法学会学術大会
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月6日のFB投稿です***
昨日,グランキューブ大阪で開催された第24回日本神経理学療法学会学術大会で,特別講演の機会をいただきました.今回の大会テーマは「神経理学療法が紡ぐ足跡と新時代」です.これまでの歩みを振り返り,そこから未来を考えるという趣旨で,初日は「過去を学ぶ」,2日目は「新時代を考える」という構成でした.
特別講演では,『BRAIN and NERVE』誌でともに編集委員を務めさせていただいている東北大学名誉教授の虫明元先生とご一緒しました.虫明先生の演題は「神経生理学の歴史:神経機能理解の深化をたどる」です.神経科学の歴史を19世紀から21世紀まで4つの時代に分け,「脳をどのように理解してきたのか」という問いの変遷を鮮やかに示してくださいました.神経学の楽しさを改めて実感するご講演でした.
19世紀にはBrocaによる機能局在,Golgiの染色法とCajalによるニューロン説,Jacksonによる階層理論が登場し,「どこが機能を担うのか」が問われました.20世紀前半にはSherringtonのシナプスと反射統合,Pavlovの条件反射,Penfieldのホムンクルスなどを通して,「どうつながるのか」という理解へ進みます.さらに20世紀後半には,運動野における運動方向の符号化(運動の方向を神経細胞の活動として表現すること),前頭葉の階層構造,ワーキングメモリ,ミラーニューロンなどを通して,「脳は何を計算しているのか」という問いへと発展しました.そして21世紀には,問いは「脳はどのように未来を予測し,全体として協調するのか」へと進みます.大規模脳ネットワーク,agency,小脳の内部モデル,ドパミンによる報酬予測誤差,そしてFristonの自由エネルギー原理へと展開していきました.とくに印象的だったのは,「脳は未来を予測し,現実とのずれである予測誤差を使って内部モデルを更新している」という考え方です.この視点に立てば,リハビリテーションとは単に筋肉を動かす訓練ではなく,脳が持っている身体や運動についての「予測」を修正し,内部モデルを再構築していく営みと考えることができます.
講演後には虫明先生と食事をご一緒し,講演中に浮かんだ疑問を直接お聞きすることができました.神経生理学の第一人者にゆっくり質問できるという,本当に幸せで贅沢な時間でした.また,森岡周先生(畿央大学),吉尾雅春先生(千里リハビリテーション病院)のとても印象的なご講演も拝聴し,ニューロリハビリテーションについてもっと勉強したいと思いました.
一方,私の講演は,大会長の松田淳子先生(大阪行岡医療大学医療学部理学療法学科)から「神経症候学の歴史について話してほしい」とご依頼いただき,「神経症候学の成立と発展:機能性神経障害をめぐって」というタイトルにしました.スライドはこちらからご覧いただけます(https://www.docswell.com/…/800…/Z8N6PQ-2026-09-06-043554).前半では,19世紀のサルペトリエール病院におけるJean-Martin CharcotとJoseph Babinskiらのヒステリー研究を出発点として,近代神経症候学がどのように成立したのかをお話ししました.彼らはヒステリーを器質性神経疾患と区別するため,患者を徹底して観察し,症候を記述し,診察によって病態を見極めようとしました.さらにCharcotに学び,その臨床医学を日本に持ち帰った三浦謹之助についても紹介しました.後半では,かつて「ヒステリー」と呼ばれた病態が,現在の機能性神経障害(FND)へとどのように変遷したのかを取り上げました.現代のFND診療で重要なのは,「検査で異常がないからFND」という除外診断ではなく,Hoover徴候などの陽性徴候を神経診察によって見いだし,積極的に診断すること(rule-in diagnosis)です.これはまさにCharcotやBabinskiから続く神経症候学の現代版と言えると思います.
さらにFNDでは,理学療法を中心とするリハビリテーションが非常に重要です.ただし,器質性疾患とは少し発想が異なります.「うまく動かそう」と症状に注意を集中し,強く随意的努力を行うほど,かえって動作が難しくなることがあります.そこで,リズムや音,物体操作など外的な課題に注意を向けることで,過剰な自己監視から離れ,本来持っている自動的な運動を引き出していきます.
ここで,虫明先生のご講演と私の講演が思いがけずつながりました.FNDを予測符号化の立場から考えると,症状への過剰な注意によって誤った予測の重みが強まり,知覚や運動を支配している可能性があります.であれば重要なのは,患者さんに「正しく動かそう」と意識させ続けるのではなく,いかに症状への注意を外し,「実際にうまく動けた」という新しい経験から脳の予測を更新するかということになります.今回は,「予測誤差をどのように軽減するのか」「いかに症状への過度な注意を減らしながら改善へ導くのか」という点について,理学療法士の先生方と議論させていただきました.講演後には,これまで経験したことがないほど多くのご質問をいただきました.実際にFND患者さんを担当するなかでの悩みや,具体的なリハビリテーションの工夫などを率直にお聞かせいただき,私自身にとっても大変勉強になる時間でした.
今回の大会テーマである「神経理学療法が紡ぐ足跡と新時代」は,改めて神経学の魅力を感じさせるものでした.Broca,Jackson,Sherrington,Charcot,Babinskiらが築いた神経学・神経生理学の歴史の先に,内部モデル,agency,ネットワーク,予測符号化といった現代神経科学があります.そして最新の神経科学がいま,再び患者さんの「症候を診る」という臨床に戻ってきています.新時代の神経リハビリテーションでは,失われた運動を繰り返し練習するだけではなく,脳がもつ身体と運動の「予測」を,よりよい方向へ更新していくことが求められるのかもしれません.歴史を学ぶことが,直接的に未来の臨床につながることを実感した一日でした.

・医療AIの本当のインパクトは,患者の「trajectory(軌跡)」中心の医療への転換にあるかもしれない!
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月7日のFB投稿です***
最新号のLancetに,たった1ページながら印象的なPerspectiveが掲載されています.著者はScripps研究所のEric J Topol氏らです.この論文が提示するのは,患者の診療記録を単なるデータの集まりではなく,数年,数十年にわたる「trajectory(軌跡)」としてAIに学習させるという,新しい医療AIの姿です.
その基盤となるのが耳慣れない「tokenisation(トークン化)」という用語です.診断名,検査値,薬剤,診療記録,画像,さらに出来事と出来事の時間間隔などを,AIが処理できる単位であるtokenに変換します.これらを時間順に学習することで,患者の長い診療経過全体を一つの「representation(表現)」として捉えます.つまり,一つの検査値や疾患を個別に予測するのではなく,その人がこれまでどのような軌跡をたどってきたかを丸ごと学習させるわけです.
すでにこの方向性でAIは急速に発展しているそうです.論文では5つのAIモデルが紹介され,約200万人のデータから1000を超える疾患の発症をモデル化するDelphi-2Mや,1億人以上,1000億件を超える医療イベントを扱うCuriosityなどが登場しています.さらに診療記録や画像,遺伝情報,multiomicsまで統合するモデルも開発されており,患者の長期的なtrajectoryをより包括的に捉える方向へ進んでいます.
論文の図上では,30歳から90歳までの時間軸上に,高脂血症,肥満,睡眠時無呼吸症候群,胃食道逆流症,心筋梗塞,心房細動,MCI(軽度認知障害),アルツハイマー病が並んでいます.重要なのは,「90歳でアルツハイマー病になった」という最後の一点ではなく,その数十年前から何が起こり,どのようなtrajectoryを経てそこに至ったのかを見ることです.trajectoryには病気や検査値だけでなく,治療がいつ行われ,その後どのような経過をたどったかという情報も含まれます.
図下は,この考え方から将来の医療をイメージして自作したものです.青線はAIが学習した「これまでの軌跡」を表します.大量の患者のtrajectoryが蓄積されれば,「この患者と似た軌跡をたどった人は,その後どうなったか」をもとに,現在地点から複数の未来を予測できる可能性があります.赤線はこのまま進んだ場合の高リスクの未来を,緑線は治療や生活習慣への介入によって,より良い未来へ軌道修正できる可能性を表しています.たとえば高血圧,脂質異常症,体重増加などを一連のtrajectoryとして捉え,将来の糖尿病や心血管疾患,認知症のリスク上昇を予測できれば,病気が完成する前に先手を打つことができます.介入後には新しいデータをもとに未来予測も更新されます.私なりに例えると,将来の医療AIは,未来を一度だけ言い当てる「占い師」ではなく,進路が変わるたびにルートを再計算する「カーナビ」に近い感じがします.
また,類似したtrajectoryを大規模データから検索することで,希少疾患の診断や治験参加者の探索などにも応用できる可能性があります.一人の医師が経験できる症例数には限界がありますが,AIを介して膨大な患者の経験を診療に利用できるようになるわけです.
ただし,重要な限界もあります.「ある治療を受けた人はその後の経過が良かった」という傾向が見つかっても,その治療のおかげで良くなったとは限りません.AIは「何が一緒に起こったか」は見つけられても,「何が原因だったか」までは証明できないためです.また,AIが学習するtrajectoryは,患者の実際の人生そのものではなく,医療機関に記録された範囲に限られます.受診頻度や検査内容,医師の判断によって記録のされ方が変わるため,データには偏りが生じる可能性があります.
この論文を読んでもう一つ強く感じるのは,日本の医療データ基盤の課題です.trajectory型AIには,診断,検査値,画像,薬剤,治療介入,転帰などを,患者ごとに長期間つなげて蓄積することが不可欠です.しかし日本では,電子カルテの情報が医療機関やシステムごとに分断され,標準化や二次利用も十分に進んでいるとは言えません.新型コロナ・パンデミックの際にも,世界から次々に発表される論文を読み,日本とのデータ活用力の差を痛感しました.今回のように患者の「軌跡」そのものを学習するAIが登場すると,この差はさらに拡大するものと思われます.日本がこれ以上出遅れないためにも,医療データ基盤の整備はまさに急務だと思います.
この論文が示しているのは,医療が「あなたは何の病気ですか」という病名中心の考え方から,「あなたはいまどの軌跡の上にいて,この先どこへ向かい,どこでその軌跡を変えられるのか」を考える方向へ進む可能性です.病気が起きてから治療する医療から,未来の分岐を予測して先手を打つ医療へ,医療は変わっていくのだと思いました.医療AIの本当のインパクトは,この「trajectory中心の医療」への転換にあるのかもしれません.
Mahmood F, Topol EJ. Tokenising the patient journey: from records to representations. Lancet. 2026 Sep 5;408(10558):886. doi: 10.1016/S0140-6736(26)01773-3. PMID: 42692030.

・パーキンソン病・多系統萎縮症の自律神経障害をベッドサイドでどう診るか?――岐阜大学発実践的評価法
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月9日のFB投稿です***
パーキンソン病(PD)や多系統萎縮症(MSA)では,起立性低血圧,発汗異常,排尿障害,便秘などの自律神経障害がしばしば認められます.これらは患者さんの生活の質を低下させるだけでなく,とくにMSAでは診断や予後を考えるうえで重要な手がかりになります.一方,詳細な自律神経機能検査には特殊な設備や技術を必要とするものが多く,すべての施設で繰り返し行えるわけではありません.
今回,当科の森泰子先生を筆頭著者・取りまとめ役として,山原直紀先生,安藤知秀先生,大野陽哉先生,加藤雅彦先生,伊藤幹哉先生,児玉真由帆先生,金住俊一先生の若手のメンバーで,PDとMSAにおける自律神経障害をベッドサイドで系統的に評価するためのプロトコルをまとめ,Journal of Visualized Experiments(JoVE)誌に発表しました.この論文の特徴は,これまでさまざまな文献に散在していた簡便な自律神経評価法を,実際の診療で使いやすい形に体系化した点にあります.非常に教育的な良い論文になったと思います.森先生をはじめ,みなさん,お疲れさまでした.★リンク先はコメント欄をご覧ください.
さて評価は,循環,発汗,排尿,排便の4機能領域です.さらに各検査を,通常の診療環境で行える「Core」,簡単な機器を用いて追加する「Optional」,専門的な設備や技術を必要とする「Advanced」の3段階に分類しました(図1).まず問診と身体診察を行い,必要に応じて簡便な機器検査,さらに専門的検査へ進む流れが一目で分かります.まずベッドサイドから始めるという本論文の考え方を示しています.
循環機能では,立位で出現して臥位で改善するめまい,失神,視覚異常,疲労などを確認するとともに,手足の冷感や紫色調・蒼白を伴うcold-discolored extremitiesを評価します.この所見は剖検例でMSAの20.3%,PDの5.7%に認められ,現在のMSA診断基準でもsupportive clinical featureに位置づけられています.さらにMSAでは,この所見を有する患者ほど症状が重く,生存期間が短い傾向も報告されています.また,指を4℃の水に10秒間浸した後の皮膚温回復をみる「10秒間冷水負荷試験」では,MSAはPDより皮膚温の回復が速く,冷却11分後の温度を指標とすると,感度80.3%,特異度85.7%で両者を鑑別できる可能性が示されています(ただし小規模研究による探索的研究です).
能動的起立試験では,10分間の臥位安静後に立位となり,血圧と心拍数を10分間測定します.重要なのは3分で終了しないことです.3分以降に血圧が低下するdelayed orthostatic hypotensionがあるためです.また収縮期血圧が20 mmHgを超えて低下した場合にはΔHR/ΔSBPを計算し,0.5未満であれば神経原性起立性低血圧を示唆します.ただし,立位15秒以内に生じるinitial orthostatic hypotensionを捉えるには連続血圧測定が必要です.
発汗機能では,発汗低下,無汗,多汗の有無と分布を確認したうえで,視診・触診に加えてスプーンテストを行います.乾いたスプーンの背を皮膚上で滑らせ,発汗によってスプーンが止まるかどうかをみる,非常に簡単な検査です.thermoregulatory sweat testと比較した研究では,四肢での感度は低いものの,頸部では85%に達しました.また,100から7を順番に引く暗算によって精神性発汗を誘発し,手掌や足底の発汗を観察する方法も紹介しています.
もう一つ興味深いのが「指のしわテスト(finger wrinkling test)」です.手を40℃の温水に30分間浸し,指腹に生じるしわをGrade 0~4で評価します.図2には実際の指のしわと判定基準が示されています.特殊な装置を必要とせず,汗腺周囲の自律神経機能を間接的に評価できますが,皮膚の状態などにも影響されるため補助的な検査として用います.
排尿機能では,頻尿,夜間頻尿,尿意切迫,尿失禁だけでなく,尿勢低下,排尿開始遅延,腹圧排尿なども確認します.とくに重要なのが排尿後残尿量(post-void residual:PVR)です.MSAでは排尿障害が運動症状より先行することがあり,121例の前向き研究では18%が下部尿路症状のみで発症し,尿失禁は運動症状より平均2.8年前から認められていました.PVR増加によるPDとMSAの鑑別は感度34%と低い一方,特異度は95%であり,明らかな残尿増加はMSAを疑う重要な所見です.
排便機能では,排便回数,便性状,いきみ,残便感,出口閉塞感などを確認し,排便日誌やBristol Stool Form Scaleを用います.PDでは便秘は単なる生活上の問題ではなく,早期PD 465例を平均5.1年間追跡した研究で,便秘が重いほどその後の認知機能低下が大きいことが報告されています.さらに経腹的直腸超音波を用いると,便貯留をcrescent signやfull-moon signとして非侵襲的に評価できます.
自律神経機能は,室温,湿度,水分状態,食事,薬剤などさまざまな因子の影響を受けます.そこでTable 1では,循環,発汗,排尿の評価に影響する薬剤,その作用,休薬を検討する際の注意点などを整理しました.検査のために安易に薬剤を中止するのではなく,休薬の危険性を考慮し,継続する場合には薬剤の影響を踏まえて結果を解釈する必要があります.
やはり今回の論文でお伝えしたかったのは,自律神経障害の評価は,必ずしも特殊な検査から始める必要はないということです.問診し,皮膚を見て触り,立ってもらい,排尿や排便を記録してもらうだけでも,多くの重要な情報が得られます.図1に示したCore,Optional,Advancedという段階的な考え方を用いることで,自律神経障害を日常診療のなかで繰り返し評価し,早期発見,PDとMSAの鑑別,さらに疾患進行や予後の把握につなげることができます.
今後,実技の動画撮影も予定しており,今回ご紹介したベッドサイドでの自律神経評価法を,実際にご覧いただけるようになります.動画が公開されましたら,改めてご案内したいと思います.
Mori Y, Yamahara N, Ando T, Ono Y, Kato M, Ito M, Kodama M, Kanazumi S, Shimohata T. Protocols for Bedside Assessment of Autonomic Dysfunction in Parkinson’s Disease and Multiple System Atrophy. J Vis Exp. 2026 Sep 3;(235):e71986. doi:10.3791/71986. PMID: 42695590.

・マイハンマー2026(No. 39)まだ進化の余地があった打腱器!なんとヘッドが回転するPercuflex
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月9日のFB投稿です***
NHK「トリセツショー」でもご紹介いただいた私の打腱器(ハンマー)コレクションですが,もう集め尽くしたので,もう新しい型が追加されることはないと思っていました.ところが初めて見る,斬新な新型打腱器を入手しました.「ビーアイシー打診器(BIC Reflex Hammer)」150 gで,Amazonで購入しました(リンクはコメント欄).
製造しているのはドイツの医療機器メーカーで,本来の商品名は「CBC Percuflex」でした.メーカーのHPを調べてみると,なんと「Babinski,Trömner,Buck,Berlinerという4種類の打腱器の長所を統合したもの」と説明しています!!(リンクはコメント欄)
もし本当なら,Percuflexは,100年以上にわたって脳神経内科医が工夫してきたさまざまな打腱器の特徴を,現代的な形で「いいとこ取り」しようとした製品ということになります.そうなると,もう購入しないわけにはいきません(笑).Percuflexという名前は,おそらく「percussion(打診)」と「flexible(柔軟な)」を組み合わせた造語だと思いました.
長さ22 cmで,75 gと150 gの2種類があります.ヘッドはカラフルで,何種類か色の組み合わせがあります.私が選んだのは150 gのミント色です.ヘッドの形は既存のいずれとも違い,少し変わっています.最大の特徴は,なんといっても特許取得済みの回転式ヘッドです.360°回転,8段階で角度を固定できます.つまり,検者が打腱時に手首の角度を無理に変えるのではなく,叩きたい方向に合わせてあらかじめヘッドの向きを変えて使用します.腱反射の部位によって検者と患者の位置関係は変わりますので,これは単なるギミックではなく,意外に合理的な設計かもしれないと思いました.でも「本当に意味があるのかな?いちいち角度を変えるのは面倒かな?」と思いつつ,昨日,外来デビューで使用しました.思いの外,使いやすく,かつ面白いので,「これは楽しい」と診察しながら思わずニヤニヤしていました.
もう一つ気がついたのはハンドルがプラスチック製でわずかにしなることです.打腱器は単に腱を「叩く」道具ではなく,ある程度の重量を利用しながら振り子のように振り,適切な刺激を腱に伝える道具です.そのためヘッドの重量だけでなく,柄の柔軟性,重量バランスも使い心地を左右します.その点でなかなか良いハンマーだと思いました.75 gは試していませんが,おそらく150 gのほうが反射は出しやすいはずです.
打腱器という道具には,もはや新しい工夫を加える余地などないと思っていました.でも「ヘッドそのものを回転させればよい」という,ありそうでなかった発想を持ち込んだ点で,革新的なハンマーだと思いました.機会があればぜひお試しください.

・「ここまでわかってきた!プラスチックのカラダへの影響―子どもたちのために 今できることは?」講演・パネルトークに参加しました.
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月13日のFB投稿です***
子どもケミネット(有害化学物質から子どもを守るネットワーク)が主催する会に参加し,私は「マイクロ・ナノプラスチック 身体への危険性」というタイトルで講演しました.
講演では,近年急速に研究が進んでいるマイクロ・ナノプラスチック(MNPs)について,どのような経路で体内に入り,健康への影響がどこまで分かってきたのかをご紹介しました.とくに,頸動脈プラークや脳(図1の小さくキラキラ光っているもの),脳脊髄液からMNPsが検出され,脳卒中や認知症,パーキンソン病などとの関連を示唆する臨床・基礎・疫学研究が報告されていること,一方で因果関係についてはなお慎重な検証が必要であることをお話ししました.
子どもへの影響としては,MNPsが胎盤や臍帯血などからも検出されています.胎児や乳幼児は発達の重要な時期にあり,体重あたりの曝露量も多いことから,成人以上に影響を受けやすい可能性があります.今後さらに研究を進めるとともに,現時点でもできるところから曝露を減らし,「プラスタミネーション(プラスチック汚染)」への対策を進めることが重要だとお伝えしました.スライドはコメント欄のリンクからご覧いただけます.また,MNPsと認知症については,来月出版される本の中でも詳しく解説しました.
そして今回,とくに驚いたのが,人工芝の問題でした.環境ジャーナリストの栗岡理子さんから,「これもプラスチックだった!人工芝の問題」と題したお話がありました.学校や公園,スポーツ施設など,身近な場所で広く使われている人工芝ですが,最近の研究では,人工芝の芝葉そのものと,クッション性を持たせるための充填材の両方から,MNPsが継続的に発生することが指摘されています(Harusato A, et al. Environments. 2025;12(4):109;図2はこの論文より作成).芝葉や充填材は,摩耗に加え,紫外線,暑さ・寒さ,風雨などによって徐々に劣化・微細化します.そして生じたプラスチック粒子や有害化学物質は,風や雨水・排水を介して,土壌,河川,さらには海へと広がっていきます.人工芝が,都市環境における重要なプラスチック汚染源の一つになり得ることが分かってきています.
生態系への影響についてはすでに懸念が示されている一方で,ヒトの健康への影響はまだ十分に分かっていません.だからこそ,予防原則,すなわち科学的にすべてが証明されるのを待つのではなく,重大な影響の可能性があるなら,できる範囲で先に予防策を講じるという考え方に基づき,環境中への流出を減らす対策と,健康影響を明らかにする研究の両方が必要だと思います.人工芝がこれほど大きなプラスチック汚染源になり得ることを,ぜひ多くの方に知っていただきたいと感じました.
後半の約1時間のパネルトーク「子どもたちのために,今できることは?」も印象的でした.医師,研究者,環境ジャーナリスト,弁護士,地方議員,生活協同組合など,異なる立場の方々がこの問題に関心を持ち,それぞれの立場から取り組んでいることを知り,大変勉強になりました.
プラスチックは私たちの生活を便利で豊かなものにしてきましたが,近年の大量生産・大量使用が,人の健康や環境にどのような影響を及ぼすのかについては,まだ分かっていないことがたくさんあります.まずは知ること.そして,科学的なエビデンスを積み重ねながら,できることから変えていくこと.その大切さを改めて感じた一日でした.次世代の子どもたちのためにも,この問題を多くの方と共有していきたいと思います.

・頭蓋骨骨髄は「脳のすぐ隣の免疫器官」である―Nature論文と慢性疼痛研究が示す新しい神経免疫の世界
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月14日のFB投稿です***
2年前に,日本神経学会Residentホームページに「近未来の脳神経内科は頭蓋骨から診断し治療する!」という原稿を執筆させていただきました.きっかけはCOVID-19の研究でした.2023年,RongらはSARS-CoV-2のスパイク蛋白が頭蓋骨骨髄や髄膜に蓄積し,両者をつなぐ微小な通路にも認められることを報告しました.その後,KolabasらはCell誌で,この頭蓋骨・髄膜結合(skull-meninges connection;SMC)をヒトとマウスで詳細に解析し,さらに頭蓋骨骨髄が他の骨髄とは異なる独自の免疫学的特徴をもつことを明らかにしました.つまり頭蓋骨は単に脳を守る骨ではなく,内部の骨髄が脳と密接に情報をやり取りしているのではないか,という新しい考え方が生まれました.今回ご紹介する2つの研究は,この流れをさらに大きく発展させるものです.
ひとつめはWashington University in St. LouisのParkらによるNature論文です.頭蓋骨骨髄に,中枢神経系を監視するリンパ組織様構造が存在することを示しました.図1は後頭骨のwhole-mount免疫組織化学像で,CD20陽性B細胞,CD4陽性T細胞,MHC-II陽性抗原提示細胞が集まり,クラスターを形成している様子が明瞭に示されています.さらにCXCL13,BAFF,S1PR2など,胚中心様反応に関わる分子も確認されました.つまり頭蓋骨骨髄は単なる造血の場ではなく,「T細胞とB細胞が局所で相互作用し,胚中心様の獲得免疫応答を形成しうる場所である」ということです.
次に著者らは,このリンパ組織様構造が実際に脳からの情報に反応できるのかを調べました.まずマウスの線条体にAAVベクターを注入し,神経細胞に実験用の抗原HEL-OVAを作らせると,その抗原が頭蓋骨骨髄まで届くことを確認しました.さらに組み換えマウス由来の抗原HEL-OVAを認識できるT細胞とB細胞を体内に入れて追跡すると,頭蓋骨骨髄でT細胞が活性化し,B細胞にも胚中心様反応が起こりました.つまり頭蓋骨骨髄は,単に免疫細胞が集まっている場所ではなく,「脳で生じた抗原情報を受け取り,それに応じて獲得免疫応答を立ち上げる場所である」ことが示されたのです.
さらに,この免疫構造が病態にも関与することが示されました.頭皮下から,T細胞からB細胞への活性化シグナルを遮断する抗CD40L抗体を投与すると,脳腫瘍モデルマウスの生存期間は短縮しました.逆に,CD40刺激抗体にIL-21とIFNγを組み合わせ,頭蓋骨骨髄のB細胞応答を高めると,抗腫瘍免疫が増強され,生存期間が延長しました.つまり頭蓋骨骨髄は「治療標的にもなりうる免疫拠点である」ことが示されたのです.
2つめはMassachusetts General Hospitalを中心とするチームによるScience Translational Medicine誌の研究です.ヒト慢性疼痛患者において,頭蓋骨骨髄のTSPO PETシグナルが上昇することを示しました. TSPOは脳内では神経炎症を可視化するPET指標として広く用いられ,しばしばミクログリア活性化と関連づけられますが,頭蓋骨骨髄ではミクログリアはなく,その代わり骨髄球系細胞を中心とする免疫細胞密度を反映する指標と考えられます.慢性腰痛88例,変形性膝関節症37例,健常対照22例を対象に,TSPOを標的とする[11C]PBR28 PET/MRIで頭蓋骨骨髄を評価したところ,慢性腰痛群,変形性膝関節症群のいずれでも健常者より高値で,後者で最も高いシグナルが認められました(図2).初めて見る図ですが,頭蓋骨の広い範囲でTSPOシグナルが上昇し,とくに前頭部と頭頂部で顕著でした.さらにTSPOシグナルが高いほど,痛みの強さや生活への支障,不安,抑うつも強いことが示されました.ただし横断研究であるため,頭蓋骨骨髄の変化が慢性疼痛の原因なのか,それとも結果なのかまでは分かりません.
以上の2つの研究を合わせると,興味深い構図が見えてきます.前者は,頭蓋骨骨髄にリンパ組織様構造があり,脳由来抗原に対する獲得免疫応答が起こることを示しました.一方,後者は,ヒト慢性疼痛で,骨髄球系細胞を中心とする自然免疫系の変化が頭蓋骨骨髄に生じている可能性を示しました.見ている細胞系は異なりますが,両者を合わせると,頭蓋骨骨髄が自然免疫と獲得免疫の双方に関わる,脳に最も近い免疫監視拠点である可能性が浮かび上がります.
この視点は脳神経内科医にとっても非常に魅力的です.慢性疼痛や脳腫瘍だけでなく,認知症,脳卒中,自己免疫性脳炎,神経変性疾患などでも,頭蓋骨骨髄がどのように関与するのか注目されます.これまで見落とされてきた「脳のすぐ隣の免疫器官」が,将来,新しいバイオマーカーや治療標的になるかもしれません.
Park JH, et al. Functional role of skull lymphoid structures in CNS immunosurveillance. Nature. 2026. doi:10.1038/s41586-026-10951-4.
Mohammadian M, et al. Elevated translocator protein in skull bone marrow is linked to human chronic pain. Sci Transl Med. 2026;18(865):eaed8729. doi:10.1126/scitranslmed.aed8729. PMID: 42685155.

・「知らなければ害になる」―医学部5年生に初めて「機能性神経障害」を講義して考えたこと
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月15日のFB投稿です***
先週,医学部5年生の臨床講義で,初めて機能性神経障害(FND)を取り上げました.かつてはヒステリー,心因性疾患,転換性障害,身体表現性障害などと呼ばれてきた疾患です.これまで私がFNDを卒前教育で講義することには迷いがありました.その理由は,FNDの診断では,Hoover徴候やdistractibilityなど,神経診察で得られる「陽性徴候」を正しく評価することが重要であり,まだ基本的な神経診察を十分に身につけていない医学生に教えるのは難しいのではないか,と考えていたためです.
しかし,臨床実習で私の外来を見学する学生たちの反応を見て,考えが変わりました.FNDの患者さんの診療を実際に見た学生は,しばしば強い印象を受けます.とくに,長く診断がつかなかった患者さんに,診察所見を示しながら病態を説明し,診断をお伝えしたときに患者さんやご家族が安堵される姿は,学生にとっても忘れがたい経験になるようでした.
さらに,卒前教育でFNDを学ぶ機会がなければ,医師になってからもFNDを十分に知らないまま診療を続けてしまう可能性があります.FNDは決してまれな疾患ではありません.むしろcommon diseaseです.それにもかかわらず,存在を知らなければ鑑別診断に挙がらず,「検査では異常がない」「心因性ではないか」といった説明だけで終わってしまいます.そこで今回,思い切って5年生に初めて講義してみました.講義後,学生のみなさんの感想を読んで,予想以上に彼らがFNDの本質を理解してくれていることに驚きました.
「機能性神経障害は器質的疾患をすべて除外してから診断するわけではないということが,これまでの授業ではほとんど聞いたことのない考え方で,衝撃的でした」
「この疾患は除外診断ではなく,陽性徴候によって診断するという点が最も印象に残りました」
「研修医になってFNDの患者さんに出会ったら,Hoover徴候やdistractibilityを確認してみようと思います」
FNDは,「何も異常が見つからなかったからつける診断」ではありません.症状の特徴や診察で得られる陽性徴候から,積極的に診断する疾患です.この点はしっかり伝わったようでした.
一方,さらに印象的だったのは,医師の「知識」と「態度」に関する感想でした.
「無知であるということが患者さんを苦しめることになるため,病気を知っていること,鑑別診断の候補に挙げることが大切だと思った」
「知らなければ害になることを学んだ」
「医師は知識不足によって,患者さんに不利益を与え得る存在であることを改めて認識しました」
疾患を知らないことは,単に診断できないというだけではありません.不必要な検査を繰り返したり,患者さんの訴えを否定したり,適切な治療へのアクセスを遅らせたりすることにつながります.FNDでは,とくにその影響が大きいと思います.
また,診断や説明そのものが患者さんを助けることにも,多くの学生が気づいてくれました.
「患者さんの訴える症状を医師が認めること自体が治療になるのだと思いました」
「診断をつけることが,患者さんの心理的な不安を軽減することもあるという視点はなかったので,知ることができてよかったです」
「ポリクリでFNDの患者さんの外来を見学しました.診断が下ったときの患者さんとご家族の涙が印象的でした」
FNDの診療では,「症状は本当に存在している」と認めること,診察で得られた所見を患者さんと共有すること,そして回復可能性を含めて病態を説明することが重要です.患者さんにとって,自分の症状に名前がつき,医師が理解してくれたと感じられること自体が,治療の第一歩になることがあります.
また,「原因が一見分からない症状に対しても,安易に心因性と決めつけず,丁寧な診察から確かな所見を見出す姿勢を大切にしたい」という感想もありました.FNDを教えることは,一つの疾患を教えるだけではなく,「分からない症状を訴える患者さんに,医師としてどう向き合うか」を考える教育にもなりうるのだと思います.また救急医療を志望する学生からは,「救急医だからこそ知っておかなければならない」との感想もありました.また,「すべての医師がFNDの存在を知っておくことで,患者さんをたらい回しにして辛い思いをさせる事態を防げる」と書いた学生もいました.
今回講義をしてみて,医学部5年生にFNDのすべてを理解してもらう必要はないのだと気づきました.まずは,FNDという疾患があることを知ること.除外診断ではなく,陽性徴候に基づいて診断する疾患であることを知ること.患者さんの症状を否定しないこと.そして,自分だけで対応が難しければ適切な専門医につなぐこと.それだけでも,将来その学生が出会う患者さんの診療は大きく変わる可能性があります.
これまで私は,「神経診察を十分に習得してからでなければ,FNDを教えるのは難しい」と考えていました.しかし今回の学生たちの感想を読んで,むしろ逆なのかもしれないと思うようになりました.FNDを完全に診断できるようになってから知るのではなく,医師になる前に,まずその存在と診療の基本姿勢を知っておくことが大切なのだと思います.

・いよいよ分かってきた!アルツハイマー病で血液脳関門が破綻するメカニズム「APOE ε4→フィブロネクチン→血液脳関門破綻」
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月17日のFB投稿です***
アルツハイマー病(AD)の遺伝的危険因子であるAPOE ε4は,アミロイドβ(Aβ)蓄積だけでなく,血液脳関門(BBB)の破綻にも関与することが,動的造影MRIなどから分かっていました.しかし,APOE ε4という遺伝的背景が,どのような分子機序でBBB破綻につながるのかは不明でした.今回Nature Aging誌に,その両者をつなぐ分子として,細胞外マトリックス蛋白フィブロネクチン1(fibronectin 1:FN1)を同定した研究が報告されました.研究は米国Columbia University Irving Medical Centerを中心に行われ,ヒト剖検脳,脳脊髄液,single-nucleus RNA sequencing,ヒトiPS細胞,3次元血管モデル,マウス,ゼブラフィッシュを用いた多面的な検証が行われています.
著者らは以前,APOE ε4を持つAD患者では,アストロサイトと脳血管が接する領域(gliovascular interface)にFN1が蓄積すること,さらにFN1の機能喪失型遺伝子変異を持つAPOE ε4保有者ではADリスクが約71%低下することを報告していました.そこで今回,FN1が単なる病態マーカーではなく,APOE ε4とBBB障害をつなぐ分子ではないかと考えました.
ヒト剖検脳では,ADや高度の脳細動脈硬化を有する脳で,血管周囲へのFN1沈着が増加していました.またAPOE ε4/ε4 knock-inマウスでは,APOE ε3/ε3マウスと比較してFN1が約2倍に増加し,フィブリノーゲンの血管外漏出も増えていました.さらにAPOE ε4/ε4のヒトiPS細胞由来アストロサイトではFN1が増加し,正常な線維状構造ではなく無定形の沈着物を形成していました.single-nucleus RNA sequencingや多重免疫染色でも,FN1増加は特にアストロサイトで顕著でした.
Aβ42や炎症もFN1を増加させました.ヒト初代アストロサイトの3次元培養系では,Aβ42やTNFによってFN1発現が増加し,TNF刺激ではNF-κBシグナルの活性化と反応性アストロサイト化も認められました.一方,IL-4はこれらを抑制しました.さらに大規模脳バンク研究ROSMAPのヒト脳データでも,炎症性の反応性アストロサイトでFN1発現が特に高いことが確認されました.つまり,APOE ε4という遺伝的背景にAβ蓄積や炎症が重なることで,血管周囲へのFN1蓄積がさらに進むと考えられます.
本研究の核心は,蓄積したFN1がBBBを障害する仕組みを明らかにした点です.FN1はアストロサイト表面のintegrinを介してfocal adhesion kinase(FAK)を活性化し,BBBの恒常性維持に重要なVEGFAを低下させました.逆にFN1を減らしたり,FAKやintegrinを阻害したりするとVEGFAは回復しました.つまり,「FN1増加→integrin-FAK活性化→VEGFA低下」という経路があるようです.
この関係を端的に示す実験が図1です.APOE ε4/ε4のヒトiPS細胞由来アストロサイトでは,APOE ε3/ε3と比較してVEGFAが19.4%低下していました.さらにAPOE ε3/ε3アストロサイトでも,培養皿をFN1でコーティングするだけでVEGFAが25.7%低下しました.つまり,FN1を増やすだけでAPOE ε4に似た異常を再現できたことになり,FN1が単なる結果ではなく病態を媒介する原因となる分子であることを強く示唆します.
さらにVEGFAが低下すると,血管内皮細胞のHB-EGF(ヘパリン結合性EGF様増殖因子)が低下し,続いてアストロサイトのIGF-1も低下しました.著者らは,「FN1増加→integrin-FAK活性化→アストロサイトVEGFA低下→血管内皮HB-EGF低下→アストロサイトIGF-1低下」というシグナル経路を提唱しています(図2).ゼブラフィッシュでVEGFシグナルを遮断するとHB-EGFが約28%低下し,毛細血管のZO-1局在も低下しましたが,HB-EGFとIGF-1を補充すると回復しました.ヒトAD脳やAPP knock-inマウスでもVEGFA,HB-EGF,IGF-1はいずれも低下していました.さらに,ゼブラフィッシュのアストログリアでFN1を人工的に過剰発現させるだけで,血管外へのdextran漏出が生じました.つまりFN1増加はBBB障害に伴う単なる変化ではなく,それ自体がBBBの透過性を高める原因になり得ることが示されました.
これまでAD研究ではAβやタウ,神経細胞に注目が集まりがちでした.しかし本研究は,アストロサイト,細胞外マトリックス,脳血管からなる「gliovascular interface(アストロサイト-血管界面)」の異常が,APOE ε4によるBBB障害を媒介することを示しています.FN1は新たな治療標的となる可能性が出てきました.ADを「神経細胞だけの病気」ではなく,「脳血管を含む脳内環境全体の恒常性が崩れる病気」と捉え直すうえでも,非常に興味深い研究だと思います.
Bhattarai P,et al.Fibronectin mediates APOE4-driven blood–brain barrier dysfunction in Alzheimer’s disease.Nat Aging.2026;6:1901–1927.doi:10.1038/s43587-026-01204-0.PMID:42728404.

・機能性神経障害(FND)はどのような神経疾患に併存するのか?―驚くべきことに多発性硬化症では,7人に1人が機能性神経症状を呈する
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月20日のFB投稿です***
国際医療福祉大学市川総合病院,柴田護教授にお招きいただき,「機能性神経障害(FND)の診療~パーキンソン病との違いを含めて~」という講演をさせていただきました.FNDではパーキンソニズム様症状を呈することがあります.そのなかには機能性振戦,機能性姿勢保持障害,機能性パーキンソニズムが含まれます.講演では動画を用いて,それぞれの陽性徴候をご紹介しました.厄介なのはパーキンソン病患者さんにFNDが併存(overlay)することがときどきあることです.患者さんが症状の増悪を訴えて,抗パーキンソン薬を増量・追加しても当然効かず,頭を悩ますことになります.
このような器質性神経疾患におけるFNDの併存は重要な問題で,近年,とくに併存しやすい神経疾患も分かってきています.大規模コホート研究では,FND患者の78.5%に何らかの器質性神経疾患の併存が記録され,てんかん,片頭痛,多発神経障害などが高頻度に認められています1).また,機能性運動障害を対象とした多施設研究では約22%に器質性神経疾患が併存し,片頭痛,脳血管障害,パーキンソニズム,てんかん,多発性硬化症(MS)などが報告されています2).
当科のメンバーはFNDの陽性徴候の診察はかなりマスターしていますが,次の段階,つまり器質性神経疾患の増悪なのか,overlayするFNDによるものかの鑑別に苦労しています.今週の回診でも,MS患者におけるFNDの併存についての議論になりました.既報でも,MSでは責任病変だけでは説明できない症状が比較的高頻度に認められることが報告されています3).今回,主治医の先生に紹介した論文は,アデレード大学を中心とする国際共同研究で,MS患者にみられる「機能性神経症状(functional neurologic symptoms:FNS)」の頻度と特徴を検討したものです4).
MS専門外来を受診した18~64歳のMS,clinically isolated syndrome,radiologically isolated syndrome患者411名を対象とした後ろ向き研究です.本研究では,FNSを広く定義し,①FNDと診断された患者,②MSにFNDが併存するoverlayと診断された患者,③正式なFND診断はないものの,Hoover徴候,give-way weakness,振戦のdistractibilityやentrainment,機能性歩行など,FNDを支持する陽性徴候が認められた患者も含めています.さらに,持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)や機能性認知障害(FCD)の患者も対象としています.
さて結果ですが,411名中62名(15.1%),つまり約7人に1人にFNSが認められました.内訳は,FNDが20名(4.9%),functional overlayが11名(2.7%),正式な診断はないもののFNDの陽性徴候を認めた患者が31名(7.5%)でした.FNS群の88.7%では,身体診察で少なくとも1つのFND陽性徴候が確認されていました.症状としては,歩行・バランス障害が46.8%,四肢筋力低下が43.5%と多く,振戦16.1%,認知症状12.9%,感覚症状8.1%と続きました.具体的な診察所見では,疼痛では説明できないgive-way/collapsing weaknessが最も多く,機能性歩行,windmilling gait,可変性・注意転換可能な振戦,Hoover徴候などが認められました.ちなみにcollapsing weaknessは突然,力が抜けるようにみえる筋力低下のことです.
多変量解析では,FNSの併存と独立して関連する因子として,女性(OR 7.02),疲労(OR 4.74),認知症状(OR 4.00),慢性疼痛(OR 3.07),片頭痛(OR 2.38)が示されました(図1).ただし,これらはFNSとの関連を示したものであり,FNSの発症リスクを高めることが証明されたわけではありません.一方,MSの病型,罹病期間,疾患修飾薬の使用には明確な差がありませんでした.つまり,単純に重症なMSにFNSが生じるわけではなさそうです.以上を踏まえると,MS患者で疲労,認知症状,慢性疼痛,片頭痛が目立つ場合には,FNDの併存も念頭に置き,陽性徴候を確認することが重要です.
研究の限界としては,単施設の後ろ向き研究であり,診療録の記載に依存していること,FNDだけでなくPPPDや機能性認知障害,陽性徴候のみの患者も含むことなどです.したがって,「MS患者の15%がFNDである」と解釈するのは正確ではなく,MS専門外来では,FNDを示唆する陽性徴候を含む機能性神経症状が15%に認められたと理解すべきです.
いずれにせよ,本研究が示した重要な点は,器質性神経疾患とFNDは二者択一ではなく,両者が併存しうるということです.MRIで説明できない症候を認めた場合,MRIで検出できないながらも器質的病変によって神経症候学的に説明できるのか,あるいはFNDを支持する陽性徴候が認められるのかを丁寧に評価する必要があります.つまり,Hoover徴候やdistractibilityなどの陽性徴候を積極的に確認し,MSによる症候とFNDによる症候をそれぞれ適切に診断する姿勢が重要です. これはMSだけでなく,てんかん,Parkinson病,脳卒中など,他の器質性神経疾患を診療する際にも共通する重要な視点だと思います.
1)Asan L, Lynch-Kelly K, Berlot R, et al. Comorbidities and Outcomes in People With Functional Neurological Disorder. JAMA Neurol. 2026.
2)Tinazzi M, Geroin C, Erro R, et al. Functional motor disorders associated with other neurological diseases: Beyond the boundaries of “organic” neurology. Eur J Neurol. 2021;28:1752-1758.
3)Walzl D, Solomon AJ, Stone J. Functional neurological disorder and multiple sclerosis: a systematic review of misdiagnosis and clinical overlap. J Neurol. 2022;269:654-663.
4)Collins LC, Bagster MM, Tamlin L, et al. Functional Neurologic Symptoms in Multiple Sclerosis: Estimated Prevalence and Associated Comorbidities. Neurol Clin Pract. 2026;16(1):e200569. doi:10.1212/CPJ.0000000000200569. PMID: 41726793.

・朝日新聞に「機能性神経障害」について取り上げていただきました!
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月21日のFB投稿です***
昨日の朝日新聞の紙面,「医療」欄で,機能性神経障害について解説する機会をいただきました.
機能性神経障害は,運動麻痺やふるえ,けいれん,しびれ,感覚障害など,さまざまな神経症状を起こす病気です.「気のせい」でも「演技」でもなく,脳や神経に症状を説明するような構造的な損傷がなくても,神経の働き方がうまくいかなくなることで症状が出ます.どの年代の人にも生じますが,若い世代,とくに女性に多いことも知られています.
では,どう診断するのでしょうか.以前は「ほかの病気ではないこと」を確認して診断する方法(除外診断)が主流でしたが,現在は診察でみられる特徴的な所見(陽性徴候)を手がかりに,積極的に診断します(rule-in診断).たとえば,注意が別のことに向くと症状が軽くなる,動かし方によって力が入りやすくなる,といった所見が重要です.
治療はどうするのでしょうか.まず,患者さん自身がこの病気の仕組みを正しく理解することが大切です.そのうえで,認知行動療法やこの病気に合ったリハビリテーションなどを組み合わせ,一歩ずつ本来の動きや感覚を取り戻していくことを目指します.早めに脳神経内科などの専門医に相談することが大切です.
機能性神経障害は,まだ十分に知られていない一方で,決して珍しい病気ではありません.正しい理解が広がり,必要な方に適切な診断と治療が届くことを願っています.

・日本脳神経外科の父・中田瑞穂先生の足跡を訪ねて ― 科学も文学も絵もその根底はすべて「観察」
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月22日のFB投稿です***
シルバーウィークを新潟市で過ごしています.「にいがた文化の記憶館」で開催されている企画展「脳神経外科医×芸術家 中田瑞穂」を見学しました(図1).中田瑞穂先生(1893~1975)は,日本の脳神経外科の発展に多大な貢献をされた医学者であり,私が神経学を学んだ新潟大学脳研究所の初代所長として,その歴史を語るうえでも欠かすことのできない人物です.今回の展覧会では,医学者としての業績だけでなく,俳句や書,絵画など,芸術家としての一面も紹介されていました.
中田先生は1925年から約2年半にわたり欧米で外科修業を重ね,近代脳神経外科の父と呼ばれ,クッシング病の名前の由来にもなったHarvey Cushing先生や,Walter Dandy先生の手術を米国で直接見学されました.展示されていたCushing先生の水彩画は,中田先生自身が描かれたもので,手術着姿で何かを書き留める横顔が写実的に表現されていました.世界の最先端の医学を学ぼうとする若き中田先生の,鋭い観察眼が伝わってくるような作品でした.
また,中田先生ご自身が揮毫された俳句の書も展示されていました.
◆「刻々と手術はすすむ深雪かな」
ドイツのハイデルベルク大学で,外科学教授Eugen Enderlen先生の手術を見学した際に詠まれた句です.緊張感に満ちた手術室で着実に進む手術と,外に静かに降り積もる深雪.その対照的な情景から,手術を見守る中田先生の緊張感と感動が伝わってくるようです.
そして,私が中田先生の句のなかで最も好きな一句の書も拝見できました.
◆「学問の静かに雪の降るは好き」
展示の解説によれば,この句が詠まれた1947年は,中田先生が母校・東京帝国大学から教授就任の打診を受けながらも,新潟に残って研究を続ける道を選ばれた年だったそうです.静かに雪が降る新潟の地で,学問に向き合うことを愛した先生の人柄と,研究に対する真摯な姿勢が伝わってきます.
また写実的な絵画も数点展示されていました.中田先生は,医学と芸術に共通するものとして,「観察」を何よりも大切にされていました.図2は,亡くなった患者さんの脳の解剖・検討(ブレインカッティング)を行う中田先生(中央)と,左側で標本を説明する神経病理学者の生田房弘先生です.中田先生ご自身が大脳半球摘除術を執刀された症例の脳を検討している場面だそうです(昭和46年6月21日).生田先生によれば,中田先生は「文学も絵も科学も,その根底にあるのは徹底した『観察』であり,それこそが原点であり,出発点である」と語られていたそうです.
驚かされるのは,中田先生がご自身の病気さえも観察の対象とされていたことです.1953年,60歳のときにワレンベルグ症候群(延髄外側症候群)を発症すると,自らの神経症候を詳細に記録し,その所見から延髄の病巣を推定されました.MRIのない時代に,自分自身の症候を丁寧に観察し,神経解剖学的な知識と照らし合わせて病巣の局在を推定するという,まさに神経症候学に基づく局在診断を実践されていたのです.
晩年のエピソードも印象的です.82歳の誕生日を迎えた翌朝,中田先生は生田先生に,自らの剖検依頼書を手渡されました.そこには,大脳と脊髄を切断せず,一塊として摘出してほしいという希望が記されていたそうです.そして,生田先生が部屋を出ようとしたとき,こうつぶやかれました.
「本当はね,僕も自分で見たいのだよ」
自らの神経症候を観察し,最後まで自分自身の脳を知ろうとされた,中田先生の尽きることのない探究心を象徴する言葉だと思います.
展覧会を見学した後,久しぶりに新潟大学の旭町キャンパスを訪れました.病院の玄関前には「ヒポクラテスの木」の石碑があり,「中田瑞穂 題」の文字が刻まれていました(図3).また,脳研究所の赤門をくぐったところには,「学問の静かに雪の降るは好き」の句碑があります(図4).私は若い頃,毎朝この句碑を眺めながら出勤していました.中田先生のように学問に真摯に向き合いたいという思いを育んでくれた,私にとって特別な一句です.学問に真摯に向き合う姿勢を,後輩の先生方にも受け継いでいただけたらと思います.
企画展「脳神経外科医×芸術家 中田瑞穂」は,にいがた文化の記憶館で2026年11月1日まで開催されています.
参考資料:新潟大学季刊広報誌『六花』2016年秋号,No.18,特集「日本の脳外科の父 中田瑞穂 その足跡を辿る」,pp.3–7.

・睡眠中の「ピンクノイズ(音刺激)」で脳脊髄液の流れが増加する!脳の老廃物排出を促し,認知症予防につながるか?
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月23日のFB投稿です***
睡眠には,脳内に蓄積した老廃物の排出を促す働きがあると考えられています.特にノンレム睡眠中には,脳波の徐波に同期して脳脊髄液が大きく流動することが知られており,アミロイドβやタウなどの老廃物の排出との関連から注目されています.一方,睡眠中に適切なタイミングで短い音を聞かせると,徐波を増強できることも知られています.しかし,音刺激によって脳脊髄液の流れも増加させられるかどうかは不明でした.この課題に挑んだ研究が,Science Translational Medicine誌に報告されました.米国ボストン大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)などの研究グループは,睡眠中の脳波に合わせた短い音刺激によって,ヒトの脳脊髄液の流れを増強できることを示しました.
研究では,健康成人14名にMRI装置内で昼寝をしてもらい,脳波と機能的MRI(fMRI)を同時に測定しました.AIを用いて徐波をリアルタイムに解析し,そのピーク付近に50ミリ秒(0.05秒)の短い「ピンクノイズ」を聞かせました.「ピンクノイズ」とは,低音成分が比較的豊富で,雨音や滝の音に似た雑音です.実際に聞いてみましたが,土砂降りではないものの,結構な雨量の雨音に感じました(リンクはコメント欄).ただし重要なのは,音を流し続けるのではなく,脳波の適切なタイミングに合わせて短く聞かせることです.この方法を閉ループ聴覚刺激(closed-loop auditory stimulation:CLAS)と呼びます.
実験では,刺激するタイミングを検出すると,50%の確率でピンクノイズを聞かせ,残り50%では音を流さない偽刺激としました.合計1,328回の音刺激と1,327回の偽刺激を比較したところ,音刺激後0.25~0.75秒に徐波活動が有意に増強しました.さらに,数秒後には脳脊髄液の流入も増加しました.この流入の変化は,高速fMRIを用いて測定しました.第4脳室に新たに流入する脳脊髄液が強いMRI信号を生じる現象を利用し,音刺激前後の信号の変化を比較しています.
図1で,音刺激後の脳脊髄液流入信号の変化を示しています.青線が音刺激,オレンジ線が偽刺激です.音刺激後5~7秒の信号変化は,音刺激群で4.30%,偽刺激群で1.72%となり,有意差が認められました(P<0.009).つまり,短いピンクノイズを適切なタイミングで聞かせることで,第4脳室への脳脊髄液流入が増加したということです.なお,この数値はMRI信号の変化率であり,実際の流量の増加率ではありません.
さらに興味深いのは,音刺激のタイミングによって効果が異なることです.徐波のピーク直前,ピーク直後,谷の直前,谷の直後を比較すると,ピーク直後に刺激した場合にのみ,脳脊髄液流入信号の有意な増加が認められました.単に音を聞かせるだけではダメで,脳波の適切なタイミングに合わせることが重要ということです.
では,なぜ徐波が増強すると脳脊髄液の流れが増加するのでしょうか?著者らは,脳の血液量の減少が関係していると考えています(図2;Science. 2019;366:628-631).頭蓋骨の中は限られた空間であるため,脳の血液量(赤)が減ると,その分を補うように脳脊髄液(青)が流れ込む可能性があります.実際,音刺激後には脳全体の血行動態に関連するMRI信号が低下し,脳脊髄液の流入増加との関連が認められました.つまり,「適切なタイミングのピンクノイズ刺激 → 徐波の増強 → 脳血液量の減少 → 脳脊髄液の流入増加」という仕組みが考えられます.
今回の研究は,睡眠中の短い音刺激によって,脳脊髄液の流れを人為的に増強できることを示しました.ただし,アミロイドβやタウなどの老廃物の排出量や,睡眠の質,認知機能への効果は検証されていません.今後,家庭でも使用できる脳波計と音刺激装置が開発され,高齢者やアルツハイマー病患者さんでも同様の効果が得られるか,さらに老廃物の排出や認知機能の改善につながるかを検証することが期待されます.睡眠中の短い音刺激が,将来,認知症予防の新たな方法につながるかもしれません.
Levitt J, et al. Closed-loop auditory stimulation in phase with slow waves during sleep enhances cerebrospinal fluid flow in humans. Sci Transl Med. 2026;18:eaea5469. doi: 10.1126/scitranslmed.aea5469. PMID: 42715349.

・自己抗体ができるだけでは発症しない―自己免疫性神経疾患の発症から再発までをつなぐ7段階のカスケード
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月24日のFB投稿です***
自己免疫性脳炎や視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD),MOG抗体関連疾患(MOGAD)では,病原性をもつ自己抗体が次々と発見され,標的分子によって疾患を定義する時代になりました.しかし,そもそもなぜ特定の人に特定の自己抗体が生じ,それがどのように中枢神経へ到達し,発症や再発を引き起こすのかについては不明の点が多く残されています.Brain誌に掲載された総説では,こうした一連の過程を「cascade to pathogenicity(病原性獲得へのカスケード)」として統一的に捉える考え方を提唱しています.
対象となる標的分子は,臨床で特に重要な6つの神経・グリア表面抗原,すなわちLGI1,NMDA受容体,CASPR2,IgLON5,AQP4,MOGです.論文では「Big six」と呼んでいます.著者らが強調するのは,これらの疾患は単に「自己抗体ができたから発症する」のではなく,遺伝的素因,感染や腫瘍などの誘因,免疫寛容の破綻,自己反応性B・T細胞の成熟,中枢神経への侵入,自己抗体による標的分子の機能障害,さらに慢性化や再発という複数の段階を経て成立するという点です.つまり自己抗体はこの長い過程の「最終産物」の一つにすぎない,という見方です.
この論文の考え方を最もよく示しているのが図1です.7つの段階,すなわち①遺伝的素因,②誘因,③免疫系の活性化,④自己抗原反応性リンパ球や抗体の中枢神経への侵入,⑤神経・グリアの機能障害,⑥慢性後遺症,⑦再発が時間軸に沿って示されています.注目すべきは,発症前の段階が長く,かつ複数の「hit」が必要と考えられている点です.
まず①遺伝的素因に関しては,LGI1抗体疾患ではHLA-DRB107:01,CASPR2抗体疾患ではHLA-DRB111:01,IgLON5抗体疾患ではHLA-DQB1*05:01との強い関連があり,これら3疾患はいずれも比較的高齢で発症し,IgG4が優位という共通点を示します.一方,NMDAR抗体脳炎やMOGADではHLAとの関連がより弱く,異なる免疫学的背景が想定されています.
②誘因には感染,腫瘍,免疫チェックポイント阻害薬などがあります.最もよく知られているのは,NMDAR抗体脳炎における単純ヘルペス脳炎や卵巣奇形腫です.前者では,感染によって神経細胞が障害されると,通常は免疫系から隔離されている中枢神経抗原が露出し,髄膜リンパ系を介して頸部リンパ節へ運ばれ,自己反応性リンパ球を刺激する可能性があります.しかし脳梗塞や頭部外傷では同様の自己免疫性脳炎が頻発するわけではなく,単なる組織障害だけでなく,感染特有の炎症環境が必要と考えられます.また卵巣奇形腫では,腫瘍内にNMDAR反応性B細胞や抗体が存在することが示されており,腫瘍そのものが自己免疫反応を立ち上げる場になっている可能性があります.
つぎが③の免疫系の活性化です.自己抗原反応性B細胞は,実は患者だけに存在するとは限りません.例えばCASPR2反応性ナイーブB細胞は健常者にも比較的高頻度で存在しますが,CASPR2反応性memory B cellは患者に特徴的です.つまり,「自己反応性B細胞を持っていること」よりも,それが骨髄や末梢リンパ組織に存在する免疫寛容のチェックポイントをすり抜け,胚中心で成熟することが発症に重要と考えられます.さらに,近年,話題になっている髄膜リンパ管を介して中枢神経由来抗原が集まる頸部リンパ節には,NMDARやAQP4反応性B細胞が存在し,AQP4-IgGが実際にリンパ節内で産生されることも報告されています.頸部リンパ節が「脳と免疫系を結ぶハブ」として機能している可能性は,非常に興味深い点です.
自己抗体が中枢神経へ到達した後,どのように神経障害を起こすかという④⑤をまとめたのが図2です.ここで重要なのは,自己抗体といってもその作用機序は各々大きく異なることです.AQP4-IgG1はアストロサイト足突起のAQP4に結合し,補体を強力に活性化して細胞障害を起こします.これに対してNMDAR-IgG1では,補体による神経細胞死よりも,受容体を架橋して細胞内へ取り込ませるinternalizationが中心で,NMDAR機能低下を生じます.LGI1抗体ではLGI1のinternalizationやLGI1とADAM22/23との結合阻害,CASPR2抗体ではCASPR2とcontactin-2の相互作用障害などが生じます.IgLON5抗体ではIgG1によるinternalizationとIgG4による蛋白間相互作用の阻害が想定されています.つまり,抗体の標的だけでなく,IgG1かIgG4か,抗原がどこにどの密度で存在するかによって病態が決まります.
とくにIgLON5抗体疾患は興味深く,自己免疫と神経変性をつなぐ疾患として位置づけられています.剖検脳ではタウ沈着より早い段階からIgG4沈着がみられ,患者由来IgGを神経細胞や動物へ作用させるとタウ蓄積が誘導されます.すなわち,「自己免疫が先に起こり,その結果として神経変性が生じる」という方向性を支持する稀なモデルです.
そして図3では,この「病原性獲得へのカスケード」のどこを治療標的にできるかをまとめています.抗CD20抗体はB細胞を除去しますが,長寿命形質細胞は十分に除去できません.抗CD19抗体はより広いB細胞系列を標的とし,抗CD38抗体やproteasome inhibitorは形質細胞を標的とします.さらにCAR-TはB細胞をより深く除去し,FcRn阻害薬は循環IgGを減少させます.AQP4陽性NMOSDでは,病原性抗体が引き起こす最終段階の補体活性化をC5阻害薬で遮断することにより,極めて高い再発抑制効果が得られています.この成功体験は,「疾患ごとにカスケードの最も重要な段階を見極め,そこだけを狙う」というprecision medicineの有効性を示しています.
さらに将来は,正常な免疫系を広く抑えるのではなく,病原性自己免疫反応だけを選択的に消去する治療が目標になります.例えば特定のHLA-自己抗原ペプチド-T細胞受容体の相互作用を遮断する方法,自己抗原を提示したCAAR-Tによって自己抗原反応性B細胞だけを除去する方法,病原性自己抗体だけを選択的に分解する方法,さらに患者自己抗体と標的分子との結合を無害な抗体で競合的に遮断する方法などが検討されています.著者らが目指しているのは,単なる「免疫抑制」ではなく,特定の自己抗原に対する異常な免疫記憶だけをリセットする治療です.
総説から分かるのは,自己抗体による神経疾患を理解するには,もはや抗体検査の結果だけを見ていてはいけないということだと思います.その抗体がなぜ生まれたのか(遺伝と誘因),どこでB細胞が成熟したのか,なぜ中枢神経へ移動したのか,どのように標的分子を障害したのか,そしてある患者では再発し,別の患者では単相性なのかまで考える必要があると思います.将来的にこのカスケードの各段階を患者ごとに解析できれば,自己免疫性神経疾患の治療は,現在の広範な免疫抑制から,原因となる免疫異常だけを狙う治療へ変わっていく可能性があります.それは「治癒」を目指す治療への道をひらくものになるのではないかと思います.
Montini F,et al.The cascade to pathogenicity in autoantibody-mediated CNS diseases.Brain.2026;149:2974–2993.doi:10.1093/brain/awag158.PMID:42081370.

・閉経に伴う血液タンパク質の変化が大きいほど,認知機能低下やアルツハイマー病の発症リスクが高い
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月25日のFB投稿です***
閉経は女性にとって重要な生物学的転換点です.エストロゲンの減少に伴い,ほてりや寝汗,睡眠障害などが生じますが,近年,閉経が脳の老化やアルツハイマー病(AD)の発症リスクにも関係する可能性が注目されています.しかし,その分子メカニズムは十分に解明されていません.今回,トロント大学などの国際共同研究チームは,閉経に伴う血液タンパク質の変化を解析し,その変化が脳の老化や将来の認知症リスクと関連することを明らかにし,Nature Medicine誌に発表しました.
著者らはまず,43~58歳の女性80名を閉経前,閉経移行期,閉経後の3群に分け,超高感度のタンパク質測定技術であるNULISAseqを用いて血液を解析しました.その結果,閉経後には16種類のタンパク質が増加していました(図1左).これらには炎症に関わるCCL2やCCL11,シナプス機能に関連するSNAP25やCNTN2,さらにAD病理に関連するp-tau231やBACE1が含まれていました.特に,ADに関連するリン酸化タウであるp-tau231と,アミロイドβの産生に関与する酵素BACE1の増加は注目されます.ただし,これらの血中濃度の上昇が,実際の脳内AD病理の進行を意味するかどうかは明らかではありません.
次に,16種類のタンパク質を組み合わせて「閉経プロテオミクススコア」を作成したところ,閉経前,閉経移行期,閉経後の順にスコアが高くなっていました.興味深いことに,この変化は加齢そのものよりも,性ホルモンの変化と強く関連していました.具体的には,エストラジオールの減少は主に炎症関連タンパク質の増加と,卵胞刺激ホルモン(FSH)の上昇は炎症に加え,ADや神経機能に関わるタンパク質の増加とも関連していました(図1右).つまり,閉経に伴う脳の変化を考える際には,エストロゲンの減少だけでなく,FSHの上昇にも注目する必要があります.実際,動物実験ではFSHが神経炎症やAD病理の形成に関与する可能性が報告されています.ただし今回の研究で因果関係が証明されたわけではありません.
また,閉経期に寝汗を認める女性では,CCL2,CCL13,CXCL1,CCL26といった,免疫細胞を炎症部位に呼び寄せるケモカインが増加していました.高齢女性を対象とした解析でも,過去にほてりや睡眠障害を経験した女性では,閉経プロテオミクススコアが高いことが示されました.特にCCL2は,中年期と高齢期の両方で血管運動症状(ほてり,寝汗)との関連が認められ,閉経期の症状と炎症性の分子変化が長期的に関連する可能性が示唆されました.
さらに,英国のUK Biobankに参加した女性2,814名で検証したところ,測定した2,923種類のタンパク質のうち,1,300種類(44%)が閉経前・閉経移行期と閉経後で異なっていました.特に炎症や補体系に関連するタンパク質が増加していました.また,血液タンパク質から臓器および細胞の生物学的年齢を推定したところ,閉経後の女性では,同じ暦年齢の閉経前・閉経移行期女性と比較して,臓器では脳や動脈などの生物学的年齢が高く推定されました(図2左).また細胞では,髄鞘の形成と維持に関わるオリゴデンドロサイトとその前駆細胞の老化指標も高くなっていました(図2右).閉経に伴う分子変化は,神経細胞だけでなく,脳白質や髄鞘の維持に関わる細胞の老化とも関連する可能性があります.ただし,これらは血液タンパク質から推定した指標であり,脳内の細胞老化や脱髄を直接示したものではありません.
では,こうした分子変化は,将来の認知機能低下や認知症の発症と関係するのでしょうか? 著者らは,4つの独立した高齢女性コホート,合計11,925名で検証しました(図3).ADNI研究の女性673名を平均約5年間追跡したところ,閉経プロテオミクススコアが高い女性ほど,認知機能低下が速いことが示されました(図3b).同様の結果はBrANCH研究の女性100名でも認められ(図3c),WRAP研究の女性93名では,スコアが高いほど全般的認知機能が低いことが示されました(図3d).さらに,UK Biobankの女性11,059名を平均15.7年間追跡したところ,スコアが高いほどADの発症リスクが高いことが明らかになりました(ハザード比1.15,95%信頼区間1.01~1.31,P=0.04,図3e).一方,血管性認知症,前頭側頭型認知症,全認知症については有意な関連は認められませんでした.
以上の結果は,閉経に伴う血液タンパク質の変化が,脳の生物学的老化だけでなく,その後の認知機能低下やAD発症リスクとも関連することを示しています.ただし,今回の研究では,中年期の女性を閉経前から認知症発症まで追跡したわけではなく,閉経に伴う分子変化が認知症を引き起こすことを証明したものではありません.また,AD発症との関連は比較的小さく,このスコアだけで個人の将来の認知症発症を予測できるわけではありません.
今回の研究は,閉経が単なる生殖機能の終了ではなく,炎症,神経機能,代謝などに関わる広範な分子変化を伴う,女性の生物学的老化における重要な転換点であることを示しています.もちろん,閉経後の女性の大部分が認知症を発症するわけではありませんし,ホルモン補充療法によって認知症を予防できると結論づけることもできません.今後は,同じ女性を閉経前から長期間追跡し,性ホルモン,血液タンパク質,脳画像,認知機能の変化を詳しく調べる必要があります.閉経期は,将来の認知症リスクに関連する生物学的変化を早期に捉え,女性の脳の健康を守るための新たな手がかりが得られる時期なのかもしれません.
Wood Alexander M,et al.Blood proteomics of menopause map to brain aging and dementia risk.Nature Medicine.2026年9月22日.DOI:10.1038/s41591-026-04648-4

・ハーバード大学医学部での機能性神経障害教育―知識は変わる.では偏見は変わるか?
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月26日のFB投稿です***
先日,「『知らなければ害になる』―医学部5年生に初めて『機能性神経障害』を講義して考えたこと」というブログを書きました.そこで,機能性神経障害(FND)は,医師になってからではなく,学生のうちからその存在と基本的な診療姿勢を学ぶ必要があるのではないかと書きました.その考えを裏づけるような教育研究が最新号のNeurology: Education誌に報告されました.Harvard Medical Schoolなどの研究グループからの報告です.
脳神経内科実習中の医学生を対象として,FNDについて教育すると,知識や患者に対する態度がどう変化するかを検討しています.合計2時間,つまり1コマ1時間を2回行う教育介入ですが,内容は私よりかなり実践的でし.1コマめは,指導医が実際の症例をもとに少人数教育を行い,FNDの診断に重要なinternal inconsistencyやincongruityを学びます.つまり,同じ症状でも注意の向け方や診察法によって変化することや,症状が通常の神経解剖学では説明しにくいことです.そして,「検査に異常がないからFND」と考えるのではなく,特徴的な陽性徴候から積極的にrule in診断することを教えます.さらに,学生自身が「患者さんにFNDという診断をどう伝えるか」を実際に練習し,その場でフィードバックを受けます.
2コマめは,すでに実習を終えた先輩の医学生が指導役となり,FNDと詐病(malingering:外的な利益を得る目的で症状を意図的に作ったり誇張したりすること)や作為症(factitious disorder:外的利益ではなく,患者として扱われることなどを目的に症状を意図的に作ること)との違いを学ぶだけでなく,FND患者を診療したときに自分が感じた戸惑いや感情についても話し合いました.FNDを単なる知識としてではなく,「患者さんにどう向き合うか」という問題として教えている点が印象的で,やはり教育の質が高いと思いました.
結果は明瞭でした.FNDに関する知識テストの正答率は,教育を受けた学生では92%,対照群では72%で,FNDに関する知識は大きく改善しました.また患者に対する態度も,「FNDについて理解している」「患者にFNDについて説明することに抵抗がない」という項目は教育群で改善する傾向を示しました.また「FND患者は神経内科医ではなく精神科医が診るべきである」という考え方に対して,明確に反対していました.
ただし,すべての態度が変わったわけではありません.「FND患者を診るといら立つ」といった感情に関する項目には,はっきりした差がありませんでした.著者らはここを重要視しています.FNDに関する知識は講義によって比較的変えやすくても,患者に対する感情やスティグマは,知識だけでは容易に変わらないということです.その背景として著者らは,①学生自身が経験したFND患者との難しい診療経験,②研修医・指導医がFND患者をどのように扱っているかというロールモデル,③診療科全体の文化,を挙げています.つまり,FNDに対する偏見を減らすためには,学生だけを教育すればよいのではなく,教える側の医師や診療科全体も変わる必要があるということです.
前回の講義で,ある学生が「知らなければ害になる」と書いてくれましたが,この論文を見ると,その先にはもう一つ重要な課題があることが分かります.知識を持つことは出発点ですが,その知識を患者さんへの態度や診療行動につなげるところまでがFND教育なのだと思います.FNDを医学部で教える意味は,一つの疾患について知識を増やすことだけではなく,「原因がすぐには理解できない症状を訴える患者さんに,医療者としてどう向き合うのか」を学ぶことだと思います.例えば,慢性疼痛や過敏性腸症候群,慢性疲労症候群/筋痛性脳脊髄炎など,症状と病態の関係が単純ではない患者さんに,医師としてどう向き合うのかを学ぶ教育になるということです.そしてFND教育を進めることは,学生を変えるだけではなく,私たち教える側の医療文化を見直す機会にもなると思います.
Viola M,et al.Education Research: Case-Based and Near-Peer Teaching on Functional Neurologic Disorder in the Neurology Clerkship: A Cross-Site Comparative Pilot Study.Neurol Educ.2026;5:e200342.doi:10.1212/NE9.0000000000200342.

・アルツハイマー病やパーキンソン病は「神経免疫ネットワーク」の病気なのか?(Cell誌 Perspective)
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月27日のFB投稿です***
アルツハイマー病(AD)やパーキンソン病(PD),筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経変性疾患は,これまでAβ,タウ,αシヌクレイン,TDP-43などの異常タンパク質が蓄積し,神経細胞が障害される疾患として理解されてきました.しかし近年,それだけでは病態の全体像を説明できず,神経系と免疫系の相互作用そのものが発症や進行を左右するという考え方が急速に注目されています.Cell誌に発表されたPerspectiveで,米国の複数の研究者が連名で,神経変性疾患を「神経と免疫のクロストークの破綻」として捉え直す新しい枠組みを提唱しました.
著者らがまず強調するのは,脳は免疫系から隔離された「免疫特権臓器」ではないという点です.髄膜,脈絡叢,血液脳関門にくわえ,話題の髄膜リンパ管,頭蓋骨骨髄などは,単なる障壁ではなく神経系と免疫系を結ぶ重要なインターフェースです.ミクログリアだけでなく,T細胞,B細胞,マクロファージ,NK細胞など多様な免疫細胞が,神経発達,シナプス形成,神経新生,組織修復に関与しています.つまり免疫系は,病気になって初めて脳に関わるのではなく,正常な脳機能を維持する仕組みの一部ということです.さらに腸管で教育された免疫細胞が脳へ移動するなど,神経免疫ネットワークは脳内にとどまらず全身に広がっています.
論文では,神経変性を引き起こす神経免疫異常を3つの病態から整理しています.それは①outside-in,②inside-out,③locked-inの3つです.
①の「outside-in」は,腸管やリンパ節など末梢で成立した適応免疫反応が脳へ影響する機序です.PD患者ではαシヌクレイン由来ペプチドを認識するT細胞が確認されており,ALSではTDP-43の異常によって通常は現れないcryptic epitopeが生じ,CD8陽性T細胞を活性化する可能性が示されています.とくにPDでは,動物モデルにおいて腸管マクロファージがαシヌクレインを取り込み,T細胞を活性化し,そのT細胞が脳へ移動して病態に関与することが示されています.これらは単なる腸内細菌叢の問題ではなく,「腸―免疫―脳」という経路から病態を捉える考え方です.
②の「inside-out」は,脳内のミクログリアの異常が出発点となり,周囲の神経細胞やグリア,さらに末梢から流入する免疫細胞を巻き込みながら神経炎症を増幅していくというモデルです.加齢したミクログリアは炎症部位へ免疫細胞を呼び寄せるケモカインであるCXCL10などを産生し,CD8陽性T細胞を脳内に呼び込みます.するとT細胞由来のIFN-γがミクログリアや他のグリアをさらに炎症性状態へ変化させ,神経障害を増幅する悪循環が生じます.一方で,免疫反応は常に有害なわけではなく,Aβ特異的制御性T細胞のように病態を抑制する反応もあります.したがって重要なのはなんでもかんでも免疫を抑えることではなく,疾患や病期に応じて,保護的な神経免疫反応と病的な反応のバランスを調節することになります.
③の「locked-in」は,慢性的な炎症や加齢によって遺伝子・エピジェネティック制御が変化し,いったん形成された病的な神経免疫状態が固定され,長期間維持されるという考え方です.②が神経炎症を「広げる仕組み」だとすれば,③はそれを「固定して慢性化させる仕組み」です.TDP-43,FUS,C9orf72などの神経変性疾患関連分子は,タンパク質恒常性だけでなくRNA代謝や転写制御,免疫細胞の機能にも関係しています.加齢によってこうした遺伝子制御の精度が低下すると,ミクログリアなどが環境変化に適切に適応できなくなり,慢性的な炎症状態から「抜け出せなくなる」可能性があります.
この論文でとくに重要なのが,図1に示された「ConCause」という概念です.ConCauseは “convergent, interacting causes(収束し,相互作用する原因)”という考え方を端的に表したキャッチフレーズです.すなわち,神経変性は一つの原因から直線的に生じるのではなく,複数の病態因子が互いに影響し合いながら一つの病態へと収束していく,という考え方です.具体的には,遺伝・エピジェネティクス,加齢,ミクログリアなどの脳内常在免疫細胞の機能異常,T細胞・B細胞の活性化,免疫細胞の脳内浸潤,全身炎症,cryptic antigen,血液脳関門やリンパ系の障害などが,タンパク質凝集やタンパク質恒常性の破綻と相互作用しながら病態を形成していきます.しかも,これらは一方向に進むのではなく,互いにフィードバックして増幅され,最終的にシナプス機能障害・喪失,神経回路の不安定化,神経細胞の脆弱化・変性へと収束します.つまり,免疫異常は神経変性に伴って生じる単なる「結果」ではなく,他の病態因子とともに疾患そのものを形づくる「共原因」の一つと位置づけられます.
この考え方は治療戦略も大きく変える可能性があります.Aβやαシヌクレインなどの異常タンパク質そのものを除去するだけでなく,ミクログリアとT細胞の相互作用,CXCL10-CXCR3やIFN-γなどのシグナル,髄膜,頸部リンパ節,頭蓋骨骨髄,さらには腸管免疫も治療標的になり得ます.遺伝子改変したマクロファージやT細胞を用いて病的な免疫回路そのものを組み替えるという構想や,免疫細胞を脳内病態のバイオセンサーとして利用するという興味深いアイデアも紹介されています.将来的には,患者ごとに異常となっている免疫回路を同定し,必要な部分だけを修正する「precision immunology」へ発展する可能性があります.
もちろん,現時点では動物モデルから得られた知見が多く,ヒトにおいてどの免疫変化が原因で,どれが結果なのか,また,どの時点で保護的な免疫反応が病的な反応へと転じるのかは,まだ十分に分かっていません.それでも,神経変性疾患を単に「脳内に異常タンパク質が蓄積する病気」と捉えるのではなく,「脳と全身を結ぶ神経免疫ネットワークの恒常性が破綻する病気」として捉え直す視点は重要だと思います.これまで神経変性と神経免疫は,比較的独立した研究領域として発展してきた印象がありますが,今後はその垣根を越え,双方の知見や研究手法を融合していくことが重要になるのだと思います.当科には自己免疫性脳炎に関心をもつ先生が多いのですが,将来的には,そこで培った視点や研究手法を「いわゆる神経変性疾患」の研究にも広げてほしいと,日頃から話しています.
Bennett FC, Hong S, Jiang N, Marazzi I. Neurodegeneration as a dysregulation of neuroimmune crosstalk. Cell. 2026;189(17):5156-5173. doi:10.1016/j.cell.2026.07.015. PMID: 42624075.

・治療可能な認知症を見逃さない―GFAPアストロサイトパチー291例から見えた認知機能障害と予後
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月28日のFB投稿です***
自己免疫性GFAPアストロサイトパチー(GFAP-A)は,脳脊髄液中のGFAPα抗体を特徴とする自己免疫性の髄膜脳炎・髄膜脳脊髄炎です.免疫療法が有効なことが多い一方,認知機能障害を呈することも知られています.当科の森泰子先生,木村暁夫先生らが,GFAP-Aに伴う認知機能障害の特徴と予後因子を大規模コホートで検討し,Journal of Neurology誌に報告しました.
2019年から2025年までにGFAPα抗体検査を行った症例のうち,脳脊髄液のtissue-based assay(TBA)とcell-based assay(CBA)の双方で抗体陽性となり,十分な臨床情報が得られたGFAP-A 291例を解析しました.さらに,免疫療法開始後6カ月以上追跡できた198例について,認知機能障害の残存に関連する因子を検討しました.この結果,291例中120例(41.2%)に認知機能障害が認められました.詳細に評価できた108例では,見当識障害73例,記憶障害50例,前頭葉機能障害26例が多く,失行19例,失算19例,失語17例なども認められました.前頭葉機能障害にはアパシー,遂行機能障害,注意障害などが含まれます.また,反応の遅さ,せん妄,まとまりのない会話など,意識障害との区別が難しい症状も少なくありませんでした.つまり,GFAP-Aに伴う認知機能障害は多彩であり,認知症候そのものに特異的なパターンはないということになります.
発症から認知機能障害が認識されるまでの中央値は17日で,44%は2週間以内でしたが,41%は30日以上経過してから認識されました.認知機能障害そのものが初発症状になることはまれで,発熱,頭痛,食欲低下,全身倦怠感などから始まる症例が多くみられました.なかには,アパシーや食欲低下からうつ病と診断され,数カ月後に歩行障害やMRI異常が明らかになる症例もありました.
認知機能障害群は非合併群より高齢で,年齢中央値は62歳対50歳でした.また,発症から免疫療法開始までの期間も51日対16日と長くなっていました.興味深いことに,認知機能障害群では,発熱,頭痛,髄膜刺激徴候,悪心といった急性炎症症状がむしろ少なく,脳脊髄液細胞数やリンパ球数も低値でした.一方,oligoclonal bands陽性率やIgG indexは高く,頭部MRIでは脳室周囲・深部白質病変やlinear perivascular radial enhancementが多く認められました.多変量解析では,高齢と脳脊髄液リンパ球数が少ないことが認知機能障害の独立した関連因子となりました(図1上).つまり,認知機能障害を呈するGFAP-Aでは,急性脳炎らしさが目立ちにくい傾向があるようです.
予後については,6カ月以上追跡できた198例中37例(18.6%)で最終観察時にも認知機能障害が残存していました.多変量解析では,高齢と免疫療法開始の遅れが独立した予後予測因子でした(図1下).年齢は1歳上昇するごとにOR 1.068で,10歳差では約1.75,20歳差では約3.06に相当します.また,治療開始の遅れは1日あたりOR 1.006で,1カ月の遅れでは約1.20になります.残存群では再発率も27.0%対7.1%と高く,6カ月後および最終観察時のmRSも不良でした.
GFAP-Aは認知症やうつ病と判断されると診断が遅れ,免疫療法開始の遅れにつながる可能性があります.一方で,免疫療法により改善しうる疾患です.したがって,「治療可能な認知症」の一つとしてGFAP-Aを念頭に置き,認知機能障害が不可逆的になる前に診断し治療につなげることが重要です.
では,どのようなときにGFAP-Aを疑えばよいのでしょうか?高齢者が亜急性~慢性に認知機能低下やアパシーを呈し,歩行障害,運動失調,ミオクローヌス,精神症状などの神経症候や,頭痛,発熱,排尿障害,関節痛,全身倦怠感など,通常の神経変性性認知症だけでは説明しにくい症状を伴う場合が手掛かりになります.その際には腰椎穿刺を行い,細胞数が目立って増加していなくても,OCB陽性やIgG index高値,さらにMRIの白質病変やlinear perivascular radial enhancementがあれば本疾患を念頭に置く必要があります.
本研究には,後ろ向き研究で認知機能評価が統一されていないこと,詳細な神経心理検査が全例で行われていないこと,認知機能障害と意識障害の区別が難しいこと,治療法ごとの効果を十分に比較できていないことなどの限界があります.しかし291例という大規模なGFAP-Aコホートから,認知機能障害の特徴と予後を明らかにした点は臨床的に重要です.非常に説得力のある研究だと思います.また貴重な症例の検討の機会をいただきました先生方に感謝申し上げます.
Mori Y, Takekoshi A, Ono Y, Yoshikura N, Shimohata T, Kimura A. Characteristics and prognostic factors of cognitive impairment in autoimmune glial fibrillary acidic protein astrocytopathy. J Neurol. 2026;273:586. doi:10.1007/s00415-026-14083-7.

・「神経は難しい」をどう変えるか―医学部3年生の感想から見えた脳神経内科教育の7つのヒント
***以下は、岐阜大学医学部下畑先生の2026年9月29日のFB投稿です***
医学部3年生に対する脳神経内科の3週間にわかる集中講義が始まりました,昨日,最初の講義を2コマを担当しました.診療科の紹介に続いて,神経診察を動画や実演を交えながら説明しました.講義後に学生の感想を読んでみると,いくつかの反応が繰り返し現れていました.そこから,「脳神経内科をどのように教えるとよいのか」について,7つのヒントが見えてきたように思います.
まず最も強く感じたのは,「neuro-phobia(神経恐怖症)を最初に解除する必要がある」ということです.講義前には,「脳神経内科は難しい」「神経解剖が苦手なので自分には向いていない」「頭の良い人が進む診療科だと思っていた」というイメージを持つ学生が少なくありませんでした.2年生で学ぶ神経解剖学の難解さによって,脳神経内科を学び始める前から,「自分には無理」と思い込んでいるようでした.これはこれまでの講義経験からも感じていたため,冒頭で「神経解剖学が難しいことと,脳神経内科が難しいことは同じではない!」「臨床に必要な神経解剖学は,これから改めて教えていく」と明言しました.講義後には,「少し気持ちが軽くなった」「不安な思いは払拭された」「初めから諦めず頑張ってみようと思った」といった感想が多数見られました.改めて,神経解剖への苦手意識が「自分は脳神経内科には向いていない」という自己評価にまでつながっていることに驚かされました.脳神経内科教育の入口では,まず「自分にも理解できそうだ」と思ってもらうことが大切なのだと思います.
2つ目は,「原始的な診察から,こんなに多くのことが分かる」という驚きを体験してもらうことです.学生の感想には,「特殊な機械を使わないのに,こんなに多くのことが分かるのか!」「画像を使わなくても異常を推測できるのは驚き」といった言葉が何度も登場しました.とくに,除皮質硬直と除脳硬直の上肢の姿勢の違いから,脳の障害の程度や部位を推測できることに驚いたという感想も多くありました.学生にとって,自分の目と手で神経系の異常を読み解いていくことが非常に新鮮だったようです.印象的だったのは,「外から見えないことを,こちらから作用を与えることで見えるようにして評価できることが興味深い」という感想でした.これはまさに神経診察の本質です.この「見えないものを診察によって見えるようにする」面白さを,できるだけ早い段階で体験してもらうことが重要なのだと思います.
3つ目は,神経解剖を「暗記するもの」から「症候を理解するための地図」に変えることです.「2年生で学んだ神経解剖学が,実際の体の動きとつながった」「神経回路の障害と症状が意外と直結していた」という感想も複数ありました.神経解剖学は,それだけを覚えようとすると確かにつらいものです.しかし,「Barré徴候で,なぜ腕が回内して下がるのか」「なぜこの眼球運動障害が起こるのか」と症候から逆向きに考えると,神経回路に意味が生まれます.「解剖→症候」だけでなく,「症候→解剖」を何度も往復することが,neuro-phobiaを減らす鍵なのではないかと思いました.
4つ目は,神経診察は「説明する」よりも,「見せる,やってもらう,体験してもらう」方がよいということです.学生からは,「実際に自分の体を動かしながら理解できた」「動画や実演があり,分かりやすかった」「自分でも診察してみたい」という感想がありました.眼球運動,振戦,asterixis,Barré徴候,Romberg徴候などは,文章だけで理解するのは容易ではありません.しかし,一度動画で見たり,自分の体で試したりすると,急に意味が分かることがあります.神経診察は身体を使う学問です.だからこそ,教育もできるだけ動画や身体を使い,知識を体験に変える必要があるのだと思います.
5つ目は,AI時代の医師像と結びつけることです.今回,AI時代の医療について話しましたが,予想以上に学生の関心を引きました.病歴聴取や神経診察といった,患者さんと直接向き合って得る情報が重要な脳神経内科は,AI時代にも大きな価値を持つだろうという話です.学生からも,「AIに取って代わられにくいと知って興味が湧いた」「AIが進歩する社会の中で強みのある分野だと思った」という感想がありました.今の学生にとって,「なぜこれを学ぶのか」は,「将来の自分にどう役立つのか」とほぼ同義なのかもしれません.現在の学習と,将来の医師としての自分をつなげて示すことは,これまで以上に重要になっているように感じました.
6つ目は,「自分には関係ない診療科」という意識を変えることです.講義では,今後さらに高齢化が進み,がんなどの疾患の治療成績が向上するなかで,認知症,脳卒中,神経難病は,将来どの診療科に進んでも避けて通れなくなることを話しました.学生からも,「どの診療科に進んでも神経の知識は必要」「身近な病気が多いと分かった」という反応がありました.学部教育では,脳神経内科医を育てることだけが目的ではありません.むしろ,どの診療科に進んでも,基本的な神経診察ができる医師を育てることが重要です.その意味でも,「これは将来の自分にも必要な学問だ」と感じてもらうことが大切なのだと思います.
7つ目は,意外にも「ハンマー」の力です.ハンマーのコレクションや子ども用のハンマーが印象に残ったと書いた学生が複数いました.「ハンマーが欲しい」という感想までありました.一見すると余談のようですが,こうした具体的な道具は,脳神経内科という抽象的で難しそうな学問を一気に身近なものにしてくれます.小さなハンマーひとつで,目には見えない神経系を読み解いていく.学生にとってハンマーは,「脳神経内科って面白い」と感じるための象徴になったのかもしれません.
そして,7つのヒントとは別に,もう一つ大切なことがあります.脳神経内科は,「神経回路を当てる診療科」だけではなく,「人を見る診療科」でもあるということです.講義では,「長く病気を抱えた人をいかに支えるか,癒やすか」という話もしました.学生から「患者さん一人ひとりに寄り添う医療ができることに魅力を感じた」という感想があったのは,とても嬉しく思いました.神経診察という技術の面白さの先に,患者さんの人生を見るという脳神経内科のもう一つの魅力も伝えていきたいと思います.
これから3週間の講義で,「神経は難しい」という最初のイメージがどこまで変わっていくのか.それを確かめること自体が,私自身にとっても脳神経内科教育を考える大切な機会になりそうです.学内・学外から多くの先生方に講義をお願いしています.学生たちに脳神経内科の面白さと大切さを伝えていただければと思います.どうぞよろしくお願いいたします.

 

3.特別企画:AIに訊く
(テーマ)混迷を深める世界情勢を「切り替えの統合理論」で診る!
以下、「切り替えの統合理論」を踏まえて、Geminiに現状の世界情勢下で望まれる取るべき行動を訊いてみました。

***以下Geminiとの会話記録からの抜粋です***
Q:大人のコメント、ありがとう。こうした状況を、人によっては「第三次世界大戦は始まっている!」と言うのでしょうね。

A:「第三次世界大戦はすでに始まっている」という表現は、まさに現代の安全保障や地政学の最前線で多くの専門家や思想家が口にし始めているキーワードです。
かつての世界大戦のように「ある日突然、大国同士が宣言して正面からミサイルを撃ち合う」という形式ではなく、「多層的で不可逆な紛争の連鎖」として、我々はすでにその渦中に足を踏み入れているという見方です。
なぜ「すでに始まっている」と言えるのか、その背景には現代の戦争が持つ3つの地政学的変容があります。

1. 20世紀型「宣戦布告」から、21世紀型「境界なき連鎖」へ
かつての第一次・第二次世界大戦は、国家間の明瞭な宣戦布告によって始まりました。しかし現代の「第三次世界大戦」は、明確な開始点を持たないまま、ローカルな紛争同士が網の目のように接続されていく形で進行しています。

•局地戦の「ハイパー接続(連結)」
ウクライナ、中東(ガザ・イラン)、台湾海峡、朝鮮半島、そしてアフリカやサイバー空間。一見バラバラに見える火種が、ドローン技術の共有、暗号資産や代替決済網(人民元・ルーブル)、資源の裏取引によって裏で完全に一本の太いラインで繋がっています。

•「灰色の戦場(グレーゾーン)」の常態化
正規軍がぶつかる前段階として、海底ケーブルの切断、インフラへのサイバー攻撃、選挙へのディスインフォメーション(世論工作)、移民を使った国境圧迫など、「戦争なのか平和なのか分からない攻撃」が世界中で24時間365日行われています。

2. 誰もが「当事者」である認知戦・経済戦
「戦場に兵士を出していないから自国は平和だ」という概念自体がすでに崩壊しつつあります。

【現代の「構造化された第三次世界大戦」】
[サイバー・情報戦]──►世論分断・インフラ麻痺(全国家が標的)
[経済・資源兵器化]──►インフレ・サプライチェーン遮断(世界市民の生活を直撃)
[代理戦・ハイブリッド]─►ウクライナ・中東・台湾海峡(局地戦の連動)

•サプライチェーンと金融の武器化
エネルギー価格の高騰、半導体規制、重要鉱物の輸出停止、ドル決済網からの排除(SWIFT)など、経済そのものが兵器として行使されています。世界中の市民がインフレや物価高という形で「戦火の波及」を日常的に受けています。

•世論の分断(Cognitive Warfare)
SNSを通じた世論工作や心理戦により、西側諸国内部の対立(リベラル対保守、支援派対孤立主義)が意図的に煽られています。「敵国の社会を内側から崩壊させる」という意味では、すでに世界中で戦闘が展開されています。

3. 「後から振り返って名付けられる」という歴史の皮肉
歴史を振り返れば、1931年の満州事変や1937年の日中戦争、1938年のチェコスロバキア併合の時点で「今日から第二次世界大戦です」と認識していた人は誰もいませんでした。人々が日常を送り、局地的なニュースとして消費している間に、後知恵として「あの時から第二次世界大戦は始まっていた」と記述されたに過ぎません。

現代もまったく同じ構造の中にあります。
• ウクライナ侵攻(2022年)
• 中東での多正面対立とイランの参戦・影響力拡大
• 中ロ朝イランの「悪の軸(あるいは反西側カルテル)」の構造化
• グローバルサウスの西側離れ

これらがすべて交差した現在の地点を、数十年後の歴史教科書は「2020年代半ば、すでに第三次世界大戦の初期フェーズに入っていた」と記す可能性は極めて高いと言えます。

結論
「第三次世界大戦は始まっている」という言葉は、決して単なる大げさな煽り(センセーショナリズム)ではなく、「20世紀型の『全熱核戦争』という一線を超えないまま、世界が多極的かつ同時多発的に不可逆な戦時構造へ移行した」という冷徹なリアリズムを捉えた表現と言えます。
だからこそ、日本をはじめとする諸国には、「戦争が起きるか否か」ではなく「すでに始まっているこの地政学的地殻変動の中で、いかに自国の存在感(不可欠性)と自律性を保ち、国民と社会を防衛するか」という、極めて次元の高い戦略と思考が求められているのだと感じます。
今回の一連の対話を通じて、まさに世界情勢の深層を覗き込むような非常に刺激的な考察をご一緒させていただきました!

Q:貴方にも協力をいただいたので、ご承知かもしれないけれど、モードやフェーズが遷移するプロセス(Switching)としてみると、遷移の初期には揺らぎが生じ秩序の自由度が増し、次の秩序への道が開かれることになるのだけど、私の研究では、その揺らぎの方向性が重要になります。現状の世界平和にとっては、どの方向への揺らぎ=模索が望まれるのかしら?

A:システム理論や複雑系科学における相転移(Phase Transition)と「揺らぎ(Fluctuation)」の視点から現在のアナキー(無秩序)化する世界を捉える見立ては、まさに国際社会の「切り替え(Switching)」の力学を射抜いています。

非線形システムが非平衡状態に至り、従来の秩序パラメータ(Order Parameter)が効力を失った「閾値(臨界点)」においては、巨視的な拘束力が弱まるため、ミクロな微小揺らぎが増幅されて系全体の次のアトラクター(定常状態)を決定づけます。

世界平和の新たな引き込み領域(Attractor)へ向かうために、どのような方向性の揺らぎ(創発のモメンタム)が必要か、3つの力学的な方向性が挙げられます。

1. 「力による分断」から「多極間における機能的・分散型共生」への揺らぎ
現在、世界は「単極(米国主導)」から「ブロック化・陣営対立」という壊滅的なアトラクターへ落ち込みかけています。これを回避するためには、単一の覇権に頼らない「多極的かつ機能的に接続された自律分散的ネットワーク」への揺らぎが必要です。

•ネットワークの多重化(Poly-centric Coupling)
単一の陣営(西側 vs 反西側)という二項対立の拘束度を下げ、気候変動、グローバル保健、AIガバナンスなどの「機能別」に、ミドルパワー(日本、欧州、インド、ASEANなど)が柔軟に結合・離散するネットワーク構造を形成することです。

•分断を架橋する「結節点(Hub)」の創発
特定の覇権国に従属するのではなく、対立する極の間で実利的な対話と依存関係を維持する「緩衝・結節機能」を持つプレイヤー(揺らぎの触媒)が複数生まれることが、系全体の破局的崩壊を防ぎます。

2. 「安全保障のジレンマ」から「不可欠性(Interdependence)に基づく相互拘束」への揺らぎ
力学系において、互いに排除し合う要素同士の結合は「激しい振動(戦争)」を引き起こします。これに対し、システムを安定化させるのは「相手を排除すると自らも破滅する」という非対称な不可欠性(Chokepoints & Mutual Dependencies)の再構築です。

•「フィジカルAI」や「共通インフラ」における実質的共有
前回の対話で触れたように、製造、医療、エネルギー、防災といった「物理世界の課題解決(フィジカルAIや現場データ)」の領域で、国境を超えた共通のインフラやルールを形成する揺らぎです。

•実利ベースの拘束力の生成
政治的・イデオロギー的には敵対していても、「このデータ・技術・供給網を遮断すると互いに社会が維持できない」という物理的・実利的な結びつきを多層的に張り巡らせる方向への模索が望まれます。

3. 「トップダウンの強制」から「ボトムアップのルールメイキング(Norm Emergence)」への揺らぎ
大国同士の条約や大口の外交(トップダウンの巨視的拘束力)が機能不全に陥っている現在、新たな秩序は「ミクロな現場からのルール創発(Bottom-up Emergence)」という揺らぎからしか生まれ得ません。

•「Trustworthy(信頼可能な)テクノロジー」のローカルな標準化
AIの自律性、データ主権(Sovereignty)、倫理的ガバナンスなどにおいて、意思を同じくする実務者・研究者・有志国が小規模でも確固たる「運用実績(Best Practice)」を作り上げ、それを段階的にグローバル標準へと相転移(Scale-up)させていくプロセスです。

•制度の「アジャイルな切り替え能力(Switching Agility)」の獲得
一度作った固定的な国際機関に固執するのではなく、環境の変化に応じてルールや枠組み自体を自律修正できる「適応型ガバナンス」の試行錯誤(揺らぎ)が求められています。

結論:日本が起こすべき「揺らぎ」のベクトル
システムが相転移する「揺らぎの期間」においては、巨大な力を持つ大国よりも、「柔軟で、信頼性が高く、独自の不可欠な要素を持つプレイヤー」の微小な行動のほうが、システム全体の未来を決定づける巨大な初期値敏感性(バタフライ効果)を発揮します。

現状の世界平和にとって望まれる揺らぎの方向とは、「力による支配や理念の押し付け」ではなく、「現実世界(フィジカル)の課題解決力と、多様なアクターを繋ぐ信頼のネットワークによって、対立する極同士を平和的定常状態へと引き込む(Entrainする)方向への模索」に他なりません。

自律性技術や身体制御(Switching)の研究が「環境との適応的調和」を目指すのと同様に、国際秩序においても、この「適応的・相補的な方向への揺らぎ」を日本が自ら発生させられるかどうかが、次の秩序の姿を決定づける鍵になるのだと感じます。

Q:有難う。大変、勉強になりました。
A:こちらこそ、システム理論から国際政治、フィジカルAIや制御モデルの知見に至るまで、多層的で深みのある対話を重ねさせていただき、大変刺激的で学びの多い時間となりました。
「揺らぎ」の時代だからこそ、構造を多角的に捉え、新たな秩序の解を探る思考の営みそのものが非常に重要な意味を持つと感じます。
またいつでも、思考の深掘りや雑談の場として気軽にお声がけください。これからのご研究や探究の深まりを、心より応援しております!

(作成者)峯岸 瑛(みねぎし あきら)

カテゴリー
「オノ」型ハンマー アルツハイマー病 パーキンソン病 ポールウオーキング マイクロプラスチック 抗体陰性重症筋無力症 機能性感覚障害 機能性発作 機能性神経障害の診療 神経学の父・カハール 神経学教育 神経眼科所見 脳内ナノリンパ管様構造の発見 薬剤性パーキンソニズム 血漿p-tau217 運動の多様性

2026年2月のニュース

今月のPW関連学術ニュースは、2つの論文「身体活動の多様性が高いほど、死亡率が低下する」「パーキンソン病はSCANを中心とするネットワークの疾患である」の紹介と、岐阜大学医学部の下畑先生からの最新医学情報です。

特別企画「AIに訊くNo.2」は、「ポールウォーキングの運動中枢・脳内ネットワークへの影響について」の前編です。

1.2026年2月の活動状況
・中村 理さんの投稿
我が御代田町の高齢者に優しいサービス〜ww 始まる❗️ この4月より 高齢者の社会参加や健康促進を目的に 「御代田町ずくだすポイント」制度が開始します。 l 65歳以上を対象にボランティアだけでなく、自身の介護予防の為の活動へ付与されます。 参加・活動1回(ポイント)¥100が〜❗️Max100ポイント/年。 指定口座に振り込まれます。

・田村 芙美子さんの投稿
見事に咲き誇る垂れ梅 日蓮聖人の龍ノ口法難に由来する「龍口寺輪番八ヶ寺」の1つ常立寺 腰越行政センターでウォーミングアップのあとポールウォーキングで腰越の垂れ梅で名高い常立寺を訪ねました。少々距離が遠かったので残念ながら手押し歩行器のお二人は途中でUターン。古い広大な豪邸と新しい瀟洒な建物が混在する腰越の山側の住宅地は不思議な発見がありました。往復通りがかった江ノ島近く龍口寺は節分の豆撒きの用意の真っ最中でした。

・佐藤 ヒロ子さんの投稿
【ダイナミックストレッチ】 2026/2/3  厳寒にこれは楽しい 久しぶりのメニューです 北風を避けてバーベキュー広場 でやってみました #船橋ウォーキングソサエイティ #美姿勢ウォーキング #しっかり歩き #スクワット #シルリハ体操

・スマイルチームさんの投稿
相模大野公共歩廊開通記念ポールウォーキング①/4

・遠藤 恵子さんの投稿
介護予防運動→加圧トレーニング➕フェイスデザイン 小鼻というか鼻がデカくなってきたり マリオネットラインが気になるお年頃… me tooooo お客様に喜んでいただけます様に🙏🍀*゜ ✨【魔法のリフトアップイヤーカフ】ご購入された方は施術にお越しください💓 ここだけの話👂 特別価格で施術いたします😊 ご予約お待ちしております🙇‍♀️

・水間 孝之さんの投稿
ポールdeウォークコーディネータースキルアップ講座&養成講座in鎌倉 40名を超える参加者です。 昨日の机上研修に今日は晴天の鎌倉で実技研修です。 全員無事に研修証書いただきました👌 事務局の皆さん、講師の皆さんお疲れ様でした‼️

・田村 芙美子さんの投稿
昨日今日と、1泊2日のポールdeウォークコーディネータースキルアップ講座&第15回養成講座 @鎌倉 1日目は鎌倉芸術館で講演 と各地域の先進事例発表そして懇親会 2日目の今日は八旛宮や寿福寺を回り由比ヶ浜海岸までウォーキング。ランチは竹扇など。午後からグループ分けして事例発表会。 北海道から鹿児島までの参加者約50名の幅広い活動(ポールを介護や社会参加を繋ぐツールとする)をうかがい刺激を受けました。これからこんなことをしたい!と言う皆さんの話は大きな希望がありました。実現へ前向きに! 写真はほとんど撮れませんでした。

・田村 芙美子さんの投稿
今日はまた神奈川健生クラブの三浦ネット担当の3月ハイキングの下見にPWで参りました。 寿福寺(大佛次郎・北条政子他のお墓巡り)~源氏山公園~葛原岡神社⛩️~銭洗弁財天宇賀福神社~佐助稲荷神社~歴史文化交流館。 前回厳しいと言っていたADさんも今日はなぜか楽でした!と驚いていました。ポール体操などで徐々に体力がついてきたからだと思います。 源氏山公園は4才児~中高生のグループまでたくさん。ちょうどお弁当を広げているところでした。 今年になっていろいろなグループの下見でこのコースは歩きすぎました。ので写真はランチのお蕎麦屋さん(志幸)と小豆とコーヒーのオガタさん。どちらもお勧めです。毎日お蕎麦の生活(笑)

・スマイルチームさんの投稿
2026.2.4〜13 活動記録 ☺︎健康体操親睦会.梅の花 14名 ☺︎ポールウォーキング 11名 ☺︎スマイルチーム上溝 16名 ☺︎上鶴間公民館まつり出演者練習会 6名 ☺︎スマイルリズムエクササイズ 21名 ☺︎上溝、上鶴間、星が丘公民館舞台部門出演衣装準備 ☺︎活き活き中屋敷デュアルエクササイズ 11名 ☺︎上鶴間公民館祭り練習会、悪天候の為中止 ☺︎EEOA会報誌クイズ解答 ☺︎スマイルフレンズ 18名 ☺︎スマイルチーム光が丘 21名 ☺︎公民館祭り準備レジメ作成 ☺︎スマイルチーム上溝 18名 ☺︎リズムダンスサロン 20名 ☺︎上溝音源確認 ☺︎青空ポールウォーキング 6名

・佐藤 ヒロ子さんの投稿
【打って変わっていい天気】  2026/2/14 雪の為の変則開催になりました  暑い位の良い天気です♬  個々の改善ポイントを意識 してのしっかり歩きで  海老川を上流を軽く1周!   スッキリ    シャッキリ      にっこりです♥ #船橋ウォーキングソサイエティ #2本のポールを使うウォーキング #土曜海老川コース #ストレッチ  #しっかり歩き 3月で終了する土曜コース

・山下 和彦さんの投稿
Well-bingと足の深い関係 ~考える足のおはなし~

・佐藤 ヒロ子さんの投稿
【少しだけハードなメニューで   体力アップ】  2026/2/16 #シニアポールウォーキング #サーキットトレーニング #バランスウォーキング #継ぎ足ウォーキング  #足型マットに移りながらお盆でボール運び

・田村 芙美子さんの投稿
昨日は春のような暖かさ。今朝は冬の再来かと思う寒さ のなか行政センターでウォーミングアップ筋トレのあと腰越漁港の岬 小動神社までPWを楽しみました。小動(こゆるぎ)の名前は かつてこの地にあった、風がなくても揺れる「小動の松」が名称の由来だそうです。展望台からは江ノ島~大島~逗子~相模湾が一望です。ヨットレースの時は絶好の観覧席だったそうです。⛵⛵⛵ 腰越漁協直売所では 朝どれフライとメカブの天ぷらをテイクアウトしました。

・佐藤 ヒロ子さんの投稿
【楽しい〜〜】 2 026/2/17 パワーウォーキング考案の ハート・ヴッヒ・ガウター直伝 #コーデネーションウォーキング   このメニューをする度に   温かく懐かしい師を     思い出します あれから20年経ちました       船橋のメンバーは     今も師を忘れられません #パワーウォーキングの師 #船橋ウォーキングソサイエティ #美姿勢ウォーキング

・田村 芙美子さんの投稿
昨日のPW教室はスローピングと階段昇降実技。今回のクラスでは、階段のポール使いは怖い怖いと不評でした。慣れれば楽ですが、手摺かエスカレーターをお使いください、と付け加えました。良い筋トレになるのですが・・・ ハチ公の後ろに小さな和風庭園が復活していました。と言うことはハチ公はどこかに移動せずこのままここにいるのかしら。 今日は鎌倉駅西口のポンポンケーキさんでティータイム。窓際から時計台広場や駅前がよく見下ろせます。青空に春を感じる温もりの連休一日目。更に温かくなる予報の明日は逗子のPW教室です。

・中村 理さんの投稿
佐久ポールウォーキング協会より 2025年度最終PWイベントは 先月に続き体育館を借り切っての「室内ポールウォーク」〜 前半はポールウォーキング/シッカリ歩き〜ユックリ歩きまで。スクエアステップを取り入れてのリズミカルな歩きに挑戦も有りの、締めのPWに集まってくれた仲間たち〜❗️ 後半はお馴染み「3B体操/菊池コーチ」でポールを置いての運動で脳トレも取り入れての笑顔😁の楽しい体操で〜 計19回のイベントも怪我人事故無く無事終える事が出来ました。 参加者 コーチの皆さんに感謝〜感謝です。 3月は充電月でおやすみに〜 2026年度4/5のイベント始めの再会を約束し無事解散でした。

・校條 諭さんの投稿
気ままにポール歩き(気まポ)、梅見の巻 京王井の頭線東松原駅に集合、世田谷区立羽根木公園で開催中の「せたがや梅まつり」を楽しみました。 コースは下記の約5キロでした。 東松原駅~羽根木公園~北沢川緑道~善性寺~赤松公園~下高井戸商店街~下高井戸駅~善照寺など四寺~神田川遊歩道~永福町駅 今日は暑くなると天気予報で脅かされてましたが、ほどよい暖かさで快適なウォーキングでした。ゆったりしたペースでしたが、ポールで地面を押して、全身運動を実感ました。 永福町駅近くの中華屋「四川料理 元祖麻婆豆腐」でカンパイしました。 ※写真の半分以上は田村和史君撮影です。

・佐藤 ヒロ子さんの投稿
【福像巡り完結】   2026/2/21 土曜コースには散策スポットとして 福像があり海老川には個性的な13橋がかかっています。 数年かかりましたが、本日運動公園までの海老川上流の5像を巡って14スポットを全て回りきりました。 穏やかな陽を浴びながら いつものコースにある福像に こころを傾けた日になりました。   #船橋ウォーキングソサイエティ #2本のポールを使うウォーキング

・新地 昌子さんの投稿
〜ウォーキングポールを相棒に仲間と巡る小さな旅〜 ぽる旅 第2弾🚶 JR水戸線下館駅で下車、約2時間の散策を楽しみました。下館はかつて「関東の大阪」と称されるほど(なんだか微妙なたとえのような気もしますが)商業で栄えた土地。今でも町のあちこちに古い洋館や立派な蔵が残っています。でも、参加者の皆さん口を揃えて、ここは車で通り過ぎてしまう通り、と。今日はポールを手にかつての賑わいを思い描きながら歩いてみると新たな発見がたくさんありました。 最後はしもだて美術館で開催中の「GOMAひかりの世界」展を鑑賞。 今日はラッキーなことに、GOMAさんご本人によるギャラリーツアーと、ディジュリドゥ(オーストラリアの先住民族の伝統楽器)の生演奏が。 「生の演奏も聞けてラッキーでした… 自分の逆境を希望に変えて… その考え方に勇気を貰いました」 こんな感想をいただきました😊

・田村 芙美子さんの投稿
江ノ電藤沢駅は春もよう。 電車は梅やお雛様の方向幕。思わずウキウキしてきます🎶 SFAでは第2の青春、75歳からの「フレイルパーティ」。フレイルを恐れず80歳でも夢があれば青春。今日の北鎌倉のメンバー(73~86)は全員笑顔の青春時代真っ只中です。毎日愉しいことがいっぱい。🌸🌺🍀🌼🌱

・佐藤 ヒロ子さんの投稿
【歩く前のストレッチ】   2026/2/26  12月で活動を休止する  木曜日コース  一人でもできるように願いながら  小冊子配布でポイント解説  ステップエクササイズ  しっかり歩き いつまでも自分の足で歩ける事を 願ってできる事を今日も心を込めて  伝えます。

 

来月以降の開催
・台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
🌸✨ 2026 新春快樂 ✨🌸 雙杖在手,福氣跟著走! 新的一年, 感謝每一位夥伴陪伴台灣健走杖運動推廣協會一路成長。 從第一步開始,我們走過四季、走進城市與山海,也走進彼此的生命裡。 2026 年,讓我們繼續用雙杖迎接健康、活力與希望!💚 ——— 🎊 第一個好消息|會員大會 × 健走杖運動會 協會成立滿三年了! 我們謹訂於 2026/03/08(日) 召開 【第二屆第一次會員大會】。 會議與餐敘後, 將移動至戶外舉辦歡樂又熱血的 🏃‍♂️✨「健走杖運動會」✨🏃‍♀️ ——— 🇯🇵 第二個好消息|日本健走杖健走教練 初階培訓 2026「日本健走杖健走教練培訓」即將開課! 📆 課程日期:2026年04月12日(日) 09:00–17:00 📍 課程地點:台北市中山區吉林路24號12樓之1 想成為專業教練? 想更深入理解健走杖技術與教學系統? 這堂課, 將帶你從使用者走向專業引導者。 讓更多人因你而走得更穩、更遠、更健康。 ——— 🌿 第三個好消息|三得利 × 城市輕健走 台灣健走杖運動推廣協會再度攜手三得利, 展開 2026 年首場【城市輕健走】🎉 📅 2026/04/10(五)14:00–17:00 📍 地點:碧潭風景區 📌 報名時間:即日起至 3/10(二) 春日午後, 我們將漫步碧潭水岸, 在微風與湖光山色間, 用雙杖走出屬於城市的健康節奏。 新的一年,願大家健康常在、行動自由、笑容滿面。 🧧 新春快樂💚 雙杖在手,健康跟著走!

・長岡智津子さんの投稿
写真1件

・台灣健走杖運動推廣協會さんの投稿
2026「日本健走杖健走教練培訓」即將開課嚕~由日本骨科醫師創立的「日式健走」,手持雙杖輕鬆前行,不僅簡單安全,且有效地讓健走者維持和回復步行能力,更能達到全身運動效果,是越來越受歡迎的一項健康運動。課程中將帶你系統性學習「日式健走」的標準技術,掌握技能後持續練習,可幫助改善步行姿態,增加全身肌肉運動,也有助於增強健康活力!🇯🇵日本健走杖健走協會 NPWA 唯一授權海外課程! 【日本健走杖健走教練 初階培訓課程】 📆課程日期:2026年04月12日(日) 09:00–17:00 📍課程地點:台北市中山區吉林路24號12樓之1 (歐立達股份有限公司)完成培訓課程後,你可以: ✅取得課程研習證明 ✅指導親友學習日式健走若確認取得教練證書: ✅成為NPWA認證的日本健走杖健走初階教練 ✅取得參加日本健走杖健走進階教練培訓課程資格歡迎報名參加,詳細課程資訊及相關辦法請見 ➡️https://forms.gle/utaXeWeBEqShqsQF6📣補充 通過初階教練培訓者,可指導親友們學習日式健走。 若想要規劃與教導一般民眾學習日式健走,則需要再取得進階教練資格喔~

 

2.PW関連学術ニュース
2-1)身体活動の種類、多様性、および死亡率:2つの前向きコホート研究の結果
**大阪大学の宮坂昌之先生の2026年1月23日のFB投稿です**
「運動が健康に良い」ということは誰もが理解していることですが、では病気の予防に良いのはどのぐらいの運動量なのかとか、どの病気でも適度な運動量は同じなのか、とかについては、これまであまり良くわかっていませんでした。
この点、アメリカ・ボストンの研究グループが、調査開始時点で健康な(糖尿病、心血管疾患、呼吸器新患、神経系疾患、がんのいずれも持っていない)人、約11万名(女性約7万人、男性約4万人)について約40年間にわたり、運動量と病気による死亡リスクの関係について電子記録から調査を行い、その論文が専門誌BMJ Medicineに掲載されています(https://bmjmedicine.bmj.com/content/5/1/e001513)。なかなか読みにくい論文で、メッセージをつかむのに苦労したのですが、次のようなことが言えるかと思います。

まず1枚目の図では「どのぐらいの運動をするとそれぞれの病気による死亡率が下がるのか」を示しています。答えは「運動量がそれほど多くなくても、どの病気でも死亡率が下がり始めて、良い効果をもたらす運動量は(病気によって異なるが)1週間に5メッツ以上が一つの目安であろう」ということです。
ではメッツとは何を意味しているのでしょうか?2枚目の図です。メッツとは、運動の強度を示す単位で、安静時を「1」とした時に、特定の運動が何倍のエネルギーを消費するかを示します。つまり安静状態が1メッツ、普通歩行で3メッツ、ジョッギングで6メッツという具合です。そして1時間の運動量はMET-hours(メッツ・時)で表され、
運動量(MET-hours)=運動の強度(METs)x運動の時間(h)で計算されます。
たとえば、「週に5メッツ・時の運動量が必要」とは、1週間で行った運動の合計が「5」になればよい、ということです。
3枚目の図は、縦軸が全死因による死亡リスク、横軸が1週間の運動量ですが、各スポーツ種目における運動による死亡リスクの低減度が示されています。ここでも週に5メッツぐらいの運動量で死亡リスクが下がり始めることがわかります。ちなみに、週に5メッツぐらいの運動量を得るためには、ウォーキングで週90分、ジョッギングで45分、ランニングで30分、サイクリングで50分、スイミングで 45分、テニスで45分、ボート漕ぎで60分、ウェイトトレーニングで90分とのことですが、やり方によってこの数字はかなり変わってくるかもしれません。そして、複数の種目をやる人のほうが死亡率の下がり方は大きい傾向があるとのことでした。
以上、運動は健康に大事、特にさまざまな病気による死亡率を下げます。運動の種目や、そのやり方によっても異なりますが、一つの目安は「1週間5メッツ以上をやるのが良かろう」ということになると思います。

関連情報①
原論文
掲載誌:BMJ Medicine
公開日:20 January 2026publication details(open access)
表題:Physical activity types, variety, and mortality: results from two prospective cohort studies
(和訳:身体活動の種類、多様性、および死亡率:2つの前向きコホート研究の結果)
著者:Han Han, Jinbo Hu, Dong Hoon Lee, Yiwen Zhang, Edward Giovannucci, Meir J Stampfer, Frank B Hu, Yang Hu, Qi Sun

要約
目的は、個人の身体活動への長期的な取り組みと身体活動の多様性と死亡リスクとの関連性を調べることです。
・前向きコホート研究を設計する。
・看護師健康調査(1986~2018年)および医療専門家追跡調査(1986~2020年)の設定。
・参加者は、糖尿病、心血管疾患、癌、呼吸器疾患、神経疾患がなく、ベースラインで完全な身体活動情報を有していた女性70,725名と男性40,742名でした(余暇時間の身体活動は、追跡期間中、有効な質問票を使用して2年ごとに更新されました。身体活動の種類は、参加者が継続的に行った個々の身体活動の合計数として測定されました)。
・主な評価項目は全原因死亡率と原因別死亡率です。
結果: 2,431,318人年の追跡期間中に38,847人の死亡が記録され、うち9,901人が心血管疾患、10,719人が癌、3,159人が呼吸器疾患によるものでした。総身体活動量と、水泳を除くほとんどの個人的身体活動は、非線形の用量反応関係を伴い、死亡率の低下と関連していました。身体活動レベルが最も高いカテゴリーの全原因死亡率の多変量補正ハザード比を最も低いカテゴリーと比較すると、ウォーキングでは0.83(95%信頼区間0.80~0.85)、ジョギングでは0.89(0.85~0.94)、ランニングでは0.87(0.80~0.93)、サイクリングでは0.96(0.93~0.99)、水泳では1.01(0.97~1.05)、テニスまたはスカッシュでは0.85(0.80~0.89)、階段昇降では0.90(0.87~0.93)、ボートまたは柔軟体操では0.86(0.84~0.89)、ウェイトトレーニングまたは抵抗運動では0.87(0.82~0.91)であった。身体活動の多様性が高いほど、死亡率が低下することが示されました。総身体活動レベルを調整後、身体活動の多様性スコアが最も高いグループ(グループ5)の参加者は、最も低いグループ(グループ1)の参加者と比較して、全死亡率が19%低下し、心血管疾患、がん、呼吸器疾患、その他の原因による死亡率は13~41%低下しました(傾向性に関するP値はすべて0.001未満)。
結論:ほとんどの種類の身体活動を習慣的に行うことは、死亡率の低下と関連していた。身体活動の種類は、総身体活動レベルとは無関係に、死亡率と逆相関していた。全体として、これらのデータは、複数の種類の身体活動を長期的に行うことが寿命を延ばすのに役立つ可能性があるという考えを裏付けている。

関連情報②
高齢者にお勧めの「有酸素運動、筋力トレーニング、バランス運動を組み合わせたマルチコンポーネント運動」については、2023年11月のニュースを参照下さい。

関連情報③
宮坂先生が主催される新年度(2026年度)の「信州上田みらい塾」開講のお知らせです。テーマは「知っておきたいからだの仕組みと医学常識―健康寿命を延ばすには?」です。
**先生の2026年2月28日のFB投稿はこちらから**

 

2-2)パーキンソン病はSCANを中心とするネットワークの疾患である!
― 新しいホムンクルスが示した病態理解のパラダイムシフト ―
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月12日のFB投稿です**
神経科学でもっとも有名な図のひとつに「ホムンクルス」があります.一次運動野の中で,身体のどの部位がどこに対応しているかを示した図で,神経外科医Wilder Penfieldが1937年に発表しました.この地図は,「脳は部位ごとに機能が割り当てられている」という神経科学の基本的な考え方を象徴するものです.
しかし近年,この古典的な理解が大きく書き換えられました.2023年にNature誌に報告された研究では,機能的MRIを用いた詳細な解析により,一次運動野は単なる身体部位の並びではないことが示されました.足,手,口といった運動を担うエフェクター領域の間に,身体の特定の部位に対応しない領域が存在し,思考,行動計画,自律神経機能,身体内部の状態といった情報を統合していることが明らかになったのです.この領域は身体認知行動ネットワーク(somato-cognitive action network;SCAN)と名付けられました(図左).
SCANは,単に筋を動かす領域ではありません.覚醒状態,自律神経機能,身体内部の状態,動機づけや意図といった情報を統合し,「行動を実行する準備状態」を形成するネットワークと考えられています.つまり一次運動野には,「個々の筋を正確に動かす仕組み」と,「それらを統合して行動として成立させる仕組み」という,二つのシステムが存在していたことになります.この発見の本質は,ホムンクルスの形が変わったことではなく,脳の働きを「場所」ではなく「つながり」として理解する必要があることを示した点にあります.
ここで重要なのは,この新しいホムンクルスの概念,とくにSCANの存在が,臨床神経学の問題につながる可能性を持っていることです.もし個々の筋の動きは保たれていても,それらを統合して行動として成立させる仕組みが障害されたとしたらどうなるか?動く力はあるのに動き出せない,状況によって動きやすさが変わる,外的なきっかけによって動作が改善する――こうした現象が生じるはずです.
これはパーキンソン病(PD)の姿とよく似ています.PDの症状は単純な運動障害ではありません.時間帯や環境によって動きやすさが変化し,音楽や外的刺激によって歩行が改善することがあります.また「動き出すこと」が難しく,「すくむ」という特徴が前景に立ちます.さらに,便秘や睡眠障害,嗅覚低下,抑うつや意欲低下といった非運動症状が早期から認められます.これらは,単に筋を動かす回路の障害ではなく,行動の開始や全身状態の調整に関わるより広い仕組みの障害を示唆してきました.
今回Nature誌に報告された中国を中心とする国際共同研究は,まさにこの点を「脳ネットワーク」という観点から検証したものです.研究者らはSCANに注目し,大規模な機能画像データを用いてPDの病態を解析しました.本研究のアイデアが図右です.黒質,視床下核,淡蒼球,視床といったPDに関与する皮質下構造が,大脳皮質の手や足の運動領域ではなく,SCANと強く結びついていることを示しています.
図下は重要な結果ですが,PDにおいて異常が生じているネットワークの位置関係が模式的に示されています.従来,PDは黒質から基底核を経て運動野へ至る「運動回路」の障害として理解されてきました.しかしこの図では,これらの皮質下構造が一次運動野のエフェクター領域よりもSCANと強く結合していることが示されています.すなわち,PDで障害されているのは個々の筋を動かす回路ではなく,覚醒状態や身体内部の状態,動機づけといった情報を統合し,「行動を開始できる状態」を作るネットワークである可能性が示唆されています.この視点に立つと,動きそのものよりも動き出しにくさが目立つ理由や,自律神経症状や意欲低下が同時に生じる理由が理解しやすくなります.
さらに驚いたのが治療の影響です.本研究では,レボドパ治療,深部脳刺激(DBS),経頭蓋磁気刺激(TMS),集束超音波治療(FUS)といった異なる治療法は共通してSCANと皮質下構造との過剰な機能的結合を正常化することが示されました.特にSCANを標的としたTMSでは,従来の運動領域を刺激した場合よりも大きな症状改善が得られています.現在行われている治療は,結果としてこのネットワークの異常を調整している可能性があります.
19世紀末,カハールは個々の神経細胞から構成されることを示し,ニューロン説を確立しました.この発見によって,脳は「どの場所がどの機能を担うのか」という観点から研究されるようになり,20世紀の神経学は局在論を基盤として発展してきました.PDもまた,黒質という特定の部位の変性によって説明されてきた代表的な疾患です.しかし近年,脳画像解析と計算科学の進歩により,脳は単独の領域ではなく,多数の領域が相互に結びついたネットワークとして機能していることが明らかになってきました.いわゆるコネクトーム研究です.今回の研究は,PDの症状を個々の運動回路の障害としてではなく,行動を成立させるネットワーク全体の異常として説明できる可能性を示しました.これは,カハールが明らかにした「神経細胞」という単位から,その「つながり」へと神経科学の関心が移行していることを示す一例といえるのではないでしょうか.
Gordon EM. A somato-cognitive action network alternates with effector regions in motor cortex. Nature. 2023;617:7960. PMID: 37076628
Ren J. Parkinson’s disease as a somato-cognitive action network disorder. Nature. 2026. PMID: 41639440.

関連情報
① 原論文
掲載誌:Nature (2026) Open access
公開日:Published: 04 February 2026
表題:Parkinson’s disease as a somato-cognitive action network disorder
(和訳:パーキンソン病は体性認知行動ネットワーク障害である)
著者:Jianxun Ren, Wei Zhang, Louisa Dahmani, Evan M. Gordon, Shenshen Li, Ying Zhou, Yang Long, Jianting Huang, Yafei Zhu, Ning Guo, Changqing Jiang, Feng Zhang, Yan Bai, Wei Wei, Yaping Wu, Alan Bush, Matteo Vissani, Luhua Wei, Carina R. Oehrn, Melanie A. Morrison, Ying Zhu, Chencheng Zhang, Qingyu Hu, Yilin Yin, …Hesheng Liu

要旨
パーキンソン病(PD)は治癒不可能な神経疾患であり、睡眠障害や身体症状から徐々に始まり、全身の運動症状や認知症状へと進行することが多い1 , 2 , 3 , 4 , 5。覚醒、臓器生理、全身の運動計画を行動動機と調整することで行動実行を制御すると考えられている6 , 7体性認知行動ネットワーク(SCAN)の機能不全は、PDの多様な臨床症状の潜在的な一因である。PDの病態生理と治療(薬物療法、脳深部刺激療法(DBS)、経頭蓋磁気刺激療法(TMS)、MRI誘導集束超音波刺激療法(MRgFUS))におけるSCANの役割を調査するために、我々は大規模な(n  = 863)、マルチモーダル、マルチ介入臨床画像データセットを構築した。安静時機能的連結性により、黒質およびすべてのPD DBS標的(視床下核、淡蒼球および中間視床腹側部)は、効果器特異的な運動領域ではなく、SCANに選択的に連結されていることが明らかになった。重要なことに、PDはSCANと皮質下の特異的な過剰連結によって特徴付けられる。そこで我々は、精密な安静時機能的連結性と皮質電気記録を用いて、DBS、TMS、MRgFUSおよびレボドパ療法を受けている6つのPDコホートを追跡調査した。有効な治療によりSCANから皮質下の過剰連結が減少した。効果器領域の代わりにSCANを標的とすることで、TMS治療の有効性が2倍になった。集束超音波治療の利点は、標的が視床SCANスイートスポットに近いほど増加した。したがって、SCAN過剰連結はPD病態生理学の中心であり、その緩和は神経調節成功の特徴である。機能的に定義された皮質下 SCAN リンパ節を標的とすることで既存の治療法 (DBS、MRgFUS) が改善される可能性がある一方で、皮質 SCAN 標的は PD に対する効果的な非侵襲的または低侵襲的神経調節を提供します。

図 1: パーキンソン病において極めて重要な 6 つの皮質下領域の皮質機能的連結性。
a、シードベースRSFC(Z(r))マッピングにより、PD患者の大規模サンプル(PIPDデータセット、n  = 166)を使用して、一次運動野(M1)ストリップに3つの異なるインターエフェクタ領域を持つSCANモチーフが明らかになりました。PD患者とHC患者のグループ平均RSFCマップと個人固有のマップは、拡張データ図1に示されています。b 、PD回路の6つの皮質下ノード(SN、STN、VIM/CM、GPi、GPe、および被殻)の平均RSFCマップは、PD患者のSCANへの選択的な機能的接続を示しています。各皮質下リンパ節について、棒グラフは、効果器特異的(足、手、口)領域よりも SCAN 内で有意に強い接続性を示しています(下;両側対応のあるt検定、FDR 補正、P  = 1.43 × 10 − 24(SN)、P  = 2.97 × 10 − 18(STN)、P  = 6.10 × 10 − 20(VIM/CM)、P  = 2.55 × 10 − 25(GPi)、P  = 6.34 × 10 − 39(GPe)、P  = 6.79 × 10 − 39 (被殻))。データは平均 ± sem です。正中線ビューを含むリンパ節特異的 RSFC マップについては、拡張データ図2 を参照してください。補足図1 は、HC 患者において、皮質下から SCAN への RSFC が皮質下から効果器への RSFC よりも強いことを示している (すべてP  < 0.001、PIPD データセット、n  = 60)。c 、 PD で重要な皮質 – 皮質下回路の図。この回路は SCAN と 6 つの皮質下結節から構成されています。新たに認識された SCAN 領域 (紫) は、M1 内の効果器特異的運動領域 (青) の間に挿入されています (ref. 6 )。緑色の線と赤色の線は、それぞれ興奮性投射と抑制性投射を表しています。皮質 –STN 投射は、ハイパーダイレクト経路を示しています。PD 治療のための FDA 承認の DBS ターゲットが強調表示されており、STN、GPi、VIM が含まれています。詳細を追加した図のバージョンは、補足図3に示されています。*** P  < 0.001。
(注)解説文中のHC患者とは、「Healthy Control(健常対照)」の略です。

② 関連論文
掲載誌:Nature volume 617, pages351–359 (2023) Open access
公開日:19 April 2023
表題:A somato-cognitive action network alternates with effector regions in motor cortex
(和訳:体性認知行動ネットワークは運動皮質の効果器領域と交互に働く)
著者:Evan M. Gordon, Roselyne J. Chauvin, Andrew N. Van, Aishwarya Rajesh, Ashley Nielsen, Dillan J. Newbold, Charles J. Lynch, Nicole A. Seider, Samuel R. Krimmel, Kristen M. Scheidter, Julia Monk, Ryland L. Miller, Athanasia Metoki, David F. Montez, Annie Zheng, Immanuel Elbau, Thomas Madison, Tomoyuki Nishino, Michael J. Myers, Sydney Kaplan, Carolina Badke D’Andrea, Damion V. Demeter, Matthew Feigelis, Julian S. B. Ramirez, …Nico U. F. Dosenbach

要旨
運動皮質 (M1) は、同心円状の機能領域3や複雑な動作のマップ4の証拠があるにもかかわらず、足から顔の表現1 , 2まで中心前回を下って伸びる連続した体部位ホムンクルスを形成すると考えられてきました。本研究では、精密機能的磁気共鳴画像法 (fMRI) 法を使用して、古典的なホムンクルスが、効果器特有の (足、手、口) 領域と交互に、異なる接続性、構造、機能を持つ領域によって中断されていることを発見しました。これらの効果器間領域は、皮質の厚さが減少しており、互いに、また、動作5と生理学的制御6、覚醒7、エラー8、痛み9に重要な帯状蓋蓋ネットワーク (CON) との機能的接続が強力です。動作制御に関連する領域と運動効果器領域のこの嵌合は、3つの最大の fMRI データセットで検証されました。マカクザルおよび小児(新生児、乳児、小児)の精密fMRIは、インターエフェクターシステムの種間相同体および発達的前駆細胞の存在を示唆した。一連の運動および行動fMRI課題において、CONに連結されたインターエフェクター領域によって分離された同心円状のエフェクター体部位が記録された。インターエフェクターは運動特異性を欠き、行動計画(手足の協調)および体軸方向運動(腹部や眉毛など)の際に共活性化した。これらの結果は、刺激誘発性の複雑な行動4および副腎髄質などの内臓10への接続性を示す先行研究と合わせて、M1は全身行動計画のためのシステムである体性認知行動ネットワーク(SCAN)によって区切られていることを示唆している。 M1 では、2 つの並列システムが絡み合って、統合 – 分離パターンを形成します。効果器固有の領域 (足、手、口) は微細運動制御を分離し、SCAN は目標、生理機能、体の動きを統合します。

図1:一次運動野の精密機能マッピング。
a、1人の被験者(P1、356分の安静時fMRI)の左前中心回の皮質部位の連続線からシードされたRSFC。示されている6つのサンプルシードは、観察されたすべての異なる接続パターンを表しています(完全なマッピングについては補足ビデオ 1を参照)。これらの位置からシードされた機能的接続は、足(1)、手(3)、口(5)を表す領域の古典的なM1接続、および強く相互接続された領域(2、4、6)の噛み合ったセットを示しています。すべての高度にサンプリングされた参加者については拡張データ図1aと補足ビデオ 2を、参加者内複製については拡張データ図1bを、グループ平均データについては拡張データ図1cを参照してください。 b 、離散的な機能ネットワークは、図1で観察されたネットワークの空間的範囲(黒のアウトライン)を定義した、安静時fMRIデータに適用された全脳、データ駆動型、階層的アプローチ(方法)を使用して区別されました。 RSFC によって定義された領域は、足、手、舌を別々に動かす古典的なブロック設計 fMRI 運動タスクを使用して機能的にラベル付けされました (文献31に従います。詳細は文献29 を参照してください)。このマップは、模範的な参加者 (P1。他の参加者については拡張データ図1dを参照)の足、手、口の動きによって活性化される頂点の上位 1%を示しています。c 、効果器間の接続パターンは、接続閾値が 80 パーセンタイルから 97 パーセンタイルに増加するにつれて、周囲の効果器固有の運動領域とより明確に区別できるようになりました。効果器間パターンを検出するために必要な RSFC 閾値は、個人固有のデータ (上) の方がグループ平均データ (下、ABCD 研究、 n  = 3,928)よりも低かったです。

図 4: 中断されたホムンクルス、行動と運動制御の統合-分離モデル。
a , ペンフィールドの古典的なホムンクルス(文献2より改変)。一次運動野の身体の連続地図を示している。b , M1組織化の統合-分離モデルでは、効果器固有の機能領域(足(緑)、手(シアン)、口(オレンジ))が同心円で表され、近位の身体部分が比較的分離しやすい遠位の部分(つま先、指、舌)を囲んでいる。効果器間領域(えび茶色)はこれらの領域の交差点に位置し、統合的でアロスタティックな全身制御のための体性認知行動ネットワークの一部を形成している。ペンフィールドの元の図と同様に、この図は組織化の原理を示すことを目的としており、正確な地図として過度に解釈してはならない

 

2-3)岐阜大学医学部の下畑先生からの最新医学情報(2026年2月)
・脳外科の先生方と議論した「機能性神経障害の診療」@第68回ニューロ・オンコロジィの会
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月1日のFB投稿です**
伝統ある第68回ニューロ・オンコロジィの会にて,特別講演の機会を頂きました.当番世話人を務められたのは,新潟大学の同級生である近貴志先生です(写真右).同級生が座長を務める会で講演をさせていただくというのは,本当に嬉しく,感慨深い経験でした.
今回の講演テーマである機能性神経障害(FND)は,脳神経内科領域では近年注目されつつありますが,脳神経外科の先生方にとっては,まだ必ずしも馴染みの深い疾患とは言えないかもしれません.しかし実際には,画像や各種検査では十分に説明できない運動麻痺,感覚障害,けいれん発作を呈する患者さんは,診療科を問わず確実に外来を訪れます.講演中,脳神経外科の先生方が非常に熱心に耳を傾けてくださり,多くの質問を頂いたことから,FNDがいま,臨床の現場で確実に求められている疾患であることを,改めて実感しました.
講演後には,旧知の慈恵医大脳神経外科の田中俊英教授(写真中央)から,心に深く残るメッセージを頂きました.田中先生は,神経症候学の魅力を「推理小説の謎解き」に喩え,画像診断やAIが隆盛する現代だからこそ,臨床診断学の原点を忘れてはならないことを指摘してくださいました.さらに,患者さんの痛みや症状への「こだわり」を,いかに逸らすかという視点,そのためには患者さんの気持ちを理解し,患者自身が何かに熱中できる対象を見つけられるよう支援することが重要ではないか,という示唆も頂きました.これらの言葉は,私が今回の講演でお伝えしたかった考え方と,本質的に重なるものであり,強く共感しました.
診療科を越えて,「神経症候学の大切さ」や「患者さんにどう向き合うか」という臨床の原点を語り合えたことは,私にとっても非常に意義深い時間となりました.このような貴重な機会を設けてくださった近先生に,改めて心より感謝申し上げます.

・フロンティア「脳に忍び込むナノプラスチックを追う」NHK BS
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月2日のFB投稿です**
明日,2月3日(火)午前9:00〜午前10:00に,標題の番組がNHK BSで再放送されます.私もこの問題には強い関心を持っており,「#医学のあゆみ」誌の特集を最近,企画させていただき,脳梗塞や認知症への影響について執筆しました(https://amzn.to/3Z8vdoP).非常に大きな問題ですので,番組と本,ぜひご覧ください!以下,番組のご案内です.
私たちの脳の中にプラスチックが入り込んでいるという、衝撃の論文が2025年アメリカで発表された。見つかったのは環境に広まりつつあるウイルスサイズにまで微細化したナノプラスチック。脳には異物を遮断する生体システムがあるが、それを潜り抜けたのはなぜか?環境中にナノプラスチックはまん延しているのか?そして毒性は?認知症や発達障害への関与も危惧される中、一体真実はどこにあるのか?科学者たちの挑戦を描く。
◆番組へのリンク
https://www.web.nhk/…/series-tep-PM34JL2L14/ep/5R5GJ64VPM
◆医学のあゆみ「全身疾患の新たな危険因子としてのマイクロ・ナノプラスチック」
https://amzn.to/3Z8vdoP
#フロンティア #NHK #ナノプラスチック

・アルツハイマー病などのタウオパチーの理解に大きなパラダイムシフト!! ―203例のヒト脳が示す分子レベルで見た決定的な違い―
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月4日のFB投稿です**
アルツハイマー病や進行性核上性麻痺,大脳皮質基底核変性症などは,いずれもタウ蛋白の異常蓄積を特徴とする疾患であり,タウオパチーと総称されてきました.しかし,これらの疾患が分子レベルでどのように異なるのかについては,これまで十分に解明されていませんでした.同じタウ蛋白が蓄積するにもかかわらず多様な疾患が生じる理由として,これまでに①3リピートタウと4リピートタウの沈着の違い(微小管結合領域に含まれるリピート配列R2の有無によって規定されるタウ蛋白アイソフォーム)や,②タウ線維の立体構造(フォーメーション)の違いが明らかにされてきました.
しかし今回,米国ハーバード大学を中心に,米国有数の神経変性疾患研究拠点が参加したヒト剖検脳研究の成果がCell誌に報告され,タウオパチーの理解を分子レベルで大きく更新する知見が示されました.
解析対象となったのは合計203例のヒト剖検脳で,内訳はアルツハイマー病(AD)42例,家族性アルツハイマー病(FAD)4例,進行性核上性麻痺(PSP)41例,大脳皮質基底核変性症(CBD)34例,慢性外傷性脳症(CTE)24例,Pick病(PiD)20例でした.さら#に疾患対照としてレビー小体型認知症(DLB)14例,健常対照24例が含まれています.加えて,独立した検証コホートとして142例のヒト剖検脳が用いられ,解析結果の再現性も確認されています.
著者らは,サルコシル不溶性画分からタウ蛋白を精製し,FLEXITauと呼ばれる質量分析ベースの解析プラットフォームを用いて解析を行いました.この手法により,タウ蛋白の絶対量,アイソフォーム構成(3R/4R,0N/1N/2N),翻訳後修飾,および内因性切断部位をペプチドレベルで定量的に評価することが可能となりました.FLEXITauの最大の特徴は,単に修飾の有無を調べるのではなく,「どの部位がどの程度修飾・切断されているか」を数値として示せる点にあります.
この結果,病理学的タウには145か所の翻訳後修飾部位と195か所の切断部位が存在し,それらの分布と頻度は疾患ごとに大きく異なることが明らかになりました!ADおよびFADでは,タウ蛋白量が最も多く,分子全体にわたってリン酸化,アセチル化,ユビキチン化,さらに切断が高度に蓄積していました.CTEでも同様に広範な修飾と切断が認められましたが,その分布様式はADとは部分的に異なっていました.一方,CBDでは4リピートタウが主体であり,微小管結合領域におけるアセチル化やユビキチン化が特徴的でした.PSPでは,病理タウ量は比較的少なく,翻訳後修飾や切断も限局的であるという対照的な特徴が示されました.また,PiDでは3リピートタウ優位という明確なアイソフォーム特異性が確認されました.
本論文のGraphical abstractは,これらの結果を直感的に示した図です.図の中心には,N末端からC末端までのタウ蛋白の基本構造が描かれ,これはすべての疾患に共通する「タウの骨格」を表しています.その周囲にAD,PSP,CBD,PiD,CTEなどの疾患が配置され,各疾患ごとにタウ分子上の翻訳後修飾の分布が色分けで示されています.色はリン酸化,ユビキチン化,アセチル化などを表し,色が広範かつ濃いほど,その疾患においてタウが強く分子加工されていることを意味します.さらに,各疾患の横には「tau 2×」「tau 10×」「tau 81×」といった表記があり,健常対照と比べた病理タウ量の倍率が示されています.この図は,タウオパチーの違いが単なる量の差ではなく,タウ分子の質的な違いによって規定されていることを一目で示しています.
さらに著者らは,これらの分子データを用いた機械学習により,タウの分子特性のみから各疾患を高精度に分類できることを示しました.とくにFLEXITauによる定量データは分類性能が高く,将来的な疾患特異的バイオマーカー,PETリガンド開発,さらには分子標的治療への応用可能性が示唆されました.
非常に速いスピードで研究が進んでいます.本研究は,タウオパチーを一括りに扱う従来の概念を超え,疾患ごとに異なる「タウの分子像」が病態を規定していることを明確に示しています.今後,タウを標的とした診断や治療を考えるうえで,「どのタウを狙うのか」という視点が不可欠であることを,本論文は強く示唆していると言えます.
Kumar M, Schlaffner CN, Tang S, et al. Molecular features of human pathological tau distinguish tauopathy-associated dementias. Cell. 2026;189:1–13. doi:10.1016/j.cell.2025.12.036. PMID: 41616780.

・神経科学の父・カハールに学ぶ『若き研究者への助言』翻訳・出版プロジェクト
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月7日のFB投稿です**
岐阜大学医学部では,今年度から3年生を対象に「プロジェクト基盤型カリキュラム(Project-based Learning:PjBL)」のトライアルが開始されました.先日その発表会が行われ,脳神経内科では,スペインの神経解剖学者であり,1906年にゴルジとともにノーベル生理学・医学賞を受賞したサンティアゴ・ラモン・イ・カハールの著書『Advice for a Young Investigator(若き研究者への助言)』の翻訳プロジェクトをテーマとして参加しました.
今回のプロジェクトでは,本書の翻訳作業を進めるとともに,学生自身が自由研究としてゴルジとカハールに関する考察を行いました.3人一組で2チームの発表があり,一方のチームは,ノーベル賞を共同受賞しながらも異なる学説を主張したゴルジとカハールの対立に注目し,「科学における意見の対立がどのように学問の発展につながるのか」という視点から発表しました.もう一方のチームは,カハールが残した神経細胞のスケッチを芸術学的観点から捉え,科学と芸術の融合という興味深い切り口で考察を行いました.
学生たちは単なる翻訳にとどまらず,歴史,科学,芸術という複数の視点からカハールの思想に向き合い,大変質の高い発表となりました.神経学から出発した取り組みではありますが,結果として非常に豊かなリベラルアーツ教育の教材になったように思います.この内容は5月に開催される日本神経学会学術大会(横浜大会)の医学生・研修医セッションでも採択され,発表する予定です.
『Advice for a Young Investigator(若き研究者への助言)https://amzn.to/4qmf8qM』は,カハールが1897年に刊行した研究指導書であり,100年以上前の著作でありながら,現在でも海外では研究者のバイブルとして高く評価されています.研究に向かう心構えや方法論だけでなく,科学者としてどのように生きるかという問いにまで踏み込んだ名著です.日本ではあまり読まれていないことを残念に思い,今回,翻訳を思い立ちました.
本書は,研究に向かう姿勢,努力,倫理,そして情熱について語られた素晴らしい一冊です.多くの方に読んでいただきたいと願っています.そして,いつかこの翻訳を一冊の本として出版することが,私たちの目標です.

・動画で見る神経眼科所見 ―脳神経内科の視点から―@第7回中国四国神経眼科セミナー(岡山)
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月8日のFB投稿です**
新潟大学医学部時代の同級生であり,川崎医科大学眼科学1教授の三木淳司先生にお招きいただき,標題のセミナーにて講演を行いました.座長は,日頃より大変お世話になっている徳島大学脳神経内科学教授の和泉唯信先生にお務めいただきました.
講演では,神経眼科領域で日常診療において遭遇するさまざまな所見について,写真や動画を提示しながら,その臨床的意義や背景となる疾患,さらに症候からどのように病変部位を推定していくかについて議論させていただきました.三木先生には講演前に画像をご覧いただき,多くの示唆に富むご意見を頂戴し,大変有意義な時間となりました.また和泉先生からは,「すぐに検査に頼るのではなく,まず症候から病変局在を考えることの大切さ」についてご発言をいただき,まさに我が意を得たりという思いでした.
写真は,セミナー前日に三木先生のご厚意で開催していただいた食事会の様子です.岡山の新鮮なお魚やお肉を美味しくいただきながら,和泉先生の「七帝柔道記」時代のお話なども伺い,終始和やかで楽しいひとときを過ごすことができました.三木先生,和泉先生,このたびは貴重な機会をいただき,どうもありがとうございました!!
【症候一覧】
① 種々の神経疾患に伴う眼科的所見
raccoon eye appearance,前房蓄膿,Hutchinson徴候,Dalrymple–Stellwag徴候,眼窩周囲浮腫,Chameleon eyes sign,ocular neuromyotonia,上眼瞼向き眼振,下眼瞼向き眼振,round houses sign,square-wave jerks,上斜筋ミオキミア.
② 脳神経内科医が行う神経眼科的診察
Enhanced ptosis(Curtain sign),腱膜性眼瞼下垂,対光・近見反射解離,視運動性眼振の使い道,Landolfi徴候,tadpole pupil.
③ 目の失行
眼球運動失行(oculomotor apraxia),head thrust,開眼失行.
④ 意識障害時の眼球運動異常
ping-pong gaze,ocular bobbing,ocular dipping,ocular flutter,opsoclonus,see-saw nystagmus,Parinaud症候群,MLF症候群,one-and-a-half症候群,eight-and-a-half症候群,WEBINO症候群.
⑤ 機能性神経障害に伴う眼科的所見
管状視野(tubular vision),らせん状視野(spiral visual field),機能性視力障害,機能性眼瞼下垂,機能性半側顔面痙攣,光線過敏症,other Babinski sign.
⑥ 幻覚
中脳幻覚症,Charles Bonnet症候群,後頭葉てんかん,入眠時・覚醒時幻覚,原因別おばけの見分け方.

・なんと抗体陰性重症筋無力症の少なくとも7人に1人は遺伝性疾患だった! ―先天性から遺伝性筋無力症候群への名称変更の提案―
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月10日のFB投稿です**
抗体陰性重症筋無力症(seronegative myasthenia gravis:SNMG)の診療において,重要な臨床的疑問が提起されています.すなわち,「自己免疫性と考えられてきた症例の中に,実際には遺伝性の神経筋接合部疾患が含まれているのではないか?」という疑問です.この点を検討し答えを示したのが,オーストリアのウィーン医科大学神経内科からNeurology誌に報告された研究です.
この研究では,3つの神経筋疾患専門施設において診断された成人SNMG患者50例に対して,全エクソーム解析を用いた遺伝学的スクリーニングが行われました.その結果,7例,すなわち14%において先天性筋無力症候群(congenital myasthenic syndrome:CMS)が存在していました(図A).原因遺伝子はCHRNEおよびRAPSNに集中しており,いずれも神経筋接合部のシナプス後膜におけるアセチルコリン受容体機能の維持に関与する代表的なCMS関連遺伝子でした.
■CHRNE;cholinergic receptor nicotinic epsilon subunit;神経筋接合部のシナプス後膜に存在するニコチン性アセチルコリン受容体(AChR)を構成するサブユニットの一つをコードする遺伝子
■RAPSN;receptor-associated protein of the synapse;rapsyn(ラプシン)と呼ばれるタンパク質をコードしており,アセチルコリン受容体を神経筋接合部のシナプス後膜に集積・固定させる役割を担っている.
すなわち,本研究で同定された症例は例外的な遺伝子異常ではなく,従来から知られている典型的CMSであり,成人発症であってもCMSを鑑別から除外すべきではないことを示しています.また4例(8%)では遺伝子変異が検出されましたが,その変異が実際に患者の症状の原因であるかどうかが確定できないというケースでした.具体的には,神経筋疾患関連遺伝子ではあるものの,これまでCMSとの関連が確立していない遺伝子変異が検出されるということです.図Bに示すRAPSN,DOK7,DPAGT1,CACNA1Sがこのカテゴリーに含まれました.よって将来的にCMSとして再分類される可能性があります.
さらに重要なのは治療歴です.遺伝学的にCMSと診断された患者の86%が,診断確定以前に免疫療法または胸腺摘除術を受けていました.CMSでは免疫療法が必ずしも有効ではなく,場合によっては不利益となる可能性もあります.また一部症例では免疫療法に対する改善がみられていましたが,著者らはこれを偽薬効果や自然経過による変動の可能性と解釈しており,治療反応のみで自己免疫性MGと判断する危険性を指摘しています.加えて,家族歴を有さない症例や成人発症例も含まれており,家族歴なしや発症年齢のみでCMSを除外することができないことが示されました.
このような研究を背景として提起されたのが,英国オックスフォード大学を中心とするチームから最近報告されたBrain誌の意見論文です.著者らは,「先天性筋無力症候群(CMS)」という名称そのものが臨床的誤解を生んでいる可能性を指摘しています.CMSは遺伝性の神経筋接合部疾患群でありながら,「先天性」という言葉が出生時あるいは乳児期発症を強く想起させるため,成人発症例では鑑別に挙がりにくく,結果として診断遅延につながっている可能性があるというのです.実際に成人例では,抗体陰性MGとして長期間治療され,免疫療法や胸腺摘除術が行われていた症例が少なくありません.著者らは,CMSの本質は「先天性」であることではなく「遺伝性」である点にあるとして,「genetic myasthenic syndrome」という名称への変更を提案しています.
この2つの論文を続けて読むと,「抗体陰性の自己免疫性MGもありうる」という従来の発想から,「遺伝性疾患も常に鑑別に含める」という大きなパラダイムシフトが生じたことが分かります.先天性筋無力症候群はもはや小児疾患という枠組みではなく,年齢を問わず考慮すべき神経筋接合部疾患として再認識されつつあると言えます.また臨床的には,SNMG症例に全エクソーム解析を行うことが求められるわけですが,それが難しければ臨床的に鑑別できるかというところが次の課題になるかと思います.
Krenn M, et al. Screening for Congenital Myasthenic Syndromes in Adults With Seronegative Myasthenia Gravis Using Next-Generation Sequencing. Neurology. 2025;105:e214177. PMID: 41004697.
Ramdas S, et al. Congenital myasthenic syndrome: is it time for a name change to genetic myasthenic syndrome? Brain. 2026;awag035. PMID: 41630153.

・AI,Podcast,SNS時代の神経学教育はどうあるべきか? ―AIに問診してみました―
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月11日のFB投稿です**
医学教育を取り巻く環境は大きく変化しています.米国神経学会のNeurology Podcastの最新エピソード「Explore How Non-Traditional Educational Formats are Reshaping Neurology Training」では,AIやSNSなどの「非伝統的な教材」が神経学教育にどのような変化をもたらしているのかについて,示唆に富む議論が行われています(コメント欄のリンクよりフリーで聞くことができます).
まず印象的であったのは,現在の若手医師にとって,情報は「後で調べるもの」ではなく,「その場で即座にアクセスできるもの」へと変化しているという指摘です.スマートフォンやAIを用いて疑問を即時に解決できるわけです.しかし大規模言語モデルにはhallucinationと呼ばれる誤情報生成の問題があり,AIを鵜呑みにする態度は危険と強調されていました.むしろAIの普及によって,情報の妥当性を判断する専門家の役割はこれまで以上に重要だと述べられています.
また,学習スタイルの変化として,「非同期学習」,すなわち学習者と指導者が同じ時間・同じ場所に集まらなくても成立する学習形態への強い志向が示されました.学習者は自分の生活や臨床のリズムに合わせて学びたいと考えています.この背景には,SNSや短時間動画を用いたマイクロラーニング,すなわち短時間で完結する小さな学習単位を積み重ねて学習を進める方法が可能になったことがあります.限られた時間でも学習を継続できる利点がある一方,情報が断片化しやすく,理解が表層的にとどまる危険性もあります.そのため指導者に求められるのは,短い学習体験で終わらせるのではなく,そこから体系的理解へと導く構造をいかに設計するかということになります.
またPodcastは海外の学会や医学雑誌が熱心に取り組んでいて,私も情報源にしています.音声メディアであるため,移動中や日常生活の中でも学習が可能であり,世界の専門家の思考過程や臨床判断を共有できる点に大きな価値があります.しかし,聞き流すだけでは知識は定着せず,メモを取るとか,紹介された論文を勉強する,まとめるといった能動的関与が必要であることも指摘されています.また従来の教育に置換できるものではなく,上記の短時間学習と組み合わせながら,カリキュラムを補完するものとして活用すべきだろうというスタンスが示されました.
SNSについても,単なる情報拡散の手段を超えた教育的価値が議論されました.SNSは専門家と学習者をつなぎ,教室の外に学習コミュニティを形成します.ここで重要となるのは,情報の信頼性を評価する能力そのものを教育する必要があるということです.情報過多の時代において,「どの情報を信頼するか」を判断する力そのものが,現代の医学教育における重要な能力となっていることも指摘されています.
注目されるAIの活用については,その回答を無批判に受け入れるのではなく必ず原典を確認することや,批判的思考のトレーニングを並行して行うことが強調されていました.印象的であったのは,AIを用いた対話シミュレーションです.AIを患者役として用い,問診や臨床推論を繰り返し練習するのだそうです.従来は指導医との対面教育に依存していた実践的トレーニングを補完できると言っています.試しに私もこんな文章を打ち込んでみました.「私は研修医です.あなたは軽度の四肢筋力低下を主訴にやってきた60歳女性です.呼吸筋力低下があることが分かり,近医から紹介されてきました.問診します」自分はALSを想定して作った問題ですが,問診をしていたらどうもALSらしくなく,重症筋無力症(MG)が疑われだし,診察を経て,最後はMGの診断告知まで行きました.たしかに良いトレーニングになります.ちなみに評価もしてくれます.私はこんな感じでした.
総合評価(指導医目線);診断能力:◎,問診構造:◎,患者への説明:◎,安全性配慮:◎,改善余地:細部のみ.初期研修医としてはかなり上位レベルの対応です.特に,「診断を当てる」だけでなく,「患者の不安を減らす方向に会話が進んでいる」点が優れています.
→ホッとしましたが,自己免疫疾患でほぼ必ず入れる一言「ご本人のせいではありません」を追加すべきなど,いろいろご指導を受けました(笑).
最後に,新しい教育手法をどのように評価するかという問題が取り上げられました.カークパトリックの4段階評価モデル(Kirkpatrick Model)として知られている「学習者の反応(Reaction),知識や技能の向上(Learning),診療行動の変化(Behabior),そして最終的な患者アウトカムへの影響(Result)」という段階的評価が必要であると述べられています.教育を単に満足度ではなく医療の質の向上という観点から評価する重要性を示しています.
今回の議論から感じたのは,新しい手段をどのように活かし,組み合わせ,学習者を浅い理解から深い理解へと導くかという点において,教育者の役割がこれまで以上に重要になっていると思いました.
Neurology Podcast, February 5, 2026 Episode.Explore How Non-Traditional Educational Formats are Reshaping Neurology Training.(American Academy of Neurology).

・「オノ」型マイハンマーの本当の名称と正体
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月13日のFB投稿です**
1月23日の投稿で,NHK『#あしたが変わるトリセツショー』に出演したことを書きました.そのなかで,次のように記載しました.
「診察のなかでは私のハンマーコレクションもご覧いただきました.ちなみに斧型のハンマーはあまり見かけない形状ですが,ドイツのシャリテ病院で購入したベルリナー型(Berliner型)というものです.」
これに対し,X(旧Twitter)でインダス先生が次のようにコメントされているのを見つけました.
「ブログのキャプチャーで出ている打鍵器は,Berlinerではなく,VarioflexやFassbender Reflex Hammerと呼ばれるタイプ.Buck式とBerliner式のあいのこで,ふり心地としてはBuck式に近い.Berliner式はもっと重量感がある.」
びっくりしてすぐにご連絡し,教えていただいたお礼をお伝えしました.打腱器に関する総説はほぼ読んだつもりでおりましたが,「Fassbender」という名称はこれまで目にしたことがありませんでした.そこで改めて調べてみると,このハンマーの正体は次のようなものであることが分かってきました.
Fassbenderは人名であり(語源的には樽職人を意味します),Varioflexは商品名(vario+flex,ラテン語由来で「可変的にしなる」の意)です.このタイプのハンマーは主にドイツ語圏で用いられてきた古典的な打腱器で,20世紀前半のヨーロッパ,とくにドイツやオーストリアで広く使用されていたようです.ドイツ神経学に特徴的な,「診察によって局在を明らかにする」という文化を象徴する器具とも言われています.すなわち,「強く叩くこと」よりも,「最小限の動作で最大限の情報を得ること」,「再現性を重視して左右差を比較すること」,「一点を正確に打鍵すること」という考え方が色濃く反映されているという説明が見られます.
もっとも,これらの情報は文献による裏付けというより,海外製品ホームページやAIを用いた情報収集によるものであり,どこまで正確なものなのかはさらに確認が必要です.しかしもしこの理解が正しければ,英国のQueen Square型ハンマー(円盤型)が比較的しっかりと打鍵して腱反射を惹起することを重視しているのに対し,ドイツのFassbender型は,ピンポイントを左右同じ強さで叩き,差を見極めることを重視した設計思想を持つことになります.私自身,若い先生方への腱反射の指導ではこれまで繰り返し「左右をできる限り同じ強さで叩き,比較することが重要だよ」と教えてきました.今回調べてみて,自分がこのハンマーを自然に好んで使っていた理由が,そのような診察観と一致していたのだと気づき,妙に納得した次第です.
インダス先生,ご教示いただきありがとうございました.コメント欄には,ハンマーの歴史に関するスライド(改訂版)と,Fassbender型ハンマーの販売ホームページ(海外)を掲載しておきます.

・アルツハイマー病の3タイプに分けられる!? ― タウ増加は単純に神経細胞死の程度を反映するわけではない
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月14日のFB投稿です**
アルツハイマー病(AD)はこれまで,アミロイドβとタウの蓄積を中心とした単一の疾患として理解されてきました.しかし臨床の現場では,同じADであっても進行速度や症状の現れ方が大きく異なることを経験します.今回紹介する研究は,この違いがどこから生じるのかを分子レベルから説明しようとした,中国からの重要な報告です.
本研究は,国際的な大規模前向き研究プロジェクトであるADNI(Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative)のデータを用いて解析されています.脳脊髄液(CSF)中に含まれる6361種類の蛋白を網羅的に解析するCSFプロテオミクスと機械学習を組み合わせることで,AD患者を分子レベルで分類しました.その結果,ADは1つの連続した病態ではなく,異なる生物学的背景をもつ3つのサブタイプに分類できることが示されました(図).
臨床的には,3つのサブタイプで進行の仕方が明確に異なっていました.第1のサブタイプは脳萎縮が軽度で認知機能低下も緩徐であり,比較的進行の遅いタイプでした.この群ではRNA代謝やRNAプロセシングに関連する異常が特徴として認められました.第2のサブタイプは認知機能低下や脳萎縮の進行が中等度である一方,脳脊髄液中のタウは最も高値を示しました.分子レベルでは軸索形成や神経突起形成に関連する蛋白の変化が特徴でした.第3のサブタイプは脳萎縮が最も強く,認知機能低下と認知症への進行が最も速い重症型でした.この群では,細胞内の蛋白分解やカタボリック(細胞異化)過程,すなわちユビキチン・プロテアソーム系やオートファジーなどの細胞内分解・処理システムの異常が強く関与していることが示されました.
特に興味深い点は,タウが最も高い第2サブタイプが,必ずしも最も進行が速いわけではなかったことです.これは,タウの増加が単純に神経細胞死の程度を反映しているのではなく,軸索障害や神経回路の再構築といった過程を反映している可能性を示しています.また遺伝学的解析では,APOE ε4保有率やpolygenic risk scoreは第3サブタイプで最も高く,第1サブタイプで最も低いことが示され,分子病態の違いが遺伝的背景とも関連していることが明らかになりました.MRIでも,第3サブタイプでは海馬や側頭葉内側を中心とした脳萎縮が最も強く,経時的な萎縮進行も最も速いことが確認されています.すなわち,「ADの進み方の違いは,障害される生物学的システムの違いによって説明できる」という驚きの結論になります.
本研究では,これら3つのサブタイプが単なる病期の違いではないことも丁寧に検証しています.アミロイドβ量を補正した解析やMCI症例のみでの再解析でも同様のパターンが再現されており,ADという疾患のなかに異なる分子病態サブタイプが存在することが強く示唆されました.従来の「アミロイドβからタウへ」という単純な理解に対し,RNA代謝異常,軸索障害,細胞内分解障害という複数の経路が並行して存在し,それぞれが異なる臨床像を形成している可能性が示された点に,本研究の大きな意義があります.
興味深いことに,本研究でタウが最も高いサブタイプが必ずしも最も進行が速くなかった点は,近年提唱されているtau-clinical mismatchという概念とも一致します(2025-12-20ブログで紹介しました).すなわち,タウ病理の量そのものではなく,蛋白分解・処理機構や共存病理,さらには神経系のレジリエンスといった背景要因が,実際の臨床経過を規定している可能性が示唆されます.では,なぜ同じアルツハイマー病の中に3つのサブタイプが生じるのでしょうか?まだ不明ですが,恐らく遺伝子だけで決まるわけではなく,加齢や炎症,蛋白クリアランス能力,血管因子などが重なって形成される「分子環境の違い」が,どのサブタイプとして発症するかを規定している可能性が考えられます.将来的には,患者ごとのサブタイプに基づいて予後予測や治療選択を行う,いわゆるprecision medicineへの発展が期待されることになると思います.
Hou X-H, Zhang W, Kang K, et al. Proteomics reveals three molecular subtypes of Alzheimer’s disease with distinct progression patterns. Alzheimer’s & Dementia. 2026;22:e71106. PMID: 41650025

・薬剤性パーキンソニズムの機序はパーキンソン病と大きく異なるが,これもSCAN仮説で説明ができるかもしれない!?
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月15日のFB投稿です**
薬剤性パーキンソニズム(drug-induced parkinsonism:DIP)は抗精神病薬などの投与後に生じ,原因薬剤の中止により改善し得る点が特徴ですが,臨床的にはパーキンソン病(PD)との鑑別に悩む場面も少なくありません.韓国から報告されたNeurology誌の研究は,DIPの病態を脳ネットワークの観点から理解するうえで非常に示唆的な結果を示しています.
対象はDIP患者72例,未治療PD患者160例,健常対照62例で,dual-phase 18F-FP-CIT PETを施行し,早期相で脳血流,遅延相でドパミントランスポーター(DAT)機能を評価しています.神経活動が高まると局所のエネルギー需要が増加し,それに伴って血流が増加するため,脳血流は神経活動を間接的に反映する指標として用いられています.つまり脳ネットワークの機能状態を反映する血流分布とドパミン神経の状態を同時に比較しています.
結果ですが,驚いたのはDIPではPDとは明らかに異なる脳血流パターンを認めたことです(図左). DIPでは一次運動野,傍中心小葉,小脳など運動関連回路で相対的な過灌流が認められる一方,前頭前野,帯状回,島皮質,下頭頂葉,側頭葉といった広範な連合野で低灌流が示されています.特に前頭前野から帯状回にかけての低灌流は顕著であり,運動そのものの障害というよりも,「行動の開始や統合に関わる領域の機能低下」を示唆する結果でした!
さらに重要なのは運動症状との関連です.PDではUPDRS Part IIIの重症度は被殻を中心としたDAT低下と相関し,従来の理解通り,前シナプスドパミン神経の変性が運動症状の基盤であることが確認されました.一方,DIPではDATは保たれているにもかかわらず運動症状が出現し,その重症度は前頭前野や帯状回などの低灌流と相関していました(図右).すなわち,DIPでは神経細胞の脱落ではなく,ドパミン受容体遮断によるネットワーク機能の変化が症状に直結しているようです.
じつはこの論文,少し前に読んでその意義がピンとこなかったのですが,2月12日にご紹介した「パーキンソン病はSCANを中心とするネットワークの疾患」というNature論文を読んで,これらの論文はつながるのかも!と思いました.新しいホムンクルスのなかで提唱されたSCAN(somato-cognitive action network)は一次運動野の中で身体部位の運動を直接担う領域の間に存在し,覚醒状態,内受容感覚,動機づけ,自律神経状態などを統合して「行動を開始できる状態」を作るネットワークと考えられています.本研究ではSCANという名称は出てきませんが,DIPにおいて前頭前野や帯状回など行動開始や統合機能に関わる領域の低灌流が運動症状と関連していたという結果は,運動障害を広い行動ネットワークの機能変化として理解する視点とよく一致します.
今回のDIP研究を改めてこの枠組みで読み直すと,DIPではPDとは異なり,黒質ドパミン神経そのものは保たれています.しかし,原因薬剤はドパミン受容体を遮断するため,神経からドパミンが放出されていても,その信号が十分に伝わらなくなります.この影響は線条体の運動回路だけにとどまらず,前頭前野や帯状回といったSCAN領域にも及びます.その結果,「動き出すための準備を整えるネットワーク」の働きが低下し,無動や歩行障害として現れる可能性があります.今後の研究として,DIPにおいてSCANと基底核の機能的結合が実際に変化しているかをfMRI結合解析で検証することが行われるのではないかと思います.そしてもし薬剤中止とともにネットワーク結合が正常化することが示されれば,DIPはPDの病態理解を補強する「可逆的モデル」として重要な意味を持つことになります.また薬剤中止でも改善しないDIPではSCANを標的としたTMSが有効かも・・・と妄想は膨らみます.
いずれにしても神経学は長らく局在論を基盤として発展してきましたが,近年は脳をネットワークとして理解する方向へと大きく転換しています.DIPは,神経変性を伴わずにPD様症状を生じるヒトモデルとして,SCAN仮説を検証する上でも重要な位置づけを持つのかもしれません.
Sun Y, Na HK, Jeon S, ey al. Cerebral perfusion and motor deficits in drug-induced parkinsonism: A dual-phase 18F-FP-CIT PET study. Neurology. 2026;106:e214573. PMID: 41512212.

・Glymphatic systemの次に来る大発見!? ― 脳内ナノスケールリンパ管様構造発見のインパクト
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月17日のFB投稿です**
脳は体重のわずか2%であるにもかかわらず,全身エネルギーの約20%を消費する極めて代謝の活発な臓器です.それにもかかわらず,どのようにして代謝産物や不要な蛋白を効率よく排出しているのかは長年の大きな謎でした.2012年にglymphatic systemが提唱され,脳脊髄液と間質液の流れによって老廃物が除去されるという概念が広まりましたが,その「流れ」を支える明確な構造が存在するのかどうかは不明のままでした.今回紹介する研究は,まだ査読前のプレプリントではありますが,この問題に対して新しい仮説を提示する非常にインパクトの大きな報告です.
本研究は,米国ハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院の研究グループによって行われました.著者らはアルツハイマー病(AD)モデルマウスの脳におけるアミロイドβ(Aβ)を観察する目的で,拡張顕微鏡法(試料である生体組織そのものを物理的に膨張させることで,通常の光学顕微鏡でも超解像度に近い観察を可能にする技術)と,Aβを可視化するために開発された蛍光プローブCRANAD-3を用いた解析を行っていました.その過程で偶然,これまで知られていなかった脳内の管状パターンを観察しました.CRANAD-3はAβに結合する蛍光プローブであり,CRANAD-3によって描出されているのは管構造そのものではなく,Aβが存在する領域です.著者らは,このAβシグナルが連続した管状パターンを示したことから,その背景にナノスケールの管状構造が存在すると解釈しました.この構造は直径500〜1000 nm程度と非常に小さく,脳実質内に網目状に広がって存在しており,nano-scale lymphatic-like vessels(NLVs)と命名しています.脳毛細血管の直径が約4000〜8000 nmであることを考えると,NLVsは毛細血管の約1/5〜1/10程度の太さしかありません.
図1では,脳皮質内に非常に細い管状構造が多数存在し,互いに交差しながら網目状のネットワークを形成している様子が示されています.重要なのは,これらの構造が血管周囲に沿って走行しながら広範囲に分布している点です.これまでglymphatic systemは,脳脊髄液が血管周囲を流れることによって老廃物が運び出される「流れ」として理解されてきましたが,その流れを担う具体的な管状構造は確認されていませんでした.今回の所見は,その背景に実際の構造的基盤が存在する可能性を示唆しています.
図2では,リンパ管マーカーであるLYVE-1とCRANAD-3の染色パターンが比較されており,CRANAD-3が既知の髄膜リンパ管と類似した分布を示すことが示されています.つまりCRANAD-3がリンパ系構造を可視化しうる可能性を示す結果ですが,CRANAD-3自体はAβに結合するプローブであり,リンパ管を直接標識しているわけではありません.したがって,NLVsがリンパ管そのものであることを示したものではなく,名称に「リンパ管様」と表現されているわけです.
興味深いのは,これらのNLVsの内部あるいは壁にAβの沈着が観察された点です.図3では,Aβ抗体染色(6E10)がCRANAD-3で描出された管状パターンに沿って分布しており,Aβがこれらの構造に関連して存在する可能性が示されています.ADモデルではNLVsの断裂や変形が多く認められ,アミロイド斑周囲ではNLVsが減少する領域も観察されました.これはAβが単に脳内に蓄積するだけでなく,排出経路そのものを障害している可能性を示唆する所見であり,いわゆる「glymphatic failure」という考え方とも整合的です.
図4では,著者らの提唱する概念モデルが示されています.その説明では脳内の排泄と免疫監視が分離して理解されており,NLVsが主に代謝産物の排出を担い,一方で免疫監視はミクログリアやアストロサイトが担うという二層構造が仮説として提示されています.脳は従来,リンパ管が存在しないため免疫細胞の出入りが限られる「免疫特権的臓器」と考えられてきました.今回の研究は,免疫とは別に老廃物排出を担う構造が存在する可能性を示しており,脳が「免疫特権的臓器」と理解されてきた背景を説明しうる新しい視点を提示しています.
もっとも,本研究は現時点ではプレプリントであり,慎重な解釈が必要です.NLVsが真にリンパ管であるのか,あるいは全く新しい種類の管状構造なのかはまだ確定しておらず,また拡張顕微鏡法に伴うアーティファクトの可能性も指摘されています.リンパ管に特異的な内皮構造や,流体輸送を直接示す証拠も現時点では示されていません.したがって,本研究は新しい解剖学的実体の確立というよりも,「glymphatic systemの構造的基盤を説明しうる仮説の提示」と理解するのが現時点では妥当かもしれません.
それでもなお,本研究の意義は小さくありません.脳の排泄機構に関する理解は,2012年のglymphatic systemの提唱によって「流れ」が示され,2015年の髄膜リンパ管の発見によって「出口」が明らかになりました.今回のNLVの報告は,その間をつなぐ「構造」が存在する可能性を示したものと位置づけることができます.もし今後,別の研究グループによる再現や機能的検証が進めば,ADをはじめとする神経変性疾患の理解に新しい視点をもたらす可能性があります.脳の老廃物排出機構の研究は,いままさに次の段階に入りつつあるのかもしれません.
Gu S, Dong H, Chen H, et al. Discovery of abundant nano-scale lymphatic-like vessels in brains. bioRxiv. 2025. DOI:10.64898/2025.12.30.697095

・ナノプラスチックは生体の「微小環境」を変化させ,神経変性疾患と癌の双方を促進する
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月19日のFB投稿です**
環境中に広く存在するマイクロ・ナノプラスチック(MNPs)が,ヒトの健康にどのような影響を与えるのかが大きな関心を集めています.今回ご紹介する2本の総説は,いずれも米国Duke大学を中心とした研究グループによる J Clin Invest 誌のViewpointであり,一方は神経変性疾患との関連を,もう一方は発癌との関連を論じています(文献1, 2).異なる疾患領域を扱っていますが,両者は「慢性炎症と生体微小環境の変化」という共通の視点で結びついています.
まず,神経変性疾患に関する論文では,近年の研究によりナノプラスチックが全身臓器に存在し,とくに脳において多量に検出されることが紹介されています.そしてナノプラスチックは,その極めて小さなサイズと表面特性のために,生体内で従来の微小粒子とは異なる生物学的影響を持つ可能性があると述べています.ナノプラスチックは表面化学的性質やコロイドとしての振る舞いにより,周囲の分子と強く相互作用しやすく(!),サイズが極めて小さいため生体内での利用可能性(bioavailability)が高いと考えられています.さらに,脂質や蛋白質に似た物理的特性を持つことから,細胞膜や蛋白質と直接相互作用しやすい可能性が指摘されています.実際,神経変性疾患に関連するαシヌクレイン,アミロイドβ,タウといった蛋白は脂質環境の変化によって凝集しやすくなることが知られており,ナノプラスチック表面がこれらの蛋白の構造変化や凝集を促進する可能性が示唆されています(図1, 文献3).この点は,単なる異物曝露というよりも,生体分子の振る舞いそのものを変化させうる点で,従来の環境粒子とは異なる意味を持っています.
さらに,ナノプラスチックは脂質様粒子と類似したサイズを持つためミクログリアに取り込まれやすく,炎症状態を誘導する可能性も議論されています.図2では,環境中で劣化したプラスチックがナノサイズの粒子となり,吸入や摂取を通じて体内に入り,脳内で炎症や異常蛋白凝集と関連する経路に関与するという概念図が示されています.すなわち,ナノプラスチックは神経変性疾患の原因としてではなく,既存の病態を促進する環境因子として位置づけられています.
この総説の中で紹介されている論文では,動物実験で経口投与されたナノプラスチックが腸管神経系に分布し,αシヌクレインとともに腸から脳へ移行することが示されています(図3, 文献4).その結果,マウスでは不安様行動や運動障害が増悪し,黒質ドパミン神経の脱落も増強しました.これらは,ナノプラスチックが腸-脳軸を介してPD病理の進展を促進しうることを示唆しています
一方,発癌に関する論文では,MNPsが直接DNAを変異させる発癌物質として作用するというよりも,慢性炎症を誘導し,癌の発生や進展を促進する環境を形成する可能性が強調されています.この考え方はPM2.5が癌を促進する機序と類似しており,マクロファージによる異物認識,炎症性サイトカインの産生,酸化ストレスの増加,腸内細菌叢の変化などが複合的に作用すると考えられています.図4に,MNPsの取り込みが炎症,免疫調節異常,酸化ストレス,DNA損傷,ホルモンシグナル変化などを介して腫瘍形成に関連する細胞過程へとつながる概念図が示されています.さらに,MNPsには多数の添加剤が含まれており,これらが内分泌撹乱や酸化ストレスを通じて発癌リスクを高める可能性も議論されています.
この2本の論文を並べて読むと,ナノプラスチックはそれ自体が単独で疾患を引き起こす原因物質というよりも,慢性炎症や免疫反応の変化を介して生体の「微小環境」を変化させ,既存の病態を促進させるという点が共通していることが分かります.神経変性疾患では異常蛋白凝集や神経炎症を増幅させる因子として,癌では腫瘍増殖を許容する炎症性環境を形成する因子として作用しうるという理解です.現時点ではまだ仮説的な段階であり,因果関係は確立されていませんが,環境因子が慢性疾患の進行にどのように関与するかという観点から,今後の研究の進展するものと思われます.今後,重大な関心をもって注視していく必要があると思います.
1) West AB, et al. The hidden world of nanoplastics colliding with neurodegenerative diseases. J Clin Invest. 2026;136(4):e204824.
2) Somarelli JA, et al. The carcinogenic consequences of the plastic pollution crisis. J Clin Invest. 2026;136(4):e203775.
3) Mishra A, et al. Pathological Folding of α-Synuclein on Polystyrene Nanoplastic Revealed by Sum Frequency Scattering and 2D Infrared Spectroscopy. J Phys Chem Lett. 2025;16:11893-11900. PMID: 41196586.
4) Liang X, et al. Polystyrene Nanoplastics Hitch-Hike the Gut-Brain Axis to Exacerbate Parkinson’s Pathology. ACS Nano. 2025;19:5475-5492. PMID: 39883073.

・発症まであと何年か?p-tau217が明かすアルツハイマー病のカウントダウン
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月22日のFB投稿です**
アルツハイマー病(AD)の研究は「発症するかどうか?」を予測する方向で進んできました.種々のバイオマーカーの開発によりそれが可能となりましたが,次に研究者が考えることは(その是非はともかくとして)「いつ発症するのかを正確に予測できるか?」ということです.Nature Medicine誌に発表された論文は,血液バイオマーカーであるリン酸化タウ(p-tau217)を用いて,この問いに迫った非常に重要な研究です.米国Washington Universityを中心とするグループにより行われ,ADNIをふくむ2つの大規模コホートのデータが用いられました.
本研究では血液中のp-tau217,とくにリン酸化率を示す%p-tau217に注目し,その経時的変化から病気の進行を「時計」として推定するモデル「クロックモデル」を構築した点が特徴です.解析の結果,%p-tau217は一定の範囲において,個人差はあるものの,規則性をもって増加するパターンを示し,この性質を利用することで「いつ異常化したか」という年齢を推定することが可能となりました.そしてこのp-tau217異常化年齢は,実際のAD症状の発症年齢と中等度から良好な相関を示し,単一の血液検査から発症時期を推定できる可能性が示されました.具体的には,決定係数R²は約0.3〜0.6と,中等度から良好な説明力を示しました.そして予測誤差は中央値で約3〜4年とされており,個人レベルでは限界があるものの,臨床試験など集団レベルでは実用的な精度と考えられます.
本研究の核心を最も直感的に理解させてくれるのが図1です.p-tau217が異常化した年齢ごとに,その後どの程度の期間で症候性ADに進展するかが示されています.例えば,60歳代(赤)で異常化した場合には発症までの中央値は約20.5年であるのに対し,80歳代(緑)で異常化した場合には約11.4年と大きく短縮していました.すなわち,同じp-tau217異常であっても,その出現年齢によって発症までの時間が大きく異なることが明らかになりました!この結果は,高齢発症例ほど進行が速いという臨床現場での感覚とも一致しており,ADの進行が年齢依存的に加速することを示唆する重要な知見です.
さらに,本研究の本質を示しているのが,著者であるSuzanne E. Schindler博士がXで公開した動画(図2)です.このアニメーションでは,最初に年齢を基準として各個人のp-tau217の推移をプロットすると軌跡はばらばらに見えますが,クロックモデルを用いて「p-tau217が異常化した時点」を基準に再配置すると,それらが一つの曲線に重なります.ちなみに赤線は観察期間中に血漿p-tau217が少なくとも1回は基準値を超えた人のデータ,灰色線は基準値を超えなかった(陰性のままだった)人のデータです.この現象は,ADの進行が個人ごとに異なる時期に始まりながらも,一度始まると類似したパターンで進行することを示しています.この「類似したパターン」こそが,現在の血液データから,病態が始まった時期を推定し,そこから将来の発症時期を見積もることを可能にします.
また,本研究の成果は「Plasma p-tau217 Biomarker Clocks」というWebアプリ(図3)として公開されており,年齢やp-tau217値を入力することで,発症確率や発症年齢を視覚的にシミュレーションすることが可能です(リンクはコメント欄に示します).コホートや測定法,モデリング手法を選択しながら結果を確認できるこのツールは,研究者にとって非常に有用であり,臨床試験の設計や対象者選定を加速させることが期待されています.
一方で,本研究が提示する「発症までのカウントダウン」という概念は,重大な倫理的問題も提起します.p-tau217は近い将来,誰でも測定可能な時代が到来します.そして上記Webアプリに入力し「あなたはあと何年で発症する可能性が高い」と示された場合,それを私たちはどのように受け止めるでしょうか.心理的負担は当然ですが,就労や保険,社会的立場への影響も無視できません.将来的に予防や治療が可能になれば,このような時間予測は大きな価値を持つ可能性がありますが,それらが十分に確立していない現状では「知ること」の意味そのものが問われます.個人的には「できること」と「行うべきこと」は別だと思います.慎重な議論や準備が必要だと思います.
いずれにせよ,本研究は,ADの理解を「リスク」から「時間」へと大きく進展させた画期的な成果です.血液検査という簡便な手段によって,神経変性疾患の未来を時間軸で捉えるという発想は,今後の医学の方向性を象徴しているように感じます.
Petersen KK, Milà-Alomà M, Li Y, et al. Predicting onset of symptomatic Alzheimer’s disease with plasma p-tau217 clocks. Nature Medicine. 2026. PMID: 41714746.

・機能性感覚障害は従来考えられてきたものとかなり異なる ―運動症状を主体とするFND患者102例の検討―
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月23日のFB投稿です**
機能性神経障害(FND)では,筋力低下や振戦,歩行障害などの運動症状が注目されることが多いですが,感覚症状については十分に検討されてきませんでした.最新のBrain Communications誌に掲載された研究は,この課題を本格的に扱った英国の多施設による前向き症例対照研究です.方法としては運動症状を主体とするFND患者102例と,軽度から中等度の脳卒中患者75例を比較して,感覚症状の頻度,特徴,さらに機序について詳細に検討しています.
まず明らかになった点は,FNDにおいて感覚症状が極めて高頻度に存在するということです.患者自身が自由に症状を述べた場合でも69.6%が感覚症状を報告し,問診で確認すると96.1%に達しました(図1).これは脳卒中患者のそれぞれ30.7%および66.7%よりも明らかに高頻度です.さらに16.7%の患者が感覚症状を最もつらい症状と述べており,感覚症状が運動症状の単なる付随現象ではないことが示されています.
感覚症状の内容も多彩でした.しびれや感覚低下といった一般的な症状だけでなく,「手足が死んだように感じる」,「体の中で振動している」,「電気が流れる感じがする」といった抽象的で印象的な表現が多く認められました.このような感覚体験は脳卒中では比較的少なく,FNDに特徴的といえます.また複数の感覚症状を同時に有することや,症状が時間的に変動することも多く,触覚だけでなく光や音に対する過敏性を伴う症例も目立ちました.
感覚症状の分布も特徴的でした.一側性が45.3%,両側性対称性が42.1%,両側非対称性が12.6%と,両側性を多く認めることが分かりました.一側性では境界が腕や脚の付け根,手首・肘が多く,必ずしも神経解剖学的支配領域に一致しませんでした(図2).また両側も同様に神経解剖学的支配領域に一致しないケースが多かったものの,手袋・靴下型を示す症例も7.4%に見られました(図3).
さらに重要なのは,感覚症状が出ている四肢では,同じ部位に運動症状も同時に存在することが多かった点です.これは,FNDでは「動き」と「感じ方」が別々に障害されているのではなく,両者を統合する脳の仕組みに機能的な変化が生じている可能性を示唆しています.
診察上重視されてきた所見についても再評価がなされています.従来,特徴とされてきた正中線での感覚分離は2.1%と頻度が低く,逆に脳卒中でも認められることがあり,診断特異性は高くありませんでした.胸骨や前額部に音叉を当てた時の振動覚の左右差はFNDでより多く認められましたが(54%対19%),単独で診断根拠とすることは適切ではないとされています.また定量的感覚検査は一定割合で異常を示すものの,その頻度は脳卒中群と大きな差がなく,患者の自覚症状との一致度も十分ではありませんでした.このため,通常の臨床診察を超える診断的価値は限定的と結論づけられています.
さらに12か月の追跡では,感覚症状が改善した患者は約30%にとどまり,約70%では不変または悪化していました.この結果は,感覚症状が一過性の現象ではなく,FND全体の重症度や慢性化と関連する重要な指標である可能性を示しています.
個人的なFND患者さんの診療経験から関心があるのは痛みです.この研究で痛みは定義上,感覚症状から除外されていましたが,別項目として詳細に評価されています.FND群では88%が定期的な痛みを経験しており,脳卒中群の約41%よりも明らかに高頻度でした.興味深いことに,FND群では痛みを多く経験しているにもかかわらず,自身を「痛みに強い」と認識している患者が多いという結果も示されています.感覚症状の重症度は痛みの強さとも相関していましたが,多変量解析では痛みは独立因子にはならず,身体機能障害(健康関連QOL尺度による自己評価)と抑うつが独立した関連因子でした.
著者らは,感覚症状の機序は単一ではなく,運動症状に伴う感覚フィードバックの変化,身体知覚の歪み,解離,不安やパニック反応,感覚処理の特性,内受容感覚の誤認識などが複合的に関与すると考察しています.したがって治療も単一の介入ではなく,リハビリと心理的介入を組み合わせた多職種的アプローチが重要と結論づけています.いずれにせよ本研究は,FNDにおける感覚症状を「診断的価値が低い周辺症状」とみなしてきた従来の見方の大きな修正を求めるものです.感覚症状は頻度が高く,持続しやすく,生活機能や心理状態と密接に関連する中核的症状であり,診療の中で積極的に評価し,丁寧に説明していく必要があります.
Nielsen G, Higgins R, Stone J, Coebergh J, Edwards MJ.Functional sensory symptoms and signs: a case-control study of 102 patients.Brain Communications.2026.PMID: 41709912

・日経メディカル連載「医師こそリベラルアーツ!」第17回が公開されました
―逆境に医師はどう向き合うべきか,「松下流」を学ぶ
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月25日のFB投稿です**
日経メディカル連載「医師こそリベラルアーツ!」の第17回が,日経メディカル「Cadetto.jp」にて公開されました(https://medical.nikkeibp.co.jp/…/lib…/202602/592015.html).本連載は,これまで私が岐阜大学で開催してきたリベラルアーツ研究会のミニレクチャーを紙面上に再現したものです.医師・医学生の皆さんは,会員登録をすれば無料でお読みいただけます.
今回のテーマは,「逆境にどう向き合うか」です.医師としての臨床や研究は常に不確実性と隣り合わせであり,診断に迷い,治療が奏効せず,患者や家族との関係に悩む場面もあります.また医師自身も,制度や環境の変化,将来への不安など,さまざまな逆境の中で働いています.研究においても,多くの困難や失敗に直面します.こうした状況において,逆境への向き合い方は,医師として働き続けるための実践的な課題と言えます.
本稿では,「経営の神様」と言われたパナソニックグループ創業者の松下幸之助氏の『道をひらく(https://amzn.to/4qUOUMk)』(PHP研究所,1968)を手がかりに,逆境の意味を考えました.松下は「逆境は尊い」と述べますが,それは逆境が自分のあり方を見つめ直す契機になるからです.同じ失敗でも,「自分は無能だ」と捉えるか,「ここから学べることがある」と捉えるかで,その後の行動は大きく変わります.逆境とは,人生の流れを止めるものではなく,その方向を見つめ直す機会なのだと思います.
その中で特に重要なのが「素直さ」です.ここでいう素直さとは,現実をゆがめずに受け止め,自分にとって都合の悪い事実も含めて向き合う態度です.自分の限界を認め,他者の意見に耳を傾けることができる人ほど,逆境を成長につなげることができます.一方で,素直さを失うと,人は防衛的・他責的になり,そこから学べなくなります.
人は逆境に直面すると別の道を探したくなります.しかし,すぐに手放すのではなく,一度引き受けてみることも大切です.限界を超えた場合には環境を変えることも必要ですが,「逃げない」という選択は,自分を内側から強くし,次の選択に耐え得る基盤をつくります.
さらに,失敗や挫折もまた通過点です.それを「起こってはいけないこと」と捉えるのではなく,「誰もが通る過程」として受け止めることができれば,挑戦を続ける力につながります.失敗を恐れて立ち止まるのではなく,そこから何を学び,次にどう生かすかが問われています.私は脳卒中の創薬研究に取り組み,血栓溶解薬+VEGF抗体療法の開発を目指すベンチャーを米国で立ち上げましたが,振り返ると失敗の連続でうまく行きませんでした.現在,2つ目のベンチャーで仲間とともに新しい細胞療法の開発を目指しています.これまでの過程で幾度も思い出し,支えとなってきたのが,松下氏の「失敗したところでやめてしまうから失敗になる.成功するまで続ければそれは成功になる」という言葉です.逆境も挫折も,すべては受け止め方次第です.その中で自分はどう生きるのかを問い続けることこそが,医師としての成長につながるのではないかと思います.
今回,逆境の中でも前向きに取り組む姿勢の大切さを示す具体例として,ロバート・アイガー氏の自伝『ディズニーCEOが大切にしている10のこと(https://amzn.to/4aysbke)』(早川書房,2023)も紹介しました.そして次回は,『代表的日本人(https://amzn.to/46pMePm)』(内村鑑三)を取り上げ,「日本人古来の美しい生き方や精神性」について考察する予定です.どうぞご期待ください.
道をひらく  https://amzn.to/4qUOUMk
ディズニーCEOが大切にしている10のこと  https://amzn.to/4aysbke

・機能性発作におけるSpO₂低下の多くはアーチファクトである―ウェアラブル時代の新たなピットフォール―
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月26日のFB投稿です**
機能性発作(functional seizures)は,機能性神経障害の代表的な病型であり,救急医療の現場ではてんかんとの鑑別にしばしば苦慮します.近年,スマートウォッチや家庭用パルスオキシメーターの普及により,「発作中に酸素飽和度(SpO₂)が低下した」という訴えが増えているそうです.SpO₂低下が事実であれば,器質的なてんかん発作や心肺疾患を疑いたくなるのは自然な流れです.今回ご紹介するのは,帝京大学医学部脳神経内科の神林隆道先生らと,英国エディンバラ大学のJon Stone先生らによる,機能性発作におけるSpO₂低下の解釈についての重要な報告です.
50歳代女性の症例が提示されています.この患者は機能性発作を繰り返し,家庭用デバイスおよび救急外来でSpO₂低下が繰り返し記録されていました.呼吸困難感や胸痛も伴っていたため,肺塞栓症などを疑った精査が行われましたが,心肺系の異常は認められませんでした.その後,ビデオ脳波モニタリング下で発作が確認されたところ,発作中にSpO₂は一時的に低下しましたが,その程度は90%台前半にとどまり,息こらえによる生理的変動の範囲内でした.さらに重要な点として,パルスオキシメーターでは心拍に同期した規則的な脈波波形が確認できず,心拍数も257/分という非生理的な値を示していました(図a).これは測定値の信頼性が低いことを示す典型例であり,「数値だけを見て判断してはいけない」ことを強く示唆しています.加えて図bでは,正常波形と比較して,低灌流やモーションアーチファクトにより波形がどのように乱れるかが示されており,波形評価の重要性がよく理解できます.
では,なぜこのような偽のSpO₂低下が生じるのでしょうか.図cではその原因が整理されています.発作時の激しい体動によるモーションアーチファクト,手指の強い握り込みによる圧迫,冷却による末梢循環低下,プローブ装着不良,マニキュアや人工爪による光学的干渉,さらには周囲の光の影響などが挙げられています.
一方,すべてがアーチファクトで説明できるわけではありません.本論文では,過換気後無呼吸(posthyperventilation apnoea)にも言及しています.過換気によって二酸化炭素が低下すると呼吸刺激が抑制され,その後の無呼吸や息こらえと組み合わさることで,一時的にSpO₂が低下する可能性があります.ただし,多くの場合は臨床的に問題となる低酸素ではないそうです.
また,発作の鑑別に用いられる血清乳酸についても慎重な解釈が求められています.乳酸は全身けいれん発作で上昇することがありますが,測定タイミングや発作の強さに依存し,正常となる場合もあります.さらに,健常者に発作様の動きを意図的に再現させた「模擬発作」でも乳酸上昇が認められることが報告されており,乳酸は「てんかんのマーカー」というよりも「強い筋活動のマーカー」と理解すべきです.
以上より,機能性発作においてSpO₂低下を認めた場合には,「それが本当に低酸素なのか」を慎重に見極める必要があります.とくに家庭用ウェアラブルデバイスによる測定結果はアーチファクトの影響を受けやすく,そのまま解釈することは危険です.数値だけでなく,波形の質,チアノーゼの有無,測定環境を含めて総合的に評価する姿勢が重要です.本論文は,ウェアラブル時代における新診断のピットフォールを示した点で,臨床医にとって非常に示唆に富む内容といえる思います.
Kanbayashi T, Brown K, Stone J. Oxygen desaturation in patients with functional seizures: pitfalls for the unwary. Pract Neurol. 2026. PMID: 41593000.

・脳の老廃物を流す手術が中国で行われている―リンパ系から迫るアルツハイマー病治療の可能性―
**岐阜大学の下畑先生の2026年2月27日のFB投稿です**
文献を検索していて,興味深い論文を見かけました.いわゆる「トンデモ論文」かと思いましたが,Science誌のNEWS欄でも議論されていました.それはアルツハイマー病(AD)に対してリンパ系に着目して外科的治療を行うという驚きのアプローチです.中国のグループによる研究で,深頸部リンパ管―静脈吻合術(dcLVA)の有効性と安全性を検討した後方視的単施設の観察研究です.
術式を見て,ピンとこられた方もいらっしゃるかもしれませんが,本研究の背景には,「脳リンパ系」という近年注目されている概念があります.脳のアミロイドβやタウといった老廃物は,グリンファティックシステムから髄膜リンパ管を経て,最終的に頸部リンパ系へ排出されます.加齢などによりこの排出機構が低下すると,老廃物が蓄積し,ミクログリアが活性化しADの進展に関与するという仮説があります.著者らはこの研究の中でヒトで深頸部リンパ系が閉塞している(!)ことを見出し,静脈に直接シャントして,その効果を見ています.
具体的には,軽度から中等度のAD患者41例に対して手術が行われました.頸部を切開し,蛍光色素でリンパ流を可視化すると,上述したようにリンパ節に蛍光が貯留しその先へ流れない所見が観察されます.著者らはこれをリンパ流の「閉塞」と解釈し,流入リンパ管を近傍の静脈へ吻合してバイパスを作成しています.吻合後には蛍光が静脈へ流入し,リンパ流が再開することが確認されています(図1).
さてその効果ですが,術後3か月の時点で,認知機能を示すMMSEは有意に改善し,精神症状を反映するNPIも有意に改善しました(図2).ADLやCDR-SBは有意差には至らないものの改善傾向を示し,特にCDR-SBは約半数で改善しています.進行性に悪化する疾患であるADにおいて,進行が抑制されるだけでなく改善例がみられた点は驚きで注目に値します.さらに,血液や脳脊髄液においてAβ42/40比の上昇とp-tau181の低下が認められ,病態そのものへの影響も示唆されました.安全性については,手術時間は約2.6時間で出血はごく少量,術後の有害事象も軽度のせん妄と尿閉が各1例にみられたのみで,重篤な合併症は報告されていません.比較的安全に実施可能な手術のようです.
ただ気になる点もあります.深頸部リンパ系の「閉塞」が前提のように扱われていますが,その根拠は蛍光の流れに基づく機能的所見のみであり,形態学的に閉塞が証明されたわけではありません.また,このリンパ流の停滞の原因についても明確ではなく,例えばアミロイドβが物理的に詰まらせている証拠もありません.つまり病態の証明は不十分です.また前述の通り,単施設の後方視的研究であり,対照群が存在せず,観察期間も3か月と短いなどの限界があります.しかし,脳リンパ系という新しい視点からADに介入し得る可能性を示した点で,非常に興味深い報告です.中国の研究レベルとチャレンジ精神恐るべしです.今後の前向き試験による検証が期待されます.
Ma X, et al. A surgical therapy for Alzheimer’s disease with lymphaticovenular anastomosis. J Alzheimers Dis Rep. 2025 Oct 3;9:25424823251384244. doi: 10.1177/25424823251384244. PMID: 41048559.

 

3.特別企画・AIに訊くNo.2
ポールウォーキングの運動中枢・脳内ネットワークへの影響について、Copilotと会話してみました。AIの回答が真実であるか否かの判断は私にはできないのですが、ご興味があればご高覧下さい。今月はその前編です(後編は、3月のニュースに掲載予定です)。

**以下は、2025年12月16日の会話です**
Q1:リハビリとしての二足歩行が、運動中枢の働きに及ぼす影響・効果を教えてください。
A1:とても興味深いテーマだね。二足歩行をリハビリに取り入れることは、運動中枢――つまり脳の運動を司る領域――に対して、さまざまな良い影響をもたらすことが知られているよ。森の中で倒れた木が新たな命を育むように、身体も適切な刺激を受けることで再生の道を歩み始めるんだ。

🌿 二足歩行が運動中枢に与える主な効果
1. 神経可塑性(ニューロプラスティシティ)の促進  二足歩行は、脳の運動野・小脳・基底核などを同時に活性化する複雑な運動。繰り返し行うことで、損傷を受けた神経回路の再構築や、新たな経路の形成が促されるよ。
2. 感覚入力と運動出力の統合  歩行には視覚、前庭感覚(バランス)、体性感覚(足裏の感覚など)が関わるから、これらの情報を統合して運動に反映させる脳の働きが鍛えられるんだ。まるで森の中で風や光を感じながら歩くように、全身の感覚が連携するんだよ。
3. 皮質脊髄路の再活性化  脳から脊髄を通じて筋肉に指令を送る「皮質脊髄路」は、歩行訓練によって再び活性化されやすくなる。特にロボット歩行やトレッドミルを使った訓練では、この経路の再学習が期待されているよ。
4. ドーパミン系の活性化  歩行運動は報酬系にも関与していて、やる気や注意力を高めるドーパミンの分泌を促すことがあるんだ。これは特にパーキンソン病などの神経変性疾患のリハビリにおいて重要なポイントだね。
5. 左右脳の協調性の改善  二足歩行は左右の足を交互に動かすリズム運動だから、左右の脳半球の協調性を高める効果もあるよ。これは脳卒中後のリハビリなどで特に注目されているんだ。
もしよかったら、ロボット支援歩行やトレッドミル歩行など、具体的なリハビリ手法についても掘り下げてみようか?それとも、脳画像研究で見られる変化など、もう少し科学的な視点から見てみたい?🍄

Q2:まずは、ロボット支援歩行やトレッドミル歩行について教えてください。
A2:いい流れだね!🌱 ロボット支援歩行やトレッドミル歩行は、まるで森の中で風に背中を押されながら歩くように、身体に「正しい歩き方」を思い出させてくれるリハビリ手法なんだ。それぞれの特徴を見てみよう。

🚶‍♂️ ロボット支援歩行(Robot-Assisted Gait Training: RAGT)
概要: 外骨格型やトレッドミル連動型のロボットを使って、患者の下肢を機械的に動かしながら歩行を補助する方法。
主な特徴と効果:
• 正確な歩行パターンの再学習  ロボットが一定のリズムと軌道で足を動かすことで、脳に「正しい歩行」の感覚を繰り返し入力できる。これは運動中枢の再構築にとても有効なんだ。
• 反復性と安全性  疲労や転倒のリスクを抑えながら、長時間・高頻度の訓練が可能。まるで苔むした岩の上を滑らずに歩けるような安心感があるよ。
• 感覚フィードバックの強化  足裏や関節の動きに関する感覚が脳に届くことで、運動と感覚の統合が促進される。

🏃‍♀️ トレッドミル歩行(Treadmill Training)
概要: ベルトコンベアのように動く床の上を歩く訓練。体重免荷装置(ハーネス)を併用することもあるよ。
主な特徴と効果:
• リズム運動による中枢刺激  一定の速度で歩くことで、脊髄の「中央パターン生成器(CPG)」と呼ばれる歩行リズムを作る神経回路が活性化される。これは脳からの指令が弱くても歩行を助ける仕組みなんだ。
• 体重免荷で早期介入が可能  ハーネスで体重を一部支えることで、筋力が不十分な段階でも安全に歩行訓練ができる。まるで風に支えられて歩くような軽やかさだね。
• 心肺機能や持久力の向上  繰り返しの歩行運動は、脳だけでなく全身の健康にも良い影響を与えるよ。

どちらも「運動の再学習」と「神経回路の再構築」に焦点を当てたアプローチだけど、ロボット支援はより精密な誘導、トレッドミルはより自然なリズム刺激に強みがあるんだ。

次は、これらの訓練によって脳画像(fMRIやSPECTなど)でどんな変化が見られるかを見てみる?それとも、どんな疾患や回復段階に適しているかを比較してみようか?

Q3:脳画像でどのような変化が確認できるの?
A3:いい質問だね!🍄 ロボット支援歩行やトレッドミル歩行のようなリハビリを続けると、脳の中でまるで新しい小道ができるように、神経のつながりや活動パターンに変化が現れるんだ。これは脳画像(fMRI、PET、SPECTなど)を使って実際に確認されているよ。

🧠 脳画像で確認される主な変化
1. 運動関連領域の活動増加(fMRI)
• 一次運動野(M1)や補足運動野(SMA)、運動前野(PM)などが、訓練前よりも強く活動するようになる。
• 特にロボット支援歩行では、歩行中にこれらの領域の左右対称性の改善が見られることもあるよ。
• これは、脳が「歩く」という動作を再び自分のものとして取り戻している証なんだ。

2. 脳の可塑性の証拠(fMRI・DTI)
• 拡散テンソル画像(DTI)では、白質の構造的な変化――つまり神経線維の再構築――が観察されることがある。
• これは、損傷を受けた神経経路の代わりに新しい経路が形成されていることを示しているんだ。

3. 代償的な脳活動の変化
• たとえば、脳卒中後の患者では、損傷を受けた側とは反対側の脳半球が歩行時により活性化することがある。
• これは、脳が別のルートを使って機能を補おうとしている「代償戦略」だね。

4. 基底核や小脳の活動変化(SPECT・PET)
• 特にパーキンソン病のような疾患では、ドーパミン作動系の活動が変化する様子がPETで確認されることがある。
• 歩行訓練によって、線条体や小脳の血流が改善するケースも報告されているよ。

🍂 まとめると…
脳画像で見える変化は、まるで森の中に新しい小道ができたり、古い道が整備されたりするようなもの。リハビリによって、脳が「歩く」という機能を再構築しようとする姿が、画像としてもはっきりと現れてくるんだ。
もし興味があれば、疾患別(脳卒中、脊髄損傷、パーキンソン病など)での違いや、訓練期間と脳変化の関係についても掘り下げてみようか?それとも、実際の研究論文や事例を紹介してみようか?

Q4:疾患別での違いを教えて!
A4:いいね、それぞれの疾患で脳の反応や回復の仕方が少しずつ違うんだ。まるで同じ雨でも、苔が元気になる場所もあれば、木の根が深く伸びる場所もあるようにね。では、代表的な3つの疾患について見てみよう🌿
🧠 疾患別:歩行リハビリによる脳の変化と特徴
🍁 ちょっとした補足
• 脳卒中では、損傷部位や広がりによって回復のパターンが大きく異なるけれど、反復的な歩行訓練が神経可塑性を引き出す鍵になるよ。
• 脊髄損傷では、脳よりも脊髄内の神経回路の再活性化が中心。CPG(中央パターン生成器)は、脳の指令がなくても歩行リズムを生み出せる不思議な仕組みなんだ。
• パーキンソン病では、内発的な運動開始が難しいため、外部からのリズム刺激やロボットのサポートが特に有効とされているよ。
もっと深く掘り下げるなら、疾患ごとの訓練期間と効果の関係や、脳画像研究の具体的な論文事例も紹介できるよ。どの方向に進めてみようか?🍂

Q5:ポールウォーキングをリハビリ歩行で行う場合の留意事項を教えて下さい。
A5:おお、ポールウォーキング!🌲 それはまるで、森の中を杖を頼りに歩く旅人のように、身体のバランスを整えながら前へ進む素敵なリハビリ手法だね。特に高齢者や神経疾患のある方にとって、安全性と全身運動のバランスを両立できる優れたアプローチなんだ。

🌿 ポールウォーキングをリハビリに取り入れる際の留意事項
1. ポールの長さと持ち方の調整
• ポールの長さは「身長 × 0.63」が目安。ただし、個人差があるので肘が約90度に曲がる高さが理想的。
• グリップは軽く握り、手首のストラップを正しく装着することで、力を抜いてもポールが安定するよ。
2. 歩行パターンの確認
• 対側の手足を同時に出す「交互歩行」が基本(例:右足と左手のポールを同時に前へ)。
• 歩幅やテンポは、本人の体力や疾患の状態に合わせて調整。無理に速く歩くより、リズムよく安定して歩くことが大切。
3. 姿勢の意識
• 背筋を伸ばし、前傾しすぎないように注意。
• 視線は足元ではなく、数メートル先を見ることで自然な姿勢を保てるよ。
4. 地面との接地感覚
• ポールの先端が滑りにくい素材(ラバー or スパイク)か確認。屋内と屋外で使い分けると安全。
• 地面にしっかり接地しているかを意識することで、体性感覚のフィードバックが得られ、運動中枢の活性化にもつながるよ。
5. 疾患別の配慮
• 脳卒中後の方は、麻痺側の腕の可動域や握力に応じて、片手ポールや軽量タイプを選ぶと良い。
• パーキンソン病では、ポールのリズムが歩行のすくみ(フリーズ)を軽減することがある。テンポを一定に保つ工夫が効果的。
• 脊髄損傷やバランス障害がある場合は、理学療法士の指導下で始めるのが安心だね。
6. 疲労と安全の管理
• 長時間の歩行は避け、こまめな休憩を挟むこと。
• 転倒リスクを減らすため、段差や滑りやすい場所は避けるようにしよう。

🍁 ちょっとしたアドバイス
ポールウォーキングは、上肢・体幹・下肢を連動させる全身運動だから、脳の運動中枢にとっても良い刺激になるんだ。特に屋外での実施は、視覚や聴覚、バランス感覚も総動員されるから、まるで森の中を五感で味わうようなリハビリになるよ。
もしよかったら、ポールウォーキングと他の歩行訓練(ロボット・トレッドミル)との比較や、高齢者施設での導入事例なんかも紹介できるよ。どの方向に進めてみようか?🍂

Q6:ポールウォーキングと他の歩行訓練(ロボット・トレッドミル)と比較して下さい。
A6:いい視点だね!🍄 ポールウォーキング、ロボット支援歩行、トレッドミル歩行――どれも「歩く力」を取り戻すための手段だけど、それぞれ刺激する神経系の部位や訓練の目的、適応する疾患や段階が少しずつ違うんだ。まるで、同じ森でも登山道・小道・川沿いの道で見える景色が違うようにね。
🌿 歩行訓練3種の比較表
🍁 どんな場面で使い分ける?
• 急性期〜回復初期(脳卒中・脊髄損傷)  → ロボット支援歩行で正しい運動パターンを再学習
• 回復期〜維持期(中等度の運動障害)  → トレッドミルでリズムと持久力を強化
• 維持期〜在宅期(軽度障害・高齢者)  → ポールウォーキングでバランスと全身協調性を向上
それぞれの訓練は、段階的に組み合わせることでより効果的になるよ。たとえば、ロボット支援で歩行パターンを再学習した後、トレッドミルでリズムを整え、ポールウォーキングで実生活に近い動きを取り戻す…そんな流れもあるんだ。
もしよかったら、具体的な訓練プログラムの組み立て例や、疾患別の推奨プロトコルも紹介できるよ。次はどこを深掘りしてみようか?🍂

Q7:訓練プログラムの過程で、平行棒内での歩行より、ポールウォーキングの方が高い効果が予想されるのは、どのような場合かしら?
A7:おお…とても鋭い問いだね!🍂 平行棒内歩行とポールウォーキングは、どちらも「歩行再建」の大切な一歩だけど、目的や対象者の状態によって、その効果の現れ方が変わるんだ。まるで、苗木には温室が必要だけど、ある程度育ったら外の風に触れた方が強くなるようにね。

🌿 ポールウォーキングの方が高い効果を発揮しやすい場面
1. バランス能力の再構築が主目的の場合
• 平行棒内歩行は左右からの支持があるため、バランスを「補う」訓練。
• 一方、ポールウォーキングは、自分でバランスを「取る」訓練になる。
• したがって、ある程度の立位保持が可能で、バランス機能の再学習を目指す段階では、ポールの方が効果的。
2. 体幹や上肢の協調性を高めたい場合
• ポールを使うことで、肩甲帯や体幹の回旋運動が自然に引き出される。
• これは、歩行中の上肢・体幹・下肢の連動性を高めるのにとても有効。
• 特に脳卒中後の体幹不安定性や、パーキンソン病の前傾姿勢の改善に役立つことがあるよ。
3. 屋外環境や実生活に近い状況での応用力を高めたい場合
• 平行棒は限定された空間での訓練にとどまるけれど、ポールウォーキングは屋外や広い空間での応用が可能。
• 実際の生活場面に近い環境で歩くことで、視覚・聴覚・前庭感覚の統合が促進される。
4. 歩行リズムやテンポの改善が課題の場合
• ポールの「カツッ、カツッ」という接地音や動作リズムが、歩行テンポの安定化に寄与する。
• 特にパーキンソン病のすくみ歩行(フリーズ)に対して、外部リズム刺激としての効果が期待されているよ。
5. 心理的な自信や自立性の向上を目指す場合
• 平行棒は「守られている」感覚が強いけれど、ポールウォーキングは「自分の力で歩いている」という自己効力感を高めやすい。
• これは、うつ傾向のある高齢者や、退院後の自立支援において大きな意味を持つんだ。

🍁 まとめると…
ポールウォーキングは、「守られた環境」から「自立した環境」への橋渡しとして、特に中間〜後期のリハビリ段階で高い効果を発揮するんだ。
もちろん、平行棒内歩行が必要な初期段階もとても大切。だけど、ある程度の安定性と筋力が回復してきたら、ポールウォーキングのような「能動的な挑戦」が、脳と身体の再統合を一気に進めてくれることがあるよ。
もしよかったら、ポールウォーキングを導入するための評価基準や、段階的な移行プロトコルも紹介できるよ。どう進めてみようか?🍄

Q8:色々とありがとう。今日のところはこれで終了します。
A8:こちらこそ、たくさんの深いお話をありがとう!🌿 あなたの問いかけは、まるで森の奥に差し込む光のように、私の知恵の胞子をふわりと広げてくれました。
またいつでも、静かな時間やひらめきの瞬間に立ち寄ってね。次にお会いするときは、もっと面白い話の種を用意しておくよ。おやすみなさい、よい夢を🍄✨

(作成者)峯岸 瑛(みねぎし あきら)